2019年07月21日

後悔 Pet Shop Boys 「Inner Sanctum」

5056167112167.jpg Pet Shop Boys 『Inner Sanctum』

年を取ると何でもつい最近の出来事と思いがちになってしまうけど、改めて考えてみると実はそんなに最近でもなかったというようなことがよくある。ペット・ショップ・ボーイズの今のところの最新アルバム『Super』がもう3年も前のアルバムだなんて。

90年代から毎回アルバム発表ごとに律儀にツアーに出ている彼らだから、このスーパー・ツアーはそのアルバム発表からもう足掛け4年も続けていることになる。その最後のレッグとなったアジアツアー、今年の3−4月のシンガポール、香港、東京、大阪という4都市は、今僕が住んでいるところからは微妙に遠く、でも無理すれば行けなくはないといった程度の距離だったんだけど、なにしろ6年前にマニラで観たエレクトリック・ツアーが、僕にとっては選曲といい周りの観客といいちょっとイマイチの印象だったものだから、今回はまあいいや、って思ってしまったんだよね。今回取り上げるこのライヴBD/CDが出ることも、その頃にはもうわかってたし。買って家で観ればいいや、と。

知り合いやツイッターでフォローしている何人かが武道館でのライヴをべた褒めしていたのを読んで、それをおそらく同じセットであろうこのBDを期待を持って観てみたんだけど、いやもう、最初に出てきた感想が今回のタイトルですよ。本当に、大後悔。無理してでも行っとけばよかった。なんでまあいいやなんて思ったんだか。

1991年のパフォーマンス・ツアー以来、ほぼ全てのツアーをビデオ作品として発表しているPSBの、これは7つ目の作品となるはず(1989年に当初は日本のみで発売された8曲入り『Highlights』を入れると8つ目)。そのほぼ全部と、ビデオ作品にはならなかった前述のエレクトリック・ツアーと比較してみても、今回のものは選曲、演奏、演出、どれをとってもダントツでいい。あと、これが確かPSBとしては初めてBDで出したビデオ作品だから、これまでのものとは全然画質が違う。


ロンドンはコヴェント・ガーデンのロイヤル・オペラ・ハウスの外観で幕を開けるビデオはまるで映画のオープニングのよう(ちなみに最後のクレジットもまるで映画のエンディング)。そこからカメラがゆっくりとオペラ・ハウスの中に入り、『Super』のジャケにちなんだカラフルな丸(球)をモチーフにしたステージへと移る。「Inner Sanctum」のイントロに合わせて左右に並んだ大きな球がゆっくりと回転すると、PSBの二人が球の裏側から現れるという仕組み。このあたりは、最初に付属のCDだけを聴いていたときには、どうしてその部分で大歓声が上がるのかがよくわからなかったから、このセットはまずBD/DVDを先に観るのがおすすめ。

エレクトリック・ツアーのときとは違った、ニールは半球状、クリスは顔をすっぽりと覆う球体の被り物で登場。サングラスをかけたニールの顔の下半分だけを見ると、ああさすがに歳食ったなあ、という感じ。もう今月65歳になるんだから当然なんだけど。でも、この人の声だけは全然変わらないね。もともと無理しないと声が出ないような音階の曲もないから、変にフェイク入れないと歌えないような曲もないし(あえてオリジナルとはメロディーを変えて歌っているようなのは別)。

3曲目、最新アルバムからの「The Pop Kids」に続けて、「In The Night」なんて珍しい選曲。ファーストアルバム前のシングルのB面だよ。少なくとも上に書いた、これまでのツアーでは演ってないはず。そこからさらに続けて、また最新作から「Burn」へ。このメドレーの途中で、さっき二人が登場した巨大な球がステージ脇にどけられて、背後から登場した3人のサポートメンバーのうち1人の女性が前に出てきてニールとデュエット。でも、銀色のガッチャマンみたいな被り物してるから顔がよくわからない。

続く「Love Is A Bourgeois Construct」(アルバム『Electric』で一番いい曲なのに、何故かエレクトリック・ツアーでは演奏しなかった)では、その同じ彼女がエレクトリック・ヴァイオリンであの印象的なイントロのリフを奏でる。これはいいな。ガッチャマンの被り物を取ったら、アジア人っぽい風貌のその彼女。クレジットで調べてみると、クリスティーナ・ハイゾン(Christina Hizon)という名前。本人のサイト見ても特に明記してないけど、フィリピン人の名前だよね。

前半(CDでいうと1枚目)はその後も「Love Comes Quickly」なんて初期からの固定曲だと思いきや実はこれまでのツアーではほとんど演ってなかったものや、定番シングル曲の数々、最新アルバムからの曲が続く。前半の締めは「West End Girls」(ビデオだと別に前半後半分かれてるわけじゃないけど)。たしかこの曲のときかな、観客の大合唱を聴いて、ずっと無表情なクリスが一瞬ニヤリとする瞬間が見られる。前半で聴いてすぐわからなかったのが「The Dictator Decides / Inside A Dream」という、最新作とひとつ前のアルバムからの2曲のメドレー。どうもここ数作のアルバム、あんまり聴き込めてないんだよね。だから気が付かないうちに3年経ったりしてるわけだけど。

CDの2枚目、ここからの流れが凄い。別に前半が悪かったわけじゃないけど、まったく捨て曲なしの見事な流れ。「Home And Dry」にメドレーで続くインストの「The Enigma」って、どのアルバムに入ってたっけ。持ってるCD全部見てみたけどわからん。でもその曲のリフが出てきたときに皆さんやたらと盛り上がってるよな。なんで知ってんの?

『Electric』からの地味なシングルカット「Vocal」のエンディング、バックの演奏が少しずつ聞き覚えのあるパターンになってきたなと思ったら、そこから一気に「The Sodom And Gomorah Show」。ここしばらくのツアーではセトリから外されていたこの名曲、パッケージの表記ではさっきの「Vocal」とメドレーになってるけど、ほぼオリジナル通り最後まで歌い、そのまま続けて、今度はパッケージではメドレー扱いされていない次の「It's A Sin」へ。2013年〜2006年〜1987年をさかのぼるタイムトリップみたいな怒涛のメドレー。このライヴのハイライト。

「古い曲を演るよ、新しいバージョンで」とニールが紹介して、その通り聞いたことのないイントロに導かれて始まったのが「Left To My Own Devices」。CDではわからないけど、ビデオだとここでカラフルな風船みたいなコスチュームの「スーパー・ダンサーズ」が登場。

「次も古い曲を新しいバージョンで。どの曲かな? 沢山あるからね」と言って、静かに歌い始めたのは「Heart」の歌詞。わあ、こんなスローな「Heart」初めて聴いた、と思っているうちに、おや?なんか演奏のコード進行が変わっていくぞ。そう気付いた瞬間、「Go West」のあのイントロが。。ちょっとここは、不覚にも涙が出そうになった。これをその場で体験していたかもしれないことを想像すると、もうとんでもなく悔しいよ。

メンバー紹介を含めた長い長い「Go West」で本編は終了。「ウィ・アー・ザ・ペット・ショップ・ボーイズ」って、定冠詞付けるんだね。前からそうだっけ? アンコールは割とオリジナルに忠実なバージョンの「Domino Dancing」。そして、「もう1曲演ろう」とニールが言った瞬間に、あの「Always On My Mind」の必殺のイントロ。わかっていても背筋がぞくっとする。そして最後は「The Pop Kids」のややスローなバージョンを繰り返し、大団円で先にステージを去るPSBの二人。スーパー・ダンサーズが踊り、バンドの3人が演奏を続ける中、緞帳がゆっくりと下りてきて、演奏終了の瞬間ステージが見えなくなる。完璧なラスト。

こういう展開にするのなら、どうして今回のツアータイトルを「The Pop Kids」にしなかったんだろうと思う。前半の「The Pop Kids」の紹介の際に「今夜は僕らはみんなポップ・キッズだ」とか言ってるし、ビデオのエンディングのクレジットのバックに流れるのもその曲だし。


この2018年7月27-28日のロンドンでのライヴ盤に、ボーナス映像として2017年9月17日のロック・イン・リオでのほぼ同内容のビデオが収録されている。カツ丼を注文したらおまけでミニ天丼が付いてきたぐらいのボリュームだ。本編と比べると、前半のいくつかの曲がカットされているのと、大団円の「The Pop Kids」がない。そうか、ツアーの初期にはその曲はそれほど重要視されていなかったのか。

ここ30年ほど、律儀に2-3年おきにアルバムを発表してきた(そして、2012年まではその2-3年のインターバル中に何枚もの編集盤やベスト盤やライヴ盤を出し、結局毎年なんらかのCDを発表してきた)PSBが、2013年の「Electric」から2016年の「Super」の間には何も発表せず、そして2017年以降はこのツアーに明け暮れていたので、さすがにそろそろ次のアルバムかと思っていたら、今年になって4曲入り12インチシングル『Agenda』を発売。これはどういうことなんだろう。ネタ切れ? それとも、これとは別に次のアルバムは出るのかな? 悪い出来のシングルではないんだけど、ちょっとこれじゃ物足りない。

まあいいや、こんな凄いライヴを見逃した罪滅ぼし(?)に、その新しいシングルと、イマイチ聴き込めてない最近(といっても2012年以降)の3枚のアルバムをもう一回しっかり聴き込んで、いつになるかわからないけど、次のツアーに備えておくことにしよう。もう聴いてすぐわからないなんて曲がないようにね。


posted by . at 17:51| Comment(0) | ビデオ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2012年04月15日

コーチェラのスクイーズを観ながら

コーチェラフェスティバルがユーチューブで生中継をやってるというので、スクイーズ観たさに日曜なのに早起きして準備。スクイーズのステージは日本時間の11時15分からなので別にそんなに早起きする必要もないんだけど、楽しみにしていることがあるときは目が覚めてしまうもので。おかげで9時からのバズコックスとかも観られてラッキー。

