2014年03月31日

Matt The Electrician live in Kamakura 2014 Pt. 1

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飛行機の車輪がドン!と着地してから成田空港の手荷物検査を通り抜けるまでわずか20分。たぶん自己最短記録だ。なんとか15時14分発のNEXに乗らないと、18時の開場時刻に間に合わなくなってしまう。

前の週に別件で東京に来ていたときには3月とは思えないほどの寒さだったのに、この日はまた3月とは思えないほどの陽気で、大急ぎでNEXの座席にたどり着いたときには1枚しか着ていなかったシャツの下に汗がにじむほどだった。でもこれで、2時間ほど座っているだけで大船まで乗り換えなし。東京からだとやたら遠いが、海外からのアクセスは意外に便利なカフェゴーティ。

急いで駆けつけたものの、開場から開演まで1時間もあったから、いつか食べてみたいと思っていたゴーティのカレーを食べて(おいしかった)、外の階段のところに座って一服していたマットに話しかける。最初に階段に並んでいた僕の顔を見たときに手を上げて挨拶してくれたからきっと顔は覚えていてくれたんだと思うけど、今日もマニラから着いたばかりという話をしたら嬉しそうにしてくれた。しばらく話したついでに、また例によってリクエストをいくつかお願いしておいた。

11日間で9都市・10公演というハードなツアーの終盤にあたる鎌倉ゴーティ2デイズの初日。マットが新譜をプロデュースしたという同郷のレベッカ・ロービが30分ほどの前座を務め、19時45分ぐらいにいよいよマットが登場。いつもお馴染みの赤と黒のチェックのシャツ(今回のツアーには同じのを10着持ってきたらしい)。上に載せた最近のアー写よりもずいぶん髪の毛が伸びている。髭はいつもどおり。

レベッカが使っていたのよりも小振りなサイズのギターを抱えて(ヘッドのところにMみたいなロゴがあったけど、あれはどこのメーカーなんだろう)、一曲目は新作のタイトル曲「It's A Beacon It's A Bell」。一昨年のライヴでもこれを新曲として既に演奏していたけど、もう8枚目にもなるアルバムにまだこんなに新鮮な(でもすごく彼らしい)メロディーの曲が入っているのがすごく嬉しい。4枚目のスタジオアルバムがなかなか出せないでいるゴーティお馴染みの某アーティストにも見習ってもらいたいものだ。

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2曲目に「I Will Do The Breathing」というのは一昨年の富士でのライブと同じ構成(今年の富士公演も観た友達によると、そのときもこの最初の2曲は同じだったらしい)。それを終えたところで、「今日来ているお客さんのうちの大勢はきっと明日も来てくれるだろうから、できるだけ違う曲を演るようにするよ」と。それは嬉しい。こういうのがあるからこの人の(あとボジアやグレンも)ライヴには連日で足を運んでしまうんだよね。

日本語で「オバケ」と連発しながら、次の「Ghost Story」を演奏。ゴーティのピアノの上に並んでいる山羊のぬいぐるみを指差して「ほらそこにもオバケが。…ゴーツ」と冗談も交えて。7年間の7回の来日で7つの日本語を覚えたという話をしながら、「ありがとう、こんにちは、サルのオバケ。なんて変な文章だ」と笑わせる。

バンジョレレに持ち替えた「Osaka In The Rain」のときにレベッカを呼んでコーラスをさせる。とても歌の上手な彼女だけど、こういうのを聴くと余計にシーラのコーラスで観たいと思ってしまうよ。「これは7年前に大阪に行ったときに書いた曲。歌詞にあるように奥さんをいつか日本に連れてきたいと思っているんだけど、彼女は怖がって来たがらないんだ」と。理由ははぐらかしてたけど、きっと原発事故のこととかが後を引いているのかな。

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前半最後の「Milo」に入る前にサバイバーの「Eye Of The Tiger」のイントロを弾き始め、「いやこれじゃない」と中断。前日の静岡ではレッド・ゼッペリンの「Good Times Bad Times」を演ったというから、てっきりこれもありかと思ったけど。

「Milo」にはいつものようにポール・サイモン・メドレーを挟む。「Diamonds On The Soles Of Her Shoes」は定番だけど、この日は「You Can Call Me Al」をつなげてた。そのあと、「これは皆で歌って」といきなり振るからなにかと思いきや、「Happy Birthday」。どうやら最前列のお客さんがこの日誕生日だったようだ。たしか一昨年の富士でも同じようにやってたな。

休憩を挟んで後半1曲目は「One Thing Right」。そして、「10年前に酒は止めたんだ」と「Change The Subject」を。僕がリクエストしたうちの一曲だ。アルバムバージョンじゃなくてライヴ盤の速いやつを、と。10年前って、アルバムの写真を見る限りは、あのものすごい髭を伸ばし始めた頃だよね。もしかしたらその頃にイスラムに改宗でもしたのかな。

その後も「この曲は長いこと演ってない」とか言いながら僕のリクエストした「These Boots」とか「For Angela」とか演奏してくれた。ところが、わざわざ松本さんに曲の解説をさせて始めた後者の途中、「my car is not American made」という箇所でアドリブで「ホンダ、スゴイ」とか言ったもんだから、続きの歌詞がスコンと頭から抜けてしまった。「あれ?なんだっけ」と必死に思い出そうとするものの全然出てこず、何名かのお客さんがその直前の歌詞のヒントをいくつか投げかけても駄目。最初に戻って早送りで歌いだしたけどまたその箇所でつっかえる。焦った表情で僕のことを見るんだけど、ごめん、リクエストしたものの僕も歌詞出てこないよ。

結局松本さんが携帯で検索した歌詞を持って助け舟。その箇所さえ思い出せれば後はすらすら出てきたから後半は問題なかったけど、なんかリクエストして逆に悪いことしてしまったな。大好きな曲なのに、今やCDでこれを聴くとあのときのマットの焦った顔ばかりを思い出してしまう。

この日の後半はアンコールも含めて、松本さんが「もっと自分の曲演ってよ」とリクエストしたほどカバー曲が多かった。一昨年の富士でも演ったメルヴァーン・テイラーの「Sad And Blue」とか。あと僕は知らなかったけど友達に後で教えてもらったマイケル・ペンの「No Myth」とか。

アンコールのラストは「Love On The Moon」で静かに終了。開演前に僕が『Made For Working』が好きだという話をしていたせいか、あのアルバムからの曲が比較的多かったような気がする。トム・フロインドの家に呼ばれて朝っぱらから彼の娘のために「Diaryland」を歌わされたという逸話付きでその曲も演ったし。

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終演後は外の階段のところでひとしきり雑談。『Baseball Song』と『Long Way Home』にサインをしてもらうときに「この辺のCDは僕も持っていないんだよ」とびっくりした顔で見られる。そういうものなのか。僕が「あと『Home』だけ持ってないんだ。ダウンロードでしか見かけたことないから」と言うと、「うん、僕もダウンロードしたよ」だって。あんまり音質とか気にしないんだね。LPも出すつもりはないみたいだし。

あとは、4枚売っていたレベッカのCDのうち、マットがプロデュースしたやつを買って彼女にもサインをもらう。ついでにそこにあったメーリングリストにもアドレスを書いてきた。彼女と、一緒に来日してたけどその日は歌わなかったリンジー(二人ともThe Voice出身らしい)に手を振って、マットに「また明日ね」と、やたら暖かかった昼間とはうって変わってえらく寒くなった小町通りを鎌倉駅に向かった。

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2013年11月17日

Neal Casal & Bruce Hughes live in Kamakura

また運よく東京出張の日程にちょうど重なった、ニール・カサールとブルース・ヒューズのライヴ。ニールはこの日が日本公演最終日で翌日には帰国、ブルースは来日したばかりでこれから日本各地を回ることになるという、ちょうどこの夜、このタイミングでしか実現できなかった組み合わせ。一昨年のジム・ボジアとスクラッピー/ブルース/マット以来の夢の競演だ。

僕はニールのアルバムは近作を3枚持っていただけで、この来日に合わせて予習用に数枚買い足したばかり。知ってる曲は聴けばわかるけど、タイトルや歌詞を覚えるほどには聴き込めていない。ブルースにいたっては、リゼントメンツのCDを何枚か持っているけど、こちらも予習用にソロアルバムを一枚先月聴いただけ。そんな程度の乏しい知識でどれだけ楽しめるかわからなかったけど、こんなのを観られる機会はもしかしたら二度とないだろうと、東京での会議を早々に切り上げ、鎌倉に向かった。

友達に一緒に取ってもらったチケットは比較的いい整理番号だったけど、そんなにわかファンのおっさんが一番前に陣取るのもはばかられたので、正面二列目のベンチシートを確保(ゆったりもたれて座ってられるというのがもっと大きな理由)。周りは見知った顔ばかり。「どうせおかわりするんでしょ?ボトルの方がいいんじゃない?」との松本さんの誘惑に抗えず、赤ワインのボトルを入れて小さく乾杯。

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開演予定の19時半を15分ほど過ぎたところで、物販スペース(?)あたりで知り合いのお客さんたちと話していた二人がようやく楽器のところに来る。ブルースが右側に座り、くすんだ白のフェンダー・プレジションと、ギルドのアコギ。左側のピアノ前のニールは赤いギブソンES339と同じくギブソンのアコギ。まず一曲目は、二人ともアクースティックでブルースの曲から。

一曲ごとにそれぞれの持ち歌を歌い、その都度二人とも楽器を持ち換える。今までこの二人でデュオで演奏したことはなく、この日初めて会ってお互いの曲を覚えないといけなかったなんてとても思えないほど見事に息の合った演奏。もちろん二人とも優秀なセッションマンだから他人の曲に合わせて弾くのはお手のものなんだろうけど、単にスリーコードの曲とかをジャムセッションするのとはわけが違うからね。コーラスも綺麗にハモってるし。すごいや。

当然といえば当然なんだけど、ニールのエレキとブルースのベースという組み合わせが、やっぱり一番しっくりくる。連綿と続くギターソロの繊細なフレーズもよかったけど、なんといってもブルースのベースライン。決して凄いテクニックを使ってるわけじゃないのに、この箇所はこういう音が鳴っていれば気持ちいいなという音をぜんぶ的確に当ててきたり、へえここにこんなフレーズを入れるんだと新鮮な驚きを与えてくれたり、実に雄弁。松本さんがどこかに書いてたけど、本当にまるでベースが歌っているみたい。

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曲自体とヴォーカルは僕はどちらかというとニールの方が好きかな。前半でさっさと披露してしまった「You Don't See Me Crying」(一緒に観ていたN君の生涯ベスト20のうちの一曲だったはず)とかを聴いていると、なんで僕はこの人のアルバムをまだ全部集めていないんだろうと思ってしまう。ライヴ中にブルースも言ってたけど、とても沢山のアルバムを出しているから(客演盤まで入れたらきっと数え切れないほどだろう)、これから気長に揃えていかないと。

なんて思いながら聴いていたけど、本編第二部の最後に演奏したブルースの「People Ask Me」が僕にとってのこの日のハイライト。二年前の横浜のライヴで聴いて知っていた好きな曲だというのもあるけど、途中スローなヴォーカルだけになる部分でニールがソロを入れようとするのを手で制し、その後のギターソロに入るところで「そらここだ、思う存分弾いてくれ」とばかりに場をコントロールするブルース。そしてそれに応えて最高のソロを奏でるニール。確かニールが長いソロを終えようとしたところでブルースが「もうちょっと」と催促してたね。同感。あんなに気持ちいいソロ、終わってほしくなかったもの。

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30分ほどの休憩を挟んだ本編とアンコール1曲で、全部終わったときはもう22時半を回っていたはず。N君は某県までその日中に帰るのをもうとっくに諦めてるし、僕の左右のベンチシート組も二本目のワインボトルを綺麗に空にしたぐらいの長時間ライヴ。きっと、二人の曲のオリジナルバージョンをよく知っていればもっと細かい楽しみ方ができただろうなというのはよくわかるけど、こんなにほとんど何も知らない状態で挑んで、こんなに楽しめたライヴも久し振りだ。

終演後は例によって演者観客入り混じって談笑しているところを、ニールには持参した『Return In Kind』、ブルースにはその場で購入した新譜『Trapdoor』にサインをもらう。ブルースは丁寧に名前も聞いて書いてくれたし、“Keep It Real”ってメッセージも入れてくれた。「この新譜からは今日どの曲を演奏した?」と聞いたら、「1〜3曲目と、あとこれ」と確か5曲目の「Fearless」だって。

