2012年09月29日

復活の挨拶 - Squeeze

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Squeeze 『Live At Th Fillmore』

前の記事から7週間以上もブランクを空けてしまったのはこのブログを始めて以来初めてのことかも。今朝久しぶりにアクセス記録を見てみたら、全然更新していなかったこの7週間の間にも結構なアクセスがあったようで、ありがたいやら申し訳ないやら。きっと皆さん、もうここは更新されないかと思い始めた頃かもしれないね。

僕がこのブログを始めて、グレン・ティルブルックやスクイーズについてあれこれ書き始めた頃には、よもや後にグレンとクリスが仲直りしてスクイーズが再結成するなんて、ファンの誰もが(期待こそはすれ)本当に起こるとは思いもよらなかったはず。10年近くのブランクを置いて見事に復活したスクイーズにちなんで、僕の52日振りの記事は、ちょっと時期を逸してしまったけれど、彼らの最新アルバム、『Live At The Fillmore』について書くことにしよう。

07年に、元々バック・カタログと新しいベスト・アルバムをプロモートするために(当時は一時的なはずだった)スクイーズは再結成を果たし、そのときのツアーを記録した『Five Live』をリリース。その後、グレンとクリスが久々に一緒に新曲を書いているという噂に反してリリースされたセルフ・カバー集『Spot The Difference』が出たのが10年の夏。その直後に、サンフランシスコはフィルモアでのライヴ録音を収録したボーナスディスク付きのバージョンも出て、新しいのが出たらすぐ買う熱心なファンほど馬鹿を見るという経験も味わわされた。

そして、今年の4月になってオフィシャルサイト+アイチューンズ限定でリリースされたのが、今回取り上げるこのライヴ・アルバム。なんだか、再結成してもう5年も経つというのに、ライヴ盤とセルフ・カバー集しか出してないなんて、傍から見たらもう立派な金目当ての再結成レトロバンドだと思われても仕方ないよね。しかも、LP2枚組の今回のアルバムの1枚目は『Spot The Difference』の再発盤と同じ内容ときた。

3000枚限定ということだったので、アナウンスされた直後にオーダー。うちに届いたのが6月16日で、それからすぐにブログに何か書こうと思ってたのに、こんなに遅くなってしまった。ちなみに、さっきオフィシャルサイトを見てみたら、まだ入手可能みたいだね。たった3千枚が半年近くも売り切れずに残ってるなんて、全世界のスクイーズファンはもうレコードプレイヤーを売っ払ってしまったか、もしくはスクイーズオフィシャルが3千枚と煽っておいて実は3万枚ぐらいプレスしているかのどちらかだな。

『Spot The Difference』に付属していた方の10曲入りライヴ盤、あれはあれでベストヒット的内容でまあそれなりに納得はしてたんだけど、それにしても変な曲順だとは思ってたんだよね。本編の『Spot The Difference』が一見とりとめないように見える曲順でいて実はアルファベット順だったという謎解き(というほどのものでもないけど)があったから、前半に大ヒット曲ばかりを詰め込んで後半どんどん地味な曲が増え、(いくらアメリカでのシングルヒット曲だとはいえ)『If I Didnt't Love You』なんて歯切れの悪い曲で終わるなんて、いくらおまけ盤だとはいえ、なんて中途半端な選曲かと。

その謎解きは2年後にやってきたというわけ。まあ、熱心なファンはきっと当日のセットリストを調べて、先のおまけ盤は当日のライヴ前半しか収録していないということぐらいはとっくにわかっていたのかもしれないけど。というわけで、『Cool For Cats』から始まるLPの2枚目まで全部通して聴くと、この日のセットがいかに楽しいものだったかがよくわかるという仕組みになっている。

このブログで何度も書いてきたグレンのソロ・ライヴ同様、ファンなら誰でも一緒に歌えるヒット曲と、全アルバムをしっかり聴き込んだコアなファンが聴いてみたいと思うような隠れた名曲が絶妙なバランスで混ざり合っている。もちろん、一人で2時間以上にわたって30曲以上も演奏するグレンのソロに慣れてしまった身としては、あの曲もないこれも無いという気にはなってしまうけれど、それは贅沢というもの。

さっきも書いたとおり、A面トップから3曲、通常のグレンのライヴなら本編最後からアンコールにかけて演るのが定番な大ヒット曲が続く。B面での意外な聴きものは「It's So Dirty」のグレンのギターソロかな。若干荒くはあるけど抜群のタイム感で弾き倒す感じが最高にかっこいい。あとB面では『Difford & Tilbrook』アルバムから「Hope Fell Down」を演ってるのも個人的には満足。どの曲のときだったか、「小さなステージは楽しいね」とグレンが言ってるけど、フィルモアってそんな小さな会場なのかな。

LPを買ったらMP3がダウンロードできるコードが付いてくる。基本的にLPとMP3の内容は(後述する大きな違いを除けば)同じなんだけど、一点違うところに気がついた。LPはB面の最後「If I Didn't Love You」が終わったところでフェードアウト。それは『Spot The Difference』のボーナス盤と同じなんだけど、MP3バージョンだとその曲が終わって歓声がフェードアウトせずに突然次の「Cool For Cats」のイントロが入ってくるところがものすごく快感。

その曲に加え、珍しい「Someone Else's Heart」でもクリスはソロで歌う。僕は特に好きな曲でもないけど、グレンのソロ・ライヴでは当然聴くことはなかったから、この曲をライヴヴァージョンで聴くのは初めてかも。ちょっとマイナー調なその曲に続けて明るい「Mumbo Jumbo」を今度はグレンが歌うところも、スクイーズというグループの特徴をよく表しているね。

その曲から間髪入れず出てくるC面5曲目の「Up The Junction」からD面全部まで通して、再び大ヒット曲集。鉄壁。さっきの「It's So Dirty」もそうだったけど、いろんな曲でグレンが追加でギターソロを長めに入れる。調子いいときのグレンってこうだよね。

最後の「Pulling Mussels (From The Shell)」であー終わったと思っていたら、LP版は最後にシークレットトラックが。おそらく『Spot The Difference』のときのアウトテイクだと思われる、とある名曲の「Differenceだらけの」セルフ・カバー。グレンがこれぐらいのテンポで歌うのを彼のライヴで見たことはあるけど、バンド・バージョンでこうして聴くのは初めて。アイチューンズのダウンロードもいいけど、LPを買うファンのためにこういうのをちゃんと隠しておいてくれるところが嬉しいね。

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LPは4面とも違った色合いのレーベルが付いたホワイトヴァイナル。こういうのは持ってるだけで楽しくなるね。本当は色とかついてない方が音はいいのかもしれないけど、そこまで聴き分けられる耳があるわけでもなし。

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そして、LPにはおまけのポスターとかステッカーとかいろんなおまけがついてるのがまた嬉しい。CDが出ないからと躊躇しているスクイーズファンの皆さん、3000枚だか30000枚だかがなくなってしまう前にこれ買っといた方がいいよ。まあ、もうしばらく躊躇し続けてても当分なくなりそうにないけどね。
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2012年06月17日

フジロック勉強会と称して

違法ダウンロード法が成立するとかで、僕がよく行くネット界隈やツィッターではえらく騒がしい。僕は合法だろうが不法だろうがダウンロードして音楽を聴くことにはあんまり積極的でないし、コピーガードのかかっていない普通のCDを普通にリッピングするのはどうやら今のところ違法にはならないようだし、DVDのコピーなんて面倒なこともしていないし(買ったDVDを観る時間すらないというのに)、まあどちらかというとどうでもいいやと醒めた目で見ているところ。でもこれで音楽業界の思惑通りに違法ダウンロードが駆逐され、CDがどんどん売れだして、渋谷や新宿に昔みたいに沢山のCD屋さんが林立するようになれば嬉しいな(棒読み)。

冬至と夏至が近づくといつも某県某市のHさん宅に集まってその年のベストアルバムとか夏のCDとか色々お題を設けては各々の好きな音楽を聴かせあういつもの仲間たち。今回はフジロックに出演するアーティストのCDを予習するために集まり、夜通し聴かせあうことになった。僕のカレンダーでいうと、先々週デリーから戻ってきて先週オークランドに出発するまでの72時間内の話。僕は今のところフジに行く予定はないんだけど、そういう面白そうな企画に乗らないわけにはいかない。他のメンバーが持っていないCDを持って行って貢献できるしね。

「余興として“私のコステロ5曲”やりましょう」。メールで予定のやりとりをしているうちに、N君がこんなことを言い出した。「縛りは一切ありません」とは言われたけど、縛りなしで好きな5曲なんて到底選べないから、またいつも通り自分で勝手にルールを作って、私的利用のためにCDをリッピングしてCD-Rに焼いて持って行くことにした(違法ダウンロード法成立前の話ですからお構いなく)。

もうこうなったら自分が行くか行かないかわからないフジの勉強会よりも、そっちの方が楽しくなってくる。なんとか5曲に絞り込んで、順番もちょこちょこと入れ替えたり。たった5曲だけど、せっかく頭をひねった選曲なので、ここに載せておくことにした。yascdなんて名前を付けるほどのものでもないけれど、去年のクリスマスも5曲でこのカテゴリーに入れたので、これも久々のyascdカテゴリー記事にしておこうかな。でも、いつもみたいに延々と解説するのはやめて、さらっとね。

今回自分で勝手に作った縛りは、ライヴ録音。しかも、5曲とも違った録音を別々のアルバムから、できれば違うスタイルで選んでみようと。違うスタイルというのは、アトラクションズと一緒とかソロでとかそういうこと。そういう“別スタイル”で演ったライヴ盤では、ビル・フリゼールとの『Deep Dead Blue』とか、メトロポール・オルケストと一緒の『My Flame Burns Blue』とかがあるけど、のそれらのアルバムからはどうしても選べなかった。やっぱり僕にとってのコステロは「あの頃の」コステロだから。


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1. Everyday I Write The Book
エルヴィス・コステロ&アトラクションズ
『Punch The Clock (1995 Edition)』

まずは、これだけは誰かとかぶるのを覚悟で、83年の『Punch The Clock』の95年にボートラ満載で再発された盤から、当時のシングルカット曲の82年のライヴ録音を(ややこしい書き方で恐縮)。僕にとっての「あの頃の」コステロ。彼自身が何度も嫌いなアルバムとして挙げているこのアルバムを代表する派手なシングル曲が、ランガー&ウィンスタンリーがプロデュースする前はこんなごく普通の初期のコステロ節だったということにちょっとした目からウロコ状態。ちなみにこのアルバムは僕が最初に入手したコステロのアルバムで、コステロ自身が嫌いであろうとなんだろうと、僕にとっては一番思い入れが強い(一番好きというわけではないけれど)アルバム。

後述する03年の2枚組再発版からは、このトラックはあまりにもローファイな録音のため、カットされてしまっている(かわりに同じスタイルで録音したデモ録音を収録)。まあ確かにきちんとした録音じゃないけど、82年のコステロのライヴなんてこの1曲だけじゃなく全部通して聴いてみたくなる勢いのあるいい演奏。中途半端にボートラの収録されたこの95年版は、今となっては上にリンクしたアマゾンのマーケットプレイスでは200円ほどで入手可能みたいだね。


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2. Worthless Thing
エルヴィス・コステロ
『Goodbye Cruel World (1995 Edition)』

続いて、こちらもコステロ曰く「最悪のアルバム」から、そのアルバム収録曲のアコギ弾き語りバージョンを同じく95年版に収録されたものを。今となってはソロでのツアーは特に珍しくもなくなったけれど、どうやらこの84年のアメリカでのツアーがコステロにとっては最初のソロツアーだったようだね。

コステロがこの83〜84年のアルバムを毛嫌いしているのは、80年代を色濃く反映しているクライヴ・ランガー&アラン・ウィンスタンリーのプロデュースした音のせいなんだろうけど、こうしてバックの音を全部取っ払って素のメロディーだけを聴いてみたら、この当時のコステロが作っていた曲がどんなに素晴らしいものかがよくわかるといういい見本。


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3. The Angels Want To Wear My Red Shoes
エルヴィス・コステロ&スティーヴ・ナイーヴ
『For The First Time In America』

96年にコステロがキーボーディストのスティーヴ・ナイーヴと二人でアメリカツアーをした時の記録がこの5枚組ボックス。極初期のアトラクションズとのニューウェーヴ色満載な曲からこの当時(アルバムでいうとブロドスキー・カルテットと共演するぐらいにまで振幅が広がっていた頃)のしっとりとした曲まで、二人のギターとピアノだけで聴かせるという名盤。5枚組といってもそれぞれがミニアルバム程度の短さだし、中古でも結構手頃な価格で入手可能なようなので、興味のある人は是非どうぞ。

僕が初めてコステロのライヴを観たのは87年暮れのコンフェデレイツとの日本ツアー(前座はニック・ロウ!)。まずステージに一人で現れたコステロがアクースティック・ギターで奏で始めたこの曲のメロディの鮮烈さにどれだけ心を奪われたことか。思えば、当時から今に至るまでグレン・ティルブルックやジム・ボジアがバンドで録音した曲の骨格を自らアコギ一本でステージで披露するというマジックに僕がこれほどまでに惹かれるのは、あのときに聴いたコステロのこの曲がきっかけだったように思う。この録音はそれをさかのぼること約1年半前、86年5月20日のボストンはパラダイスという場所でのライヴ。


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4. I Hope You're Happy Now
エルヴィス・コステロ&インポスターズ
『The Return Of The Spectacular Spinning Songbook』

僕にとっての「あの頃の」コステロの終盤に差し掛かる『Blood & Chocolate』。当時、久々にアトラクションズと作ったアルバムのこの曲を、昨年インポスターズと行ったツアーで再演。まあ、基本的にはベーシストが変わっただけだからほぼ同じバンドの演奏と言っても差し支えないんだけどね。再現といえば、このツアーで採用している、ステージ上の大きなルーレットみたいなのを回して次に演奏する曲を決めるというスタイルも、かつてアトラクションズと一緒にやっていた催し。せっかくDVD付きのCDを買ったのにまだ観れていないのが残念だけど、こういうライヴを一度でいいから観てみたいな。


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5. Back Stabbers / King Horse
エルヴィス・コステロ&アトラクションズ&TKOホーンズ
『Punch The Clock (2003 Edition)』