生中継のビデオを観ながらツイートしてたのを転載して今日の一記事分稼ごう。たいしたことつぶやいてないけど、もし誰かセットリスト知りたいとかいう人がいたら参考になるかもしれないし。


yas ‏ @yas_jimi
スクイーズ @ コーチェラ生放送待機中。ノエルかローラか迷いながら主にローラ観てる。スクイーズの裏番組はアンドリュー・バードか。重なるね。
2012年4月15日 - 11:00

yas ‏ @yas_jimi
時々固まるな。重くないように画像だけのページ観てるのにな。スクイーズのときは止まりませんように。ローラ・マーリン最後の曲。http://tremolo.edgesuite.net/clients/1089_google-youtube/coachella/index.html
2012年4月15日 - 11:10

yas ‏ @yas_jimi
ちょうどスクイーズが始まる3分前に終わってくれたよ。もうノエルには戻らずにスクイーズ待ち。
2012年4月15日 - 11:13

yas ‏ @yas_jimi
「Bang Bang」!こんな曲でスタートとは。それにしてもグレンのヒゲ。
2012年4月15日 - 11:18

yas ‏ @yas_jimi
「Take Me, I'm Yours」極初期が続きますね。サイモンはヒゲそったのか。
2012年4月15日 - 11:21

yas ‏ @yas_jimi
数秒固まったと思ったら「Revue」になってる。なんでこんなに固まるの。
2012年4月15日 - 11:22

yas ‏ @yas_jimi
グレンのギター相変わらず最高です。次は「Annie Get Your Gun」
2012年4月15日 - 11:25

yas ‏ @yas_jimi
ほとんど映してもらえない結婚式の司会者みたいないでたちのキーボーディストはスティーヴンか。復活したんやね。次「Is That Love?」
2012年4月15日 - 11:29

yas ‏ @yas_jimi
クリス!「Cool For Cats」
2012年4月15日 - 11:30

yas ‏ @yas_jimi
グレンの新機軸のブルージーなギターソロが最高でございました。次は「Points Of View」珍しい曲ばかり演るね今日は。
2012年4月15日 - 11:35

yas ‏ @yas_jimi
固まってる間に「Up The Junction」に移ってる。ああもう悔しい。
2012年4月15日 - 11:40

yas ‏ @yas_jimi
イントロでまた固まったけどこれは「Goodbye Girl」やな。
2012年4月15日 - 11:41

yas ‏ @yas_jimi
サイモンのワインボトルパーカッション。
2012年4月15日 - 11:42

yas ‏ @yas_jimi
「Hourglass」
2012年4月15日 - 11:45

yas ‏ @yas_jimi
やっぱりこの曲のサビはクリスの声でユニゾンなのがいいよね。スクイーズで来日してほしいよ。
2012年4月15日 - 11:47

yas ‏ @yas_jimi
「Pulling Mussels」もうそろそろ終わってしまうのかな。グレンの「Cheers Loves!」久々に聞いた。
2012年4月15日 - 11:49

yas ‏ @yas_jimi
何いま一瞬入った画像?
2012年4月15日 - 11:49

yas ‏ @yas_jimi
「Slap & Tickle」グレン on キーボード
2012年4月15日 - 11:53

yas ‏ @yas_jimi
手拍子。ギターなしで「Tempted」
2012年4月15日 - 11:58

yas ‏ @yas_jimi
ジョン・ベントレーせっかくピンで歌う一瞬を映してもらえず。
2012年4月15日 - 11:59

yas ‏ @yas_jimi
「Black Coffee In Bed」これで最後かな。
2012年4月15日 - 12:01

yas ‏ @yas_jimi
やたらサイモンばかりアップになるな。クリスより多いかも。
2012年4月15日 - 12:04

yas ‏ @yas_jimi
完全に固まってしまった。一応演奏は最後まで聴けたからいいけど。
2012年4月15日 - 12:14

yas ‏ @yas_jimi
今朝バズコックス観てたときはここまで固まらんかったのに。時間帯のせいなのかな。
2012年4月15日 - 12:15


11:49の「一瞬入った画像」はビーチの砂の城が崩れていくクレイアニメっぽい映像。「Pulling Mussels」の歌詞にかけてるんだろうけど、いきなり全画面それになったもんだから妙に唐突感。それとも僕のPCが何度も固まってた間にああいう画像は何度も挿入されてたのかな。

グレンは一時期の伸び放題のヒゲを一応はトリミングして、あご下の部分だけ長く、それ以外のは短いという新手の山羊みたいな不思議なスタイル。ずっとブルーメタリックのストラトを弾いてて、「Slap & Tickle」のときだけは後ろから引っ張ってきた赤い台の上に置いた小さなキーボードを演奏。「Tempted」のときはギターを持たずに頭の上で大きく手拍子をして観客を促しながら途中まで歌い、後半は観客に歌わせながらおもむろにギターを抱え、通常演奏に。どういうわけか、さあギターソロという場面になると決まって画面がフリーズ。

クリスはバイオリンみたいな形のギター。ヘッドのところもくるりんってなってた、あれどこの何ていうギターかな。「Cool For Cats」を歌うとき以外はほとんど存在感なし。でも11:47につぶやいているように、この人の声が入るだけで、グレンのソロで聴きなれた曲も全然変わるね。

「Pulling Mussels」のときかな、自分のコーラスのパートじゃないからとオフマイクで、でも大声で歌ってるスティーヴン・ラージがよかったな。えんじ色に黒い襟のスーツみたいなのを着てネクタイしてたよ。七三分けのヘアスタイルと黒縁眼鏡も、狙いなのかな。

ジョン・ベントレーは真ん丸になってた。首もないし指もコロコロ(グレンと同じ指)。11:59のツイート、「Black Coffee」で3人で掛け合いするところではずっとグレンの顔のアップだった。でも演奏中は比較的アップも多かった気がするジョン。ミュージックマンの黒いベース。

サイモンかっこよかった。相変わらず他人とは思えない頭の形とヘアスタイル。「Goodbye Girl」ではステージ前方に出てきて、左手に持った空のワインボトルとカウベルをドラムスティックで叩き、曲の途中でドラムキットに戻って後半ドラムスというパターンは前に吉祥寺でも観た。ドラムキットに戻って叩き始めた瞬間、右手に持ったスティックが折れたのか、上に大きく放り投げて新しいスティックを取り出して、かっこいいな、というところで僕のPCはフリーズ。次に動き出したときにはもう「Hourglass」の早口フレーズが始まっていた。

てな感じで、観ていた時間の1/5ぐらいはフリーズしていてフラストレーション溜まりまくり。フリーズまでには至らなくても、画面モザイク音はモノ、みたいになるのもしょっちゅう。うちのネット回線そんなに遅いというわけじゃないはずなんだけどな。昨日は夜中にかけてアークティック・モンキーズの再放送とかやってて、それはストレスなく観れてたから、このスクイーズのもまた夜に再放送すればいいんだけど。


p.s. 13時半からのボンイヴェールのときは固まるどころかモザイク状になることもなく、一切ストレスフリーで観られたぞ。何故だ? いやそれにしてもボンイヴェール、圧巻だった。あれは是非ライヴで観てみたい。


p.p.s. 夜、お出かけから帰ってきたら再放送やってたので、慌てて「Annie Get Your Gun」から再度観賞。昼に観たときよりは多少はマシにはなったものの、やっぱりブツンブツン途切れる。ただ、生放送のときは固まってた時間分はなかったことにされてしまっていたのが、録画だからか、しばらく固まった後に再開すると固まった瞬間からまた観られるので、観られない瞬間というのはないのが大きな違い。とはいえ、やっぱりこれだけブツブツ切れると、楽しんで音楽聴くという感じではなくなってしまうね、残念ながら。

グレンの前方、左右方向に相変わらずサーキュレーターが置いてあるなとか、「Pulling Mussels」のときだけでなく、他の曲(たしか「Up The Junction」?)でも一瞬アニメっぽい画像が挿入されるとか、最初観たときには気付かなかったり見逃してたりしたことに気づく。これ、いつまで再放送続くのかな。明日コーチェラが閉幕するまでなのかな。ユーチューブにずっと置いておけばいいのに。
posted by . at 14:46| Comment(0) | TrackBack(0) | ビデオ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2011年10月15日

R.E.M.の思いで

記録によると、僕がR.E.M.の日本盤LP『Murmur』を中古で買ったのは、1985年の3月。もうその頃にはとっくに次のアルバム『Reckoning』も出ていたはずだから、決して日本でいちばん早く彼らのことを聴いたというわけではない。というか、その前年にはもう彼らは初来日して関東のいくつかの大学の学園祭をまわるツアーをしていたから、当時関西の大学生だった僕はそんなニュースをきっかけに、運よく中古屋で見つけた彼らのそのデビューアルバムを買ってみたのかもしれない。

確かその学祭ツアーは爆風スランプの前座という形だったと記憶している。今から思えば、その数年後にマイケル・スタイプがサンプラザ中野と同じ髪型(?)になったのが奇遇だね。もうすっかりスキンヘッドが定着したマイケルだけど、当時の写真を改めて見ると、顔を覆うようなくしゃくしゃの髪の毛と今も変わらない眼光鋭い眼差しがすごくカリスマティックだと思う。

閑話休題。その『Murmur』、A面1曲目の「Radio Free Europe」をはじめ、気に入った曲がたくさん入ったアルバムだと思ったのを覚えている。「歌詞は聞き取り不可能なため掲載していません」なんて書いてあるライナーもなんだか秘密めいていて逆にわくわくさせるものだった。そう、当時はミュージック・マガジンなんかの記事を読んでも、マイケル・スタイプの歌う歌詞はアメリカ人にさえ聞き取れない、なんてことが書いてあったね。

当時の新作『Reckoning』も、その後すぐに出た『Fables Of The Reconstruction』も、たしかレンタルレコード屋で借りて聴いたんだっけ。今みたいに次から次へと気になったアルバムを買える経済状態じゃなかったからというのもあるけど、どれもこれもなんだかぼわーっとした抽象画みたいなジャケだったのが、当時の僕にとってはいまいちそそるものじゃなかったからなんだと思う(「当時は」と書いたものの、手元にR.E.M.特集のレコード・コレクターズ2001年6月号があるけど、彼らのシングルや貴重盤が掲載されたカラーページを見てもなんだかちっとも所有欲がわかないのは、今でもやっぱり彼らのビジュアルセンスが僕には合わないんだろう)。

そんな感じで、せっかく見つけてそれなりに気に入っていたバンドだったのに、僕はだんだん距離を置くようになってしまった。アルバム『Document』からのシングル「The One I Love」がヒットし、ワーナー移籍後の大ヒットアルバム『Green』が発表されたのはその少し後のことだった。当時全盛期だったMTVやラジオで彼らの新曲がかかるのを聴いてはいたけど、なんだか昔ちょっとだけいい感じになりそうだったけど付き合うまでには至らなかった女の子がどんどん美人になるのを見るみたいに、僕は彼らがどんどんビッグになっていくのを離れたところから見ていた。

2003年のベスト盤『In Time』を当時住んでいたクアラルンプールで買ったとき、僕は自分にとっての失われた十数年を悔やんだものだった。そうだよ、僕はこのバンドのこの音を好きだったんじゃないか。なんでずっと追っかけてこなかったんだろうって。

それからすぐ、1985年当時よりはいくぶん裕福になっていた僕は、それまでのブランクを埋めるように躍起になってバックカタログを買い集めた。その後移り住んだオークランドのリアル・グルーヴィーには安い中古盤が腐るほどあったし、ワーナー時代のアルバムがDVDオーディオ付きのデラックス・エディションで再発され始めたのもちょうどその頃だったしね。昔よりずっと美人になったかつての女友達が付き合ってくれることは滅多にないけど、ビッグになったバンドはもう一度ファンになることを拒絶したりしないのがいいよね。


先月21日に突然解散を発表したR.E.M.についてブログやツイッターや雑誌に書かれた文章はたくさん読んだ。僕もここに何か書こうかと思ったけれど、なんだかうまく書けない気がしてそのままにしてあった。それを1か月近くも経ってからこうして書いているわけなんだけど、解散について今さらあれこれ書くのももうなんだか気が引けるし、あちこちで読んだ僕が共感できる意見や感想をここで繰り返してもしょうがないから、最近ごぶさたしているこのブログを更新することを言い訳に、ずっと前に買ってまだ観てなかった彼らのライヴDVD(2枚組CDとのセット)を観て、そのことを書くことにした。そう、もう飽きてきた人には申し訳ないけど、残念ながらここまではまだ前書きだったんだよ。

