2014年09月13日

Clap Your Hands Say Yeah live in Tokyo

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期待値超え。それもかなりの。今年に入ってほぼ月一ペースでライヴに行ってるが、正直なところ今回のこれは月一のペースを守るために行っとくかなといった程度の気持ちで出かけたのも半分事実。先月LPを買って聴いてみた新譜がちょっとイマイチだったからね。なので期待値自体が低かったというのはあるけれども。

各メンバーが別ユニットでやったりしてても、これまでのアルバムではオリジナルメンバーが少なくともレコーディングには戻って来ていたのに(前作『Hysterical』のCDケースには何の情報も載ってないのでよくわからないけど、ネットで調べてみたらおそらくそうみたい)、今作『Only Run』のクレジットによると、アレック・オウンズワースとドラムスのショーン・グリンハル以外には正式メンバーはもう誰もいないようだ。もうこれはほぼアレックのソロアルバム。しかも、腕利きミュージシャンとアレックのへろへろ声のミスマッチが面白かった『Mo Beauty』や凝りに凝った音作りのフラッシー・パイソン名義『Skin And Bones』とは違って、これまでのCYHSYのアルバムから疾走感だけをそぎ落としたような、どうにも煮え切らない感じ。

新作発表ツアーだから当然そのアルバムからの曲が中心になるだろうとここ数週間ずっと予習はしていたものの、やっぱりつい手が伸びてしまうのはファーストや『Hysterical』になってしまっていた(セカンドの『Some Loud Thunder』もあまり好きじゃないんだよね)。

しかも、比較的遅く買ったチケットの整理番号は400番台の後半。まだそんなに人気あるんだと思いながらも、そんな番号じゃどうせ後ろか端の方からしか見えないだろうと、事前の期待値が一層下がる。まあそれでも、開場時刻の17時ちょっと前には会場に着くようにでかけたけどね(実際にはその前にユニオンとレコファンを散策したから、開場の2時間近く前には渋谷に着いていたんだけど)。

ところが、開場からの整理番号の呼び順がかなりざっくり。最初こそ「1番から10番までの方」みたいな呼び方してたけど、17時時点での集まり具合があまり芳しくないと見てか、次第に「200番台の方、300番台の方」なんて感じでどんどん進む。おかげで思っていたよりずっと早く入場できた。

さすがにステージ前数メートルのフロアは熱心なファンで一杯だったけど、フロア後方や両サイドはかなりまばら。おかげでステージ左手の柱が邪魔にならない結構いい場所を取ることができた。なんだ、人気あるんじゃなかったのか?もしかしてかなりの枚数がばらまかれてたりして。

ステージの両サイドにキーボード。真ん中後方にドラムキット。ギターが何本かと、向こう側にベースが1本立てかけてある。新譜ではアレックはキーボードばかり弾いてるようだったけど、この配置だと彼はギターだけかな今日は。

開演予定時刻の18時を20分ぐらい過ぎた頃かな。聞き覚えのあるキーボードとドラムマシンの音が鳴り出し、メンバー4人がバラバラとステージに現れた。新作2曲目の「Blameless」だ。やっぱりこういうぼわーんとした曲で始めるんだ。

と思っていたら、間髪を入れずに「In This Home On Ice」。うわ、もう演るのか。というか、この流れってまるで新作からの曲をイントロ扱いしてるな。まあ、それで正解だと思うけど。アレックもへろへろながらよく声が出てるし、サポートメンバーが誰だかよくわからないけど演奏はしっかりしているしね(ドラムスはショーンなのかな?顔わからないから不明。ベースが東洋人ぽい顔してたから、新作にも参加しているマット・ウォンというのがきっとこの人なんだろう)。

次の「Satan Said Dance」では、特にアレックに促されなくても「Said Dance!」のところを皆で歌う。やっぱり熱心に聴いてきているファンはそれなりにいるんだね。そう思いながら会場を見渡してみると、いつの間にかもう後ろの方までびっしり。東京一日だけとはいえ(それに、もしかしたら招待券がばらまかれたのかもしれないけど)まだまだクアトロを埋められるだけの人気はあるんだ。

「戻ってこられてうれしい。東京はニューオーリンズと、あとどこだっけ、ベルリンか。とにかく、僕が住めるものなら住んでみたい三つの都市の一つなんだ」とリップサービス。不思議な組み合わせの三都市だね。「魚市場に行った」とか言ってたな。

新作からの曲(ぼわーんとしたのも「Coming Down」みたいなそれほどでもないのも)を何曲か続けた後でふいに出てくる「Is This Love?」とかのファーストからの曲のイントロのカタルシスと破壊力といったらもう大変なもの。どういう構成にしたら盛り上がるのかよくわかってるね。

アレックが演奏するのを観るのは生でも録画でもこれが初めてだったんだけど、ボーカルのへろへろ具合に比べてあまりアクションは大きくないね。両脚をきっちり揃えてギターを弾きながら歌うところはまるでタマス・ウェルズかマット・ジ・エレクトリシャンかといったところ。逆に、このバンドのへろへろした印象(あくまでもアルバムを聴いただけの印象ではあったけど)を体現していたのが、名前もわからないキーボーディストのお兄ちゃん。キーボードを弾くときもギターを弾く時もとにかく体をくねくねさせてた。無表情で。

ライヴで聴いた『Only Run』の曲は、アルバムとはかなり印象が違った。やっぱりアレックが一人多重録音でやるのと、こうして4人で一緒に音を出すのとは違うというのもあるんだろうけど、どの曲も(ぼわーんとはしつつも)かなり好印象。アレンジももう既に変えてきていたのもあったしね。一方で、『Hysterical』からの「Same Mistake」とか、オリジナルはちゃんと盛り上がるテンポの曲を、あえてギター1本でスローに演奏したりとか。こんなにフレキシブルなことやるんだ。なんか、デビュー時の逸話なんかから、永遠のアマチュアバンドみたいな印象でいたけど、実は音作りにしてもこういうライヴの構成にしてもすごく高度なことをやってるんだ。

「In This Home On Ice」も「Is This Love?」も「The Skin Of My Yellow Country Teeth」もあんなに早く演ってしまって後半大丈夫かと思っていたけど、後半になってもファーストからの残りの曲と『Hysterical』からの「Ketamine And Ecstacy」とかのガンガン盛り上がる曲でたたみかける。「一旦引っ込むけどまたアンコールで戻ってくることになってるから」なんてことを照れながら話し、本編ラストは「Upon This Tidal Wave Of Young Blood」。

アンコールの拍手に応えて、まずアレックが一人で登場。ギターの弾き語りで歌い始めたのは、トム・ペティの「Yer So Bad」。このブログを書くために彼らの最近のセトリを調べてみたけど、カバー曲を演奏したなんて記述はどこにもなかった。あと、最近のツアーのどのセットよりも、この日のライヴは本編で1-2曲、アンコールも2曲多かったみたいだ。「東京が好き」というのもあながちリップサービスだけではなかったみたいだね。

もう一曲、「Into Your Alien Arms」を同じようにエレキギターの弾き語りで歌ったところで残りのメンバーが再登場。ニューアルバムの1曲目「As Always」をここに持ってきて、最後はアゲアゲの「Heavy Metal」で幕。いやー、よかった。演奏もかっこよかったし(アレックのソロの弾き語りはちょっとだけ間延びした感があったけど)、各アルバムからの選曲のバランスもよかったし(僕がいまいち気に入っていないセカンドからだけは僅か2曲というのを見ると、やはりアレック本人もそう思ってるのかな)。

ステージを降りる前にアレックが「今からそっちに出ていくから」と、サイン会があるらしき発言をしていたけど、何も準備してきていなかったので今回はパス(売っていたTシャツのデザインもあまり好みではなかったし、そもそもうちにTシャツが多すぎるから今自分内Tシャツ購買禁止令発令中)。しかしまさかクアトロでサイン会があるとは。次からは一応何か持ってくるようにしよう。

そういえば、黒字にカラフルな文字だけというそっけない今回の公演チラシを会場でもらったんだけど、ニューアルバムのタイトルが『Only』になっちゃってるよ。ここで散々けなした僕が言うのもなんだけど、もうちょっとちゃんとプロモーションしてあげてよ。僕ももう少し聴きこんでみよう。もう少し馴染めば、今年のベスト10候補には残ったりするかも。


Clap Your Hands Say Yeah 6 September 2014 @ Shibuya Club Quattro

1. Blameless
2. In This Home On Ice
3. Satan Said Dance
4. Gimmie Some Salt
5. Coming Down
6. Only Run
7. Beyond Illusion
8. Is This Love?
9. The Skin Of My Yellow Country Teeth
10. Same Mistake
11. Some Loud Thunder
12. Over And Over Again (Lost And Found)
13. Misspent Youth
14. Impossible Request
15. Ketamine And Ecstasy
16. Upon This Tidal Wave Of Young Blood

[Encore]
1. Yer So Bad
2. Into Your Alien Arms
3. As Always
4. Heavy Metal
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2014年08月31日

Mike Peters live in Tokyo 2014

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2010年のラヴ・ホープ・ストレンクス(LHS)のイベント以来となるマイク・ピーターズのソロ来日公演。あのときのライヴが半エンドレスのミニフェスみたいな趣で本当に楽しかったから、今回の会場がビルボードだと聞いてその点だけはちょっと残念。

チケット発売時刻がちょうど地方に出張に行く飛行機に乗っていた時間で、これはあまりいい番号が取れないだろうなと思っていたら比較的若い番号だったので、もしガラガラだったらどうしようと危惧していたものの、ふたを開けてみるとこのセカンドセットは1階席はほぼ満員。上の方のさらし首席はそれほど混んでいるようには見えなかったけど、マイク・ピーターズってこんなに集客力あるんだと改めて感心した。

最近のライヴ写真同様、足元にバスドラが置いてあるステージ。ソロ公演なのになぜかマイクが3本も立ててある。後ろには黒いアコギが2本とマンドリンが1本。開演時刻が迫ってステージ後ろのカーテンが降りると、そこには最近リリースされた『Declaration』(マイクが一人でアラーム名義で再録したもの)のジャケットのデザインが。

そう、今回はそのアラームのファーストを30周年記念で全曲演奏するというツアーの一環。もともと僕はアルバム一枚通して演奏するライヴってあんまり好きじゃないんだけど、まあそれ以外にも演るっていうし、インタビューを読むとアンコールも受け付けるとは書いてあったから、それなりに楽しめるだろう。

アラームのサイトで買い忘れていたその新録版『Declaration』、マイク・ピーターズ・オフィスに問い合わせてみたら今回のツアーに持ってきているとのことだったので、席に着くやいなや早速購入。もう一枚、アラーム極初期の曲をこれもマイクが一人で再録音した『Peace Train』というアルバムと、あとはこの六本木公演特製デザイン(上の版画)のTシャツも。

で、その新録版『Declaration』、曲順までもがオリジナルと全然違う。あのアルバムを「Declaration / Marching On」以外の曲で幕開けできるものかと思うんだけど、なぜか1曲目に書いてあるのは「Shout To The Devil」。中の曲もほぼ順不同に近い順番で収録されていて、最後が「We Are The Light」。なにその盛り上がらなさそうな曲順。もしや、今回の“全曲演奏”というのもこの順序なのか。