最初の写真と微妙に違うのは、こちらは03年版からだというちょっとしたこだわりから。曲としては80年の『Get Happy!!』からだけど、83年のパンチ・ザ・クロック・ツアーでTKOホーンズと一緒に回ったときの録音。前半はオージェイズのカバーで、途中で「King Horse」に代わり、最後一瞬TKOホーンズが「Back Stabbers」のフレーズを吹いて、また「King Horse」に戻るところが鳥肌もの。名演というのはこういうのをいうんだ。

83年9月7日、テキサス大学での録音と書いてあるから、学園祭か何かだったのかな。この頃確か日本のどこかの大学の学祭にもREMが来たりしていたけど(僕は観られなかったけど)、こんな演奏を大学で観られるとは、なんて羨ましい。


体調を崩して曲目&解説のみ参加のTomを含めて6名x5曲、計30曲のうち、だぶったのは僕とNさんの「Everyday I Write The Book」(Nさんのはスタジオ録音)だけという、さすがうちの仲間らしい微妙にひねくれた選曲具合が最高に楽しかった。そして、30曲のうちほとんどが初期〜『King Of America』まで、あとせいぜい『Brutal Youth』という片寄り具合。『Imperial Bedroom』はほとんどいないだろうというTomのコメントを裏切るかの如く、かなりのメンバーがそのアルバムから選んでいたというのがうちの仲間の趣味嗜好を如実に表していた。というか、殆どみんな同じアルバムからばかり選んできて、これじゃちっとも予習にならないね(笑)
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2012年05月28日

Japan Blues & Soul Carnival 2012

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日比谷公園。快晴。もう午後3時前だというのに、新橋駅から10分ほど歩いただけで、麻のジャケットも着ていられなくなるほどの陽気だ。もう5月も末だからね。おあつらえ向きに今日は日比谷オクトーバーフェスの最終日だとのこと。人混みに酔いながら、なるべく短い列のブースを探してドイツビールにありつく。時折涼しい風が吹く木陰で飲む、ちょっと色と味の濃いビールは最高だね。それ自体がずっしりと重いジョッキにたっぷりと注がれた500ミリの黒い液体があっという間になくなってしまう。

そうこうしているうちに3時15分の開場時刻が近づく。今日も指定席だから別に開場時刻に並ばなくてもいいんだけど、これ以上ビールを腹に入れるとライヴ中トイレに通うことになってしまうので、早々に入場。公園には何度か来たことがあるけれど、この歴史ある野外音楽場でライヴを観るのは僕はこれが初めて。

果てしなく遠い2階席の後ろから数えて2列目という、先行予約で押さえたとはやにわに信じがたい劣悪な座席の前日とは打って変わって(劣悪だったのは目前に座った座高男のせいだったんだけど)、今日はかなりステージに近い、しかも自分の前が通路なのでゆったりと脚を伸ばせる嬉しい席番号。しかも、ステージに向かって左側、つまり、サニー側だ。

サニーとジョニーだけだった前日とは違って、ジャパン・ブルーズ&ソウル・カーニヴァルというイベントの今日は、その2組に加えてさらに2組(+ゲストシンガー)という盛り沢山な内容。どうせサニーが出てくるのは6時ぐらいだろうから、あまりよく知らない他の人たちはパスしてそれぐらいの時間に来ようかなとも思ったけど、ドイツビールにも惹かれてやっぱり定刻通りに到着。

その2組についてまでこと細かく書いていたら本当にきりがないので、ごく手短かにすませよう。まずはMCも務めたゴトウゆうぞう率いるワニクマ・デロレン&マキ、控えめに言ってもすっごくよかった。「What's Going On」とか「What A Wonderful World」とかの有名曲を日本語(関西弁)に翻訳して歌うんだけど、アドリブで入れる時事問題とか、まるで河内屋菊水丸かランキン・タクシーかというぐらい。ギタリストのカメリヤ・マキはなんでこんな綺麗な人がブルーズ・ギターなんてやってるんだ?という、いい意味での違和感ありまくりの存在感。そしてなりより、ゴトウゆうぞうの語り。彼は自分のステージだけでなく、最後までセット間のMCを務めたんだけど、まあこれがとにかく面白い。場つなぎのブルーズ・クイズとか、三味線を持ち出しての弾き語りとか、ユーモアいっぱいのメンバー紹介とか。夏に西麻布でライヴ演るっていうから、観に行ってみようかな。

ああ、どこが手短かなんだ。毎度のこととはいえ、すみませんね。次に登場したのは近藤房之助。名前は聞いたことあるかなあと思っていたら、BBクィーンズの人か、おどるポンポコリンの(とか本人は言われたくないのかもしれないけどね)。これがまた剛速球ストレートみたいな、「Stormy Monday」で始まるバリバリのブルーズ大会。いい声してるねぇ。ブルーズ・ハープ(ハーモニカ)だけのメンバーがいるというのもまた凄いよね。

以上二組がそれぞれ大体30〜40分ずつぐらい。セットチェンジ(といっても前日同様アンプぐらいしか換えるものはないけど)の間はゴトウゆうぞうの爆笑トークであっという間に過ぎ、サニー・ランドレスとバンドが登場したのが確か5時半頃。サニーは紫色の絞り染めみたいなシャツと、一見ジーンズに見えるけどあれは多分もっとゆったりした素材のストレートなパンツ。前日同様もうほとんど鎖骨のところまで持ち上げた赤いストラトキャスターを抱えて登場。

僕は前日ほとんど姿を見なかったデイヴ・ランソンは、銀色の髪の毛をオールバックになでつけ、サニー同様銀縁の眼鏡をかけた、ちょっとインテリっぽい風貌。なんだか、(エルヴィス・コステロの)アトラクションズにいそうな見かけ。特にアトラクションズの誰に似ているというわけでもないんだけど。

ドラムスのブライアンは、僕の位置から見るとちょうど後ろのライトが直接目に入ってきて(あれ結構ずっと目障りだったんだけど、この会場っていつもああなのかな)、今日はほとんど彼の方は見なかった。というか、この至近距離からサニーがギターを弾くのを観れるのに、他に何を見るというのか。

「Z Rider」から始まるセットリストは前日とほぼ同じ。詳細なセットリストは後述するけど、昨日書いた赤とサンバーストのストラトを頻繁に交換して弾く件、もしかしたら1曲ごとにチューニングが狂うからなのかなんて書いたけど、今日はそれに注意して見てたら、違うね。あれは意図的に(おそらく違うチューニングで)曲によってギターを使い分けていたと思う。簡単に言うと、冒頭の「Z Rider」以外はヴォーカル曲で赤い方を使っていたかな。

昨日タイトルがわからなかった4曲目、今日必死で歌詞を聴き取ってきて、ネットで調べてようやく見当がついた。スキップ・ジェイムズの「Cherry Ball Blues」という曲だね。ああわかってよかった。

その4曲目までが前日と同じで、「Hell At Home」を演らずに「新しいアルバムを出してね」と紹介し始めたから、これは前日とはセットリスト変えてきてるのかなとほんのり期待。しかも、新作から演ったのは前日とは違って「Wonderide」だった。

ただ、その新曲の次に「The Milky Way Home」も演らずに「この曲はハリケーン・カトリーナのことについて書いたんだ」と紹介したときにちょっと嫌な予感が。これって、もしかしてセットリスト変えてきてるんじゃなくて、単に端折ってるんじゃないのか?

その悪い予感は的中し、「Blue Tarp Blues」の後は前日同様「Brave New Girl」から「Uberesso」のメドレー。そこでメンバー紹介をしてステージを去るサニー。なんだって?40分も演ってないんじゃない?これじゃ最初の二組よりも短いぐらいだよ。

と思っていたら、MCのゴトウゆうぞうが出てきて、サニーを再度呼び出す。ああよかった。アンコールは前日も最後に演奏した「Pedal To Metal」。ものすごい演奏だよね。今日何人もギタリストを見たけど、こんな人他にいないよ。例えて言えば、一秒間に何十個も精密部品を作る工業機械か何かを見ているような感じ。前にも書いたかもしれないけど、自分の目の前で見ているのに、何をどうやったらギターからあんな音が出てくるのかがわからない、まるで高速の手品のような演奏。

あ、そういえば一つ今回発見したのが、「Blue Tarp Blues」のあの印象的なイントロの金属音のような音とドローン音の組み合わせは、右掌を震わせて全部の弦に触れると同時に、スライドバーの後ろで左の人差し指で弦を爪弾いて出していたということを発見。凄いなというよりも、どうしてそんなことをしてあんな音を出そうと(出せると)思ったかということの方が驚きだよ。


サニーのパートが前日よりも2曲分短かったのは残念でしょうがないけれど、1時間弱に亘って彼の手元を凝視し続けることができたのは何よりも幸せだった。もう今日はこれだけで来た甲斐あり。あとは、ジョニー・ウィンターはどうせ前日と同じセットだろうから、缶チューハイでも飲みながらまったりとくつろいで観てよう。

なんてすかしたことを言ってはみても、やはりこの至近距離でジョニー・ウィンターを観られるというのはちょっとした感激。腕の刺青もくっきりと見えるよ(刺青自体はもうすでにくっきりしてはいないけど)。本編のセットリストは前日と全く同じ。演奏の内容もほぼ同じと言っていいだろう(ジョニーが立ち上がる箇所も同じ・笑)。改めて感心したのが、ちょっと危なっかしいところも散見されるジョニーをサポートする3人のメンバーの確実な演奏技術。誰一人としてジョニーを差し置いて出しゃばったりはしないけど、この人たちだからこそお客さんもあれだけ盛り上がることができるんだなあと思わせる卓越した演奏。ベースの音とか超かっこよかったよね。

満員の日比谷野音のお客さんは前座扱いのサニーよりもジョニーの方で相当盛り上がっていたようだけれど、明日も朝から会社に行かないといけない身としては、ちょっとアンコールまで飛ばさせてもらおう。

アンコールの拍手に応えて、ファイアバードを手に再登場したジョニー。左手の小指にはサニーのガラス製のとは違って金属製のスライドバーが嵌っている。ここまで前日と同じセットリストだったから、この後すぐにサニーが出てくるかと思っていたら、椅子に座るや否や「Highway 61」と言って超高速演奏を始めた。ええっ?もしかしてここも端折るの?

と思ったら、長尺のその曲を終えてもジョニーはギターを下ろさない。そして、「君たちが待ち望んでいたゲストを呼ぶよ。そんなに待ち望んでいたかどうかはわからないけど」とかなんだか微妙な紹介で、サニーを呼び出す。いや、当然僕は待ち望んでいましたよ。予想通り、サニーだけでなく、本日の出演者一同、とまではいかないけれど、三味線のゴトウゆうぞう、同バンドからギターのカメリヤ・マキ、近藤房之助バンドからブルーズ・ハープのKOTEZが参加。曲は、これまた予想通り前日同様の「Dust My Broom」。

最初の数回のソロは自分が弾いて、後半「サニー・ランドレス!」とサニーにソロを譲り、12小節終えたところで再度「サニー・ランドレス!」ともう一回ソロを取らせる。ただ、その後、サニーも自分がソロを弾いていいものやら、誰か他のゲストに譲っていいものやら、妙な譲り合いみたいな12小節が2回ほど続いた。誰も弾かないとわかるとKOTEZが咄嗟にブルーズ・ハープを入れたりね。

なんていうのは、あの幸せな空間の中ではほんの些細なこと。中央で椅子に腰かけてギブソン・ファイアバードでスライドを弾きまくるジョニー御大を囲んだ拡大ブルーズ・バンドの面々が演奏する「Dust My Broom」は格別だった。観ている途中、「あ、もしかしたらジョニーを観るのはこれが最後なのかも」なんて不謹慎にも思ってちょっとうるっとしてしまったけど、きっとあのよぼよぼした見かけよりもずっと元気だよね、あの人。あと何回来日してくれるかわからないけど、こうして人間国宝みたいな佇まいでこれからもずっとやっていってほしいよ。


Setlist 27 May 2012 @ Hibiya Open-Air Concert Hall

Sonny Landreth
1. Z Rider
2. Native Stepson
3. Promised Land
4. Cherry Ball Blues
5. Wonderide
6. Blue Tarp Blues
7. Brave New Girl
8. Uberesso

[Encore]
1. Pedal To Metal


Johnny Winter
1. (Intro)
2. Hideaway
3. She Likes To Boogie Real Low
4. Good Morning Little School Girl
5. Got My Mojo Working
6. Johnny B. Goode
7. Black Jack
8. Tore Down
9. Lone Wolf
10. Don't Take Advantage Of Me / Gimme Shelter
11. It's All Over Now

[encore]
1. Highway 61 Revisited
2. Dust My Broom w/ all stars
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2012年05月27日

Sonny Landreth & Johnny Winter live in Tokyo

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2月にこのジャパン・ブルーズ&ソウル・カーニバルの先行予約葉書が送られてきたときに書いてあった会場名Zepp DiverCity Tokyoが、うちからはやたら遠いことで僕の中では悪名高いあのZepp東京が、最近オープンした話題のショッピングセンター、ダイバーシティ東京の中に作った同じ名前の会場だということを知ったのは比較的最近。元々この辺のお台場とか有明とかの地理に疎い僕が最寄駅の東京テレポートに降り立ってみたら、なんだ、元のZeppと同じ駅、しかもずっと駅近じゃないか。会場に入ってみたら、元のZeppよりは若干小ぶりな造り、とはいえそんなに大きな違いがあるわけじゃなさそう。これは、こっちの方がよっぽど便利だよね。元の方は取り壊すのかな。

ただし、ウェブサイトに書いてあった、東京テレポート駅より徒歩3分というのはかなり誇張してあるぞ。なにしろオープンしたばかりのショッピングセンター、その中でも一番駅から遠い場所にある会場までは、ダイバーシティの入口に到達してから更に3分以上かかることを覚悟しておいた方がいい。ましてや、途中でフードコートの中を通り過ぎる作りになっているもんだから、下手に食事時に急いで通り過ぎようものなら、ラーメンをトレイに乗せて席を確保しようとキョロキョロしている親子にぶつかってラーメン汁を頭からかぶる羽目になるよ(これも誇張済み)。まあ、次回からは建物の外を通って行くけどね。皆さんも是非そうしてください。

