2015年08月23日

Elliott Murphy live in Tokyo

ロックンローラーとして長いキャリアを築いたアーティストが、そのキャリアの途中でぽつりと生ギターの弾き語りライヴアルバムを出すことがある。雑誌なんかで取り上げられるライヴの名盤リストに名を連ねることはないけれど、そういう類の地味なライヴアルバムの中には、僕にとっては珠玉の名作といえるものが少なくない。たとえば、グレアム・パーカーの『Live! Alone In America』。たとえば、ウォーレン・ジヴォンの『Learning To Flinch』。

エリオット・マーフィーの25年ぶりの来日になるという昨日のライヴを観ながら、もしこれが録音されていたら、きっとそれらの名作に匹敵するんだろうな、なんて思っていた。いいライヴだった。

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僕はけっしてこの人の優秀なファンだったわけではない。2年半前に観たスティーヴ・フォーバート同様、それこそ中学の頃から入口は常に開いていたのに、どういうわけかその扉をちゃんとくぐったことはなかった。僕がエリオットのCDやLPを買い始めたのも、サニー・ランドレスやガーランド・ジェフリーズが参加してるからという、極めて副次的な理由が主だった。

それでも、そういうアルバム群を聴いてみれば、いいのはもちろんわかる。もっと聴いてみたくなる。そうしてたまに中古ショップで手頃な値段のアルバムを見かけるたびにぽつぽつと買い足して、何年にもわたって何十年も遅れて少しずつこの人のことを聴くようになっていた矢先に発表されたのが、今回の25年ぶりの来日というわけだ。もちろん、1990年には僕はこの人のライヴに出かけるどころか、アルバムの1枚も持っていなかったから、本当に待ちわびた真のファンの人たちと一緒に感慨にふけるのはおこがましいんだけど。


ライヴ中にエリオットも「この会場の名前はいったいどういう意味だ?」と言っていたぐらい読み方も意味もよくわからないZher The Zooという、代々木駅から至近の便利な会場。こんなところにこんなハコがあったんだね。会場の大きさとしては、数か月前にヒュー・コーンウェルを観た高円寺Highをやや小さ目にした感じかな。立ち見で満員まで押し込めば200人は入るかも、という程度の手頃な規模。

そこに、入場してみたらずらりと椅子が置いてある。ざっと見たところ、50脚ぐらいかな。そうか、残念だけどそんな程度の売れ行きなんだね。もちろん、直近になって花田裕之との共演が発表された今日の新宿公演はもっと大きなキャパでもっと沢山の集客があるんだろうけど。

興行的にはやや残念かもしれないけど、観ているこちらとしては、こんな小さなキャパの会場で、しかも僕は発売とほぼ同時にチケットを入手できて、かなりの良席をゲットできたんだから、もちろん文句なんか言うつもりはまったくない。

こんな小さな会場で、開場から開演まで1時間はさすがに間延びするなぁと思っていたら、最近にしては珍しく開演時刻の19時を過ぎてもなかなか始まらない。結局、19時15分過ぎぐらいだったかな、テイラーのアコギを手にしたエリオットが登場したのは。カフスボタンのついた白いシャツのボタンを胸の下ぐらいまで開き、その上には黒いベスト。黒いズボン。黒い革靴。茶色いパナマ帽の下には水色のバンダナが見え隠れする。もうほとんど白いといっていいぐらいの金色の長髪に、同じく白い不精髭。かなり度の強そうな遠視の眼鏡をかけている。

かなりスローにテンポを落とした「Last Of The Rock Stars」を弾き語り始めた瞬間から、僕の頭には冒頭に書いた感想が浮かんできた。これは、かなりいいライヴになりそうだ。

さっき書いた程度のにわかファンだから、知らない曲もどんどん出てくる。でも、そんなこと全然気にならない。同じようなアーティストのライヴだと、たとえばグレアム・パーカーやジョン・ハイアットのときは、それこそイントロの一音(もしくは、イントロを弾き始める前に弦を爪弾く音)でそれが何の曲だか全部わかってしまって、それはそれで楽しくはあるんだけど、こうして、ほとんど初めて聴く曲でも同じように楽しめてしまうのは、やっぱりアーティストの力量と曲の良さゆえなんだろう。

きっと日本人向けだからなんだろうけど、かなりゆっくり喋ってくれる。これが3回目の来日で、前回は1990年の10月だったこと。そのときは息子さんが生まれた直後で日本にいる間も気が気じゃなかったけど、今や25歳の息子はもう両親がツアーに出ていることで羽を伸ばしているだろうなんて冗談。35枚もアルバムがあるから、今回どんな選曲にしようかかなり迷ったこと。テーブルに置いてあったエヴィアンを指さして、「フランスの水だ」とか言ったり。先日のパイレーツ・カヌーの後だからすごく可笑しいMCとは思えなかったけど(変な免疫ができてしまった)、来てくれたお客さんにゆっくり話しかけよう、楽しませよう、というのがよく伝わってくる。いい人なんだろうなということがよくわかる。

僕でも知っていた「Sonny」とか、「昔からのファンに捧げるよ」と言って始めた「You Never Know What You're In For」とかの曲では特に、間奏のハーモニカがとても沁みた。ギターソロなんて呼べるような間奏はほとんどなかったけど、そのかわりと言ってはなんだが、あのハーモニカソロには、時折本当に涙が出そうになった。日本のトンボ製をずっと使ってるって言ってたね。

10曲ほどもそうやって時折MCを挟みながら続けた後だったろうか、「誰かリクエストはある?」ときた。聴きたかった曲がなくもないけど、にわかファンは黙ってますよ。そうすると、客席のあちこちからパラパラとリクエストの声があがる。びっくりしたような顔をしていたり、手首をぐるんぐるん回して「そいつは難しそうだ」なんて言ってたのを見ると、結構レアな曲だったんだろうね(もちろん、最初のリクエスト曲「Anastasia」は僕でも知ってたけど)。

2つのリクエスト曲を挟み、またセトリ通りの進行に戻って、「And General Robert E. Lee」のときかな、歌ってる途中で咳が止まらなくなってしまったんだけど、演奏は止めずに、「どうして咳が出たかわかってる。ウソをついたからだ。今“2本のギター”って歌ったけど、ここには1つしかない」って冗談を挟み、1本のギターという歌詞に替えて歌いなおした。あのせいでもうライヴ盤になることはないだろうけど(元々そんな予定もなかっただろうけど)、あんなアクシデントまで見せ場に変えてしまうなんて、さすが。

本編ラスト2曲は名盤『Just A Story From America』からの「Rock Ballad」と「Drive All Night」(後者は、さっきリクエストを募ったときに客席から声があがって、「それは後で演るから」と言っていた曲だ。この手の代表曲はあんな中盤でリクエストするもんじゃない。そういえばこないだのジョン・ハイアットのときも中盤で「Have A Little Faith In Me」なんてリクエストしてた客がいたな)。


アンコールでも、出てきた途端にリクエストを募るエリオット。NYの高層アパートに住んでいたときに眼下の街明かりを見ながら書いたという2曲目の「Diamonds By The Yard」を紹介するときに「今回東京の高層ホテルに泊まって、これはDiamonds By The Yard Part 2を書かなければと思ったよ」だって。

2曲のアンコールを終え、「もう全部演ったかな?」と問いかける。「Just A Story From America」演ってないじゃないかとは思ったけど、にわかファンが何か言う前に「Niagara Falls」と後ろの席からリクエストが。「僕より曲を覚えてるね」とエリオット。

案の定、恐る恐る始めたその曲は途中で歌詞がわからなくなり、でもやはり演奏は止めずに、パリに旧友のルー・リードが訪ねてきた時の話を始めた。おお、なんかこういうのもいいねと思っていたら、「じゃあせっかくだからルーの曲を歌おうか」と言って、偶然なのかほとんど同じコード(だったはず)の「Walk On The Wild Side」にメドレーでつなげた。うわ、すごいよこれ。こんな貴重(たぶん)なのが聴けたよ。

歌い終えてギタースタンドにギターを置き、楽屋に歩いていこうとしたときにシールドに足を引っ掛けてしまい、ギターが倒れそうになってしまった。慌ててギターに戻り、上を見て「ルー、見てたのかい?」と言ってからステージを去る。


終わっても、50人ほどの客のほとんどが誰も会場を去らない。もちろんサイン会あるんだろうね。と思っていたらすぐに出てきた。ライヴ本番は出てくるのにあんなに時間かかったのに。そして、ほとんどのお客さんが何枚ものCDやレコードにサインをもらい、一緒に写真を撮ったりしている。僕もせっかくだから、CDは持って行かなかったけど、開演前に買っておいた白いTシャツの背中にサインをもらった。Tシャツのサインって洗濯したらどんどん薄くなっていってしまうから迷ったんだけど。

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終演後は、せっかく代々木まで来たからということで、友達と一緒にひさしぶりのひつじやへ。ほんとにここは安くて旨い。ワインのボトルがどんどん空いてしまうよ。いいライヴといい酒。最高の夜だった。


Setlist 22 August 2015 @ Zher The Zoo
1. Last Of The Rock Stars
2. Benedict's Blues
3. Sweet Honky Tonk
4. Take That Devil Out Of Me
5. Sonny
6. Take Your Love Away
7. You Never Know What You're In For
8. Hangin' Out
9. On Elvis Presley's Birthday
10. Blissed Out In The Land Of Nod
11. Anastasia
12. Deco Dance
13. And General Robert E. Lee
14. Even Steven
15. Rock Ballad
16. Drive All Night

Encore
1. Graveyard Scrapbook
2. Diamonds By The Yard
3. Niagara Falls / Walk On The Wild Side

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終演後に写真を撮らせてもらったセトリ。予定されていたアンコールの3曲は演奏されなかった。
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2015年08月02日

The Deedees live in Kyoto

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観に行きたいと思うライヴ全部に行ってしまうこの自分の性格はなんとかならないものか。前週に鎌倉で観たパイレーツ・カヌーがあまりによくって、次のツアーが待ち遠しいなぁなんて思っていたけど、よく考えたら今回のツアーまだ終わってないんだ、エリザベスまだ日本にいるんだ、と思うともう居ても経ってもいられず、京都まで日帰りで追っかけることにした。世間的にはフジロックの日曜日に。

事前に調べていたとおり(実はアクセスを調べるのにもちょっと手間取るような、そんなに普段からライヴが行われているような場所ではなかったんだけど)、京都駅からバスに揺られること約40分、地図で見るかぎりは金閣寺からそう遠くない、でもバスを降りたらライヴハウスどころか喫茶店の一軒も見当たらないような、何の変哲もないごく普通の街並みだった。

これは間違えたかなと思いながら道を歩いていたら、これまたごく普通の三階建ての住宅の外階段を上がったところにPapas Door 12Bと書いた小さな看板が。あ、これなの? 思ったより早く着きすぎたのを割り引いても、外には誰もいない。階段のところに並んでようかと思ったけど、並ぶもなにもそんな民家の外階段に一人で立ってたら単なる不審者。中からリハーサル中っぽい音が聴こえてきたので、ライヴがあることだけは間違いなさそうだから、ちょっと安心してその辺をうろつきながら時間を潰すことにした。

ところが、7月末の真昼の京都なんて、とてもうろつけるはずがないと気付くまでに5分もかからなかった。あっという間に汗だく。しょうがないので正面のコンビニに入って汗を乾かしていると、さっきの外階段を誰か降りてくるのが見えたので行ってみる。ああ、ドブロの名手、岩城さんだ。僕が近づいていったら、すぐ気付いてくれた。「ほんまに来てくださったんですね」と。

しばらく話してると、他のメンバーも降りてきた。前週のライヴで一回会っただけなのに、皆さんすぐ思い出してくれて嬉しい。開場時刻の14時になった頃に、メンバーの昔馴染みらしいお客さんも一人現れ、じゃあそろそろ上がりましょうかと皆で会場へ。

まったく普通の家のリビングルーム。キッチンカウンターがあって、オーナーの日向さんと奥さんがその中で飲み物なんかを用意している。カウンターのこっち側にはこないだのゴーティのようにいろんな楽器が所狭しと置いてある。客席側、壁に沿って椅子が確か八脚、床には座布団が八枚。キャパ16名か。たぶん今までに行ったライヴ会場で最小だなこれは。一応最初に来たので、ステージ近くの楽そうな椅子に座らせてもらおう。

開演予定の14時半まで、ぞろぞろとお客さんが入ってきて、ほとんどの席があっという間に埋まる。お客さんの大半はメンバーやオーナーとは昔からの知り合いみたいだね。日向さんは、パイレーツ・カヌー結成前にメンバーの何人かが一緒にバンドを組んでたらしいし、彼らがエリザベスの歌を初めて聴いたのもこの場所だったんだって。メンバーとそれぞれ別々に話していて、皆が異口同音に「ここは思い出の場所なんですよ」と言っていたのが印象的だった。

エリザベスのお父さん、オウエン・ハントとも開演前なのに色々と話させてもらった。セトリを見ながらこれは誰の曲だとかこれは知ってるかとか。いや、かなりディープなフォークソング集ですね。半分もわかりません。「ディーディーズってどういう意味ですか?」「父ちゃんと娘」ああ、そういうことね。

そんな風に会場のあちこちで和気藹々と話の輪ができていたけど、やがて時間になって、そういえばライヴだみたいな感じでおもむろにエリザベスとオウエンがそれぞれアコギを持って座る。オウエンのはクラシックギター。エリザベスのはあまり見たことない不思議な形のギターだったな。

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こないだのパイレーツ・カヌーのとき同様、一曲目は伴奏なしのコーラス曲「Canaan's Land」。見事なハーモニーが決まってほっとした表情のエリザベス。「始まりの合図するの忘れてた」と、歌い始めてから天井のライトの調整をすることになってしまった日向さんに照れながら謝ってたな。ライヴ前にあんなになごやかにお客さんたちと話してたのに、やっぱり緊張してたのかな。