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そのブルースの新譜に加えて、取り置きしてもらっていたティム・イーストンの新譜LPとマット・ジ・エレクトリシャンの新譜CD(最近ハイレゾ音源とかに目覚め始めてしまって、どうもCDの音質だと物足りなくなってきてしまった。みんなLP出してくれればいいのに)を購入。ゴーティにはなかなか来られないから、少しでもお金落として行かないと。もうこんな素敵なライヴが観れなくなってしまうと困るからね(笑)。マットのは開演前にBGMで流れてたけど、すごくよさそうだったよ。これから帰って聴くのが楽しみ。

酔いも手伝って帰りの道中きっとしつこいぐらいに友達に言ってたのは、音楽が好きでいて本当によかったと思える瞬間があるよねってこと。ちょうど日本的にはとてつもなく盛り上がっている元ビートルズの11年振りの来日公演を観てもきっと同じように思うんだろうけど(僕の出張タイミングさえ合えばもちろん観に行きたかったんだけど)、その大興行の裏番組でひっそりとこんな贅沢な夜があったことは、ポールのライヴを観た人口の何千分の一の僕たちだけしか知らない。こういう音楽が好きでいて、本当によかった。
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2013年09月01日

yascd024 にほんはっけん その後の20年

グレアム・パーカーが来る。78年のルーモアを伴っての初来日はもちろんのこと、93年のソロ公演も観ることのできなかった僕にとっては、30年間彼の音楽を聴き続けてきて初めてのチャンスだ。会場はまあ最高とは言えないけど、文句なんて言ってられない。

日本でこの話題がどれぐらい盛り上がっているのかわからないけど、(日本に限らず)グレアム・パーカーなんてたぶん一般的にはコステロなんかとよく比較されていた初期の数枚のアルバム以降はどんどん忘れ去られてきた存在なんじゃないだろうか。ビルボード4回なんて本当に埋まるのかなとちょっと心配になったりもする(まあ、僕みたいに複数回観るファンもきっと多いんだろうけど)。

93年の来日公演はその年のうちに『Live Alone! Discovering Japan』という、89年の名盤『Live Alone In America』をもじったタイトルのライブアルバムになり、ライヴを観られなかった僕としてはそれは大喜びしたものだ。

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『Live Alone! Discovering Japan』

それからの20年間一度も来日せず、きっと日本のメディアやネットで取り上げられることもほとんどなかったとは思うけど、実際には彼はかなり精力的に活動し続けてきていた。コンスタントに発表されるアルバム以外にも、サイトオンリーの限定ライヴ盤シリーズや何枚も出てくる未発表曲集やベスト盤、クリスマスEPやカバーアルバム、あちこちのレーベルから出てくる発掘ライヴ盤の数々と、全部追っかけるのには相当苦労する量のCDが出ている。今CDラックを見てみたけど、さっきの『Live Alone! Discovering Japan』以前の17年とそれ以降の20年では、最近20年が前半17年の二倍以上の幅になってしまっているよ。

そんなだから、出るCD出るCDほぼきっちり買い続けている僕にとっても、全部をじっくり聴けていないのが実情。初期の発掘ライヴなんて結構どれも同じような選曲で同じような感じだしなーとか贅沢なこと言ったり、最近のアルバムも悪くないんだけどなんか地味、とかろくに聴きもしないで。

こんなことではまずいと、せっかくの来日を機に、前回の来日以降に出たアルバムを集中的に聴きなおしてみることにした。フルアルバムだけでも95年の『12 Haunted Episodes』から去年出た『Three Chords Good』まで8枚。ついでに、それぞれのアルバムから印象的な曲を20ほど集めて、久々のyascdを作ってみることにした。本当は、この8枚以外の未発表曲集とかからも入れたかったんだけど、8枚からだけですでに20曲に絞るのが難しいほどだったからそれは断念。なんだ、最近のアルバムにもしっかりいい曲たくさん入ってるじゃないか。


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『Three Chords Good』

1. She Rocks Me
2. Long Emotional Ride

まずは、去年発表された再結成ルーモアとのこのアルバムからさかのぼっていくことにしよう。ルーモアと袂を分かってからも単体メンバーとはちょくちょく一緒に演ってたから、そんなに仲が悪いという訳じゃないんだろうなとは思ってたけど、やっぱりこうして全員揃うのを見ると感慨もひとしお。ジャケを見ると最初から概ねハゲだったボブ以外もことごとくはげたり白髪だったりするところがもの凄い年月を感じさせるけれど、内容もまたそれなりに円熟味のあるものになっている(グレアムとマーティンの身長差30センチ強というのもこうやって見るとよくわかるね)。

今回の日本公演を終えて帰国したら今度はルーモアとの英国ツアーだというのを聞くと、やっぱりそっちが観たかったと欲が出てしまう。正直言って全12曲中それほどの名曲はなかったと思うけど、今のこのラインアップで初期の曲を演奏するのを聴いてみたい。来年あたり誰かルーモアと一緒に(できればちゃんと立って観られるもう少し安めのハコで)日本に呼んでくれないだろうか。


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『Imaginary Television』

3. Broken Skin
4. Always Greener

10年発表のこのアルバムは、前年の『Carp Fishing On Valium』あたりから色々やりはじめたストーリーテリングの手法を新作アルバムにしてみたという感じだろうか。ブックレットにはそれぞれの曲の歌詞でなく背景のストーリーが書いてあり、それを架空のマスコミが論評しているというような文章がびっしり。まさにアルバムタイトルどおりの『架空のテレビ』。歌詞を全部聴き取れるわけでないこちらとしては、曲とこの文章をそれなりに分離して楽しむしかなく、そういう意味ではちょっと歯痒さの残るアルバムではある。まあ、ちゃんと聴き込めていない自分が悪いんだけれど。


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『Don't Tell Columbus』

5. Love Or Delusion
6. Total Eclipse Of The Moon
7. Somebody Saves Me
8. Bullet Of Redemption

今回の選曲にあたって、07年発表のこのアルバムが一番の難関だった。当初はフルアルバム8枚から2曲ずつ、その他の未発表曲集とか企画盤から4曲ほど選ぼうと思っていたんだけど、全12曲入りのこのアルバムの半分以上が候補に挙がってしまい、ようやくそこから半数に絞ってのこの結果。おかげで、未発表曲とかを入れる案はボツに。間違いなく、この20年間での最高傑作。調べてみたら、このアルバムは日本盤も出たんだね。

逆に言うと、過去5年間に出たアルバムやシングル(と呼べばいいのか、サイトオンリーで発表され続けている単発曲)が、このアルバムのレベルを超えられないでいるという事実がちょっと淋しくもある。まあ、別に才能が枯渇してしまったとか本人にやる気が見られないとかいう話ではないので、またすぐに出るであろう次のアルバム(またルーモアと演るのかな?)を待っていよう。


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『Songs Of No Consequence』

9. Vanity Press
10. Bad Chardonnay
11. She Swallows It
12. Go Little Jimmy

このアルバムのことはかつて少しだけ書いたことがある。主に、このアルバムの後に出たライヴ盤についてだけど。これもまた、2曲には到底絞りきれなかったほどのいいアルバム。ベースを弾いてプロデュースも務めているのが、今年ジム・ボジアと一緒に来日したピート・ドネリー。彼を含めたフィグズのギターのマイク・ジェントとドラムスのピート・ヘイズはこの後もしばらくグレアムと一緒に活動することになる(上に書いた何枚かのアルバム)。

12曲目で全編にわたってハーモニカを吹いているのがG.ラヴだというのが、きっとここ最近で曲がりなりにもメジャーアーティストがこの人のアルバムにゲスト参加した唯一の例じゃないだろうか(昔はスプリングスティーンとか参加してくれてたのにね)。それはさておき、収録曲の歌詞をランダムに並べたこのジャケに惹かれる人はそういないとは思うけど、これはさっきの『Don't Tell Columbus』と並んで、最近のグレアムのアルバムを何か聴いてみようと思う人がまず入るところとして間違いのない盤。


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『Your Country』

13. Queen Of Compromise
14. Crawling From The Wreckage (Revisited)

ブラッドショットレーベル移籍第一弾、04年発表のこのアルバムが、彼の正規盤の中では最も異色作かも。タイトルに掛けているのか、内容はほぼカントリー。正直、僕にとっても一番馴染みの薄いアルバムではある。前作、次作でのピート・ドネリーの替わりにこのアルバムでベースを弾いているのはトム・フロインド。カフェゴーティ絡みのアーティストが多いな。どうせなら、今回グレアムもゴーティで呼んでくれればよかったのに。

このセレクションには入れなかったけど、アルバム中一曲でルシンダ・ウィリアムズがデュエットしてるね。ここにもメジャー級が。14は、言わずと知れたデイヴ・エドモンズに提供したあの曲。ただ、これもまたカントリー調にリメイクしてあるので、あの疾走感を期待するとちょっと拍子抜け。


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『Deepcut To Nowhere』

15. I'll Never Play Jacksonville Again
16. Syphilis & Religion

前作から5年ぶりとなる01年発表、レイザー&タイレーベルからの最後の作品。さっきの『Don't Tell Columbus』もそうだけど、こういうちょっとシリアス系のジャケで来たときの彼の作品にあまり外れはない。きっと5年間じっくり曲を書き貯めていたんだろうなと思える好盤。このアルバムからも、本当は名曲「Blue Horizon」も入れたかったんだけど、それを含んだ最初の選曲だと20曲で80分10秒というCD-Rに入りきらない微妙な感じになってしまったので断念。時間合わせに代わりに入れた16が決して駄曲というわけではないのがこのアルバムの奥の深さを物語っていると思う。


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『Acid Bubblegum』

17. Get Over It And Move On
18. They Got It Wrong (As Usual)

ではこのパーカー史上最もやる気のなさそうなジャケの96年盤はどうかというと、これがそんなに悪いわけではない。ここに入れた2曲をはじめとして、結構初期の名曲を髣髴とさせる激しい曲がいくつもあるし。ベースはルーモアのアンドリュー・ボードナー、ドラムスのゲイリー・バークって誰だっけと思ったら、ジョー・ジャクソンとかと一緒に演ってた人だ。


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『12 Haunted Episodes』

19. Force Of Nature
20. Disney's America

そしてこれが、前回の来日以降最初に発売されたフルアルバム。それまでのデーモンレーベルを離れ、ここからインディーレーベルを転々とすることになる(デーモンをインディーと呼ばなければの話)。スタジオアルバムとしてはこの前作となる92年の『Burning Questions』以来3年ぶり。

『Live Alone In America』以降の名作2枚や、ボートラ(「Substitute」のカバー)入りの日本盤も出た『Burning Questions』とその次の『Live Alone! Discovering Japan』までの快進撃(?)を見ていた身としては、こんなに枯れてどうしちゃったの?というのが当時の正直な感想。でも、今こうして聴き返してみると、しみじみとしたメロディーを持った佳曲が結構揃っている。リンクしたアマゾンでもほぼ捨て値だし、もし買い逃している人がいたら是非にとおすすめしたい。12曲それぞれをイメージしたレトロな写真で構成されたジャケも僕は大好き。


「Don't Ask Me Questions」や「Discovering Japan」が入った初期〜中期のベストアルバムはそれこそ星の数ほどもある人だけど、ちょうどデーモンを離れた時期であるここからの曲はたぶん今までどんな編集盤にも含まれていないはず。それだけに、最近のグレアム・パーカーを俯瞰してみることのできる適当なベスト盤ができたなと自負しているところ。さて、もう2週間後に迫った来日公演では、この時期からの曲もちゃんと演ってくれるかな。
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2013年08月01日

FRF13

いろんな人から一度は行ってみるべきだとかよく言われるし、近しい友達からも何度も誘われてはいたんだけど、「やだよあんなに金もかかるし人も多いところにわざわざ行くなんて。それにいつも雨降るんでしょ」というのが、フジロックに対するこれまでの僕のスタンスだった。そう、数週間前に突如ウィルコ・ジョンソンが参加を表明するまでは。

たまたま7月いっぱいで期限が切れてしまう会社の有給をこの週末にくっつけて、いろんな乗り物を乗り継いで、最終日の朝に苗場に到着。途中のバスの列やらホテル入口への遠路やら、その段階で相当うんざりしてたんだけど、聞いたところでは初日からちゃんと来たらあんな行列じゃ済まなかったらしいね(この時点で「来年はもう来るもんか指数」やや上昇)。

リストバンドをもらって入場しようかというところで初日から来ている友達から連絡があり、うまく合流できた。グリーンステージ後方。みなさん当然ビニールシートとか色々持参してるんだね。ありがたく使わせてもらいました。ろくにくつろいでる間もなく、この日の僕にとっての最初のアクト、ヨ・ラ・テンゴのステージが始まる。

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09年の12月に品川で観て以来だね、この人たちは。そして、ステージの尺と新曲以外はその時と何一つ変わっていない。出てきていきなりジェームズ(別名デブ)がドラムキットのところに行き、ジョージアがギター(アイラもギターなので、ベースレス)という珍しい編成で開始。デブが歌う「Stockholm Syndrome」は3曲目だったかなと思っていたら、某所にアップされていたセトリを見ると2曲目だった。とにかく、曲ごとにデブとジョージアが楽器をとっかえひっかえ、アイラは(曲によって違う機種を使い分けてはいたけれど)ギターをもうこれでもかというほどくねくねと体をよじって轟音ノイズを発し続ける。

前回観たときからこの人たちに対する僕の知識もそう増えてはいないけど、一応予習のために買った新譜『Fade』から、1曲目の「Ohm」とあと1−2曲は演奏したはず。最後の挨拶のときのアイラの「ウィルコやキュアと共演できるなんて、僕らみたいな若いバンドにとってはとても光栄です」というジョークがどれだけの人に受けていたのかはわからないけど。


さあもう次だ。ウィルコ! 一体どれだけの人がこの人目当てに来てるんだかよくわからないけど、とりあえず万一に備えてヨラが終わった時点でトイレにダッシュして急いで戻ってくる。まだそんなにぎゅうぎゅう詰めでもなかったから、ヨラのときと同じく若干後ろで観ようとしていた友達を置いて前の方に進む。なにしろ前夜に小さ目の小屋で演ったときは、一時間以上前から長蛇の列で入場制限がかかったらしいからね。

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出てきた! 意外に元気そう。いつも通りの、上下真っ黒ないでたちに赤いピックガードの黒いテレキャスターを抱えて。ベースがノーマン・ワット・ロイだというのがまた嬉しい。僕の目の前だよ。ちなみにドラムスはスティーヴ・ハウの息子。なんか途中もたったりしてあんまり上手くないなと思ったのは気のせいか?