先行予約でも僕のことならどうせろくな整理番号が当たるまいと思い、今回は1000円高い2階の指定席を予約してみた。去年のジョニー・ウィンターのときみたいに、ギタリストの顔しか見えないというのもちょっと冴えないからね。なので、今回は開場時刻(なんと、夕方4時)のことは気にせず、開演時刻5時の20分ぐらい前に会場に着くように出かけた。

500円のコインを生ビールと交換し、2階席へ。先行予約でも僕のことだからやっぱり5列しかないのに4列目だったりしたけど、ほぼ中央付近の席で、しかも結構前後に傾斜がついているから、ステージまではかなりの距離があるけど、まあ見やすいかな。僕の前の数列には誰も座ってないし。このまま誰もこなければいいのに。

と思っていたら、開演5分前になって、僕の真ん前に左右のお客さんよりも明らかに20センチは座高の高い、しかもやたらと頭部の大きい男が座った。ステージ半分見えないよ… なんてついてないんだ。1万円の席でこれかよ。

しょうがないので左に片寄りながら、少なくともサニーの立つステージ左半分だけは観ようとしていると、開演時刻を少し過ぎたあたりでメンバー登場。サニーがステージを去るときにいつものようにざっと早口で紹介したのを聞くと、ベースはもちろんサニーとずっと一緒に演ってるデイヴィッド・ランソン(David Ranson)、ドラムスはブライアン・ブリグナック(Brian Brignac)だったようだ。結局今回僕がデイヴィッドのことを見られたのは、この登場時と、ステージを降りる時だけだったけど。

オープニングは「Z Rider」!これは盛り上がるなあ。サニーが赤いストラトキャスターを弾いてるのを見るのはこれが初めてかも(もちろん、僕が実物のサニーを見たのは、昨日の記事に書いたとおり1988年のジョン・ハイアットのライヴと、金曜日のサイン会の2回だけだから、何色のストラトキャスターを弾くところも実際には見るのはほとんど初めてのようなものなんだけどね。そういうことじゃなくて、彼がギターを弾いている写真は、大抵サンバーストのストラトか、(こちらは最近滅多に見ることがなくなったけど)同じくサンバーストのファイアバードだったから。

続いて、サニーが調弦しながら単音を弾いた音を聴いて、あ、次はあれだろうなとわかってしまった(それが何の音なのかは楽器もろくにできないし絶対音感もない僕にはわからないけど、どの曲のイントロの最初の音かはわかる。伊達に彼の音楽を聴き続けているわけじゃない)、「Native Stepson」だ。金曜のサイン会がもしインストア・ライヴだったら、最前列に陣取って、どさくさまぎれにこの曲をリクエストしようと思ってたぐらい、あるいは携帯の着信音なんてプリセットのものしか使わない僕にしては珍しく一時期この曲のアクースティック・ヴァージョン(サニーのサイトからダウンロードした)を着うたにしていたぐらいに、大好きな曲。いみじくも、昨日の記事で僕が書いたサニーの代表的な3つのインスト曲のうち2つを冒頭から立て続けに演奏。

2曲演奏したところで、挨拶。どの曲のときだったか、日本語で「コンバンハ」とか言ってたっけ。「アリガトウゴザイマス」だったかな。最初の2曲を聴いて、もしかしたら今回は新譜のコンセプトに合わせてインスト曲しか演らないのかもと一瞬思ってしまったけど、3曲目は歌入りの「Promised Land」。88年の来日時はもちろんサニーは1曲も歌ってないから、これが僕がサニーの歌声を生で聴く最初の瞬間だった。この人、いい声してるよね。

4曲目は知らない曲だった。僕にわからないサニーの曲があるなんて、軽いショック。特に説明もなく始めたから、新曲というわけでもなさそうだし。ミディアム・テンポのブルーズ曲。どっかで聴いたことあるような気がしたけど、こういう感じの頭の歌詞を二度繰り返すミディアム・テンポのブルーズ曲なんて星の数ほどあるから、わからないよ。あの曲、どのアルバムかに入ってたっけ。もし誰かわかった人がいたら、教えてください。

それ以外の曲は、もちろん全部わかった。その場で咄嗟にタイトルの出てこないものもあったけど、“あのアルバムのあの辺に入ってる曲”とかいう感じで大体記憶してメモってきた(咄嗟にタイトルが出てこないのは大体インスト曲)。セットリストは(4曲目以外)後述するので、後は印象的だったことをいくつか書こう。

印象的といえば一番印象的だったのが、サニーがさっき書いた赤いストラトと、お馴染みのサンバーストのストラトを、殆ど1-2曲ごとに取り換えていたこと。どっちもストラトキャスターだから出てくる音にそう大きな違いはないはずなんだけど、もしかしたら2本とも違う調弦してあるのかな。それとも、1曲弾いたらチューニングが狂ってくるから、一旦交換してバックステージでチューニングしてもらってたんだろうか。謎。

ほとんど動き回ることなく、胸のうんと上の方にギターを抱えるようにして、1曲たりともスライドバーを指から外すことなく(僕の位置からはっきり見えるわけもないんだけど、ときどき光を受けて反射する具合を見ると、ガラス製だったみたい)、右脚でリズムを取りながら演奏するサニー。指先とかまでよく見えないけど、右手をパーにしたりネックの方で弾いたり、あの多彩な音はああやって出してるんだなあと感激。

「新しいアルバムを出してね、それがインストゥルメンタル・アルバムなんだ。そこから1曲」と言って始めたのが「Forgotten Story」。アルバムではスティール・ドラムスのロバート・グリニッジをゲストに迎えた曲だけど、もちろんここでは3人によるストレートな演奏(でも途中のレゲエっぽいリズムはそのままで)。

「次はロックンロールいってみる?」みたいなことを言って、なんだろうと思っていたら、「The Milky Way Home」だった。こちらももちろん、アルバムではエリック・ジョンソンが弾いているパートまで一人で全部演奏。これで、昨日の記事に書いた僕が好きなサニーのインスト曲3つ全部演ってくれた。嬉しいな。

「この曲はハリケーン・カトリーナのことについて書いたんだ」と始めたのは、「Blue Tarp Blues」。歌詞読めば歌ってることはわかるんだけどなんのことだろね、と思っていたけど、そう言われて改めて歌詞読んでみたら、あ、そうかと納得。08年のアルバムでカトリーナのことを歌ってるとは思わなかったもので。

再び新譜からの「Brand New Girl」を終えた瞬間、ほとんどメドレーのように始めたのが「Uberesso」。そして、ラストは『Levee Town』の09年の再発盤ボーナスディスク収録の「Pedal To Metal」。結局、11曲中7曲がインストだったね。そういう意味では新譜のコンセプトに合わせたのかもしれないけど、肝心の『Elemental Journey』からはそのうちわずか2曲だけ。まあ、他の5曲が超悶絶的にかっこいい曲ばかりだったから僕としては何の問題もないけど。

さっき書いたようにざっとメンバーを紹介して、1時間弱の演奏を終えてあっさりとステージを去るサニー。あーあ、もう終わっちゃった。次にジョニー・ウィンターが控えてるから、アンコールはなし。ステージのセット交換が始まるが、ドラムキットは共用しているからほとんど換えるものがない。アンプを交換してギターやベースをちょっと試し弾きして、あっという間に終了。あとは、ジョニー・ウィンター用の黒い(たぶん革張りの)椅子。


それからしばらくして(確かサニー達が去ってから20分後ぐらい)、ジョニー・ウィンター・バンドの3人とカウボーイ・ハットをかぶったMCが登場。去年とまったく同じパターンだね。そして、バンドがイントロ曲(きっとまた「Intro」というタイトルなんだろう)を演奏していると、お馴染みヘッドレスのレイザーを手にしたジョニーが、腰を曲げてよぼよぼと登場。そして、イントロ曲の間は、椅子の前で立ったまま演奏(!)。まあ、2階席から見ている限りは、別に座ってても直立不動で立っててもあんまり見た目変わらないんだけどね。

殆どの曲を、曲目紹介しながら演奏していくんだけど、椅子に腰かけての最初の曲が「Hideaway」だというのを聞いて、もしかしたら今日のセットリスト、去年とまったく同じかもという疑念が頭をよぎる。まあ、去年のセトリ全部覚えてるわけじゃないし、たとえ同じであっても別に問題ないんだけどね。

続いて、「She Likes To Boogie Real Low」。やっぱり同じだ。と思っていたけど、帰ってきて去年のセトリ見てみたら、去年はこの2曲の間に「Sugar Coated Love」を演ってるね。微妙には変えてたんだ。

演奏もジョニーの歌も、去年観たときとほとんど同じ感想。曲によってはかなりヴォーカルが聴きづらいほど弱ってしまった声がやっぱり悲しい。ギターソロも、失礼ながらテクニックという意味ではサイドギタリストのポール・ネルソン(Paul Nelson)の方が冴えていたんじゃないだろうか。まあ、テクニックといっても、別にきらびやかな速弾きができることが偉いわけじゃないからね。

というわけで、去年の記事を読み返してしまったら、なんだか同じようなことばかり書いてしまいそうなので、適当に飛ばしながら書き進めよう。もうサニーのパートで散々書き散らかしたから、後半適当でもいいよね。

「マディー・ウォーターズの曲を」と言って始めた「Got My Mojo Working」や、その次に「ロックンロールを演るよ」と言って始めた(昔みたいに「ロックンローーール!!」じゃなかったのがやっぱり寂しい)「Johnny B. Goode」みたいな僕でも知ってる超有名曲から、去年の記事や直近のツアーのセトリを見ないと曲名を思い出せなかったようなマイナーなブルーズ曲まで、淡々と、でもそこはさすが腐ってもジョニー・ウィンターなのでアツくステージが進む。1階のお客さんも、サニーのときは借りてきた猫みたいだったのが、今書いた2曲のサビとかでは歌う歌う。

「Don't Take Advantage Of Me」(という曲だというのは帰ってきてセトリを見るまで思い出せなかったけど)にメドレーで続けて、いつの間にか知ってる曲になってるなあと思いながら歌詞聴いていたら、「Gimme Shelter」じゃないか。

そして、いよいよ本編ラストというところでステージ脇からスタッフが出てきてジョニーのマイクスタンドの高さを上げる。おおっ!と思っていたら、ジョニー立ち上がる(笑)。ここでまた大歓声(笑)。ラストはこれも去年と同じく「It's All Over Now」。

アンコールの拍手に応えて再度登場。メンバー3人とジョニー、そしてジョニーのお手伝いのスタッフも。ジョニーが手にしているのは、これも去年と同じく、彼のトレードマークのギブソン・ファイアバード。やっぱりそっけないデザインのレイザーよりも、この人はこっちの方が遥かに絵になるよね。

ジョニーが椅子に腰かけている間にステージ脇からもう一人現れた。サニーだ!!やった!この二人の共演が観られるなんて!しかも、僕から観やすいように、座高男を避けてジョニーの左側に立ってくれたよ!(笑)。

曲は、ジョニーの新作『Roots』から、サニー参加曲「T-Bone Shuffle」ではなく、何故かデレク・トラックスが参加していた「Dust My Bloom」(「何故か」というか、これも去年と同じということね)。本編では一切披露しなかったジョニーのスライドプレイを堪能。曲中で何度か訪れるギターソロを全部ジョニーが弾くもんだから、おいおいサニーは隣で伴奏してるだけかよ、と思い始めた矢先、ジョニーが「サニー・ランドレス!」と言ってサニーのソロへ。それも数小節とかの短いのじゃなく、たっぷりと弾き倒してくれたよ。超満足。

そこでサニーだけがステージを降り(あーあ…)、ジョニーとバンドは恒例の超高速「Highway 61 Revisited」で幕。ずっと見づらかったけど、なんだかんだ言って結構楽しめたよ。ジョニーもまだまだ元気そうでよかった(歩くときにいちいちポールに手助けしてもらわないといけないのが見ててちょっと不安になるけど)。遠くてよく見えなかったところは、明日(もう今日だ)の日比谷でじっくり観よう。

さあ帰ろうと、椅子の下に置いてあったカバンを手に取ると、なんだか湿ってる。。椅子の下を覗き込むと、隣の席の奴が飲み残したビールのカップを倒して行ってやがる。最悪。道理でさっきアンコールのときに急にビール臭くなったと思ったよ。あーあ、なんだかライヴ本体以外はどうもついてない日だったな。予想外にかなり早く終わった(まだたったの8時過ぎ)のでさっきのダイバーシティのフードコートで何か食べて帰ろうかと思ったけど、とても一人で席を確保できるような状態じゃなかったし。まあ、今日はもうこの記事をさっさと書いて、野音に備えて早いとこ寝よう。


Setlist 26 May 2012 @ Zepp DiverCity Tokyo

Sonny Landreth
1. Z Rider
2. Native Stepson
3. Promised Land
4. Cherry Ball Blues
5. Hell At Home
6. Forgotten Story
7. The Milky Way Home
8. Blue Tarp Blues
9. Brave New Girl
10. Uberesso
11. Pedal To Metal


Johnny Winter
1. (Intro)
2. Hideaway
3. She Likes To Boogie Real Low
4. Good Morning Little School Girl
5. Got My Mojo Working
6. Johnny B. Goode
7. Black Jack
8. Tore Down
9. Lone Wolf
10. Don't Take Advantage Of Me / Gimme Shelter
11. It's All Over Now

[encore]
1. Dust My Broom w/ Sonny Landreth
2. Highway 61 Revisited
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2012年04月30日

Ron Sexsmith live in Tokyo

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派手なところは一切ないけれど、いい曲を達者なバンドの演奏に乗せて1時間ちょっと聴かせるだけ、そんな感じの実にシンプルなライヴだった。ロン・セクスミスのビルボードライヴ東京での来日公演。僕が行ったのは2日目のセカンドセット。東京での最終公演だ。

にも書いたことがあるけれど、僕は16年前に彼のデビューアルバムを買ったものの、周囲の高い評判に反してどうも今一つのめり込むことができず、その後に買ったアルバムはなんだかどれ聴いても同じ曲ばかりだなあと、中古屋に売り飛ばしていた程度の、とてもファンとは呼べないような立場だった。

それが、昨年のベストアルバムにも選んだ『Long Player Late Bloomer』を聴いて、あれ?この人ってこんなにいい曲書くんだっけと、昔からのファンにとっては今更何をというような感想を持ち、ちょうどタイミングよく来日公演が発表されたので、足を運んでみることにしたというわけ。