そう思いながら待機していたら、ステージに現れたマイクが最初に歌ったのは「Unsafe Building」。「この曲でバンドが始まったんだ」と。たしか前回の来日公演もこの曲が最初だったな。1曲目からすでに『Declaration』と関係ないし。まあその方が僕としてはサプライズがあって嬉しいけど。

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続いて「Shout To The Devil」。最初の曲もそうだったけど、何年の何月(ときには何日まで)にその曲をリリースしてとかいう事細かな説明をして歌い始める。そうか、今回の新録版がこの曲で始まっているのは、この曲がアルバムで一番最初に録音されたから(作曲された?)からなのか。

足元のバスドラをずっと踏みながら歌うのかと思っていたら、ループを駆使してドラム、タンバリン、ギターとどんどん音を重ねていく。後の曲ではコーラスも聞こえてきたから、その場でのループだけでなく結構いろんなプリレコーデッドの音も使ってたようだ。その点は自分内でもちょっと賛否両論というか、もっとシンプルな弾き語りを聴きたかったというのと、ここまで厚い音ならいっそバンドで観たかったというのと、でもこんなに頑張ってループとか駆使して少しでも意図した音を聴かせようとしてくれるのを評価したいというのとちょっと複雑な思い。

曲間の語りが長い。84年に最初に日本に来たこと(「12月15日に渋谷で観た人もこの中にいるだろう」って、あれ日付は事前に予習してるんだろうね、まさか覚えてるなんてことは…)、その次の年に初めてTOTPに出たときのこと。エコー&ザ・バニーメンが共演だったと「Killing Moon」の一節をイアンの真似して歌ったり、同じ日に出たマドンナはほとんど服なんて着てなかったとか、自分たちはこんなすごい髪型で、とか笑わせる。

同様に出演していたモリッシーとマーにサインをもらおうと楽屋を訪ねたら、モリッシーはズボンの後ろに花を挿していて、(当時まだ新人だった)マイクのことを知ってただけでなく「その場で次の曲のコーラス部分を歌ってくれたんだ。この曲はモリッシーに捧げるよ。みんなも同じ個所を歌ってくれ」と、「Where Were You Hiding When The Storm Broke」へ。

この曲の途中ではお馴染みの、トランプをばらまくパフォーマンスもあった。結構いい席に座っていたので、特に苦労もせず自分のところに落ちてきた3枚をゲット。3・4・5のストレート。拾えたのはうれしいけど、3枚もあると逆に持て余してしまうな。

そこからは新録版の曲順に沿って「The Stand」、(デイヴ・シャープによる素晴らしい歌詞との前ふりで)「Tell Me」、(イントロでまずマンドリンの音をループさせて)「Howling Wind」と続けた後、4年前の来日の話に。LHSの説明を始めたからもしかしたらその同名の曲を始めるのかと思ったら、その言葉を最初に歌詞に使った「Strength」だった。あれ?ファースト全曲演奏じゃないの?

さらに、「Walk Forever By My Side」に続けて76年にセックス・ピストルズを観た話を始めたものだから、ああこれは「Spirit Of '76」だとわかる。もうこの辺まで来ると『Declaration』全曲演奏なんてお題目はどっか行ってしまって、単にアラーム初期の曲だけを演奏するライヴになってしまっているよ。もしかして時間制限があって端折ってるのかな。まあ、最初に書いたとおり、僕としては予定調和じゃないそっちの方が逆にうれしいんだけどね。

次の「Sixty Eight Guns」で『Declaration』に戻る。これまでの曲もオリジナルと若干違ったアレンジが施されていたけど、これはなんだか、オリジナルにあったカタルシスを一切排除したようなもっさりしたバージョンだな。テンポも緩いし、あのジャカジャカジャッジャーンという恰好いいリフが、ドドンガドン、ドドンガドンなんて音頭みたいになってる。本当にマイクは今はこっちのバージョンの方がいいと思ってるのか。

ほとんどの曲で、ほぼ1コーラスごとに3本のマイクの間をうろうろと移動して歌う。それほど広いステージでもないのに、ちゃんと両端のお客さんにも見えるようにとの配慮だろうね。こんなことをする人を見たのは初めてだ。さすがの気配り。ほんとにこういうところも含めてファンになってしまうんだよね、この人。

「もし君が30年前のライヴに来ていたなら、オープニングで僕がギターを高く揚げてこの曲を演奏するところを見たはずだ」と言って、「Declaration」、そしてもちろんそれに続けて「Marching On」(これもまたちょっともっさりしたアレンジだった)。これが本編ラスト。うーん、なんか違和感。結局、マイクのボーカルで聴いてみたかったと思っていた「Third Light」や、彼が使っていたギターに大きなステッカーが貼ってあった「The Deceiver」は演らなかった(一度も使わなかった予備のギターにも同じステッカーが貼ってあった)。

アンコールで登場し、「来年また来れたらいいね」と言いながら、「One Guitar」を。ここでとうとう初期の曲縛りまで外れてしまった。そこからメドレーで「Rescue Me」、「Absolute Reality」と畳み掛ける。もうこのあたりで(少なくとも僕のいた位置ぐらいまでは)観客は総立ち。やっぱり、下手に(失礼)ドラムのループを入れたりするよりも、こうしてアコギ一本で観客とのコール&レスポンスを絡ませて歌う方がいいよ。まあ、この辺は楽曲の良さというのが歴然としてあるんだけどね。

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最後は、『Declaration』からこのオーラスに取っておいた「Blaze Of Glory」。さっきからずっと立って歌ってた客が最後のコーラスと両手を上げるのもお約束。後ろのカーテンが開いて、六本木の夜景が綺麗。最後にマイクが「Stay Alive!」と何度も叫ぶのを見て、この人がくぐり抜けてきた試練を思い出してちょっとうるっとなる。ライヴ中ほとんどの歌でずっと歌ってたつもりだったけど、やっぱり4年前の長丁場とは違って喉は全然大丈夫。とはいえ、アンコールも含めて1時間20分というのはこの会場にしては長かった方だろう。さあ、これからサイン会だ。

9時半開始のセカンドセットで1時間20分も演るもんだから、サイン会で最後の方に並ぼうなんて余裕はあまりない。それでも数十分並んだ後、ようやく自分の番に。マイクが僕を見て「Hey Yas」と言ったように聞こえたんだけど、まさかそんなことないよね。「4年前にも観ました、あと30年前にも」と言うが早いか、「知ってるよ、クラブドクターでね」と返してくれる。本当に覚えてくれてるのか??まさか。

会場で買った2枚の新譜のほかに、もし買えなかったときのためにと思って持参して行った3枚のCDを「ほら」って見せたら、それにもサインしてくれようとするマイク。係員にも注意されたし、いやそんな全部はいいからって言っても、「いいから貸して、あとそっちの新しいやつはビニール外して」と全部にサインをくれる。そんなやりとりがあったもんだから、もう少し時間があれば話そうと思っていたこともスコーンと頭から抜けるし、係員に撮ってもらった写真は手ブレがひどかったけどそれもろくにチェックもせず、「また来年ね」とだけ言ってその場を後にした。

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家に帰って、買ってきた2枚の新譜を聴く。『Declaration』は会場で聴いたのとほぼ同じアレンジと曲順だ。『Peace Train』の方も、かつてボックスセットに収められていたオリジナルのバージョンとはずいぶん違った感じになっているものが多かった。どちらも、申し訳ないけど素晴らしくいいというわけではなかったけれど、うちにある20〜30枚のマイク/アラーム関連のアルバムのうちの一部だと思えば、もちろん持っている価値十分なものだ。ときどき引っ張りだしては、このもっさりしたアレンジを聴きながら、今回のライヴを思い出すことにしよう。
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2014年08月09日

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去年のフジロックはほぼウィルコ・ジョンソンだけを観る目的で出かけたら、意外とそれ以外にも見どころがたくさんあって、土砂降りの天気はともかくとして結構楽しめたなという感想だった。あれが一年前。

そんな去年のラインアップに比べると、正直言って今年は最後の最後まで僕を惹きつけるアーティストの名前は出てこなかった。早い段階でひっそりとリストに名前が載っていたある一人を除いては。

ガーランド・ジェフリーズ。81年の名作『Escape Artist』で彼のことを知り、当時ですら既に廃盤だった過去盤を血眼になって何年にもわたって揃えていた頃、最後のアルバムリリースから4年も経った87年に突然の来日。ミューズホールで観たライヴは今でも僕の生涯ベスト5に入る凄まじいものだった。

その後、91年、97年、06年とどんどんアルバム発表の間隔が広がり(06年の『I'm Alive』はほぼベスト盤みたいな内容だったし)、この人はもう新作も出さず、たまに地元でひっそりとライヴをやるだけなんだろうなと思っていたら、12年に『The King Of In Between』、そして去年『Truth Serum』と、またしても突然狂い咲いたように立て続けに(しかも内容の濃い)アルバムを発表。そして、今年のフジロックの第一弾ラインアップに名前が。

もしかしたらフジの前後に東京で単独公演があるかもと思っていたけど、どうやらその気配もなさそうなので、これはもう他のアーティストがどんなに僕の興味から外れていようと、彼が出演する日だけを目指して行くことにした。それが何曜日であろうと問題ない。とは思っていたけど、よりによって初日の金曜日か。しょうがない、会社はサボって三連休。でも苗場に三日間いる体力も財源もないので初日だけ参加。

通勤客と観光客と中国人でごった返している金曜早朝の東京駅で友達と待ち合わせて上越新幹線に乗り込む。席について、シラス弁当と一緒にさっそく今日一本目のビール。飲んでると越後湯沢なんてあっという間だね。いったん宿に荷物を置いて、去年の教訓をもとに長靴に履き替え、雨具をバックパックに詰めて出かける。雨の気配なんて一切ない猛暑の晴天だけど。

なんか会場行きのバスの列もリストバンド交換所もやけに空いてるな。初日の朝なんてこんなもんなのかな。グッズ売り場も覗いてみたかったけど、そこだけは長蛇の列だったのでパス。先に来ているはずの仲間とはまだ連絡取ってなかったけど、去年の基地あたりに目安を付けて行ってみたら即合流できた。みなさん、今年も基地お借りします。

今日二杯目のビールを飲みながら基地で寝そべっていたら、グリーンで一番最初のバンドが始まった。後ろの方で寝転んでるから直接にはステージはほとんど見えないけど、これは豪華な顔ぶれだね。ルート17・ロックンロール・オーケストラって、毎年オープニングをやってるのか。トータス松本やら甲本ヒロトがロックンロールのカバー(オリジナルの歌詞だったり日本語版だったり)をやってて、僕がもう少しこの手の日本のバンドに入れ込んでたらたまらないだろうなと思うようなステージだった。チャボの歌った(おそらく)オリジナル曲がなにからなにまでハングリーハートだったのが印象的。でも、もしかしてあれもカバーなのか。

さらに基地でごろごろしていたら、ルミニアーズ開始。よさそうなら前に行って観ようかなと思ってたけど、なんだかこれ去年ここで観たマムフォード&サンズの二番煎じぽい感じだね。同じようにやろうとしても、どうにも曲が弱いというか。決してひどかったわけじゃないんだけど、僕を基地のシートからひっぺがして前に歩かせるほどには至らず。