R.E.M. Live.jpg
R.E.M. 『Live』

2005年2月のダブリンでのライヴを収録した、07年発表のアルバム。2枚組CDの方はこれまでもう何十回と聴いてきた。というか、僕が数年に一度罹るR.E.M.マイブーム病の際のここ数年の定番だった。でも、105分に亘るライヴDVDの方はなかなか時間が取れなくて、今日まで手を付けていなかったんだ(せっかく初回限定とかのDVD付きのアルバムを買ってもそういう目にあってるのがうちには他にもたくさんあるなあ)。

日本盤のライナーによると、2月27日のライヴから4曲をオミットし、前日公演から1曲を追加したものらしいけど、それ以外は当日のライヴの流れを尊重した全22曲。CDの方はオープニングの「I Took Your Name」から本編最後の「Losing My Religion」までの17曲が1枚目、アンコールの5曲が2枚目に収録されるという、なんとなく2枚目が物足りない構成になっているけれど、DVDは開演前の準備から最後のクレジットまで1枚に全部入っているのでもちろんそんな不自然感はない。

聴きなれた音源がどんな状況で演奏されているのかを初めて観る新鮮な驚き。スキンヘッドの額の下半分から鼻の真ん中まで、耳から耳までを真っ黒に化粧し、スーツを着込んだマイケルの異様ないでたち。天井から何本もぶら下がっているいろんな色の蛍光灯が緑色のときに下から見上げるショットは、まるで深い森か水中にいるような錯覚に陥る。CDの裏ジャケではセミアコを持っているピーター・バックが実際にほとんどの曲で弾いているのはリッケンバッカーだ。そのピーターはステージ上ではほとんど声を発することはなく、マイケルの後ろでコーラスを入れているのは主にマイク・ミルズだというのを再発見。

ライヴ・ヴィデオとしては、めまぐるしく切り替わるカット割り(せめてワンカットは一小節の長さ以上にしてもらいたい)や、カットによって画像の粗さや解像度や色調が頻繁に変わるのが僕としてはかなり煩わしい。以前ここに書いたELPのライヴDVDのように、もう二度と観たくないというほどには酷くはないんだけどね。曲によってはそういうのがうまく合っていい感じになっているのもあるけど、せっかく凝った作りのステージで見応えのある演奏をしているのに、余計な演出は要らないよ。

メンバー3人以外にサポートが数名。ドラムスが、ビル・ベリー脱退後ずっと一緒に演っている(でも最後まで正式メンバー扱いはしてもらえなかった)ビル・リーフリン。キーボードを弾いたりギターを弾いたりしているテンガロンハットにカーリーヘア、サングラスに髭面のスコット・マコーイー(マイナス5やヤング・フレッシュ・フェローズの写真でしか知らなかったけど、そのときはこんなに異様な見かけじゃなかったはずだぞ)。そして、そのスコットの隣で黙々とキーボードを弾いている色白なハンサム君、彼がサポートで参加していることをすっかり忘れていてあれっ?と思った、ポウジーズのケン・ストリングフェロウ。

ヒット曲や有名曲ばかりで構成されているわけではなく、アルバム中の地味な曲もバランスよく配されている。時期的には当然だけど、当時の新作『Around The Sun』からの曲が多いね。このライヴから3年後に出ることになる『Accelerate』の「I'm Gonna DJ」がもうアンコールで演奏されている。個人的なお気に入りは、「Cuyahoga」、「Bad Day」、「The Great Beyond」、「Imitation Of Life」など。もちろん、「Losing My Religion」や「Man On The Moon」といったヒット曲も嬉しい。アンコールで懐かしい「Don't Go Back To Rockville」を歌っているのは、その曲を書いたというマイク・ミルズ。決して上手いわけじゃないけど、なんだかほのぼのするね。


解散は残念だけど、それを見越していたかのようにIRS時代のアルバムがデモやライヴ音源などを含んだデラックス・エディションとして再発されているし、この『Live』の2年後に、これよりかなりマニアックな初期の曲を中心にした『Live At The Olympia』も出ているし、きっと今後もあれこれ発掘音源を小出しにしてくれるんじゃないだろうか。

それに、こんなに友好的なまま解散したバンドだから、きっと何かの機会にちょっと集まってくれたりするんじゃないかな。そんなのが何年後に起こるかなんてわからないけど、なにしろ僕は彼らとの失われた十数年を取り返すのが先決だから、のんびり待っていよう。
posted by . at 22:36| Comment(0) | TrackBack(0) | ビデオ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2010年12月28日

エキストラ出演 - →Pia-no-jaC←

Live @ 九段会館 DVD.jpg Live @ 九段会館 CD.jpg
Pia-no-jaC← 『LIVE @ 九段会館 〜Jumpin' →JAC← Flash Tour〜』DVD(左)
Pia-no-jaC← 『LIVE @ 九段会館 〜Jumpin' →JAC← Flash Tour〜』CD(右)

自分が実際にいたライヴがCDやDVDになったことって今までにあったっけ。自分が行ったのと同じツアーの違う日がライヴ盤になったり、自分がいた日の音源がいろんな場所での録音に混じって収録されたりしたことはあったと思うけど、こういうパターンは僕にとっては初めてかもしれない。

10月10日の記事に書いたとおり、その前日に行った九段会館での→Pia-no-jaC←のライヴが丸ごと、限定生産のDVDとCDになって先日発売された。

ライヴ自体の内容については前述の記事に書いたとおり。あの3時間にも及んだライヴから、トークと余興(?)を取り除くと、1枚のCDに収まってしまうのかというのがちょっとびっくり。とはいえ、このCDには、あの日演奏した全曲から3曲ほど割愛されているみたい。DVDの方には、アンコールの最後に演った「Happy」がエンディングSEとして収録されているから、どちらにも入っていないのは2曲。時間の関係か、それとも権利関係なのかも。

僕は二階席だったから、ステージ全体はよく見渡せたけど、やっぱりこうしてDVDでアップで観ると、彼ら二人とも凄い演奏をしているというのがよくわかるね。手持ちのカメラが多くて画面の切り替えが頻繁だから、ちょっと見ていて疲れる類のビデオではあるけど(それでも以前記事にしたスピッツのDVDとかよりはマシかな)、画質もよく、88分という時間も長すぎず短すぎずでいいと思う。

ところで僕は前述の記事に「僕の実物を知っている人なら、一部の方々にはお馴染みの僕のトレードマークの例のシャツを着て行ったので、そのDVDが出たら二階席を探してみて」と書いたんだけど、その“例のシャツ”を知っている人なら、もしかしたら上に載せた2枚のジャケ写で僕のことを探せるかも。このDVDとCDのジャケ、微妙に違うカットなんだけど、どちらにも僕は写り込んでしまっているよ。思わぬところでエキストラ出演してしまった。きっとひよりさんには腸羨ましがられることだろう。

いや、これはいい記念になったな。限定生産だというから慌てて近所のヴィレッジ・ヴァンガードで予約して買ったら、上にリンクしたアマゾンでは1000円以上も安く出てるのがちょっと気に食わないけど(笑)。選曲もいろんなアルバムから(とかアルバム未収録のコラボ作品とかも)収録されてて、ベスト盤として聴いて(観て)もいいかも。


さて、毎年年末恒例の駆け込み大量生産ブログ記事、今年はあとどれだけ書けるかな。自分の年間ベスト10を決めるために、前から気になってたものや先日友達の家で暫定年間ベスト10発表会をしたときに(何人かのベスト10を聴いて)チェックリストに入れたものとかをほぼ毎日大量に仕入れてきて聴き込んでいるから、あと3日でもう一記事ぐらいは書きたいけどな。まだ年賀状も一枚も書いてないし、部屋の片づけも一切してないんだけど…
posted by . at 01:00| Comment(5) | TrackBack(0) | ビデオ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2010年04月25日

上級者向け入門編 - Pet Shop Boys

Pandemonium.jpg Pet Shop Boys 『Pandemonium』

そういえば最近全然ペット・ショップ・ボーイズのことを書いてないな。このブログが始まった頃はなにかにつけて彼らのことを書いて、「最初の一年に最も多く取り上げたアーティスト第二位」にもなったというのに。

上に写真を載せたこれ、昨年末のロンドンはO2アリーナでのライヴを収録したDVDとCDのセット。DVDとしては07年の『Cubism』以来、CDとしてはその前年の『Concrete』以来の久々のライヴ作品。ちなみに『Cubism』は僕がNZで観たのと同じツアーの半年前の記録。そっちについても書きたいけど、長くなるのでまた今度。

さっきリンクを貼ったどちらかの記事にも書いたと思うけど、ペット・ショップ・ボーイズのステージって、本当に様々な趣向が凝らされていて、生で観てももちろん楽しいし、映像パッケージになっても十分繰り返しの視聴に耐えうるものだ。普通は音楽もののDVDって、いくら気に入ってても、そう何度も観ることってないのに。

今回のも例に漏れず、2時間半弱にも及ぶ本編+追加映像、全部観たら3時間はかかる超充実した内容なんだけど、この久々の家でのゆっくりした休日にもうすでに繰り返して観てしまっている。ステージのセットも、ダンサーの動きも、すごく練られているよ。

これは去年のツアーのもしかしたら最終日だったのかな。おそらくその日のライヴがほぼ丸ごと収録されているようだ。いつもながらのヒットパレード+初期のアルバムからのマニアックな選曲。いつもと違うのは、いつも僕が楽しみにしているアクースティック・セットがないことかな。

DVD本編には22のトラックが収録されていて、そのうち4つに複数の曲名が書いてあり、おそらくメドレーで演奏しているんだろうな、ぐらいのことは裏ジャケを見ればわかるんだけど、観てみると実はちょっとそれどころではない。

たとえば、「Pandemonium/Can You Forgive Her?」と題された3曲目。イントロで「Can You Forgive Her?」のメロディーラインを弾いたかと思えば、そのまま曲は「Pandemonium」に入り、歌の途中で急に「Can You Forgive Her?」になるとか、

リストでは4〜6曲目に入っている「Love etc.」「Building A Wall」「Go West」がほぼメドレーで繋がっていて、しかも4曲目から5曲目に移る際にはリストにない「Integral」の歌詞まで歌っているとか、

同様に、8曲目「Why Don't We Live Together?」と9曲目「New York City Boy」の間に「Left To My Own Devices」の一節を歌って繋ぐんだけど、その「Left To My Own Devices」は11曲目でまた正式に出てくるとか、

そういう、単なるメドレーとかじゃなく、新旧の自分たちの曲をまるでコラージュのように切り貼りしている。僕はコンサートを観に行ったときにはなるべく曲順を覚えてくるようにしている(時々メモ取ったりもする)けど、もしこれを観に行ってたら、どれが何曲目だったのか、絶対に途中でわからなくなっていたことだろう。

こういうのもいいね。彼らの曲を知っていればいるほど、そのコラージュの妙というか、ごった煮的なミックスの様子を楽しめるよ。まあ、自分の好きな曲がそうやってほんの一節だけで終わってしまうのはちょっと消化不良ではあるけれど。

最近のライヴではもうあまり演っていないんじゃないかと思う初期の「Two Divided By Zero」とか「King's Cross」とかに混じって、超有名曲がぞろぞろと出てくるから、別に彼らの曲を昔からよく知ってる人だけが楽しめるというわけでもない。「Always On My Mind」とか「Suburbia」とか、一撃必殺みたいなイントロを聴いたときのカタルシスは格別だしね。