チケットを押さえてから、ちゃんと曲を予習しないとと思って、中古で何枚か買って聴いてみたものの、やっぱりどれ聴いても同じ曲に聴こえる(失礼)。まあ、新譜の曲はかなり聴き込んであるから、それだけでもわかればいいやと六本木に向かった。

そんないい加減なファンである僕が、どういうわけかこういう時に限ってえらくいい整理番号で、正面真ん中、ベストポジションに陣取ることができた。ステージを見渡してみると、中央のロンのマイクのところには楽器は置いてないが、その後ろにはヤマハのドラムキット。その右側に、ダンエレクトロの相変わらずふざけた形のベース(ダンエレクトロってベースなんて出してたんだね。調べたらDano 63って型だった)、更に右にはごっついアームのついたギブソンのセミアコと、これまたふざけた形の、なんだか紫色の虫みたいな12弦のエレクトリック・マンドリン(帰って調べてみたら、たぶんヴォックスのマンドギターってやつ)。そして、ステージ左側にもの凄い存在感ででんと構えているのが、スタインウェイのグランドピアノ。上にノードらしき赤いキーボードが置いてあるね。

ほぼ定刻にロンとメンバー登場。ハンチングをかぶった右端のギタリストがティム・ボヴァコンティ(Tim Bovaconti)、隣のヒゲメガネのベーシストがジェイスン・マーサー(Jason Mercer)、僕の位置からはロンが邪魔で全く見えない長髪ドラマーがドン・カー(Don Kerr)、ピアニストは妖怪人間ベムみたいな黒いハットに黒いスーツのデイヴィッド・マシスン(David Matheson)。と、かつてロンと一緒にアルバムを作ったドン以外は全く知らないメンバー名をビルボードのサイトから(どうでもいい見た目情報と共に)丸写し。ちなみに新作の制作メンバーとは全然違うんだね。

最近のアルバムジャケから推測して、いったいどんなに太ってしまっているんだろうと想像していたロン(なにしろ、この同じビルボードで目撃したマシュー・スウィートは、一連のアー写がいかに細く見せようとうまく撮られていたかを実感させられたほどの凄さだったからね)、意外に超デブというわけではなかった。なんだか一所懸命ダイエットしてるんだろうなと思わせるような涙ぐましい体型を、黒い襟のついたエンジ色の芸人みたいなジャケットと相変わらずヒラヒラしたフリルの沢山ついた水色のシャツに包んで。真上からスポットの当たったカーリーヘアは金髪かと錯覚したけど、上の写真でもわかるとおり普通に黒髪。手にしたアコギは小ぶりなテイラー。ペグからはみ出た弦をカットしてないから、6本の弦がヘッドのところでぐちゃぐちゃに絡まってる。

何も言わずに演奏を始めたオープニングは「Heart's Desire」(僕と違って全アルバムをきちんと聴き込んでいる一緒に観ていた友達が、いくつかの曲名を教えてくれた)。ティムがチロチロと弾く繊細なギターの音が心地良い。

その曲が終わって「じゃ、おやすみ!」と去ろうとするロン。あ、こういうお茶目なキャラだったんだね。「新作から何曲か演るよ」と、『Long Player Late Bloomer』の曲順通り最初の2曲を続けて。

その後も、「これは懐かしいファーストアルバムから」とか「これはセカンド『Other Songs』から」とか、比較的古いアルバムからの曲が多かったように思う。まあ、僕にとってはどれも同じ曲に聴こえるんだけど。

「また新作から何曲か。まずはアルバムのタイトルトラック」と言って「Late Bloomer」。それに続けて何も言わずに演奏したのが、僕が去年のベストアルバム10枚から1曲ずつ集めて作ったCD-Rに収録した、アルバム中一番好きな「Believe It When I See It」。ああこれは嬉しい。

10曲目でジェイスンとデイヴィッドがステージを降り、ロンとドンが並んでアコギを持って並ぶ(ドンのは4弦だったな。ベースでもなくウクレレでもなく、なんだか小ぶりなアコギ。ほんとにこの人たち不思議な楽器ばかり持ってるね)。隣でティムがマンドギターを添える。05年のセクスミス&カー名義のアルバムから「Listen」。これいい曲だね。アルバム買おう。

次の曲でさらにドンとティムがステージを降り、ロンが一人でピアノに座って1曲。ピアノもうまいね。ピアノといえば、ここで書くのが妥当なのかどうかわからないけど、デイヴィッドが弾いてもロンが弾いても、ピアノの音が本当に綺麗に聴こえる。僕にグランドピアノの音の何がわかるのかと言いたい人もいるかもしれないけど、いやほんとに、さすがスタインウェイと思わされたよ。

「次の曲はカバー」と言って始めた、アルバム『Exit Strategy Of The Soul』からの「Brandy Alexander」。誰のカバーと言ったのか聴こえなかったけど、コンサート前半からやたらと騒いでいた最上階にいたカナダ人らしき観客に向かって「君たちなら彼女のことわかるだろう」とロンが話しかけていたので、きっとカナダ人女性アーティストなんだろう。と思って、帰ってから調べてみたら(このアルバムは予習のために買っておいた)、ロンとファイスト(Feist)の共作曲だった。

9時に始まった本編は10時10分にひとまず終了(なんできっちり時刻を覚えてるかというと、この日の夜10時に発売開始となっていたジム・ボジア5月公演のチケットを押さえるべく、本編終了と同時にアンコールの拍手もせずに携帯からメールを送っていたから)。

ちょうどメールを送信したところでメンバーが再登場。「東京で最後の公演だから2曲演るよ」と、「Tell You」と、その曲が終わって間髪入れず歌い始めた、僕みたいなにわかファンにすらよくわかる、デビューアルバム1曲目「Secret Heart」で幕。「Secret Heart」では、自分でギターソロを弾いていたね。


これからまたバックカタログを全部集めなおすかというとちょっと疑問だけど、聴いてきて気に入った曲が入ったアルバムは買ってみようかなと思わされるような、いいライヴだった。アルバムカバーでもライヴ中でもいつも眉間に皺を寄せて人のことを睨んでるような三白眼のロンだけど(ひどい言い方)、アットホームなライヴは安心して聴いていられる気持ちいいものだった。ついでに、終演後に友達と行った飲み屋も、ふらっと入ったにしては中々味もよく料金も良心的だったので、今後ビルボードのときは贔屓にしてあげようかと思う。


Setlist 28 April 2012 (second set) @ Billboard Live Tokyo

1. Heart's Desire
2. Get In Line
3. The Reason Why
4. Wastin' Time
5. Late Bloomer
6. Believe It When I See It
7. Nothing Good
8. Gold In Them Hills
9. Nowadays
10. Listen
11. Fallen
12. Up The Road
13. Imaginary Friends
14. All In Good Time
15. Love Shines
16. Brandy Alexander
17. How On Earth
18. It Never Fails

Encore
1. Tell You
2. Secret Heart
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2012年04月03日

Gary Jules & Jim Bianco live in Tokyo

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ジム・ボジアのライヴに行って以来、カフェ・ゴーティからライヴのお誘いメールが沢山舞い込んでくるようになった。そのほとんどがよく知らないアーティストばかりだ。その巧みな誘い文句や山ほど貼り付けてくれているビデオを観て、いつも行ってみたいなあとは思ってるんだけど、なにしろ鎌倉はうちからぶらっと出かけられるような場所じゃないし、特に今年になってからは殆ど隔週でいろんなライヴに出かけているから、よく知らない人のライヴにまで足を運ぶほど先立つものが許してくれる状況ではなかった。

今日これから書くゲイリー・ジュールズとジム・ビアンコも、ファウンテンズ・オヴ・ウェインの翌日ということもあり、気になっていながらもスルーしてしまうつもりでいた。ところが、別件でゴーティの松本さんに連絡したとき、「グレン・ティルブルックとか好きならゲイリー絶対気に入るから騙されたと思ってまあ来てみろや」という趣旨のメールをもう少し丁寧な物言いでいただき、そこまで言うならと、まず試しにゲイリーのファースト・アルバム『Greeting From The Side』を某通販サイトの某市場場所で捨て値同然で購入。数回通して聴いた時点で、僕はツアー最終日となる下北沢La Canaでのチケット申し込みメールを送っていた。だってこんなの聴き逃すなんてありえないでしょう。申し込みメールの返信で松本さん曰く「ライヴはもっといいですよ」。わかりましたよ、騙されたと思いながら行ってみましょう。

ということで当日。ぎりぎりに申し込んだ僕は前売りチケットのお客さんが全員入ってから入場という話だったので、急いでもしょうがないと開場時刻の7時を少し過ぎるまで会場のはす向かいの某レコファンで時間潰し。ところが、買ったばかりのコステロのライヴ盤をカバンにしまいながら会場に辿り着くと、チケットを持ったお客さんはほとんどおらず、思いがけずすっと入場することができた。おかげでかなりいい位置で観ることができたよ(アーティストと興行主の名誉のために書いておくと、チケットを持ったお客さんは皆さん余裕を持って来られたようで、僕が入場した後にどんどん入ってきた観客で会場はほぼ満員だった)。

下北に来たときはいつも前を通っているLa Cana(なにしろレコファンの前だから)、中に入るのは初めてだ。ちょっと薄暗くて雰囲気いい場所だね。ステージは木箱のようなものを並べて高くしてあるから、背の高いアーティストなら低くなった天井に頭をぶつけそうなくらい。観客席にはあちこちから集めてきたような様々な種類の椅子。

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ステージの上にはギターが2本とピアノ。ギターは両方ともクラシック・ギターだね。近くでまじまじ見たわけじゃないけど、たぶん両方とも張ってあるのはナイロン弦かな。こういうフォーク系の音楽を演っていてクラシック・ギターを使う人は初めて観るよ。


まずは、一週間の日本ツアーで覚えたであろう「コンバンワ」とかの簡単な日本語であいさつしながら、山高帽をかぶったジム・ビアンコが登場。上の写真では左側にある、ちょっとボディが(色も厚さも)薄い方のギターを手に取ると、ピックアップマイクみたいなのをサウンドホールの下に取り付ける。あれ?ストラップしないんだね。演奏中とかに見ていたら、そのマイクが首にかけている細い紐につながっているように見えたけど、別にそれで支えているというわけではなさそうなので、基本的にはガタイのでかいジムがストラップもなしで文字通りギターを抱えて歌うという図。

繊細なギターに野太い声。まず1曲目はしっとりとしたバラッドで開始。実は、ゲイリーのCDと前後してジムのも注文していたんだけど、残念ながらこの当日まで入手できず(ライヴから帰ったら届いていた)、ユーチューブとかで何曲か観た以外には彼の曲はほとんど予習できていなかった。というわけで曲名はほとんどわからないのでご容赦のほど。

一転してブルージーなギタープレイの2曲目「Downtown」。わあ、クラシックギターをこんな風に弾くんだ。かっこいい。なんでこの曲はタイトルがわかるかというと、ライヴ終了後にその場で買ったCDにサインをもらっていたときにジムが「このアルバムからは今日2曲演ったよ。これとこれ」と言うから、「あ、この『Downtown』ってのは1曲目だっけ?」と聞いたら「いや、2曲目」という会話があったので。間違えはしたけど、一応、よく覚えてるな、という顔で見てはくれていたよ。

曲間のMCも日本人にわかりやすいようにゆっくり喋ってくれるから、ただでさえ野太い地声がまるで回転数を落としたレコードみたいに聞こえる。「日本を離れるのは寂しいよ」とかそういう話題だから、たぶんあそこまでゆっくりしゃべってくれなくてもみんなわかると思うんだけど。「Devilは日本語でなんて言うの?」と訊いてから始めた曲は、ディスコグラフィーを見て推測すると「To Hell With The Devil」というやつかな。

「Elevator Operator」という曲の前で松本さんをステージに呼び、突然「通訳をやれ」と。あっけにとられながらも歌詞を一言一言全部訳す律儀な松本さん。ジムは途中で自分の歌詞を思い出せなくなり、「ちょっと待って」と後ろを向いて、早送りでギターのコードを押さえながら小声で歌って歌詞の続きを思い出す。パートタイムの秘書をやっている彼女がほんとはエレベーターガールになりたいと思っていて、その他にもエルヴィスのそっくりさんとかワニ皮の靴職人のアシスタントとか変な職業に就きたいという、ヘンテコな歌詞がおかげでよくわかったよ(笑)

その次の、長い歌詞を早口で歌う曲を終えた後、「ケイジ(松本さん)、これも訳してくれ」と冗談めかして言うジム。ははは、最初始まったときはジムも僕ら観客もどことなく固い感じだったけど、もうこの頃にはこういうジョークがポンポン出るようになってきたね。

何曲目だか忘れたけど、ゲイリー・ジュールズを呼び、自分はピアノに移動して、ギターとコーラスを任せる。出てきたゲイリーを見てびっくり。僕は彼の姿は98年のファーストのジャケぐらいでしか見たことなかったから、真っ白な髭面に野球帽をかぶった小柄な彼を、失礼ながらどこのお爺さんが出てきたのかと思ってしまった。一瞬J.J.ケールかと。そうか、そういえばあれは14年も前の写真なんだ。

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Gary Jules 『Greeting From The Side』

野太いジムの声に重なる、繊細なゲイリーのハーモニー。うわ、これすごい。ぞくっとするね。一週間にわたるツアーの最終日だから演奏も息が合ってるのは当然なんだろうけど、一旦完璧に合わせるまで一緒に練習して、その後であえてルースに崩してみせている(でも実は最後には完璧に合ってる)みたいな共演が見事。どんだけ懐が深いんだと思わされる。

ある曲で、ジムとゲイリーがそれぞれギターを持ち、観客席の後ろの方に行ったと思ったら、一人の女性客を囲んで歌い始めた。常連客(特に女性)の誕生日にアーティストがバースデイソングを捧げるというのはグレン・ティルブルックジム・ボジアのライヴで経験済みだから、きっとこの日はあのお客さんの誕生日なんだろうなと納得。演奏している曲は特にバースデイソングとかではない感じだけど。なんだか照れくさそうにしているけど、さぞかし嬉しいだろうね、こういうのは。