ウィルコのソロアルバムはほとんど聴いてないから、知らない曲ばかりだったらどうしよう、まあどうせノリノリのロックンロールばかりだろうからいいや、なんて思っていたら、1曲目から「All Through The City」。

その後も数曲ごとにドクター・フィールグッド時代の曲がどんどん出てくる。「Sneakin' Suspicion」とか「Roxette」とか。「Back In The Night」とか「She Does It Right」とか。フェス用に素人向けの選曲にしてくれてるのかな。

上半身固定の横移動も健在(前に僕が観たのはもう20年以上も前のことだから、あのときの高速移動に比べるとずいぶんおごそかな(笑)動きにはなっていたけど)。ギターをマシンガンに見立て、ミュートしたカッティングの音でタカタカタカタカと観客めがけての銃撃ももはや伝統芸。

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病気の本人よりもよっぽど老けて見えたノーマン。でも相変わらず不気味な顔でニコニコと、体を反らせてファンキーなベースを弾きまくる。この人、ブロックヘッズの頃はなんて気持ち悪い顔なんだろうと思っていたけど、加齢とともになんだかかっこよく見えてきたね。大人になってからモテるタイプかも。

この早い時間帯のステージで驚きのアンコール。年明けの日本公演でも最後の曲だったという「Bye Bye Johnny」で締め。演奏前に「晴れててくれてありがとう、ミスター・サン」とか話してたね。そういえば、ヨラのときは途中で降ったり止んだりしてた雨も、ウィルコのときは一切降らなかったよ。なんかこういうのも奇跡的というか。

他にもいろいろステージ上で話してたんだけど、なにしろその時点で僕の周りはモッシュ大会。足踏まれたり踏み返したりで落ち着いて演奏も聴いてられやしない。後で友達に聞いたら、「僕のために幸運を祈ってくれ」みたいなことも言ってたみたいで、演奏後もうそこら中の人が目を真っ赤にしてたよ。多少は近くで観られたのはよかったけど、ああいうステージのときはあんまり前に行かない方がいいというのを、よりにもよって肝心のウィルコのステージで学んだ次第。

会場で、限定発売されることは聞いていた前回の東京公演のDVDがTシャツとセットで売ってたので買い。収益はすべて福島への義援金というのを見てまたじわっとくる。

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さすがに朝から駅弁だけなので、3時を回ったこの時点でもう腹ペコ。友達に連れられてところ天国に何か食べに行く。沼地みたいな道をしばらく歩いてたどり着いたら、ちょうど聴いてみたいなと思ってたサヴェージズの音が隣のホワイトステージから聴こえてくる。ベースかっこいいな。

食料調達したりアルコール補給したりしているうちにどんどんと土砂降りの雨に。不用意にもTシャツ一枚で来ていた僕は、今このままプールに飛び込んでもあんまり状態変わらないだろうというぐらいにずぶ濡れ。「来年はもう来るもんか指数」この時点でMAX。気を利かせて友達がグリーンの基地から持ってきてくれたウィンドブレーカーを羽織る頃にはすっかり雨が止んでいたのも、ウィルコのときと同じ神様の仕業だろうか。


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友達が調子に乗ってウォッカどんどん入れさせたブルドッグで、びしょ濡れのパンツも気にならないほど心地よくなったところでグリーンに戻る。マムフォード&サンズって日本でこんなに人気あるの?ものすごい量の観客。今度は友達と一緒に、柵の後ろあたりで落ち着いて観る。

この人たちのセカンドって、ファーストと同じ曲が順不同で入ってるんじゃないのかと思うほどどれもこれも似た曲ばかりだけど、そのワンパターンさも含めてかっこいいんだよね。生では当然初めて観たけど、演奏うまいねー。4人のうちメインヴォーカルの兄ちゃん以外は結構いろんな楽器をとっかえひっかえ。そのうち3人のホーン隊(トランペット2本とトロンボーンだったかな)とかストリングス隊(チェロとヴァイオリン?)の3人とかがどんどん加わって音が分厚くなっていく。最後の方の曲では、レッドマーキーで演奏を終えたばかりだというハイムの3姉妹が飛び入りしてた。ハイムってよく知らないからいまいち僕にはありがたみ薄かったけど。

最後はセカンドからのシングル曲(これは区別つく)「I Will Wait」で終了。いやこれはいいバンドだね。純粋に演奏だけのことを言えば、僕がこの日に観た5組では一番だったかも。聞くところによると、この直後に行われた東京でのライヴもソールドアウトだったそうな。2枚のアルバム、ちゃんと聴き込んで曲覚えよう。


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もうこの時点で夜7時。曇ってることもあって辺りはどんどん暗くなってくる。雨も降ったり止んだりだし、なによりもう腰が限界。一応楽しみにしてたヴァンパイア・ウィークエンドは後方の基地に座って観ることにする。ほかの友達は引き続き前で観てたり、ホワイトに相対性理論を観に行ったり、酔っぱらって行方不明になったりと好き勝手に行動中。

後ろで観てるのがもったいないほどいいステージだったね。さすがグリーンのトリ前。「A-Punk」のイントロでギターの調子がおかしかったみたいで(弦が切れたのかな)、一旦止めてギターを取り換えて再開(その間リズム隊はずっと継続中)、あの気持ちいいイントロを二度楽しめるみたいなこともあったな。

なんかこうやって、こんなにいいライヴを後ろの方でぼーっと観てるのがもったいなくて。僕がフェスというものを心から楽しめないでいるのはこういうところにもあるのかも。誰かのライヴを途中まで観て別のステージに移動して途中から観るとかかなり嫌だし。自分が観てない別のステージでいいライヴをやってるなんてのも嫌だし(単なるわがまま)。


さてと、いよいよ大トリのキュア。21時半開始で予定終了時刻24時だって。2時間半かよ。でもできるだけ前行って観よう。椅子持って。ところが、大御所バンドとは思えないほどの人の入り(の少なさ)。さっきマムフォードを観た場所からそう遠くないところに椅子置いてゆっくり開演待ち。まあ、今の日本でキュアみたいなバンドがトリ取るって相当ムリあるよな。かと言って本人たちのプライド考えるとトリ以外じゃ来てくれないだろうし。友達曰く「ロキシーのときも相当なもんだったよ」。なるほど。

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これがあの、ドラムキットとアンプしか置いてなかったウィルコのときと同じステージかと思うほど豪華絢爛なセットを1時間近くかけて組み上げ、メンバーが登場する段にはもうもうとスモークが焚かれる。さあ、2時間半ライヴの開始だ。

なんだかんだ言ってこの日観た5組の中では一番長く、子供の頃から聴いているキュアだから、そりゃ書きたいことはたくさんあるけど、久しぶりに書く長文に疲れてきたので適当に端折って。ロバート以外のメンバーはもう全員若い新規メンバーなのかと思っていたら、左側で地味な姿で変な形のギターを弾いてるのはポール・トンプソンだねあれ。ロバートと同じバンドに在籍とは思えない普通のおじさんになっている(腕の刺青はすごかったけど)。あと、体を不自然に折り曲げて膝下でベースを弾いてるのは誰かと思いきやサイモン・ギャラップ。なんであんな若いの?ロボット?

地味ーな最近(といっても僕があまり聴かなくなってからのことだからここ10年前後の話)の曲をいくつか続けた後、これでもか系のポップなシングル曲を数曲挟むという、お前ら帰れるもんなら帰ってみろと言わんばかりの意地悪セトリ。さすが百戦錬磨、カタルシスというものをよくわかっていらっしゃる。

とはいえ、さすがに23時近くなってくると、腰は洗濯板みたいに固まってくるわ朝からの数千キロ移動の疲れで眠気が襲ってくるわで、持参した椅子に腰かけてしまう。夏なのにさすがに山中の夜は冷えるね。ずぶ濡れのTシャツの代わりにさっき買ったウィルコのTシャツ着ててよかった。ちょっとうとうとしかけたところに「Friday I'm In Love」のイントロとか突然繰り出されてくるもんだからおちおち寝てもいられない。

演奏はさすがに整ってて上手いんだけど、やっぱりちょっとスタジアムバンドっぽいゴテゴテした音になってしまっていたのがちと残念。「A Forest」のあの透徹なまでのストイックなベースプレイを期待していた身にとっては、あの派手なエンディングは逆に拍子抜け。これがゴスってもんなのか。

24時15分前ぐらいという、とても中途半端な時刻に一旦ステージを降りる。観客の皆さんもそうとうお疲れのようで、もうこれで終わりなのかどうか見極めつかない中途半端なアンコールの拍手をぱらぱらと始める。

そんなまばらな拍手で出て行っていいものなのかどうかこちらもわかりかねるよと言わんばかりにメンバーがぞろぞろと再登場。ロバートが「アリガト、なんとかかんとか、ごにょごにょ」と日本語の真似みたいなMCを入れたあと、「ところでこれはアンコールだから」と妙に自虐的だったのがかわいい。さすがロバくん人形のオリジナル。

と、そんな感じで遠慮がちに始めたアンコールが、これがもう80年代シングル曲連発みたいな超弩級選曲で、僕みたいにちょうどその頃に聴き始めたファンにとってはイントロ一発でやられてしまうのばかり。そりゃ、これだけの曲を取っておいたら、アンコールで出てこないわけにはいかないよね。「The Lovecats」、「The Caterpillar」、「 Close to Me」、「Hot Hot Hot!!!」、「Let's Go to Bed」、「Why Can't I Be You? 」と、もうタイトル書いてるだけであの時の興奮がよみがえってくる。

そして、そのあとはもうお約束の「Boys Don't Cry」、「10:15 Saturday Night」、「Killing An Arab」という必殺のファースト曲3連発。最後のやつでは最近よく歌ってる(らしい)キリングアナザーとかじゃなくて、ちゃんとオリジナル通りの歌詞で歌ってたね。どれもこれもよかったけど、この曲がやっぱり白眉。このアンコールだけでライヴ一回分ぐらいの元は取れた気がするよ。

終わってみたら、すでにほぼ24時半。そうか、どうしても3時間演ったという記録を作りたかったんだね。なんかアンコールのときに冷たい反応してごめん(あと、途中で落ちかけてごめん)。最後にステージの端から端まで一人で挨拶して回ってるロバートを見て、なんだかこのバンドのこともう一回ちゃんと聴きなおしてみようと反省。どうも最近のアルバムは買っては売り買っては売りを繰り返してしまってるからね。


この時点でもう半分以上の友達とははぐれてしまっていたけど、最後に一緒だった3人で深夜の腹ごしらえをしてホテルに戻る。豚スタミナ丼うまし。心底疲れたけど、楽しかったよな。来年また行くかと聞かれたら、今の時点ではうーんって言うと思うけど、「もう来るもんか指数」不思議にずいぶん減ってるよ。そうだね、不死身のウィルコがもしまた来年も来てくれたら、間違いなく行くと思う。
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2013年04月03日