次からも、歌い始める前にオリジナルアーティストと簡単な曲紹介(ときどき歌詞の内容なども)を話しながら進めていく。僕なんかは全然知らないような曲でも、紹介した途端に拍手をするようなお客さんもいて、皆さんやっぱりこういう類の音楽に精通してるんだなあ。オウエンの日本語はそれほど流暢というわけではないけど、ときどき言い間違えたのをエリザベスが補足したりして、それがなんだかいい感じのボケと突っ込みみたいで可笑しかった。

二人で6曲(セトリにはもう1曲書いてあったんだけど、時間の関係か残念ながらそこまで)、最後は僕でも知ってるリチャード・トンプソンの「Withered And Died」で締め。30分ほどの短いステージだった。でも、失礼ながらこの二人だけのこの前半セットがこんなに本格的なものだとは想像もしていなかった。開演前にオウエンが自分たちは素人みたいなもんだからなんて謙遜しながら話してたのは話半分に聞いていたつもりではいたけれど、もう3曲目ぐらいまで聴いて僕は京都までの往復新幹線代の元は取れたと思ったね。

休憩をはさんで、今度はパイレーツ・カヌーの男性陣三名がバックについてのセカンドステージ。キッチンカウンターと壁際に置いてあるピアノとの間に全員が無理やり入ることになるから、なんだか電車ごっこでもしているかのような二列縦隊の不思議なポジション。エリザベスの真後ろにドラムスのヨッシー、オウエンの後ろに各種弦楽器の岩城さん、そのまた後ろにベースの潤さん。それぞれほぼ身動きできない状態で。

うわぁ、やっぱりこのバンドが入ると全然違うな。さっきも書いたとおり、ファーストステージも決して悪くなかった、というか僕はファーストだけでも数万円払って来た甲斐があったと思えたほどだったんだけど、このセカンドステージはそれのさらに豪華版。特に、曲ごとに演奏する楽器を持ち替える岩城さんがすごい(確か、1曲目がドブロ、2曲目がバンジョー、3曲目がマンドリン、あとは何曲目か忘れたけどウクレレも弾いてたし。なんであんなに違う楽器をそれぞれあんなに見事に弾くことができるんだ?)。ところであのウクレレは自作で、日向さんに売ったものを使わせてもらってたんだって。

ほとんどがカバー曲だったけど、後半にエリザベスとオウエンの自作曲を数曲披露。すごくいい曲だったのに、ディーディーズでCDを出す予定もないし、もちろんそれらの曲はパイレーツ用ではないんだって。なんてもったいない。

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自作曲を演ろうとしたときに、イントロを演奏し始めてから歌詞を書いた紙を忘れたことに気付いたエリザベスが笑いながらバンドを止め、お父さんに歌詞カードを探してもらい、再び演奏開始。と思ったら、歌おうとした途端にそれが別の曲の歌詞だったことに気付いて大爆笑、みたいなこともあったな。

セカンドステージはほとんど一時間近くあったかな。最後の方はエリザベスがほとんど一曲ごとにお父さんに「今何時?」って聞きながら進めてたから、よっぽど時間に制約でもあったのかな。結局、セトリに書いてあった残り2曲を残して「これで最後です」と。当然、アンコールの拍手が出る。

「じゃあ最後にもう1曲やります」と言いながら、エリザベスがバンジョーとドブロをそれぞれお客さんに手渡して回る。戸惑いながらもすんなり受け入れる二名のお客さん。きっと、普段一緒に演奏している人たちなんだろうね。そしてエリザベス自身はギターからアコーディオンに持ち替えて、(セトリからは結局1曲飛ばして)ラストの「Goodnight Irene」へ。ろくに練習もしてないのに無茶振りされた二人のお客さんもそれぞれ少しずつのソロを決めて、和やかに終演。

ライヴ中、キッチン内でぐつぐつと煮立っていたカレーがもう夕方の腹にはとても耐えられないほどのいい匂いを放っていたので、終演後はお客さんもメンバーも即座にカレーを注文(鎌倉常連にはお馴染みの、ゴーティ商法ですね)。帰りの新幹線はちょっと余裕を持って遅めのを予約していた僕も、カレーと何杯目かのアルコールを注文し、ひき続きメンバーやエリザベスのお母さんと談笑させてもらった。いろんな裏話みたいなのや楽しい話も沢山あったけど、プライベートな話はどこまで書いていいものかよくわからないので割愛。

お客さんも名残惜しそうにぽつぽつと帰られ、やがて僕と最初に来ていた数名ほどのお客さんになった頃に、僕もそろそろ出ないと新幹線に間に合わない時刻になってしまった。別に僕に気を使って皆さんゆっくりしていてくれたわけじゃなかったんだろうけど、おかげでライヴ前後にも本当に沢山楽しい会話ができたよ。なんだか、ほんの一週間前に知り合ったばかりの友達のホームパーティーに誘われたような錯覚に陥ってしまった。あんな豪華なバンド入りのホームパーティーになんて呼ばれたことないけどね。

「じゃあ、お先に帰ります」と部屋を後にしようとしたら、エリザベスは玄関のところまで見送ってくれたし、ヨッシーはわざわざ階段を下りたところまで来てくれた。嬉しいな。

会場から数分歩いた先のバス停でなかなか来ないバスを待っていたら、道の反対側の駐車場に停めてあった車に戻るハント一家が見えたので、そのまま通りを横切ってまた会いに行ってしまった。なんか個人的な最後のアンコールみたいな感じで、車に乗り込む直前のエリザベスに挨拶して(そのとき彼女が手に持っていたプルーンの種は、捨てようと思って持ってるだけで別に渡そうと持ってきたわけじゃないと、最後の最後までちょっと可笑しな話で締めくくって)最高に幸せな気分のままバスに揺られて京都駅に向かった。

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2015年07月25日

Pirates Canoe & Daisuke Nakai live in Kamakura

友達に勧められてパイレーツ・カヌーのCDを買ったのがだいたい半年前ぐらい。いい印象は持ったけどヘビロテというまでには至らず(たとえば、似たジャンルではそのしばらく後に買った『Same Trailer Different Park』の我が家でのリピート率なんかに比べると、という意味で)。渡米していたヴォーカルのエリザベスが久々に来日しての全国ツアーという触れ込みにもかかわらず、ライヴは別にいいかなとか思っていた。タイミングの悪いことにこの七月の三連休の前半はちょっと肉体労働を伴う予定も入っていたので、体調がよければ前日の夜に判断して鎌倉に行ってみようかな、ぐらいのかなり軽い気持ちで、でも結局、海の日の人混みでごった返す小町通りに向かうことになった。

このブログでこの手のセリフを何度書いたことだろう。これを見逃していたかもしれないなんて、本当に危ないところだった。めちゃくちゃよかった。楽しかった。今からほぼ一か月前に同じゴーティで観たセス・ウォーカーのライヴレポートを書かないとなぁなんて思いながらずるずると引っ張っていたのを追い越して、この平日の夜の時間を細々と使って少しずつでも毎日書こう。あの記憶が薄れてしまう前にちゃんと記録に残しておきたい。そんなわけで、ちょっととりとめなくなりそうな気もするけど、思い出せることをあれこれ書いていくよ。

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事前の気合いの入ってなさを象徴するかのように、僕にしては珍しく時間の目測を誤って開場時刻を少し過ぎてからゴーティに辿りついた。この日は整理番号関係なしと言われていたのに。でもまあ、最前列ではないものの、ほぼ正面から観られる背もたれ(壁)付きの席。そう悪くない。すぐ隣にはお馴染みの常連さんたちもいて話もできたから、開演までそんなに退屈することもなかったし。

あの大所帯バンドがほんとにこんな狭い場所で演奏できるんだろうかと思っていたけど、左から床に寝かせたプレシジョンベース(ギタースタンドが足りなかったのかな)、マンドリン、簡単なドラムキット、ギブソンのセミアコ、マーティンのアコギ、ドブロ、バンジョーと、弦楽器を中心にずらりと並んでいる(演奏には使わなかった備え付けのピアノは数に入れてない)。そして、開演時刻ほぼぴったりにメンバーがぞろぞろとステージへ。

ギターのチューニングに合わせて、メンバーや(おそらくパイレーツカヌー常連の)お客さんが同じ音階で「んー」と声を出す。「何の会や!」と突っ込む中井氏。あとで何かの曲のMCのときに種明かししてたけど、京都の別のアーティスト(名前失念)の持ちネタ(?)らしい。

で、せっかくチューニングしたのに、1曲目はアカペラ(もしかしたらギターは弾いてたかな?マンドリンだったかな?)で「Spider Tattoo」。もうここで一気に引き込まれる。うまいねー。オリジナルはバンドアレンジだけど、最近はこのバージョンで歌ってるんだそうだ。そりゃ、プロのアカペラ・コーラス・グループみたいに流暢ってわけじゃないけど、後で沙羅さんが言ってたように、ほんとに楽しそうにハモってるよ。一番上のパートはもちろんエリザベスで、一番低音はドブロの岩城氏。途中ソロで歌うところがかっこよかった。

間髪入れずに「Leaving Places」。『For The Pain In My Heart』のラストを飾る、しっとりと、まるで空気の色を刷毛で幾重にも染めているのを目の前で見ているような演奏と、なによりもあの声。和気藹々と楽しそうにやっていた1曲目からのこの格段の落差。もうここで、目も耳も心も釘づけになってしまった。このCDの中では一・二を争う僕のお気に入り曲で、もしライヴ中にリクエストを求められるようなことがあったらこれと思っていたのがもう登場。

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「せっかくの連休最後の海の日に来てくれてありがとうございます。次の曲は明日仕事の人に捧げます。明日からの仕事のことを思い出しながら聴いてください」と京風にヒネリの聴いたMCから「Gull Flying North」へ。アイリッシュケルト風のこれも抜群にいい曲。もうこの序盤から既に大団円かというような風格。そしてここからは、全部『For The Pain In My Heart』からの選曲。それぞれの演奏前にたっぷりと愉快な前フリ付きで。アンコールまで全部入れて正味一時間ぐらいのライヴだったけど、あれもしかしたらそのうち1/3ぐらいはずっと喋ってたぞ。それがちっとも長いとは感じなかったけど。

あの狭い会場なので、マンドリンの沙羅さんのぴったり後ろに立つことになっていたベースの谷口氏のことを「私のお母さんによく間違われるんです」と沙羅さん。なんだかそんな風によくいじられていたベースとドブロのお二人。初めて観たバンドであんなに人数居るのに、メンバー全員それぞれにキャラが立ってるから(しかも全員かなりおもろい)、誰が誰かすぐに覚えられたよ。

ラスト前の「Rainmaker」を終えた後に「もう次で終わりなのに宣伝するのを忘れてた」と、物販の宣伝を。「今度出る新しいCDを先行発売してます」とか「Tシャツもいろいろあります。印字がすごく薄くてほとんど無地のもあるから、パイレーツカヌーファンでなくても着られます」とか。「クリアファイルを買ってくれたら、今日のセットリスト入りです」と言ったときの反応が薄くて「ほらやっぱりそんなん誰も要らんやん」とか、もうそんな紹介されたら買わずにいられますか(笑)

ラストは、新しく出た『Live In New York』でも最期を飾っていた「Guitar Blue」。ドブロソロ弾きまくりのこれも大好きな曲。そして、ステージを降りる間もなく、アンコールの拍手。一旦はCDをかけた松本さんもすぐに止めて、1曲だけアンコールいいよ、と。ヴォーカルの二人とドラムスの吉岡氏がしばらく相談した後、沙羅さんが「レディーガガを演れと言われました」。冗談かと思いきや、かなり手慣れた感じでカントリー風「Born This Way」を。ああ、これはアメリカでは大受けだったろうね。

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あっという間の一時間だった。愉快なMCも含めて、すっかりファンになってしまったよ。ライヴ中のMCで沙羅さんがずいぶんと自虐的に宣伝していたやつを買いに表の物販へ。「セトリ入りのクリアファイルください。あと印字の薄いシャツ」。物販係をしていた沙羅さんとひとしきりお話。『Prologue』がそれまでのCDからの選曲+ライヴレコーディングで、『One For The Pain In My Heart』とそれを持っていれば主要曲はほぼ揃うと教えてもらった。でも初期盤の曲が全部入ってないとなると、やっぱり結局そっちも欲しくなるんだよね。もう手持ちの現金がかなり少なくなってきてたから買わなかったけど。あと、もうその時点でライヴ盤は売り切れてた。始まる前に買っておいてよかった。セトリには全員分のサインもらえたし。

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その時点では名前もろくに憶えてなかったけど、“マンドリンの女の人”に会ったらこれだけは伝えておきたかった「あの変拍子の曲と次の曲、書いてるでしょう。いい曲書きますね」と、お世辞のつもりはまったくなく言うと、「わたしが曲を書いてるのは黙ってたのに」と。ほんとにもう、この人の冗談のセンス大好き。

エリザベスも物販のところに来た。いきなり「たくさん目が合いましたね」と言われた。むう、そんなにガン見してたとは。そして「楽器演奏されるんですか?」と。いや、ほとんどできないんで。。練習しないと。そんな風にこちらがどぎまぎしてると向こうからいろいろと話しかけてくれる。もうこちらはそれだけでめろめろである(つい二か月前にも同じことを書いた気がする)。鈴加ハントがエリザベス・エタになった話とか(エタはおばあさんの名前なんだって)、来週お父さんと一緒にライヴを演る話とか、なんか短い休憩時間にたくさん話せてすごく楽しかった。


30分ほどの休憩の後、鎌倉の大スター(と、パイレーツカヌーのステージでいじられていた)中井大介のステージ。女性陣二人を除いたパイレーツカヌーのメンバーがバックを務める。「もうみんなやりきった感ありありやん。これからみんなで海行きましょうか」といきなりゆるく笑わせる。

パイレーツカヌーのあのアメリカ南西部とアイルランドが融合したような独特の世界観とは打って変わって、こちらは日本語詞でしっとり聴かせる、あくまでも日本のシンガーソングライター然とした演奏。バンドで演るのは久しぶりだって言ってたかな。一人で弾き語りをしていた曲とは、バンドが入ると当然だけどやっぱり雰囲気変わるね。シティポップス(死語?)みたいな感じで。

アンコールでパイレーツカヌーの残りのメンバーも呼んで、結局ファーストセットと同じメンバーで(リードヴォーカルだけは違って)1曲演奏。結局こちらもアンコールまで入れて一時間ぐらいだったかな。感想文短くて申し訳ないけど、決してよくなかった訳じゃないよ。ただ、最初に中井氏が言った「やりきった感」という言葉がいみじくも言い当てていたように、この日は本当に初めて観たパイレーツカヌーに思いっきりやられてしまった。気持ち全部持っていかれた。

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終演後。さっきもうセトリにはサインもらったけど、せっかく持参した『One For The Pain In My Heart』にももらおうと、出口のあたりでうろうろしていたメンバーにまた話しかける。沙羅さんが「そのシャツいいですね」と言ってくれたので、マニラで買ったことを伝えると、彼女も以前サマール島に行ったことがあるらしく、フィリピン話でひとしきり盛り上がる。

楽器を片づけていた中井さんとも話す。「(沙羅さんを指して)彼女とは去年結婚したんですよ」と。前からファンの人にとっては周知の事実なんだろうけど、そんなことちっとも知らなかったからびっくりした。元はパイレーツ・カヌーの追っかけだったとか(半分自虐的に言ってたんだろうけど)、一緒にレーベルを始めたとか、新米ファンにはいろいろと新鮮な話が聞けた。

ライヴ中に沙羅さんが「エリザベスが次に日本に来るのはきっと冬かな」と振ると、エリザベスは「うーん、まだ決まってないけど」という話をしていたので、「冬にはまた日本に来てくれますか?」と聞いてみたら、やっぱり同じような返事。まあ、いろんな事情があるんだろうけど、日本のバンドだからってそう頻繁に観られるというわけでもないんだね。来日アーティストのつもりでいないと。ちょっとそうなると、今回のツアーの残り数回、全部京都らしいけど、追っかけて行きたくなってしまうよ。

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2015年06月28日

Matt The Electrician & Tim Easton live in Kamakura (Part 2)

ツアー最終日。もう二週間も前の話になるし、つい昨日は同じ場所で別のライヴを観てきたばかりだから、思い出せることをとっとと書いてしまおう。結論を先に述べると、演奏内容も選曲的にも、僕にとってはこの日が圧倒的によかった。マットとティムにリクエストした曲を演ってもらえたというのもあるけど、それ以外にも実は聴きたかったという曲が次々に演奏されて、かなりの満足度だった。

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さて、前日の終盤に某常連ファンのYさんにリクエストされたマットの「Accidental Thief」でこの日は開幕。ティムの曲を挟んでのマット2曲目は、いつもなら僕がリクエストしていたとしてもおかしくない「I Will Do The Breathing」。マットの繊細なアルペジオとティムのギターとの絡みがまた素晴らしい。

一方のティムは、「Sitting On Top Of The World」、「Deep River Blues」と、ドク・ワトソンのカバーを連発。今回のお土産CDのタイトルも彼の名をもじった『Dark Watson』だし、もしかしたらこれまでもずっとそうだったのかもしれないけど、なんかティム今はドク・ワトソンづいてるのかな。

「ティムが自分のヒーローの曲を演るなら、僕も」と言って、マットは(もちろん)ポール・サイモンの「Duncan」を。ほんとにこの人、ポール・サイモン好きだね。前日もこの日も、こうやって相手が演奏した曲にひっかけて、同じテーマで自分の次の曲を決めるなんてことがときどきあった。

「クモの曲を歌うよ」と言ってみて、前列のお客さんから「それって雲か蜘蛛のこと?」と訊かれてとまどうマット。「ああ間違えた。歌いだしを聞いてみれば、雲か蜘蛛か熊かどれかの歌だってわかるよ」と照れながら言って始めたのは「The Bear」という新曲だった。終演後にマットに聞いてみたら、9月ごろにリリース予定の7インチシングルに入る曲だそうだ(もう片面の曲は別の日に演奏したらしい)。

「今までアナログなんて出したこともないのに、シングル盤なんて珍しいね」と言うと、なんでも計画では二か月ごとぐらいに7インチを6枚ぐらい出そうとしているそうな。それが全部完了したら、全部の曲を1枚のCDにまとめるかも、なんてことも言ってたな。これはまた楽しみな企画。

前半ではほかにマットが「The Kids」とか「Loma Prieta」(カリフォルニアに住んでたときの地震の経験を書いた曲って言ってたかな)とか、ティムだと「Next To You」とか「Burgundy Red」とか、もうとにかくこの前半は僕が聴いてみたいなと思っていた曲がぴったりはまる。特に前半パートのラストだった「Burgundy Red」は、さすがの盛り上がりだった。マットのカホンもバシバシとすごい音だったよ。

前半が終わって途中休憩に入るときに、僕の横をすり抜けながらティムが「Get Some Lonesomeはセカンドセットでやるよ!」と、忘れてないぞアピール。たぶん隣にいたNさんがリクエストしたとおぼしき「Festival Songもね」とも言ってた。ありがとうね、覚えててくれて。

「今回のは比較的長いツアーだったから、もう今日で終わりだと思うとちょっと感傷的になるよ」とティム。「だから僕らは二人とも黒い服を着ているんだ。特に僕のはウディ・ガスリーだし」と笑わせる。マットのTシャツのデザインはよく見えなかったけど、近くでよく見たらスーパートランプのコンサートチケット柄だ。休憩時間中に「ファンなの? Breakfast In America演ってよ」と冗談で言うと、冗談じゃないといった表情で即座に「ノー」。

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マットの後半1曲目は、僕が前日にリクエストしていた「Lost」だった。ライヴで聴くのはこれが初めて。地味だけどいい曲だよね、これ。マットの2曲目「Only For You」に続いて、「淋しい曲パートか、じゃあこれだ」と言って、ティムは「Get Some Lonesome」を。二年越しでようやく聴けたよ。これも名曲。

途中で1曲、マットの曲で全然わからなかったのがあって、終演後に本人に訊くのを忘れてたけど、FBでメッセージを送って教えてもらったら、ケヴィン・ウェルチという人の「Working」という曲だった。相変わらずマイナーな曲カバーするね。いい曲だったかどうかは、忘れた(笑

僕が座っていたところからは反対側で、冒頭に書いたYさんが自分のタブレットに曲名を出してティムにちらちらと見せている。ちゃんと声に出してリクエストすればいいのに(笑) それを見てティムが、「次はFestival Songを演ろうと思ってたけど、そっちにしよう」と「Maid Of The Mist」を。

終盤、マットが「たしかあと1曲、リクエストされたのがあったはずだ」と言うから、もうこっちはそれだけで前回の悪夢(笑)が蘇ってきてドキドキする。「僕の曲はほとんど実話に基づいてるんだけど、この曲だけは全部のディテールに至るまでほんとのことだ」と説明をしながら弾きはじめたそれはもちろん「For Angela」。頼むから歌詞忘れないでよ。

途中やっぱり一か所歌詞が頭から飛んでしまったところがあって(だって、歌ってる途中で必ず余計なセリフ入れたりするんだから)一旦途中まで戻って歌い直し、なんてことを数回やって、ようやく軌道に戻った。そんな感じでヨロヨロと歌い進めたものだから、あの一番盛り上がる「天使が僕の目の前にあらわれて」という歌詞もなんかさらっと流されてしまって、ちょっとだけ残念。

そして、本編ラストはお待ちかねの「Festival Song」。そういえば前回名古屋でティムを観たときのラスト2曲が「Burgundy Red」と「Festival Song」だったな。この日はその名曲2曲が、それぞれ前半と後半のラストだった。曲の途中で、観客に腕を上げて左右に振るように指示するティム。照れ笑いしながら腕を振る観客。そしたら、「あの窓の外で腕組みしてる奴が腕を振るまでは止めないぞ」と、表から観ていた松本さんをティムがからかう。しょうがなく小さく腕を振る松本さん。

「楽屋に引っ込んだと思ってくれ」と、後ろを向いて隠れるフリをする二人。そしてすぐに、バンジョレレを簡単にチューニングして(一弦ずつ弾きながら「だいたい合ってる」「これもだいたい合ってる」と、ギターに比べると実に適当な合わせかただったな)、あの印象的なイントロのフレーズを聴けば一発でわかる、「Train」。最後は声が続く限り引っ張って終了。

さあ、ティムはこの最後にどれだけ盛り上がる曲を演ってくれるのか、と思ってたら、「みんなが無事に帰れますように」みたいなことを言って、しめやかに「Don't Walk Alone」でエンディング。そのあと、もうこれで最後だからと、元々はティムの持ち歌だったけど、今回のツアー初日で二人で演ってみたらやけにしっくりきたので、毎晩少しずつ違うバージョンで演奏しているというフリーディ・ジョンソンの「Tucumcari」をこの日もオーラスに持ってきて、ようやく終了。

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マットの『Animal Boy』のCDとティムの『Special 20』のLPにそれぞれサインをもらう。ティムは必ずあのギターのイラストを描いてくれるね。

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そして、このアルバムを持っている人は多かれ少なかれ疑問に思っていたんじゃないかな。イーストン・スタガー・フィリップスの『Resolution Road』。ティムとリロイ・スタガーとイヴァン・フィリップスの声って、なんか区別付きづらいんだよね。僕はこのアルバムを入手したあと、イヴァンのアルバムを2枚ほど買ったほど彼のことも気に入ったんだけど、それでもこのアルバムで、誰がどの曲でリードヴォーカルを取っているのかいまいちよくわかっていなかった。そこで、本人に訊いてみたというわけ。そしたら、それぞれの曲名の横に歌い手の名前を書いてくれて、頼んでもいないのに下にサインまでしてくれた(ギターの絵はなし)。

前日で懲りているから、名残惜しいけど22時22分発の電車に乗るために、みんなと一緒にゴーティを後にした。マットはなんだかまたすぐに来るよみたいなこと言ってたね。そのときは秋に出るシングル盤をちゃんと持ってきてね。まあ、ほっといてもゴーティには入荷するんだろうけど。
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2015年06月21日

Matt The Electrician & Tim Easton live in Kamakura (Part 1)

店主の松本さんが自分の好きなアーティストを同時期に呼んで一緒に演奏させるというのが、カフェゴーティ企画の醍醐味の一つ。これまでに僕が観たのだと、2011年にボジア目当てに行ったはずがそのあと彼以上にはまってしまうことになるマット・ジ・エレクトリシャンを知った横浜での四人組ライヴ、その翌年に下北沢で観たゲイリー・ジュールズ&ジム・ビアンコ(特に、松本さんの見立て通り僕はそのライヴでゲイリーの大ファンになってしまったのに、その後ぜんぜん音沙汰がないのがさびしい)、さらにその翌年の鎌倉でのブルース・ヒューズ&ニール・カサールと、それぞれ芸達者なアーティストが一回だけリハーサルしましたみたいなお互いほとんど初聴き同然の状態で相方の曲に伴奏をつけ、ギターソロを入れ、ハーモニーを聴かせてくれるという離れ業を見せてくれるもんだから、これはもう病みつきになる。そんな異種格闘技戦(?)の最新回が、先述のとおり僕の大のお気に入りアーティストの一人であるマット・ジ・エレクトリシャンと、二年前にスティーヴ・フォーバートのオープニングアクトとして観た(そのときは残念ながら二人の共演はなかった)ティム・イーストンの共演。

オープニングアクトに、二日前に松本さんから電話で依頼があったというホテル・コングレス名義のソロ・アーティスト。あれ?この人たしかここで(お客さんとして)何度か会ったことがある人だね。ちょっと枯れた渋い声で、サザンロック風の自作曲2曲と、オールマン・ブラザーズ・バンドのカバー1曲、汗をだらだら流しながら演奏。うん、悪くないね。

マットが僕の横をすり抜けてステージに向かうとき、僕の肩をぽんと叩いて「元気?」と言ってくれる。ああ、覚えていてくれたんだ。うれしいね。そのまま彼はステージ右側のカホンに腰掛け、あのいつもの小柄なギターのチューニングを始める。そしてティムは左側に立って、前回にも見た(おそらく彼のトレードマークの)あちこち塗装のはげた黒いギブソンを肩にかける。ピアノの上にはハーモニカがずらりと並ぶ。

カホンに腰掛けたままのマットが演奏を始める。イントロの最初の一音でわかるよ、名曲「It's A Beacon It's A Bell」。アク―スティックな作りのアルバムのタイトル曲、これまで何度か彼の弾き語りで聴いたけど、この日のこれはティムが寄り添うような素敵なギターのフレーズと沁みるようなハーモニカを入れてくる。もうちょっとこれだけで鳥肌レベルだよ。

続いてティムのブルージーな曲。サビで「Elmore James」という名前が出てくるからきっとそれがタイトルだろうと思っていたら、会場で売っていた彼の日本公演向け限定盤にその名の曲が入っていた。ティムと娘さんが一枚一枚手作りしたというジャケット、僕は開演前に一番変わった色合いのを選んで買った(他に残っていたのはだいたい黒いジャケだった)。

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ちなみにこのアルバム、どういう経緯の曲が入ってるのかわからないけど、かなりの名曲揃い。普通にティムの新譜として出しても遜色ないと思う。2年前の名古屋公演で聴いて、その後のアルバム『Not Cool』には収録されなかった「On My Way」も入ってるし。完売しなかった数枚がまだゴーティに残ってるって松本さんがツイートしてたから、これ読んでちょっとでも気になる人は急いで。

「あまり暗くなってしまう前に幽霊の曲を演ろう」と、つづいてのマットの曲は「Ghost Story」。さらに続けてティムは『Not Cool』のオープニング「Don't Lie」。そういう感じで、二人が交代で自分の曲(またはカバー)を歌い、相方が伴奏をつける。マットの曲ではティムがギターとハーモニカ。ティムの曲ではマットがカホン、ギター、バンジョレレのどれか。そして、二人ともが相手の曲のコーラスパートで綺麗にハモる。

これがほとんど二週間近くにわたるツアーの最終公演地だから、それまでにリハーサルしたり本番で一緒に演奏した曲もあるんだろうけど、どうも見ているといくつかの曲の最初のヴァースは真剣な目で相手の演奏と歌詞を聴き、コーラスのあたりからさりげなく伴奏をつけていくというパターンが多かったから、もしかしたら本当にあの場で初めて聴いて、それに合わせて演奏したりコーラスをつけたりしてたのかも。そういうのって、冒頭に書いたいくつかの共演で見てきたけど、ものすごい量の経験と技量が要るんだと思う。

過去何度かのマットのライヴで、好きな曲をリクエストしてはそれなりに大変な目にもあったりしてるので(前回来日時の「For Angela」とか「Permanent Record」とか、快くリクエストを受けてくれるのはいいんだけど、歌ってる途中で歌詞がスコーンと抜けてしまうみたいで、そのたびに雨に濡れた子犬のような目でこっちを見られる)、この僕にとっての今回来日初日はリクエストなしでいこうと決めていた。

そしたら、これまでの3回の来日(僕が観たのは5公演)では聴いたことのないような珍しい選曲が聴けた。「Left Coast」とか「Rotary」とか「Little Hands」とか。あんなに歌詞を忘れてしまう人だからもうてっきりお決まりの曲しか演奏しないのかと思ってたけど、懐深いねえ。

珍しくない方の選曲「Milo」では、いつもの通りポール・サイモン・メドレーを挟む。でもあれって、今回のツアーの他の公演地でも演ったのかな。間奏から「You Can Call Me Al」に移るところで、ティムがあれ?って感じで一旦演奏を止め、ギターを縦に持って(ティムのあのポーズかっこいい)しばらく考えてからまた演奏に入ったところを見ると、ほんとに即興だったのかも。いつものゴーティよりずっと外国人比率の多かった客席もこのメドレーで大受け。最後はみなさんでコーラスしてたね。

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マットのこの日のいでたちは、白いTシャツの上にスリーヴレスの緑のシャツの重ね着。今回のツアーでジョギングしようと思って持ってきたらしいんだけど、結局この日まで周りで誰も走ってないから走れず、この日のステージで着ようと思ったけど、いつも奥さんに袖なしのシャツでステージに上がるなんて馬鹿みたいと言われてるから下に白いTシャツを着てみたら、どうもさらにバカみたいに見えるね」と笑わせる。

今回の長いツアーのほとんどをハシゴしたというつわものファンのTさんがマットにリクエストしたのは「Left Coast」だったかな。案の定途中でマットが何度か歌詞を忘れ、そのたびに焦った顔つきで宙を見上げたりTさんの方を見たり(Tさん、その気持ちよくわかります・笑)、ティムも「今日はこれまでで一番の出来だったのにね、ほんのさっきまでは」とか言ってプレッシャーかけるし、僕にとっても二年前のあの歌詞を思い出せないのは人ごとではない気持ちがありありと蘇ってきた。

マットで始めて交互に歌うので、前半最後はティムの番。こちらも常連Tさんのリクエストだという「Porcupine」で締め。かっこいい曲だね。そのタイトルトラックのアルバム、まだ持ってないから買おう。でも、ティムもちょっと途中で歌詞がやばかったね。「後半は僕らが知ってる曲ばかりを演るよ」とティム。

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休憩に向かうときに、僕らがいたあたりに「何かほかにリクエストしたい曲はある?」とティムが訊くから、「Get Some Lonesome演ってよ」とリクエストした。「二年前にもリクエストしたんだけど聴けなかった」と言ったら「ああそれはすまなかった。でも今日は覚えてないから、明日も来る?明日演ってあげるよ。リクエストしてくれてありがとう」と言ってくれた。

休憩中には、ゴーティのマスコット、なる君(もう4年生になったとか)と、なぜかこの日たくさんいた子供達のうちの一人の小学生ぐらいの女の子がやたらとなついてきてくれて、その子たちと遊んでいるうちにあっという間に時間が過ぎてしまった。

後半もマットから。「このツアーではできるだけ同じ曲を演奏しないようにしてるんだ。複数回観に来てくれているお客さんもいるからね。でもこれはもう何度か演奏している。僕が日本について書いた唯一、いや二曲のうちの一曲」との説明でもうわかる人にはわかる「Osaka In The Rain」(ちなみにもう一曲は『Cafe Mundi』のライヴ盤に入ってる「Tokyo」かな)。

その曲を書いたときのことの説明が続く。最初の来日で松本さんではない別のプロモーターに大阪に連れて行ってもらったはいいが、「ちょっとここで待ってて」と知らない場所に携帯も通じないのに一人で放っておかれたこと、その逸話をトム・フロインドに話したら「それについての曲を書けばいい。もしお前が書かないなら俺が書く」と言われて書いたら後にトムは「Kamakura In The Rain」という曲を書いたこと、最初のヴァースは日本にいた間に書いたけど残りはオースティンに帰ってから仕上げたこと、「当時はマイスペースというものがあったんだよ」と笑わせたり、などなど。

観客の一人がテキサス人のソングライターだというのは前半でも言ってたけど、ウィリアム・ウォレスというその若いお客さんを本当にステージに引っ張り出し、彼の曲に合わせて三人で演奏したのにはちょっと驚いた。マットが彼の曲のいくつかを知っていて、それを演る?と訊くと、ウィリアムは「いえ、それじゃなくて火山の曲を」と言って歌いだしたのにも、ティムがギター、マットがバンジョレレでしっかり合わせる。さすがにマットやティムの曲に比べると見劣りはするものの、バックの二人のおかげでなかなか聴かせる演奏だったよ。ちょっと聴き入ってしまった。彼もさぞかし嬉しかったことだろう。

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ティムがピアノソロを入れたのはマットの「Little Hands」だったかな。実はこの日、ゴーティに到着したときに中でティムがピアノの練習をしていたのが見えて、ティムはピアノも弾くんだろうと思っていたら、ほとんどそんな機会はなく、ようやくこの曲で軽快なソロを弾いてくれた。

「一昔前は、オンラインで日記を公開するなんて考えられなかったんだ。これはそんな時代に書いた曲」と「Diaryland」をマットのパートの最後に。ハローキティスティッカーの歌詞のあとのギターソロのときに「ティム“ハローキティ”イーストン!」と笑わせるマット。

本編ラストのティムの曲はタイトルがわからなかった(元々、廃盤の1枚を除いて全アルバムを集め終わったマットと違ってうちのCDラックにはティムのアルバムはまだ結構な抜けがあるから、知らない曲も多かったんだけど)。そのままステージを降りずに(立ち見も含めたぎゅうぎゅう詰めの客席を乗り越えて行くのは結構な手間だったからね)アンコールに入る。「I've Just Seen A Face」だ。この二人でビートルズの、しかもこんなスタンダードな曲を演るとは思ってなかったのでこれはちょっと新鮮な驚き。そしてラストは、今回のツアーの初日を終えたときに松本さんがユーチューブにアップしていたフリーディ・ジョンストンのカバー「Tucumcari」。コーラスが超かっこよい。

終演後、表で煙草を吸いながらウィリアムや他の何名かのお客さんと談笑していたマットのところに行く。マットがあらためて「ひさしぶり。元気? まだ今でもフィリピンに住んでるの?」と訊いてきてくれる。CDにサインをもらうときに僕の名前の綴りは覚えていなかったけど、そんなことを覚えていてくれたなんて、ちょっと感激。「もう僕の持ってるマットのCDのほとんどにはサインをもらったから、今日は残る数枚のうちからこれを持ってきたよ」と、『Accidental Thief』のジャケにサインをもらう。

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次はティムのところへ。『Not Cool』のジャケにサインをもらいながら、さっきの「Get Some Lonesome」のリクエストの話を。「ほかにも何かリクエストはある?」と訊いてくれるから、「このアルバムのタイトルソング好きなんだけど」と言うと「そういえばその曲は今までライヴで演奏したことがないんだ。それこそNot Coolだよね」とか言ってるし。そうして僕の『Not Cool』のLPジャケには、おなじみのギターのイラストが。

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僕がサインをもらったりティムたちと話してるときに、東京へ戻る常連ファンの人たちが一斉に出て行ったと思ったら、22時22分発の電車に乗るためだったんだね。ろくに電車の時刻も調べてなかった僕はその直後にのこのこと鎌倉駅に向かったら、10分以上も次の電車をぼーっと待つ羽目になってしまった。こんなことなら、あと10分マットやティムと話してればよかった。22時台から終電までの鎌倉発の電車の時刻はちゃんと覚えておこう。
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2015年05月31日

Wallis Bird live in Tokyo

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Wallis Bird 『Bird Songs -The Best of Wallis Bird-』

虫の知らせみたいなものってやっぱりあるみたい。来日することはずっと前から知っていたんだけど、ちょっとここのところライヴ多すぎるし(この二か月、平均すると週一以上のペースになってる)、気になってるけどまあ行かなくてもいいやと思っていたこのライヴ、開催二日前になってやっぱり急に思い立ってチケットと来日記念のベスト盤(こんなのが日本で出ることにびっくり)を買って行くことにした。それが、今から書くけど、こんなの見逃してたらもう絶対に後悔してたはずという凄いライヴだったから、知らせてくれた虫どうもありがとうってな感じで。

そんなぎりぎりに買ったチケットだから、一応開場時刻にスターパインズに着いたものの、列の最後尾に並ぶことになった。まあ、その時点では別に観られれば席はどこだっていいやと思っていたから、気持ち的にはそんなに焦ることもなく黙ってゆっくりと場内へ。

前回ここで観たグレンのライヴのときに味をしめた一ノ蔵の枡を手に、客席後ろの方のちょっと小高くなってるところの最前列に席を見つけて座った。テーブルもあるし、前の人の頭は邪魔にならないし、中途半端に空いてた真ん中あたりの席に座るよりはよっぽどいい席かも。ステージからは10メートルぐらいかな。うん、悪い席じゃない。あんなとんでもなく大きな整理番号にしては。

当日券の入場が開演10分前の17時50分と張り紙がしてあったのを見たんだけど、ちょうどその時間ぐらいにまたどんどん人が入ってくる。きっと、前日にあった新宿タワレコでのインストアを観て、やっぱり急遽来ることにした人も多かったんだろうね。そういう人たちがそこかしこに残ってた空席をひとつひとつ占めて、結局開演の頃にはもう席は全部埋まってたんじゃないかな。いや、すごい人気なんだね。おどろいた。

ファーストアルバム『Spoon』はしばらく前に手に入れて愛聴してたからそこからの曲はある程度わかるものの、あとは二日前に買ってこの日までに繰り返し聴いたベスト盤の曲がわかるかどうかというぐらいのにわかファンだけど、ステージに登場したウォリスが「これまでの4枚のアルバム、私の人生が詰まったベスト盤から今日は演奏するよ」と言ってくれたので、知ってる曲が多いだろうとちょっとほっとする。

ビデオや写真で見ていたとおりの小柄な彼女。黒いワンピース(だったかな?)とあちこち好き勝手な方向に伸びている真っ白な髪の毛のコントラストがいいね。ステージに置いてあった2本のギターのうち、グレー地に白と黒とくすんだ水色で幾何学模様のようなペイントのしてある方のフォークギターを手に取って歌い始めた。最初の曲は「Daze」。

すごいよ。この距離で聴いていてもマイクいらんだろうと思うほどの声量。その色合いもあいまって、ガシガシとものすごいストロークで弾いてるギターがなんだか楽器というよりは武器みたいに見えてくる。子供の頃に事故で左手の指を全部切り落としてしまったのをつなぎ直したってエピソードはベスト盤のライナーに書いてあったけど、そんなこと言われないと全然わからないよ(ちなみに、そのライナーには親指は戻らなかったって書いてあるけど、なかったのは小指だったと思う。親指ないとピック持てないよね)。

僕の好きな「The Circle」は確か3曲目に演ったはず。4曲目と5曲目をメドレーで歌ったところまで、すべてアップテンポの曲。どの曲もガンガン動き回ったりジャンプしたりしながら演奏して、うまく活用すればこのまま発電でもできるんじゃないかと思えるほどものすごいエネルギー。「次はちょっとスローなのを演ろうね」と言ったのが冗談に聞こえてクスクス笑いが起こるほどヘトヘトに見えたよ。

そのとき「何か歌ってほしい曲ある?」って訊くから、スローな曲ならリクエストしたいなと思ってた曲があったんだけど、曲名が出てこない。「あのほら、ファーストからの曲で、ベスト盤の最後から4曲目」とか言うわけにもいかず、他にも誰も何もリクエストしないので、ウォリスが「じゃあ、これはファーストアルバムから。2007年に出したCDだからもうずっと昔の曲」と言って、「You Are Mine」を歌いはじめた。あ、それも好きな曲だからいいや。

曲間のチューニングには結構時間かかってたね。「私は強く弾きすぎるから」と、ときにはもうイントロ弾き始めてるのに、弾きながらペグをいじったりもしてた。どの曲のときだったかな、床に置いてある(僕のところからは見えないけど)サウンドボードか何かをいじって音を出しながら、ギターを弾きながらチューニングをし、いつの間にかカポも付けて、さらにそのままビールを一口飲んでから歌い始めたなんてのもあったな。おみごと。

そう、ビールといえば、この人かなりの量のビール飲んでたよ。たぶんステージ上で大ジョッキを2杯は飲んでたと思うし、終演後のサイン会でもまたテーブルにジョッキ二つ用意して飲んでたからね。ライヴの最初の方で、乾杯って言いながら「日本に来てもう日本酒もキリンもその他も全部飲んだ」とか言ってたよ。あんなにおいしそうに飲む人は見ていて気持ちいいね。

「先週の金曜にアイルランドで大きな出来事があって」というのは同性婚が合法化されたことだね。それについての新曲と言って、アカペラで歌い始めた。タイトルを言わなかったので後でサインをもらうときに聞いたら、たしか「Life」って言ってたかな。てっきりサビで何度も出てきた「We Can Try」かと思ってた。いい曲だったし、なにより無伴奏であれだけ聴かせるのは素晴らしいと思った。この人、ほんとにすごい。

別の曲では、ウォリスが床のなにかをいじってシンセぽい音を出し、ギターを弾きはじめると、どこか上の方からバイオリンの音が聴こえてきて、僕の座ってる席の斜め後ろ上あたりからクラリネットの音も聴こえてきた。なんか不思議な聴こえ方するなあと思っていたら、最後尾のPA卓のところにいた人がクラリネットを吹きながら客席をゆっくり前の方に歩いていき、中央あたりで止まってそこで演奏しはじめた。僕の席からは見えなかったけど、二階席(いつもサイン会のある場所の奥あたりかな)にはバイオリニストが実際いたみたいだね。クラリネットの人はエイデンって名前で、ウォリスと一緒に来日したみたい。

本編ラストは、ベスト盤の中でも僕がいちばん気に入った「To My Bones」。ラストにふさわしい盛り上がりだった。この曲はセカンドアルバムからシングルカットされたのかな。ネットにかわいいPVがあるね。気に入ったのでここに載せてしまおう。


ほとんど間を開けずにアンコールで再登場。また「何かリクエストある?」と訊くと、今度は前の方にいた女性が二人リクエストして、それを両方とも演奏していた。最初のはベスト盤にも入ってる「LaLaLand」だったけど、2曲目は知らない曲だったな。これはちゃんと全アルバム集めないといけないかな。全アルバムと言ってもあと3枚も集めれば済むから、僕基準ではたぶん再来月ぐらいには揃ってるとは予想するけど。

本編を終えるときに「弦を一本も切らなかったのは珍しいよ。いつもは何本も切ってしまうから」と言っていた言葉どおり、その2曲を終えるまでに2本の弦が切れてしまい、曲の最後には残りの4弦も全部手で引きちぎってしまった。アンコール最後の曲を演奏するときにそっちのギターを使おうとして、そういえば弦がないんだった、とか。

日本がとても気に入ってくれたのはお世辞ではないと思うけど、「これは最初で、最後じゃないから。またきっとすぐに来るよ」とか「アイルランドに来たらうちに泊まってね」とか言ってたな。「最後の曲で、あなたたちをちゃんと起きたまま家に帰さないと」と笑わせて歌い始めたのは「In Dictum」。後半ではギターのプラグをぶち抜き、オフマイクで歌い始めた。マイクなくても全然遜色ないね。すごいすごい。

全部で1時間半をちょっと切るぐらいだったかな。もうとにかくエネルギーの塊を延々とぶつけられてたようで、座って観ていたはずなのにこちらもかなり消耗したよ。さて、きっとサイン会があるだろうから、上に行って並ぼう。いつもと違って後ろの方に座ってるから、すぐに階段登って列に並んだ。かなり前の方だ。きっとあの明るくおしゃべりな彼女のことだから、後ろに並ぶとなかなか順番が回ってこないはず。案の定、係員が時間節約のためにサインはいいけど写真はお断りと言ってる。ちょっとそれは残念。

案の定、サインをもらわずに帰る人はほとんどいない。満員のスターパインズは多分200人ぐらいいたのかな。これは長丁場になりそうだぞ、と思っていたところでウォリス登場。あんな壮絶なステージの直後なのに元気そうだね。お客さんに一個ずつ持って帰ってもらおうと、テーブルに大きなチュッパチャプスのケースを置いてた。なんかこういうのもうれしいね。

僕の順番が回ってきたところで、ウォリスの方から「あれ?どこかで会ったっけ?」と言ってくる。「うーん、会ってないと思うよ」と言うと「そうか、じゃあきっと前世で会ったんだね」と返してくる。くーっ、惚れてまうやろー。「さっき“All For You”をリクエストしようとしたけど、タイトルが出てこなかったんだ。次に来てくれたときにまたリクエストするね」なんて話をしていたら、CDのジャケットにこんなことを書いてくれた。
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そんなことに感動しつつ最後に握手したら、両頬にあいさつのキスをしてくれた。もうなんかこちらはめろめろである。チュッパチャプスも何色を取ったんだか覚えていない。一緒に写真は撮れなかったけど、前の人がサインをもらっているところを写したので、それでもあげておこう。

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つい最近までは日本盤のCDも出ていない状態での初来日だから東京一回以上のブッキングを入れることもできなかったんだろうけど、蓋を開けてみるとこの盛況。そして、今回このライヴを観た人は次があれば確実に来るだろうから、本人がステージ上で何度も繰り返していたように、再来日を期待しよう。そのときはきっと複数回(もしかしたら地方も?)の公演が組まれるだろうし、僕にとってはチケットを発売と同時に押さえるべきアーティストがまた一人増えてしまったということだ。


いつもこの会場でライヴを観たときは、終演後に連れだって飲みに行く仲間がいるんだけど、この日はあいにく誰も知り合いがいなかったので、そのまま帰途についた。さっさと帰って何か食べようと。そしたら、山手線新宿を出たところであの小笠原地震が発生。僕は動いている電車の中だったので全然気づかなかったんだけど、次の代々木で運転見合わせ。小一時間ほどそのまま座っていたけど進展なさそうだったので、動き出した地下鉄を3本乗り継いで、なんとか家にたどり着くことができた。

空腹で山手線にずっと座っていたときにウォリスにもらった青リンゴ味のチュッパチャプスでお腹をなだめたこと、地下鉄の乗り継ぎ間隔がすべてゼロ分だったことと、結局山手線が動き出したのが僕がとっくに家についてウィスキーでほろ酔い加減になっていた夜中の11時半だったことを考えると、この日は勝ち負けで言うと勝ち。ウォリスのライヴの件を加えていいなら、圧勝の一日だった。あとは、ウォリスが地震を怖がって日本にはもう来たくないなんて思ってなければいいけど。


p.s. 本人のFBに写真がいくつか上がってたので勝手にコピーさせてもらおう。黒い服はワンピースじゃなかったね。まあなんであれ、かっこよかった。
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2015年05月30日

John Hiatt live in Tokyo (Part 2)

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結局この日のファーストセットは諦め、そのかわりというわけでもないけど、会場裏手の芝生でやってた世界のハイボールフェアみたいなので、刻々と色が変わっていく初夏の夕空とそれにつれて次第にライトアップされる東京タワーや六本木の街並みを眺めながら、いい風に吹かれて腹ごしらえをすることができた。ラフロイグってのが気に入ったから、今度買って家でも飲んでみよう。

前日より少しだけいい整理番号だったけど、結局前日と同じ二列目のテーブルに席を取った。以前ここでいろんなバンドセットを観たときに、最前列のテーブルは各楽器の音がスピーカーからでなくそれぞれバラバラに聞こえてきてバランスが悪いからそれ以来敬遠するようになっていたんだけど、アコギの弾き語りだとそんな問題はないんだろうなと前日思った。でもやっぱり、ほぼ真上を見上げるようなことになる最前列よりも、二列目中央ぐらいの方がやっぱり全体を見渡しやすいし(あとツバも飛んでこないし)総合点では上だな。

ネクタイを締めていなかった以外は前日とほぼ同じいでたちで登場。この回のオープニングは前日のラストだった「Drive South」だ。セトリは全ステージで変えてくるとは思っていたけど、まさか曲順入れ替えるだけじゃないよな。なんてふとした不安も、次の「The Open Road」のイントロを聴いた瞬間に杞憂だとわかった。これは楽しみだ。どこまで新しいのが聴けるかな。昨日のペースだとおそらく15曲前後演るうちの、半分でも入れ替わっていたらよしとしよう。

前日使わなかった少し大ぶりな方のギターを抱えて出てきて最初の曲を歌ったあとは、前日ずっと使っていたサウンドホールの下の部分がピッキングで削れてしまっている小さな方のギターに持ち替えてた。前日も「Drive South」のときだけあの大きな方のギターに持ち替えてたっけ。覚えてないや。素人耳にはどう音が違うのかまではよくわからなかったけど。

これまでの三回のステージを通しで観ている客も多いんだろう。ジョンが結構リクエストに応えてくれるというのがわかっているから、もうこの時点でリクエスト曲のコールが主に上階のあちこちから飛ぶ。「Across The Borderline」をリクエストされ、「それはできないけど、同じアルバムからのこの曲を」なんて言うから一体何かと思っていたら、前日にも演奏した「Like A Freight Train」だった。え、この曲ってライのアルバムでも演ってるの?と思って調べてみたけど同じタイトルの曲は見当たらず。あれどういう意味だったんだろう。しかしまさかこの曲を二回聴くことになるとは。

「Tennessee Plates」、「Crossing Muddy Waters」と続いて、好きな曲ばっかりでうれしいものの、やっぱりほとんどの曲は全ステージ通して同じなのかなと思っていたところに「Icy Blue Hearts」、そして咄嗟には何の曲かわからないぐらい歌メロがアレンジされていた「Cry Love」ときた。『Bring The Family』以前の曲は「Riding With The King」ぐらいしか残していないとしても、それ以降の曲の抽斗も無限といっていいぐらいある人だから、こういう名曲がぽんと出てくるサプライズがいいね。

ときどき歌詞を忘れたり間違えたりするのは、年齢を考えても持ち歌の豊富さを考えてもしょうがないし(むしろ、何十年も前に書いたあれだけたくさんの曲の歌詞を一言一句間違えずに歌えることの方が驚きだ)、ハモニカを取り換えてホルダーに装着するときに細かい文字見えねぇみたいなそぶり(ほんとにそうだったんだろうけど)みたいな自虐芸も板についていた。

リクエストを受けて「本当はこの曲はバンドが要るんだけど」といいながらも演奏してくれた「Slow Turning」もよかった。どうしてもこの僕にとっては一番のアルバムからの曲は脳内でサニーのスライドが聴こえてきてしまうので、嬉しいのと物足りないのと複雑な気持ちにはなってしまうんだけど。それにしても、この曲に限らずこの日は声が出ていたね。高音で叫ぶところとか、これでもかというぐらい息の続く限りエンディングを延ばすとか、とても62歳とは思えない。

リクエストについてはいろいろ書きたいこともあるんだけど、まああんまりグチっぽくなってもいけないので一言、リクエストするにもセンスが必要だよなぁとだけ書いておこう。僕もリクエストできるならあの曲とこの曲、というのは決めていたんだけど、あれだけ曲間で延々叫ばれていると、ちょっとそれに対抗してまでとは思わなかった。最後の方にはジョンも、あまり曲間あけてチューニングに時間取ってると次から次へとリクエストが入ってきてきりがないと思ったのか、もう前の曲から間髪入れず次の曲に移ってしまっていたようにも見えた。

前日の本編ラストだった「Drive South」は最初に演ってしまっていたから最後は何で締めるのかなと思っていたら、「Memphis In The Meantime」だった。やっぱり久々の日本だからか、『Bring The Family』と『Slow Turning』からの曲を骨組みのように最初と最後の要所に配置して、あとはそれより新しめの曲を少しずつという風に決めていたのかな。それとも、もう最近のライヴはこういう構成なんだろうか。地味渋の新譜からばかりだとちょっときついかなと開演前には思っていたものの、あの優れた最新盤からここまで少ない(この日は「Long Time Comin'」のみ)というのもちょっと逆に現役感なさそうに見えてしまう。

短いアンコールの拍手に迎えられて再登場し、「Have A Little Faith In Me」を情感たっぷりに弾き語って終えるところも、ステージを降りるときにサインと握手を求める客にもみくちゃにされるところも前日と同じ。サインはできたらもらいたいなとは思ってCDとペンは持参していたけど、これもやっぱりあれだけの人だかりを見てしまうとあそこに割り込んでまでとは思えなくて引いてしまった。正式にサイン会をやらなかったのは本人が嫌がったのかビルボードの意向かどっちなんだろうね。

曲数としては前日よりも2曲減(でも時間的にはほとんど同じぐらいだったと思うから、どれかの曲が長かったんだろう)、前日には演奏しなかったのがセトリ中ちょうど半分の7曲だから、開演前の予想がぴったり当たった。今日であれからちょうど一週間、ネットにちらほら上がっている、僕が行かなかった日(東京両日のファーストセットと大阪)のライヴレヴューやセトリを見ると、基本は変わらないものの、聴いてみたかった曲のタイトルがいくつか。大阪も含めて全ステージ制覇なんてはなから無理だったけど、こうして知ってしまうとやっぱり行きたかったなと思ってしまう。

まあ、あれだけ集客できて儲かるのがわかっただろうから(ビルボードの細かく設定された入場料のうちいくらがギャラになるのか知らないけど、ソロのアコギ弾き語りセットなのにこの会場のほとんど最高設定額だったから、本人への実入りも相当なものだったはず)、また来てくれるだろう。今度は27年も空けずに。


Setlist 23 May 2015 @ Billboard Live Tokyo [2nd Show]

1. Drive South
2. The Open Road
3. Like A Freight Train
4. Tennessee Plates
5. Crossing Muddy Waters
6. Icy Blue Heart
7. Cry Love
8. Slow Turning
9. Long Time Comin'
10. Thing Called Love
11. Lipstick Sunset
12. Riding With The King
13. Memphis In The Meantime

Encore
1. Have A Little Faith In Me
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2015年05月24日

John Hiatt live in Tokyo (Part 1)

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「ジョン・ハイアット27年ぶりの来日」。その文言をビルボードからのメルマガで見たときは、それはもう身体が固まってしまったかのようだった。僕が彼の最初の来日公演を観たのが88年の確か2月か3月? 保管してあるはずのチケットがちょっと見当たらないので正確な日時は覚えてないけど、85年の『Warming Up To The Ice Age』あたりから彼のアルバムを聴きはじめていた僕にとってはその当時ですら既に待ちに待った来日だったこと、何の予備知識もなしに観たサニー・ランドレスがとんでもなかったこと、ライヴが始まったときに自分のより五列ほど前の空いていた席にこっそり移動したこと、そしてその待ち望んだライヴ自体が期待通りだったことなんかがそれこそ走馬灯のように目の前によみがえってきた。

なんて書いておきながらせこいこと言うけど、さすがに9400円のセットを四回全部観るのはちょっときついのと、初日のファーストセットはいずれにせよ間に合わなくて無理なので、とりあえずは両日セカンドセットを押さえた。悪い番号ではない。初日を観てどうしても我慢できなければ二日目のファーストも検討しよう。そして、ヒュー・コーンウェルのライヴが終わった瞬間から、編集盤やブートも含めて40枚近くある彼のアルバムを手当たり次第引っ張り出して予習(復習?)を始めた。今世紀に入ってからのアルバムはちょっと聴き込みが甘かったからね。

セカンドセットといえど、平日の夜はなかなか時間の調整が難しい。会社の会食を少し早めに切り上げ、汗だくになりながら受付時刻前にビルボードに到着。それなりに気合いを入れて取った整理番号なので、かなりの好ポジションから観ることができた。いつもゴーティで顔を合わせる方も偶然同席で、少し豪華なゴーティにいるみたいな錯覚。

開演時刻ぴったりにジョン登場。「コンバンハ」と日本語で挨拶し、間髪入れず「Master Of Disaster」を弾きはじめる。これはなんというか、嬉しいサプライズ。僕としてはリクエストしてまで聴きたいような曲ではないけど、できれば聴きたかった曲のひとつ。

ジョンのいでたちは、褪せた色のジャケットにニットタイ、シャツの裾をジーンズから出して、頭にはストローハットという、いかにも最近のジョン・ハイアットらしいスタイル。顔には年相応のしわがびっしりと刻まれている。曲間でハーモニカホルダーを装着したり外したりするときに帽子を脱ぐと、昔ながらのオールバックはかなり白く薄くなってしまっているね。

ときおり短い曲紹介を挟みながら、次々にいろんな時代の曲を繰り出してくる。我ながらびっくりしたのは、オリジナルアルバムとは全然違うアコギ弾き語りなのに、イントロを弾きはじめた瞬間に、ほとんどの曲のタイトルがわかってしまったこと。オープニングの「Master Of Disaster」をはじめ、こんなところから持ってくるかと思うようなちょっとマニアックな曲も多かったのに。アコギのアレンジを何度も聴いて覚えてしまってるグレンのライヴとは違って、今回初めて聴くようなバージョンも多かったのに。さすが伊達にこの人のことを30年聴いてきてないね。

「ロードソングを演ろう」と前置きして弾きはじめたのが「Tennessee Plates」。待ってました! 「Japanese model or make」の歌詞のところでは、こんなこと言っちゃっていいのかな風に目をキョロキョロさせながら歌ってたのがおかしかった。古いビデオなんかを観ると、結構演奏中にお茶目な寸劇風のアクションしたりしてる人だから、この日ももっと何かあるかと思ってたけど、さすがにひとりの弾き語りだとたまに変顔したりするのが精一杯だったね。

床に置いてあるセトリを観ながら次の曲を用意していると、上の方から「Living A Little, Laughing A Little」のリクエストが飛んできた。「それは古すぎてできないよ。もう脳がチーズみたいになってるんだ」とか言いながら他にリクエストを募ってみると、あちこちから結構マニアックなリクエストの声があがる。どの曲も古すぎるのか練習してないのか次々に却下されたあと、結局「Terms Of My Surrender」に落ち着いた。「それはついこないだ書いたばかりだ」って。まあ他人のリクエストに文句つけるわけじゃないけど、最新アルバムのタイトル曲なんて、べつにリクエストしなくても演ったよねきっと。

二本置いてあったギターのうち、少し小ぶりな方だけを使ってたな。もう一本はスペアだったのかな。例の曲でキーボードかピアノを弾くかと思ってたけど、ステージ上には楽器はそれだけ。あとは曲によってハーモニカホルダーをつけて、いくつかのハーモニカを(結構間違えながら)付け替えて吹いてた。ちょっと感心したのは、何曲かで披露した口笛がすごくいい音だったこと。「Perfectly Good Guitar」でちょっと音外したかなとは思ったけど、それ以外はオリジナルならギターソロが入っているようなところで吹いたりして、印象的だった。

「これは2008年のアルバムから。ちょっとアレンジが違うけど」と言って始めたのが、僕としてはこの日唯一イントロを聴いて何の曲かわからなかった「Like A Freight Train」。うわーこんな渋い曲演るのか。と思ったけど、これって『The Open Road』の曲だよね。2010年ですよ先生(笑)

後半の「Crossing Muddy Waters」〜「Feels Like Rain」〜「Riding With The King」〜「Lipstick Sunset」と続いたあたりが一般的にはハイライトか。「Riding With The King」のリクエストを受けたときに「あの男の歌か」って言ってたね。BBキング亡くなったばかりだから、リクエストなんてしなくてもこの曲は演るとは思ってたけどね。

「Lipstick Sunset」なんて、誰もが間奏のところでライ・クーダーのあのスライドを空耳してしまうから、ジョンのアコギ弾き語りだときついかもと思っていたんだけど、これがまた驚いたことに実に聴かせるソロを披露してくれた。この人って、こんなにギター上手かったんだ。一応脳内ではライのギターがサポートしてはいるものの、この曲のこの演奏がこの日のベストだったかも。

本編ラスト前の「My Old Friend」も確か観客からのリクエストだったかな。「それはいいね」と言って即答。僕的には待ち望んでいたというほどではないけど、これも聴けるとは思ってなかったような曲なので嬉しい。そして、本編ラストが「Drive South」。やっぱり締めるところはこういう定番を持ってくるね。

アンコールは一曲だけ、こちらも定番中の定番「Have A Little Faith In Me」。ギターでこの曲を聴くのは初めてかも。もうあまりにもスタンダード化してしまったこの曲だけど、どんなバージョンでもよいものはよい。もう何曲か演ってくれるかなとは思ったけど、この時点で開演から1時間20分ぐらい経ってたのと、ステージを降りようとするジョンにファンが群がってサインを求め、ジョンも承諾するもんだから、その場でもう客電が点いてしまった。あーなんかもったいない。

いやよかった。声が全然衰えてない。いぶし銀なんて、この人のことを形容するのに使い古された文言を使いたくはないけど、あの声をまたこんな間近で聴くことのできる日がくるなんて思ってもいなかった。すぐに受付のところに行って、翌日のファーストセットの状況を訊いてみたけど、自由席はもうすでに90番台、上のカジュアルシートはほぼ満席で、(僕的には自由席よりもよっぽどランク下の)指定席はわずかに空いてはいたけどとんでもない値段。うーん、ちょっとこれは迷うなあ。もう既にいい番号を押さえている東京最終公演に期待するかな。


Setlist 22 May 2015 @ Billboard Live Tokyo [2nd Show]

1. Master Of Disaster
2. Real Fine Love
3. Marlene
4. Lift Up Every Stone
5. Tennessee Plates
6. Terms Of My Surrender
7. Perfectly Good Guitar
8. Through Your Hands
9. Like A Freight Train
10. Crossing Muddy Waters
11. Feels Like Rain
12. Riding With The King
13. Lipstick Sunset
14. My Old Friend
15. Drive South

Encore
1. Have A Little Faith In Me
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2015年05月09日

Hugh Cornwell live in Tokyo

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当初2月に予定されていた来日がこの5月のGWの最終日に延期されたのはこの呼び屋さん主催公演ではよくあることで、いつぞやのメタル・ボックス・イン・ダブみたいに延期された挙句に中止なんてことにならなかっただけよしとしよう。中央線ちょっと先の吉祥寺でライヴを観ることは多いし、手前の中野にはなんだかんだでよく行くけど、高円寺駅に降り立つのは実は初めて。ちょっと早めに来てうろついてみたら、古着屋ばっかりだねここは。ネットで調べてみたら名前を聞いたことのある中古レコ屋があったけど、残念ながらこの日は定休日。会場の場所を確認してから、開場時刻まで腹ごしらえ。よさそうな飲み屋は多いけど、さすがに午後3時にやってるところは限られるね。そういうところはもう昼間から飲んだくれてる人たちでほぼ満席だし。

それほどいい整理番号でもなかったので開場ぎりぎりに行ってみたら、ざっと百人ぐらいの客が会場前にたむろしている。いかにもパンク!みたいな奴はひとりもいないね。前日の吉祥寺公演で買ったTシャツを着ていた友人のRさんを見つけて声をかけてみたら、「さっきそこにヒューがいて、CDにサインもらったんですよ」とのこと。ああしまった、のんきに仕上げの砂肝漬けなんて食ってないでもう少し早く来ればよかった。せっかく白いジャケのCD持ってきてたのに。

入場はスムーズ。らせん状の階段をぐるんと降りると、意外にコンパクトな会場だった。客席部分だけで言ったらネストより小さいんじゃないかな。ステージ前はもう先に入ったファンでびっしりだったけど、運よく壁際にまだ比較的スペースがあったので、かなり端っこになってしまうけど、一応最前列と言ってもいいような場所を確保できた。Rさんはさすが、ヒューのマイクスタンドど真ん前に陣取ってるね。

今回に限らないんだけど、この規模の会場で開場から開演まで一時間というのはちょっと長すぎるよ。指定席だったらもう少しぎりぎりに入場するんだけど、場所取りが重要な立ち見ライヴだとろくにトイレにも行けないからあんまり飲み物ガブガブ飲んでもいられないし。今回は友達と一緒だったからちょっとはうろつく余裕あったけどね。でも物販に行ってみたら、お目当ての『Black And White』アレンジの白いTシャツは残念ながらもう売り切れ。注文できるとは言われたけど、送料込みで四千円近くというのにちょっと引いてしまう。

ステージ上、左側に黒とナチュラルのテレキャスター、中央にドラムキット、僕から遠い右奥にはよく見えないけど緑色っぽいプレジションベースが置いてある。なんの飾りもないすごくシンプルなステージ。何かで読んだヒューのインタビューで、キーボードを入れるとストラングラーズの劣化バージョンみたいになってしまうから、シンプルにスリーピースで、ギターとベースでキーボードのパートまでカバーするアレンジにしているというようなことを読んだ。いや、ベーシストはただでさえあの複雑なJJのベースラインをコピーするのに忙しいだろうし、ヒューが歌いながらあのキーボードのフレーズをギターで再現とか、いくらなんでも無理でしょ。まあ、どんなアレンジになってるのか楽しみにしておこう(ということで、あえてライヴ前の予習は最近のライヴ映像とかは見ないようにしていた)。

開演予定時刻を15分ぐらい過ぎたところでメンバーがステージに登場。ヒューはすっかり痩せて、頭も少し薄くなって、なんだかおじいさんっぽいね。事前にツイッター読んだからわかってたけど、ドラマーは現ポウジーズのダリウス。なんでそこがつながるのかと一瞬不思議だったけど、そういえば『Blood/Candy』にはヒューが参加してるんだった。あのときから時々一緒に演ってるのかな。ヒューは黒い方のギターを肩にかけ、『Totem & Taboo』からとストラングラーズの曲を交互に演奏すると宣言。うわあ、見かけがあんななのに声が完全に昔のまま。すごいや。これは期待できそう。

元の2月の公演前に今は亡きミュージックアンリミテッドで予習してたので、そのアルバムは持ってない僕にも多少は聞き覚えのあったタイトル曲「Totem & Taboo」でスタート。続いてのストラングラーズ曲一発目は何かなと期待していたら、僕的にはかなり(ポジティブな意味で)意表をつかれた「Skin Deep」。来日直後のリハーサルではストラングラーズを20曲ほども演奏し、両日違ったセトリで演る予定と読んでいたから、聴いてみたい10曲は何だろうと考えていたけど、その自己リストには確実に入れていた曲だ。後期の地味な曲だけど好きなんだよね。

奇数番のソロ曲はなんとなく聞き覚えがある程度にしかわからないけど、だからといって決して悪いわけじゃない。申し訳ないけどヒューのソロアルバムはほとんどフォローしてなくて、沢山出てるというぐらいにしか知らないんだけど、このライヴ観てやっぱりちゃんと揃えなければと思ってしまうほどには良い曲揃い。

なんて言っても、次の曲のイントロを聞いてしまうともうどうしてもこっちの頭のリミッターも振り切ってしまう。「Grip」だ! やった、これは聴きたかった。オリジナルよりも、それよりもっと馴染んだ『X-Cert』のライヴヴァージョンよりもややテンポを落とした演奏だったけど、そんなのまったく気にならない。それより、鳴ってないデイヴ・グリーンフィールドのあの印象的なキーボードの音が聴こえるよ。なんて空耳だ。ははは、確かにこれじゃキーボードプレイヤーは要らないわ。

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音響のいい会場だと思った。それぞれの楽器の音はすごくクリアに分離して聴こえるんだけど、ミックスのせいか、僕のいた位置のせいなのか、どうもヒューのボーカルが演奏に埋没してすごく聴こえづらかった。途中でヒューが日本語で「スイマセン」とミキサーに声をかけて、ギターとドラムの音をもっと上げてくれというような仕草をしてたから、もしかしたらステージ上では逆に楽器の音が聴こえづらかったのかも。その話をライヴ後にRさんにしたら、「でも前日はもっと音悪かったですよ」とのことだったから、あれでも改善していたのかもしれないけど。

「誰かオーストラリアに行ったことはあるか?」とヒュー。まばらな観客からの返事を聞いて、「お前らもっと外に出ないと」と言って始めた「Nuclear Device」。やった、これもツボ。そういえば、後の方で「Peaches」を演奏する前にも「お前ら今日ビーチに行ったか? もっと外に出ないと」って言ってたな。なんか日本人は家にこもってるってイメージがあるのかな。それともあれはなんかのギャグだったのか。

ギャグといえば、やたらと(Good Eveningの代わりに)「Good Afternoon」と言ってたし、「ティーパーティーにようこそ」とか言ってたのも、こんな早い時間にライヴやるなんて(ちなみに開場17時、開演18時)というような話をきっとしてたんだろうね。馬鹿にしてたのか、単なる冗談なのかよくつかめなかったけど。

自分の目の前でRさんが両腕を振り上げて大声で「い゛え゛ー!」というのが気に入ったのかこれも茶化しているのか、彼の方を見ながら何度もステージ上でヒューが同じように「イエー!」って言ってたのも印象的。「昔に戻ったみたいだ」みたいなことを言ってたから、あれは好意的だったんだろうけど。

ドラムキットの調子が悪かったようで、曲間で頻繁にヒューとダリウスがなにか相談してた。シンバルがちゃんと固定されてなかったのかな。ヒューが客席にむかって「誰かドラムキット持ってる人いる?」なんて訊いてたのが、この日の微妙なギャグの中では一番笑えたかも。

曲紹介もなしで12曲目に始めた「Always The Sun」が個人的には白眉だった(偶数曲だけ覚えていればいいから結構楽)。ある意味、一番聴きたかった曲かもしれない。後期ストラングラーズ(ヒューのいた90年まででの後期という意味。脱退後は僕にとってはもうストラングラーズじゃないから、一枚も聴いてない)ではいちばん好きな曲。サビのところで観客が自然発生的にコーラスしていたのを聞くと(当然僕も)、やっぱりこの曲みんな好きなのかな。

これも『Live X-Cert』を彷彿とさせた、抜群にかっこよかった「Straighten Out」で本編終了。予定調和的にすぐ出てくるアンコールが最近多いなか、もう出てこないんじゃないかとすら思ったぐらいの長時間(それでも5分弱ぐらい?)の拍手を経て、再登場。そこまでずっとソロ曲とストラングラーズ曲を交互に演奏していたルールを破り、ソロ1曲とストラングラーズ3曲を演奏。「Hanging Around」は嬉しかった。もうこの日は演ってほしいなと思っていた曲がズバズバ当たる。ここでも観客大合唱。最後はお約束の(?)「No More Heroes」で幕。客電が点いてもまだ拍手はしばらく続いてたけど、「これで終了」とのアナウンスが入って、残念ながらそこまで。

(鼻炎薬を服用しているせいか)あまりにも喉が渇いたので、終演後にあと500円追加して生ビールで友達と乾杯。Rさんと一緒にいた、初めて会う方とも乾杯。そのうちにサイン会やりますとのアナウンスがあったけど、まず物販で何か買ってからという話だったので、もうほしいTシャツも売り切れだったから諦めて外に飲みに出ることにした。「この列の長さだと、一人一人とゆっくり話すヒューのことだから、全員終わるまで一時間ぐらいかかるかも」という声も聞こえたし。

結局、もう一枚サインをもらってから途中で合流してくれたRさんも含めて、結構遅い時間まで落ち着いて飲んでしまった。連休最終日だというのに。なんやかんやと感想を言い合ってたけど、結論としては観に行ってよかったライヴだったということ。ライヴ中にヒューが言ってた「近い将来じゃないかもしれないけど、また来るから」というのはほんとに期待してもいいのかな。

後日、ネットで見つけたというセットリストをRさんが送ってきてくれた(オリジナルの持ち主の方、ごめんなさい。勝手に転載させてもらいます)。ソロ曲のタイトルがわからなかったのでうれしい。あと、初日分と見比べてみても、圧倒的に僕の行った日の方が、僕が聴きたいと思っていた曲ばかりだったのが一番うれしかった。

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Setlist 6 May 2015 @ Koenji High

1. Totem & Taboo
2. Skin Deep
3. Stuck In Daily Mail Land
4. (Get A) Grip (On Yourself)
5. I Want One Of Those
6. Nuclear Device
7. Rain On The River
8. Golden Brown
9. God Is A Woman
10. Peaches
11. Bad Vibrations
12. Always The Sun
13. A Street Called Carroll
14. Straighten Out

Encore
15. In The Dead Of Night
16. Hanging Around
17. Duchess
18. No More Heroes

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2015年04月29日

Sin Fang / Soley / Miaou live in Tokyo

3月末からのコンサートラッシュ。グレン4デイズに始まり、急きょ決まったピート・ドネリー、そしてこのシンファン&ソーレイ2デイズ。さすがにひと月に7回は体力的にも金銭的にもきついけど(あとこうして各ライヴの後に長文レポート書くのもきついけど・苦笑)、こんなメンツが次々に来るならやむをえない。そうして、4月25日の土曜日、金銭的に余裕のある大勢の音楽ファンが東京ドームに集結している中、僕はひとり渋谷に向かった。

物販が充実しているというインパートメントのsinさんのツイートを見て、ちょっと早めに出かけてみたものの、O-nestのエレベーター前には準備中なので一階で待ってなさいとの立札が。あれ?ネストってそんなシステムだっけ。よほど物販の準備が大変なのかな。

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やがて開場時刻になり、エレベーターで六階へ。たしかに、このフロアの右側ほぼ全部の壁を埋めるぐらいの、ICELANDia(ずっと昔にこのブログでちらっと触れたことのあるアイスランド専門サイト)、Miaouコーナー、インパートメントコーナー(というか、Sin Fang & Soleyコーナー)のテーブルがずらりと並ぶ。でも、最近たまに利用するライブポケットのシステムは整理番号がないから(せっかく発売時刻ちょうどに申し込んで印刷してある番号はかなり若かったのに)、テーブルの上のCDやらTシャツやらを眺めながら開場を待つ。

もうすでに押していたせいか、そんなに待つこともなくすぐに入場できたので、ドリンク引換券でジントニックをもらって場内へ。まだあんまり人もいないので、一番前まで行ってステージに腰を下ろさせてもらった。まだこれから長丁場だからね。目の前には、もうこれで三度目になるのですっかり見慣れた小さなぬいぐるみが沢山乗ったキーボードが。

開場から開演まで30分というのは楽でいいなと思っていたのに、7時になっても誰も出てこない。結局ベースのまゆみさんから順番にステージに出てきて楽器の調整を始め、演奏が始まったのは7時を15分ほど回った頃だったろうか。

あいかわらずインストゥルメンタルばかりでちっとも曲名を覚えられないけど、あいかわらずの盤石の演奏。三人のメンバーがそれぞれ同じ曲の中で忙しそうに複数の楽器を操り、複雑な長尺の曲を淡々と演奏する。キーボードがすぐ目の前だったので弾いてるところがよく見えたんだけど、ループを使えば簡単に済ませられるようなフレーズもずっと指で弾いてるんだね。そういう実直なところにまた好感が持てる。

三年前に初めて観たライヴで初めて見ていいなと思ったギブソンのリッパーベースに代わって、赤いフェンダーのムスタングになってる(終演後にその話を本人にしたら、好みが変わったからと言ってた。僕はあのリッパーの音も好きだったんだけどな。というか、音の違いなんてほんとはそんなに聴き分けられてないんだけど)

曲ごとにほんとに忙しそうに小さなキーボードをつないだり、アイパッドでなにやら調整したりしてる。途中で一曲、ギターのたつきさんがもうイントロの音を出し始めてるのに、まゆみさんのキーボードから全然音が出なくてやり直したのがあった。まあそんなささやかなミスを除けば、僕はこれまでに観た彼らの三回のライヴの中では一番よかったんじゃないかと思った。「これが最後の曲です」と言われて、なんだもう終わるのか、もっと聴きたいと咄嗟に反応してしまった前座を観たのなんていったいいつ以来のことだろう。


たくさん人が出てきて大急ぎでステージじゅうのいろんな楽器を片づけ、ドラムキットも組み替えて、ソーレイのセットにそなえる時間が結構かかった。三人しかメンバーがいなくても楽器の多いバンド(特に床置き系の楽器)は大変だね。ソーレイのステージはキーボード(これも沢山のケーブルがあちこちで複雑に絡み合ってる)とドラムス、それにMiaouのたつきさんのギターがそのまま置いてある。シンファン用のシーケンサーももう用意してあるから、途中で一緒に演ったりするのかな。

大きなメガネをかけてもっさりしたポニーテール風の髪を後ろで束ね、緑や橙のアースカラー系のカラフルな色合いのすとんとした形のワンピースといういでたちでソーレイが登場。アンチョコを見ながら「こんな晩は」と言い出すからなにかと思ったら、「こんばんは」だった。つづけて「わたしはソーレイです」とかひととおり頑張って日本語で挨拶し、「この紙は次にまた来るまで取っておこう」と言って後ろのアンプの上に置く。

ほとんどの曲をキーボード、たしか1−2曲はギターを弾きながら歌う。最初にファーストアルバム『We Sink』からの曲を何曲か続け、さっき物販で見かけた新譜『Ask The Deep』からの曲も途中で織り交ぜる。新譜の紹介のときに、これはまだリリースされてないけど、外で売ってるから、いや外と言っても本当の外でなくて建物の内側で、とかなんかアイスランド訛りの強い英語で一所懸命しゃべってるのがかわいい。「もし聞きたかったら持っていくという手もあるけど、お金を払わないと泥棒だから」みたいなことも言ってたかな。「酒を飲みすぎちゃった」とか、シリアスそうな曲の合間にたくさん軽口をたたいて、「私はしゃべりすぎだね」って。

しっとりとしたピアノ(キーボード)弾き語りの曲もあれば、その場で発した音を次々ループに重ねて複雑な伴奏にしたうえでビョークぽい雰囲気のちょっと不思議な歌を歌うこともある。曲によって、すごくいいと思うものもあれば、ちょっとこれは今の自分には合ってないなと思うものもあり、外で売ってたアルバムを買うかどうか迷う。

曲が終わるごとに「ありがとっ」てかわいい言い方で挨拶。「日本人はとても礼儀正しいね。アイスランド人は全然そんなことないよ」っていったい何回言っただろう。こうして見てる限りは、とても礼儀正しく見えるけどな。一所懸命日本語話そうとしてくれるし。突然「ノリノリだぜ」とか言ってまた笑わせるし。

新曲を紹介するときに「次の曲のタイトルはDeeper、あ、違った。もっと長いタイトルにしようとして別の名前をつけたんだった。でも、やっぱり自分にとってはこの曲はDeeperなので、今になって失敗したと思ってるの。アルバムを買ったら、タイトルを線で消して上からDeeperって書いておいて」と言ってた曲は結局なんていうタイトルだったんだろう。

途中で一曲「スペシャルゲストを呼ぶよ」と言ってシンファンを呼び出す。なんだか眠そうなシンファン。二人で冗談を言い合いながら、曲目をコールするときに二人の声がかぶってしまい、またクスクス笑う。仲いいね。この曲はシンファンはシーケンサーをいじりながら(どの音が彼が出してるのかあんまりよくわからなかったけど)、地味なコーラスを入れただけですぐにステージを降りてしまった。あらら、控えめなスペシャルゲストだこと。

あいかわらずこの会場は上だか下のフロアからの音が結構漏れてくる。とくにこういう静かな音楽のときは。ソーレイは「パーティやってるね。これ終わったら行こうか」とか言ってたかな。ああ見えてパーティ好きなのかな。ノリノリだしね(笑)

「ソロのライヴは久しぶり」って言ってたかな。「あ、でもソロじゃないな。ドラマーもいるし。彼はキャルタン(元シガーロスのあの人と同じ名前なんだけど、いわゆる“キャータン”ではなく、もっとかなり強くRの音を発音するというのがわかった)、ソロじゃなくでデュオだね」と。そのキャルタン、リムやハイハットやその上に乗せたタンバリンなんかをカツカツシャリシャリと叩くことが多く、決して手数が多かったりパワフルなドラマーというわけじゃないんだけど、こういう雰囲気の音楽によく合ってるね。さすがシーベアからずっと一緒に演ってるだけあって、息もぴったり。

ソーレイもMiaouと同じぐらいの30分ステージだったかな。もうちょっと長かったっけ。彼女がステージを降りたのが確か8時半ぐらいだったと思う。シンファン用の楽器はもうセットしてあるから、すぐに出てくるだろう。と思ってたけど、意外に待たされ、結局シンファンがステージに現れたのはもう9時近かったはず。それとも、待たされたと思ったのはその時点で既に二時間近く立ちっぱなしで腰にきていた僕の錯覚か。

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スタスタとステージを横切り、「ハロー」と言いながらシーケンサーのところに来て、なにやらつまみをいじって音を出し始める。長袖シャツの袖口のところから刺青が見える。もしや両腕びっしりと刺青なのかな。一曲目は今のところの最新作『Flowers』から「Look At The Light」。なんだけど、そう言われても咄嗟にわからないぐらいアルバムとアレンジが違ってた。これ結構好きな部類の曲だったはずなんだけどな。

たしかその次がファーストソロ『Clangour』からのほぼタイトルトラック「Clangour And Flutes」。これも歌メロはそれとわかるものの、アルバムバージョンとかなり違う気がする。僕の聴き込みが足りないのかな。その後もよく知らない曲が続く。むー。いくらグレンとピートで忙しかったとはいえ、それなりに予習はしてきたつもりだったんだけど、ここまでわからないとは。それとも、もしかしたらこれも知ってる曲のアレンジ違いなのかな。

「いま新しいアルバムを作ってるところで、一旦アイスランドに帰ったらすぐにアメリカに飛んでミックスをするんだ」と言ってたから、たぶんこの日に演った曲の多くはそのアルバムからだったのかも(実際、何曲かはその新作からと紹介してたし)。

まあ、曲がわからなくても別につまらないわけではない。両ひざをせかせかと交互に軽く曲げてリズムをとりながらあいかわらずせわしくシーケンサーのつまみをあちこち動かしていろんな音を出すシンファン。演奏中はほとんど無表情で中空を見つめるように歌う。そしてここでもリムショットを多用して細かいリズムを刻むキャルタン。

途中で長袖を脱ぎ、白いノースリーヴのシャツだけになったときに腕の刺青が見えた。びっしりというより、小さなイラストみたいな刺青が両腕のあちこちに入れてある。いかにもシンファンが自分でデザインしたと思われるピラミッドとか動物のイラストや、腰骨みたいなデザインとか、よくもまああんなに沢山と思えるほど。

「新作には何人かのゲストヴォーカリストが入ってて、ソーレイもそのうちの一人なんだけど」と、いくつめかの新曲を紹介するシンファン。「別の曲にはシガーロス(これもほとんど“シグロス”ってぐらいの発音に聞こえた)のヨンシーも参加してくれているんだ。今からその曲を演ろうと思うけど、今日は彼がいないから、彼が参加する前までの古いバージョンにしよう。だって僕はあんな“アーーーッ”なんて甲高い声は出ないからね」と笑わせる。その「Candyland」って曲は複雑な伴奏といい、ちょっと印象に残ったな。ヨンシーの声入りのファイナル版が楽しみ。

「次が最後の曲。Young Boys」だって。なに、もう終わりなの? せっかく知ってる曲が出てきて嬉しいけど、これはあまりにも短いんじゃないか。前に出た二組とそんなに変わらない長さだよ。これはちょっと物足りないな。当然のごとく沸き起こるアンコールの拍手。そして1分もしないうちにすぐさま出てくるシンファン。予定調和。

一旦こっちのシーケンサーの方まで歩いてきて、思い直したかのようにソーレイのキーボードのところに戻る。「ピアノはあんまり得意じゃないんだ。うまく弾けるかな」と言いながら、本編でも演った「Walk With You」のピアノ・ヴァージョンを静かに歌いはじめる。

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曲名がわからないとか書いてたのになんでそんなヴァージョン違いがわかったのかというと、終演後にシンファンから直接色紙にセットリストを書いてもらってたファンの方がいて、その色紙の写真を撮らせてもらったから(でも、この「Never Let Me Go」という曲はもっと早く演ったはず。「Never Let Me Go」とか「Please Don't Go」とか似たタイトルの曲が多いなとライヴ中に思ったのを覚えてるから)

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てっきりシンファンがフルにセットをこなして終演が10時半ぐらいになるかと身構えてたのに、この時点でまだ10時にもなっていない。階段を上がり、ものすごい人数がごったがえすフロアで物販コーナーをようやく物色。たくさんあると嬉しいね。ソーレイのアルバムはどうしようかな。ちょっと聴いてはみたいものの、二枚のLPがそれぞれ3000円と3500円というのはちょっと気軽には決断できない。かといって目の前にLPが売ってるのにCDで済ませるのも許せないし。

シンファンのもシーベアのももう全部持ってるから、ICELANDiaのテーブルに行く。小倉さん(ネットではもう七年も知ってるつもりだったけど、初めてお会いした)にいろいろお勧めしてもらうけど、音も聴かずに2500〜3000円のCDはちょっと気軽に決断できない(こればっかり)。シンファンが自分でイラストを描いたTシャツもほしかったけど、もうこれ以上うちにTシャツを増やしてどうするのかという気もするし。

Miaouのコーナーで自ら手売りしていたメンバーに、家から持参したCDにサインをもらい、一緒に写真も撮らせてもらった。あんまり見たことのなかったEPを一枚だけ買い、ちょっと物販の波がひと段落ついて落ち着いたみなさんと話すこともできた。やっぱりシンファンのこの日のアレンジは、それまでの京都や名古屋公演からはずいぶん変えてきていたそうだ。

シンファンのサインの列が異様に長い。なんでかなと思っていたら、ひとつひとつのジャケットにサインだけじゃなくて沢山のイラストやらコメントやら描いてくれてた。僕の『Flowers』もこんなにぎやかなジャケになってしまった。もう何十人にもそんなサインやらイラストやら描いて、写真も一緒に撮って話もして、さぞかし疲れてるだろうに、ずっとにこやかに相手してくれる。

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そんな感じでほぼサイン会が終了するぐらいまでいてしまったから、せっかく10時前にライヴが終わったのに、家路についたのはもう終電間際みたいな時間だった。まあいいや、シンファンともMiaouのメンバーとも結構ゆっくり話せたし。とりあえず一旦家に戻って、翌日また来よう。



というわけで、もうこのまま二日分続けて書いてしまおう。4月26日(日)、シンファン&ソーレイ日本ツアーの最終日。この日は前日よりも開場・開演が一時間早かったので、前日よりちょうど一時間早い電車に乗って渋谷に向かう。前日の小さなバッグではなく、この日はシーベアの『The Ghost That Carried Us Away』のLPを入れた大きめのメッセンジャーバッグを肩にかけて。また一階のエレベーター前で待たされるのはわかってるけど、だからといってゆっくり出かける気分になんてなれない。

もうそこからデジャヴのように前日と同じ光景が繰り返される。物販のテーブルを横目で見ながら列に並び(この日は演奏しないMiaouのCDはもう置いてなくて、代わりにシンファンデザインのTシャツが増えてた)、開場と同時に手の甲にスタンプを押してもらって下のフロアに行く。

前日とは反対側のソーレイ側で観ようか、いやまだ真ん中も空いてるから正面から観ようかと迷いつつ、結局モスコミュールのカップを片手に前日と全く同じ場所に陣取ることにした。反対側からだとパソコンが邪魔になってシンファンのことがよく見えなさそうだったから。

ライヴの代わりにこの日はMiaouのお二人(ひろみさんは欠席)で開演前のDJタイム。僕は知らない曲ばっかりだったけど、気持ちよかったね。30分強の待ち時間があっという間。さすがに前売りが売り切れただけあって、この日は前日にも増してフロアを埋めた客数が多かったように思える。一番前から振り返って見ただけだから、正確に何人ぐらいいたのかわからないけど。

この最終日はMiaouのセットがないかわりに、二人のセットがそれまでの公演よりも長いということなので、昨日とはセットリストを変えてくるかなとちょっと期待(実は、前日の終演後にMiaouのまゆみさんから、シンファンがソーレイのセットに客演したこと以外は、そこまでの三公演でセトリがずっと一緒だったことを聞いていたから)

前日より若干早く、6時を10分ほどまわったところでソーレイとキャルタンが登場。「マイネームイズソーレイ」と話し始め、途中で「あ、日本語で挨拶するのを忘れてた」とメモを取り出す。練習したのにまた「こんな晩は」みたいな発音になってたね。

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この日は演奏していないMiaouのたつきさんのギターで「Smashed Birds」を弾き語りするところから、前日とまったく同じセット、ほぼ同じMCが繰り返される。まあ、二日続けて来ているようなファンはそう沢山はいなかっただろうから、同じ展開だろうと特に問題ではないけどね。というか、むしろ僕にとっても、前日のがいい予習になって、この日はそれぞれの曲の歌詞や構成をよりじっくり聴けてよかったと思う。

お客さんの反応はさすが満員だけあってこの日の方がよかったかな。例の「ノリノリだぜ」で爆笑され、「ねえ、ノリノリってそんなにおかしな言葉なの? なんか失礼なこと言った?」とちょっととまどうソーレイがかわいい。Miaouのまゆみさんに教えてもらったって言ってたかな。たしかに、シンファンが言うよりソーレイが言った方がおもしろい。

そのシンファンをまたステージに呼び出すときに「シンジャ」って呼んでた。「彼はシンファンだけど、日本にいる間はシンジャなの」って。あ、それは忍者とかけてるのか。昨日からの間にそういうギャグが二人の間で流行ったのかな。あとは、日本は人が多すぎ、アイスランドには32万人しかいないから、日本で言うと一軒の家に入るぐらいだとか冗談言ってたね。

ソーレイは前日より一曲多かったかなあ。もともと曲がわからないからよく覚えてないや。でも、前日より長めに演るって聞いてたのに、また40分ほどでステージを降りてしまったのはちょっと残念。まあ、つい最近グレンみたいなアドリブありリクエストありのフレキシブルなライヴを観てしまっているからこっちがやや贅沢になってしまってるんだろうけどね。

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実は、前日にライヴを観て、帰ってからユーチューブ観て、さっき「二枚のLPがそれぞれ3000円と3500円というのはちょっと気軽には決断できない」なんて書いてた気持ちがどんどん小さくなっていって、この二日目のライヴにでかける直前にSin君に「やっぱり買うから売り切れる前にLP取り置きしといて」とメールしてしまっていたんだ。


ステージ上の楽器類はそのまま、ソーレイが袖に引っ込んでほどなくシンファンが出てきた。今日は黒のボトムにナイキのロゴの入った黒のノースリーヴ。にぎやかな両腕のタトゥーがよく見える。僕の位置からいちばんよく見える右ひじのところのタトゥーは腕を伸ばせば馬みたいな動物に見えるし、肘を立てたらFという文字にも見えるな。

シンファンのセットリストも前日とほぼ同一。出だしの音がとんでもなく馬鹿でかくてびっくりした。途中でたしか一曲多く演奏したかな(たぶん、さっき載せた写真のセトリには入ってた実は前日演奏してなかった「Lost Girls」をこの日は演ったと記憶してるんだけど)。ソーレイ同様、前日は一風変わったアレンジも含めてちょっと戸惑ったのが、この日は安心して聴けたという利点はあったけれど、演奏自体は前日の方がよかったかな。でもお客さんの反応はこの日の方が上だったとも思うし、いろいろ総合するとどちらかの日が飛びぬけてよかったというわけではなかったかも。

本編ラストでソーレイを呼び出して三人で「Young Boys」を演奏したのはこの日が初めて。その後すぐに出てきたアンコールでキーボードに向かったのは前日同様だけど、この日は最初に『Summer Echoes』から「Two Boys」を演ってくれた(これがまた、すごくよかった)。そしてラストは、ピアノヴァージョンの「Walk With You」。

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なんかあっという間に終わってしまった。一時間早く始めてこんなに短く終わるんなら、今日もMiaouに演奏させればよかったのに。なんかちょっと物足りない。まあその分は、また上のフロアでだらだら時間つぶして埋めよう。

ソーレイのLPはもう二枚ともライヴ前にゲットして、Sin君に発売前のピーター・ブロデリックを売りつけられ(笑・ちゃんと買うつもりではいましたよ)、前日家に帰ってからICELANDiaのサイトで試聴して気に入ったCDを一枚買う。ああもう、最近ライヴ会場で買うCDの枚数が多すぎ。実はMiaouのも何か買おうかなと思っていたけど、この日はもう売ってなかったので散財せずにすんだ(笑)

前日の教訓を生かして、シンファンの列には早めに並ぶ。とはいえ、それでも20〜30分はたっぷり並んだんじゃないかな。まあ、列の前の方の人が楽しそうに写真を撮ったりしてるのを見てたり、自分の前に並んだ人たちとちょっとしたきっかけで話してたりしたおかげで、それほど退屈せずに過ごせたけど。

列に並んでる僕を見たシンファンが、「ああまた来てくれたのか」みたいな顔をして微笑んでくれる。前日は『Flowers』のジャケにアイスランド語で“会えてうれしい”みたいなことを書いてくれたんだけど、この日持参した『The Ghost That Carried Us Away』のLPジャケには“また会えてうれしい”というようなことを書いてくれた。

またたっぷりと時間をかけてラクガキしてくれたジャケットがこれ。このジャケを持ってフロアをうろうろしていたら、何人かのファンに「すいません、それ写メ撮らせてもらっていいですか」って言われたよ。たしかにかわいい。シーベアのLPなので、元メンバーのソーレイとキャルタンにもサインをもらった。キャルタンはなんでわざわざこんな濃い色の背景のところに書いて読みにくくするんだ。

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ソーレイにも新譜のジャケにサインをもらい、「ねえ、あのDeeperってのはどの曲?」と訊いて、ソーレイ本人にタイトル(「Follow Me Down」)を消して「Deeper」に書き直してもらった。やった、世界で一枚限定の本人公認オリジナルタイトルの入ったジャケ(笑)

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前日にも増して、たっぷりと時間をかけていろいろと話をすることができた。アメリカに行ってミックスするシンファンの新譜の共同プロデューサーがアレックスだとか、僕の来ていたTシャツから話が飛んだ某グループが今年の後半に来日するだとか(どこまでオープンにしていい話なのかわからないので適当にぼかして)、ソーレイはベジタリアンだとか(Sin君によると「でも寿司食べてましたよ」だって)、あとは何の話をしたっけな。こんなに楽しいなら、ライヴが短かったことぐらいいくらでも大目に見るよ。

そんなに頻繁に日本に呼べるようなアーティストじゃないだろうから(それだから多少無理をして、サーポールも振り切ってこっちに二日間来た)、もうしばらくはライヴで観られるようなことはないと思うけど、作成中のニューアルバム(「多分数年のうちに出ると思うけど、うまくいけば今年」と言ってたのは冗談だろう)が今から楽しみだ。
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