第一部はそれ以降は基本的にはジムがピアノ、ゲイリーがギターというスタイル。第一部終了までで1時間程度。「5分か10分で次はゲイリーが一人で出てくるから」と言ってステージを降りたけど、みんなトイレ行ったりするから当然5分や10分で第二部が始まるわけもなく、僕はギネスのパイントグラスを手に席で待機。こぼれないようにゆっくり席に戻ろうと思っていたら、ゲイリーが「それは泡が落ち着いてから飲め」と。はい、わかっております、お爺さま(笑)


第二部。ゲイリーがふらっとステージに上がり、ギターのチューニングをしたかと思うと、そのまま挨拶もなくいきなり歌い始める。なんと形容すればいいんだ、この声は。さっきは“繊細”なんて書いたけど、単に細い綺麗な声というわけじゃない。ウィリー・ネルソンみたいなカントリー声になるときもあれば、マイケル・スタイプのように聞こえる瞬間もあるという、なんとも魅力的な声。僕が彼のCDを聴いて惹かれたのは、彼が書く美しい曲だけでなく、この声によるものが大きかったんだと思う。

ところで、Garyというファーストネームを僕はいつも「ギャリー」と表記している。NZに住んでいたときからネイティヴの実際の発音をカタカナ表記するとそれが一番実際に近いと思っていたからそうしていたんだけど、今回ジムが彼を呼ぶのを聞くと、「ギャリー」とも「ゲアリー」とも「ゲイリー」とも聞こえる、なんとも表現しがたい発音(もともとこもって聞こえる声だし)。というわけで、今回はあまり知名度のない彼の名前をネット上で少しでも連呼して広めるために、あえて一番一般的な「ゲイリー」表記とすることにした。

2曲目は、ニール・ヤングの「After The Gold Rush」のカバー。まるでニール本人かという(いや、あの不安定な音程のニールよりはよっぽどしっかりした)繊細ながらも芯の通った綺麗な歌声。これは沁みるね。

「24年前、僕は東京に住んでいたんだ。9か月ほどの間、好きな女の子がいてね。19歳の頃だったな」とゲイリー。え、なに、今43歳なの?その見かけで(失礼)僕より年下なの?(と、とても若いとはいえない見かけの僕があえて言わせてもらいますが)。「六本木に住んでいたんだけど、1か月の家賃が僕の年収よりも高かったんだ」だって。そりゃ、バブル絶頂期の六本木なんてそうだろう。その彼女と別れたときに書いたという曲を、この24年間で初めて披露。ライヴ終了後にタイトルを訊いたら、しばらく考えたあとで「Fear Of Falling」だと教えてくれた(単に出だしの歌詞がそうだっただけで、本当はタイトルなんて付けてなかったのかもしれないけど)。

「JB、ピアノ頼むよ」とジムを呼び出すゲイリー。ジムのことそう呼んでるんだね。ここから後半は再びジムがピアノ、ゲイリーがギターという布陣でしばらく進む。さっきと違ってジムのコーラスはあまりないけど、どこまでが即興か区別のつかない奔放なピアノとギターの絡みが最高。ゲイリーのヴォーカルはピンでも十分以上に聴き応えあるしね。

ボブ・ディランの「The Times They Are A-Changin'」をぶっきらぼうに歌いだすゲイリー。冗談なのか本気なのか判別つかない。セカンドヴァースあたりでちょっと吹き出しそうになったのはやっぱり冗談のつもりだったのか?ジムも「お前なにやってんだ?」てな顔でピアノも弾かずに頬杖ついてゲイリーの顔を見上げている。すると、その曲をふっと終え、続けて「Ghosts」へ。名曲満載のファーストの中でも僕の大のお気に入りだ。さっきの似非ディランのときとは声に宿るオーラが違うよ。崇高なピアノの音とも相まって、ちょっと涙出そうになる。

どの曲だったか忘れたけど、ある曲を終えた瞬間にカポの位置を1フレット内側にずらし、続けて「Falling Awake」を弾き始めた。うまいねーと思っていたら、どうやらチューニングがずれていたみたいで、曲の途中で咄嗟にエフェクターを踏んでオフにし、歌詞の語尾を「えーーーーー」とか言って延々引っ張りながらチューニング。あーあ、せっかくかっこよかったのに(笑)。でも、そういうのまで一つの見どころにできるほどの芸の細かさ。やっぱりうまいなあ。そして、この曲からは確かメドレーでボブ・マーリーの「No Woman No Cry」を続ける。

あんなに綺麗な曲を書ける人が、それでもこんなに沢山のカバー曲を挿入してくるというのは、観客が知っているであろう曲を披露するためという理由に加えて、ゲイリー自身が音楽ファンとしてそういう曲を演奏するのが楽しいからじゃないのかな。だって、繰り出してくる曲がことごとく、僕とそう大きく年齢の変わらない彼がおそらく青春時代にリアルタイムで聴いていたような曲ばかりだから。

映画の挿入曲としてヒットしたという、ティアーズ・フォー・フィアーズの「Mad World」もその一つ。ファーストに続けて事前に購入した04年の『Trading Snakeoil For Wolftickets』に収録されているそのカバーは、ティアーズ・フォー・フィアーズのオリジナルよりも優れていると思うし、この夜に披露してくれたヴァージョンはそれに輪をかけて素晴らしいものだった。

オリジナルよりも思いっきりスローにアレンジされたチープ・トリックの「I Want You To Want Me」もそう。なにか他の曲にまたしてもメドレー形式でくっつけて歌われたドン・マクリーンの「American Pie」も同じく。この曲は24年前に六本木のバーで弾き語りをしていたときにいつも歌わされていたって言ってたっけ。

「Barstool」のコーラス部分を観客に練習させてから一緒に歌ったのも楽しかったな。これは、僕の持ってる2枚のアルバム両方に収録されている、きっと彼にとってもお気に入りの一曲(松本さんが物販で他のお客さんに話しているのを立ち聞きしたところによると、『Trading〜』が再発されたときに最収録されたらしい)。

第二部も約1時間ほどで、最後の曲はジムもギターに替えて二人で並んで歌って終了。素直にステージを降りて観客席を通り抜けてバーの方に消えるジムと、何故かステージわきの物置みたいなところに入っていくゲイリー。アンコールの拍手を受けて、ゲイリー物置から再登場(笑)

松本さんに感謝の言葉を述べながら、レオ・セイヤーの「When I Need You」をおどけて歌う二人。「今のはジョーク。これがアンコールの曲」と言って演奏し始めたのがビートルズの「Two Of Us」。途中でハモるのを失敗して最初からやり直し。オリジナルはもちろん、映画『I Am Sam』のサントラのエイミー・マン&マイケル・ペンのヴァージョンもニール&リアム・フィンのヴァージョンもどれも好きだけど、この二人の全く異なる声質でのハモリも最高だ。願わくは、グレン&クリスのヴァージョンなんかも聴いてみたいな(突然妄想開始)。

もう一度ステージを降り、もう一度バックステージと物置から現れる二人(笑)。「これが本当に最後だからね」と、再度チープ・トリックの今度は「Surrender」。観客大合唱。ああもう、みんな(多かれ少なかれ)同じ世代なんだから。


物販の様子を見ていると、かなりの数のお客さんがCDを買っていく。まあ、二人ともどこのCD屋でも手軽に入手可能というわけじゃないからね(少なくとも僕は、毎週のように通い詰めている某あっちのレコ屋や某こっちのCD屋で彼らのCDを見かけたことがない)。それに、あの生演奏を聴いた後なら、誰もがCDを買って帰って追体験したいと思わずにはいられないだろう。

面白かったのが、どのお客さんも松本さんにどのCDがお勧めかと聞いて、松本さんが「ゲイリーなら1曲しか演らなかった新譜じゃなくてこっち(一つ前のアルバム)」と勧めていたこと。新譜売りたくないの?(笑)。「ジムの最新作には歌詞を書いたマグネットが入っていて、切り離して遊べるんですよ」とか。

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僕が買ったジム・ビアンコの2枚のCD。左側が、ブートかと思うような白地に表面スタンプ、裏面ステッカーという簡素な造りのライヴ盤。収録されている曲から推測して最新作に前後して出たものかと思い、サインをもらいがてらジムに訊いてみたら、去年出た新作『Loudmouth』とほぼ同時期の録音だそうだ。右側は、数年前の来日時に松本さんが作った(?)8曲入り『Steady』。こちらも、ブートレグでも最近もう少しましに作るだろうというような(笑)お手製感満載なペラジャケ。最初の方に書いた「Downtown」はこのCDに収録。

観客からサイン攻めにあっているゲイリーに比べて比較的ヒマそうに座っているジムに話しかける。もう5回目の来日だって?来年もまた来る?「来年はぜひバンドで来たいね。普段アメリカではバンド編成で回ってるんだ」。「このオレンジ色のジャケのはもうあまり売ってない。何年か前に日本に来たときの来日記念盤だ。レアだけど、この中から今日は2曲も演奏したよ」等々。

僕の後ろでサインを待っている女性ファンに気づいて場所を代わる。『Loudmouth』からマグネットを取り出し、「こうやって遊ぶんだ」と、マグネットを次々に切り離し、ジャケに単語を置いて教えるジム。なるほど、そういうマグネットか。でもあのお客さん、持って帰るときにピース無くさなければいいけど。

あ、そういえば、あの二人で取り囲んで歌った女性客は誰だったの?と訊くと、なんと「いや、実はよく知らないんだ。別に誕生日でもないと思うよ。ゲイリーが率先して歩いていって、ああいうことになったんだけど、悪いことしたかな(笑)」だって。。どうりで照れくさそうにしてるわけだよ(笑)

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持参した『Trading〜』のジャケにサインをもらい(会場で売ってたのはデジパックだったな。ちょっと残念)、ゲイリーに薬指の刺青を見せてもらって同じポーズで写真を撮らせてもらう。

ゲイリーともしばし話す。「次に来るときは息子と一緒に来たいと思ってる。8歳になるんだ」。いくら「バンドで来る?またジムと一緒に来る?」と質問しても「息子と一緒に」と答えるゲイリー。子煩悩だね。次の来日(来年?)までには新作をリリースする予定だとのこと。それまでは、今回会場で全部揃えたバックカタログを聴いて予習しながら、楽しみに待っていよう。


さて、時刻も11時に近づき、お客さんは一人また一人といなくなる。でも、ライヴ終了後にサインをもらったりアーティスト本人とダラダラ喋りながらいつまでも会場に居座るのが僕らグレンヘッズの常(笑)。この日も、もう他のお客さんがほぼ居なくなった後、ジムは赤ワインを飲みながらおくつろぎモード、ゲイリーはまだ僕らと話していたところ、松本さんがゲイリーに「この人たち、グレン・ティルブルックのファンだよ」と言ったら、なんとゲイリーがギターを持ってきて、その場で「Pulling Mussels」を弾き始めた。

歌詞はあちこちうろ覚えで鼻歌みたいになったけど、そこは僕らが一緒に歌ってそれなりにフォロー。どうせワンコーラス程度だろうと思いきや、間奏も入れてちゃんと最後まで歌いきってくれた。あの難しいギターソロも途中までちゃんと弾いてくれたし(「そのソロは難しいぞ」とくつろぎながら茶々を入れるジム。でも偉そうにふんぞり返りながらも一緒に歌う)。それにしても、なんであんなの練習もせずに即興で弾けるんだ?すごいよゲイリー。

わずか限定3名向けの超スペシャル・アンコール。しつこく居座っていた甲斐があったよ。松本さん、ありがとう。おかげさまで、ただでさえよかったライヴが本当に特別なものになりましたよ。そしてなによりも、こんな素敵なライヴにしつこく(笑)誘ってくれてありがとう。これでまたCDを全部集めないといけないアーティストが増えてしまった(ゲイリーのはとりあえず揃ったけど)。


ライヴ2日後の今日、東京は暴風雨。本当は一日中会議が詰まっていたんだけど、午後3時頃には夕方にかけて首都圏の交通網がマヒするからと、会社から退去命令が出た。おかげで、週末まで書けないかと諦めていたこの記事も、まだ記憶が新鮮なうちに書き終えることができたよ。きっと、僕の音楽の神様が、友達の雷様みたいな奴(イメージ:往年の高木ブー)に言って天候を調整してくれたに違いない。

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2012年03月26日

Radical Face & Miaou live in Tokyo

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今回のラディカル・フェイスのツアー、僕は東京初日にあたる3月23日(金)の池袋の分しか予約していなくて、最終日の土曜日はぎりぎり直前になるまで行けるかどうか不確かだった。今、日曜日の夜に少し濃い目のハイボールで喉を湿しながら、この週末の記憶を洗いざらいぶちまけるべく準備しているところなんだけど、まず思うのは、最終日も行くことにして本当によかったということ。あやうくとんでもないものを見逃してしまうところだった。

最終日は、というか23日の池袋を除く今回のツアーは、ラディカル・フェイスとミャオウ(miaou)とのジョイントで、前座としてわざわざ大阪からウォーター・ファイ(water fai)という女子バンドが参加。場所は、僕にとってはタマス・ウェルズを最初に観た、懐かしの渋谷O-nest。いつもどおりまず6階に上がり、開場時間まで待機。さすがに3バンド共演だけあって、物販の量が前日とは桁違い。終演後の混雑を予想して、まずラディカル・フェイスの2枚のLPを購入。

時間通りに5階の会場に降り、500円の薄いハイボールで喉を湿しながら開演を待つ。開演時間を10分ほど押して出てきたのは、お揃いの白い衣装を着た5人組。前座のことまであれこれ書いてるときりがないけど、見た目からはちょっと想像つかないような硬派な音。ほとんどインストで、時折変拍子を交えたり、フリーキーなギターソロ(?)が入ったり、なかなか面白い。新作を一週間前に出したばかりで、4月28日にはまたこの同じ会場でレコ発ライヴを演りに来るということだったんだけど、残念ながらさっき調べたら僕その日はもう別件が入ってしまってるよ。次回に期待、ということで。


30分以上のたっぷりとした前座を堪能した後、セットチェンジ。ステージ最前列に左から小さいキーボード、小さい鉄琴、大きい鉄琴、大きいキーボードと、まるでバリケードでも築くように機材を並べるという変わった編成なので、セットチェンジにも結構時間がかかる。ドラムキットや鉄琴のあちこちにチェブラーシカのぬいぐるみが置いてあるぞ。