Steve Forbert & Tim Easton live in Nagoya

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朝一番にマニラ空港を出発して、成田でセントレア行きの国内線に乗り換え。更に3つの電車への乗り継ぎはどれもとてもスムーズに進み、思いがけず開場時刻の18時には今池の得三に到着してしまった。僕の持っていたチケットには開場18時半、開演19時半と書いてあったのでちょっと早く着き過ぎたかなと思っていたら、小雨の中をたどり着いた会場ではもう番号順の入場が始まっていたので、結構いい整理番号のチケットを持っていた僕は慌てて階段を上って中に入れてもらう。

運よくまだ最前列のテーブルは人がまばらだったので、うんと見やすいほぼ真ん中の席を確保。そこからはチケット記載の手違いを含めて開演までの1時間半を、ジョッキたっぷりのワインとキムチピザで小腹を満たしながらぼーっとつぶす。途中からは、すぐ近くに座っていたほぼ全公演追っかけ中のダイハードなスティーヴファンの方に色々話を聞かせてもらったり、後ろの物販のところにいたゴーティの松本さんや今回の主催者のダグに話しかけたりと、それほど暇を持て余さずに開場時刻を迎えることができた。


スティーヴ・フォーバート33年振りの来日に合わせてわざわざマニラから観に来るなんて、僕もよっぽどのファンなんだろうと思われるかもしれないけれど、33年前にはクラッシュやジャムを熱心に聴いていた背伸び中学生にとっては、朴訥とした人のよさそうな兄さんがこっち向いて微笑んでいるジャケットには手が伸びなかった。もちろん、ヒットした「Romeo's Tune」をはじめ、ラジオやなんかで彼の曲を聴く機会は沢山あったのでいい曲を書くシンガーだとは認識していたけど、僕にとっての彼は、気がつくとまだそこにいるなといった程度の、ちょっと向こうの道をずっと一緒に走っているアーティストといった感じのポジションにいた(僕は別にアーティストとして走っているわけじゃないけど、これだけ長くいろんなのを聴いてると、30年以上前からずっと知ってる人がまだ現役でやってるのを見ているだけで、なんだか勝手に戦友みたいな気持ちになってしまう)。

なので、今回の来日が発表になったときも、即座に飛びついたというよりは、結構悩んだ。連休明けの期初に3日有給を取るには、目をつぶってその後何が起こるかを考えないようにする技術が必要(そして、僕は最近その技術に長けてきた)。でも、久しぶりに彼の曲をいくつか聴き直してみたら、これがもうどれもこれも今の僕のツボに入りまくるものばかり。なんで僕はこの人のことをずっと追っかけてこなかったんだと、改めて中学生の自分を恨んだ。さらにそんな僕の背中を押したのが、前から一度観てみたいと思っていたティム・イーストンがここ名古屋でスティーヴの前座として出演するのを知ったこと(そして、翌日に少人数限定でスティーヴの追加公演が発表されたこと)。もうこれは目をつぶる技術を発揮するしかないと。今回観ておかないと次はまた33年後かもしれないし。


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その、(会場をぎっしり埋めた80人ほどのお客さんのほとんどにとっては単なる前座だったかもしれないけれど)僕にとっては今回の大きなお目当ての一人、ティムが開演時刻ちょうどにステージに現れ、ピックガードのネック寄りのところの塗装がピッキングではげてしまっている黒いギブソンを肩にかける。意外に背が低いね。それに、ジャケ写でよく見る長髪・ヒゲ面でなく、こざっぱりと髪を刈り揃えた男前。

彼のアルバムはオリジナルを2枚と最近出たベスト盤を1枚持ってるだけなので、演奏した半分ぐらいは知らない曲だったりタイトルがぱっと出てこなかったりしたけど、きっと僕以上に彼のことを知らなかったスティーヴ目当てのお客さんたちにとっても、知らない曲だろうがタイトルが何だろうが、そんなことは全然問題にならない素晴らしい演奏だった。

ブルーズマナーの曲で初め、しっとりとしたスローな曲、ポップなアップテンポの曲など、まるでこれが彼の広範な音楽趣味のショーケースだと言わんばかりに、あえてバラエティに富んだ選曲が続く。ギターの上側に紙が張ってあって時々それを見てたから、きっとあれがセットリストなんだと思っていたけど、ライヴが終わってから聞いてみたら、あれはレパートリーが60曲ほど書いてあって、それを見ながらどの曲を演ろうかと考えるだけで、こういうライヴではセットリストは作ってないんだって。

曲によってハーモニカホルダーを首にかけたりカポをつけたり、曲調の多彩さもあいまって、一人でも曲ごとにがらっとイメージが変わる。足元に50センチ角ぐらいの木の板が敷いてあって、それを靴底でガンガン鳴らしながらリズムを取るから、まるでベースの打楽器まで自分で演奏しているよう。

ギターがもう、とにかく上手。グレン・ティルブルックやジム・ボジアみたいにアコギでも流麗なギターソロを延々と披露するというようなタイプではないけれど、歌いながらよくあれだけ味のある細かいプレイができるなと思うほど、観ていても聴いていても気持ちいい演奏。曲によってピック使ったり指弾きしたり。速いピッキングもアルペジオも実に正確。そして、どの曲ももうちょっと聴いていたいなというぐらいのところで絶妙に終わるタイミングのよさ。余計にエンディングを引っ張ったり冗長なソロを入れたりとか一切なし。

途中でちょろちょろ日本語の挨拶を入れたり(子供の頃日本に住んでいて、子役でテレビに出たりしたらしい)、「何か僕に質問はある?」とか、急いでいたせいかそもそもそんなに喋る人じゃないのか、MCもそこそこにプログラムはどんどん進む。多分、冒頭の開演時刻記載違いのせいで押してしまってるので、時間通りに終えないといけなかったんだろうね。

30分ぐらい経ったところで「あと2曲」(と言ったときに後ろの方で拍手が起こったけど、そこは拍手するところか?)と、確か「Burgundy Red」と「Festival Song」を演奏して退場。きっちり45分だったね。なんか全然物足りない。今回彼のフルセットの公演を観られないのが本当に残念に思えた45分間だった。

ライヴ後に彼と話していたときに、「『Get Some Lonesome』聴きたかったな。何か質問は?って言われたときにリクエストすればよかった」と伝えたら、「僕はいつも『質問は?』って訊くんだ。そういえば『Get Some Lonesome』は長いこと演奏してないな。思い出させてくれてありがとう。この後の公演で演奏するよ」だって。くーっ、余計に悔しい。どうせなら週末の鎌倉で演奏して、『Live At Cafe Goatee』CDにして出さないかな。

あとは、途中で「これは新曲」と言って歌った自分の娘についての曲は、8月に出るという予定の次のアルバムには入らないんだとか。「僕は常に曲を書いてるから、結構新しい曲がどんどんできて未発表になってるんだ」とのこと。いい曲だったから、そのうち未発表曲集とか次の次のアルバムとかシングルB面とか(と言ったら彼は笑ってたけど)に入らないかな。


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15分ほどの短い休憩を経て、いよいよスティーヴ・フォーバートが登場。サンバーストのギブソンをチューニングしながらステージ上でしばらくスタッフと談笑中。横のテーブルの上にはセトリを書いた紙の上にハーモニカとカポがずらっと並んでいる(一番上の写真)。ハーモニカはともかく、なんでカポがあんなに沢山いるんだ?

ティムと違って随分背が高いな。58歳という年齢相応の見かけだけど、あのファーストアルバムの兄ちゃんがそのまま年食って髪の毛白くなったという感じ(当たり前か)。チューニングしてたと思ったらなんとなくジャカジャカ始まったみたいなゆるいオープニングはそのファーストからの「Thinkin'」。

いろんな意味で、「こんな人だとは思わなかった」というのが一言でまとめた僕の感想。もっと、なんというか爽やかな感じでギターをかき鳴らしながらアツくせつなく歌うSSWなんだろうなと勝手にイメージしていたんだけど、初めて観るスティーヴはどちらかというとふらふらーっと動きまわり、ギターもテクニカルなフレーズを弾くというよりもあくまでもリズムキープに徹する感じで、ときおりわざと音程を外して大声で歌ったりするところなんかは、タイプは違うけどちょっとトム・ウェイツを彷彿とさせる瞬間もあった。こんな人だとは思わなかった。

演奏しながら「そこの二人は手拍子をするな」とか、同じ曲で観客が延々手拍子をしていると「手拍子するなって言ってるんだ」とかわざわざ歌の途中に言ったり、歌い終えてから「誰もが生まれついてのドラマーじゃないんだ、ジンジャー・ベイカーみたいに」とか言うから、どんだけ気難しい人なんだと思っていたら、どうやらそういうのは全部ジョークのつもりで言ってたみたい。別の曲では手拍子を促したり、観客にリクエストを募っておいて、あえて違う曲を演奏したり(あとの方で「君のことはちゃんと覚えてるよ」と言いながらリクエストされた曲を演ったり)、初対面でそんな難しいジョーク真顔で言われてもわかんないよ(苦笑)

沢山置いてあるハーモニカの中からAのキーのがなかなか見つけられず、やっと見つけて演奏し始めたと思ったら結局その曲ではハーモニカをほとんど吹かなくて「なんだあんなに探したのに要らなかった」とか、とにかくなんか思いついた可笑しなことを言わないと気がすまないんだね(それが相手にとって面白いかどうかは別にして)。そういうところは気が合う気がする(笑)

途中からは、彼がそういう人だというのを僕が把握し始めたせいか、それとも彼も静かな観客に慣れてきたのか、見るからに乗りが違ってきた。相変わらずひょろひょろふらふらしながら歌ってるんだけど、このゆるい感じに引き込まれると逃れられないというような錯覚に陥ってしまう。そんな時にファーストアルバム冒頭の「Goin' Down To Laurel」とか繰り出されてくるもんだから、こちらはいとも簡単に喉のあたりがぐっときてしまう。

「じゃあ次の曲はみんなで歌おう」と言って、観客にコーラスを任せるシーンも何度かあったけど、案の定ほとんどのお客さんは歌詞わからないから皆小声でぼそぼそ歌う。それでもめげずに何度もコーラスさせて、終わったときには(お世辞だろうけど)「ありがとう、すごくよかった」と言ってくれる(それとも、あれもジョークなのか?)。

最後「あと3曲」と言って4曲演奏した最後の2曲が、僕みたいなほとんど初期の曲しかわかりませんという観客にとってはお待ちかねの「What Kinda Guy?」と、ビートルズの「Good Night」からメドレーで出てきたハーモニカのイントロにうるっときた「Romeo's Tune」。後者も聴き慣れたスタジオ版みたいなかちっとした歌い方じゃなくて今のスティーヴのへろへろっとした感じだったけど、それでも名曲。

ここまででほぼ1時間半かな。その後、短いアンコールの拍手に迎えられて、リクエストされた曲と、最後に「You Cannot Win If You Do Not Play」で幕。もっと去年の新作から演奏するかと思って予習して行ったけど、思ったよりも初期の曲を演ってくれたね。きっと、日本のお客さんはみんな33年待ち続けてくれたと思っていたのかな。

二人を初めていっぺんに観た印象。ティムは例えて言えばカチッとチューンアップされた小型のスポーツカーで的確にギアシフトしながらぐいぐい山道を攻めるような感じ。一方のスティーヴは、でっかいアメ車のオープンカーでどこまでも続く道を砂埃を上げながらガーッと進んでいく感じ。ときどきエンジンの調子悪いのかな?と思うけど、それはそれでまた楽しい。ティムの出番が短くて残念ではあったけど、両方いっぺんに観られてよかった。


終了後は物販のところにスティーヴが来て、販売&サイン&写真撮影会。僕はもうマニラ行きの終電に間に合わないので宿を取ってあったからゆっくりと後の方にして、通常はネット通販でしか買えないCDの中からおすすめを隣に座っていたファンの方に教えてもらって買ったり、松本さんお勧めのCDを買ったり、ダグとガーランド・ジェフリーズの話をしてひとしきり盛り上がったりしていた。スティーヴが古い携帯カメラで撮ったというレトロな色合いが抜群な写真(フレーム入りで1枚3000円)も欲しいのが沢山あったんだけど、今回は現金に限りがあるので断念。

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いつまでたっても列が途切れないスティーヴと違って、ほんとにこの日はティム目当てのお客さんは少なかったんだね。手持ち無沙汰に座っていたティムのところに行ってちょっと話をしてサインをもらった(ありがたいことにその後もティムとは少し長く話せた)。ティムはやけに疲れて見えたけど、日本に来てもう一週間近くになるのにどうやらまだ時差ぼけに悩まされているらしい。

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セットリストは、各曲のイントロを聴いただけでもう題名をメモしていたほどのダイハードファンに教えてもらいました(さきほどご丁寧に追加情報も教えてくださったけど、ここにお名前を載せていいものかどうかわからないので)。ありがとうございました。


Steve Forbert Setlist 02 April 2013 @ Tokuzo

1. Thinkin'
2. Something's Got A Hold On Me
3. That'd Be Alright
4. Listen To The Mockingbird
5. Worried Life Blues
6. Schoolgirl
7. Tonight I Feel So Far Away From Home
8. Any Old Time
9. It Isn't Gonna Be That Way
10. All I Need To Do
11. Sing It Again, My Friend
12. Goin' Down To Laurel
13. There's Everybody Else, And Then There's You
14. It Sure Was Better Back Then
15. Blackbird Tune
16. Get Well Soon
17. Lonesome Cowboy Bill's Song
18. About A Dream
19. What Kinda Guy?
20. Good Night / Romeo's Tune

Encore
1. I Blinked Once
2. You Cannot Win If You Do Not Play
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2013年02月20日

2012年個人的ベストアルバム

これを書いてる今はまだかろうじて1月で、ほんとは去年のベストアルバム記事なんて年が明けたらすぐに発表してしまいたかったんだけど、いつもの仲間との年間ベスト10発表会を僕の一時帰国のスケジュールに合わせてもらったもんだから、この記事がオープンになるのは2月中旬のそのイベントが終了してからということになる。まあ、ほとんどの人にとってはどうでもいいことなんだけど、この記事はその発表会で僕があれこれ語るであろう薀蓄の抜粋ということで。

その前に、いつものように去年買ったCD類の集計から。

フォーマット   枚数   対前年
CD          282枚    -4枚
CDシングル     11枚    +2枚
CD+DVD(BD)   6枚     -2枚
DVD Audio      1枚     +1枚
DVD/BD       2枚     +1枚
ダウンロード     1枚     +1枚
LP           23枚    +17枚
シングル       1枚     -4枚
ボックスセット    0箱     -4箱


合計327枚。2010年に300枚を割り込んだのを最後に、また年々買う枚数が増えてきてしまってるな。増えてるのはご覧のとおりほとんどLP。2010年の27枚よりは少ないけど、あのときは大半が100円LPだったからね。去年は殆ど正規の値段で買ってる。やっぱりダウンロードクーポン付きとかがスタンダードになってきているのと、CDというフォーマットがもう凋落の一方で、マニアックな音楽好き向けのLPがどんどん復興しているというのが大きいんだろうね。

枚数は増え続けているけど、一枚あたりの平均単価は過去最低の1,023円。総額も1999年以降の最低額。二十一世紀最安。なかなか財布に優しくてよろしい。箱ものや映像ものをあまり買わなくなってるのも大きな理由のひとつだと思う。そういうのを通して聴いたり観たりする時間がなかなかなくて。もうすでに老後の楽しみにしている箱がうちにいくつも溜まってしまっているからね。もうこれ以上老後の楽しみ溜め込んでもしょうがないし。

では、2012年のベストアルバムについて書こう。正直言って去年は年末近くまでこれぞというアルバムがなかなかなかったのに、12月になってからめぼしいものをまとめて買い込んだら逆に10枚選ぶのにえらい苦労したという、例年のようにその年を代表する超弩級アルバムとそれ以外の9枚という感じではなく、どちらかというと平均的に小粒ながらいいアルバムが10枚というセレクションになった(本当はこの後ろにあと10枚ぐらいあって、2006年以来の20曲入りベストyascdを作ろうかと思ってしまったぐらいなんだけど)。


<第十位>
Craig Finn 『Clear Heart Full Eyes』
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クレイグ・フィンなんて名前を出して一体どれだけの人が反応するのかわからないけど、この人は僕がかつて06年にこのブログで記事にしたホールド・ステディのリードヴォーカリスト。確かそのアルバムはその年のベストアルバムにも選んでるね。二度目の受賞、おめでとうございます。『Boys And Girls In America』以降もずっとこの人たちのアルバムは買い続けていたけど、結局僕にとってはあれがピーク。今回ソロが出たということはもしかしたらもうバンドは解散してしまったのかな。

ソロになってもバンド時代とそう大きく音楽性が変わったわけでもなく、相変わらず70年代前半のスプリングスティーンみたいな歌い方でちょっとやさぐれた感じの曲を歌っている。上にリンクしたアマゾンのレビューでは散々な書かれ方をしているけど、僕はそれとは正反対の印象。地味だけど、ストーリー性満載な歌詞も含めて、聴いていてちょっとしんみりくる大人の味。アルバムタイトルの頭文字は自分の名前と同期させたんだと思うけど、ジャケットにも内ジャケのクレジットにも肝心の自分の名前を全く載せていないというのは、よほど自分が有名だと勘違いしているんだろうか。


<第九位>
The Happy Hippo Family 『Monacoville』
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これがファーストアルバムとなるスウェーデンのバンド。日本盤の紹介のされ方もリードヴォーカリストのちょび髭も今いち僕の好みではないんだけど、その紹介文にもあるように、ペット・ショップ・ボーイズがスカを演奏しているかのようなこのアルバムにはちょっとやられてしまった。このアルバムがどれだけ売れたのかは知らないけど、たぶんこの感じだとこのまま花火みたいに消えてしまうんだろうな。そういう意味ではこれをきちんと発売された年に聴けて、ここに取り上げることができたのはよかった。なんて言って、実はペット・ショップ・ボーイズみたいに何十年も生き残るバンドになったりして。


<第八位>
Bruce Foxton 『Back In The Room』
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少なくともこの名前にはクレイグ・フィンよりも沢山の人が反応するだろう(そうあってほしい)。ブルース・フォクストン、ジャム解散直後の『Touch Sensitive』以来28年振りとなるセカンド・アルバム。当時はジャム関連のものならなんだって集めていた僕だから、12インチシングルも含めてブルースが発表した音源は全て聴いていたんだけど、同時期に秀逸なシングル盤を連発していたスタイル・カウンシルと比較してしまうと、当然のことながらどうにも見劣りしてしまっていた。

今回このアルバムを買ったのも、はっきり言ってしまえば郷愁以外の何ものでもなかったんだけど、そこはもう、フロム・ザ・ジャムなんて開き直ったジャムのコピーバンドまでやってしまっていたブルースのこと、今のポール・ウェラーの音楽に今ひとつ馴染めないでいる僕のようなオールドファンをピンポイントで狙い撃ちしたかのような、あの時代そのままの音。これはちょっと、反則だとはわかっていつつも反応してしまう。ポールもギターとピアノで数曲に参加。大人になったねえ。


<第七位>
The Corner Laughers 『Poppy Seeds』
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全然知らないアーティストだったんだけど、アマゾンでお勧めされたのをきっかけに試聴してみたらよかったので買ってみた。届いたアルバムを開封して内ジャケのクレジットを見てみると、ゲストヴォーカルにマイク・ヴァイオラの名前が。そして、ライナーを書いているのはウェズリー・ステイス。ジョン・ウェズリー・ハーディングじゃないか。そういう系統の人たちだったのか。といっても、マイク・ヴァイオラとジョン・ウェズリー・ハーディングとの共通点が僕には思い浮かばないけど。

どことなくスクールを思い起こさせる、60年代テイスト満載の音。基本女性ヴォーカルに、曲によって男性とのデュエットが絡む。これと一緒に買った、09年のセカンド『Ultraviolet Garden』はポップオーヴァーというレーベルからの発売。先のライナーを読んでみると、ファーストを聴いて気に入ったジョン・ウェズリー・ハーディングがこの人たちのために設立したレーベルだとのこと。彼がそこまでこのバンドを気に入ったというのも驚きだけど、それにもうなずける好盤。


<第六位>
Aimee Mann 『Charmer』
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目立たないけれどいい曲の詰まったいいアルバムをコンスタントにリリースする中堅どころのシンガーソングライターという意味で、僕にとっては去年のベストアルバム第七位に取り上げたロン・セクスミスと似た位置付けの人。せっかくの美人さんなのにジャケットに自分の写真を使うことがほとんどなく、今回もこの、誰の購買意欲をかきたてようとしているのか今いち定かでないイラストジャケ(ひっくり返して見ると別の顔というやつですね)。でもその低いハードルさえ乗り越えれば(笑)、中身はいつものとおり、男前な声でメロディアスな旋律に気の利いた歌詞を乗せて歌っているエイミーがいる。


<第五位>
Green Day 『!Uno!』
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本体のバンドはなんだかどんどん組曲風の大仰な作りのアルバムを発表し続け、ちょっと気軽な曲を演ろうと思ったら変名バンドになりすまさないといけなくなってしまった近頃のグリーン・デイ。いつの間にか4人組になってるな。去年後半は『!Uno!』、『!Dos!』、『!Tre!』と3枚のアルバムを毎月発売するというからまたどんな大仰なことをやってるんだろうと思っていたら、なんとこれがフォックスボロ・ホッタブスのセカンド(とサードとフォース)かと思うような、あるいは昔のグリーン・デイに戻ったかのようなポップなアルバム群。

かつてガンズ&ローゼズが二枚組のアルバムを二つに分けて発売したときに「金のない奴は友達と一枚ずつ買って一緒に聴け」みたいなことを言ってたと思うけど、どうも今回のグリーン・デイの3枚はどちらかというと「おまえら全部聴きたいんだろ?だったら3枚とも全部買え」と言われてるみたいでちょっと金の匂いがしてしまう。とはいえ輸入盤(僕の買ったフィリピン盤も)は行くところに行けばかなりクタクタな値段で手に入るから、3枚全部買ってもさほど懐には響かないはず。

ここでは『!Uno!』だけを取り上げたけど、『!Dos!』にも相当いい曲がいくつか入ってるし、『!Tre!』も(個人的には若干劣るかなとは思うものの)そんなに悪くはない。どちらかというと3枚の合わせ技でのこの順位ということで。もう少し曲を厳選して、普通に二枚組のアルバムにした方がきりっとまとまったとは思うけれど、これはまあ3ヶ月連続発売という話題作りの面が大きかったんだろうね。


<第四位>
Hans Rotenberry & Brad Jones 『Mountain Jack』
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パワーポップファンなら大抵誰でも、ブラッド・ジョーンズの95年作『Gilt-Flake』が家のCDラックに入っているはず。その後もあちこちのアルバムでちらちら名前を見かけてはいたものの、もうリーダーアルバムを作ることはないんだろうなと思っていたら、かつて彼がプロデュースしたことのあるシャザムのフロントマン、ハンス・ロッテンベリーとの共作アルバムを出していた。クレジットを見るとオリジナル盤が出たのは10年のようだけど、ボートラ入り日本盤が出たのが12年の暮れのようなので、入選決定。

パワーポップと呼べばいいのか、一昔前ならオルタナカントリーと呼ばれたような曲もあるし、ちょっとほろ苦いコーラス満載のメロディアスなアルバム。個人的にはツボ突かれまくり。僕も上のような書き方をしたし、日本盤のアーティスト名表記もブラッドが先だけど、ジャケットに書いてあるのはハンスの名前が先。どういう力関係なんだろう。ちなみに日本盤にはエアメールレコーディングス特製のおまけミニシングルが付いていてちょっと嬉しいんだけど、それがアルバム収録曲の同一バージョンだというなんだか喜んでいいのかよくわからない仕様。


<第三位>
Team Me 『To The Treetops!』
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5月の素晴らしかったライヴの余韻もあり、僕の中ではけっこう年末あたりまで去年の年間ベスト1の位置に君臨していたアルバム。このアルバムの前に出たEPに始まり、フロントマンのマリウスがウォンバッツの人と一緒に作ったSin名義のアルバム、それに宮内優里が加わったEPと、去年はとにかくティーム・ミー関連の音源が沢山出たし、どれもこれも質が高かった。創作意欲にかきたてられてしょうがないんだろうね。

もうそのまま1位にしてしまってもよかったんだけど、強いてケチをつけるなら、アルバム中盤ちょっとだれてしまうところがあるのと、大量に追加された日本盤ボートラのせいで聴き通すのがやたら長いことか。決して駄曲が追加されてるわけじゃないからいいがかりも甚だしいんだけど、まとまりという意味ではボートラのない輸入盤の方がいいのかも(なぜかせっかくのキモかわいいコラージュジャケが白黒なんだけど)。


<第二位>
Susanna Hoffs 『Someday』
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1位にしたかったという意味ではこれもそう。ここ数年来の僕の個人的アイドルの彼女が久々にソロアルバムを出したので当然早々に入手したんだけど、これがもう、今までの2枚のソロや再結成バングルスのアルバムを遥かにしのぐ出来。ミッチェル・フルームのプロデュースって言われるほど僕は印象に残っているアルバムはないんだけど、これは音のバランスといい、ストリングスの入れ方といい、かなりいいね。