まだガーランドまで3時間近くあるけど、僕はもうそっち方面に移動したくて気が気じゃない。ちょうど友達が木道亭で阿部芙蓉美を観るというから、じゃあ僕も一緒に。ヘヴンまでの通り道だしね。ところ天国で友達が飲み物を買っている間に森のハイジカレーを喉に流し込む。カレーは飲み物。でも並んでいる友達に頼んでちゃっかりモヒートも飲む。

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木道亭って、ほんとにボードウォークの横にちょこんとくっついてるだけの場所なんだね。開演少し前に行ったらもうほとんど観る場所なんてない。全然知らない人だったけど、こんなに人気なんだ。でも、繊細な曲を歌っているのに、すぐ隣のヘヴンからドカドカと大きな音が聞こえてきて、ちょっとかわいそうだったね。もう少し静かな山奥で歌わせてあげればよかったのに。

阿部芙蓉美のあと、ヘヴンへ。でもまだ前のバンドが演奏してるね。じゃあ隣で時間つぶそう。オレンジでちょうどスティーヴ・ナイーヴが始まるところだ。前にグレンと一緒に吉祥寺に来たときとほぼ同じメンバーで、ベースはスティング息子か。

15時10分開演なのに、15時すぎになっても客席にはほとんど誰もいない。一応熱心なファンが10名ほど一番前の柵のところに陣取っていたけど、とてもこれが今からライヴが始まる場所だとは思えないぐらい。ところが、スティーヴがまずひとりで登場してキーボードのインストゥルメンタル曲を演奏しだすと、そこらにいた観客がわっと集まってくる(といっても50人いるかいないかぐらいだけど)。

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2曲目からはバンドが入る。ヴォーカルはスティーヴの息子だったよね。「Peace, Love & Understanding」のカバーなんだけど、なんだかもっさりしたアレンジ。息子君はそのあとドラムに移動(別にもう一人ドラマーがいたけど、その人は息子君がドラムキットに座るときはパーカッションとかプログラミングとかほかのことをしていたので、ダブルドラムみたいな感じではなかった)。

ジョー・サムナーってこんなにスティングに似てたっけ。2曲ヴォーカルを取ったけど、歌い方までそんなにお父さんに似せなくていいのに。曲のエンディングでジャンプするところまでお父さん似。かなり流暢な日本語のMCとか聞いてる限りは、お父さんよりはよっぽど性格よさそうだったけどね。

また息子のトール君が前に出てきて「Oliver's Army」のカバー。お父さんとデュエットするんだけど、どうしてまたこんなにテンポ落としてゆっくりもっさり歌うんだろう。さらにもう一曲ゆったりと歌ったところで隣のヘヴンに移動。まだガーランドのステージ開始まで20分ぐらいあるけど、万が一お客さんがたくさんいたら大変だからね。

早めに来てよかった(というかもっと早く来ればよかった)。リハーサルやってるよ。バンドメンバーが「96 Tears」や「Hail Hail Rock'n'Roll」のイントロの音を出してる。ガーランドは前に出てきてメンバーと打ち合わせしたり後ろの方で誰かと話したり、特にリハーサルに参加してるわけじゃないけど。前に見たときよりもかなりお腹が大きくなったね。もともとそんなに背の高い人じゃないから、ずんぐりした体形がきんどーちゃんみたいな感じ。

スタッフが、ステージから下に降りるステップをセットしてる。2メートル近くあるステージだから、あの数段のステップだと降りるにしても上がるにしても相当大変だと思うけど、71歳の小太りガーランドにそんなことできるのか?まあ、もしかしたら最終曲あたりで盛り上がったときに降りて来られるようにとの準備なんだろうけど。せっかく一番前に陣取ることができたから、こっちにも来てくれたらいいな。

ガーランド以外にメンバーは4人。ドラムスのトム・キュリアーノとベースのブライアン・スタンリーは『Truth Serum』に、ギターのマーク・ボッシュは『The King Of In Between』にそれぞれ参加してる人たち。キーボードのマット・キーティングだけはレコーディング・アーティストのはずだね、僕は聴いたことないけど。一緒に観ていた友達いわく、マシュー・スウィートが太らずに歳を取ったらああなるはずと。うん、そんな感じ。

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さあ開演。黒いジーンズに黒いTシャツというシンプルないでたちで登場したガーランドの第一声が「ニューヨークシティー!」。それはどう反応すればいいのか。曲は『The King Of In Between』のオープニングでもある「Coney Island Winter」。もしかしたら懐メロ大会になるのかなとも予想していたけど、ぜんぜんそんなことない。そして、間髪入れず「35 Millimeter Dreams」。スライドが恰好いい。

「'til John Lee Hooker Calls Me」、「I May Not Be Your Kind」と、『The King Of In Between』〜『Ghost Writer』の並びがもう一回続く。後者の紹介をするときに「I May Not Be Your…」まで言ってじらすのも27年前と同じ。それに続けて「Kind!」とつい叫んでしまうのも同じ。

「I May Not〜」の最後のアドリブのところで今度は「Tokyo」「I'm in the middle of Tokyo」と歌う。それはどう反応すればいいのか。。

どの曲のときだったかな、ステージ上でうろうろしながら歌っていたガーランドがもうさっそくステップに飛び降りて、ステージ下の観客席のところまで来て歌ったのは。柵の土台に乗って、観客にばたばた触られながら歌う。残念ながら僕がいた場所からは離れていたけど。そのあとまた歌いながらステップを上がっていくのがちょっと危なっかしかった。でもよく息も切らさずに歌えるね。70過ぎてるのに、すごいや。

「ニューアルバムが出たんだ」と言って「Any Rain」を。やった、この曲が一番好き。ニューアルバムと言ってももうほとんど丸一年前になるんだね。そして続けて「It's What I Am」。新曲ばんばん演るね。現役感。「今晩この後ニューアルバムを買いに行ってくれ」なんて半分冗談めかして言ってたけど、もっと東京とかでちゃんとプロモーションツアーすればいいのに。こんなライヴの後だったらきっとその場で何十枚も売れると思うんだけどな。それとも、本当にここが東京だと思ってるのか。

「最近友達が亡くなったんだ。ルー・リードとは50年来の友達だった。あいつは俺に扉を開けてくれた。ずっとサポートしてくれた。俺も少しは扉を開けてあげたけどね」と、もしかしたらこの話が出るだろうなとは思っていたけど、それに続けて「彼の曲を歌おう」ときたのには驚いた。「I'm Waiting For The Man」だ。

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またステージから降りて客席へ。またあっちの方だよ(あとでガーランドがリツイートしてたのを読んだら、どうもクロマニヨンズご一行様がそっちの方にいたらしい)。今度はそのまま柵をよじ登り、客席を練り歩きながら歌う。僕はその時初めて後ろを振り返って客席を観たけど、100人ぐらいはいたかな。少なくともスティーヴ・ナイーヴよりはずっと多い。始まった頃はガーランドもステージの上から「前の方に来てくれているみんな、大好きだよ。後ろの方の奴らはどうして寝てるんだ」とか言って、なんか後ろの方にいたお客さんをいじってたぐらいだったのに。

冒頭から熱いライヴだったけど、ラストの「Hail Hail Rock'n'Roll」でそれが最高潮に(ただ、時間は少し余っていたから、あれは最初からアンコール目当てで切り上げたのかも)。メンバー紹介のときにマットのことを「マシュー・スウィート」と呼んだのはおかしかった。公然の冗談になっているんだろうか。

ステージから下がろうとしたところで大きなアンコールの歓声。すぐに戻ってきて、どっちの曲を演ろうかみたいなことを言ってから「96 Tears」。そして「また会おう」と言って裏に引っ込むけど、まだアンコールの歓声が続く。

ニコニコしながら「こんなのは東京じゃないよ」と言って出てくるガーランド(そうだね、東京じゃないね)。最後は「Wild In The Streets」。あー、こっちか。「R.O.C.K.」聴きたかったんだけどな。まあ、しょうがない。それにしても最後まで全然声衰えないね。そして、今度こそ時間切れ。「今度はちゃんとツアーをしに戻ってくるから」と言ったのを覚えておくからね。

もしかしたらふらっと歩いて出てくるかもしれないと思って、次に観ようと思っていたフォスター・ザ・ピープルを諦めてしばらくうろうろしていたけど、どうやら車に乗って出て行ったようなのでとぼとぼとグリーンに戻る(これも後でガーランドのツイッターを見たら、そのままバンで成田に行って、次のカナダのフェスに出るために翌朝もう出発だったそうだ。すごい強行スケジュール)。

ふう、疲れてきた。もう後はさらっと書こう。グリーンに戻る途中でフォスターの知ってる曲(曲名は覚えてない)が聞こえてきた。基地に戻ろうかとも思ったけど、せっかくなので中途半端に前の方で観ることにした。せっかく折りたたみ椅子持ち歩いてるから、座って観よう。

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でも、そこから先はあまり知ってる曲が出てこなくて、いいライヴだったけど半分で残念な感じで基地に戻る。お腹すいたね、ということで、みんなでオアシス行って牛スジ丼を食す。うまし。食ってるうちに電気グルーヴが聞こえてきたので基地に戻る。一度ライヴ観てみたかったんだ。

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でも、寝転がって聴く音楽じゃないね。なんか大がかりなセットを組んだステージは遠くてよく見えないし、スクリーンも派手に点滅するステージをずっと映してるだけだから、一緒に観ていた友達はことごとく撃沈してる。なんかの曲からガリガリ君に移るところとかかっこいいなと思ったけど、オーラスの「富士山」は「お待たせしましたー」と言われるほどには僕は待っていなかったので、いまいち盛り上がれず。

グリーントリのフランツにはいまいち興味がなかったので、モーを観にヘヴンに戻ることに。なんか道がやけに混んでる。みんな誰を観に行くんだ? ベースメント・ジャックスにはまだ早いよな。

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昼間通ったときとは打って変わって、ミラーボールとかキラキラ光ってすごく綺麗なボードウォークを歩いているうちに気持ちいいギターソロの音が聞こえてきた。長丁場のモーは座ってみよう。結構ガラガラだし。でも着いたらすぐに15分の休憩に入ってしまった。あれ? 3時間のライヴの1時間終わったところでもう休憩?

というわけで第二部からのモー。うーん、長いギターソロとかすごく気持ちいいんだけど、やっぱりどうしてもフィッシュと比べてしまうから、曲自体の出来がもうひとつかな。これまであんまり聴いたことなくて、今回聴いてみてよかったらアルバム揃えようかなと思ってたけど、どうもそこまでじゃないかな。

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というわけでずっと座ってるだけでも疲れてきたので、またみんなに合流しようとグリーンに戻ることにした。ところが、途中そこを通らないといけない作りになっているホワイトステージが、ベースメント・ジャックスの客で通れない。満員電車の中をじりじりと歩いているような感じで、何十分もかけてようやく抜ける。もうちょっとルート作り考えてよ。

ようやくグリーンにたどりついたら、もうフランツ・フェルディナンドが終わるところ。基地の撤収をちょこっと手伝って、みんなでぞろぞろとバスに戻る。フランツが終わったところだからもっと大混雑かと思ってたら、道を歩いてるのはほんの数十名で拍子抜け。みんなまだベースメント・ジャックス観てるのかな。

結局、一日中ボコボコ音言わせながら長靴はいてたけど雨は一滴も降らず。両腕だけが真っ黒に日焼け(これを書いている今はもうボロボロに皮がむけてるけど)。疲労度が去年と全然違うのは天候のせいか、それともほとんど座るか寝転がって観ていたせいか。でも、あと2日同じことを繰り返せと言われても、ちょっとその気力はないなあ。最終日のボーグスとか観てみたかったけど。

来年もまた一日だけ行こう。どうか、僕の観たいアーティストが沢山来ていろんな日にばらけませんように。
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2014年07月13日

Tamas Wells live in Tokyo 2014 Pt. 2

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梅雨の合間のものすごい晴天だったんだ、一日中この日は。真夏みたいに。なのに、新宿でちょっとタワーに寄って、マイク・オールドフィールドの『Crises』の旧規格盤が安く出ていればオリジナルを持っていないと言っていたタマスへのお土産に買っていこうなんて思ったのが運の尽き。

結局、高い『Crises』デラックスエディションかスペクトラムからの安っぽいベスト盤しか「Moonlight Shadow」の入っているアルバムはなく、それなら今度自分で選曲してあげた方がマシと思って、何も買わずに開場時刻にちょうど間に合う時間に山手線に乗って原宿駅に着いたら、ホームから階段から改札までものすごい人混み。外は滝のような雨。誰もが改札を出たところで立ち止まってしまっていて誰一人身動きができないような状態になってしまっている。

それでもなんとか人をかき分けて改札を抜け、土砂降りの雨を浴びながら信号を渡る。でもどこにも雨宿りができるような場所がない。しょうがないからもう行ってしまおう。一緒に行った友達が折りたたみの傘を分けてくれたんだけど、そんな小さな傘だと二人の頭部を濡らさないようにするのが限界。全身ずぶ濡れ、脛ぐらいまでの深い川のようになった竹下通りをじゃぶじゃぶと進んだ靴は中まで完全に水浸しの状態でようやく会場のVacantにたどり着いた。

前回(2011年)と違ってこの日は、前の方の席にも小さな箱のようなベンチが置いてあり、靴を脱ぐ必要はなかったんだけど、僕は水浸しの靴を脱いで、その日は終演までずっと裸足で過ごした。ああ気持ちいい。外に靴下を絞りに行ったら、もう雨が上がってるよ。ほんの30分ぐらいの夕立だったの? ああいうのをゲリラ豪雨っていうのか。なんというタイミングの悪さ。あのタワーでの30分ほどが裏目に出てしまった。

そんな酷い天気でも、ほとんどのお客さんは定時に会場入りしていて、大きく開演時間をずらすことなく、前座のクリス・リンチのセットが始まった。この日は最初の2日間同様にクリスがステージ右側。いつも置いてあったピアノはなく、ステージ左側にキーボード。ドラムキットは前日と同じ、バスドラがやけに小さい3点セット。

クリスのセットは福岡とは曲順が違っていたけど、演奏した曲自体は確か同じだったはず。全部で5曲だったかな。1曲目の「Church Steeples & Spires」(福岡での2曲目)がカントリーぽいメロディーと曲調で、これまでのブロークン・フライトのイメージとは大きく違うのが印象的だった。終演後にもブロンがクリスに「あのカントリーっぽい曲いいね」と言っていたな。

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最終日のオープニングは「I’m Sorry That The Kitchen Is On Fire」、そして「England Had A Queen」と続いた。これは初日の福岡公演のセットリストそのままで来るのかなと思った矢先、従弟がバイク事故で骨折したエピソードを話し始め(あの話を聞くのは初めてだったと思う)、「その実話に基づいて書いたんだ」と、「Broken By The Rise」を演奏。これ聴くのはずいぶん久しぶりな気がする(調べてみたら、僕がこの曲を最後に聴いたのは、2010年のシンガポール公演だった)。

続けて、これも今回のツアー初披露となる「Fire Balloons」。僕だけでなく、前日の光明寺で久々に再会したファンの方や、ブロンまでもがこの曲を演ってほしいとタマスにリクエストし続けてきた甲斐があって、ようやくこの最終日に演奏してくれた。というか、僕はこれを数あるタマス・ウェルズの曲の中でも名曲中の名曲だと思ってるんだけど、それが本人にとっては下手すると歌詞を忘れてしまう程度の扱いだということが信じられないんだけど。終演後タマスが僕に「ほら、今日は歌ってあげたでしょ」とニコニコしながら言ってくれたのが忘れられない。

その後のセットはほぼ福岡公演と同様だったんだけど、途中のソロコーナーではこれも今回初となった「Open The Blinds」や、前日の咄嗟のアンコールで急に思い出したのか「Opportunity Fair」を演奏。今回のツアーでのアンコール定番「Lichen And Bees」も早々に出たから、聴いていた限りではセットリストの印象はどの日ともえらく違った。

どこから聞こえてくるのか、おそらく屋根にたまった水がぽつん、ぽつんと、結構大きな音で延々と鳴っていたのが気になった。曲と合わないメトロノームがずっと鳴っているようなもんだから、きっと演奏してる方はもっと気になったことだろう。たぶん、ライヴの中盤ぐらいまでずっと鳴ってたんじゃないかな。タマスも「あれはスペシャルエフェクトだ。楽しんでもらえたらいいけど」なんて冗談めかして言ってたね。

「エスキモーの子どもが誤って友達を殺してしまうストーリーの映画を見て」と話しだしたはいいけど、タマス自身はその映画のタイトルを覚えておらず、「誰か知らない?」とお客さんやメンバーに訊いてみるけどそれだけのヒントでわかるだけの映画通もいなかったようで、そういうどこにも行き着かない話をつい始めてしまうのがいかにもタマス。後でブロンに「あの映画って一緒に観たの?」と聞くと「知らない。きっとマイナーな映画ばかりやってるケーブル局で観たんでしょ」だって。タマス、それは誰にもわからないよ。

「Draper Street」や「Signs I Can’t Read」など、ネイサンがアイパッドとシンセを使って効果音を奏でる曲では、アンソニーがネイサンの隣に行って操作を手伝っていた。アンソニーの本職が実は大学の偉い教授で、ネイサンもアンソニーと一緒に働いているという話を聞いていたので、こと演奏に関してはこうしてネイサンがアンソニーにあれこれ指示を出しているのが、きっと彼らの大学の生徒が見たら不思議な光景なんだろうなとちょっと可笑しくなった(山崎シゲルと部長を連想)。

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今回のツアーでのハイライトだと思っていたその「Signs I Can’t Read」に続けての「Melon Street Book Club」がなかったのが少し期待外れだったけど、後でタマスにそう言うと「セトリ変えろと言ったのは君だろう」と。はい、たしかにそのとおりですね。

本編最後は解説付きの「Valder Fields」と、口笛指導付きの「A Riddle」。そういえば、「Valder Fields」をこうしてライヴ終盤の重要な場所に位置づけたのも今回のツアーが最初じゃなかったっけ。だいたいいつも中盤にぽつんと歌って何事もなかったかのように残りのライヴを続けてたもんだけど、ようやくお客さんがこの曲を一番聴きたがってるというのに気づいたのかな。

アンコールには何を持ってくるんだろうと思っていたら、まずは「True Believers」、そしてメンバー紹介の際にまたアンソニーがいないという定番ジョークみたいなのを挟み、本来のアンコール定番「For The Aperture」。そこで一旦メンバーが退き、さあ昨日同様もう一回最後のアンコールを演ってくれるかなと思っていたら、あっという間に客電が点いてしまった。うー、残念。後で床に置いてあったセトリを見てみたら、ちゃんとそこには「Grace And Seraphim」と書いてあったから、なおのこと残念。

ニューアルバムのジャケットにサインをもらう(本当はこの日にもらったんじゃないんだけど)。「またずっと一緒に居ることができて嬉しい」と、あの綺麗なジャケいっぱいに銀色のペンで書いてくれた。こちらこそ、こんなに長い時間を共有できて、ほんとうに嬉しいよ。でもそのジャケをすぐにビニール袋に入れてしまって、せっかくのサインを滲ませてしまうどんくさい僕。

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アンソニーに「ずっと前に話してた、制作中だというソロアルバムはどうなったの?」と聞くと、「1年半ほど前にいくつか録音はしたんだけど、そこからなかなか進まなくてね」と。「じゃあ、もしそれが完成して、地元でお披露目ライヴをやるってことになったら、メルボルンまで観に行くから」と言ったら、タマス達も(半分冗談めかして)それはいいと。でも、もしそんなことになったら、無理やりにでもタマスにも同日にライヴ企画してもらうからね。さて、次はいよいよメルボルンでタマスのライヴを観るのを実現できるかな。


Tamas Wells Setlist 29 June 2014 @ Vacant Harajuku, Tokyo

1. I'm Sorry That The Kitchen Is On Fire
2. England Had A Queen
3. Broken By The Rise
4. Fire Balloons
5. The Northern Lights
6. Thirty People Away
7. Fine, Don't Follow A Tiny Boat For A Day
8. I Left The Ring On Draper Street
9. Moonlight Shadow
10. Open The Blinds
11. Opportunity Fair
12. Never Going To Read Your Mind
13. Lichen And Bees
14. Vendredi
15. The Treason At Henderson's Pier
16. Signs I Can't Read
17. The Crime At Edmund Lake
18. Valder Fields
19. A Riddle

[Encore]
1. True Believers
2. For The Aperture
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2014年07月06日

Tamas Wells live in Tokyo 2014 Pt. 1

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東京初日。当初予定していた富士見が丘教会から急遽変更になった会場の光明寺は、六本木のすぐ近くにこんな閑静な場所があるのかと思うほどの、都会の中のエアポケットみたいな空間だった。直前での場所探しにsinさんが苦労してたのは知ってたけど、よくもまあこんな場所を見つけてきたものだ。

朝10時にポートライナーの三ノ宮駅で懐かしい人と待ち合わせ、その人と一緒に、思いのほか混んでいた新幹線と山手線・地下鉄を乗り継いで神谷町へ。初日の福岡からしとしとと降り続いてる雨がなかなか止まないね。まあ、荷物も少ないし、傘をさすほどの雨でもないから別に気にならないけど。

会場は、お寺。わかってはいたものの、本当にお寺だ。奥の方には仏様の頭が置いてあったりする。ブロンがしきりに言ってたけど、敬虔な仏教徒の多いミャンマーなら、仏様に背を向けて演奏するなんてあり得ないセッティング。この日から参加するアンソニー・フランシスのために、これまでの二日間とは違って右手にピアノ、左手にキーボードを設置。タマスとクリスの立ち位置もいつもとは逆だ。

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前座は前日と同様、n. markことネイサン・コリンズ。曲名は全然わからないけど、多分前日と同じ曲目。最後の曲でクリス・リンチが出てきてアンビエントなギターを添えるところも同じ。ついでに言うとすごくよかったのにやっぱり途中で眠くなってしまったのも同じだった。ところで、確かn. mark名義の音源が4-5曲ほどサウンドクラウドに上がってたと記憶していたのに、いくら探しても見当たらない。こんな検索しづらい名前にしないでほしいよ。

さっぱりと髭を剃って髪の毛も短くしたアンソニーを含めた4人編成で登場。オープニングは「Vendredi」。また今日もセトリ変えてくれるんだ。クリスの弾くこの曲のピアノのフレーズ、ごく簡単なものなのに、微妙なタメというかタイミングがアンソニーやキムとはまた違ってすごくいい。連日同じようなセットで同じようなコメントばかりで恐縮だけど、ほんとにこの人が参加したことでこのバンドの音の幅というか余裕が格段に広がった気がする。

2曲目はクリスがギター、代わってアンソニーがピアノに座り、「The Northern Lights」。ピアノソロで早速心配していたミスタッチが・・・ むう、この先大丈夫かな。このライヴ中はもう絶対彼のことを見てプレッシャーかけるようなことはしないでおこう(事実、僕はまた彼の近くに座ってしまっていたんだけど、お互いもうわかってるから、登場以来すでに一切お互い目を合わせていない)。

彼が参加していないニューアルバムからの曲では、アンソニーはおとなしく下がって、ピアノの裏の方で体育座りしたり楽屋の方に引っ込んだりしていた。一度、どの曲のときだったか、タマスが突然「皆さん、キーボードのアンソニー・フランシスです」と紹介したら、その場にいなかったということがあったね。あれはわざとなのか。お笑い要員フランシス教授。

ネイサンがいつものようにアイパッドで音を操作していたら、タマスが曲間の紹介で「中国ツアーのときに彼がああいう風にしていたら、終演後にお客さんにどうしてライヴ中にメールしてるんだって聞かれてたよ」だって。まあ確かにドラマーがいきなりドラムも叩かずにうつむいてタブレット覗き込んでたらそう思ってもおかしくないかも。

「数年前に(ちなみにタマスはどんな昔の話でも「A few years ago」と言うね)駐車場というロマンティックな場所である女性にプロポーズしたら、『わからない』って返事だったんだ。そのときの経験を基にして書いた曲」といいながら「Benedict Island Pt. One」を演奏。プロポーズの結果はうまくいったと話してたからもちろんブロンのことなんだけど、今回この話をブロンとするのを忘れてたな。

ちょっと「あれ?」と思ったのが、お寺で演奏する話からミャンマーのお寺の話になって、「次の曲はミャンマーで書いたんだ」と言って「True Believers」を演奏したこと。あの曲って日本で書いたって言ってたよね。終演後に早速タマスに聞いてみたら、最初にメロディーを思いついたのが日本ツアーのときで、歌詞を書き上げたのがミャンマーに戻ってからという話。ちなみに前回の記事に書いた、キビダンゴ事件とこの曲を書いた時期はまったく別だったそうだ。たまたま前日この曲を演奏する前にキビダンゴの話をしただけだって。

今回のツアーでのハイライトのひとつである「Signs I Can’t Read」から「Melon Street Book Club」へのメドレー、最初の2日間よりも「Melon Street」を始める前にタマスがやけにじらしてたような気がする。あれはアドリブだったのかな。それにしても、自分が作曲したこの曲をタマスがライヴで弾くのを聞くのはどういう気持ちだったんだろう、フランシス教授。

「僕はお好み焼きが大好きで、日本に来たらいつも食べるんだ。でも今回は、今まで僕には秘密にされていた重要なことを知ってしまった。お好み焼きよりもすごいものを食べさせてもらったんだ。それは、もんじゃ焼き」と笑わせるタマス。僕は大阪人として決してもんじゃがお好み焼きの上だとは思わないけど、もんじゃ焼き好きのオーストラリア人というのも珍しいよね。

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「For The Apperture」みたいな音の厚い曲は、さすがにアンソニーが入ったことで音がよりふくよかになったね。いつもはこの曲ではバンジョーを弾いていたアンソニーはキーボードで参加。最初の「The Northern Lights」での失敗以降は目立ったミスタッチもなく、概ね安心して聞いていられた。ただ、ほかの3人が弾くピアノと違って、ちょっとやっぱりおっかなびっくり弾いてるせいか、アンソニーが弾くときだけはピアノの音が小さかったように思う。

「A Riddle」のときにアンソニーが顔を真っ赤にして照れながらステージ前のマイクのところに立つ。口笛要員だ。いつもタマスが自分でこうやって吹くんだよとお手本を見せる代わりに彼に見本を見せさせて、「でも僕らは口笛が下手だから皆で吹いてよ」と言って始める。口笛要員の立場は・・・

「前回のツアーでは教会で演奏したし、今日はお寺。もしかしたら次回はモスクかな」と笑わせ、そして「最後はマイケル・オールドフィールドの曲」と「Moonlight Shadow」で幕。実は、リハーサルのときにクリスに前日話していたオリジナルを聞かせてあげたんだけど、とても無理と諦められてしまった。でも、もうすっかりクロージングとして定着した感のあるこの曲で、できるだけ凝ったギターを弾いてくれようとはしていたと思う。ありがとうね。

結局、前日のセトリとは1曲目と3曲目が入れ替わって、そこに初日に演った「Benedict Island」を加えただけだったこの日のリスト。アンコールでまずタマスが一人で登場して「Grace And Seraphim」、そこにメンバー全員が加わって「Lichen And Bees」で終了。と思いきや、この日はアンコールの拍手が鳴り止まない。しょうがないのでタマスが再度一人で出てきて、「Opportunity Fair」を歌う。おお、これは今回のツアーでは初。結局、それも含めて全22曲と、今回のツアーでもっとも曲数の多い日となった。

さて、いよいよ明日はこの4日間のツアーの千秋楽。前回の東京公演で使った原宿Vacant。これまでの3日間がとんでもなく異色な場所ばかりだったから普通のハコみたいに思えてしまうけど、あそこも実はかなり気持ちのいい空間なんだよね。さあ、楽しみだ。


Tamas Wells Setlist 28 June 2014 @ Komyoji Kamiya-cho, Tokyo

1. Vendredi
2. The Northern Lights
3. Bandages On The Lawn
4. I'm Sorry That The Kitchen Is On Fire
5. I Don't Know Why She Burned Up All Those Greylead Drawings
6. The Treason At Henderson's Pier
7. Benedict Island, Pt. One
8. True Believers
9. The Crime At Edmund Lake
10. Signs I Can't Read
11. Melon Street Book Club
12. Fine, Don't Follow A Tiny Boat For A Day
13. Thirty People Away
14. Never Going To Read Your Mind
15. Valder Fields
16. For The Aperture
17. I Left The Ring On Draper Street
18. A Riddle
19. Moonlight Shadow

[Encore]
1. Grace And Seraphim
2. Lichen And Bees
3. Opportunity Fair
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2014年07月04日

Tamas Wells live in Hyogo

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一夜明け、白いご飯に明太子とシラスが乗ったものに牛蒡の天麩羅を添えただけの博多丼なるものを頂いて(日本のご飯は本当においしい)、博多駅で偶然会ったタマス・ウェルズ様ご一行と一緒の新幹線で東へ向かう。会場は、旧グッゲンハイム邸というこれまた古風な洋館。僕が宿を取った三宮から電車でほんの20分足らずの場所なのに、その駅の周りだけがどこか違う時代にタイムスリップしたような錯覚に陥るとても不思議な街に建つ素敵な空間だった。

靴を脱いで中にお邪魔する(ほんとに、他人の家にお邪魔するような感じ)。リビングとダイニングをぶち抜いたような広い部屋の前方に座布団が敷き詰められ、手前側には椅子が20脚ほど並べてある。今日は椅子席でゆっくり観ようかなと思ってたけど、もたもたしてる間に座ろうと思っていた席が早々に埋まってしまったので、いつものとおり前方の座布団席へ。

今日の前座はn. markことネイサン・コリンズ。ステッドファスト・シェパード名義はもうやめたんだって。クラシカルなピアノの弾き語りが30分弱。いや、なめてかかってましたよ僕は、申し訳ないけど。すごくよかった。クラシカルと言っても別にクラシックを演奏するわけではなく、いつもの彼らの音楽(メルボルン・コネクションとかつて僕はここに書いたね)のエッセンスをグランドピアノだけで表現したような感じ。今回のタマスのライヴ、それにこの独奏を聴いて、やっぱりこの人がこの仲間の音楽的な肝なんだと再認識。

単調なフレーズの執拗な反復とそれが徐々に形を変えていくのを観る(聴く)快感。最期の曲ではクリスが入ってアンビエントなフレーズでそれに彩りを添える。正直言って疲れと寝不足で落ちそうになってしまう瞬間もあったけど(後で本人にそう言って謝ったら「ああいう音楽はそういうもんだ」と言ってくれた)、これマジでCD出してほしい。とりあえずサウンドクラウドのやつはDLできるのかな。

そういえば、ネイサンの演奏中に外の庭かどこかから子供の叫ぶ声が聞こえてきて、ふと「Sanctuary Green」みたいと思った。あと、すぐ近くの山陽電車の音がけっこう頻繁に聞こえてくるね。まあそんなに気になるほど大きな音というわけじゃないけど。

休憩後、3人がステージに登場したのが確か8時20分過ぎごろ。楽器の位置は前日と同じ。借り物のドラムキットは当然前日とは違うものだけど編成は同じ。左側にはDiapasonという僕の知らないブランドのグランドピアノ。ネイサンも知らなかったけど、凄くいい音がすると終演後にまたためし弾きして音を確かめていたほど凄いピアノだった。小さく浜松って書いてあったから日本のブランドなんだね。ヤマハと関係あるのかな。

日本に来る前の中国ツアーは四公演とも同じセットだったという話だったから(福岡公演もその同じセット)いくら僕が全部観ることを気にしてくれているとはいえタマスもそう大きく変えてくることはないだろうと思っていたら、オープニングがいきなりニューアルバムからの「Bandages On The Lawn」。ああ、ちゃんとセトリ変えてくれるんだ、嬉しいな。

と思っていたら、間髪入れずに「The Northern Lights」。昨日と全然違うセットだ。その後も、演奏している曲自体はほとんど同じだけど(後でセトリをチェックしたら初日とは2曲が入れ替わってただけ)、受ける印象が前日とは全く違った。

例のキビダンゴを電車に置き忘れた逸話を話しだしたから何を今頃?と思ったら、その話とは何の脈絡もなく「True Believers」を歌い始めた。本人の中では脈絡ないわけでもないのかな。確かこの曲って日本で書いたんだよね。あれがそのキビダンゴ事件のときだったのか。彼の書く歌詞と同じく、皆まで語らず推し量れということなのかもしれないけど、それちょっと難易度高すぎ。まあ、大好きなこの曲を演ってくれたこと自体には何の文句もないけれど。

「For The Aperture」とかいくつかの曲でのクリスの歌伴の演奏が凄い。目立たないけれど結構テクニカルなフレーズを弾いているし、それに加えてエフェクターやボリュームのフェードイン&アウトで、もう僕にとっては何十回も聴いた曲に新たな表情を加えている。今回のライヴでプロデューサー的役割を果たしている(と僕は勝手に想像している)ネイサンとのバッキングは、今のタマス・ウェルズの音楽をライヴで再現するならきっとこうなる、というのをきっちり具現化したような音だった。

部屋に大きな床置きのエアコンは置いてあるけど、たぶん音が邪魔になるせいか、電源が切ってある。なので、これだけの人数が入るとけっこう暑い。それなのに、ときおりふっとそよ風が吹いた気がする瞬間が何度もあった。大好きな曲でタマスが歌い始めた瞬間とかね。演奏後にタマスがギターを下ろしたら、シャツの前の部分が汗でびっしょりになってたね。彼も相当暑かったんだろう。

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前日は吹き抜けの天井がうんと高かったからできなかったようだけど、この日はプロジェクターを使って天井に『On The Volatility Of The Mind』のジャケットとその色違いバージョンを投影していたのが印象的だった。ただでさえ古風な装飾のランプとかが素敵な天井なのに、それにあの不思議な版画が重なったときの一種荘厳な雰囲気はなんともいえない。

「A Riddle」を「ニューアルバムからのシングルカット」と紹介して、「僕は口笛が下手だから皆で吹いてよ」と言って始める。自分で口笛を吹いていると周りの音はよく聞こえないけど、みんなちゃんと吹いてたかな。

それで最後かと思ったら、「次の曲で終わり。マイケル・オールドフィールドの曲」と言って「Moonlight Shadow」を。よっぽど気に入ったんだね、この曲。終演後、クリスに「あの曲のギターソロがいいから、今度演奏してよ。明日ウォークマン持ってきて聞かせてあげるから」と無茶振りしておいた。

アンコールはまずタマス一人で「Grace And Seraphim」。ああこれも嬉しい。ステージ脇で二人がひざまずくように座ってしんみり聴いていたのが印象的だった。そして、二人が参加して前日同様「Lichen And Bees」で締め。

前日の素晴らしかった福岡公演を貶めるつもりは全くないし、福岡で聴いた人をがっかりさせるのが目的ではないけれど、この日は、歌も演奏もセトリもどれを取っても、僕がこれまでに観た11回のタマスのライヴの中でもトップクラスの出来だったと思う。終演後にタマスと話していてそう伝えたらとても嬉しそうにしていた。

でも、「今日のセットリストがそんなによかったなら今回はこれで固定しよう」とタマスが言うのにいやそれは困ると文句をつけたり、僕が「またFire Balloons演らなかったね」とか言ってると、タマスがもう最後に「わかった、明日のセットリストは君に任せるよ」とまで言われてしまった。あのね、僕にそういうこと言うと冗談ではすまないよ、僕の性格もう知ってると思うけど(笑)


Tamas Wells Setlist 27 June 2014 @ Guggenheim House Hyogo

1. Bandages On The Lawn
2. The Northern Lights
3. Vendredi
4. I'm Sorry That The Kitchen Is On Fire
5. I Don't Know Why She Burned Up All Those Greylead Drawings
6. The Treason At Henderson's Pier
7. True Believers
8. The Crime At Edmund Lake
9. Signs I Can't Read
10. Melon Street Book Club
11. Fine, Don't Follow A Tiny Boat For A Day
12. Thirty People Away
13. Never Going To Read Your Mind
14. Valder Fields
15. For The Aperture
16. I Left The Ring On Draper Street
17. A Riddle
18. Moonlight Shadow

[Encore]
1. Grace And Seraphim
2. Lichen And Bees
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2014年06月30日

Tamas Wells live in Fukuoka

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会場のpapparayrayって変わった名前、なんて思いながら下校途中の高校生をよけつつ閑静な住宅街をしばらく歩いてたどり着いたら、その一画だけ時代を巻き戻したようにうっそうと木が茂った古民家だった。いつもタマスのライヴ会場の選択の妙には感心させられるけど、今回もまたすごいところで演るなあ。

小さな庭を抜けて中に入ると、会場にあたる部分は民家の二階の床をぶち抜いた吹き抜けの広い空間。椅子が70-80脚ぐらい置いてあるな。失礼ながら、福岡にタマスを聴く人なんてどれぐらいいるのか全然見当もつかなかったけど、開場時刻からそう長く経たないうちにあっという間に満員になってしまった。

それほど大きなキャパの会場でもないのに、開場から開演まで1時間もある。赤のグラスワインを飲み干してしまわないように気をつけよう。なにしろここに着く前にちょっと腹ごしらえと思って福岡の地酒を二合ほど腹にしまってきたばかりだから(酒も肴も美味しかった)。

予定時刻の8時を15分ほど回ったところで暗転。オープニングはクリス・リンチ。このブログで7年も前に取り上げたブロークン・フライトの中心人物だ。それ以来時々連絡を取りながら、まだ次のアルバム出さないの?なんて話してたクリスと、7年越しでようやく会うことができた。実は、今回のタマスのツアーに彼が参加することを知ったときに、前座でブロークン・フライトとして演りなよ、なんてけしかけてみたんだけど、それがこうして実現して小さく感無量。

フェンダーのテレキャスターにエフェクター類を8個もつないで、一人であの名盤『On Wings, Under Water』の世界を可能な限り再現。そのアルバムからの曲と聴いたことのないおそらく新曲を合わせた6曲ほどのセットで30分ほどの簡素なセット。これはもう少し聴いていたかったな。せっかくそのアルバムのプロデューサーも一緒なんだから、ネイサンにも参加してもらって「A Strange Love」の神経が麻痺してしまいそうな演奏を10分続けるとか、贅沢な妄想が膨らんでしまう。

十数分の休憩を挟んで(なにしろトイレがひとつしかないから大変)、タマス・ウェルズのセット開始。ネイサンが後ろのドラムキット、クリスがさっき立っていたステージ右側、そしてタマスが正面のマイクの前にマーティンを持って立つ。左側にはアップライトピアノ。ドラムキットのところにもノードやら小さなキーボードやらごちゃごちゃ置いてある。

オープニングの選曲にはかなり意表を突かれた。「Friday」こと「I'm Sorry That The Kitchen Is On Fire」。いつもならエンディングやアンコールに持ってくることが多いこの曲で開始。その後、過去のアルバムからランダムに演奏(いつもなら最後の方に演奏する「For The Aperture」なんかも3曲目で早々に)。「しばらく前にニューアルバムが出たのでそこから何曲か演るよ」と言って「Bandages On The Lawn」を。

イントロもなく歌いだしたのが「The Northern Lights」。うわ、これは嬉しい。前回のツアーでは歌ってくれなくて、封印でもしたのかと思いきや、単に歌詞を忘れたからという理由だったのが、今回はちゃんと覚えてきたんだね(ちなみにsinさんが「あれyasさんがリクエストしたから覚えてきたの?」と後で訊いたら、「そうだっけ?」という反応だったらしいけど)。

「Thirty People Away」など、曲によっては歌詞の背景を訥々と説明してから歌いはじめる。昔からそうだったけど、どの曲のことを説明するかはそのツアーによって違うみたいだね。初期のツアーでは「Friday」や「Reduced To Clear」、しばらく前のツアーは「Signs I Can't Read」を説明してたけど、今回はこれといくつかの新曲についてだった。

前回のツアー以来すっかりレパートリーに収まった「Moonlight Shadow」。たぶんこの日の若いお客さん達もあれがタマスの新曲だと思って聴いてるんだろうな。オリジナルのドラマティックな展開はないし、歌詞やメロディーもところどころ変えてるけど、やっぱりいい曲だしタマスの声に合ってるよね。

ネイサンは主にブラシで簡素なドラムキット(バスドラ、スネア、シンバル)を叩くほか、脇に置いてあるキーボードやiPadや僕の位置からは見えない何かの機械をしきりにいじって、効果音やループを入れ続ける。クリスもギターのボリュームやエフェクターを駆使してそれに応える。これがあるから今回の音は同じ3人でもいつものタマス・ウェルズ・バンドの演奏とは全然違って聞こえるね。

それが最高潮に達したのが、タマスがピアノを弾きながら歌った「Signs I Can't Read」。ピアノ独奏に、曲のイメージどおりの幽玄なバックグラウンドノイズが覆い被さり、そのノイズの中をタマスがふと手を止め、そしてそのまま「Melon Street Book Club」に続けたところは、ある意味僕にとってこの日のハイライトだった。今思い出しても背中がぞくぞくする。

「人間には二面性があって、理性や意思に支配されたところともっと内面から自然に出てくるところ」と説明を始めたとき、ふーん次は何の曲なんだろ、なんて思ってたら、「そういう自然発生的な領域のことをValder Fieldと呼んでるんだ」と。そして、イントロなしバージョンのこの名曲を。当然ここもこの日のハイライト。ハイライト沢山あって申し訳ないけど。

「最後は新しいシングル曲」(へえ、あれシングルという位置付けだったんだ)。プロモーターの河崎さんをステージに呼んで一緒に口笛を吹いてもらう。いつも華やかにライヴを締める「Friday」や「For The Aperture」を前の方に持っていったのは、今後はこの曲がその位置を取って代わるという意味なのかな。この曲、最後どこで手拍子止めるかタイミング計るのが難しいんだけど(笑)

アンコールは「Lichen And Bees」。なんかもうこういう曲を聴いてると旧友に再会したような気持ちになる。これを最初に聴いたのももう8年前になるのか。いや、それにしても本当に今回は磐石の演奏。今までで一番プロフェッショナルな演奏だと思う。申し訳ないけどアンソニーがいないとここまで演奏が安定するのか(苦笑)

終演後にネイサンとクリスが近寄ってきてくれて(というか僕が近くにいたステージに片付けに来ただけだけど)しばらく歓談。7年前に一度会っただけのブロンまで僕のことを覚えていてくれていて嬉しい。ステッドファスト・シェパードのファーストアルバムと、ブロークン・フライトのファーストとEPを持ってきたので両名にサインをもらう。ファースト『On Wings』はさすがにあの美術品みたいなジャケにサインをするのを僕もクリスもためらったので、EPのみに簡素なサインをもらった。

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プロモーターの河崎さんやスタッフの方々とも少し話をさせてもらった。今回のこの満員のお客さんは必ずしもタマスのファンというわけじゃなく、河崎さん主催のライヴであれば観に来るという常連客が多かったようだ(九州のカフェゴーティみたいなもんだね)。逆に、「今回はいつも見かけないお客様がたくさんいらっしゃってました」なんて言われてしまった。

25年ぶりに訪れた福岡で、1年半ぶりのタマスのライヴ。この四夜連続公演のまずは完璧なスタートだった。例によって終演後にタマスにあれこれリクエストして苦笑いされたけど、残り三日間、少しはセットを変えてきてくれるかな。


Tamas Wells Setlist 26 June 2014 @ Papparayray Fukuoka

1. I'm Sorry That The Kitchen Is On Fire
2. England Had A Queen
3. For The Aperture
4. Bandages On The Lawn
5. The Northern Lights
6. Thirty People Away
7. Fine, Don't Follow A Tiny Boat For A Day
8. I Left The Ring On Draper Street
9. Moonlight Shadow
10. Benedict Island, Pt. One
11. I Don't Know Why She Burned Up All Those Greylead Drawings
12. Never Going To Read Your Mind
13. Vendredi
14. The Treason At Henderson's Pier
15. Signs I Can't Read
16. Melon Street Book Club
17. The Crime At Edmund Lake
18. Valder Fields
19. A Riddle

[Encore]
1. Lichen And Bees
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2014年04月20日

Johnny Winter live in Tokyo 2014

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「奇跡の初来日」からわずか1年で再来日、それから2年後の今回、個人的にはこれでもう4度目となるジョニー・ウィンターの来日公演。前3回を観て、内容なんてもう大きく変わるものでもないとはわかっているものの、不謹慎ながらももしかしたらこれが最後かもなんて思って、つい観に行ってしまう。

去年のオープン以来いろんな来日アーティストの公演が行われている六本木EXシアター。僕は今回大江戸線で行ったもんだから、まずあの地獄からの脱出みたいなエスカレーターをひたすら歩いて上り(ミッドタウン側だと秘密のエレベーターで一気に上がれるのに、日比谷線連絡側にはエレベーターないのかな)、そこから更に延々と歩いた六本木ヒルズお向かいという、まあちょっとした徒競走みたいな距離を歩いてようやくたどり着いた。

6時の開演前の5時開場はともかく、4時のラウンジオープンとは何かと思いながら5時20分前ぐらいに着いてみると、それは単に会場のドアが開いて中のカフェに入れるというだけの話だった。別にホットドッグとかスパゲティとか食べたいわけじゃないし、どうせ入場時に500円も払ってプラスチックコップ一杯の飲み物買わされるんだから、わざわざその前に更に500円追加で払ってビールとか飲みたくもなく。そうするとあとは寒風吹きすさぶ中庭で神社のハトのようにじっとうずくまってるか、カフェに続く階段の脇にあるひな壇状の座席で雛人形みたいに座るぐらいしかすることがない。どっちもやってみたけどあまり楽しくない。

毎回律儀に主催者からチケットを買っているせいか、今回はかなりの良席。ギターを弾く手の見づらい右側とは言え、前から2列目。ステージ上に置いてあるベースがほぼ目の前という、結構中央寄りの席。ここの1階フロアはスタンディングにもなるようで、席は立派なパイプ椅子といった風情。1階といっても、このフロアまで降りてくるためには地下3階までエスカレーターで降りてこないといけない。

さてそろそろ本編について書こう。暗転したときに時計を見るのを忘れたけど、確かほぼ定刻どおりに始まったいつもどおりのバンドメンバーだけによるイントロ。左手に黒のストラトを弾くポール・ネルソン、僕の正面にベースのスコット・スプレイ。こちらはヤマハの黒いベース。ドラムスはいつもと違う人だね。見かけエドガー・ウィンターをちょっとふくらませたようなさらさら金髪のこの人はトム・キュリアルといって、リック・デリンジャーのバンドにいた人らしい。最初の来日のときにはMCみたいな人が出てきてジョニーを呼び出したりしてたけど、今回この人がドスの利いた声で紹介したりあおったりしていた。

イントロの途中でジョニーが左手からよろよろと登場。あ、ギターがいつものレイザーじゃないね。なんかレスポールぽい形で全面マホガニーっぽい色のギター(調べてみたら、ディーンというメイカーのカスタムメイドモデルとのこと)。椅子に座って、曲の後半に参加。

いやそれにしても近い。2年前に野音で観たときもかなりステージに近い席だったけど、今回はそれを上回るね。既に不鮮明な幾何学模様と化してしまっているジョニーの刺青はもとより、しわの一本一本やいまだにさらさらの髪の毛まで仔細に見える。ただ、本当に残念なことに、僕の位置からだとギターを弾く手元が殆ど見えない。ギタリストを観たいライヴのときはステージ左手に限るね。まあ、今回のように自分で席を選べないときはしょうがないけど。

ジョニーが弾きはじめたイントロのフレーズでびっくり。1曲目から「Johnny B. Goode」か。続けて「Good Morning Little School Girl」、さらに「Got My Mojo Working」と、定番かつわかりやすいナンバーが続く。最初の頃すこし指がもたついてるかなという場面もあって、ジョニーの表情もちょっと険しかったようだけど、2曲も演奏しないうちにすぐに回復。表情のつかみにくい人ではあるけれど、時折ちょっと微笑すら浮かべながら弾いているようにも見えた。

ほとんどの曲に入る前に自分で曲紹介をするんだけど、まあこれが聞き取りにくいこと。ぼそぼそと早口でしゃべる南部訛。だいたい「次の曲は新しいCDに入っていて」とか「これはハウリン・ウルフの曲で」とか言ってるだけだからなんとかわからなくもないんだけど、僕はこの人と一対一で話したとしたら会話を聞き取る自信ないよ。

いつもに増して、ブルーズ色の薄い選曲だった。中盤、ブルーズマナーの曲もいくつか挟んだものの、べったべたのスローブルーズは1曲ぐらい。あとは、後半に行くにしたがってロックンロール大会。やっぱり日本ではこの方が受けるというのを、これまでの来日で学んだのかな。

「Bony Moronie」から「Jumpin' Jack Flash」、そして「Don't Take Advantage On Me」からいつの間にか「Gimme Shelter」に移っているメドレー、さらに「It's All Over Now」まで演ったところで、何も言わずに急に椅子から立ち上がるジョニー。え?もう終わりなの? そのままポールとスコットに手を貸してもらいながらよろよろとステージを降りていく。そうか、これまでもずっとこの曲で本編終了だったのを忘れてた。

ほかのお客さんもあっけにとられていたのか、なんとなくまばらなアンコールの拍手。それでも、「もう1曲聴きたいかー!」みたいなMCが会場に鳴り響き、お約束どおりジョニーがファイアバードを持って再登場。もうここはお馴染みの展開だろう。まずは「Dust My Broom」でスライドを弾きまくる。

そしてこれもお約束の「Highway 61 Revisited」だなあと思っていたら、これがまたものすごいスピード。スラッシュメタルかと思うほど。まあ指の動くこと動くこと。この人、椅子にきちんと腰掛けたまま指先と口以外もう殆ど動かないんだけど、その両方の指先が本当に信じられないような動きをするね(まあ、残念ながら僕のところからは殆ど見えないんだけどね)。60年間も同じことをやってたら、そこだけは退化しないということか。

ただ、ボーカルの方はもうこの速度についていけないのかもうどうでもいいのか、以前のようにそれなりにメロディーをつけて歌うことはもうやめたようで、ぼそぼそと歌詞をつぶやくのみ。そういう意味ではオリジナルのディラン的でもある。

曲の最後のブレイクあたりでトムがドラムスティックを1本客席に放り投げ、最前列中央の人がそれを受け取ってた。片手スティックのまま演奏を終え、もう1本も大きく弧を描いて客席へ。これも残念ながら僕の座っていたのとは反対方向に飛んでいった。前の来日時のようにジョニーが演奏時に立ち上がることはなかったけど、演奏が終わって立ち上がったあと、歩き出す前にちょこんとお辞儀をしたのは忘れられない。

本編がちょうど1時間、アンコールまで全部終わって1時間半。7時半にはもう解散になってしまった。ビルボードあたりで何かいいのやってればセカンドセットとハシゴできるぐらいの時間だよ。まあ、ドリンク代込みで1万円超えのライヴを観たあとにあえてあそこに行きたいとは思わないけどね。

地下3階のフォイヤーに出てみたら、エスカレーターまで長蛇の列。じゃあトイレにでも行って時間潰すかと思ったら、男子トイレですらこれまた外まで続く長蛇の列。これはひどいね。これって、地下で火災でも発生したら大惨事になるんじゃないの。この建物は耐震構造だから地震があっても慌てないようにって書いてあったけど、この構造と密閉感はたしかにちょっと不安になる。

でもエスカレーターのところまで行ってみると、まあご丁寧に皆さん左側一列に並んで立ってるよ。わずか3階分をじっと立ったまま上がらないといけないほどこちらは疲れてもいないので、右側を歩いて一気に外に出させてもらった。外に出てみると、やっぱり寒いね。4月も後半に差し掛かって、桜ももうすでに散りきっているというのに、なんでこんな気候なんだろう。

今年で70歳だというのに、2−3年前に観たときよりもよくなっている気がするよ。確かに演奏中に立ち上がることはなくなったけど、まああれは儀式みたいなもんだから。どうやら、もしかしたらこれが最後なんて、当分は心配する必要もないかもね。でも、この人とウィルコ・ジョンソンは、それを理由に毎年来日してくれてもかまわないよ。こちらとしてもできる限り会いに行くので。

Setlist 19 April 2014 @ Roppongi EX Theatre

1. Intro
2. Johnny B. Goode
3. Good Mornin' Schoolgirl
4. Got Mojo Working
5. I Don't Want No Woman
6. Black Jack
7. Killin' Floor
8. Bony Moronie
9. Jumpin' Jack Flash
10. Don't Take Adavantage On Me ~ Gimme Shelter
11. It's All Over Now

[Encore]
1. Dust My Broom
2. Highway 61 Revised
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2014年04月06日

Matt The Electrician live in Kamakura 2014 Pt. 2

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一夜明けた大船は霧のような雨が朝から降っていた。雨に濡れながら近所の大型ブックオフを攻略し(運のいいことにこの週末はCD/DVDが10%オフだったからつい8枚も買ってしまった)、開場時刻のちょっと前に鎌倉の行きつけのお店で友達とアルコールを適度に摂取した後、時間通りにゴーティへ。来ているお客さんも半分ぐらいは昨日と同じ顔触れだね。もうしっかり飲んで来たから今日は最初の一杯でやめとこうと思ってたのに、「今日は安くていいワイン入ってるよ」と松本さんに簡単に乗せられてまた一本買い。

本日の前座はWada Mambo、とてもギターのうまいお兄ちゃんだった。前座って当たり外れあるけど、これは聴いてて気持ちよかったね。しきりに「すぐ終わります」とかなんだかえらく腰も低かったし(笑)。帰りにまたCD一枚買ってしまったよ。サインももらって。なんかほかにもたくさんアクセサリー売ってたね。そっちは僕は買わなかったけど。

マットのライヴを観るのはこれで4回目になるけれど、だいたいいつもしっとりとした静かな曲で始めるよね。この日は奇しくも僕が前回富士で観たときと同じく「The Last Ones Left」で開始。続く「Accidental Thief」のときに、床に置いてあった僕のワイングラスを後ろの席の人が間違って倒してしまうというちょっとしたアクシデントが。曲が終わったときに松本さんが雑巾を持って拭きにきてくれたんだけど、その間を埋めるためにマットがなにやら即興でバンブルビーの曲を延々歌っていたのがおかしくて。

前日、松本さんにカバー曲多すぎと言われたためか、この日は自作曲を淡々と続ける。前半も半分を超えた頃だったろうか、「これまでのところ昨日とは全然かぶってないだろう?」と、なぜか僕の顔を見て訊かれる。セトリもないし適当に歌ってるように見えて、一応曲順とか考えながらやってるのかな。でもそのあと、「ここで1曲、昨日も演った曲を。ごめんなさい」と。別に謝る必要なんてないのに。

それが、前日はレベッカがコーラスをつけていた「Osaka In The Rain」だったんだけど、なんとこの日は自発的にお客さんが一緒に歌いだすという展開に。嬉しそうなマット。途中からはコーラス部分はお客さんだけに歌わせてた。

卒業生代表の女の子がスピーチのときに服を脱いでしまったというのが実話だと紹介しながら始めた「Valedictorian」。これを前に演奏した江津では高校生の女の子が3人観に来ていたけど、この曲を聴いて服を脱いでしまうほどには触発されなかったよ、と冗談を。後ろに座っていた外国人の女性客が日本語でValedictorianの意味を説明してくれていたね。そういえば前日もこの日も、マットのライヴになるとゴーティは結構外国人のお客さんが多い気がする。

前半にはほかに僕が前日にリクエストした「College」も演奏してくれたな。ほかにはこれも一昨年の富士で演ったアーロン・リー・タスジャンの「Summer Of Legs」とか。そして、前半最後は昔ファンだったというキャンパー・ヴァン・ベートーヴェンの「When I Win The Lottery」で締め。

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後半はこれもまた地味に「Arkansas」でスタート。数曲演ったところで、「リクエストされたのでこれを。覚えているかどうかわからないけど」と、「Permanent Record」を歌い始めた。やった、これも僕のリクエストだ(というか、たぶん他にわざわざリクエストしてた人はいなかったように思う)。

ところが、サビのところまで来ると「ランランラララララー♪」とまたしても歌詞忘れ。「たしかこんなメロディーだったよな」と。えー、一昨年リクエストしたときは普通に歌ってたのに。しばらくそのまま同じコードを弾きながら歌詞を思い出そうとして、でも諦めて僕に「コーラスの歌詞わかる?」と。「I saved every little thing」と歌ってあげると、ああそうだったとばかりに残りのサビ部分を歌う。で、二番に移るとまた歌詞が出てこない。うわー、もうその目でこっちを見るのをやめてくれー。俺が悪かった。

結局この日も松本さんが携帯に歌詞を検索して持ってきてくれたので残りは無事に終了。次回からはリクエストしたい曲は自分で歌詞を覚えてくること、というのが今回の一番の教訓。

次の「The Kids」もちょっと歌詞が危うい。でもそれは僕のリクエストじゃないからね、僕のせいじゃないよ。なんとかつっかえつつ歌っていたそのとき、今度は僕の前に座っていた人が誤ってワイングラスを倒してしまい、「このあたりは呪われているんだ」とマットが僕の方を指をさす。うむ、そうかもしれない。なんかこれからも僕の顔を見るたびに歌詞を度忘れしそうで嫌だな。

これも僕がリクエストした「I Wish You Didn't Feel Like My Home」に続け、休憩時間中に他のお客さんがリクエストをしていたのを見ていた「I Will Do The Breathing」を、「この曲は昨日演ったんだけど、リクエストされたから」と演奏。いや、こんないい曲は別に連日歌ってくれて全然かまわないから。誰も気にしないから。

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終盤、Wada Mamboを呼んでギターを弾いてもらう。前日も演奏した「Lullaby Of Birldand」のカバーに続いて、ポリースの「Bring On The Night」。ああこれは嬉しい。かっこいい。さらに続けて二人で演奏した「Train」で幕かと思いきや、最後はまたしっとりと「You And I」で終了。アルバム最後の静かな曲でコンサートを終えることの多い人だね。

アンコール1曲目は珍しい「Divided By 13」。そして、前日リクエストしたけどやっぱり演ってくれなかったなと思っていた「Facebook Friend」をここにきて演奏。やった。歌詞もちゃんと覚えてたし、安心して聴けたよ。

これで終わりかと思いきや、まだ鳴り止まないアンコールの拍手に応えて「Rocky Raccoon」、さらに「Hold On」で幕。こんなにたくさんアンコール演ってくれるなんて。

終了後はまた表で雑談しつつ、最新盤にもサインをもらう。前日の『Baseball Song』には「Play Ball」と寄せ書きしてあったけど、スケートボードを持ったジャケのこのアルバムには「Skate On」と。

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ずっと話してたかったけど、マットもお疲れだろうし、僕も翌朝の便で帰国してそのまま会社行かないといけなかったから、「また来年」とゴーティを後にした。8年目、8回目の来日では今度はどんな日本語を覚えてくるかな。
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2014年03月31日

Matt The Electrician live in Kamakura 2014 Pt. 1

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飛行機の車輪がドン!と着地してから成田空港の手荷物検査を通り抜けるまでわずか20分。たぶん自己最短記録だ。なんとか15時14分発のNEXに乗らないと、18時の開場時刻に間に合わなくなってしまう。

前の週に別件で東京に来ていたときには3月とは思えないほどの寒さだったのに、この日はまた3月とは思えないほどの陽気で、大急ぎでNEXの座席にたどり着いたときには1枚しか着ていなかったシャツの下に汗がにじむほどだった。でもこれで、2時間ほど座っているだけで大船まで乗り換えなし。東京からだとやたら遠いが、海外からのアクセスは意外に便利なカフェゴーティ。

急いで駆けつけたものの、開場から開演まで1時間もあったから、いつか食べてみたいと思っていたゴーティのカレーを食べて(おいしかった)、外の階段のところに座って一服していたマットに話しかける。最初に階段に並んでいた僕の顔を見たときに手を上げて挨拶してくれたからきっと顔は覚えていてくれたんだと思うけど、今日もマニラから着いたばかりという話をしたら嬉しそうにしてくれた。しばらく話したついでに、また例によってリクエストをいくつかお願いしておいた。

11日間で9都市・10公演というハードなツアーの終盤にあたる鎌倉ゴーティ2デイズの初日。マットが新譜をプロデュースしたという同郷のレベッカ・ロービが30分ほどの前座を務め、19時45分ぐらいにいよいよマットが登場。いつもお馴染みの赤と黒のチェックのシャツ(今回のツアーには同じのを10着持ってきたらしい)。上に載せた最近のアー写よりもずいぶん髪の毛が伸びている。髭はいつもどおり。

レベッカが使っていたのよりも小振りなサイズのギターを抱えて(ヘッドのところにMみたいなロゴがあったけど、あれはどこのメーカーなんだろう)、一曲目は新作のタイトル曲「It's A Beacon It's A Bell」。一昨年のライヴでもこれを新曲として既に演奏していたけど、もう8枚目にもなるアルバムにまだこんなに新鮮な(でもすごく彼らしい)メロディーの曲が入っているのがすごく嬉しい。4枚目のスタジオアルバムがなかなか出せないでいるゴーティお馴染みの某アーティストにも見習ってもらいたいものだ。

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2曲目に「I Will Do The Breathing」というのは一昨年の富士でのライブと同じ構成(今年の富士公演も観た友達によると、そのときもこの最初の2曲は同じだったらしい)。それを終えたところで、「今日来ているお客さんのうちの大勢はきっと明日も来てくれるだろうから、できるだけ違う曲を演るようにするよ」と。それは嬉しい。こういうのがあるからこの人の(あとボジアやグレンも)ライヴには連日で足を運んでしまうんだよね。

日本語で「オバケ」と連発しながら、次の「Ghost Story」を演奏。ゴーティのピアノの上に並んでいる山羊のぬいぐるみを指差して「ほらそこにもオバケが。…ゴーツ」と冗談も交えて。7年間の7回の来日で7つの日本語を覚えたという話をしながら、「ありがとう、こんにちは、サルのオバケ。なんて変な文章だ」と笑わせる。

バンジョレレに持ち替えた「Osaka In The Rain」のときにレベッカを呼んでコーラスをさせる。とても歌の上手な彼女だけど、こういうのを聴くと余計にシーラのコーラスで観たいと思ってしまうよ。「これは7年前に大阪に行ったときに書いた曲。歌詞にあるように奥さんをいつか日本に連れてきたいと思っているんだけど、彼女は怖がって来たがらないんだ」と。理由ははぐらかしてたけど、きっと原発事故のこととかが後を引いているのかな。

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前半最後の「Milo」に入る前にサバイバーの「Eye Of The Tiger」のイントロを弾き始め、「いやこれじゃない」と中断。前日の静岡ではレッド・ゼッペリンの「Good Times Bad Times」を演ったというから、てっきりこれもありかと思ったけど。

「Milo」にはいつものようにポール・サイモン・メドレーを挟む。「Diamonds On The Soles Of Her Shoes」は定番だけど、この日は「You Can Call Me Al」をつなげてた。そのあと、「これは皆で歌って」といきなり振るからなにかと思いきや、「Happy Birthday」。どうやら最前列のお客さんがこの日誕生日だったようだ。たしか一昨年の富士でも同じようにやってたな。

休憩を挟んで後半1曲目は「One Thing Right」。そして、「10年前に酒は止めたんだ」と「Change The Subject」を。僕がリクエストしたうちの一曲だ。アルバムバージョンじゃなくてライヴ盤の速いやつを、と。10年前って、アルバムの写真を見る限りは、あのものすごい髭を伸ばし始めた頃だよね。もしかしたらその頃にイスラムに改宗でもしたのかな。

その後も「この曲は長いこと演ってない」とか言いながら僕のリクエストした「These Boots」とか「For Angela」とか演奏してくれた。ところが、わざわざ松本さんに曲の解説をさせて始めた後者の途中、「my car is not American made」という箇所でアドリブで「ホンダ、スゴイ」とか言ったもんだから、続きの歌詞がスコンと頭から抜けてしまった。「あれ?なんだっけ」と必死に思い出そうとするものの全然出てこず、何名かのお客さんがその直前の歌詞のヒントをいくつか投げかけても駄目。最初に戻って早送りで歌いだしたけどまたその箇所でつっかえる。焦った表情で僕のことを見るんだけど、ごめん、リクエストしたものの僕も歌詞出てこないよ。

結局松本さんが携帯で検索した歌詞を持って助け舟。その箇所さえ思い出せれば後はすらすら出てきたから後半は問題なかったけど、なんかリクエストして逆に悪いことしてしまったな。大好きな曲なのに、今やCDでこれを聴くとあのときのマットの焦った顔ばかりを思い出してしまう。

この日の後半はアンコールも含めて、松本さんが「もっと自分の曲演ってよ」とリクエストしたほどカバー曲が多かった。一昨年の富士でも演ったメルヴァーン・テイラーの「Sad And Blue」とか。あと僕は知らなかったけど友達に後で教えてもらったマイケル・ペンの「No Myth」とか。

アンコールのラストは「Love On The Moon」で静かに終了。開演前に僕が『Made For Working』が好きだという話をしていたせいか、あのアルバムからの曲が比較的多かったような気がする。トム・フロインドの家に呼ばれて朝っぱらから彼の娘のために「Diaryland」を歌わされたという逸話付きでその曲も演ったし。

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終演後は外の階段のところでひとしきり雑談。『Baseball Song』と『Long Way Home』にサインをしてもらうときに「この辺のCDは僕も持っていないんだよ」とびっくりした顔で見られる。そういうものなのか。僕が「あと『Home』だけ持ってないんだ。ダウンロードでしか見かけたことないから」と言うと、「うん、僕もダウンロードしたよ」だって。あんまり音質とか気にしないんだね。LPも出すつもりはないみたいだし。

あとは、4枚売っていたレベッカのCDのうち、マットがプロデュースしたやつを買って彼女にもサインをもらう。ついでにそこにあったメーリングリストにもアドレスを書いてきた。彼女と、一緒に来日してたけどその日は歌わなかったリンジー(二人ともThe Voice出身らしい)に手を振って、マットに「また明日ね」と、やたら暖かかった昼間とはうって変わってえらく寒くなった小町通りを鎌倉駅に向かった。

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