予習のために、ラディカル・フェイスがミャオウと一緒に録音した「Lost Souls」のビデオはユーチューブで何度も観たけど、このバンド自体にはそれほど興味を持っていなかった。わざわざ事前にCDを買うほどでもないと思っていたし、失礼な言い方をすると、僕にとってはラディカル・フェイスのライヴの2組目の前座みたいなものだと思っていた。

なんていう気持ちも、4人のメンバーが登場して、プログラミングされた不思議なサウンドに鉄琴のキンコンという気持ちいい音がかぶさるオープニングの曲が鳴り響いた瞬間に吹っ飛んでしまった。すごいよ、このバンド。とにかく曲がいいし、音のセンスも特筆もの。ベースの女の子が咄嗟にマレットを持ってキンコンと叩き、ベースの入るパートでそれを床に落としてブンブンとうなるベースに戻るとか、曲の頭でドラマーがステージ前方の鉄琴を叩き、急いでドラムキットに戻るとか、とにかく皆さん忙しそう(笑)。いや、かっこいいよ、マジで。最初見たときはリッケンバッカーのパチもんかと思ったあのベース、ギブソンのリッパーっていうんだね。いい音。覚えとこう。

別に日本のバンドを見下すつもりはないけれど、この音は立派にインターナショナルで通用するよ。前座だなんて思ってごめん。帰りにCD買って帰ろう(ライヴに来て初めて音を聴いて気に入ったからその場でCDを買うなんて、実は僕にとっては結構珍しい話。こう見えて見境なく買ってるわけではないのです)。

ミャオウのパートの最後、さあいよいよ噂に聞いていたラディカル・フェイスとの共演。この瞬間がこの夜の、というよりも今回のツアーのハイライトになるであろうというのは、ツアー中のリリコのブログや一本道さんのツイートで散々喧伝されてきたからね。心して観よう。

結論:涙こそ出なかったものの、こんなに美しい空間が他にあるかと思われるような、至福の10分間だった(本当は何分演ったのか知らないけど)。あのゆったりとした静かなイントロに導かれ、ベンがいつものようにそっと目を閉じてファルセットでハミングを始めた瞬間、二夜連続になってしまったけれど、この日も観に来ることにして本当によかったと思った。これを聴き逃すなんてありえない(とか書いて、昨日の記事に「行きたかった」と早速コメントを入れてくださったxiaoさんの神経を逆撫ですることが本意ではないんだけど)。


この夜のクライマックスは早々に訪れてしまったけれど、もちろんまだ終わりじゃない。ステージから沢山の鉄琴が撤去され、前日のピアノに変わってノードのキーボードがステージ前方に一つと、最初のウォーター・ファイのときからずっとそこにあるドラムキット(タムが一つ取り外されたのはこの時だっけ、それともミャオウの前?)、ずっとシンプルなセッティングになった。あのnestのステージが広く見えるよ。

ラディカル・フェイスの3人がステージに登場したのはもう9時をずいぶん回った頃だったかな。6時半開場なんて、今日はもしかしたら終わったら飲みに行けるぐらい早く終わるかもと思っていたけど、これは長丁場になるぞ。もちろん、前日ほどのフルセットでは演らないだろうことはわかっているけれど。

ベンの前にはヴォーカル・マイクが2本。こちらから見て左側のが通常のヴォーカル用で、右側がコーラスのパートを歌うとき用みたい。前日はTシャツ1枚だったけど、今日はその上にもう1枚チェックのシャツを着てきたね。前の日の方が寒かったのに。

ジャックがドラムス、ジェレマイアがキーボードに着く。ベンが「最初の曲は『A Pound Of Flesh』」と紹介してスタート。実際には、アルバムでその曲につながっている「Names」から始めたから、ここでいきなり『The Roots』オープニングの2曲を演奏。これを聴きながら思ったんだけど、昨日のブログに「Names」を演奏したと書いたのは間違い。演ってないよ、これ。というわけで、あとで消しておきます。

前日よりも若干尺の短かった(かつ、未発表曲とか演らなかった)この日は、ちゃんとセットリストを覚えたはず。2曲目(さっきのを1曲と計算すると)は、前日のバンドセットでのオープニングと同様「Wrapped In Piano Strings」。曲前の説明は前日よりも短めかな。今日は持ち時間が短いから急ぎ気味なのかも(そういえば、メモ用紙を見ながら「えーと、どの曲にしようかな」という時間もずっと短縮されていた気がする)。

前日の“クワイエット・ナイト”はよほど遠慮しながら演奏していたんだろうというのが容易に想像できるほど、この夜の演奏、特にベンのそれは実に活き活きとしていた。あんな陰鬱な曲を書いていながら、ディストーションを効かせて大音量でギターをかき鳴らすのが好きなんだね。

といっても、別にこの日の演奏が雑だったわけじゃない。繊細なアルペジオは冴えわたっていたし、前日ほど頻繁に楽器変更をしなかったせいか、ジャックとジェレマイアの演奏も実に安定していた。そういう意味では、演奏的にも、コンパクトでタイトなセットリストにしても、僕は前日よりもこの日が遥かによかったと思う。もちろん、前日の素晴らしい演奏を貶める気は一切ないけれど、やはりこの長い日本ツアーの最終日ということで3人とも気合が入っていたのかな。

「Winter Is Coming」を演奏する前に、前日にも言っていた「ジャックがこの曲を台無しにしてしまうかも」というのを今日も言ってから演奏したけど、前日にも増して完璧な演奏。少なくとも僕はジャックがこの曲を台無しにしたのを一度も聴いていないよ。曲が始まる前にベンが「うまくいったらあれをやろう」と言ってた“ベリーハイファイブ”を見せてもらったし(見ていない人のために解説:スイーツ好きの二人がシャツをたくし上げて、臨月かと思うような二つの大きなお腹をぶつけ合うという光景は、ジャックが演奏を失敗していたら見られなかったはずの貴重な映像)。

僕の大好きな曲の一つである「Severus And Stone」とか「Always Gold」(もちろんこちらも大好きな曲の一つ)で、ジェレマイアがストラトキャスターのアームを使って幽霊の音を出す。「Always Gold」の間奏のときはジャックもドラムを使ってお化けの音で応答。アルバムのヴァージョンとは全然違うけど、いいね、あれ。

先ほどの「Lost Souls」のお返しのつもりか、本編最後の「Welcome Home」でミャオウのメンバーをステージに呼んでコーラスを任せる(インパートメントのsinさんも呼ばれて引っ張られてたけど、断固として出て行かなかったね・笑)。前日と同様、「曲を知ってたら一緒にコーラスをお願い。知らなくても叫んでいればいいから。もっとアメリカ人みたいに」と言い、曲に入る前に2度ほど観客に練習させる。「声が小さい、もう一度」とか言って。僕はもう二日目だから慣れたけど、これがあの死人の歌ばかり歌ってるラディカル・フェイスのコンサートだとは(笑)

アンコールの「Glory」は素敵だった。前日のこの曲の演奏もよかったけど、これが本当に今回の日本での演奏の最後だとわかっていたからか、実に素晴らしい演奏と歌を聴かせてくれた。そして、アンコールのラストは前日同様、ロビンフッドの曲のメドレーだったんだけど、

ロビンフッドの曲だと、そこまで説明したところでベンがステージ際にいる僕の方に向かって、「ごめん、『Mountains』は練習したんだけど、うまくいかなかったんだ」と、わざわざ断ってくれたんだ。びっくりした。そんな前日のリクエストを覚えていてくれたばかりか、一応は練習していてくれただなんて。そして、そんなことをわざわざ観客席にいる僕に言ってくれるなんて。

ロビンフッドの曲では、前日同様メンバーの2人がマラカスとタンバリンを持ってステージを歩き回る。ジャックに至っては曲が始まる前からステージを降りて観客席でスタンバイ。最前列にいた僕からはよく見えなかったけど、曲の間中、観客席を動き回っていたみたい(ジェレマイアも追って観客席に乱入)。

そういえば、どこで出たジョークだか忘れたけど、前日にジェレマイアの口髭をフレディ・マーキュリー風に整えてあげたらしく、しきりにそのことを言いながら「I Want To Break Free」を歌ったりしてたね。アンコールのときに観客席から「Never Ending Story!」って声が上がったらその曲を歌ったり。この人って、普段もっと暗い曲ばかり聴いてるのかと思いきや、こんなヒット曲ばかりよく知ってるよね。


ライヴ終了が確か10時40分ぐらいだったかな。ウォーター・ファイが始まったのが7時10分過ぎだったから、そこから数えても3時間半。入場した時点からだと実際には4時間ぐらい立ちっぱなしだった。どうりで腰も痛くなるわけだ。ここから、再度6階に戻って物販&サイン会&雑談会タイムの開始。

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まずは、2枚のLPにサインをもらう。『The Family Tree: The Roots』を、僕の去年のベストアルバムだと言ったら、「これを年間ベストアルバムに選んでくれてありがとう」とメッセージを書いてくれた。ちなみに、『Ghost』のジャケットの人物はベン本人だそうで、更に言うと、彼が屋根に座っている建物は、このアルバムが録音された場所だとのこと。

概ねファンに囲まれてサインや写真をせがまれていたベンだけど、暇になる瞬間が時折訪れるようで、そのあたりをうろうろしていた僕と何度も話してくれた。以下、ラディカル・フェイスよもやま話。

『The Roots』に続く『The Family Tree』第二作のレコーディングにはすでに取りかかっていて、おそらく来年のリリースになるとのこと。さらに第三作目はその翌年の2014年になる予定なので、そもそもこのプロジェクトを考え始めた2007年から数えると、7年越しのプロジェクトになるそうだ(もともとは3年ぐらいで終わらせるつもりだったとのこと)。

『The Roots』のリリース直前に『The Bastards: Volume One』がリリースされたように、今後リリースされる2枚のアルバムの前にはそれぞれ未発表曲(というか、その2枚のアルバムからは惜しくも漏れてしまった曲たち)を収録したEPが発表されるそうだ。そして、この壮大なプロジェクトが完成した暁には、3枚のアルバムと3枚のEPをすべて収録した限定生産の本をリリースすることも考えているらしい。

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前日の池袋ミュージック・オルグでの2曲目、“まだ録音していない新曲”というのは、次作『The Branches』に収録される予定の「Mute」というタイトルだそうだ。もっとも、「僕はとても沢山の曲を書いては録音して、最終的にアルバムに収録されるのはその内のほんの一部だから、最後までわからないけどね」とのこと。

ちなみに、前日アンコールの1曲目で演奏されたのは、もともと『The Roots』のシークレットトラックとして彼のウェブサイトに隠されたヒントを頼りにダウンロードできた(今回会場限定で発売されたCD-Rにも収録されているから、そんな面倒な手段は取らなくて済んだ・笑)曲、「Bishop's Song」。

この日の午前中に渋谷の某巨大中古レコード店でLPを漁っていた彼(「12枚買って7000円!」と自慢する姿が他人とは思えなかった・笑)に、「何を買ったの?」と聞いてみたら、デイヴィッド・ボウイの『Space Oddity』とか、キュアの『Boys Don't Cry』とか、サイモン&ガーファンクルの『Bridge Over Troubled Water』とか、ラディカル・フェイスがそんなの聴くのかというようなものばかり(いや、別にいいんだけど、もっとマイナーなのを想像していたものだから)。しかも、そのほとんどは、エレクトリック・プレジデントの相棒であるアレックスへのお土産だそうだ。帯付きの日本盤が珍しいからだって。

そうそう、ベン・クーパーの実物を最初に見たときから、身長といい髪型といい(ここ数週間僕も伸ばしている)髭といい、きっと傍から見たら僕らそっくりに違いないぞと思っていたんだけど、一緒に写真を撮ってもらったらこのとおり。

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ミャオウのCDもゲット。メンバー4人(サイドギタリストはサポートだそうで、正式メンバーはMCもしていた方のギタリストと、ベースとドラムスの二人の女性の計3人)のサインと、ゲスト参加しているベン・クーパーのサインももらう。この5人が一同に会することなんてこの先あるかどうかわからないからね、貴重なものを手に入れたよ。ライヴがあれだけよかったから、このCDもちゃんと聴き込もう。

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ジェレマイアとジャックにも、チケットの半券にサインをもらう。ラディカル・フェイスはライヴのたびにメンバーを変えるという話を聞いていたから、ジェレマイアとベンに次にもし来日することがあったら別のメンバーなのかな?と聞いてみたら(そんなこと本人の前で訊くなよと今さらながら自分でも思うけど)、ジャクソンヴィルのミュージックシーンはとても小さなもので、その時々で集まれるメンバーが集まるから、次回も彼らかもしれないし、そうでないかもしれない、とのこと。たとえ次回の来日メンバーが彼らでなくても、それは別に彼らがクビになったとかそういう話ではないんだって。なんかちょっと安心。

ジャックにサインをもらいに行ったら、彼も「『Mountains』できなくて悪かったね」と。彼とは前日話してないのに、なんでそんなの知ってるんだろう。ほんとに3人で練習してくれたんだね、とまたちょっと感動。「あの曲はコーラスが必要だから」と言うから、「僕できるよ」と答えると、「じゃあ次回はスレイベル持ってくるよ」とジャック。彼はずっと冗談ばかり言ってたね。面白いやつ。

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ベンとレコード談義していたときに、いいレコ屋を知らないか?という話になって、翌日安レコの買える店に一緒に行くことになった。というわけで、今日(長々と書き続けていたせいでもう昨日になってしまったけど)は楽しい一日を過ごさせてもらった。オフ日のことまで事細かに書くのは気が引けるから詳細は割愛するけど。

別れるときに、「来年にでもまた来てよ。楽しみにしてるから」と言ったら、「うん、新作と一緒にね」と言ってくれたベン。ほんとに楽しみにしてるからね。僕の2013年と2014年の年間ベスト・アルバムの座は空けて待ってるから。

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Setlist 24 March 2012 @ Shibuya O-nest

1. Names
2. A Pound Of Flesh
3. Wrapped In Piano Strings
4. Black Eyes
5. The Moon Is Down
6. Doorways
7. Ghost Town
8. Severus And Stone
9. Winter Is Coming
10. Always Gold
11. Welcome Home