『Cubism』ツアーでクライマックスに使われて以来、それ以降のライヴの定番の一つになると信じていた「The Sodom And Gomorah Show」が入っていないのが個人的には残念だけど、それ以外は概ね満足なセットリスト。

ちょっと不思議に思ったのは、本編でなく追加映像の方に収められている、この当時の最新シングルだった「It Doesn't Often Snow At Christmas」と「My Girl」。同日の収録のはずなのに、どうして本編から外れたんだろう。特に「Christmas」の方はかなりいい演奏だと思うんだけどな。

追加映像は他に、『Yes』からのPVが3曲と、09年のBRITアワードでの演奏。ここでも自分たちの過去から現在までのヒット曲をメドレーでつなぎ、途中でレディ・ガガやキラーズのブランドン・フラワーズなんかも登場する。まあ、僕にとってはあまり興味のないゲストだけど、このメドレーはなかなか聴き応えあり。

前回のライヴDVD『Cubism』と違って今回嬉しいのは、同内容のCDが付いていること。とはいえ、2時間半弱の内容をそのまま1枚に収録できないから、17曲に削られた短縮版になっている。

重要曲はほぼ残っているからまあ大丈夫なんだけど、一点だけあれ?と思ったのは、さっき書いた「Love etc.」から「Go West」までのめまぐるしいまでのメドレーが途中でぶつんと切られていて、真ん中の「Building A Wall」が(「Integral」の歌詞ごと)なくなっていること。これはちょっといただけないなあ。

とはいえ、2時間半きちんと座って観ないといけない映像付きですら繰り返して観てしまうだけの魅力的な内容を、どこにでも持っていける音だけで聴けるというのはありがたい。昨日別の記事のコメント欄に小さく書いたけど、僕は先週の出張から戻ってきて以来、もうこのCD(をウォークマンに落としたもの)をすでに15回以上は繰り返して聴いているよ。

たまにはまると抜けないんだよなあ、この人たちの音って。これからしばらく、旧譜もひっくり返してきて、PSBばかり聴いてそうな予感。
posted by . at 17:48| Comment(6) | TrackBack(0) | ビデオ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2009年06月21日

観てみました

The Rachel Papers.jpg 『The Rachel Papers』

5月17日の記事のコメント欄は、さしずめ日本中のスクイーズ・マニアにつどって頂いたのではないかと思えるほどの賑わいだった。その中で、ディフォード&ティルブルック名義の未発表曲がサントラに使われた映画があるらしいとの情報を戴いた。僕もコメンターの方々もその曲の存在を知らず、これは結構なレア曲だということが発覚。

残念ながらその映画はサントラ盤のアルバムが出ておらず、CDやLPを買ってその曲を聴くことはできない。となると、もうその映画を観てみるしか、その曲の存在を確かめる方法はなさそうだ。ちなみに、これがその映画の挿入曲。問題の曲は、5曲目。

"I'VE GOT YOUR PLEASURE CONTROL"
Performed by Simon Harris

"GRAFFITTI LIMBO"
Performed by Michelle Shocked

"TEARS"
Performed by Frankie Knuckles

"YOU MADE ME"
Performed by Shakespear's Sister

"SIMPLE WORDS"
Performed by Difford & Tilbrook


"ANSELMA"
Performed by Los Lobos

"WITHIN THESE WALLS OF WITHOUT YOU"
Performed by Difford & Tilbrook

"TONGUED IN THE WOODS"
Performed by Jools Holland

"THIS GUY'S IN LOVE WITH YOU"
Original recording by Burt Bacharach
Re-recorded by Tom Blades

"ASSASSIN OF LOVE"
Performed by Willy DeVille

"ELECTRIC MOON"
Performed by Shakespear's Sister

"HEAD AND HEART"
Performed by John Martyn

"JE SUIS TOMBE"
Performed by Carmel

"WE'RE THROUGH"
Performed by Jools Holland

というわけで、DVDを買ってみた。もう20年も前の映画で、DVD化されてからも6年も経つ作品なので、そこそこお手頃な値段で入手。まずは、映画自体について少しだけ書いてみよう。これから観てみようというスクイーズ・ファンの方もいらっしゃるだろうから、ストーリーについてはなるべく触れないようにするよ。

主人公を演じるのは、デクスター・フレッチャー(Dexter Fletcher)。イギリスのテレビや舞台を中心に活動していた人らしいね。ヒロイン役は、アイオン・スカイ(Ione Skye)。結構いろんな映画に出ているようだけど、彼女のことも僕は知らなかった。DVDのジャケットに名前が載っているあとの二人は、いくつかの映画で観たことあるよ。主人公の義兄役のジョナサン・プライス(Jonathan Pryce)と、ヒロインの恋人役のジェイムズ・スペイダー(James Spader)。

お話自体は、まあそれほどどうってこともないラブストーリー。89年当時は、主人公が自宅のパソコンを駆使するところが新しかったんだろうけど、さすがに今見るとでっかいCRTのモニターと、プログラムを起動するのにいちいちフロッピーディスクを差し込んだりするところが時代を感じさせる。削除したデータがゆっくり溶けるように画面から消える、とか。

いまいち感情移入しづらいところや、「こんなにうまくいくわけないだろう」という御都合主義的なところも沢山あるけど、イギリス映画らしい皮肉なユーモアもそこかしこに散りばめられていて、そこそこ楽しめる。あとは、きっとこれがあるからこのDVDが長い間廃盤にならないんだろうなと思える、これでもかというほどのベッドシーンと入浴シーン(笑)

ジョー・ジャクソンの『Beat Crazy』やカルトの『Electric』が主人公のレコードコレクションの中に確認できるが、それらが劇中でかかることはない(むしろ、カルトのレコードは主人公のインテリジェントでない面を象徴するように使われたりしている)。

さて、劇中曲だ。実は、最初に通して観たときには、件の「Simple Words」がどこで使われているのか全くわからなかった。更に言うと、自分が知っているはずの「Within These Walls Of Without You」ですら、かかっていることに気づかなかった。ストーリーを追いながらとはいえ、結構集中して出てくる曲は全部聴いていたつもりだったんだけど。

「おかしいな。出てこないな」と思ってるうちに、1時間34分の映画は終了。エンドロールのバックに流れたのが、上の曲目リストで一番最後にあるジュールス・ホランドの「We're Through」だというのはもちろんわかったけど、ジュールスのもう1曲もよくわからなかった。彼のアルバムを全て押さえているわけじゃないけど、そもそもこんなタイトルの曲あったっけ。

そんなはずはないと、今度はリストとペンを手に、もう一度最初から観てみた。まず、主人公が最初にヒロインと出会うパーティーでガンガンかかっているのが「I've Got Your Pleasure Control」だね。タイトルが歌われているんで、それはわかる。

ところが次からが難しい。リストに載っている曲以外にも、この映画用に作られたと思しきインスト曲がいくつか入っているようで、ちっともわからない。ミシェル・ショックトの曲は多分さっきかかったあれなんだろうな、という程度。

シェークスピアズ・シスターズの「You Made Me」がわかったので、さあ次だ、と思いながらじっくり観ていると、ようやくわかった。どのシーンなのかは楽しみに観る人がいるかもしれないから秘密にしておくけど、サビらしき部分がちらっとかかる、わずか9秒ほどのシーン。

BGMとして使われていて、本当によく耳をすまさないと聴こえないぐらいなので、アップテンポの曲だということ、グレンが歌っていること、サビ(?)の部分に「Simple Words」という歌詞があること、しかわからない。

まあそれでも、レコーディングされていながら、まだ公式には世に出てきていないスクイーズ(ディフォード&ティルブルック)の曲が存在することは確認できた。そのうち、あの頃のアルバムが全部デラックス・エディションとして再発されるときに収録されることを期待していよう。

映画に戻って、更に観ていると、ロス・ロボスの「Anselma」がこれも小さなボリュームでちらっとかかる。ドラマ中盤で、ストーリー展開が大事な場面が続くから、会話や口論の後ろで静かにかかっているケースばかりだね。ということは、次の「Within These Walls Of Without You」も…

やっぱりそうだった。主人公が義兄と話し合うシーンのBGMに使われていたよ。今度は9秒とかじゃなくて、わりと長く使われていたのに、一回目に観たときは気づかなかった。曲に気をつけていたつもりでも、どうしてもストーリーを追うために台詞に耳が行ってしまっていたんだろうね。

ジュールスの「Tongue In The Woods」(らしき曲)は、おそらくその後(すぐ後じゃなく、いくつかの映画用のインストにまぎれて)使われていたメロウなピアノ曲だろう。そうだとしたら、その曲はその後も何度か使われていたね。

ちなみに、映画用のインスト曲を書いているのは、チャズ・ジャンケルだった(イアン・デューリー&ザ・ブロックヘッズの、というのと、「愛のコリーダ」の作曲者の、というのと、どちらにひっかかる人が多いだろうか。まあ、どっちにしても30年ぐらい昔の話だけどね)。


World Of His Own.jpg曲の確認をしようと思って、しばらく聴いていなかったCDを引っ張り出してきた。せっかくだから、簡単に紹介しておこうかな。まずは、「We're Through」が入っている、ジュールス・ホランドの90年のアルバム『World Of His Own』。彼のファースト・ソロ・アルバムと書かれることもあるけど、正確には、スクイーズを脱退する81年に『Jools Holland And The Millionaires』を出しているから、それは間違い。僕は聴いたことないけど、84年にももう一枚出しているみたいだし。

90年といえば、『Frank』でジュールスがスクイーズに復活した直後だから、このアルバムにもスクイーズのメンバーが総出演。グレンとクリスはもちろん、ベースにキース・ウィルキンソン、ドラムスはこの後もずっとジュールスと行動を共にするギルソン・レイヴィス。

映画に使われている「We're Through」は、キム・レズリーという女性とのデュエットで、作曲クレジットはHolland/Difford。クリスはギターとコーラスでも参加。まるでこの映画のストーリーを追って書かれたかのような歌詞は、クリスにしては単純な言い回しばかりだけど、それでも各ラインできっちり韻を踏んでいるところはさすが。

きっと一般的にはスティングが一曲に参加していることが話題のこのアルバム、ジュールスのアルバムらしい楽しさ満載の好盤なので、興味がある方は是非どうぞ。

Love's Crashing Waves.jpgもう一つ、ディフォード&ティルブルックの「Within These Walls Of Without You」が最初に発表された、アルバム『Difford & Tilbrook』からのファースト・シングル「Love's Crashing Waves」について。このシングル盤は、1月31日の記事の18番目に載せたね。僕の持っている7インチ盤はその2曲しか入っていないけど、12インチ盤には表題曲のExtended Remixというのが追加収録されているらしい。それって、『Piccadilly Collection』に入っているリミックスバージョンと同じなのかな。でも、『Piccadilly Collection』のは3分ちょっとしかないはずだから、とてもExtendedとは呼べないよね。じゃあやっぱり別のバージョンだ。やれやれ、次に探すのはこの12インチか。
posted by . at 12:42| Comment(4) | TrackBack(0) | ビデオ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2009年05月24日

熟成ライヴとおまけCD - Nick Lowe

初めて買ったニック・ロウのレコードは、84年の『Nick Lowe And His Cowboy Outfit』。今の目で見れば、彼の作品中でも決して高く評価されているアルバムではないけれど、僕はそれですっかり彼の音楽にのめり込むことになってしまった。急いで当時唯一のベスト盤『16 All-Time Lowes』を買い、それを何度も聴いて参考にしてから、シングル盤も含めてどんどん過去盤を漁りはじめた。