曲も粒揃いだと思うけれど、やはりなんといってもこの声。前にライヴ評にも書いたけど、なんでこの人はいくつになってもこんな声で(きっと3年前に東京で観たときと変わらない見掛けで)いられるんだろう。いったいどんな魔法を使ってるのかと思う。早々に入手した輸入盤からかなり遅れて、ボートラ2曲入りの日本盤が出たことだけが難点。2200円もするけど、買いなおすしかないだろう。ジャケもいいよね。LPが出たらきっとそれも買ってしまう。来日が決まったら何があっても帰国して観に行く。バージョン違いのシングルとか出たら全部買う。いかん、勝手に自分からアイドル追っかけモードになってしまってる。


<第一位>
中村一義 『対音楽』
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そんな接戦を押さえて昨年度第一位に輝いたのがこれ。ここのところ100s名義のアルバムがずっと続いていたので、随分久しぶりとなる個人名義のアルバム。もちろん初期のアルバム同様、歌も演奏も全部一人で。ベートーベンの九つの交響曲の印象的なメロディーを取り入れた9曲(+アンコール1曲)という企画は、特によく知っている五番や九番なんかを聴くとちょっとあざといかなと感じてしまうこともあり、僕が09年のベストアルバム第二位に選んだ前作『世界のフラワーロード』と比較すると劣ってしまうかなと思ったのも事実。

でも、やはりこの人の書く、初めて聴くのにどうしてなのかいつもほろ苦い懐かしさを感じてしまうメロディーにはどうしても抗うことができない。いつも何を歌っているのか聞き取れない歌詞のことばかり書いているけど、ちょうどウィルコ・ジョンソンの来日時の話を知ったときに聴いていた9曲目「歓喜のうた」の「ちゃんと生きたものに、で、ちゃんと死んだものに、ありがとうって、僕はなんで想うんだろう」という歌詞を聞いて、まだ存命中の彼には大変失礼ながら、泣きそうになってしまった。

ちなみに僕の買ったCD+DVDの映像パートは、1時間にわたるインタビュー(演奏風景あり)。ちょっと何度も観ようと思うようなものでもないかな。よほどコアなファンでなければ、今回のはCD版だけでも十分かも。あと、僕はクラシックはあまり詳しくないんだけど、ベートーベンの曲をよく知ってる人ならもっと楽しめるのかもしれないね。


以上10枚。1月に書き始めたのに書き終えたらもう2月になってしまった。去年は、最初のほうに書いたとおり飛び抜けてすごいアルバムがあったという感じではないから、順位に関しては多分に今現在の気持ちを反映していると思う。少し経ったら順番を並べ替えたくなってるかも。さて、13年に入ってもう何枚かのCDを買い始めているけど(まだ13年発表のものは買ってないけど)、今年はダントツに凄いアルバムは出るかな。噂によるとメルボルンに戻った例の彼が新作を出すとのことだから、とりあえずそれには大いに期待。
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2013年02月18日

Jim Boggia & Pete Donnelly live in Kamakura Pt. 2

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ジム・ボジア&ピート・ドネリー日本公演の最終日。朝っぱらから大船のカラオケボックスに集合し、約半日かけて2012年ベストアルバム発表会を終えたいつもの仲間たちと鎌倉に向かう。駅前で軽く蕎麦など食しつつ、寒風吹きすさむ中をゴーティへ。

日曜の夜だというのに、観客の入りは前日より数割増しといった感じ。店中のベンチや椅子を総動員した上で、最後部は立ち見のお客さんがずらりと並び、身動きも取れないほど。前の方に陣取っているのはいつも見る顔ぶれだけど、あまり見かけないお客さんもちらほらと見かける。きっと、初日の東京公演を観て、もう一度観てみたいと思った人たちかな。なんにせよ、客層が広がるのはいいことだ。

開場から開演まで、またできればジムやピートと話そうかなと思っていたけれど、二人がおそらく腹ごしらえに出掛けてしまったのと、びっしり詰まった座席から身動きするのが大変だったのとで、結局ずっと椅子に腰掛けたまま半時間ほどを過ごす。

腹ごしらえに出かけるときに、ピートがすれ違いざまに「ああ、昨日訊かれた(金曜日の3曲目に演奏した、僕の友達が曲名がわからなくて前日にピートに教えてもらった)カバー曲、昨日教えたルー・リードの曲じゃなかったよ。あれはNRBQの『Kick Me Hard』のCDのボートラ曲だった」と、わざわざ正解を教えてくれる。なんと律儀な。

開演予定の19時を何分ぐらい回った頃だろう、半袖Tシャツ姿のジムと、昨日のスーツとはうって変わってラフなネルシャツ姿のピートが登場。「今日は最終日だし日曜の夜だから長く演るよ」と言いながら、前日と同様にピートのヴォーカル、ジムのベースで開幕。

基本的な進行は前日と同様、二人でベースとエレキとアコギ(これはジムのみ)をとっかえひっかえしながら、お互いの持ち歌を数曲ずつ交互に歌う。演奏している曲自体は前日とそう大きく変わらないけど、曲順を大きく変えてきているね。ジムは前日の後半1曲目だった「Made Me So Happy」を自分のパートの最初に持ってきたのに続き、エンディングの定番曲「Several Thousand」をここで早くも披露。

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前日にはなかった組み合わせが、ジムにアコギを任せたまま、ピートが1曲でピアノを弾いたこと。最後ちょっととちったりしてたけど、随分上手に弾くね。この曲のとき、ジムがギターをマイクスタンドにぶつけてしまい、ピートがびっくりして振り向いたり、ジムのエフェクターの具合がおかしくなったりといったハプニングも。

ジムは前日断念した「Once」を歌ったり、「Three Steps At A Time」を入れたり、常連のファンのリクエストに応えて「O/P」を歌ったりと、前日とは微妙に曲を変えてきている。「次の曲は『I Can Barely Wait』」と言ったときに咄嗟に反応した僕と隣のNさんのことを指差してうなずいたり。それにしても、何故未発表のままなのかわからないほどのいい曲。前日終演後にジムと「次のスタジオアルバムはいつ作るの?」という話をしていて「まだアルバムを作れるほどの曲が書けていなくてね」とやけに消極的だったけど、こんなレベルの曲ばかりが入ったアルバムなら、あと何年でも待つよ。

ピートもフィグスのファンのリクエストに応えて、これまで演奏したことのないというフィグス時代の曲を何曲か披露。でもこの日の(僕にとっての)ピートのベストは、アンコールの最後で手書きの歌詞カードを見ながら歌ったクラッシュの「Train In Vain」だろう。「僕は他人の曲の歌詞を覚えるのがとんでもなく苦手なんだ」と、前日に僕があれこれとリクエストした曲を却下したときと同じく、「僕には脳みそというものがないんだ」なんて冗談めかしながら譜面台を持ってきて歌い始めたけれど、やっぱりかっこいいよな。無理やりな見方をすれば、(若い頃の)ミック・ジョーンズに似ていなくもない。

ジムのパートは、どちらかといえば前日の後半に演奏した曲を前半に持ってきて、前日の前半の曲を最後の方に演ったりしていたけど、ラスト前のこの曲の位置だけは変わらない。すでにライヴのクライマックスの定位置を確保した感のある「Listening To NRBQ」。4フレットにカポをつけて、実に静かに弾き始めるけれど、最初の一音でこの曲とわかり、いつも息を呑んでしまう。本日はラストのNRBQ曲の挿入曲も含め、かなりオリジナルに忠実な仕上がり。

続く「To And Fro」で本編は終了。「最後はロックするぜ!」とか「盛り上がってるか!」とか、散々ロックンローラーぽく叫び、「これで一旦終わった振りをするぜ!」とやはり最後は笑わせる。

その言葉通り、一旦後ろに引っ込んだ後、すぐにジムが再登場。ウクレレを抱え、日本に来てから書いたというヴァレンタインの曲(帰りにタイトル訊いてくるの忘れた!)と、最近彼の別ユニット、マッド・ドッグス&ドミノスで演奏しているレオン・ラッセルの「A Song For You」を。その後、ピートをステージに呼んで、先述のクラッシュのカバーともう1曲を演奏したところで幕。

<追記>
ジムにツィッターでヴァレンタインの曲名を訊いたら教えてくれた。「Candy Heart」。いい曲。

3枚にも亘る手書きのセトリの写真を撮らせてもらってきたけど、またしてもジムが即興で歌った変な歌や、ピートが突然弾き始めたベースラインに合わせてジムも乗ってきた「Tighten Up」なども含めて、どこまでが本日の実際の演奏曲に忠実なのかはもうよく覚えていない。一応参考までに写真を載せておこう。

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アンコールが終わったのはもう22時を大きく回っていただろうか。またしても二人と談笑したりサインをもらったりするお客さんも多かったけど、そろそろ終電に間に合わなくなりそうな人たちがバタバタと帰りを急いでいくのも見える。

そんな感じだから、僕ももうジムにあれこれ話しかけるのをやめておいて、「今度はいつ来るの?クリスマスぐらいかな」みたいに軽くジャブを振ってみたら、「ゴールデンウィークに来るよ」だって。ははは、いいね。「ジムが来るときには僕も必ず飛んでくるから」と、サインと一緒にジャケに書かれても差し支えのない話題に誘導しながらサインをもらう。

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外でタバコを吸いながら他のお客さんと歓談していたピートのところにも(タバコを吸い終わるのを見計らって)行き、サインと写真をもらう。前日に僕がお土産として渡したフィリピン産のドライマンゴのことを「あれすごくおいしかったよ。あっという間に全部食べてしまった」とかわざわざ感想を言ってくれる。写真を撮るときにも、何度も「Nice to meet you」と言ってくれる。もちろんそんなのお世辞にすらならない単なる挨拶だけど、(こんなかっこいい奴に)こんなに嬉しそうに言われると、こっちも心底嬉しくなってしまう。

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あっという間の二日間だった。二人だからその場での咄嗟なリクエストができないとか、ジムの曲がどうしても定番に固まってしまうとか、ジムがちっとも新曲を披露しないとか、リラックスし過ぎたせいか歌詞忘れなどのチョンボが多かったりとか、小さな不満がないわけではないけれど、こんなに楽しいライヴを観られるなら、そんな不満なんて全然たいした問題ではない。ゴールデンウィークなんてとても無理だろうけど、また近いうちに来てほしいな。まあ、僕がマイレージを使い果たしてしまわない程度の頻度でね。
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2013年02月17日

Jim Boggia & Pete Donnelly live in Kamakura Pt. 1

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2013年海外追っかけ企画第一弾。下手な日本人アーティストよりも日本ツアーの回数が多いことで知られるジム・ボジアが、去年の6月以来となる来日公演を行うのに合わせ、マニラから片道4時間(プラス成田〜鎌倉約2時間)の道のりを駆けつけた。今回のツアーは、フィグスのベーシスト、ピート・ドネリーとのジョイント公演。

「フィグスの」とは書いたものの、僕はフィグスのことなんて90年代の一時期にグレアム・パーカーのバックを勤めていたことぐらいしか知らないし、彼が一時的に在籍していたNRBQもろくに聴いていないから、去年出たソロアルバムがほぼ僕の持っている彼の全音源。それなりに予習してきたけど、果たしてどれだけわかるものか。

一週間前の東京に始まり、日本各地でほぼ毎日のように公演をこなしてきた二人の、この週末の鎌倉3Daysが最終公演となる。3Daysとは書いたものの、金曜日の公演はわりと最近になってから急遽発表になった追加公演。二人で(事前リクエストに答える形での)カバー曲だけを演奏するという興味深い催し。くーっ、それを先に知っていたら、マニラからのフライトをあと半日早めたのに。残念ながら僕が成田空港に降り立ったのは、ちょうどそのカバー曲大会が始まったのと同日同時刻だった。

いつものように開場時刻より少し前に鎌倉に集合し、初日の東京公演・前日のカバー曲大会に参加した友達からそのときの様子を聞かされつつ(あの曲もあんな曲も演ったなんて)、事前の腹ごしらえ&アルコール摂取。

ボジアのライヴでよく見る面々と一緒に入場し、カウンター近くでセットリストを作成しながら話しているジムとピートに挨拶。嬉しいことにジムは僕の顔を覚えていてくれたようで、「やあ、来てくれたの」と向こうから声をかけてくれる。「今マニラに住んでいるんだ。このライヴのために飛んできたんだよ」と言うと、サービス精神旺盛なジムらしく、大げさに喜んでくれた。

ピートもセットリストを書く手を休めて向こうから握手をしてくれ、「名前はなんていうの?」と聞いてくれる。「yas」と答えると、ジムが「ああそうだった、Y-A-S-Sだよね?」と言うから、「いや、それは別のYassさん。僕はSが一つ。ややこしいよね」と、その後しばし談笑。

セットリストを指差しながら「今日はリスト決まってるなら、リクエストなんて駄目だよね?」と聞いてみると、ジムが「いや、そんなことはないよ。言ってみて」と言うから、「じゃあ、NRBQの『Me And The Boys』できる?」と聞くと、ジムは「それはお前の担当」と言わんばかりにピートの方を見る。ピートは「うーん、あの曲は歌ったことがないんだ。それにあれほとんどドラムがメインだから」と。「じゃあ、デイヴ・エドモンズのカバー・バージョンがあるよね。あれならギターメインだし」としつこく振ってみるけど、今度までに練習しとくよ、とかわされた。

「それなら、『Chalk One Up For Albert's Side』は?」と聞いてみたら、ジムがその曲がどんな風に二つのコードを同時に重ね合わせて(?)複雑に演奏されているかを説明してくれた。あんまり難しくてここに正確に書けるほど覚えていないけど、「(その曲でメインに使われている)ピアノで演奏するのは無理だけど、明日の昼にギターで練習してみて、できそうなら明日演ってあげるよ」とのこと。「じゃあ、あの印象的なベースはピートに弾いてもらってよ」とさらに無理強い。ピートも「うーん、曲は知ってるけど」とちょっと自信なさげ。果たして、最終日にこの曲を演ってくれるだろうか。

「今回ってほんとに僕らのライヴのためだけに来たの?」と聞いてくれるから、「いや、たまたま翌日にベン・フォールズ・ファイヴのライヴがあるから、それも観てから帰る」と言うと、ジムはBFFがいかにロバート・スレッジがメインのバンドであるかを切々と語りだす。「それに、あのドラマーも凄いよね。名前何てったっけ(ダレンです)ああそうそう、ダレン、あんな凄いビートを叩き出す奴もなかなかいないよ」みたいな。ベンは?「BFF好きなんだ。じゃあ、何かカバー演ってよ」と振ると、0.1秒で「無理。あんなピアノできない」と却下。

明らかにセットリスト作成の邪魔をしているので、「じゃあ、続きはライヴの後で」と、自分の席に戻る。ライヴは、定刻の19時をちょっと回った頃に始まったかな。ちょっと遅れたのは僕のせいでなく、その後もいろんなお客さんと話していたジムのせいだと思う(ことにしよう)。

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まずは、ピートがフェンダーのテレキャスター、ジムが同じくフェンダーのマスタングベースを抱え、ピートのリードヴォーカル曲から開始。予想通り、付け焼刃の知識だとピートの曲名はほとんどわからない。噂通りの阿部寛似。背丈はジムよりちょっと高い程度だから180もないと思うけど、顔が小さい。というか、顔の面積に対してやたら目鼻がくっきりしてるから余計に小さく見えるんだな。ジムのベースは、コードに沿って基本的な音を押さえているだけのようだけど、まあこの人は何をやらせてもサマになるよね。

ピートが2曲歌った後、お互いの楽器を交換して、ジムの「Bubblegum 45s」、さらにジムがピアノに移って「Let Me Believe」、またギターで「Annie Also Run」と定番曲が続く。今回の来日前に、僕がこれまでに見た5回のジムのライヴ(4人編成の1回を含む)で、どの曲を何回演奏したかをリストにしてみたら、「Bubblegum」はソロ公演の4回、「Let Me Believe」と「Annie」は全5回で演奏しているほどの超定番。なんでそんな暇なことをしたかというと、今回はこれまでライヴで聴いたことのない曲をリクエストしてみようと思って(それがあっての「Albert's Side」話)。

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ピートはさすが本職のベーシスト、しかも色んなアーティストのバックを勤めてきた経歴の持ち主だけあって、ジムの曲に合わせて実に綺麗なベースラインを入れる。時折ベースギターを持ち上げるようにして弾くのがまたかっこいいね。まあ、かっこいい人は何やらせてもかっこいいと。

その後もジムがギブソンのアコギにピートがベース(あるいはテレキャスター)など、様々な組み合わせで楽器をとっかえひっかえしてセットが進行する。ジムがアコギのソロで演った曲(確か「Annie」?)のときには、ピートはたまたま空いていた客席に座ってご観覧モード。ゴーティならではの風景だよね。ピートの曲名はなかなかわからないけど、彼のソロ『When You Come Home』で僕が今のところ一番気に入っている「Can't Talk At All」はピート2度目のリードパートで演ったかな。

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お互い(確か)6曲ずつの持ち歌を演奏したところで前半終了。1時間弱といったところか。休憩時間も沢山のお客さんと延々と話しこんでいたジムとピートのせいで、ほとんど30分ぐらいあった途中休憩を挟んで、後半はジムの「Made Me So Happy」からスタート。

アンプの上に無造作に置いてあったセトリのせいで、後半1曲目がこの曲だというのはわかってしまっていたんだけど、次に書いてあった曲名「Once」をちらっと見たジムは、なにやらあやしげな即興曲を歌いだす。「♪このカポをどこにつけよう」「♪この曲にカポはいらないんだった。ピートにあげよう。ピートはカポを使うかな」みたいな可笑しな歌詞を次々に繰り出し、ピートもつられてベースの(結構上の方、11フレットあたり?)にカポをつけて伴奏。ああおかしい。

引き続き、グローヴァー・ワシントン・ジュニアの「Just The Two Of Us」を突然歌いだすジム。ピートも慌ててベースで合わせたりしてたけど、完奏せずに終了。ジムはそのまま(セトリにはなかった)「To And Fro」へ。なんだ、「Once」やらないのか。終了後に訊いてみたら、「あー、今日の喉の調子だと『Once』は無理。最後絶対に声出ないし」だって。「明日演るよ」という言葉に期待。

第二部はピートもフィグスの曲(「Some Desperate Measure」って言った?)などを交えつつ、前半よりもかなりいいペースで進む。僕にとっての後半最初のピークは(さっきのカポの即興曲を別にすれば)、ジムが「昨日のカバーソングナイトではこの曲を演奏しようと思っていたけど演らなかったんだ」と言いながらアコギで弾き始めたポール・マカートニーの「Junk」。ああこれ、いつか機会があればジムに歌って欲しいと思ってたんだ。よくぞ昨日演らないでおいてくれたものだ。大好き、この曲。

そして、後半最大のピークは、ピートが「これは僕が少しの間在籍したバンドについてジムが書いた曲。あのバンドにいられたことはとても光栄だ」みたいなことを話し始めた時に訪れた。もちろん、「Listening To NRBQ」だ。ライヴ前の飲み会で、「前にやった人生の20曲、今の僕ならこれを入れるね」と言ったほどに、僕にとっての存在が大きくなってしまった一曲。いつものジムの弾き語りもいいけど、ピートの雄弁なベースに支えられての演奏は最高だった。

「ああもう、これで終わってもいい」と思ったけど、最後に続けてこれも定番の「Several Thousand」。ちなみにこの最後の2曲も、僕が観た過去のライヴで必ず演奏している超定番曲だ。演奏終了後、「アシタノバン」とか流暢なジムの日本語を交えて一旦ステージ(?)を下りたものの、ほとんど間髪入れずに戻ってくるジム。

この日初めてウクレレを持ち(プラグを挿してアンプにつないだのは今回が初めて?)、これも定番のブルース・スプリングスティーン「Thunder Road」〜「Over The Rainbow」のメドレー。いつ聴いてもいいよね、これ。実はマニラで現地製のウクレレをもらってポロポロ弾いているんだけど、目の前で見ているこの楽器がとても同じものだとは到底思えない。

「すごいね、それ」とか言いながらピートもステージに戻ってくる。「なんて素晴らしい観客なんだ。ここに住みたいよ。あ、それより君たちアメリカに来なよ」みたいなこと言ってる。ジムもいつも言う台詞だね。そりゃ、これだけ密接なライヴができたら、ずっとこれを続けたいと思うよね。僕もそう思うよ。アメリカには住まないと思うけどね。

ピートのソロ『When You Come Home』からタイトル曲を演奏し、一旦下がってまた出てきた二人は、最後にキンクスの「Waterloo Sunset」を。ジムの最新ライヴ盤『Ample Seating Available』とゴーティでのライヴ盤を彼のサイトから買ったらおまけで付いてくるCD-R『Handmade Live Rarities』の最後を飾るカバーだ。そのライヴ盤同様、観客にコーラスを求めるジム。例によってそんな高い声は出ない僕。隣に座っていたNさんは最初からしっかりコーラスを入れて、ジムに指差されてたね。

アンコールも含めた第二部はしっかり1時間以上演ったかな。最後の曲が終わってBGMのCD(最初はブルース・ヒューズの「Several Thousand」だ)が流れ始めてもほとんど誰も席を立たない。やがて、二人にサインを求めに行ったり話しかけたりする人がちらほらと。僕も頃合いを見計らって、持参したCDを持って行く。まずは、友人のRさんが持ってきた『Songs Of No Consequence』(ピートがプロデューサー)をきっかけにグレアム・パーカー話でひとしきり盛り上がる。ピートは「新しいアルバム聴いた?『Three Chords Good』」と熱心に話し出す。確か「Live In Shadows」が一番好きって言ってたかな。「もうグレアムとは一緒に演らないの?」なんて訊いてしまったけど、それは愚問というもの。なんといってもピート自身が「ルーモア再結成だよ。最高だね」なんて言ってたのにね。

僕は、グレアム&フィグスの97年のライヴアルバム『The Last Rock 'n' Roll Tour』のジャケにサインをもらう。裏ジャケの写真を見て、「これは確か20代前半ぐらいの写真だよ。この当時にしてもずっと若い。グレアムがどっかから探してきて載せたんだ」だって。

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その後、ジムのところに行って『4 Way Street』のジャケにサインをもらう。「これって何年のアルバムだっけ、結構古いよね」という話をしていたら、案の定脳内ダダ漏れジムにそのときの会話をそのままサインと一緒に書かれた。ちなみに、開演前にジムが僕と間違えていたYassさんへのサインは「君の名前は少し長いからインクを沢山消費するよ」というものだった。僕とジムがその会話をしていたときにはYassさんはいなかったから、彼にとっては完全に意味不明のメッセージだよね。たまたま帰り道が一緒になったので、説明させてもらった。(僕のせいでは全くないはずなんだけど)なんだか申し訳ないよ。

別れ際に「また明日」と言ってジムと握手をしてゴーティを後にする。実は今回は鎌倉2Daysだったので大船に宿を取ってあるから、もっと終電ぎりぎりまでいてもよかったんだけど、まだ先は長いからというのと、このブログを今晩中に上げてしまいたかったからというので(もう4時過ぎてしまった!)、早々に切り上げることにした。というわけで、明日の最終日につづく。

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2012年11月05日

Matt The Electrician live in Fuji

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この季節になるとかなり早い時間に日が落ちてしまう。20時開場の富士でのライヴ会場にたどり着く途中で雪を被り始めた富士山が見られるかなと期待していたけど、もうあたりは真っ暗。

生まれて初めて降り立つ富士駅。駅前にあるチェーン店の顔ぶれは地方駅でも東京でも同じだね。もちろん、この地方ならではの海産物を売り物にするお店もあちこちに見受けられるけれど。会場のネヴァーランドは駅からほど近い建物の、外から上がる階段を2階に上がったところにある、ほんとに小さなお店だった。

長方形の店のかたちに沿ってコの字型のカウンター。その手前部分だけに何脚かのスツールが置いてあり、向こう側には椅子が7脚とPA卓、あとはマットの楽器とマイクスタンドがところ狭しと設置してある。一番前の椅子に座るためにはマイクにぶつからないように注意しないといけないような至近距離だ。

開演時刻が近づくにつれて店は満杯になる。でもほとんどのお客さんはカウンターの演者とは反対側から場所を埋めていくね。最終的にはコの字の短辺の椅子のない場所にまで立ち見のお客さんが何人もいたから、全部で30人弱はいたことになるのかな。おそらく、今回マット・ジ・エレクトリシャンというアーティスト目当てでわざわざこの場所に足を運んだ客は、僕と一緒に行った友達の他にはあまりいなかったんじゃないだろうか。ほとんどのお客さんは顔見知りみたいで、きっとここでライヴがあるたびに集まってくるんだろうね。

なんだかこういうのいいね。まるでロンドンのパブやNYのコーヒーハウスみたいに、行きつけのお店で(きっと)名も知らぬアーティストのライヴを観て盛り上がるなんて。しかも、ゴーティー主催のライヴは結構な頻度でここを使っているから、(大変失礼ながら)こんな地方都市の小さなお店でこんな質の高い(でも一般的には無名の)アーティストのライヴを何度も観られて、富士の音楽ファンは相当目が肥えてしまうよね。

開演前に外の階段のところで一服しているマットのところに行く。「昨日帰るときにリクエストしてくれた曲は『Breathing』とあと何だっけ?」と、向こうから訊いてきてくれる。あれとこれと、それから今日新たにリクエストしたい曲もいくつかあるんだけどと、相手がきっちりセットリストを作ってライヴに臨むような人じゃないとわかった途端に図々しく何曲もリクエストする僕。「オーケー、それとそれはできるかどうかわからないけど、やってみるよ」と、一応承諾してくれた。はたして全部覚えていてくれるかな。

開演予定時刻の8時半を過ぎてしばらくした頃、他のお客さんや松本さんと歓談していたマットがようやくステージ(というものはないけど)のところに来てギターのチューニングを始める。昨日と同じ赤と黒のチェックのネルシャツの下に着ている赤いTシャツはさすがに昨日とは違うね。彼が腰掛けているのはスツールじゃなくてカホンだ。「これは座っていてしっくりくるね」とマット。曲によっては右足でカホンを叩いてリズムを加えていた。

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オープニングは僕の知らない静かな曲だった。終演後にマットに聞いてみたら「あれも新曲」。今回聞いたどの新曲も結構レベル高いよ。来年のアルバムが楽しみ。2曲目は昨日のオープニングだった「Accidental Thief」。

続いて弾き始めたイントロでわかった、僕のリクエストした「I Will Do The Breathing」。去年の僕のベスト10の第九位だった『Accidental Thief』の粒揃いの曲の中でも、悲しげなメロディが際立つ名曲だ。歌い終えたときに、おそらくこの曲を知らなかった沢山のお客さんがひときわ大きな拍手をしてくれたのは、あながち僕の思い込みのせいではなかったと思う。

前半では他に「My Dog」とか「Osaka In The Rain」とか演ったかな。1曲僕の知らない曲があったからまた新曲かと思っていたら、演奏後にカバーだと説明。説明されても知らない人だったけど、松本さんのツイートによると、アーロン・リー・タスジャン(Aaron Lee Tasjan)という、ニューヨークドールズの再結成に参加したギタリストの「Summer Of Legs」という曲だそうだ。マットが「ニューヨークドールズに参加していたギタリストで当時19歳、今でもまだ若くて26歳ぐらい」と説明したときはてっきり冗談かと思ってたけど、再結成のときの話だったんだね。

「今日も45分のセットを2つ演るよ」と言っていたのに、最初の曲から30分ほどで「次が前半最後の曲」と言って「Milo」を始めた。途中にポール・サイモンの曲を2つとグレイトフル・デッドを挟む。確か去年の横浜でのライヴでポール・サイモン・メドレーを演ったのもこの曲だったかな。当時はまだこの人の曲を全然知らなかったからわからなかったけど。デッドを演ったのは、ちょうど演奏しているマットの真後ろにデッドのロゴのネオンがあったからだって。

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休憩時間中にマットに「前半短かったね」と言うと、「今日は後半しっかり長く演るから」とのこと。その言葉通り、後半は充実したセットだった。まずは、「Got Your Back」でスタート。

続いて、僕がリクエストした「Wish You Didn't Feel Like My Home」。地味でライヴ映えするような曲じゃないけど、これも『Accidental Thief』の中で大好きな曲。しっとりと滲みる。

さらに続けて、これもリクエストした「Permanent Record」。さっきできるかどうかわからないと言われた曲なのに、ちゃんと演ってくれた。スタジオバージョンではリズムボックスやらホーンやらがせかせかと入った曲だけど(それはそれでいいアレンジなんだけど)、素のメロディはコステロばりの名曲だと思う。これは是非弾き語りで聴いてみたかった。案の定素晴らしい演奏で、このときも大きな拍手が。

次が「College」で、その次が「Diaryland」だったはず。とにかく僕がリクエストした曲をこの第二部前半で立て続けに(きっと、忘れてしまう前に)ほとんど演奏してくれたのが嬉しかった。マットは特に何も言わなかったけど、僕にとっては一大リクエストコーナーだった。いやー、満足。

小さなバンジョーを“バンジョレレ”と紹介し、昨日同様「Animal Boy」を。でもこれが最終曲というわけではない。続けてスタンダードの「On The Sunny Side Of The Street」を。ユーチューブではもっとベタな(アバとかの)カバーが沢山観られるけど、この日は地味渋なカバーが多かったな。

「All I Know」を歌い終えたときに、何人ものお客さんがおもしろがってサビの「アウーー」ってところを繰り返して歌ってたのが可笑しかった。

この日は常連のお客さんの一人の誕生日だったらしく、「Happy Birthday」を歌う一幕も。そして、「最後の1曲」と言い、左膝に置いた歌詞を見ながら、ピーターパンの「I Won't Grow Up」を、観客にコーラスを要求して歌う。途中の「I will never grow a mustache」って歌詞が可笑しかったね。

アンコールに答え、「じゃあもう1曲だけ」と言って、カバー曲をファルセットで。これも知らない曲だったので終演後にマットに訊いて、それでもわからなかったから紙にメモしてもらった。メルヴァーン・テイラー(Melvern Taylor)の「Sad And Blue」という曲だそうだ。このアンコールも含めて後半は1時間超。合計で辻褄合わせてくれたね。

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マニラから持参した『Made For Workin』のジャケに、前日鎌倉の文房具店で買った白い油性ペンでサインをしてもらう。このどう見ても「nb」としか読めない簡単なサイン、本人によると「Sever」と書いてあるんだそうだ。でもどの部分がどう「Sever」なのかは本人にも解読不能(笑)

「リクエストした曲ほとんど演奏してくれてありがとう。でも『For Angela』は演ってくれなかったね」と言うと、「うん、あの歌詞は日本人にはきっと難しいから」と。まあそうだね。今度いつかアメリカに観に行ってリクエストすることにするよ。

帰り際、「マニラまで気をつけて帰って」と言ってくれる優しいマット。「来年も日本に来てくれたら観にくるから。またそのときに」と言い残して、もうすっかり寒くなった道を富士駅に向かった。
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2012年11月04日

Matt The Electrician & Goro Nakagawa live in Kamakura

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先月のジョー・ヘンリー&リサ・ハニガンはたまたま入った東京出張のついでに観たんだけど、去年の横浜でのライヴを観て以来すっかりファンになってしまったマット・ジ・エレクトリシャンの来日公演を観るために、今度は自腹で(と言っても航空券代はマイレージで賄ったんだけど)日本に駆けつけた。おあつらえ向きに11月1日からフィリピンでは4連休。ちょうどそのスケジュールに合う、1日の鎌倉と2日の富士での公演を観ることにした。

まずは鎌倉公演。この日は通常のライヴではなく、中川五郎とのジョイントライヴ+トークショー。マニラの自宅を朝7時半に出て、飛行機とNEXと在来線を乗り継いで鎌倉に着いたのは夕方5時前。開場までまだ2時間ほどあるなと思いつつ、キャリーバッグを転がしてカフェゴーティーへ。ちょうどリハーサルというか打ち合わせが始まるところだったので、バッグだけ預かってもらって時間まで鎌倉の町をうろうろする。

08年にタマス・ウェルズを観て以来、その後は主にゴーティーでのライヴのたびに何度かうろついている小町通り、来るたびにあちこちのお店が変わってる気がする。やっぱりこういう観光地の商店街は競争が激しいんだろうね。そんな中、(表通りではないとはいえ)ゴーティーさん地道にがんばってるよなあ。あの規模で、決して毎回儲かってるという訳でもないであろう(失礼)、でも凄く質の高いライヴを提供しながら。

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開場と同時に入店し、正面の席を確保して、あとは時間までいつものように店頭のCDを見たりしながら過ごす。店の外でタバコを吸っているマットに話しかけ、しばし世間話も。前日の新丸子でのライヴは45分のセットx2という充実したものだったそうだ。去年の横浜でのジム・ボジアを含めた4人のライヴの話とかもした。でもトークショーの際に質問コーナーもあるということなので、音楽関係の質問は控えめに。

まず最初は中川五郎。バンジョーを抱えた姿がなんだウディ・ガスリーみたいだなあと思っていたら、後のほうのMCで、自分が音楽を始めたのはウディやピート・シーガーに影響を受けてということを話していたから、きっと意識しているんだね。マットとはオースティンつながりだということでジェリー・ジェフ・ウォーカーの「Mr. Bojangle」を日本語でカバーしたものを含めて5曲を披露。3.11以降に書かれた反原発の曲が2曲もあったのを聴いて、この人は過去45年間ずっと(いい意味で)このままなんだろうなと思った。

10分の休憩の後、中川さんとマットの座談会、というか質問コーナー。「一番最初に影響を受けたアーティストは?」「ポール・サイモン」(だから去年のライヴでポール・サイモン・メドレーを演ったんだね)。「一番最初に書いた曲は?」「94年に詩のクラスで、詩の代わりに当時の彼女のために曲を書いたのが最初。でももう忘れた」。「覚えている中で最初に書いた曲は?」「確か96年に書いた曲で、『Heater』というやつ。でももう長い間演奏していない」。などなど。中川さんは話を聞くのに夢中でつい訳すのを忘れがちで、結局ゴーティーの松本さんがほとんど通訳をすることに。それにしても松本さん詳しいな。マットが話してないことまで注釈つきで解説してるよ。

この会のために特別に中川さんが翻訳したマットの3曲「Accidental Thief」「Animal Boy」「Osaka In The Rain」のプリントを全員に配布し、それらについての本人による詳しい解説も。こういうのはいいね。

観客からの質問コーナー。「マットの祖先はどこから来たの?」「スロベニア。セヴァー(Sever)という苗字はスロベニアのものなんだ。でも僕はサンフランシスコ生まれだから(と、アメリカ人だということをしきりに強調)」。「トム・フロインドのためにマットの奥さんがデザインしたシャツは日本からも買える?」(なんてマニアックな質問・笑)「買えるはずだよ。ramonsterwear.comにアクセスしてみて」(見てみたけど、とても日本人が着こなせる感じではない相当カウボーイッシュなシャツでした)。

僕からもいくつか質問。「ニューアルバムは作ってる?」「曲を書き始めたところ。春になったらデンマークに行って録音するよ。たぶん来年の9月ぐらいにはリリースできるはず」「デンマークにはバンドは連れて行ってないからソロアルバムになるね」。「(アルバム『Animal Boy』収録の)「For Angela」の歌詞は実話?」「うん、ウォルマートに実際に手紙を送ったし、彼女にCDを渡そうと思って何度かあの店に行ってみたけど、もう会えなかった」などなど。

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45分の予定だったトークショーは、なごやかに(時にゆるーい感じで)過ぎてゆき、あっという間に1時間近くになってしまった。また5分ほどの休憩を挟み、いよいよ本日のメインイベント、マット・ジ・エレクトリシャンのライヴへ。

18フレットしかない小柄なギターを抱え、オープニングは「Accidental Thief」をしめやかに演奏。2曲目に入るところで「バンジョー使っていい?」と、中川さんのバンジョーを弾き始める。ほとんどチューニングもせずにそのまま弾けるものなんだね。その後知らない曲がいくつか続いたのは、ニューアルバムのための新曲かな。

5曲目でまた自分のギターに持ち替え、「Osaka In The Rain」を。どうやら今日は短いセットの中に、トークショーで話した3曲を全部演奏するつもりだな。それどころか、なんと次の曲は「Heater」。さっきのトークショーで自分はライヴのときには特にセットリストは作らないで、最初の数曲以外は思いつきで演奏するって言ってたけど、今日話題に出た曲を全部こうして聴かせてくれようという気配りが嬉しいね(さすがに「For Angela」は演らなかったけど)。

別の新曲を弾き始めようとして途中で止め、「やっぱりこっちの曲にしよう。これも新曲」と途中で別の曲にし、「やっぱりこの曲はバンジョーで演りたい」とまた途中で止め、後ろに置いてあったバンジョーに持ち換えるという場面も。

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最後は自分の小柄なバンジョーで「Animal Boy」。その後、客席で観ていた中川さんを呼んで「Goodnight Eileen」を二人で分け合って歌い、終了。全部で10曲ちょっと演ったかな。あっさり終わってしまったけど、まだ翌日もあるし、トークショー楽しかったからこれはこれでいいや。

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終演後にまた外でタバコを巻いていたマットをつかまえ、持参した『One Thing Right』にサインをもらう。一緒に写真も撮ってもらった。もう少しゆっくり話してたかったけど、終電の時刻が刻々と近づいてきていたので、ゴーティー印のCDを何枚か急いで買って帰路についた。

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