[Encore]
1. Glory
2. Love Goes On / Oo-De-Lally (?)
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2012年03月24日

Radical Face live in Tokyo

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いろんな意味で予想を裏切られたライヴだった。というか、そもそも僕はこのラディカル・フェイスことベン・クーパーという人には予想を裏切られ続けてきている気がする。

僕が彼のファースト・アルバム『Ghost』を買ったのは、08年のことだった。ジャケットとインナーに写る人物の顔の部分はどちらも加工されていて表情すらわからなかったから、よもやあの悲しげな歌声の持ち主があんなにずんぐりとした熊のような体型、ほぼ坊主頭に髭だらけの丸顔だなんて予想もしなかった。そう考えると、あのジャケに写った人物は(少なくとも今の体型の)ベンではないよね。

そして今日、霧雨の中を池袋まで出かけて観てきた動くベン・クーパー(とその仲間たち)が、あの沈鬱な曲を奏でている人たちと同一人物だとは、自分の目の前で本人たちが演奏するのを観ていても、どうにも受け入れがたい気持ちだった。

まるで、肉体を持った幽霊たちが、互いにジョークを飛ばしながら楽しげにじゃれあっているのを見るような、そんなシュールな場面を目撃したかのよう。


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池袋駅からうまく地下道を通れば、ほぼ雨に濡れずにたどり着くことのできる好立地なヴェニュー、ミュージック・オルグ。地下2階にある、かなり小さなハコだ。聞いたところによると、60人だか80人も入れば満員になるらしい。そして今日は、上の小さな写真を見ればわかるように、前売りの段階で既に60人だか80人のお客さんがここに詰めかけることになっているようだ。

開場に入ると、左の壁際にベンチシートと寄せ集めた椅子が一列に。右側には楽器が並んでるけど、ヴォーカルマイクと左側のベンチとの間はたぶん2メートルもない。どこかで見たな、こんな光景。あ、そうか、レジャー・ソサエティを観たロンドンの船だ。あのときは入場したらもうベンチは一杯だったのでほとんどマイクスタンドの隣みたいな場所に立って観たんだったけど、今回は開場一番乗り。まだ開演まで30分もあるから、ゆっくり座って待たせてもらおう。たとえ前に人が入ってきても、せいぜい自分の目の前には2-3人しか立つスペースがないからそんなに見づらいことにもならないだろう。

開演時刻の8時を少し過ぎたあたりで、サポートメンバーのジャックが登場し、置いてあったテレキャスターを抱えて歌い始めた。ベン同様、顔中を覆うような髭が生えているのは来日直後の写真で見ていたけど、なんだか口髭の先がよじったように上を向いてるぞ。ダリかお前は。

30分ほどのジャックの弾き語り(全然期待していなかったわりには結構よかった)の後、そのまま客席(というか、会場中を埋めた60人だか80人の観客)をかき分けて、ベンともう一人のサポーターのジェレマイアが登場。ジャックとジェレマイアはその辺で待機し、まずはベンがテレキャスター(熊のイラストつき)で演奏を始める。

オープニングは『Ghost』から「Along The Road」。アルバムとはずいぶん感じが違うね。ピアノでなくギターだからか。2曲目、「これはまだ録音していない新曲」というのが始まった。そういえばこの人って完璧主義者でボツ曲がやたら多いという話だよな。この時点でセットリストを記憶する努力を放棄。たしかその次が、「シニード・オコーナーのカバー。ほんとはプリンスの曲だけど有名にしたのはシニード。知ってたら一緒に歌ってもいいよ。ただし、オリジナルよりずっとスローで、ずっと憂鬱なバージョンだから」と冗談交じりに紹介した「Nothing Compares 2 U」。

ここでサポートの2名が配置につく。たしか最初はジャックがドラムスで、ジェレマイアがピアノだったかな。この後もこの二人は曲ごとにどんどん楽器を交換しながら演奏する。器用だね。ジャックがドラムス、ピアノ、パーカッション(タンバリンとかマラカスとか)。ジェレマイアがピアノを弾きながらピアニカを吹いたり、ステージ右側に置いてあったストラトを弾いたり(確か1曲ドラムも叩いたっけ?)。

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3人編成になってからは、ほとんどが『Ghost』と『Family Tree: The Roots』からの曲だった。最初が「Wrapped In Piano Strings」だったかな。でも後は曲順覚えてないや。演奏したことを覚えている曲を順不同で書き記すと、

ファーストから、「Welcome Home」、「Glory」、「Wrapped In Piano Strings」、「Along The Road」、「Winter Is Coming」、「Homesick」。

セカンドから、「Names」、「Black Eyes」、「Severus And Stone」、「The Moon Is Down」、「Ghost Town」、「Always Gold」。

セットリストを決めていないようで、ベンは前の曲が終わるたびにポケットから小さなメモ用紙を取り出し、おそらくそこに書いてある演奏候補曲のリストを一回一回結構長い時間をかけて検討し、ときにはメンバーに「次はXXX」と指示し、ときには何も教えずにいきなり演奏を始めたりする。

メンバーの2人もそれを楽しんでいるようで、ベンが演奏しようとしている曲を想像してそれぞれの楽器について演奏を始める。一度、ジェレマイアが「てっきりあの曲かと思ったからギターを持ったのに、そっちの曲だったか。じゃあドラムだ」とか言ってたのを覚えてる(だから彼がドラムスも担当したと思ったんだけど、でも彼がドラムを叩いてるところを見た記憶がないな。というか、僕の位置からはベン以外はほとんど見えなかったんだけどね)。

そう、最初に書いたとおり、彼らが曲間であんなに冗談を飛ばしながら笑い転げる姿を見て、僕はなんだかとてつもない違和感を抱いてしまった。決して悪い意味でなく、ああそうか、この人たちはこういう普通の陽気なアメリカンなんだなと。

それが、ひとたび曲に入ると、あたり一面ラディカル・フェイス色に染まってしまう。おぼえたての日本語で「イチ、ニ、サン、イチ、ニ、サン」とお得意の三拍子のカウントで始めるんだけど、最初のギターの一音、そこにピアノがかぶさり、ブラシで叩くドラムのフィルインが入り、ベンが目を閉じて歌うと、もうそこは違う世界。

そう、ベンは終始目を閉じて歌っていた。まるで、自分が書いた曲の中の死者たちと交信するためにはそうするしかないとでもいうように。

そういえば、どの曲の紹介だったか、「次の曲では誰も死なない」と冗談めかして言ってたね。どの曲もしっかりと内容を説明してから演奏を始めていたのも印象的。たとえ目の前の60人だか80人の日本人のほとんどが歌詞の意味をろくに理解していないかもしれなかったとしても。「次の曲は『Homesick』っていって、えーと、ホームシックになることについての曲」とか適当なのもあったけど(笑)

「次の曲は『Always Gold』」って言ったときに僕が小さな声で「やった」みたいなことを言ったら、ベンが目ざとくこっちを指さして「彼は知ってるね」とか言ってくれた。それほど、それまでどれだけ曲紹介してもほとんど反応がなかったのを気にしていたのかな。もっとイエーとかヒューとか言ってあげればよかったかな。

この日は“クワイエット・ナイト”だったそうで、できるだけギターにディストーションもかけずに静かに演奏していたようだ(それでも、時おり盛り上がることはあったけど)。それが、終盤の「Winter Is Coming」で「ちょっとだけでかい音でやろう。sin、今日は怒られないよね?」とベン(数日前にカフェで大音量で演奏して怒られたらしい)。「この曲は後半にいくにしたがってスピードが速くなるんだ。それを(ドラムスの)ジャックがいつもダメにするんだよ」なんて言いながら演奏開始。いやいや、全然ダメになんてなってなかったよ。かっこよかった。

「Welcome Home」が本編最終曲。「次の曲をもし知っていたらコーラスのところを皆で歌って。アルバムでは沢山の声が入ってるからそういう風にしたいんだ。曲を知らなくても歌詞なんてない部分だから、隣の人が歌うのを聞いて同じように叫べばいいんだよ」と言ってスタート。結果は、60人だか80人の大合唱。ああ気持ちよかった。

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ベンがギターのストラップを外し、ステージを降りようとする間にもアンコールの拍手がすでに始まっている。そのまま再度3人で楽器を持ってアンコールへ。いちばん最後の曲はディズニーのロビンフッドからの曲のメドレー(って言ってたよね?僕は知らない曲だった)。ジャックとジェレマイアがマラカスとタンバリンを持ってベンの周りを踊りまわるという、よもやこれがラディカル・フェイスのライヴだとは思えないような陽気なエンディング。


終演後は、会場奥の物販とベンの前に長蛇の列。なにしろ今回は日本ツアー限定の7曲入りCD-R『Japan 2012』をはじめ、結構貴重なブツが売り出されてたからね。僕はとりあえずそのCD-Rを買い、ベンにサインをもらう。LPも欲しかったんだけど、わざわざ雨の日に持って帰ることはないかとひとまず放流(僕のことを少しでも知っている人は、このあと放流した物を二度手間かけて買いに行くというのを既に予測しているはず)。

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Radical Face 『Japan 2012』

サインをもらいながら少しだけベンと話す。「明日はもっと騒々しくなるよ」とのこと。「『Mountains』演ってくれなかったね、あの曲好きなのに」と言うと、「あれは3人で演奏するのに向いてないんだ。もっと大人数で演るか、もしくは一人のときかな」と言うから、「じゃあ明日オープニングのソロのところで演ってよ」とリクエスト。「うーん、まず練習してみるね」と言ってくれたけど、果たしてどうなることやら。

ということで、“明日”である今日(もう日付が変わった)、今から約16時間後には僕はまた一番乗りを目指して渋谷O-nestに向かっているはず。ベンは「Mountains」を歌ってくれるだろうか。僕が放流したLP(とその他のシングルやらTシャツやら)はちゃんと売れ残っているだろうか。

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2012年02月05日

2011年個人的ベストアルバム

本当ならこの週末はメタル・ボックス・イン・ダブのライヴに出かけて、今年に入って連続6つ目のライヴレポートを書いているはずだったのが、直前になってまさかのキース・レヴィン入国不可。楽しみにしてたのになあ。「中止」でなく「延期」ということだから、とりあえず新しい日程が決まるまで、払い戻しはしないでおこう。

そういうわけで、今日は延び延びになっている2011年のベストアルバム記事を書いてしまおう。2月にもなって去年のベストアルバムもあったもんじゃないけど、まあ一応けじめということで。まずは、例年どおり去年一年間で買ったものの集計から。

フォーマット   枚数   対前年
CD         286枚    +61枚
CDシングル     9枚     -2枚
CD+DVD(BD)   8枚     -8枚
DVD/BD       1枚     -4枚
ダウンロード     0枚     -1枚
LP           6枚    -21枚
シングル       5枚     -3枚
ボックスセット    4箱     -1箱


せっかく2010年に300枚切ったのに、去年はトータル319枚。内訳を見てみると、前年より20枚増えたのは全部CDアルバムのせいで、それ以外のフォーマットはすべて減っている。なかでも、おまけDVD付きのCDや、DVD/BDがごっそり減っている。なにしろ部屋に座って映像をゆっくり観ている時間がほとんど取れなくて、数年前に買ってそのままになっているのが沢山あるから、おのずとそういうのは買い控えている。世の中のCD店がどんどんDVD店化しているのとは完全に逆行しているね。

同じ理由で、LPの枚数もごっそり減ったなあ。部屋に座ってレコードをターンテーブルに乗せて、なんていう時間がなかなか取れない。余裕のない生活してるよな。

総枚数が増えたかわりに、一枚当たりの平均単価はぐんと下げたよ。平均1067円は僕がレコードやCDを買い始めた1979年以来の最安値。ここのところ数年間なかなか1200円台を下回れなかったのを、一気に200円近く下げられたのは、やはりこまめに3ケタ円CDを買い続けた成果だろう。

と、例によって誰のためにもならない自画自賛はこれぐらいにして、本題の2011年ベストアルバム選出に移ろう。去年の年末に友達の家に集まって年間ベスト発表会を催したときの僕のセレクションとは、10枚のうち2枚が入れ替わっている。年末ぎりぎりに買って、苦慮の挙句に差し替えたものだ。あのとき集まった友達以外にはどうでもいい話だけど(あのとき集まった友達にとってもどうでもいい話だけど)。


<第十位>
Hauschka 『Salon Des Amateurs』
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去年の5月に買ってすぐに気に入り、それ以来いつブログに書こうかとあれこれ文章を考え続けて早や9か月。結局このベストアルバム記事で初登場ということになってしまった(僕のパソコンのデスクトップで9か月間ずっと出番を待っていたこのジャケ写がようやく日の目を見ることができた)。

この細密画のようなジャケットに惹かれたのが、CDでなくわざわざLPを取り寄せた一番の理由。そして、このジャケットに包まれた音が、まさにこの繊細なイラストレーションを体現している。最近の僕が普段聴いている音楽や、このあと出てくる9枚のアルバムと比べるとかなり異色だが、このプリペアドピアノを中心に複雑に構築されたぎこちないダンス・ミュージックは、むかし中学生の頃にニューウェーヴやオルタナティヴと当時呼ばれた類の音楽を初めて聴いて、どこか知らない土地に連れて行かれたような気持ちになったことを久しぶりに思い起こさせてくれた。


<第九位>
Matt The Electrician 『Accidental Thief』
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去年10月のライヴで初めて聴いたこの人。ジム・ボジア目当てで出かけたそのライヴに出演していた4人の中ではなんだか一番ミュージシャンらしからぬ風貌で(名前も“電気屋”だし)、最初はほぼノーチェックだったんだけど、その柔らかい歌声とすっとメロディの立った曲に惹かれて数日後に訪れたカフェ・ゴーティで試しに1枚買ってみたのをきっかけに、その後こつこつと旧譜を買い足して(最後はゴーティのセールで一気に大人買いで)、あれから約3か月後の今ではもうほとんど全部のアルバムが手元に揃ってしまった。僕にとってはある意味2011年という年を代表するアーティストの一人になった。

なんだかちょっと手に取るのを敬遠してしまうヘンテコなジャケからはちょっと想像つかない、(ひと昔前のお洒落なサーフミュージックみたいなのとは一線を画す)あくまでも朴訥としたオーガニックな音が心地良い。また生で観てみたいよ。今年も来日してくれないかな。