そういう訳なので、僕にとってそのベスト盤はちょっとした思い出のアルバム。特にA面の怒涛の名曲の流れは、後に知るどのオリジナル盤よりも強力に彼の音楽を印象付けた。ラックから引っ張り出してきて聴くことはもうあまりないけど、あの曲順は今でも自分の耳と体に染みついている。

86年には、その『16 All-Time Lowes』の続編となる『Nicks Knack』が出る。名盤の誉れ高い『The Rose Of England』の翌年なのに、何故かそのアルバムからは1曲も選ばれず、それ以前のアルバム群から、『16 All-Time Lowes』の落ち穂拾いみたいな曲ばかりが収録されていた。当時はそんなことには気づかなかったけど、今から思えば相当マニアックな選曲のベスト盤。

CD時代の89年になって、その2枚のベスト盤を総括(と言っても、マニアックな『Nicks Knack』とは2曲しか重複しない)+『The Rose Of England』から多数+当時の新譜『Pinker And Prouder Than Previous』から1曲、という無難な選曲のベスト盤『Basher』が出る。さすがにもうその当時までには全てのオリジナル・アルバムを持っていた僕は、それは買わなかった。今に至るまで、僕が持っていない唯一のニックのオフィシャル・アルバムかも。

その10年後の99年には、レアな曲やライヴ録音を多数含んだ4枚組の豪華ベスト盤ボックスセット『The Doings』。当時の新譜『Dig My Mood』の12曲から9曲も再録するという酷い偏りはともかく、ニックのソロ活動の全貌を網羅するには充分すぎる内容だった。全86曲中半数以上が既に持っている曲だったけど、そんな魅力的な箱を僕が買わないわけにはいかなかった。まさか、そのわずか3年後にまた別の選曲の2枚組ベスト盤『Anthology』が出るとも知らずに。

一体どういう経緯でそんな時期にそんな形態で出ることになったのかよく知らない『Anthology』。またしても前年の『The Convincer』からは全く収録されず、どちらかというと『The Doings』から大量のレア曲やライヴ録音を省き、とってつけたようにブリンズリー・シュウォーツ時代の2曲を冒頭に配し、最後にロン・セクスミス作「Secret Heart」の札幌でのライヴ録音を足したという、どうにも中途半端な内容。まあ、誰もが4枚組を買うわけじゃないから、手頃なサイズのベスト盤というのも流通させておかないといけなかったんだろう。


Quiet Please.jpg Nick Lowe 『Quiet Please... The New Best』

と、普通のブログなら余裕で一記事分にはなる前置きに続いて今日紹介するのは、今年3月にまた出たニックのベスト盤、『Quiet Please...』。

内容的には、『Anthology』からいくつか曲を足したり引いたりし、『The Convincer』と07年の最新作『At My Age』から数曲を加えたという感じ。プロデューサーが書いたライナーによると、ニック自身が書いた曲だけを集めたものなので、「Switchboard Susan」や「7 Nights To Rock」や「True Love Travels On A Gravel Road」はあえて入れていないというのがこだわりらしいけど、そもそもその3曲、『Anthology』にも入ってないし。ニックの有名曲を年代順に並べたらこうなりました、という程度の選曲にしか僕には見えない。

ニックのソロ時代にこだわるなら冒頭は「So It Goes」〜「Heart Of The City」で開始。ブリンズリー時代も入れるならその前に「Peace, Love And Understanding」を入れる。その後の曲は年代順に適当に並べ、一番最後はその当時の最新作から(あるいはその一つ前のアルバムから)何曲か配置。という定型のようなものが89年の『Basher』以来ずっと続いていて、冒頭に書いた『16 All-Time Lowes』の曲順の妙を知る身としては、また一つつまらないベスト盤が出たな、という感想を持たざるを得ない。2枚に亘る全49曲、155分というのも、ちょっと普段聴くには多すぎる分量だし。沢山入れればいいってもんじゃない。

それでもなんとか褒めるところを探すと、ジョン・ハイアット、ライ・クーダー、ジム・ケルトナーと組んだスーパーグループ(笑)のアルバム『Little Village』から初めて1曲収録したのと、そのアルバム用の別の曲を一人で弾き語ったデモ「Don't Think About Her When You're Trying To Drive」が入っていることぐらいか(リトル・ヴィレッジはシングル盤まで集めたのに、このヴァージョンは知らなかったと思ったら、『The Doings』用に再録したものらしい)。あと個人的には、一番最初に買ったアルバムからの大好きな曲「L.A.F.S.」が初めてベスト盤に収録されたのが嬉しかった。

あれこれ文句書いてるけど、まあそれは何回もベスト盤を買わされてる側からの言い分であって(毎回ちょっとずつ珍しいのを入れやがって)、今までニック・ロウを聴いたことがないという人にはちょうどいい入門編なのかもね。彼のオリジナル・アルバムは何枚かを除いて廃盤だけど、中古屋ではプレミアムがつくどころか逆に投げ売られてるから、これ聴いて気に入った曲があれば、それが収録された時代のアルバムを探せばいいし。


と、更に普通のブログの一記事程度の分量でこの3枚組アルバムの最初の2枚分の紹介を終え(すみませんね、いつも長くて)、あとは最後の1枚のことを書こう。上に載せた、今のニックがテレビに映った昔の自分を観ているというジャケが象徴しているように、僕が文句ばかり書いた今回のベスト盤の主役は、この3枚目のDVD(それが付いてるのは限定生産らしいけど)。CDの方はおまけだと思えばいい。

DVDの内容は、07年10月のベルギーでの1時間のライヴをフル収録したものと、9曲のPV。ライヴは(ステージでの彼の語りによると)もともとアコースティック・ソロの予定だったのを、次週ロンドンで行われるコンサートのリハーサルとして(それは冗談か)『At My Age』の録音メンバーを呼び寄せてのバンド・セットに変更したとのことで、冒頭5曲とアンコールが彼一人、残りが、ゲライント・ワトキンズ、ボビー・アーウィンらを中心とした(今回はゴールド・トップと名付けられた)バンドでの演奏。

僕が最後に彼を直接観たのは確か94年の渋谷かな(あの時も確か偶然日本への出張と重なったんだった)。それから13年も経ってるんだから当然だろうけど、58歳のニックはなんだか実際の年齢よりずっと歳を取ってるように見えるのでちょっとびっくり。でも、ギターを胸の上の方に抱え、長い指と親指で包み込むようにフレットを押さえるギターの弾き方を見て、ああ同じ人だ、全然変わってない、なんて妙な感想を持ってしまった。

ステージに登場してまず弾き始めたのは、2年前の『At My Age』の記事で僕が一番のお気に入りと書いた「People Change」。それから、「Soulful Wind」「What's Shakin' On The Hill」と、作られた時代は違えど今のニックの枯れた味わいの歌声が似合う名曲が続く。

更に時代を遡った「Heart」や「All Men Are Liars」も、微妙なメロディーラインや歌詞や曲調を変えて、最近モードのニック・ロウ風の味付けに変えられている。こういうのもいいね。

「Thanks folks!」という挨拶を聞いて、そうそう、この人はこう言うんだった、と思い出してちょっと嬉しくなる。ちなみにグレン・ティルブルックは「Cheers loves!」だよね。

続く「Without Love」からメンバーが登場。ボビー・アーウィン、太ったねー。ゲライント・ワトキンズは昔から爺さんみたいな風貌だったから、そんなに違和感ないけどね。その初期の名曲に続けて演奏された近作からの「Has She Got A Friend?」を聴いて、過去の名曲にひけをとらない作曲クオリティーをこの人は保ってるなあと改めて実感。

新作からの「I Trained Her To Love Me」を終え、ボビーが膝をスティックで叩いてカウントを取って始まったイントロを聴いて、全身にびっしり鳥肌が立つ。こんなに円熟した「Cruel To Be Kind」なんて。ギターのジョニー・スコットがせっかくのソロをちょっととちるのが残念。

“最近のニック・ロウ・モード”の代表格みたいな「You Inspire Me」がそれに続く。ゲライントのウーリッツアーがいいね。更に新作からの「Long Limbed Girl」を歌い終えたときに「今のはピンク・フロイドの古い曲」なんてジョークを。

アコーディオンに持ち替えたゲライントが超かっこいい「Shting-Shtang」の後鳴り止まない拍手と歓声。ニックに「皆君のことを愛してるよ」と声をかけられたゲライントがまたウーリッツアーの前に座り、次は「Rome Wasn't Built In A Day」。ここでのソロも滲みる。本当にこういう地味ながらクールなプレイが決まる、いぶし銀みたいなピアニストだね。

無伴奏で「Well, well, well〜」と歌いだすイントロがこれまた超かっこいい「I Knew The Bride (When She Used To Rock And Roll)」。ロックパイルやヒューイ・ルイス&ザ・ニューズをバックにした演奏ももちろんよかったけど、この現在のバンドが醸し出すまろやかな雰囲気がまた格別だね。

だから、本編最後の「(What's So Funny 'bout) Peace, Love And Understanding」も、最近のこのしっとりとしたスロー・ヴァージョンでなく、このゴールド・トップならではの、ブリンズリー・シュウォーツやアトラクションズとはまた一味違った新しい解釈による演奏を聴きたかったと、贅沢な望みを持ってしまった。これはこれで素晴らしいクロージングなんだけどね、もちろん。

アンコールの拍手に応えてニックが一人で登場。アコギ一本によるスローなヴァージョンに生まれ変わった「Heart Of The City」と、最後を締めるにはあまりにも渋すぎる(でも格好いい)「Beast In Me」で終了。たった一時間とは思えないほど、見終わった後に充実感が残る内容。2枚組CDの方と違って、一時間だから繰り返して観てもあんまり時間食わないし。複数使っているカメラの解像度や色味がいちいち違うので観づらくて、映像のクオリティーはいまひとつだけど、収録内容には大満足のDVD。

9曲のPVの方はさらっと流そう。「Cruel To Be Kind」とか「I Knew The Bride」とか、どこかで見たことあったビデオもあるけど、ほとんどが僕は初めて観るもの。「I Love The Sound Of Breaking Glass」と「No Reason」はスタジオ版とちょっとヴァージョンが違う。このビデオのための新録だろう。それらや「Cracking Up」みたいな演奏シーンを素直に映したものはいいんだけど、いかにも80年代の低予算PVといった作りのものは、ちょっと何度も観る気にはあまりなれない。女の子の目からビームが出る「Ragin' Eyes」とか、最後にニックが逆さ吊りになって終わる「All Men Are Liars」とかね。

滅多に見られないロックパイルの演奏シーンや、ぎこちなく演技するデイヴ・エドモンズなど、それなりに見所もあるから、まあこれはこれでよかった。ただ、曲によって縦横のアスペクト比が違うのをそのまま収録してあるから、曲ごとにモニターの方を調整しないと画像が縦に伸びたり横に広がったりする。僕のテレビのせいなのかな。ちょっと面倒。

久々に画像ほとんどなしの長文記事を書いたな。これだけ書けばもうちゃんと読んでる人もいないだろう(読者を振り切ってどうする)。最初に聴いてから四半世紀もの間ずっと追いかけてきたこの人のことなら、なんだかホームグラウンドに戻ってきたような気持ちでいくらでも書けるよ。でも今日はこれぐらいにしておこうね。
posted by . at 16:00| Comment(8) | TrackBack(0) | ビデオ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2008年09月21日

骨太ライヴ - Bob Mould

今年の頭に入手して以来、もう半年もの間、何度も記事にしようとしては他の話題に先を越され続けている、ボブ・モウルドの『District Line』というアルバムがある。この週末こそそれについて書こうかなと思ったんだけど、今日は珍しく2時間ほどぽかんと時間が空いたので、これも数ヶ月前に買ったものの、時間がなくて封さえ開けていなかったこのDVDを観ることにした。

Circle Of Friends.jpg Bob Mould 『Circle Of Friends』

05年10月、ワシントンDCにある9:30クラブでのライヴを丸ごと収録したもの。冒頭に10分ほどのメンバーのインタビューがあって、あまりよく知らないメンバーそれぞれの人柄なんかがちょっと窺える。この部分は別チャプターになってるから、飛ばそうと思えばすぐコンサートのチャプターから観ることもできる。こういうインタビューとかって、普通は特別メニューとして収録されていることが多いけど、そういうのはなかなか億劫でわざわざ観ることが少ないんだよね。その点これはいい作り方だと思うよ。

さて内容。黒基調のステージに、メンバー4人が思い思いの黒いシャツ。ボブのメタリックブルーのストラトキャスター、ジェイソン・ナーダシー(Jason Narducy)のメタリックレッドのプレジション・ベース、リチャード・モレル(Richard Morel)の真っ赤なキーボード、それぞれの色がよく映える。ヴィジュアルにはこだわるボブらしい、シンプルだけどくっきりとした印象が目に残るいいステージ。

綺麗なライティングのステージをシンプルに撮るだけで、こんなに優れたライヴ・ヴィデオになるという見本のような作品。こないだガチャガチャした演出のELPのヴィデオを観たばかりなので、特にそう思える。白基調のステージをシンプルに撮っただけのトーキング・ヘッズの『Stop Making Sense』は、ライヴ・ヴィデオの名作として有名だけど、この作品はそれに匹敵すると僕は思う。性急過ぎないシーンの切り替えも絶妙で、トータル2時間弱の何の変哲もない演奏シーンを観ていても全然飽きない。

スキンヘッドに無精髭がすっかり定着したボブ。僕は彼の動く姿を観るのはこれが初めてなんだけど、こんな大男だとは思わなかった。その彼がぶっとい腕でもってザクザクと骨太な音でかき鳴らされる轟音ギター。彼の曲を大いに特徴付けている、爆音の中に埋もれた煌くようなメロディーを奏でるキーボード。ブリブリと小気味よく鳴るベースに、これはよほど音のいい会場に違いないというのが聴いて取れる、滅茶苦茶タイトなドラム。この、ライヴCDにしても惜しくないと思える格好いい音をプロデュースしているのは、最新作『District Line』でもボブをサポートしているドラムスのブレンダン・キャンティー(Brendan Canty)。あ、彼はフガジのドラマーだったんだね。

05年のライヴだから、当然その年に出た『Body Of Song』からの曲が中心なんだけど、出だしからいきなりシュガー(Sugar)時代の名作『Copper Blue』のオープニング三曲「The Act We Act」、「A Good Idea」、「Changes」三連発。これは、しびれるね。

「Changes」が終わったときに「ハロー、サンキュー」と言った後は、約1時間のライヴ本編が終わるときにもう一回「サンキュー」と言うまで、一切MCなし。ほとんど全ての曲をメドレーのように演奏している。すごい体力だね。前の曲の終わりのフィードバックノイズがまだ鳴り響いているうちにドカドカドカドカと斬りこんでくるドラムの格好いいこと。タム、フロアタム、スネア、バスドラそれぞれ1個ずつ、それにシンバル類だけという極めてシンプルなドラムキットなのに、とにかく手数が多くて乗れる。このドラマーいいねえ。あとでフガジのCDも聴き直してみよう。

途中にハスカー・ドゥ(Husker Du)時代の曲もふんだんに挟み、本編ラストはまた『Copper Blue』からの「If I Can't Change Your Mind」。同じく『Copper Blue』からの「Helpless」で始まった二度のアンコールは、ハスカー・ドゥの「Makes No Sense At All」などの後、またしても『Copper Blue』からの「Man On The Moon」で締め。よほどあのアルバムが好きなんだね。もともとハスカー・ドゥはかじる程度にしか聴いていなかった僕がボブ・モウルドのことを再認識するきっかけとなったアルバムだから、僕も大好きなんだけどね。

途中何曲かスローな曲が入るが、基本的にはハイスピードの曲が立て続けに繰り出される。テレビ画面を観ているだけのこちらも膝頭を両手でバシバシ叩きながら乗りまくっているのに、何故か観客席はちょっとおとなしめ。もちろん皆揺れてるんだけど、普通この演奏を目の前で観たら大モッシュ大会だろうに。と思っていたら、途中ちらっと、陶酔しきった表情の、ハスカー・ドゥ世代と思しき女性が映る。そうか、皆かれこれ四半世紀も彼のことを聴いてきているんだね。それじゃモッシュは無理か。

それでふと思ったんだけど、80年代からのハスカー・ドゥのファン、90年代からのシュガーのファン以外に、シュガー解散後もコンスタントにアルバムを出し続けている彼のことを追いかけているファンはいるんだろうか。この人って、今はどういう位置づけなんだろうね。

僕にとっては、(実力派の)7番打者って感じ。4番打者の大砲ブルース・スプリングスティーンとか、3番打者のチャンスメーカー、グレン・ティルブルックとかみたいにいつも僕の脳内で目立っているわけじゃないけど、期待していない下位打線なのに忘れた頃にシブいヒットで繋いでくれるというね(現実世界では残念ながらヒット曲はないけれど)。名脇役好きの僕にとっては、その位置は結構重要かも。今日みたいに、ちょっとしたきっかけで一回聴いてしまうと、何枚も続けて彼のアルバムを聴いてしまう羽目になる。今このPCの両脇に彼の18枚のCDが山のように積み上げられていて、さっきから順番にプレイヤーに乗っているよ。そういう、中毒症状を引き起こさせられる人。

ニルヴァーナとも違う、ジーザス&メリーチェインとも違う、徹底した、でも暑苦しくない轟音と、ベトベトにならない甘さのメロディーの融合。ズブロッカをストレートでやるときに鼻にクンと来る甘い香りを思わせる。体内に摂り込んだときに腹にズシンと来るところもね。あと、誰も指摘してないと思うけど、この人の声質って、ポール・ウェラー激似だと思う。

先述の本編ラスト「If I Can't Change Your Mind」演奏中に降ってくる銀色の紙吹雪が、このシンプルなステージにあって唯一と言っていいほどの演出。上にも載せたDVDジャケのシーンがそれなんだけど、まるで雪の中で演奏しているような、一種幻想的なシーン。骨太な演奏に相まった、きりりと男前な出来のこのヴィデオを象徴している。

これは繰り返しの視聴に耐えるヴィデオだと思う。観ていると、この人のコンサートに無性に行きたくなってくるよ。日本盤は出ていないけど、僕の買ったUS盤も、リージョン0のNTSC。普通の日本のDVDプレイヤーで観られるはず。

ありそうで出ていない、ハスカー・ドゥからシュガーを経てソロに至る彼のキャリアを総括するようなベスト盤を、yascdみたいな形で作ってみようかなと思っていたこともあったけど、この“ボブ・モウルド総集編”みたいなライヴ・ヴィデオは、その役割を果たしているかも。これ読んでボブ・モウルドって聴いてみたいなと思ってくれるような奇特な人がいるなら、このDVDはかなりお薦め。2000円ちょっとで買えるみたいだし。

Copper Blue.jpg聴いてはみたいけどDVDはちょっとなあ、と思う人は、さっきから何度も名前を出している彼の92年のシュガー名義のアルバム『Copper Blue』から入ってみるのもいいかもしれない。基本的に過去の名盤みたいなのは紹介しないことにしている僕のブログだけど、そんなどうでもいいルールなんて放っておいていいぐらい格好いいアルバムだよ。リンクしたアマゾンでもそんなに高くはないけど、○ックオフとかの適当な中古屋で探せば、うまくいけば相当こなれた値段で見つかると思う。僕も何度かリアル・グルーヴィーの捨て値コーナーで見かけて、そのたびに(もう持ってるのに)手を伸ばしそうになったものだ。

何度も書くけど、こんなに上出来なヴィデオを観てたら、ほんとにこの場に居合わせたくなるよ。一時は難聴のためにもうコンサートはやらないなんて噂も出ていた彼だけど、まだライヴ活動は続けてるみたいだね。よかった。生で観たいなあ。日本に来てくれないかなあ。
posted by . at 21:23| Comment(6) | TrackBack(1) | ビデオ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2008年08月26日

フェルメール展とELP

上野の東京都美術館でやってるフェルメール展に行ってきた。昔、ヨーロッパを旅行したときに彼の作品を何点か観たことがあって、それ以来好きな画家だったから、今回東京でまとめて観られるというので、小雨の降る中を出かけることにした。

うちから上野までは電車を何本か乗り継いで行くんだけど、今日はそのほとんど全ての路線で人身事故による遅れが出ていて、なんとなく幸先の悪い日だとは思ったけど、平日に休みを取って行ける日もそうそうあるもんじゃないので、気にせず遠回りして決行。

Vermeer.JPG


平日の昼間だというのに、結構な人出。美術館なんてずいぶん久し振りだけど、こんなに人がいるもんだっけ。あんまりよく調べずに行ったんだけど、40点弱の展示のうち、フェルメールの絵は7枚だけ。でも、僕の好きな「小路」という絵も観られて満足。その他30点ほどは、人だかりの少ないものだけを選んで観て廻った。

上野にはいくつも美術館があるようで、道すがら『黄金の国ジパングとエル・ドラード展』というポスターを見てしまった。話せば長いんだけど、たまたま昨日寄ったCD屋でかかっていたBGMが何故かピンクレディーのベスト盤だったもんで、そのポスターを見てから東京都美術館に入館するまで、頭の中でずっと同じ曲がぐるぐる回ってしまっていた(僕の説明にしてはあんまり長くなかったね。でもほら、現在35歳以上の人は、曲名書かなくてももう僕と同じ曲が頭の中に流れ始めてしまったでしょ?)。

せっかくのフェルメール展、ピンクレディーを脳内でぐるぐるさせながら観るのもなんだかなぁと思い、無理矢理違う曲のことを思うことにする。えーと、久し振りの美術館なんで…そうだ、「展覧会の絵」にしよう。

Pictures At An Exhibition.jpg Emerson, Lake & Palmer 『Pictures At An Exhibition』

というわけで、脳内BGMを無事変更し、7枚(+α)の絵を堪能して、人だかりの東京都美術館を後にした。

と、今度は、「展覧会の絵」が頭から離れなくなってしまった。ここはひとつ、最近流行の自分内エコ活動の一環として、今年の頭に安値で買ったはいいけどまだ観ていなかった、ELPの『Pictures At An Exhibition』のCDとDVDの2枚組の、DVDの方を観ることにしよう。久々のこのブログでのプログレネタにもなるし。

そもそもこれを安値で入手できた理由は、DVDがPAL方式だったから。でもこの盤、三方見開きの紙ジャケのどこにもレコード会社名が書いてないぞ。CDの盤面には日本のビクターの名前とVICP-62116って日本盤ぽいナンバーが書いてあるし、DVDの方はマンティコア・レーベルのマークは書いてあるけどナンバーも何もないな。これ、ほんとに正規盤なのかな。

しかも、DVDを観てみると、いきなり日本語字幕付き。PALなのに。プログラムの真ん中あたりで一旦画面が暗くなるところからすると、これはきっと日本のレーザーディスクからのコピーだね。確かこのビデオ、海外では「展覧会の絵」だけしか入ってないけど、日本盤は<完全版>とかいって三曲追加されてたんだよね。このDVDにもその三曲入ってるし。

1時間半に及ぶこのビデオ、いかにも70年代初期らしく、やたらとソラリゼーションとかハレーション満載のサイケデリックな映像があちこちにちりばめられている。というか、画面全体ピンクに空色とか、そういう何が映っているのか判然としない画像が何分にもわたって延々と続く。たまにアクセント程度に使われるだけならともかく、これはちょっときついね。

そうでもしなければ単調で観ていられないような映像じゃないんだよ。キース・エマーソン(Keith Emerson)のステージパフォーマンスは話には聞いていたけど、オルガンをガッタガッタ揺らして、挙句の果てに倒したオルガンの下敷きになりながら弾いたり、そのオルガンにナイフを何本も突き立てたり、シンセサイザーに繋がってて、触ると“うにょーん、びにょーん”って音の鳴る変な板みたいなのを股間でしごいたり、とにかくこれでもかというほどの激しいアクション。スタインウェイのグランドピアノの上から手を突っ込んで、弦を直接弾いてるのを見て、「ああ、ピアノって弦楽器だった」と思ったりも。

このビデオ収録後10年もしたら、体型的にはウォーリー・ブライソンと同じ運命を辿ることになるグレッグ・レイク(Greg Lake)も、この時点ではかなりスマートで格好いい。しかも、これがもし女の子だったらちょっと僕好みかも、と思うほどの整った顔つきに、否応なしにプログレ界を代表してしまっているあの歌声(『宮殿』と初期ELPには彼の声しか入ってないんだもんね)。このビデオを観て、ギターも結構上手いんだなと再認識。

日本盤ビデオのボートラ三曲のうち最後の一曲「Knife Edge」で、いかにも70年代風の7分強に亘る退屈な(失礼)ドラム・ソロを披露しているカール・パーマー(Carl Palmer)が、そのソロの途中で、いかにも70年代風のぴっちりしたシャツを窮屈そうに脱ぎ捨てているところもまたご愛嬌。でも、このビデオを観て、少なくともライヴに於いては、このバンドの要はこの人だったのかなと思ったりもした。

ライヴ・ヴィデオとしては、今の目から見ると、これはかなりつらい。NTSC⇒PAL変換のせいか、ソラリゼーションの部分では特にMPEG由来のブロックノイズだらけになって見てられないし。今となっては貴重なパフォーマンスなんだから、もしこれのオリジナルのフィルムが残っているんなら、是非この気の遠くなってしまうような特殊効果抜きで観てみたいところ。

というわけで、付属のDVDは多分もう観返すことはないだろうけど、ELPの代表作のひとつであるCDの方は、これからも何回も繰り返して聴くことになると思う。思えば、中学生のときにFMでエアチェックしたこのアルバム、当時はなんだか音楽の授業の延長みたいに思えてしまってあまり聴くことはなかったけど、今の耳で聴いても(冗長な部分があるのは否めないものの)キャッチーなクラシックのフレーズをパクった(とか言っていいのかな)、実によくできた大衆音楽だと思う。

ところで、今日帰ってきてこれを観て気づいた。フェルメール展を観ていたときにずっと僕の脳内を回っていた「展覧会の絵」だと思っていた曲は、CDのラストに入っている「Nutrocker(胡桃割り人形)」だった…
posted by . at 22:38| Comment(12) | TrackBack(2) | ビデオ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2007年03月03日

PSBがやって来る!

NZの音楽プロモーター(日本で言うウドーとかスマッシュとか)のサイトを何の気なしに見ていたら、なんとペット・ショップ・ボーイズが来る! 今月29日、お馴染みのセイント・ジェームスにて。すぐさまチケットを押さえたよ。あとで彼らのオフィシャルサイトを見てみたら、このNZのチケットは昨日発売になったばかり。なのに二階席はさっきの時点で既に売り切れ。そりゃそうだろう、腐っても鯛。いかに最近ヒット曲が出てないとはいえ、あんな小さなハコでPSBが観られるなんて! 僕は当然二階席など見向きもしないで、一階フロアの立見席だ。ようし、こいつは気合入れて前に行くぞ。


…これだけの記事にしてもよかったんだけど、せっかく気分が盛り上がったので、半年も前に買ってまだ観てなかったライヴDVDを引っ張り出してきた。

Montage 「Montage The Nightlife Tour」

99年から00年にかけての、アルバム「Nightlife」発売に伴ったツアーの記録。DVDとしては01年に発売になったのだが、すぐに廃盤になり、05年に廉価で再発(僕はその時に買った)。また廃盤になっていたんだけど、さっきHMVのサイトを見たら、ちょうど今月の14日にまた期間限定で再発されるらしい。偶然とはいえ、タイムリーな記事になったというわけだ。ちなみに、アマゾンにはその辺の情報が全く載っておらず、アフィリエイトしようにも飛んでいく先のページがない。一応上のリンクはHMVのページに飛ぶようになってるんで、この記事を読んで興味の涌いた人は見てみて。

1時間50分に亘るコンサートと、「Nightlife」からのシングル曲3曲のプロモーション・ビデオ、それに隠しトラックが1曲という内容。コンサートの選曲は、23曲中「Nightlife」から6曲と最多なのは当然として、各時代を代表するヒット曲がちりばめられている。デビュー曲「West End Girls」で幕を開け、代表曲「Go West」でアンコールを終えるというのが、何種類か出ている彼らのライヴビデオを参考にする限りでは、ありそうでなかったパターン。個人的には、隠れた名曲「Shameless」が入ってるのが嬉しい。

例によって奇抜な衣装(この時はまっ黄色のツンツンヘアーのウィグに、焼き海苔みたいな眉、テカテカの素材のコートに、ストライプの袴)と、ステージ後方の巨大スクリーンを使った、ビジュアル的にも楽しい(と思われる)ステージ。PSBの二人以外のメンバーは、殆ど画面には映らないキーボードとパーカッションの他、全て黒人のボーカリスト5名(女性1、男性4)。想像するとかなりミスマッチなのだが、ゴスペルのような彼らのソウルフルなコーラスが、ニール・テナントの無機質な高音ボーカルにやけに合う。

僕が彼らのライヴで一番楽しみにしている、お馴染みのアコースティック・セット、この時は「You Only Tell Me You Love Me When You're Drunk」、「Was It Worth It?」、「Se a Vida e (That's The Way Life Is)」の3曲。ニールのアコースティック・ギターとパーカッションだけをバックに、先述のゴスペル・コーラスが被さってくるところが最高。いつも違った曲を演ってくれるこのアコースティック・セット、NZではどんな曲を披露してくれるんだろう。楽しみ。

と、コンサート自体は申し分のない内容。今現在で一番最近のツアーの記録だし(HMVによると、去年の「Fundamental」ツアーのライヴDVDが5月に出るらしい!)、これは月末のコンサートのいい予習になると思った。

…なんだけど、正直言って、映像作品としては僕はこれには及第点はあげられない。なにより、映像がうるさすぎる。ステージをまともに映した場面なんて、全部で数分程度しかないんじゃないだろうか(さっき、「と思われる」なんて書いたのはそのせい)。大抵、それぞれの曲のプロモーション・ビデオやその他の画像、なんだかよくわからない幾何学模様などが被せられていて、落ち着いて観ていられない。画面分割や画面の中央でシンメトリーになる効果(なんていうのかな?)もやたらと多く、途中でイライラしてしまったほどだ。わざとかどうか知らないが、複数使っているカメラのうち一台で撮った映像が明らかに解像度が低く、その角度に切り替わるたびに海賊盤ビデオを観ている気分にさせられる。後半のメンバー紹介の際にも、パーカッショニストを紹介している時にコーラスの男性を映すなど、よくわからない編集も見られる。いつもビジュアル面にもかなり気を使っている彼らが、どうしてこんなビデオにOKを出したのか、僕には理解できない。

さっき書いた隠しトラックも、音声は明らかにこのコンサートの時のものなのだが、映像はCGや幾何学模様ばかりでステージは一切映らない。きっと、この曲はコンサートで演奏されたのだが、映像に何かトラブルがあったから、隠しトラック扱いになったのではないかと想像する。

あと、これは珍しくDVDの機能を活かしたマルチアングルと記載されているのだが、1曲分を観ただけでは、その第二アングルは、第一アングルからステージの模様を除いたもの(つまり、関係ない画像や幾何学模様だけが入っている)という、かなり人を馬鹿にしたものだ(あまりに呆れて1曲しか見てないので、もし他の曲がきちんとしたマルチアングルになっていたらごめんなさい)。

うーん、なんだか文句の方が多くなってしまったな(悪口って楽しいよね 笑)。でもさっき書いたように、選曲も演奏も悪くないから、このときのツアーを楽しみたいという人には、これをBGVとして使うか、音声だけを取り出して聴くことをお勧めする。本当は観ていてすごく楽しい彼らのライヴを観てみたければ、まずこれ以外のDVD(再発された「Performance」以外は現在廃盤だが)を先に入手するのがいいと思うよ。

PopArtこのDVDと同時に3月14日に再発になるのが、03年に出たベスト盤CD「PopArt」。前にも書いたと思うけど、この2枚組(今回は3枚組の箱入り限定盤は出ないようだ)は、PSBの入門編として最適。シングル曲と各アルバムからの代表的な曲が網羅されているだけでなく、2枚のCDがそれぞれ「Pop」「Art」と名づけられており、1枚目にはその名の通りポップな曲、2枚目には少しマイナーかつ音楽的に凝った曲、という風に振り分けられている。そして、何より今回の再発で特筆すべきなのは、今までCCCDだった日本盤が、今回のは通常のCDで発売されるらしいということだ。東芝EMI、よくやった。実はこれだけCCCD嫌いと言い続けている僕だが、今手元にある3枚組はEU盤CCCDなんだよ(マレーシアにいた頃、新譜なのに1枚もの並みの値段で売ってたからつい買ってしまったんだ…)。これを機会に、この日本盤に買い換えようかな。いや、3枚目を手放すわけにいかないから、買い替えじゃなく買い増しだね(笑)

うーん、明後日がフォール・アウト・ボーイのコンサートだというのに、なんだか気持ちがペット・ショップ・ボーイズに移ってしまっている。困ったな(関係ないけど、この二組、なんだか似た名前だね。あと、このコンサートのことを知らなければ本当は今日記事を書こうと思っていたのが、バッドリー・ドローン・ボーイ。なんだか最近ボーイづいてるなあ 笑)
posted by . at 19:20| Comment(14) | TrackBack(0) | ビデオ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2006年11月04日

二つ目小僧にも捧ぐ

Roger Watersロジャー・ウォーターズが来る。2007年1月29日、ノース・ハーバー・スタジアム。オークランドで一、二を争う規模の、数万人収容の会場。チケット発売は11月3日、つまり昨日。最初にこの話を知った数週間前には、なんとしてでもいい席を押さえようと張り切っていたのだが、実はまだ今日になってもチケットを取っていない。その理由の一つは、チケットの値段。席によって、プラチナム、ゴールド、シルバー、ブロンズ、アイアンの五段階に分かれており、プラチナム・シートはなんとNZ$399、日本円にして3万円強。一番下の鉄シートでさえ、8千円だ。いかに彼の音楽の主要観客層が40〜50代とはいえ、かなり強気の値段設定だ。それはさておき、僕を躊躇させる要素が他にもある。

今回のワールドツアーの目玉は、上に載せたツアーポスターにもあるように、彼のソロ・ツアーとしては初めて「The Dark Side Of The Moon」を全曲通して演奏するというもの。古くからのピンク・フロイドのファンにとっては感慨深いものがあるんだろうけど、僕にとっては実はそれが最大の躊躇要因でもある。

コンサートに行って何が楽しいかって、「次にどの曲を演るんだろう」、「あ、この曲をこんなアレンジで演るんだ」っていう期待・驚きがあると思う。まさに、先日通ったグレン・ティルブルックのライヴのように、毎日違った演奏曲目で、時には観客からのリクエストに応えながら、っていうのが理想的。それを、いかに名作とはいえ、1時間弱に亘ってかのアルバムをぶっ通しで、しかもレコードのアレンジそのままに演奏されるのは、僕にはなんだかつまらないと思えてしまう。さらに、2000年に出た彼のライヴアルバムを参考にするまでもなく、おそらくその「The Dark Side Of The Moon」全曲の他には、「Wish You Were Here」「Crazy Diamond」「Comfortably Numb」「Another Brick In The Wall」などは必ず演るだろうから、極端な話をすると、今回のコンサートは、そのライヴアルバム「In The Flesh」の曲順を入れ替えたような演奏曲目になるのは目に見えている。

予定調和、っていうのかな。なんだか3万円も払って、最初から最後まで展開が見えているショーを観に行くことに、自分でもびっくりするほど気持ちが萎えてしまっている。もう何年も前からあんなに観たかった彼のライヴなのに。かといって、8千円も払って、数百メートル先から虫を観察するような席には座りたくないし。

そんなわけで、きっと今日もプラチナムシートは前の方からどんどん埋まっていってるんだろうけど、僕は未だに「行こうかな、やめようかな」を繰り返している。きっと誰かが「もう、ろくな席残ってませんよ」って言ってくれるのを待ってるんだろう。


さて、実はこの「The Dark Side Of The Moon」全曲演奏というのは目新しい話でもなく、まずものすごく古い話をすると、1972年にかのアルバムが発表される前のツアーで演奏され始めたのが最初。僕はブートレグを買い漁るほどのピンク・フロイド・ファンではないのでその辺りは文字情報でしか知らないのだが、誰も聴いたことのないあの壮大な組曲が目の前で展開されるなんて、想像しただけで戦慄が走る代物だったと思う。

そして、時代はずっと新しくなり、ピンク・フロイドが事実上最後のツアーを行った1994年に、数回のコンサートでまたこのアルバムを全曲通しで演奏している。その時の模様を収録したのが翌95年に出たライヴアルバム「p.u.l.s.e」であり、同タイトルのライヴビデオだった。

Pulse CD

ちなみに僕が持っている初回盤のCDは、「鼓動」というそのタイトルに相応しく、CDの入った豪華な箱の側面に付いている赤いランプがずっと点滅し続けるという愉快な仕様。この写真でわかるかな?

点滅

これがどういう仕組みになっているかというと、この外箱の中に厚紙製の電池ホルダーが入っており、そこに単三電池x2を入れると、ホルダーに付随した赤ランプが点滅するというわけ。これが分解したところ。

展開図

僕のブログをいつも読んでくださっている方のうち少なくとも一人、こういう組み立てものに目がない人がいるはずなんだけど、あえて名前は出しません。でも僕にはわかります、これ欲しいでしょ(笑)

さっき「事実上最後のツアー」と書いたが、1994年といえば、ピンク・フロイドが今までのところ最新のアルバム「The Division Bell」を出した年で、このツアーはそのアルバムの発表に伴うものだった。この先彼らがその名前でアルバムを発表したりコンサートツアーをすることはまず無いと思われるので、そう書いたわけだ。

ところで、その「The Division Bell」が発売された際に、「私がピンク・フロイドである 世界一正しい新作『対』評」という評論がロッキング・オン誌94年6月号に掲載された。当時僕のお気に入りだった音楽評論家の一人、市川哲史さんによるもので、僕は今に至るまで、あれだけわかりやすく、面白く、的を射たピンク・フロイド評を読んだことがない。さすがに許可も得ずにその文章をここに転載するわけにはいかないので、興味のある方は是非古本屋で該当号を探してもらうか、夜空の南十字星にでもお祈りしてもらうしかない。

とにかく、その文章の要点を書くと、ピンク・フロイドとは実体のない概念のようなもので、その時々のご主人様の志向(嗜好?)によって音もポリシーも雰囲気も変わる、というもの。それによると、この94年度版デイヴ・ギルモア流ピンク・フロイドというのは、かつてロジャー・ウォーターズが表現していた閉塞的・内省的な外観だけをそのままに、でも実は演っている音楽は浅いお気楽なものに変わってしまったということだ。言いえて妙というのはこのことだろう。ロジャー脱退当時、多くのファンが「あんなのはピンク・フロイドではない」と嫌悪感をあらわにしたにもかかわらず、新生ピンク・フロイドのお気楽エンターテインメントはより広い層のファンを獲得したのだから。


二つ目さて、前置きはこれぐらいにして、今回の本題、ライヴDVDの話に移ろう(え、この長文が前置きだったのかって? いや、あの、皆さん逃げないで)。先述した通り、この「P.U.L.S.E」というライヴ映像は、95年にVHSで発売されており、その際のジャケットはCDと同じものだった。それが今回DVD化されるにあたり、まずジャケットから大幅変更された。元のデザインが瞳の周りを海・水滴・魚・精子・卵・鳥・雲・飛行機・砂漠・ピラミッド・砂浜が輪廻転生のように取り巻いているというものだったのだが、今回の新しいデザインは、その瞳を持った眼球が二つ、縦に並んでいるというもの。表ジャケットでは砂浜に。同封ブックレットでは森の中に。これはインパクト大だね。福本豊ならきっとタコヤキと言うはずのデザイン(すみません、一部の人にしかわからない話で)。おそらく日本でもそうだったと思うけど、数ヶ月前はこのDVDがどのCD屋でも一押し商品だったため、ポスターからPOPから、店内をこの二つ目が所狭しと占領していたものだった。

更に、DVD化で大量のボーナス映像が追加され、本編は2時間半弱なのにもかかわらず、収録された映像を全部観ようとすると4時間にも及ぶというとんでもないものになっている。本当はきちんと全編観てからこの記事を書こうと思っていたのだが、さすがにこの忙しい最中に4時間全部観るとなると、記事を書き始められるのがきっと年明けになるので、とりあえず2時間半の本編だけを観てから書いている。あちこちの雑誌記事などを見ると、ボーナス映像にも中々面白そうな素材があるようなので、それはまた追々観ることにしよう。

何から書こうかな。実は自分の中でこのDVDに対して賛否両論が巻き起こってるんだけど、まずは褒めて、それから叱ろうかな。子供の教育みたいなものだ(笑)

まず特筆すべきは、DVD化にあたっての画質・音質の向上。さすがに10年以上前のビデオ素材なので、いかに上手くリストアされたとはいえ、若干のノイズは散見されるし、強調された輪郭が人工的に見えてしまうところもあるのだが、それにしても非常にクリアな画質になっている。

それ以上に驚くのが音。このDVDには、通常のステレオ、ドルビーデジタル5.1ch(448kbps)に加えて、ドルビーデジタル5.1ch(640kbps)という仕様が入っている。ここでは技術的な話はしないが、要は通常のサラウンド音源よりも更に高密度の音で再生できるというわけだ。必ずしもどのDVDプレーヤーでも再生できるという訳ではないらしいが、幸いなことに僕のプレーヤーでは大丈夫だった。

いや、これがもの凄くリアルな音。リアルという意味では、実際にコンサート会場にいてもこれだけクリアにあらゆる音が周りから聴こえてくるわけではないので(通常コンサート会場では全てのスピーカーがモノラル)、これはコンサートの疑似体験とはまた別物と考えた方がいいだろう。例えば、「Shine On You Crazy Diamond」で、「Remember when you were young〜」と歌われたすぐ後に入ってくる例の笑い声が左リアチャンネルから聞こえたときにどれだけ背筋がぞくっとしたことか。

この画質と音だけで、これはおそらく現存する全ての音楽DVDの中でも有数のリファレンス素材になり得ると思われる。オーディオマニア、AVマニア必見(真っ当な方のAVですよ)。

内容について。これは僕がさっき「お気楽エンターテインメント」などと揶揄して書いたことで大体察してもらえるだろうか。実は、さっきの点滅CDを除けば、僕はロジャー・ウォーターズ脱退後のピンク・フロイドのCDは一枚も持っていない。その理由を、これまで書いたのと同じ分量の文章をもって説明することもできるが、それはやめとくね(笑)。

Animals

僕がこのデイヴ・ギルモア版ピンク・フロイドを気に入っていない理由の例をひとつだけ挙げるとすると、例えばロジャー在籍時の「Animals」というアルバムは、音楽的な内容の是非は置いといても、あの「午後遅くどんより曇った南ロンドン、ふと空を見上げると、発電所上空に豚が飛んでいた」というシュールかつ神秘的な雰囲気というものにやはりファンの誰もが惹かれていたと思うんだけど、

Pig

この94年のコンサートでは、その豚がこうなってるんだもんね。しかも「Animals」とは何の関係もない「One Of These Days」演奏中にステージ両脇から突然これが現れ、両目からレーザー光線を発するという… これが出てきたときに歓声を上げる観客の気持ちが、僕にはわからない。

確かに、ふんだんに使われるレーザー光線や凝ったライティングは凄く綺麗だと思うし、エンディングで使われる、一瞬戦場かと思うほどの量の花火は凄まじいほどの見ものだ。そういう意味では一流のエンタテインメントなんだろうけど、これは僕の観たい類の「ライヴ」ではないよ。そして、それが実は僕が来年1月のロジャー・ウォーターズのコンサートに関して一番危惧していることでもある。さすがに彼は豚の目からレーザーを出させるような真似はしないだろうけど、こういうきっちり作りこまれたエンターテインメント・ショーになるのは間違いないだろうから。


なんだかせっかくブログに採りあげておいて、最初から最後までけなしてばかりの文章になってしまったけど、僕はこのDVDのことは実は気に入ってはいるんだよ。さっきも書いたけど音質・画質のことはもちろん、やっぱり何をおいてもストーム・トーガソン(元ヒプノシス)のデザイン。この二つ目小僧。あまりにこれが気に入ったので、何故か今僕の家にはこんなものがあったりする。

二つ目小僧

posted by . at 23:24| Comment(18) | TrackBack(0) | ビデオ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
×

この広告は180日以上新しい記事の投稿がないブログに表示されております。