<第八位>
The Sonic Executive Sessions 『2011』
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上にリンクを貼った昨年末の発表会で半数のメンバーに選出され、見事うちの仲間の2011年ベストアルバムの座を獲得したのがこのアルバム。もともとオリジナルは2010年に発表されていたようで、ネット上でもよく見かけるジャケ写は2011でなく2010と書いてあるものが多いんだけど、アカペラバージョンなどボーナストラック満載の日本盤が出たのは去年なのでOK。それにしても個人的には去年のかなり早い時期に買ってずいぶん聴き込んでいるので、このアルバムがわずか1年前のものだというのはちょっと信じられない感じだけど。


<第七位>
Ron Sexsmith 『Long Player Late Bloomer』
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続いてこれも、昨年末の発表会で3名に選ばれた、うちの仲間の2011年第二位作品。デビュー作は聴いたけどその後のアルバムはしっくりこなかったという僕みたいなにわかファンにとっては、このタイトルは実にしっくりくる。今まで素通りしてきた過去盤(それでも一応チェックはしているのでジャケットにはすべて見覚えあるけど)を全部今から入手しようという気にはならないものの、こんなに優れた曲の詰まった作品を作ってくれるなら、これからはもう少しきちんと注目していこうと思った。まあ、これでまた来日なんてことになったら、その予習のために慌てて旧譜の中古を探しまくるんだろうけどね。


<第六位>
David Mead 『Dudes』
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友達に勧められて聴いた前作『Almost & Always』のなんとなくゴシックな雰囲気のジャケットのイメージをずっとこの人には持っていたんだけど、お正月のテレビ番組で何度も見かけたザキヤマみたいな風貌のこのジャケに完全にイメージ持っていかれてしまった。

なんてくだらない話はさておき、年末ぎりぎりに入手したこのアルバムはかなりの拾い物だった。静かなイントロで始まる冒頭の「I Can't Wait」の芳醇なメロディーで聴き手を掴んでおいて、あとは見事なまでに様々なタイプの(でも決してとっ散らかった印象はない)佳曲の数々を繰り出してくる。ちょっとラテンっぽい小曲「Knee-Jerk Reaction」であっさりアルバムが終わるときにはいつも「あれ?もう終わりか。もう一回聴こう」と思わせられる。


<第五位>
Fountains Of Wayne 『Sky Full Of Holes』
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2007年版の個人的ベストアルバム記事に前作『Traffic And Weather』を選出したファウンテンズ・オヴ・ウェイン、4年振りのこの新作も奇しくもそのときと同じ第五位というポジションになった。そして、今作を聴いての僕の感想も4年前と同じく、一般的な意味でのパワーポップ・アルバムとしての完成度は、今回これより上位にたくさん登場する他のパワーポップ・アルバムには全く負けていないということ。

そして、そのときの記事では一足違いで来日公演が観られなかったことを悔やんでいるけれど、今回違うのは、来月ようやくライヴを観られるということ。2年前のティンテッド・ウィンドウズの来日ついでに行われたアクースティック・ライヴには行けなかったから、これが僕にとって初のファウンテンズのライヴ。楽しみ。


<第四位>
The Leisure Society 『Into The Murky Water』
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最初はグレン・ティルブルック目当てで買ったMOJOのビートルズのカバーアルバムで知ったこのバンド、そのときの記事に僕は「キンコンと可愛い音の鳴る打楽器と、ストリングスとウクレレで奏でられるイントロを聴いただけで、これが掘り出し物だというのはすぐにわかる」と書いている。あれから2年強、ファーストアルバムとそれ以前のEPがセットで再発された2枚組LPと、ここに写真を載せた親指のところに切り込みのあるセカンドアルバムと、切り込みのないUK盤にアウトテイク集のボーナスディスクを付けたセカンドと、盤の枚数で数えると合計5枚のこの人たちのディスクが僕の家には揃っているほどお馴染みのバンドに成長してしまった(付け加えて言うなら、先着特典で戴いた「This Phantom Life」のサイン入りシングル盤もある)。

去年の暮に運よくロンドンで観ることのできたライヴがよかったというのもあるけど、決してそれだけが理由でこのアルバムをこの高位置に置いたわけじゃない。キンコンと可愛い音の鳴る打楽器とストリングスとウクレレはそのままに、メジャーなポップ・フィールドでも十分に太刀打ちできるだけのクオリティの曲を満載したアルバムを出してきたこのバンド、そのうち大化けするよ。


<第三位>
David Myhr 『Soundshine』
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ライヴといえば、これも運よくつい最近すごくよかったライヴを観ることができたこの人。ライヴ記事に紛れてそのときほとんど買ったばかりだったこのアルバムのことも書いてあるね。その、アルバム以上にビンビンと声の響いた彼のパフォーマンスがこの高位置ゲットに影響したかと言われたら確かにそうかもしれないけれど、そんなのはたいした問題じゃない。これを読んでこのアルバムを聴いてみようと思ってくれる人が少しでもいたら、きっとそう遠くないうちにあるだろう彼の次の来日公演に足を運んでみてほしい。僕が書いたことの意味がわかるから。


<第二位>
The Wellingtons 『In Transit』
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去年結局2つしか書けなかった“アルバム”カテゴリーの記事のひとつ(もう一つはスクリッティ・ポリッティのベスト盤)に、さっきのファウンテンズ・オヴ・ウェインと一緒に取り上げたのがこのアルバム。その後、単独パワーポップ・アカデミーと、2度もライヴを観ることができた。なんかライヴ観て盛り上がったのばかりを上位に持ってきてるんじゃないかと思われるかもしれないけど、そんな風に勘ぐる人がいればまず聴いてみればいい。全13曲、捨て曲なしとはこういうアルバムのことを言う。


<第一位>
Radical Face 『The Family Tree: The Roots』
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この上までの9枚のアルバム、あれだけべた褒めしておいて今さらなんだと言われるかもしれないけど、正直言って去年はほとんど年末近くまで、ダントツでいいと思えるアルバムがないなと思っていた。たとえば2010年のタマス・ウェルズやロッキー・エリクソン、2009年ならグレン・ティルブルックのような。それも、10月に発売されたこのアルバムを聴くまでの話。ラディカル・フェイスは前作『Ghost』も気に入って聴いてはいたけれど、この新作はそれと比べても、そして2011年に僕が聴いたあらゆるアルバムと比べても、あきらかに別格。このアルバムについてはじっくりと長文を書きたかったな。

ノースコート家という架空の家族の壮大な物語を描いた三部作の序章となる今作は、そこで描かれている1800年代に使われていた楽器のみを使って制作されているせいもあって、実にシンプルな音作りだ。ピアノ、アクースティック・ギター、フロアタム、それだけ。あとはラディカル・フェイスことベン・クーパーの声だけ。それら限定された楽器と声が、三拍子を基調とした様々な曲を奏でている。重い。けれど、あくまでも美しい音楽。この三部作がこれからどう展開していくのかまだわからないけれど、少なくともこの物語の幕開けに立ち会うことができたというだけで、僕は2011年という年に300枚以上ものディスクを買ってこのアルバムに辿り着いた価値があった。


以上が昨年の僕の10枚。2010年はアメリカ、アイスランド、カナダ、スウェーデン、オーストラリアというセレクションだったけれど、今回もそれに負けずドイツ、アメリカ、UK、スウェーデン、オーストラリアと5か国産のバラエティに富んだ選定になった。意識してそうしたわけじゃないんだけどな。
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2011年12月24日

その後のメリー・クリスやすcd

年末恒例となりつつある(といってもまだ2回目だけど)、いつものグレン仲間による年間ベストアルバム発表会が今年も某県Hさん宅で開催されることになった。メールでやりとりをしていた際にでてきたTomからのこんなリクエスト(縛りともいう)が。「せっかくだからプラス1として一人一曲クリスマスソング、あるいはそれっぽいのを入れて欲しいな」。

クリスマスソングかぁ、そういえばもう長いこと意識してクリスマスソングって集めてなかったな。この発表会のベストアルバムの定義は、「今年発表されたCD」から「今年買ったCD」まで参加者のCD購買数によって縛りのきつさがまちまちで(僕は当然前者)、このクリスマスソングも同様。というか、ただでさえ音楽の嗜好が似ているこの仲間内で「今年発表」なんて縛りを入れてしまったらもうその時点で選曲がかぶりまくるのが見えているから、本編のベストアルバムよりもゆるい縛りにならざるを得ない。

そんなゆるい縛りは僕としてはなんだか選んでいてつまらないので、あることを思いついた。2006年の12月にこういう企画のyascd記事を書いたのを、昔からこのブログを読んでくださっている人なら覚えてくれているだろう。あれからもう5年。意識してクリスマスソングを集めていなかったとはいえ、探してみたらやっぱり何曲かめぼしいのが見つかった。

そうだ、あの「メリー・クリスやすcd」の続編、というか後日談みたいな選曲にしてみようか。2006年時点で止まってしまっているこのブログのクリスマスをそれから早送りして、2007年から今年まで年一曲ずつ、僕にとってのそれぞれの年のクリスマスを代表する曲を選んでみよう(といっても、うまく埋まらなかった年もあるので、今回の企画が決まってから後追いで買ったCDもあるんだけど)。

というわけで、「一人一曲」というルールを無視して(発表会でまたみんなに顰蹙を買うのが目に見えるようだ)、『その後のメリー・クリスやすcd 2007-2011』全5曲はこんな感じになった。


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2007年
アソビ・セクス (Asobi Seksu)
Merry Christmas (I Don't Want To Fight Tonight)

最初に僕がこの人たちのアルバムをオークランドのリアル・グル―ヴィーで見かけたときは、このなんだかふざけたバンド名が理由で聴く気がしなかったんだけど、気付いてみたら僕の手元には彼らのCDがほとんど揃ってしまっている。そんなに熱心に聴いているつもりはなかったんだけど、いつの間にか自分にとってはちょっと気になるバンドになってしまっていた。けっこう病みつきになる音。

これは、07年に出たシングル。今アマゾンにアフィリエイトを貼って知ったんだけど、500枚限定だったんだね。ラモーンズのカバーだというのは言われるまでわからなかった。シューゲイザー系のバンドって中途半端に凝りだすとどれ聴いても同じように聞こえてくるんだけど、こういうのは純粋に気持ちいいね。


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2008年
スクール (The School)
Kiss You In The Snow 『Happy New Year 2008』

1年半ほど前に記事にした彼女らが、それよりはるか前、08年に所属レーベルであるスペインのエレファントのクリスマスEPのために作った曲。僕が持っているのはクリスマスっぽい白い7インチ。当時CDシングルとどっちを買おうか迷ったんだけど、やっぱりカラー・ヴァイナルの魅力には負ける。なので、このミックスCDに音源を入れるために、同じくエレファント・レコーズから出ている『Yo, Tambien (Me Too)』というサントラのCDを最近買った。前の記事にも同じようなことを書いたけど、これも60年代テイスト満載のいい曲。この人たち最近話聞かないけど、どうしてるのかな。


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2009年
ペット・ショップ・ボーイズ (Pet Shop Boys)
It Doesn't Often Snow At Christmas 『Christmas』

今回のセレクションで唯一過去に記事にしたことのある曲。てっきりこのEPが発売された09年のクリスマス時期に書いたと思い込んでいたけど、実際にブログに載せたのはそれから半年近く経ってから(しかも記事の内容はほとんどスザンナ・ホフスについて・笑)だった。人の記憶って曖昧。

季節ものシングル曲ということでどのアルバムにもベスト盤にも収録されていないけど、これ彼らの他のヒット曲と比較しても決して引けを取らない名曲だと思うんだけどな。これをライヴで聴こうと思ったら、偶然クリスマスの時期に来日してくれるのを待つか(まあありえないけど)、あるいはどこかの国で彼らが12月頃にライヴを演るのを見計らって観に行くしかないのか。相当ハードル高いなそれは。ライヴで観られなさ度という意味では、グレンの「Cool For Cats」よりもレア(笑)


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2010年
ボーイ・リースト・ライクリー・トゥー (The Boy Least Likely To)
A Happy Christmas Baby 『Christmas Special』

10年のはなかなかいいのが思いつかず、どうしようかなと思っていたところ、先月出張で訪れたロンドンのレコ屋にこれの在庫が残っているのを発見。一年前は買おうかどうしようか迷いながら結局見逃してしまって(結果、廃盤になってしまって)いたのを、運よくゲット。とはいえ、僕はこの人たちについてはそれほど詳しいわけじゃない。よく訪れる友だちのブログで何度か名前を見かけ、試聴して気になっていた程度。聴いてみたら、予想通りの宅録ポップという感じでなかなかよかったよ。よく似たジャケのオリジナル・アルバムも買ってみようかな。


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2011年
レジャー・ソサエティ (The Leisure Society)
Christmas Mistakes 『For Folk's Sake It's Christmas 2011』

一方、11年は僕がすでにクリスマスソング探そうモードに入っていたせいか、結構たくさんの候補の中から絞り込むことになった。その中から、僕の今年のクリスマスソングとして選んだのが、先月ロンドンでフリーライヴを観たばかりの彼らのこれ。上にリンクしたチャリティーアルバムに収録されている。このアルバム、数量限定だというから、sinさんのツイートで知ったときに即座にオーダーしたのに、クリスマスの今になってもまだ送られてこない。まあ、その場でダウンロードした音は手元にあるから別にいいんだけどね。

で、これがまたレジャー・ソサエティ節炸裂のすぐれものクリスマスソング。思い返してみれば、今年は超優良セカンドアルバム『Into The Murky Water』のリリース、さらにそのアルバムにデモディスクをつけたバージョンの発売(そういうやり方は気に入らないものの)、ロンドンでのライヴ、そしてこのクリスマスソングと、レジャー・ソサエティは僕にとってはなにかと縁のあったバンドだったなあ。


という全5曲。yascdカテゴリーに入れるにはちょっと寸足らずだけど、もともとが2011年のベストアルバム全10曲のボートラ扱いだから、変則的だけどまあよしとしよう。なんなら2016年ごろにあと5曲追加して独立yascd mini登録してもいいし、もしくは2026年に全20曲のフルバージョンyascdにすることも検討してみよう。

それでは、みなさんよいクリスマスを。
posted by . at 08:34| Comment(4) | TrackBack(0) | yascd | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする