2013年09月21日

Graham Parker live in Tokyo Pt.2

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前日のセカンドセットの後は久々に会場で再会した友達と日付が変わるあたりまで飲み、明けて翌日。本当はこの空き時間はCD屋にでも行こうと思ってたんだけど、前日のライヴを観ていたときにもう今回の残りの来日公演は全部観ることに決めた。台風もどんどん近づいていたので、下手に渋谷や新宿のCD屋とか行ってる間にずぶ濡れになっても嫌だったから、この日は一日ミッドタウンにたむろすることに決定。

できればまた自由席(ステージ前)で観たかったけど、電話で訊いてみるともうかなり大きな整理番号。前日は比較的席に余裕があったと思ったけど、それなりに客入ってるんだね。しょうがないので初めてのカジュアル席で観ることにした。

ステージを斜め上から見下ろす感じで、比較的見やすくはある。指定席だから開場前に並ばなくてもいいし、ウエイターにサーブされなくてすむのは逆に気楽なんだけど、やっぱりちょっと外様感はぬぐえないね。まあ、3回観るうちの1回だから我慢しよう。でも、ステージ前の席、やっぱり前日と同じぐらいスカスカしてるよ。最前列の四人掛けテーブルなんて二人ずつしか座ってないし。

前日同様、定刻にDJが終わるのと同時にステージにGP登場。薄紫のTシャツと(前日のサイン会のときにかけていた)赤いサングラス以外は、ほぼ前日と同じいでたち。無言で引き始めたイントロは、へえ、こんな曲から演るんだと思った『Deepcut To Nowhere』からの「Depend On Me」。前日もそうだったけど、ウォームアップ風にゆったりとした曲から始めることが多いんだね。

セットリストはまとめて後述するけど、今回の4公演をできるだけ違ったセトリで演奏しようというGPの意志がもっともあからさまに表れていたのがこの二日目のファーストセット(初日のファーストは未見だけど、まさか初回からそんな奇抜な選曲はしないだろうから)。

前日のセカンドセットは、全18曲中12曲が初期の4枚のアルバムから(うち5曲が『Heat Treatment』から)という極端に偏った選曲だったのに対し、この回はファースト『Howlin' Wind』から4曲演った他は、初期から最新作までバラバラな時期の10枚のアルバムからそれぞれ1〜2曲ずつ、しかもあえてこんなのを選びますかというレアな曲ばかり、それとカバー1曲という全18曲。同会場で二日間4回連続なんてシチュエーションでもなければまず聴けないだろうというこのセトリを聴けただけで、やっぱりこの回も来ることにして正解。

2曲目は「ファーストアルバムの中でも俺のお気に入りだ」と前置きして、「Between You And Me」。いいね、僕も同感。もし今回リクエストを募られることがあれば言おうと思っていたリストの4番目か5番目に入っていた曲(一体何曲自分のリクエストが通ると思っていたのか)。もともと飄々とした曲が、こうして弾き語りで歌われると一層あっさりした雰囲気になるね。

「2020年にオリンピックが決まったね、おめでとう」という話を挟むが、客席の静かな反応にとまどうGP。上の席からいえーとか言ってみたけどあんまり聞こえてないね。「どうしたんだ、オリンピックだぜ!ロンドンが決まったときはもう皆で飲み明かして床に転がっていたのに!」みたいなことを言ってたね。「俺はもうホテルを予約したから」とか。ということは、次の来日は2020年か!?

『Songs Of No Consequence』からの「Evil」を演るときに、「このアルバムはフィグズという俺より20歳以上若い奴らと一緒に作った」と話してたな。サイン会のときとかもう少しゆっくり時間があればピートの話とかしたのに。それにしてもこのアルバムからあえてこれですか。「Bad Chardonnay」とか「Vanity Press」とか聴きたかったな。歌い終えたときに「Evilといえばイーヴル・クニーヴル」という話をしてたけど、これまた無反応。まあ、日本で一般受けする話じゃないのもわかるけど、ステージ前で観てる人たちもう少しなんとか反応してあげてよ。

5曲目でようやく前日セカンドとかぶる「Problem Child」が登場。続いて僕がyascd024に入れた曲がやっと出てきた。『Imaginary Television』からの「Always Greener」。さらに続けて、スティーヴィー・レイ・ヴォーンの「Pride And Joy」のカバー。今回僕が観た3公演でカバーを演ったのは唯一これだけだったね。たしか歌いだす前にこの曲はライヴでは演奏したことがないって言ってたよ。レア。

ハーモニカの代わりにカズーをホルダーにつけて吹いた「Last Bookstore In Town」。『Three Chords Good』からの曲を演奏する前には必ず「この最新アルバムはとあるバンドと一緒に作った(あくまでルーモアとは言わない)」とか「3コードの曲は完璧なんだけど、今から演るこの曲は4コードなのでよくないんだ」とか言ってた。日本盤も出ていないその最新作はあまり誰も聴いてないと思ったのか、意外なほどに新作披露会ではなかったね。今回のセトリを見る限りは、あくまでも過去に出した何枚ものアルバムのうちの一枚という位置づけみたい。

アコギの曲は前日より1曲多い9曲。エレキに持ち替えたときにそのギターを紹介するセリフは昨日と同じ。自分のために作ってもらったギターって言ってたっけ。お気に入りなんだね。この人の自作曲に対するこだわりについては前日分の記事に書いたけど、こうやって自分のお気に入りのギターとかに対する愛着も大きいんだろう。好感持てるなあ。

エレキに持ち替えてから2曲目のファーストアルバムのタイトルトラック、毎日必ず演奏すると言っていた「Discovering Japan」を本編ラスト前に、そして本編ラストにファーストからの定番「White Honey」というクラシックを演った以外は極めてマニアックな選曲の本編15曲。前日セカンドとのかぶりは前述した2曲のみ。

またステージ袖まで歩いて行ってアンプか何かの後ろにこっそり隠れるふりをして、アンコールに再登場。珍しい曲は演り飽きたのか、ここは王道の3曲。おそらく、この回だけを聴きにきた昔のファンにとっては、この本編最後からアンコールまでの流れでようやく待ってましたという感想だったのかも。もちろん僕にとっても、大好きなセカンドアルバムのタイトルトラックや、鉄壁「Soul Shoes」が聴けたのは嬉しかった。

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ファーストセットだからと手を抜かず、この回もアンコール含めてたっぷり1時間20分ぐらいの演奏。終わってステージ後ろのカーテンが開いたときに外がまだ明るかったのがなんだか変な感じ。セカンドセットの準備があるので当然サイン会はなし。さて、ラストセットの開場までの数時間、まだ明るいけど、せっかくおしゃれな六本木ミッドタウンなんかにいるんだから、ワインでも飲みながら時間つぶそうか。


15 September 2013 1st Set

1. Depend On Me
2. Between You And Me
3. Under The Mask Of Happiness
4. Evil
5. Problem Child
6. Always Greener
7. Pride And Joy
8. Last Bookstore In Town
9. I Discovered America
10. Love Gets You Twisted
11. Howlin' Wind
12. Devil's Sidewalk
13. Long Emotional Ride
14. Discovering Japan
15. White Honey

<Encore>
1. Heat Tretment
2. Soul Shoes
3. The Raid
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2013年09月17日

Graham Parker live in Tokyo Pt.1

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9月14日。朝一で家を出て、ファーストステージ開始の直前に六本木にはたどり着いたから、カジュアル席で観ようと思えばできなくもなかったけど、ここはちょっと我慢して予定通り夜のセカンドステージから。なかなかの整理番号だったから、かなりいい席をゲットできた。あちこちのライヴでよく一緒になる人たちもたまたま続きの整理番号だったので、テーブルひとつ仲良く占拠。

大貫憲章のDJ、もっとガンガン煽りながらやるのかと思っていたら、殆ど無言で(レコードに合わせて一人で小声で歌ったりエアギターしながら)淡々と進んでいく。ビルボード仕様か。最初はストーンズとかキンクスから始まって、徐々にGPと同世代のクラッシュとかイアン・デューリーとかドクター・フィールグッドとかへ(GP本人の「Back Door Love」をかけたのは反則じゃないのか)。

開演時刻ちょうどの9時に、最後に回していたディランを終え、「面白い人ですよ」との紹介とともに憲章氏ステージを降り、同時にギブソンのアコギを抱えたGPがステージに上がる。黒いTシャツに黒いジーンズ。靴も黒のスニーカー。トレードマークのティアドロップシェイプのサングラスは濃い青。ギターのヘッドのところに金色と赤の二つのカポをはめているのは、近作BD『This Is Live』の裏ジャケ同様。赤いのは結局最後まで使わなかったけど。

イントロのアレンジが結構変わっていたから弾き始めたときはなんだろうと思ったけど、最初の歌詞でわかった1曲目「Watch The Moon Come Down」。僕の大好きなライヴアルバム『Live! Alone In America』で聴き慣れたこの曲のソロアレンジヴァージョンを、遂にこうして目の前数メートルで今観ているということを実感するたびに背中がぞくぞくする。いま、すぐそこで、GPが歌っている。そんなことがひしひしと身に沁みるライヴなんていつ以来だろう。

どの曲もオリジナルとは相当アレンジが違っていたけど、歌い始めてすぐに、曲によっては弾き始めのコード進行でそれが何の曲かわかる自分が誇らしい。それは別にこの回のセトリが極端に初期に偏ってたからという理由だけではないと思う。自分のセトリはGPが持って帰ってしまって写真を撮る隙もなかったけど、全曲メモってきたので、下に書いてあるセトリで間違いないはず。

相変わらずGPも曲紹介のたびに、「今のは76年のアルバムから。じゃあ次は1年進めて77年のアルバムから演ろう」とか、きっちりどの曲がどのアルバムからかを説明しながら歌う。何枚かのライヴアルバムを聴いてていつも思うんだけど、本当に自分の曲にしっかり愛着があるんだろうね。一回だけ、「『Your Country』、あれは2003年だったっけ」と言ってたけど、発売年は04年。まあ、偉そうにそんなことを書いてる僕も調べてみないと覚えていないから、1年の誤差とはいえそんなことをしっかり覚えてるGPは本当に凄いと思う。

「面白い人ですよ」との憲章氏の言葉に相違なく、曲間のMCであれこれ喋るGP。寿司が好物らしく、ハマチだのマグロだの、寿司ネタの名前がどんどん出てくる。「Squidは何て言ったっけ。イカ? あれを俺はこんな風に生きたまま格闘しながら食べたんだ」と自分の首に絡みつくイカの足を表現しながら話したり。「アメリカ(アラバマって言った?)でも寿司は食べられるけど、日本の寿司は生きたネタで作るから最高だね」と。“Fatty Toro”が一番の好物だとか。

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8曲目の「Hotel Chambermaid」を終えて(この回はほんとに『Heat Treatment』からの曲が多かった)、最初からステージに置いてあったエレキに持ち替える。薄いサーモンピンク色のギルフォード、テレキャスターをちょっとアレンジしたみたいな形の小柄なギター。12フレットあたりにGPと書いてある。ここからハードな曲に入っていくのかと思いきや、「88年のアルバムから演ろう」と弾きだしたのは「Blue Highway」。ああ、いいねえ、このアルバムものすごく思い出深い。大好きな曲。

「今回は4ステージ全部違うセットで演るけど、この曲だけは4回とも歌うよ」と言いながら始めたのはもちろん「Discovering Japan」。この曲とか、ちょっと前に演った「Stick To Me」とか、ギターを弾きながらふと取るポーズがすごく格好いい。この人、170あるかないかみたいな小柄な人なんだけど、ギター持たせるとすごく様になるよね。筋肉びっしりの前腕とか胸板とか、この年で贅肉一切ゼロみたいなのも凄いし。

次の「Don't Let It Bring You Down」では、途中でギターリフを「Here Comes The Sun」に変え(そういえば似ている)、その曲をちょっとだけ口ずさんでまた最後は元曲に戻して終了。

本編ラストの「Don't Ask Me Questions」を終えたのがちょうど始まってから1時間ぐらいだったかな。ステージを降りる振りしてわざとステージの隅っこで隠れたりしているのが可愛かった。形式としてのアンコール。CD聴いててここからB面とか思うのと同じような感じか。違うか。

アンコールはまたアコギで、僕の好きな曲ばかり、まさか3曲も演ってくれるとは思わなかったので大満足。全部で1時間20分ぐらいは演ったかな。ライヴ中何度も「明日もあるから来てくれ」みたいなことを言ってたけど、始まって数曲目でおそらくファーストステージにも来ていたらしい前列のお客さんに向かって「さっきとは全然曲目違うだろう」と言ってるのを聞いた時点でもう僕は既に行く予定のなかった翌日ファーストセットにも行くつもりになっていた。数千円の追加出費? GPの日替わりセットが数千円で聴けるのに、それを聴き逃すなんて選択肢があるか?

終了後、会場でCD/DVDを買った人を対象にサイン会が開催された。僕も持参した『Live! Alone In America』のLP(マニラで買ったやつ)にサインしてもらった。沢山話したいことがあったのに、緊張して殆ど言葉がまともに出てこない自分に腹が立つ。GPはステージではずっとミネラルウォーターを飲んでたけど、このときはビールだったね。あと、サングラスも赤い縁のに着替えてきてた。

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というわけで、今日はここまで。あと数時間後にもうファーストセットが始まる。台風18号がどんどんこっちに向かってくるけど、まあそのことは終わってから心配しよう。ミッドタウンが竜巻で飛ばされることはないだろう。というところまで書いて二日目に繰り出したので、アップできたのが結局今日17日。その後台風がらみでいろいろ大変だったけど、それはまた次の記事にでも書こう。

それにしてもこの回のセトリ、『Heat Treatment』からの5曲を筆頭に(CDにボートラ収録された「Hold Back The Night」含む)、最初の3枚からだけで全18曲中11曲。『Squeezing Out Sparks』まで入れると最初の4枚から12曲。初期の曲も多く演るよと言ってたけど、まさかここまで極端に極初期に偏った選曲になるとは。個人的には「Fool's Gold」と「That's What They All Say」を一度に聴けたのが大収穫。

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14 September 2013 2nd Set

1. Watch The Moon Come Down
2. Over The Border (To America)
3. Fool's Gold
4. Stop Cryin' About The Rain
5. Almost Thanksgiving Day
6. Black Honey
7. Problem Child
8. Hotel Chambermaid
9. Blue Highways
10. Stick To Me
11. Tornado Alley
12. Lady Doctor
13. Discovering Japan
14. Don't Let It Bring You Down
15. Hey Lord, Don't Ask Me Questions

<Encore>
1. That's What They All Say
2. The Raid
3. Hold Back The Night
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2013年08月09日

Pet Shop Boys live in Manila

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結局日本での僕の初フェスはフジになったけど、本当は今年サマソニに行ってみたいなと考えていた。ペット・ショップ・ボーイズが来るからね。07年にあの濃厚な『Fundamental』ツアー公演を間近で観て以来、機会があればまた観てみたいと思っていたから。

そのうち、シンガポールとかバンコクとかジャカルタとかソウルとか、アジア各地での公演日程が次々に発表されていくのを見て、これはしばらく待ってみてもいいんじゃないかと思い始めたところ、アジアツアー日程の最後になって、8月6日マニラ公演が追加された。フィリピンに来るのは初めてなんだって。

「チケットのお買い求めはこちらで」のアイコンをいくらクリックしても何も出てこないという状態が何日も続くといういかにもフィリピンらしい仕打ちを受けても負けずにクリックし続けていたら、突然「明朝9時チケット売り場でのみ販売開始。ネットでは買えないよん」みたいな人を小馬鹿にした案内が現れたので、いつだったか忘れたけどその「明朝9時」をめがけて会社から一瞬姿をくらまして最寄のチケット売り場に行ってみたらその売り場は10時オープンだったりして、まあとにかく散々紆余曲折を経た挙句にようやくチケットを入手。

他の売り場ではもう9時に発売開始してしまっているのかも、売り場の選択を間違えたおかげで1時間ロスしてしまったかもと不安にかられていたら、手にしたチケットはアリーナ7列目中央通路沿い1番。売り子のお姉ちゃんとのやりとりから察して、どうもステージ前6列は招待席っぽい雰囲気。ということは、もしかするとフィリピンでこの公演のチケットを一番最初に買ったのが僕か? 07年のときみたいにライヴハウスのステージかぶりつきというのには到底適わないけど、1万8千人収容のアリーナで7列目中央はなかなかだよね。

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なにしろこれだからね。開演20分ほど前に席についてみたら、案の定僕より前6列にはほとんど人はいない。それどころか、前にスティングやジェイソン・ムラーズを観たときには超満員だったこの大会場がかなり閑散としている。PSBってそんなに人気ないのか。大丈夫かな。

開演時刻を30分以上押して、ようやく前6列もスタンドの方もそれなりに観客が埋まってきた頃に客電が落ち、ステージを覆うスクリーンにいろんな模様が映し出される。そのうち、鳴り続けていたBGMがいつの間にかオープニングの「Axis」になっている。この曲、なんでこんなのをシングルにしたんだろうと思うほどつかみどころのない曲なんだよね。かっこいい曲だとは思うけどさ。

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ビニールのハリネズミみたいな衣装で登場した二人(ニールは最初同じデザインの帽子もかぶっていた)。ほぼメドレーで「One More Chance」、「A Face Like That」と、かなり地味目の曲を続けてくる。おなじみ「Opportunities」が出てきてようやく場がほぐれてきたかなと思ったら、引き続き「Memory Of The Future」、「Fugitive」ときた。なんでこんな誰も知らないような曲ばかり頭から繰り出してくるんだろう(地味な前作『Elysium』をほとんど聴いていない自分のことを棚に上げて文句を言う。でも「Fugitive」がどのアルバムに収録されてるかなんてすぐ答えられるPSBファンがどれだけいるというのか)。

「Integral」を終えて二人が一旦ステージ裏に退き、同時にバッファローの骨みたいな被り物をした二人のダンサーが登場。メンバーのお色直しの間のダンス。知らない曲だと思ってたんだけど、あれが「The Rite Of Spring」なんだね。ということで、次はそのタイトルが歌詞の一節になっている「I Wouldn't Normally Do This Kind Of Thing」。PSBの二人もバッファローの角みたいな被り物で登場。そして、その曲のアウトロが延々続く中、聞き慣れた犬の鳴き声が。「Suburbia」だ! 冒頭の地味な選曲とは打って変わってPSBのポップサイドが炸裂。

ここで初めてニールがしゃべったかな、確か。挨拶して、次の曲は「I'm Not Scared」だと紹介。それと「Fluorecent」とまたしても地味路線に傾いた後、「次はミスター・ブルース・スプリングスティーンの曲です」と、新譜からの「The Last To Die」へ。これ、『Electric』の中でもかなりお気に入り。いつものPSBならではのシニカル意地悪カバーじゃなくて、意外にストレートなカバーになってるよね。まあ、とはいってもニール・テナントがあの声で歌ってるというだけで、オリジナルとはずいぶん趣が違うけれども。

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「Somewhere」の前だか後だかでまたお色直しで一旦引っ込み、今度はクリスはミラーボールをかぶって登場。天井から光を当て、全方位に反射させながら黙々とキーボードを弾く(見えてるのか?)。ニールはさすがに半円形のミラーボールハットで(ボールかぶると歌えないからね)、それでもやっぱり全方位に光を反射させながら歌う。

前回観たときは衣装を変えるだけでなく、複数のダンサーが出てきたりちょっとした小道具を使ってステージの様子を変えたりしてたんだけど、今回はどうもかぶり物に頼りすぎているきらいがあるね。ダンサーも同じ二人が(これまたいろんなかぶり物で)ずっと踊っているだけだし。あの、まるでお芝居を観ているかのような「次は何が出てくるんだろう」という楽しみがなかったのがちょっと残念。あと、個人的には一番期待していたアクースティックコーナーがなかったのはかなり残念。

前作からのシングル曲(でもこれまた地味)「Leaving」、新作からの「Thursday」と新しめの曲を続け、次の「Love Etc.」のときにはステージ前方にベッドが二つ立てられ、ニールとクリスがそれぞれ布団の下に入り、白いシーツに投射された体がめまぐるしく動くという楽しい演出。ニールは口の前に持ってこられたマイクで歌っているけど、クリスはただじっとしているだけ。

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ベッドを片付けた後、「I Get Excited」というこれまたオブスキュアなシングルB面曲に続けて、ほぼメドレーで「Rent」へ。いよいよこのあたりから大団円に向けてのヒット曲攻勢が始まる。やっぱりPSBのライヴはこうでなくちゃね。

静かな「Miracles」に続いて、「It's A Sin」で大爆発。ここらでようやく、それまでおとなしく写真を撮ったりおしゃべりしながらまったりしていた前列の招待客らしき人々も立ち上がる。アジアに回ってくる前に南米の熱狂的なライヴの様子をツイートしていたりしたニールだから、ここまでさぞかしこの冷めた前列の客にはがっかりしていたことだろうね。なんだかこちらもこれでようやく一安心。

まあそれにしても、どいつもこいつも写真撮りまくり。僕もこれだけ現場で撮った写真を載せておいて言えた立場じゃないかもしれないけど、こいつら一体何百枚撮れば気が済むんだ?一体ライヴ観に来たのか写真撮りにきたのかどっちなんだと思ってしまうぐらい、もうとにかく僕の前は(きっと後ろも)カメラやスマホが林立。演奏終わったときぐらい写真撮ってないで拍手しろよ、まったく。

スティングのときもジェイソン・ムラーズのときも、フィリピン人って本当に歌うの好きなんだなと思うぐらいにどの曲でも大合唱だったのを見てきたから、この日の(特に僕より前の)冷めた観客の様子には本当に辟易してしまった。きっと、僕より後ろの、本当に彼らのことが観たくて高いチケット代払って来ていた人たちはもっと盛り上がっていたと信じたいけど。

そんな状況だったから、「Domino Dancing」のサビを思いがけず大合唱で終えたときはニールも思わず「マニラ、歌えるじゃないか」みたいなことをニコニコ顔で言って、いよいよ「Go West」、そして「Always On My Mind」へ。ありきたりといえばこれ以上ないありきたりな展開だけど、こんなイントロ一発で即死みたいな曲を最後に立て続けに持ってこられたら、どれだけ叫んでも足りないぐらいだ。今思い出してもゾクゾクするよ。

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ステージの両袖から無数のオレンジの紙吹雪が飛び出してきたのはこの時だったかな。あれは綺麗だったな。この写真見て思い出したけど、そうそう、相変わらずクールでシニカルははずのニールがガニマタ気味に足踏ん張って歌うのがなんだか微笑ましいんだよな。

ここで一旦ステージを降り、残念ながら僕の位置からはほとんど聞こえなかったアンコールの拍手に迎えられて、PSBの二人が再登場。「West End Girls」か。まあ、アンコールの1曲目としては妥当なところかな。デビュー曲だし、ある意味一番有名な曲かもしれないけど、こういうときにわーっと盛り上がる曲ではないよね。

ここから何をやってくれるんだろう。でもめぼしいのはさっき本編ラストで連発したからなあと思っていたら、「あと1曲」と言って、最新シングル「Vocal」を。ああそうなのか。別にこの曲に文句があるわけじゃないけれど、どうもここ数年、PSBってアルバムの中の一番のキラーチューンみたいなのをシングルカットしないんだよね。悪い曲ではないけれど、アンコールのラストを担うにはちょっと荷が重いよ。

アルバムから4曲もシングルが切られたのに「The Sodom And Gomorrah Show」はその中に含まれていなかった06年の『Fundamental』、ツアータイトルにもなった「Pandemonium」はシングルにならなかった09年の『Yes』、アルバム全体かなりソフトな、ある意味PSBとしては異色なアルバムだったのに3枚もシングルカットされた12年の『Elysium』に続いての今作『Electric』、どうして「Love Is A Bourgeois Construct」や「The Last To Die」がシングルカットされないんだろう(と思っていたら、「Love Is〜」は次のシングルになるらしい。それなら今回のツアーで演奏してよ)。

と、そんな感じで写真撮りまくりの前列の招待客(アンコールのときにはもはやステージも見ずに演奏するPSBをバックに記念写真を撮ってたよ、あーあ)とか若干カタルシスに欠けるセトリとかに不満が残らないでもなかったけど、たっぷり2時間弱の久しぶりのPSBのライヴはやっぱりよかった。日本では確か今日がソニマニで、明日あさってがサマソニ本番なんだったよね。日本のみなさん、楽しんできて。


Setlist 06 August 2013 @ Araneta Coliseum Manila

1. Axis
2. One More Chance / A Face Like That
3. Opportunities (Let's Make Lots Of Money)
4. Memories Of The Future
5. Fugitive
6. Integral
7. The Rite Of Spring
8. I Wouldn't Normally Do This Kind Of Thing
9. Suburbia
10. I'm Not Scared
11. Fluorescent
12. The Last To Die
13. Somewhere
14. Leaving
15. Thursday
16. Love Etc.
17. I Get Excited (You Get Excited Too)
18. Rent
19. Miracles
20. It's A Sin
21. Domino Dancing
22. Go West
23. Always On My Mind

[Encore]
1. West End Girls
2. Vocal


<8月10日追記>
制限いっぱいだったブログのディスク容量が増えたので、せっかく買ってきたTシャツの写真を載せよう。今回は2種類のデザインから選びきれず、大人買い。
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2013年08月01日

FRF13

いろんな人から一度は行ってみるべきだとかよく言われるし、近しい友達からも何度も誘われてはいたんだけど、「やだよあんなに金もかかるし人も多いところにわざわざ行くなんて。それにいつも雨降るんでしょ」というのが、フジロックに対するこれまでの僕のスタンスだった。そう、数週間前に突如ウィルコ・ジョンソンが参加を表明するまでは。

たまたま7月いっぱいで期限が切れてしまう会社の有給をこの週末にくっつけて、いろんな乗り物を乗り継いで、最終日の朝に苗場に到着。途中のバスの列やらホテル入口への遠路やら、その段階で相当うんざりしてたんだけど、聞いたところでは初日からちゃんと来たらあんな行列じゃ済まなかったらしいね(この時点で「来年はもう来るもんか指数」やや上昇)。

リストバンドをもらって入場しようかというところで初日から来ている友達から連絡があり、うまく合流できた。グリーンステージ後方。みなさん当然ビニールシートとか色々持参してるんだね。ありがたく使わせてもらいました。ろくにくつろいでる間もなく、この日の僕にとっての最初のアクト、ヨ・ラ・テンゴのステージが始まる。

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09年の12月に品川で観て以来だね、この人たちは。そして、ステージの尺と新曲以外はその時と何一つ変わっていない。出てきていきなりジェームズ(別名デブ)がドラムキットのところに行き、ジョージアがギター(アイラもギターなので、ベースレス)という珍しい編成で開始。デブが歌う「Stockholm Syndrome」は3曲目だったかなと思っていたら、某所にアップされていたセトリを見ると2曲目だった。とにかく、曲ごとにデブとジョージアが楽器をとっかえひっかえ、アイラは(曲によって違う機種を使い分けてはいたけれど)ギターをもうこれでもかというほどくねくねと体をよじって轟音ノイズを発し続ける。

前回観たときからこの人たちに対する僕の知識もそう増えてはいないけど、一応予習のために買った新譜『Fade』から、1曲目の「Ohm」とあと1−2曲は演奏したはず。最後の挨拶のときのアイラの「ウィルコやキュアと共演できるなんて、僕らみたいな若いバンドにとってはとても光栄です」というジョークがどれだけの人に受けていたのかはわからないけど。


さあもう次だ。ウィルコ! 一体どれだけの人がこの人目当てに来てるんだかよくわからないけど、とりあえず万一に備えてヨラが終わった時点でトイレにダッシュして急いで戻ってくる。まだそんなにぎゅうぎゅう詰めでもなかったから、ヨラのときと同じく若干後ろで観ようとしていた友達を置いて前の方に進む。なにしろ前夜に小さ目の小屋で演ったときは、一時間以上前から長蛇の列で入場制限がかかったらしいからね。

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出てきた! 意外に元気そう。いつも通りの、上下真っ黒ないでたちに赤いピックガードの黒いテレキャスターを抱えて。ベースがノーマン・ワット・ロイだというのがまた嬉しい。僕の目の前だよ。ちなみにドラムスはスティーヴ・ハウの息子。なんか途中もたったりしてあんまり上手くないなと思ったのは気のせいか?

ウィルコのソロアルバムはほとんど聴いてないから、知らない曲ばかりだったらどうしよう、まあどうせノリノリのロックンロールばかりだろうからいいや、なんて思っていたら、1曲目から「All Through The City」。

その後も数曲ごとにドクター・フィールグッド時代の曲がどんどん出てくる。「Sneakin' Suspicion」とか「Roxette」とか。「Back In The Night」とか「She Does It Right」とか。フェス用に素人向けの選曲にしてくれてるのかな。

上半身固定の横移動も健在(前に僕が観たのはもう20年以上も前のことだから、あのときの高速移動に比べるとずいぶんおごそかな(笑)動きにはなっていたけど)。ギターをマシンガンに見立て、ミュートしたカッティングの音でタカタカタカタカと観客めがけての銃撃ももはや伝統芸。

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病気の本人よりもよっぽど老けて見えたノーマン。でも相変わらず不気味な顔でニコニコと、体を反らせてファンキーなベースを弾きまくる。この人、ブロックヘッズの頃はなんて気持ち悪い顔なんだろうと思っていたけど、加齢とともになんだかかっこよく見えてきたね。大人になってからモテるタイプかも。

この早い時間帯のステージで驚きのアンコール。年明けの日本公演でも最後の曲だったという「Bye Bye Johnny」で締め。演奏前に「晴れててくれてありがとう、ミスター・サン」とか話してたね。そういえば、ヨラのときは途中で降ったり止んだりしてた雨も、ウィルコのときは一切降らなかったよ。なんかこういうのも奇跡的というか。

他にもいろいろステージ上で話してたんだけど、なにしろその時点で僕の周りはモッシュ大会。足踏まれたり踏み返したりで落ち着いて演奏も聴いてられやしない。後で友達に聞いたら、「僕のために幸運を祈ってくれ」みたいなことも言ってたみたいで、演奏後もうそこら中の人が目を真っ赤にしてたよ。多少は近くで観られたのはよかったけど、ああいうステージのときはあんまり前に行かない方がいいというのを、よりにもよって肝心のウィルコのステージで学んだ次第。

会場で、限定発売されることは聞いていた前回の東京公演のDVDがTシャツとセットで売ってたので買い。収益はすべて福島への義援金というのを見てまたじわっとくる。

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さすがに朝から駅弁だけなので、3時を回ったこの時点でもう腹ペコ。友達に連れられてところ天国に何か食べに行く。沼地みたいな道をしばらく歩いてたどり着いたら、ちょうど聴いてみたいなと思ってたサヴェージズの音が隣のホワイトステージから聴こえてくる。ベースかっこいいな。

食料調達したりアルコール補給したりしているうちにどんどんと土砂降りの雨に。不用意にもTシャツ一枚で来ていた僕は、今このままプールに飛び込んでもあんまり状態変わらないだろうというぐらいにずぶ濡れ。「来年はもう来るもんか指数」この時点でMAX。気を利かせて友達がグリーンの基地から持ってきてくれたウィンドブレーカーを羽織る頃にはすっかり雨が止んでいたのも、ウィルコのときと同じ神様の仕業だろうか。


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友達が調子に乗ってウォッカどんどん入れさせたブルドッグで、びしょ濡れのパンツも気にならないほど心地よくなったところでグリーンに戻る。マムフォード&サンズって日本でこんなに人気あるの?ものすごい量の観客。今度は友達と一緒に、柵の後ろあたりで落ち着いて観る。

この人たちのセカンドって、ファーストと同じ曲が順不同で入ってるんじゃないのかと思うほどどれもこれも似た曲ばかりだけど、そのワンパターンさも含めてかっこいいんだよね。生では当然初めて観たけど、演奏うまいねー。4人のうちメインヴォーカルの兄ちゃん以外は結構いろんな楽器をとっかえひっかえ。そのうち3人のホーン隊(トランペット2本とトロンボーンだったかな)とかストリングス隊(チェロとヴァイオリン?)の3人とかがどんどん加わって音が分厚くなっていく。最後の方の曲では、レッドマーキーで演奏を終えたばかりだというハイムの3姉妹が飛び入りしてた。ハイムってよく知らないからいまいち僕にはありがたみ薄かったけど。

最後はセカンドからのシングル曲(これは区別つく)「I Will Wait」で終了。いやこれはいいバンドだね。純粋に演奏だけのことを言えば、僕がこの日に観た5組では一番だったかも。聞くところによると、この直後に行われた東京でのライヴもソールドアウトだったそうな。2枚のアルバム、ちゃんと聴き込んで曲覚えよう。


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もうこの時点で夜7時。曇ってることもあって辺りはどんどん暗くなってくる。雨も降ったり止んだりだし、なによりもう腰が限界。一応楽しみにしてたヴァンパイア・ウィークエンドは後方の基地に座って観ることにする。ほかの友達は引き続き前で観てたり、ホワイトに相対性理論を観に行ったり、酔っぱらって行方不明になったりと好き勝手に行動中。

後ろで観てるのがもったいないほどいいステージだったね。さすがグリーンのトリ前。「A-Punk」のイントロでギターの調子がおかしかったみたいで(弦が切れたのかな)、一旦止めてギターを取り換えて再開(その間リズム隊はずっと継続中)、あの気持ちいいイントロを二度楽しめるみたいなこともあったな。

なんかこうやって、こんなにいいライヴを後ろの方でぼーっと観てるのがもったいなくて。僕がフェスというものを心から楽しめないでいるのはこういうところにもあるのかも。誰かのライヴを途中まで観て別のステージに移動して途中から観るとかかなり嫌だし。自分が観てない別のステージでいいライヴをやってるなんてのも嫌だし(単なるわがまま)。


さてと、いよいよ大トリのキュア。21時半開始で予定終了時刻24時だって。2時間半かよ。でもできるだけ前行って観よう。椅子持って。ところが、大御所バンドとは思えないほどの人の入り(の少なさ)。さっきマムフォードを観た場所からそう遠くないところに椅子置いてゆっくり開演待ち。まあ、今の日本でキュアみたいなバンドがトリ取るって相当ムリあるよな。かと言って本人たちのプライド考えるとトリ以外じゃ来てくれないだろうし。友達曰く「ロキシーのときも相当なもんだったよ」。なるほど。

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これがあの、ドラムキットとアンプしか置いてなかったウィルコのときと同じステージかと思うほど豪華絢爛なセットを1時間近くかけて組み上げ、メンバーが登場する段にはもうもうとスモークが焚かれる。さあ、2時間半ライヴの開始だ。

なんだかんだ言ってこの日観た5組の中では一番長く、子供の頃から聴いているキュアだから、そりゃ書きたいことはたくさんあるけど、久しぶりに書く長文に疲れてきたので適当に端折って。ロバート以外のメンバーはもう全員若い新規メンバーなのかと思っていたら、左側で地味な姿で変な形のギターを弾いてるのはポール・トンプソンだねあれ。ロバートと同じバンドに在籍とは思えない普通のおじさんになっている(腕の刺青はすごかったけど)。あと、体を不自然に折り曲げて膝下でベースを弾いてるのは誰かと思いきやサイモン・ギャラップ。なんであんな若いの?ロボット?

地味ーな最近(といっても僕があまり聴かなくなってからのことだからここ10年前後の話)の曲をいくつか続けた後、これでもか系のポップなシングル曲を数曲挟むという、お前ら帰れるもんなら帰ってみろと言わんばかりの意地悪セトリ。さすが百戦錬磨、カタルシスというものをよくわかっていらっしゃる。

とはいえ、さすがに23時近くなってくると、腰は洗濯板みたいに固まってくるわ朝からの数千キロ移動の疲れで眠気が襲ってくるわで、持参した椅子に腰かけてしまう。夏なのにさすがに山中の夜は冷えるね。ずぶ濡れのTシャツの代わりにさっき買ったウィルコのTシャツ着ててよかった。ちょっとうとうとしかけたところに「Friday I'm In Love」のイントロとか突然繰り出されてくるもんだからおちおち寝てもいられない。

演奏はさすがに整ってて上手いんだけど、やっぱりちょっとスタジアムバンドっぽいゴテゴテした音になってしまっていたのがちと残念。「A Forest」のあの透徹なまでのストイックなベースプレイを期待していた身にとっては、あの派手なエンディングは逆に拍子抜け。これがゴスってもんなのか。

24時15分前ぐらいという、とても中途半端な時刻に一旦ステージを降りる。観客の皆さんもそうとうお疲れのようで、もうこれで終わりなのかどうか見極めつかない中途半端なアンコールの拍手をぱらぱらと始める。

そんなまばらな拍手で出て行っていいものなのかどうかこちらもわかりかねるよと言わんばかりにメンバーがぞろぞろと再登場。ロバートが「アリガト、なんとかかんとか、ごにょごにょ」と日本語の真似みたいなMCを入れたあと、「ところでこれはアンコールだから」と妙に自虐的だったのがかわいい。さすがロバくん人形のオリジナル。

と、そんな感じで遠慮がちに始めたアンコールが、これがもう80年代シングル曲連発みたいな超弩級選曲で、僕みたいにちょうどその頃に聴き始めたファンにとってはイントロ一発でやられてしまうのばかり。そりゃ、これだけの曲を取っておいたら、アンコールで出てこないわけにはいかないよね。「The Lovecats」、「The Caterpillar」、「 Close to Me」、「Hot Hot Hot!!!」、「Let's Go to Bed」、「Why Can't I Be You? 」と、もうタイトル書いてるだけであの時の興奮がよみがえってくる。

そして、そのあとはもうお約束の「Boys Don't Cry」、「10:15 Saturday Night」、「Killing An Arab」という必殺のファースト曲3連発。最後のやつでは最近よく歌ってる(らしい)キリングアナザーとかじゃなくて、ちゃんとオリジナル通りの歌詞で歌ってたね。どれもこれもよかったけど、この曲がやっぱり白眉。このアンコールだけでライヴ一回分ぐらいの元は取れた気がするよ。

終わってみたら、すでにほぼ24時半。そうか、どうしても3時間演ったという記録を作りたかったんだね。なんかアンコールのときに冷たい反応してごめん(あと、途中で落ちかけてごめん)。最後にステージの端から端まで一人で挨拶して回ってるロバートを見て、なんだかこのバンドのこともう一回ちゃんと聴きなおしてみようと反省。どうも最近のアルバムは買っては売り買っては売りを繰り返してしまってるからね。


この時点でもう半分以上の友達とははぐれてしまっていたけど、最後に一緒だった3人で深夜の腹ごしらえをしてホテルに戻る。豚スタミナ丼うまし。心底疲れたけど、楽しかったよな。来年また行くかと聞かれたら、今の時点ではうーんって言うと思うけど、「もう来るもんか指数」不思議にずいぶん減ってるよ。そうだね、不死身のウィルコがもしまた来年も来てくれたら、間違いなく行くと思う。
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2013年05月15日

Jason Mraz live in Manila

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東南アジアの主要都市の目抜き通りならどこでも、夕方のラッシュ時に雨が降ると途端に交通が麻痺してしまう。昨日のエドサ通りも例外ではなく、思いっきり時間の余裕をみてオフィスを出たというのに、軽く腹ごしらえをして会場に入ったときにはもう前座のフィリピン人の女性歌手が歌っていた。

年末にスティングを観たのと同じアラネタ・コロシアム。やたらと会場がでかくてチケット代の高いフィリピンではもうあまりライヴは観たくないなと思っていたけど、ジェイソン・ムラーズが来るとなると話は別。二夜連続で観た東京でのライヴ(もう4年以上も前になるのか)のことを思い出せば、この人が近くに来るのに観に行かないなんてありえないからね。

なので今回は奮発して一番高いアリーナ席を確保。結構早い時期にチケットを押さえたはずなのに、P列(ということは16列目?)の左端という、まあそれほど大喜びするほどでもない席。客電も落ちて真っ暗な中を案内してもらって席にたどり着くと、左側が空席。ちょうどいいや、誰も来なかったら二人分の席にゆったり座らせてもらおう。

僕が席についてからはその女性歌手は3曲ほど歌ったかな。最後に大好きな歌との前置きで「Hallelujah」を高らかに歌って終了。ものすごい声量の人だね。歌も上手だし、やっぱりフィリピン人アーティストは質が高いよ。その時点で8時20分ぐらいだったかな。30分も演らなかったんだね。これは意外と早くジェイソン出てくるのかな。

と思いきや、セットチェンジだのスクリーンの調整だのにたっぷり30分以上かけて、9時になってようやく暗転。まずはジェイソンがクラシックギターを持って一人で登場。最近のアー写のたっぷりした髭は剃り落としたようで、それでも一週間ぐらいは手入れしてないんだろうなというほどの無精髭。おなじみのパナマ帽に黒いTシャツ(ピンクのフラミンゴ柄)。右の頬には水色と白の四角いペインティング。右腕にも何か模様が描いてあるね。

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意表を突いた静かなオープニングの曲名が思い出せない。知ってる曲なのに。持ってるCD片っ端から聴き返したら思い出すかな。新譜からの「The World As I See It」だっけか。その曲の後半からバンドがぞろぞろとステージに上がり、ちょっとメドレーぽく別の曲(インスト)につなげて終了。

新譜からの「Everything Is Sound」に続けて、早速の「The Remedy」。嬉しかったのは、4年前の東京のライヴや最近のビデオなんかで観ると、この曲のサビのところはずっと音程を下げて歌っていたのに、この日はオリジナルどおり思いっきり声を張り上げて歌うジェイソン。やっぱりこの曲はこうでなくちゃ。そして、それに合わせるかのように満員の会場が一斉に同じラインを歌う。すごいね、やっぱりさすがフィリピン。

次の曲は知らなかったけど、調べてみたら多分「They Shaped My Life (Who I Am Today)」という曲かな。サンキューという歌詞がサビのところで何度も出てくるんだけど、後半その部分をサラマッポーとタガログ語に変えて歌うジェイソン。満場大喜び。

確か7曲目あたりに演った「Frank D. Fixer」が僕にとっての前半のひとつのハイライト。後ろのスクリーンにタイトル本人のモノクロ写真を映したりしてたな。

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去年出た『Love Is A Four Letter Word』、比較的出てすぐに買って何度か聴いたんだけど、どうもとっつきにくくて、去年の個人的ベストアルバムの選考にすら落ちてしまっていたんだけど、このライヴに行くことなって予習のために聴き返してみたら、実はいい曲たくさん入ってるんだよな。この「Frank D. Fixer」もそのひとつ。

たぶん、先行シングルの「I Won't Give Up」が僕にとってはちょっと面白みのない正統派すぎるスローバラッドなのと、いつもアルバムにひとつやふたつは入っている早口言葉系の曲が全然なかったのが印象薄かった理由だと思うんだけど、こうしてライヴで過去の曲と交互に聴いてみると、曲単位のクオリティでは全然負けていないね。

僕にとっての前半の最大のハイライトはそのすぐ次にやってきた。「Frank D. Fixer」が終わってバックのメンバーが一旦退き、ジェイソンが聞いたことのないイントロを奏で始めたかと思うと、そのままスローにアレンジされた「You And I Both」へ。思い出しただけで鳥肌が立つ。いろんな曲でこんな風にオリジナルバージョンとは違ったイントロをつけてたね。こういうのはいいね。

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バックのメンバーについて書いておこうか。といっても名前はちっともわからないんだけどね。ステージ左からドラムス、ギター、ベース。ジェイソンの後方にトランペット、トロンボーン、サックスのホーン隊。ステージ右側、前からパーカッション、ヴァイオリン、キーボード。ジェイソンを含めて総勢10名。パーカッションとヴァイオリンは女性。ちょっと驚いたのが、デビュー前からずっとジェイソンと行動を共にしていたはずのトカがいない。どうしたのかな。

4年前の東京のときに印象的だったのが、エレキギター担当がいなかったこと。そのせいか、とてもオーガニックでふくよかな音だった印象なんだけど、今回のツアーはギタリストが終始ストラトを弾きまくっている。ギターソロなんて入れたりして。

でも、次の「Living In The Moment」だったかな、メンバー全員がアクースティック楽器に持ち替えて、ステージ前に小さく集まる。ギタリストはリゾネイターを、ヴァイオリニストはマンドリンを、キーボーディストはアコーディオンを、パーカッショニストはマラカスを、ベーシストはウッドベースを、ドラマーはなんだかハリセンみたいなのを、そしてホーン隊の一人(全員同じようなハゲ頭なのでどの楽器の人か不明)はフルートをそれぞれ演奏。

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「Lucky」でデュエットしたのは前座の女性歌手。でも二人でステージの両端に立って(女性歌手はこっち側、ジェイソンは一番右側に)歌ってるよ。嫌いなのか?

「Make It Mine」〜「Live High」〜「Only Human」の3曲をメドレーで続けて激しく演奏した後、暗転してジェイソンにスポットライト(バックのメンバーはまだいたはず)。なんか聴いたことあるスローバラッド。あ、これ「Plane」だ。セカンドアルバムの中でも好きな曲のひとつなんだけど、今までライヴでもビデオでも全然観たことなくて、一度聴いてみたいと思ってたんだ。ちょっとヘヴィーなアレンジだったけど、やっぱりいい曲。

パーカッショニストと二人でステージに残り、曲説明を始めるジェイソン。パーカッショニストが腰掛けているのはカホンだ。「この曲は世界中で歌ってる。危ない歌詞が入ってるけど、ペンギンにも無害だからきっと君達にも害は無いはずだ」とか。「子供はこんな言葉は使っちゃいけないよ」と、「You Fckn Did It」を。この超早口ソングを、カホンを演奏しながら一糸乱れず全歌詞ハモるパーカッショニスト。すごいや。間奏では、ジェイソンが左手でコードを押さえたギターの弦を彼女がドラムスティックで叩く(ちゃんとメロディーが鳴る)。すごいなこれ。後半の最初のクライマックス。

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「この曲はここにいる全ての女性に捧げます。あと、全ての女性の隣にいる野郎たちにも。女性って扱いにくいよな、わがままでさ、云々」と、また結構長い曲説明を経て始めたのが、去年のアルバムを聴き返して再確認した名曲「The Woman I Love」。昨日ジェイソンのサイト見てみたらこれのPVが上がってたから、この曲が次のシングルになるのかな。

その後は、「A Beautiful Mess」、「93 Million Miles」と怒涛の名曲をつなげ、最後に皆さんお待ちかねの「I Won't Give Up」で幕。最後のは、あまり僕の趣味でない曲だとはいえ、これだけヒットしたお馴染み曲で周囲にこれだけ盛り上がられると、こちらとしても乗らないわけにはいかない。いや、いい曲だとは思うよ。個人的には夕陽を浴びる草原から惑星まで、タイトルどおり素晴らしい飛躍を見せるバックのスライドショーが見事だった「93 Million Miles」で終わってくれても問題なかったけどね。

ものすごい声量の歓声に迎えられて、アンコール1曲目は「Song For A Friend」。そして、やっぱりこれを最後まで取っておいた「I'm Yours」でおしまい。最後はボブ・マーリーの「Three Little Birds」をメドレーで歌ってたね。「Every Little Thing Is Gonna Be Alright」という歌詞を「隣の知らない人に歌いかけて!」って言ってたけど、残念ながらその時点では僕の隣はもう(終電に間に合わなかったのか)とっくにいなくなってたよ。

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そういえば、冒頭の写真もそうだけど、他にも大きな紙に手書きでいろいろ書いてきているお客さんが多く、中には「私はムラーズに投票した」と書いた人がいて(フィリピンはこの前日が統一選挙の日だった)、ジェイソンはそれを見て、「僕に投票してくれてありがとう」と反応してたな。

最後は全員でステージの前に来て何度もお辞儀をし、ピックを手当たりしだいに客席に投げ入れて(残念ながら16列目まで届くような飛距離のピックは持ち合わせていなかったようだ)、まだ鳴り響く歓声の中を退場。時計を見てみたら、もう11時を過ぎてるよ。2時間強か。

入場するときに、『Love Is A Four Letter Word』のジャケデザインのとどっちにしようかと迷った挙句にこっちにしたTシャツ。フィリピンはコンサートのチケット代はやたらと馬鹿高いんだけど、こういう土産物は比較的安いので(この円安・ペソ高でも2500円弱)、つい買ってしまうよ。こうして家にあるTシャツがまたどんどん増えていく。

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僕が今回のチケットを押さえたときにはまだ未定だった日本公演が決まったね。8月に東京のみ一公演か。それに行く予定の人にとって、この作文が参考になるのかネタバレになるのかわからないけど、新譜がいまいちだったと思って躊躇している人がもしいたら、考え直したほうがいいよ。きっと8月のも凄いライヴになると思う。


Setlist 14 May 2013 @ Smart Araneta Coliseum, Manila

1. The World As I See It
2. Everything Is Sound
3. The Remedy (I Won't Worry)
4. They Shaped My Life (Who I Am Today)
5. Butterfly
6. Three Things
7. Frank D. Fixer
8. You And I Both
9. Living In The Moment
10. Lucky
11. Make It Mine / Live High / Only Human
12. Plane
13. You Fckn Did It
14. I'm Coming Over
15. The Woman I Love
16. A Beautiful Mess
17. 93 Million Miles
18. I Won't Give Up

Encore
1. Song For A Friend
2. I'm Yours / Three Little Birds
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2013年04月04日

Steve Forbert live in Osaka

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名古屋から近鉄にガタゴト揺られて難波へ。スティーヴ・フォーバート33年振りの日本ツアー最終日は、僕が昔大阪に住んでいた頃には影も形もなかった湊町リバープレイスというどでかい建物の、外階段の下に空いているスペースを利用して作ったような小さなミュージックバー、S.O.Raという会場で行われた。11年の暮れにタマス・ウェルズを観た場所からそう遠くないね。難波に来るのはあれ以来だから、あのときのことがなにかと懐かしく思い出される。

また比較的いい整理番号だったけど、前日みたいに行ってみたら開場時刻が早まっていたなんてことになってたらいけないし、初めての場所で迷うと困るので30分ほど早目に行ってみたら、当然ながら誰もいない。しょうがないので信号を渡ったところに見えたタコ焼き屋さんで本場のタコ焼きとビールで腹ごしらえ(さっきの11年のタマスの記事を読み返してみたら、僕はあのときも全く同じ行動を取っているね。きっと僕はこの先ずっと、大阪でライヴを観るときは不必要に早く会場に着いて、時間つぶしにタコ焼きを食べてビールを飲み続けるんだろう)。

開場時刻。整理番号順に入場するかと思いきや、意外なことにドアの近くに立っていた人から順番に中に入れ始めた。なんと、こんな小さな会場なのに指定席だとのこと。場内に5つ置いてある丸テーブルの上にそれぞれ5つの番号が振ってあって、指定された場所に座る。あとは後ろの壁際のスツールとか、バーの前とか。僕は幸いにも比較的居心地のいい場所に座れてよかった。それにしても、あの小さな会場に約40人分の椅子とテーブルを詰め込んでいるもんだから、一旦全員が着席すると(整理番号の後ろの方の人たちは立ち見だったけど)、もううろうろするのもはばかられるほどの人口密度。前日の名古屋公演で知り合った方と話でもしてようかと思ったけど、ちょっとそっちまで気楽に歩いて行ける感じでもない。

でも、さっきビールを飲んだことでもあるし、開演前の空いている時間にトイレ行っておこうと思って並んでいたら、外からスティーヴとスタッフのトレイシーが入ってくる。スティーヴは入ってくるなり「やあ、今日はどうだい?」なんて声を掛けてくれる。昨日背が高いと書いたけど、実際隣に立ってみると、僕とそう変わらないね。

開演時刻より数分前にステージに登場して、前日同様トレイシーとなにやら相談しながらギターのチューニングを始めるスティーヴ。足元には名古屋のときよりも数倍大きな木の板が弾いてある。名古屋ではティムはあの小さな板の上にはみ出さないようにきちんと立って演奏していたけど、スティーヴはあっちへふらふら、こっちへふらふらしてたからね。好きなときにかかとで板を蹴ってリズムを取るためにはこれぐらい大きな板の方がやりやすいんだろう。

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オープニングは「It's Been A Long Time」。ファーストアルバムのアウトテイクだ。こんな曲も演ってくれるんだね。当然のごとく、前日とはセットリストをがらりと変えてきている。終了後にセトリらしき紙を見てみたら、あれは演奏する可能性のある曲を列記してあるだけで、実際にはその順番では歌っていなかったみたい。そのときの気分で次にどの曲を演ろうか決めるんだろう。

そういえば、この日もリクエストを募っておいて、「わかった」と言って違う曲を演り、続けてリクエストされた曲を演奏した。また名古屋のときみたいに半分ジョークでそうしているのかなと思ったけど、きっとあれは、リクエストされた曲を今頭の中にある曲順のどの辺に入れればうまく流れるのかを咄嗟に考えて、その順番で演奏してるんだろうなと気づいた。でもそんなのお客さんに説明することでもないから、リクエストした方からしてみたらなんだか無視されたように思ってしまうかもしれないけど、「君のリクエストは覚えていただろう」みたいなことをいちいち語りかける様子を見ていると、この人こんなふらふらしているように見えて、実はかなり繊細に気を使ってライヴを進めているんだなと思った。

そんな、実はよく気がつく人だと思ったエピソードのひとつ。チューニングをしながら会場の中央付近にいた人に「君は昨日もいた?」と声をかけ、また別の人にも同じように話す(どちらも名古屋で僕の近くにいた人たちだ)。さらに、「その声には聞き覚えがあるぞ。君はえーと、確か横浜に来ていた?」と別のお客さんに話しかけると、その人は嬉しそうにうなづいていたので、当たっていたんだろう。そんなの覚えていられるものなのか?すごいな。

最初の方に演奏した曲で手拍子を促したと思ったら、あるお客さんを指差して「悪いけど君は手拍子やめてくれないか」と。また前日みたいにお客さんをいじってるのかなと思ったけど、どうやらこれはそうじゃないね。自分のリズムに合わない手拍子をされると本当にやりにくいようで、あれはマジでお願いしていたんだね。そう気づくと、いつ自分が同じ指摘をされやしないかと、手拍子するにも緊張してしまう。

会場の前の方に、お疲れなのか酔ったのか、眠そうにうつむいているお客さんがいたのを気にしていたようで、何度かその人に歌いながらちょっかいかけていたけれど、最後にはダグを呼んでその人に注意させてたね。まあ、あれはちょっと、スティーヴでなくても気になるだろう。

そんなちょっとした出来事はあったものの、ステージに登場したときの歓声や拍手の量が前日とは桁違いで、名古屋ではどうもエンジンかかるのに時間がかかっていた風情だったスティーヴも、1曲目から嬉しそうにニコニコしている。明らかに前日よりも調子がよさそうだし、ふらふら度も多少なりとも減少して(笑)、これは二日続けて観に来た甲斐があったよ。

お客さんに歌わせる曲なんかは前日と重複していたけど(歌う順番は全然違ったけど)、それ以外は相当がらりと曲目を変えてきている。僕は残念ながら90年代の曲は全然わからなかったんだけど、終演後に一緒に飲みに行った人(その人もかなりのマニアだった)と話していたら、前日には全然演奏しなかったアルバムの曲を途中でリクエストされたら、今日の客はこのアルバムの曲がわかるんだとばかりに、同じアルバムからの曲を続けて演奏したりしていたらしい。

新作の1曲目「All I Asked Of You」を演奏した後、「これはアメリカーナの一片って感じの曲かな、よくわかんないけどさ」みたいなことを言っていたと思ったら、続けてCCRの「Proud Mary」のカバーを演奏し、「これもアメリカーナの一片って感じの曲かな、よくわかんないけどさ」だって。違うよ!と突っ込むところなんだろうけど、当然のごとくそんな反応が返ってくるわけもなく、他の沢山のジョーク同様、何事もなかったかのように進行。終演後にサインをもらうときに「あの“Slice of Americana”ジョーク、面白かったよ」と言ったら嬉しそうに笑ってくれた。

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「あと3曲」と言って、前日には演らなかった「Steve Forbert's Midsummer Night's Toast」を(これは嬉しかった)。そして、最後の2曲は前日同様、「What Kinda Guy?」と、「Good Night」に続けての「Romeo's Tune」でしっとりと感動的に一旦幕。すぐにアンコールで登場して、ストーンズの「The Last Time」(今日はカバーが多いね)、そして締めの「You Cannot Win If You Do Not Play」。前座なしだから2時間ぐらいは演ってくれるのかなと思ってたけど、アンコールも入れて1時間45分ぐらいだったか(文句言うほどの差じゃないけど)。

そしてその後は、お馴染みの展示即売サイン会。古くからのファンがほとんどだったようで、沢山の人がLPやらTシャツやらにサインしてもらっていた(33年前のパンフレットを持ってきていた人も)。みんな一人で何枚にもサインをもらって写真まで一緒に撮るもんだから、結構時間かかるのに、スティーヴは最後まで一人ひとりに声を掛けながらニコニコして対応してたね。

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僕の順番のときに、ダグが「この人はフィリピンから来てくれたんだよ」とスティーヴに声を掛けてくれる。スティーヴも、前日に僕がそう伝えてあったのを覚えていてくれたらしく、「うん、わかってる」みたいにこっちを見てくれた。「名前何だっけ?」と聞かれたので、「yas、Y、A、S」と言ったら、「ああ、知ってる」と、そんなの覚えてくれてるわけはないけど嬉しかったね。

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この日も一番最後までだらだらと会場に居残ったあと、名古屋でも一緒だった二人のファンの方々とちょっと一杯でもと焼き鳥を食べに行った。なんかこういうのは嬉しいね。「ガーランド・ジェフリーズって知ってます?」と振ってみて、当然のごとく返事が返ってくる心地よさ。「ルー・リードと同級生で」と言うと間髪入れずに「シラキュース大学」とか、なんか自分の頭の中の音楽データベースのコピーを外付けHDDの中に見つけたみたいな感覚(笑)。またどこかのライヴで会えたらいいな。


Setlist 03 April 2013 @ S.O.Ra

1. It's Been A Long Time
2. Real Live Love
3. All I Need To Do
4. My Blue Eyed Jane
5. Worried Life Blues
6. That'd Be Alright
7. Born Too Late
8. Good Planets Are Hard To Find
9. Write Me A Raincheck
10. All I Asked Of You
11. Proud Mary
12. Blackbird Tune
13. Over With You
14. Baby, Don't
15. It Sure Was Better Back Then
16. Rock While I Can Rock
17. Sing It Again, My Friend
18. Blue Yodel #9 (Standing On The Corner)
19. So Good To Feel Good
20. Responsibility
21. Steve Forbert's Midsummer Night's Toast
22. What Kinda Guy?
23. Good Night / Romeo's Tune

Encore
1. The Last Time
2. You Cannot Win If You Do Not Play
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2013年04月03日

Steve Forbert & Tim Easton live in Nagoya

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朝一番にマニラ空港を出発して、成田でセントレア行きの国内線に乗り換え。更に3つの電車への乗り継ぎはどれもとてもスムーズに進み、思いがけず開場時刻の18時には今池の得三に到着してしまった。僕の持っていたチケットには開場18時半、開演19時半と書いてあったのでちょっと早く着き過ぎたかなと思っていたら、小雨の中をたどり着いた会場ではもう番号順の入場が始まっていたので、結構いい整理番号のチケットを持っていた僕は慌てて階段を上って中に入れてもらう。

運よくまだ最前列のテーブルは人がまばらだったので、うんと見やすいほぼ真ん中の席を確保。そこからはチケット記載の手違いを含めて開演までの1時間半を、ジョッキたっぷりのワインとキムチピザで小腹を満たしながらぼーっとつぶす。途中からは、すぐ近くに座っていたほぼ全公演追っかけ中のダイハードなスティーヴファンの方に色々話を聞かせてもらったり、後ろの物販のところにいたゴーティの松本さんや今回の主催者のダグに話しかけたりと、それほど暇を持て余さずに開場時刻を迎えることができた。


スティーヴ・フォーバート33年振りの来日に合わせてわざわざマニラから観に来るなんて、僕もよっぽどのファンなんだろうと思われるかもしれないけれど、33年前にはクラッシュやジャムを熱心に聴いていた背伸び中学生にとっては、朴訥とした人のよさそうな兄さんがこっち向いて微笑んでいるジャケットには手が伸びなかった。もちろん、ヒットした「Romeo's Tune」をはじめ、ラジオやなんかで彼の曲を聴く機会は沢山あったのでいい曲を書くシンガーだとは認識していたけど、僕にとっての彼は、気がつくとまだそこにいるなといった程度の、ちょっと向こうの道をずっと一緒に走っているアーティストといった感じのポジションにいた(僕は別にアーティストとして走っているわけじゃないけど、これだけ長くいろんなのを聴いてると、30年以上前からずっと知ってる人がまだ現役でやってるのを見ているだけで、なんだか勝手に戦友みたいな気持ちになってしまう)。

なので、今回の来日が発表になったときも、即座に飛びついたというよりは、結構悩んだ。連休明けの期初に3日有給を取るには、目をつぶってその後何が起こるかを考えないようにする技術が必要(そして、僕は最近その技術に長けてきた)。でも、久しぶりに彼の曲をいくつか聴き直してみたら、これがもうどれもこれも今の僕のツボに入りまくるものばかり。なんで僕はこの人のことをずっと追っかけてこなかったんだと、改めて中学生の自分を恨んだ。さらにそんな僕の背中を押したのが、前から一度観てみたいと思っていたティム・イーストンがここ名古屋でスティーヴの前座として出演するのを知ったこと(そして、翌日に少人数限定でスティーヴの追加公演が発表されたこと)。もうこれは目をつぶる技術を発揮するしかないと。今回観ておかないと次はまた33年後かもしれないし。


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その、(会場をぎっしり埋めた80人ほどのお客さんのほとんどにとっては単なる前座だったかもしれないけれど)僕にとっては今回の大きなお目当ての一人、ティムが開演時刻ちょうどにステージに現れ、ピックガードのネック寄りのところの塗装がピッキングではげてしまっている黒いギブソンを肩にかける。意外に背が低いね。それに、ジャケ写でよく見る長髪・ヒゲ面でなく、こざっぱりと髪を刈り揃えた男前。

彼のアルバムはオリジナルを2枚と最近出たベスト盤を1枚持ってるだけなので、演奏した半分ぐらいは知らない曲だったりタイトルがぱっと出てこなかったりしたけど、きっと僕以上に彼のことを知らなかったスティーヴ目当てのお客さんたちにとっても、知らない曲だろうがタイトルが何だろうが、そんなことは全然問題にならない素晴らしい演奏だった。

ブルーズマナーの曲で初め、しっとりとしたスローな曲、ポップなアップテンポの曲など、まるでこれが彼の広範な音楽趣味のショーケースだと言わんばかりに、あえてバラエティに富んだ選曲が続く。ギターの上側に紙が張ってあって時々それを見てたから、きっとあれがセットリストなんだと思っていたけど、ライヴが終わってから聞いてみたら、あれはレパートリーが60曲ほど書いてあって、それを見ながらどの曲を演ろうかと考えるだけで、こういうライヴではセットリストは作ってないんだって。

曲によってハーモニカホルダーを首にかけたりカポをつけたり、曲調の多彩さもあいまって、一人でも曲ごとにがらっとイメージが変わる。足元に50センチ角ぐらいの木の板が敷いてあって、それを靴底でガンガン鳴らしながらリズムを取るから、まるでベースの打楽器まで自分で演奏しているよう。

ギターがもう、とにかく上手。グレン・ティルブルックやジム・ボジアみたいにアコギでも流麗なギターソロを延々と披露するというようなタイプではないけれど、歌いながらよくあれだけ味のある細かいプレイができるなと思うほど、観ていても聴いていても気持ちいい演奏。曲によってピック使ったり指弾きしたり。速いピッキングもアルペジオも実に正確。そして、どの曲ももうちょっと聴いていたいなというぐらいのところで絶妙に終わるタイミングのよさ。余計にエンディングを引っ張ったり冗長なソロを入れたりとか一切なし。

途中でちょろちょろ日本語の挨拶を入れたり(子供の頃日本に住んでいて、子役でテレビに出たりしたらしい)、「何か僕に質問はある?」とか、急いでいたせいかそもそもそんなに喋る人じゃないのか、MCもそこそこにプログラムはどんどん進む。多分、冒頭の開演時刻記載違いのせいで押してしまってるので、時間通りに終えないといけなかったんだろうね。

30分ぐらい経ったところで「あと2曲」(と言ったときに後ろの方で拍手が起こったけど、そこは拍手するところか?)と、確か「Burgundy Red」と「Festival Song」を演奏して退場。きっちり45分だったね。なんか全然物足りない。今回彼のフルセットの公演を観られないのが本当に残念に思えた45分間だった。

ライヴ後に彼と話していたときに、「『Get Some Lonesome』聴きたかったな。何か質問は?って言われたときにリクエストすればよかった」と伝えたら、「僕はいつも『質問は?』って訊くんだ。そういえば『Get Some Lonesome』は長いこと演奏してないな。思い出させてくれてありがとう。この後の公演で演奏するよ」だって。くーっ、余計に悔しい。どうせなら週末の鎌倉で演奏して、『Live At Cafe Goatee』CDにして出さないかな。

あとは、途中で「これは新曲」と言って歌った自分の娘についての曲は、8月に出るという予定の次のアルバムには入らないんだとか。「僕は常に曲を書いてるから、結構新しい曲がどんどんできて未発表になってるんだ」とのこと。いい曲だったから、そのうち未発表曲集とか次の次のアルバムとかシングルB面とか(と言ったら彼は笑ってたけど)に入らないかな。


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15分ほどの短い休憩を経て、いよいよスティーヴ・フォーバートが登場。サンバーストのギブソンをチューニングしながらステージ上でしばらくスタッフと談笑中。横のテーブルの上にはセトリを書いた紙の上にハーモニカとカポがずらっと並んでいる(一番上の写真)。ハーモニカはともかく、なんでカポがあんなに沢山いるんだ?

ティムと違って随分背が高いな。58歳という年齢相応の見かけだけど、あのファーストアルバムの兄ちゃんがそのまま年食って髪の毛白くなったという感じ(当たり前か)。チューニングしてたと思ったらなんとなくジャカジャカ始まったみたいなゆるいオープニングはそのファーストからの「Thinkin'」。

いろんな意味で、「こんな人だとは思わなかった」というのが一言でまとめた僕の感想。もっと、なんというか爽やかな感じでギターをかき鳴らしながらアツくせつなく歌うSSWなんだろうなと勝手にイメージしていたんだけど、初めて観るスティーヴはどちらかというとふらふらーっと動きまわり、ギターもテクニカルなフレーズを弾くというよりもあくまでもリズムキープに徹する感じで、ときおりわざと音程を外して大声で歌ったりするところなんかは、タイプは違うけどちょっとトム・ウェイツを彷彿とさせる瞬間もあった。こんな人だとは思わなかった。

演奏しながら「そこの二人は手拍子をするな」とか、同じ曲で観客が延々手拍子をしていると「手拍子するなって言ってるんだ」とかわざわざ歌の途中に言ったり、歌い終えてから「誰もが生まれついてのドラマーじゃないんだ、ジンジャー・ベイカーみたいに」とか言うから、どんだけ気難しい人なんだと思っていたら、どうやらそういうのは全部ジョークのつもりで言ってたみたい。別の曲では手拍子を促したり、観客にリクエストを募っておいて、あえて違う曲を演奏したり(あとの方で「君のことはちゃんと覚えてるよ」と言いながらリクエストされた曲を演ったり)、初対面でそんな難しいジョーク真顔で言われてもわかんないよ(苦笑)

沢山置いてあるハーモニカの中からAのキーのがなかなか見つけられず、やっと見つけて演奏し始めたと思ったら結局その曲ではハーモニカをほとんど吹かなくて「なんだあんなに探したのに要らなかった」とか、とにかくなんか思いついた可笑しなことを言わないと気がすまないんだね(それが相手にとって面白いかどうかは別にして)。そういうところは気が合う気がする(笑)

途中からは、彼がそういう人だというのを僕が把握し始めたせいか、それとも彼も静かな観客に慣れてきたのか、見るからに乗りが違ってきた。相変わらずひょろひょろふらふらしながら歌ってるんだけど、このゆるい感じに引き込まれると逃れられないというような錯覚に陥ってしまう。そんな時にファーストアルバム冒頭の「Goin' Down To Laurel」とか繰り出されてくるもんだから、こちらはいとも簡単に喉のあたりがぐっときてしまう。

「じゃあ次の曲はみんなで歌おう」と言って、観客にコーラスを任せるシーンも何度かあったけど、案の定ほとんどのお客さんは歌詞わからないから皆小声でぼそぼそ歌う。それでもめげずに何度もコーラスさせて、終わったときには(お世辞だろうけど)「ありがとう、すごくよかった」と言ってくれる(それとも、あれもジョークなのか?)。

最後「あと3曲」と言って4曲演奏した最後の2曲が、僕みたいなほとんど初期の曲しかわかりませんという観客にとってはお待ちかねの「What Kinda Guy?」と、ビートルズの「Good Night」からメドレーで出てきたハーモニカのイントロにうるっときた「Romeo's Tune」。後者も聴き慣れたスタジオ版みたいなかちっとした歌い方じゃなくて今のスティーヴのへろへろっとした感じだったけど、それでも名曲。

ここまででほぼ1時間半かな。その後、短いアンコールの拍手に迎えられて、リクエストされた曲と、最後に「You Cannot Win If You Do Not Play」で幕。もっと去年の新作から演奏するかと思って予習して行ったけど、思ったよりも初期の曲を演ってくれたね。きっと、日本のお客さんはみんな33年待ち続けてくれたと思っていたのかな。

二人を初めていっぺんに観た印象。ティムは例えて言えばカチッとチューンアップされた小型のスポーツカーで的確にギアシフトしながらぐいぐい山道を攻めるような感じ。一方のスティーヴは、でっかいアメ車のオープンカーでどこまでも続く道を砂埃を上げながらガーッと進んでいく感じ。ときどきエンジンの調子悪いのかな?と思うけど、それはそれでまた楽しい。ティムの出番が短くて残念ではあったけど、両方いっぺんに観られてよかった。


終了後は物販のところにスティーヴが来て、販売&サイン&写真撮影会。僕はもうマニラ行きの終電に間に合わないので宿を取ってあったからゆっくりと後の方にして、通常はネット通販でしか買えないCDの中からおすすめを隣に座っていたファンの方に教えてもらって買ったり、松本さんお勧めのCDを買ったり、ダグとガーランド・ジェフリーズの話をしてひとしきり盛り上がったりしていた。スティーヴが古い携帯カメラで撮ったというレトロな色合いが抜群な写真(フレーム入りで1枚3000円)も欲しいのが沢山あったんだけど、今回は現金に限りがあるので断念。

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いつまでたっても列が途切れないスティーヴと違って、ほんとにこの日はティム目当てのお客さんは少なかったんだね。手持ち無沙汰に座っていたティムのところに行ってちょっと話をしてサインをもらった(ありがたいことにその後もティムとは少し長く話せた)。ティムはやけに疲れて見えたけど、日本に来てもう一週間近くになるのにどうやらまだ時差ぼけに悩まされているらしい。

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セットリストは、各曲のイントロを聴いただけでもう題名をメモしていたほどのダイハードファンに教えてもらいました(さきほどご丁寧に追加情報も教えてくださったけど、ここにお名前を載せていいものかどうかわからないので)。ありがとうございました。


Steve Forbert Setlist 02 April 2013 @ Tokuzo

1. Thinkin'
2. Something's Got A Hold On Me
3. That'd Be Alright
4. Listen To The Mockingbird
5. Worried Life Blues
6. Schoolgirl
7. Tonight I Feel So Far Away From Home
8. Any Old Time
9. It Isn't Gonna Be That Way
10. All I Need To Do
11. Sing It Again, My Friend
12. Goin' Down To Laurel
13. There's Everybody Else, And Then There's You
14. It Sure Was Better Back Then
15. Blackbird Tune
16. Get Well Soon
17. Lonesome Cowboy Bill's Song
18. About A Dream
19. What Kinda Guy?
20. Good Night / Romeo's Tune

Encore
1. I Blinked Once
2. You Cannot Win If You Do Not Play
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2013年02月19日

Ben Folds Five live in Tokyo

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「ベンに会ったらよろしく伝えておいて」

前日、カフェ・ゴーティを後にしようとする僕に、ジム・ボジアが声を掛けてくれた。その前の日に僕がベン・フォールズ・ファイヴ(以下BFF)を観に行くという話をしたのを覚えていてくれたんだろう。もちろんその後に「『ジム・ボジア?誰だよそれ?』って言われるぜ」と自分で突っ込みを入れるのも忘れずに。

そして、ジムとピートが成田を後にした月曜の夜、僕はつい最近老朽化のために建て替えられるとのニュースが流れた渋谷公会堂に赴いた。朝から生憎の雨模様だったが(過去2回、僕がベンのライヴを観る日は必ず雨が降っている)、夕方、回転寿司で腹ごしらえをしてから(ジムがFBにアップしていた生シラスの軍艦巻きの写真に影響された)公園通りを上る頃にはもう雨は止んでいた。

発売後しばらく経ってから入手した割にはそれほど悪い席ではなかったけど、手を伸ばせばアーティストに触れるような小さなハコのライヴに最近慣れてしまっているから、もうなんかステージがやたらと遠い。僕の席とステージの間にカフェ・ゴーティがまるごと二つぐらい入りそうな距離だ。

客層の大半が女性客だったせいか、開演前の女性トイレは長蛇の列だった。開演時刻の19時になってもまだ僕の席からその長蛇の列が見えていたのに、定刻通り客電が落ちてライヴが始まった。トイレに行けなかった人、開演時刻にちょうどトイレに入れた人、かわいそうに。

ステージ上、左側にベンのグランドピアノ、中央後方にダレンのドラムキット、右側にロバートのベース2本(レスポールの形をしたのと、プレジション)が置いてある。僕はベンはここのところ2年毎ぐらいに観てるから何ら違和感ないけれど、ロバートがデブ。もうこんなデブはロックミュージシャン失格というぐらい(でもマシュー・スウィートやミートローフみたくデブが売り物になるほど太っているというわけでもない中途半端な)デブ。ダレンも太ったよと友達に聞いていたけど、彼はダイエットしたのか、ごくごく普通の見かけ。

オープニングは新作『the Sound Of The Life Of The Mind』から、「Michael Praytor, Five Years Later」。以下、新作からと昔の曲(ほとんどがファーストとセカンドから)をほぼ交互に演奏。毎日セットリストは変えてるのかな?後で最近のライヴのセットリスト見てみよう。

ロバートは2本のベースのうち、レスポールタイプだけを使用。もう1本は予備だったんだね。何曲かでアップライトベースを(時には弓弾きで)演奏していた。ファーストの頃からファズを効かせまくったブイブイした音を出すので有名な人だったけど、こうして生で演奏するのを見ていると、もうこの人のベースって、リズムをキープするための楽器では一切ないね。あれは単に、太めの弦ばかりが張ってあるギターだと思って聴いたほうがいい。足元にはエフェクターがずらっと並んでいるし。

13年振りの来日ということで「僕らは13年毎に再結成して来日するんだ」みたいなジョークを交えつつ、でも以外にMCは少なめでセットがどんどん進む。本編は確か1時間半ぐらいで(僕の記憶に間違いがなければ)17曲とかなりの大盤振る舞い。

今回は再結成BFFとしての来日だから、ベンのソロ曲は当然演奏しないもんだと思っていた。実際、今となっては僕はソロの方が好きな曲が多くなってしまっているから、BFF縛りで演奏されるとちょっとつまらないなと思っていたんだけど、6曲目の「Landed」のイントロを聴いて大感激。結局ソロ曲はそれだけだったから、何を基準にこの曲だけを演奏したのかよくわからないんだけど。

途中、観客席から「Rock This Bitch!」と声がかかり、ベンが(あれは即興だったのかな?)「じゃあDマイナーで」と、やたらと暗い「Rock This Bitch」を演奏し始めた。演奏の途中で「Cマイナー」とか言って転調したり、最後まで冗談なのか本気なのかよくわからない演奏だった(ダレンとロバートもきちんとついてきていたから、最近はああいうバージョンで演ってるのかもしれないね)。

<追記>
昨晩急いで書いたから気づかなかったけど、よく考えたらあれ日本語で歌ってたよな。「Rock This Bitch」じゃなくてあれ「Hiroshima」だった。訂正。

本編後半はファーストからの曲を連発。やっぱり盛り上がるよ。「僕らがバンドを始めたのは1994年で、ファーストアルバムを出したのが翌年。まだ日本盤は出ていなかったのに、日本からファンレターが来て驚いたよ。きっと、HMVだかヴァージンメガストアだかがアメリカから輸入したのを聴いたんだね。そして、その翌年に来日したんだ。クラブ・クアトロで演ったんだよ。あのとき来た人は居る?」と訊いて、パラパラと手を挙げた観客を見て「あのときの観客はたしかそれぐらいの人数だったよ」と笑わせる。

「そのときに日本のテレビに出て演奏したのがこの曲」と、「Philosophy」を演奏。ああかっこいい。僕は96年にはインドネシアに住んでいたから初来日は観られなかったけど、ファーストアルバムが出たときからずっと彼らのファンだった。あのときクアトロに居た人はこんな台詞を聞いて感無量だろうね。

本編最後はお約束の「Army」パラッパーコーラスで完。もう会場のどの座席の人たちにどのパートを歌わせるかとか面倒なことはパスしていきなり歌わせてたね。これだけ会場が大きくなるとちょっと一体感に欠けるところもあるけど、まあそれはしょうがないのかな。個人的には09年にリキッドで観たときがこの曲は一番盛り上がった気がする。

アンコールの拍手を受けて再登場したベンが「今回の東京での初日公演で日本語で歌おうとしたんだけど、日本語の歌詞をすっかり忘れてしまって、演奏しなかったんだ。今日は、僕よりも日本語も英語も上手なゲストを呼んでいるんだ」と言って、アンジェラ・アキをステージに呼び出す。ゲストで来ていることを全然知らなかったからびっくりした。

ベンが出だしでとちってしまい、「くそっ、間違えた。サンキュー。また来年!」みたいなジョークで誤魔化した日本語曲は、よく考えたら09年に出たベスト盤に収録されていたアンジェラとのデュエット曲(「Black Glasses」)ではないね。あれなんて曲だったんだろう。

<2月20日追記>
ネットで調べたら、あの日本語曲は新作の日本盤にボートラとして入っている「Thank You For Breaking My Heart」の日本語バージョンだとのこと。プレッジで早々に輸入盤買ったからそんなボートラがあったなんて知らなかったよ。一体この人は何曲日本語レパートリーを増やせば気が済むんだ。

アンジェラが退場した後、ベンが「この中にミュージシャンはいる?オーケストラをやっているような人は?」と質問。「誰もいないか。指揮者がいきなり予告もなしに指揮棒を振り始めたら演奏するのは難しいよね。今からそれをロバートと一緒にやるよ」と、ベースを構えたロバートとお互い合図なしで同時に演奏を始めるのに挑戦。ぴったり息を合わせて演奏をスタートできたのは、これも新作からの「Do It Anyway」。そして、ラストはお決まりの「Song For The Dumped(金を返せ)」で幕。

アンコールも含めて2時間弱は演ったはずなのに、なんだかやけにあっさりと終わってしまった印象。僕としては、期待していた一番好きな「Best Immitation Of Myself」がなかったのが残念の極み。途中の地味な曲を1−2曲カットしてもいいからこの曲演ってほしかったのにな。でも、しょうがないね。ゴーティでのライヴみたいにその場でアーティストにリクエストして(そして大抵は却下されたりして)ありえないほどの臨場感を味わえるようなライヴに慣れてしまっているから、ついそんなわがままも出てしまう。「Best Immitation Of Myself」は13年後の再来日に期待しよう。

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Setlist 18 Feb 2013 @ Shibuya Kokaido

1. Michael Praytor, Five Years Later
2. Jackson Canary
3. Hold That Thought
4. Selfless, Cold And Composed
5. Erase Me
6. Landed
7. Sky High
8. Missing The War
9. Battle Of Who Could Care Less
10. Draw A Crowd
11. Theme From Dr. Pyser
12. Hiroshima
13. Brick
14. Philosophy
15. Kate
16. Underground
17. Alice Childress
18. Army

[Encore]
1. Thank You For Breaking My Heart (duet with Angela Aki)
2. Do It Anyway
3. Song For The Dumped
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2013年02月18日

Jim Boggia & Pete Donnelly live in Kamakura Pt. 2

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ジム・ボジア&ピート・ドネリー日本公演の最終日。朝っぱらから大船のカラオケボックスに集合し、約半日かけて2012年ベストアルバム発表会を終えたいつもの仲間たちと鎌倉に向かう。駅前で軽く蕎麦など食しつつ、寒風吹きすさむ中をゴーティへ。

日曜の夜だというのに、観客の入りは前日より数割増しといった感じ。店中のベンチや椅子を総動員した上で、最後部は立ち見のお客さんがずらりと並び、身動きも取れないほど。前の方に陣取っているのはいつも見る顔ぶれだけど、あまり見かけないお客さんもちらほらと見かける。きっと、初日の東京公演を観て、もう一度観てみたいと思った人たちかな。なんにせよ、客層が広がるのはいいことだ。

開場から開演まで、またできればジムやピートと話そうかなと思っていたけれど、二人がおそらく腹ごしらえに出掛けてしまったのと、びっしり詰まった座席から身動きするのが大変だったのとで、結局ずっと椅子に腰掛けたまま半時間ほどを過ごす。

腹ごしらえに出かけるときに、ピートがすれ違いざまに「ああ、昨日訊かれた(金曜日の3曲目に演奏した、僕の友達が曲名がわからなくて前日にピートに教えてもらった)カバー曲、昨日教えたルー・リードの曲じゃなかったよ。あれはNRBQの『Kick Me Hard』のCDのボートラ曲だった」と、わざわざ正解を教えてくれる。なんと律儀な。

開演予定の19時を何分ぐらい回った頃だろう、半袖Tシャツ姿のジムと、昨日のスーツとはうって変わってラフなネルシャツ姿のピートが登場。「今日は最終日だし日曜の夜だから長く演るよ」と言いながら、前日と同様にピートのヴォーカル、ジムのベースで開幕。

基本的な進行は前日と同様、二人でベースとエレキとアコギ(これはジムのみ)をとっかえひっかえしながら、お互いの持ち歌を数曲ずつ交互に歌う。演奏している曲自体は前日とそう大きく変わらないけど、曲順を大きく変えてきているね。ジムは前日の後半1曲目だった「Made Me So Happy」を自分のパートの最初に持ってきたのに続き、エンディングの定番曲「Several Thousand」をここで早くも披露。

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前日にはなかった組み合わせが、ジムにアコギを任せたまま、ピートが1曲でピアノを弾いたこと。最後ちょっととちったりしてたけど、随分上手に弾くね。この曲のとき、ジムがギターをマイクスタンドにぶつけてしまい、ピートがびっくりして振り向いたり、ジムのエフェクターの具合がおかしくなったりといったハプニングも。

ジムは前日断念した「Once」を歌ったり、「Three Steps At A Time」を入れたり、常連のファンのリクエストに応えて「O/P」を歌ったりと、前日とは微妙に曲を変えてきている。「次の曲は『I Can Barely Wait』」と言ったときに咄嗟に反応した僕と隣のNさんのことを指差してうなずいたり。それにしても、何故未発表のままなのかわからないほどのいい曲。前日終演後にジムと「次のスタジオアルバムはいつ作るの?」という話をしていて「まだアルバムを作れるほどの曲が書けていなくてね」とやけに消極的だったけど、こんなレベルの曲ばかりが入ったアルバムなら、あと何年でも待つよ。

ピートもフィグスのファンのリクエストに応えて、これまで演奏したことのないというフィグス時代の曲を何曲か披露。でもこの日の(僕にとっての)ピートのベストは、アンコールの最後で手書きの歌詞カードを見ながら歌ったクラッシュの「Train In Vain」だろう。「僕は他人の曲の歌詞を覚えるのがとんでもなく苦手なんだ」と、前日に僕があれこれとリクエストした曲を却下したときと同じく、「僕には脳みそというものがないんだ」なんて冗談めかしながら譜面台を持ってきて歌い始めたけれど、やっぱりかっこいいよな。無理やりな見方をすれば、(若い頃の)ミック・ジョーンズに似ていなくもない。

ジムのパートは、どちらかといえば前日の後半に演奏した曲を前半に持ってきて、前日の前半の曲を最後の方に演ったりしていたけど、ラスト前のこの曲の位置だけは変わらない。すでにライヴのクライマックスの定位置を確保した感のある「Listening To NRBQ」。4フレットにカポをつけて、実に静かに弾き始めるけれど、最初の一音でこの曲とわかり、いつも息を呑んでしまう。本日はラストのNRBQ曲の挿入曲も含め、かなりオリジナルに忠実な仕上がり。

続く「To And Fro」で本編は終了。「最後はロックするぜ!」とか「盛り上がってるか!」とか、散々ロックンローラーぽく叫び、「これで一旦終わった振りをするぜ!」とやはり最後は笑わせる。

その言葉通り、一旦後ろに引っ込んだ後、すぐにジムが再登場。ウクレレを抱え、日本に来てから書いたというヴァレンタインの曲(帰りにタイトル訊いてくるの忘れた!)と、最近彼の別ユニット、マッド・ドッグス&ドミノスで演奏しているレオン・ラッセルの「A Song For You」を。その後、ピートをステージに呼んで、先述のクラッシュのカバーともう1曲を演奏したところで幕。

<追記>
ジムにツィッターでヴァレンタインの曲名を訊いたら教えてくれた。「Candy Heart」。いい曲。

3枚にも亘る手書きのセトリの写真を撮らせてもらってきたけど、またしてもジムが即興で歌った変な歌や、ピートが突然弾き始めたベースラインに合わせてジムも乗ってきた「Tighten Up」なども含めて、どこまでが本日の実際の演奏曲に忠実なのかはもうよく覚えていない。一応参考までに写真を載せておこう。

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アンコールが終わったのはもう22時を大きく回っていただろうか。またしても二人と談笑したりサインをもらったりするお客さんも多かったけど、そろそろ終電に間に合わなくなりそうな人たちがバタバタと帰りを急いでいくのも見える。

そんな感じだから、僕ももうジムにあれこれ話しかけるのをやめておいて、「今度はいつ来るの?クリスマスぐらいかな」みたいに軽くジャブを振ってみたら、「ゴールデンウィークに来るよ」だって。ははは、いいね。「ジムが来るときには僕も必ず飛んでくるから」と、サインと一緒にジャケに書かれても差し支えのない話題に誘導しながらサインをもらう。

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外でタバコを吸いながら他のお客さんと歓談していたピートのところにも(タバコを吸い終わるのを見計らって)行き、サインと写真をもらう。前日に僕がお土産として渡したフィリピン産のドライマンゴのことを「あれすごくおいしかったよ。あっという間に全部食べてしまった」とかわざわざ感想を言ってくれる。写真を撮るときにも、何度も「Nice to meet you」と言ってくれる。もちろんそんなのお世辞にすらならない単なる挨拶だけど、(こんなかっこいい奴に)こんなに嬉しそうに言われると、こっちも心底嬉しくなってしまう。

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あっという間の二日間だった。二人だからその場での咄嗟なリクエストができないとか、ジムの曲がどうしても定番に固まってしまうとか、ジムがちっとも新曲を披露しないとか、リラックスし過ぎたせいか歌詞忘れなどのチョンボが多かったりとか、小さな不満がないわけではないけれど、こんなに楽しいライヴを観られるなら、そんな不満なんて全然たいした問題ではない。ゴールデンウィークなんてとても無理だろうけど、また近いうちに来てほしいな。まあ、僕がマイレージを使い果たしてしまわない程度の頻度でね。
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2013年02月17日

Jim Boggia & Pete Donnelly live in Kamakura Pt. 1

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2013年海外追っかけ企画第一弾。下手な日本人アーティストよりも日本ツアーの回数が多いことで知られるジム・ボジアが、去年の6月以来となる来日公演を行うのに合わせ、マニラから片道4時間(プラス成田〜鎌倉約2時間)の道のりを駆けつけた。今回のツアーは、フィグスのベーシスト、ピート・ドネリーとのジョイント公演。

「フィグスの」とは書いたものの、僕はフィグスのことなんて90年代の一時期にグレアム・パーカーのバックを勤めていたことぐらいしか知らないし、彼が一時的に在籍していたNRBQもろくに聴いていないから、去年出たソロアルバムがほぼ僕の持っている彼の全音源。それなりに予習してきたけど、果たしてどれだけわかるものか。

一週間前の東京に始まり、日本各地でほぼ毎日のように公演をこなしてきた二人の、この週末の鎌倉3Daysが最終公演となる。3Daysとは書いたものの、金曜日の公演はわりと最近になってから急遽発表になった追加公演。二人で(事前リクエストに答える形での)カバー曲だけを演奏するという興味深い催し。くーっ、それを先に知っていたら、マニラからのフライトをあと半日早めたのに。残念ながら僕が成田空港に降り立ったのは、ちょうどそのカバー曲大会が始まったのと同日同時刻だった。

いつものように開場時刻より少し前に鎌倉に集合し、初日の東京公演・前日のカバー曲大会に参加した友達からそのときの様子を聞かされつつ(あの曲もあんな曲も演ったなんて)、事前の腹ごしらえ&アルコール摂取。

ボジアのライヴでよく見る面々と一緒に入場し、カウンター近くでセットリストを作成しながら話しているジムとピートに挨拶。嬉しいことにジムは僕の顔を覚えていてくれたようで、「やあ、来てくれたの」と向こうから声をかけてくれる。「今マニラに住んでいるんだ。このライヴのために飛んできたんだよ」と言うと、サービス精神旺盛なジムらしく、大げさに喜んでくれた。

ピートもセットリストを書く手を休めて向こうから握手をしてくれ、「名前はなんていうの?」と聞いてくれる。「yas」と答えると、ジムが「ああそうだった、Y-A-S-Sだよね?」と言うから、「いや、それは別のYassさん。僕はSが一つ。ややこしいよね」と、その後しばし談笑。

セットリストを指差しながら「今日はリスト決まってるなら、リクエストなんて駄目だよね?」と聞いてみると、ジムが「いや、そんなことはないよ。言ってみて」と言うから、「じゃあ、NRBQの『Me And The Boys』できる?」と聞くと、ジムは「それはお前の担当」と言わんばかりにピートの方を見る。ピートは「うーん、あの曲は歌ったことがないんだ。それにあれほとんどドラムがメインだから」と。「じゃあ、デイヴ・エドモンズのカバー・バージョンがあるよね。あれならギターメインだし」としつこく振ってみるけど、今度までに練習しとくよ、とかわされた。

「それなら、『Chalk One Up For Albert's Side』は?」と聞いてみたら、ジムがその曲がどんな風に二つのコードを同時に重ね合わせて(?)複雑に演奏されているかを説明してくれた。あんまり難しくてここに正確に書けるほど覚えていないけど、「(その曲でメインに使われている)ピアノで演奏するのは無理だけど、明日の昼にギターで練習してみて、できそうなら明日演ってあげるよ」とのこと。「じゃあ、あの印象的なベースはピートに弾いてもらってよ」とさらに無理強い。ピートも「うーん、曲は知ってるけど」とちょっと自信なさげ。果たして、最終日にこの曲を演ってくれるだろうか。

「今回ってほんとに僕らのライヴのためだけに来たの?」と聞いてくれるから、「いや、たまたま翌日にベン・フォールズ・ファイヴのライヴがあるから、それも観てから帰る」と言うと、ジムはBFFがいかにロバート・スレッジがメインのバンドであるかを切々と語りだす。「それに、あのドラマーも凄いよね。名前何てったっけ(ダレンです)ああそうそう、ダレン、あんな凄いビートを叩き出す奴もなかなかいないよ」みたいな。ベンは?「BFF好きなんだ。じゃあ、何かカバー演ってよ」と振ると、0.1秒で「無理。あんなピアノできない」と却下。

明らかにセットリスト作成の邪魔をしているので、「じゃあ、続きはライヴの後で」と、自分の席に戻る。ライヴは、定刻の19時をちょっと回った頃に始まったかな。ちょっと遅れたのは僕のせいでなく、その後もいろんなお客さんと話していたジムのせいだと思う(ことにしよう)。

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まずは、ピートがフェンダーのテレキャスター、ジムが同じくフェンダーのマスタングベースを抱え、ピートのリードヴォーカル曲から開始。予想通り、付け焼刃の知識だとピートの曲名はほとんどわからない。噂通りの阿部寛似。背丈はジムよりちょっと高い程度だから180もないと思うけど、顔が小さい。というか、顔の面積に対してやたら目鼻がくっきりしてるから余計に小さく見えるんだな。ジムのベースは、コードに沿って基本的な音を押さえているだけのようだけど、まあこの人は何をやらせてもサマになるよね。

ピートが2曲歌った後、お互いの楽器を交換して、ジムの「Bubblegum 45s」、さらにジムがピアノに移って「Let Me Believe」、またギターで「Annie Also Run」と定番曲が続く。今回の来日前に、僕がこれまでに見た5回のジムのライヴ(4人編成の1回を含む)で、どの曲を何回演奏したかをリストにしてみたら、「Bubblegum」はソロ公演の4回、「Let Me Believe」と「Annie」は全5回で演奏しているほどの超定番。なんでそんな暇なことをしたかというと、今回はこれまでライヴで聴いたことのない曲をリクエストしてみようと思って(それがあっての「Albert's Side」話)。

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ピートはさすが本職のベーシスト、しかも色んなアーティストのバックを勤めてきた経歴の持ち主だけあって、ジムの曲に合わせて実に綺麗なベースラインを入れる。時折ベースギターを持ち上げるようにして弾くのがまたかっこいいね。まあ、かっこいい人は何やらせてもかっこいいと。

その後もジムがギブソンのアコギにピートがベース(あるいはテレキャスター)など、様々な組み合わせで楽器をとっかえひっかえしてセットが進行する。ジムがアコギのソロで演った曲(確か「Annie」?)のときには、ピートはたまたま空いていた客席に座ってご観覧モード。ゴーティならではの風景だよね。ピートの曲名はなかなかわからないけど、彼のソロ『When You Come Home』で僕が今のところ一番気に入っている「Can't Talk At All」はピート2度目のリードパートで演ったかな。

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お互い(確か)6曲ずつの持ち歌を演奏したところで前半終了。1時間弱といったところか。休憩時間も沢山のお客さんと延々と話しこんでいたジムとピートのせいで、ほとんど30分ぐらいあった途中休憩を挟んで、後半はジムの「Made Me So Happy」からスタート。

アンプの上に無造作に置いてあったセトリのせいで、後半1曲目がこの曲だというのはわかってしまっていたんだけど、次に書いてあった曲名「Once」をちらっと見たジムは、なにやらあやしげな即興曲を歌いだす。「♪このカポをどこにつけよう」「♪この曲にカポはいらないんだった。ピートにあげよう。ピートはカポを使うかな」みたいな可笑しな歌詞を次々に繰り出し、ピートもつられてベースの(結構上の方、11フレットあたり?)にカポをつけて伴奏。ああおかしい。

引き続き、グローヴァー・ワシントン・ジュニアの「Just The Two Of Us」を突然歌いだすジム。ピートも慌ててベースで合わせたりしてたけど、完奏せずに終了。ジムはそのまま(セトリにはなかった)「To And Fro」へ。なんだ、「Once」やらないのか。終了後に訊いてみたら、「あー、今日の喉の調子だと『Once』は無理。最後絶対に声出ないし」だって。「明日演るよ」という言葉に期待。

第二部はピートもフィグスの曲(「Some Desperate Measure」って言った?)などを交えつつ、前半よりもかなりいいペースで進む。僕にとっての後半最初のピークは(さっきのカポの即興曲を別にすれば)、ジムが「昨日のカバーソングナイトではこの曲を演奏しようと思っていたけど演らなかったんだ」と言いながらアコギで弾き始めたポール・マカートニーの「Junk」。ああこれ、いつか機会があればジムに歌って欲しいと思ってたんだ。よくぞ昨日演らないでおいてくれたものだ。大好き、この曲。

そして、後半最大のピークは、ピートが「これは僕が少しの間在籍したバンドについてジムが書いた曲。あのバンドにいられたことはとても光栄だ」みたいなことを話し始めた時に訪れた。もちろん、「Listening To NRBQ」だ。ライヴ前の飲み会で、「前にやった人生の20曲、今の僕ならこれを入れるね」と言ったほどに、僕にとっての存在が大きくなってしまった一曲。いつものジムの弾き語りもいいけど、ピートの雄弁なベースに支えられての演奏は最高だった。

「ああもう、これで終わってもいい」と思ったけど、最後に続けてこれも定番の「Several Thousand」。ちなみにこの最後の2曲も、僕が観た過去のライヴで必ず演奏している超定番曲だ。演奏終了後、「アシタノバン」とか流暢なジムの日本語を交えて一旦ステージ(?)を下りたものの、ほとんど間髪入れずに戻ってくるジム。

この日初めてウクレレを持ち(プラグを挿してアンプにつないだのは今回が初めて?)、これも定番のブルース・スプリングスティーン「Thunder Road」〜「Over The Rainbow」のメドレー。いつ聴いてもいいよね、これ。実はマニラで現地製のウクレレをもらってポロポロ弾いているんだけど、目の前で見ているこの楽器がとても同じものだとは到底思えない。

「すごいね、それ」とか言いながらピートもステージに戻ってくる。「なんて素晴らしい観客なんだ。ここに住みたいよ。あ、それより君たちアメリカに来なよ」みたいなこと言ってる。ジムもいつも言う台詞だね。そりゃ、これだけ密接なライヴができたら、ずっとこれを続けたいと思うよね。僕もそう思うよ。アメリカには住まないと思うけどね。

ピートのソロ『When You Come Home』からタイトル曲を演奏し、一旦下がってまた出てきた二人は、最後にキンクスの「Waterloo Sunset」を。ジムの最新ライヴ盤『Ample Seating Available』とゴーティでのライヴ盤を彼のサイトから買ったらおまけで付いてくるCD-R『Handmade Live Rarities』の最後を飾るカバーだ。そのライヴ盤同様、観客にコーラスを求めるジム。例によってそんな高い声は出ない僕。隣に座っていたNさんは最初からしっかりコーラスを入れて、ジムに指差されてたね。

アンコールも含めた第二部はしっかり1時間以上演ったかな。最後の曲が終わってBGMのCD(最初はブルース・ヒューズの「Several Thousand」だ)が流れ始めてもほとんど誰も席を立たない。やがて、二人にサインを求めに行ったり話しかけたりする人がちらほらと。僕も頃合いを見計らって、持参したCDを持って行く。まずは、友人のRさんが持ってきた『Songs Of No Consequence』(ピートがプロデューサー)をきっかけにグレアム・パーカー話でひとしきり盛り上がる。ピートは「新しいアルバム聴いた?『Three Chords Good』」と熱心に話し出す。確か「Live In Shadows」が一番好きって言ってたかな。「もうグレアムとは一緒に演らないの?」なんて訊いてしまったけど、それは愚問というもの。なんといってもピート自身が「ルーモア再結成だよ。最高だね」なんて言ってたのにね。

僕は、グレアム&フィグスの97年のライヴアルバム『The Last Rock 'n' Roll Tour』のジャケにサインをもらう。裏ジャケの写真を見て、「これは確か20代前半ぐらいの写真だよ。この当時にしてもずっと若い。グレアムがどっかから探してきて載せたんだ」だって。

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その後、ジムのところに行って『4 Way Street』のジャケにサインをもらう。「これって何年のアルバムだっけ、結構古いよね」という話をしていたら、案の定脳内ダダ漏れジムにそのときの会話をそのままサインと一緒に書かれた。ちなみに、開演前にジムが僕と間違えていたYassさんへのサインは「君の名前は少し長いからインクを沢山消費するよ」というものだった。僕とジムがその会話をしていたときにはYassさんはいなかったから、彼にとっては完全に意味不明のメッセージだよね。たまたま帰り道が一緒になったので、説明させてもらった。(僕のせいでは全くないはずなんだけど)なんだか申し訳ないよ。

別れ際に「また明日」と言ってジムと握手をしてゴーティを後にする。実は今回は鎌倉2Daysだったので大船に宿を取ってあるから、もっと終電ぎりぎりまでいてもよかったんだけど、まだ先は長いからというのと、このブログを今晩中に上げてしまいたかったからというので(もう4時過ぎてしまった!)、早々に切り上げることにした。というわけで、明日の最終日につづく。

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2012年12月12日

Sting live in Manila

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マニラにスティングが来ると最初に知ったのは確か9月ごろだったか。Back To Bassと名付けられたツアーは、上のポスターにもあるように、ここ数年ずっとライヴでは歌とギターに専念していたスティングが久しぶりにベースを演奏するというのが売り文句。08年のポリース再結成ライヴをチケットを買っていたにも関わらず見逃してしまった身としては、それはちょっと見逃せないなと、早速チケットを押さえた。

ただ、上の写真の下のほうに小さく数字が書いてあるのを読めるかもしれないけど、ここフィリピンのコンサートチケットの代金というのは、当地の物価をたとえ考慮に入れなかったとしても、暴利としかいえない価格。6種類あるチケットの代金が上から15840ペソ、10560ペソ、7920ペソ、5810ペソ、3700ペソ、1030ペソ。最近のペソ高騰のお陰で円換算がしやすくなって、1ペソ=約2円だから、それぞれの価格を倍にしてもらえれば円の金額になる。アリーナ席は3万円超ということだ。

僕が手にしたのは下から3つ目のグレードの席(それでもほとんど1万2千円近くする)。ステージをほとんど斜め横から見下ろす感じのスタンド中央あたりの席。まあ、これ以上安い席だともうほとんど見えないだろうし(ちなみに1030ペソの席はスタジアムのほぼ天井に近いところの早い者勝ち自由席)、かといって数万出すのもなあという妥協の選択。


「スティング公演の会場が変更になった」と風の噂で聞いたのは先月のこと。なんでも、元々の会場であった、アジア最大規模を誇る商業施設SMモール・オブ・エイジア(MOA)に隣接するMOAアリーナを運営するSMグループ(フィリピン最大の財閥)が、ルソン島北部のショッピングモールを拡張するために、環境団体の反対を押し切って松の木など182本を伐採したという話を聞き、急遽会場を変更したとのこと。さすが森林保護者スティング。

替わって会場となったのは、MOAアリーナとほぼ同規模(つまりフィリピン最大規模のライヴ会場)であるアラネタ・コロシアム。ちょっとここで問題が。僕は元々のチケットをSMチケットというところで購入していたのが、なんとSMチケットは上記のゴタゴタを一切顧客に知らせず、僕も“風の噂”で聞くまでそんなことは全く知らなかった。自社ウェブサイトからも、いつの間にか何事もなかったかのように、スティングのスの字すら消えてなくなっていた。

そのことを知ったとき、僕はちょうど地方出張中。どうやってチケットを交換すればいいのかをSMチケットにメールで確認すると、「MOAアリーナのチケット売り場に元のチケットを持ってくれば交換できます。締め切りは今日の7時」だと。あのね、僕マニラにいないんだけど。しかもそっちから一切連絡もして来ず、なにその仕打ち。

結局さんざん面倒なやりとりをした結果、マニラに戻った日にMOAアリーナにチケットを交換しに行くことに(「あなたのために延長してあげたんですからね」とまで言われる始末)。しかも、交換してもらったチケットは、なんだか微妙に元の席よりも上のほうだし。


と、かなりうんざりした気分で出かけたアラネタ・コロシアム。日曜だというのに夜8時なんて遅い時間に開演だし、チケット見てもサイト見ても何時開場なのか書いてないし、ただでさえ始終渋滞しているマニラで、終演後いったい何十分後に家に戻れるのかとか、到底ライヴを楽しむなんて気分とはほど遠い感じで辿り着いた。

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マニラは11月に入った頃からすっかりあちらこちらでクリスマス仕様。この写真だけではわからないけど、ARANETA COLISEUMの文字の下側の電飾がこのままあちこちに広がって、ネオン仕掛けの動物(何故かエビとかタツノオトシゴとか)や巨大なクリスマスツリーにつながっている。

入場して席に着いてみると、やっぱり相当上のほうだなあ。ステージ上にいる人間がタミヤの35分の1のミリタリーキットのプラモデルぐらいの大きさにしか見えないよ。ここのところずっと、下手したらアーティストに体がぶつかってしまうぐらいの勢いの小さなハコでしかライヴ観てなかったから、これはちょっと気持ちが醒めてしまうね。

これが僕の席から見たステージとアリーナ席。もうほぼ真横といっても差し支えないぐらい。まあ、これだけ高いお陰で、ステージ手前に置いてある黒い大きなモニタースピーカーでステージ上の誰かが見えないなんてことがないのが不幸中の幸いか。ちなみにこの写真を撮った時点ではまだ席はガラガラだけど、最終的にはアリーナから天井付近の席まで満席だった。

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まだかなり空席が目立った8時ちょうど(ほとんどのお客さんは売店とかトイレにたむろしていた)、突如客電が落ちた。まさかの定時開始?と思ったら、前座のフィリピン人バンドだった。おいおい、8時開始で前座まであるのかよ。これは今日中に帰れないかも。

子供みたいな声と体型のヴォーカル&ギターと、ベースとアコギの3人組。半分カバー、半分(タガログ語の)自作曲という感じのグループ、僕は名前は知らなかったけど、出てきた途端に大歓声で受け入れられてたから、もしかしたらこちらでは人気なのかも。歌も演奏もめちゃくちゃ上手かったよ。さすがフィリピンバンド、レベル高い。

前座がきっちり30分で終了、その後20分ぐらいしてまた客電が落ちる。さあ、いよいよスティングの登場だ。黒いぴったりしたシャツに、上のポスターと同じボロボロに塗装がはげたフェンダーのベースを肩から提げて、5人のメンバーと一緒にステージに現れる。スティングとギタリストがステージ向こう側から、その他3人はステージのこちら側から。

しばらく見ないうちに、スティングずいぶん禿げたなあ。でも、おでこの面積がどんどん広がっているという感じで、頭頂部はふさふさの金髪。両サイドを綺麗に剃りあげているから、見た目ほぼモヒカン。なんでこんな風にかっこよく禿げられるんだ?同様に前頭部から徐々に進行する例でいうと、ジェイムズ・テイラーなんか未練がましいまでに後頭部&側頭部だけ残ってたりするけど、頭頂部で進行が止まるという事例は他にあまり見たことないよ。

閑話休題。なにも言わずにスタートした1曲目のイントロで大歓声。すごいなこれは。「If I Ever Lose My Faith In You」がオープニング。この人全然声変わってないね。たまにオリジナルよりも下で歌うこともあったけど、よくもまあこんなこめかみの血管切れそうな歌ばかりあのトーンで歌えるよ。すごいな。

その曲が終わったところで早速メンバー紹介。ギターは確か最近ずっと一緒に演ってるドミニク・ミラー(Dominic Miller)だね。僕のほうから見て手前にいる青いシャツを来た黒人、デイヴィッド・サンシャス(David Sancious)だ! リアルタイムで知ってるわけじゃないのに、いまだに「元Eストリート・バンドの」と思ってしまう。すっかりお爺さんになってしまったなあ。

あとのメンバーは僕はよく知らない。調べてみたら、ドラムスがヴィニー・カリウタ(Vinnie Colaiuta)、ヴァイオリンがピーター・ティッケル(Peter Tickell)、女性のコーラスがジョー・ロウリー(Jo Lawry)。今どきコーラスだけのメンバーがいるというのも珍しいかも。

続けて演奏を始めたイントロの、このふわっとした浮遊感。「Every Little Thing She Does Is Magic」だ。どういうわけか、僕はこのツアーはスティングがソロになってからの曲(だけ)を自らベースで演奏するという趣旨だと思い込んでいたから、ここで早くもポリース時代の曲が出てきたことで大歓喜。

さらに続けて、「Englishman In New York」。頭から立て続けになんて贅沢な選曲。観客大合唱。ステージ上方に架かったスクリーンを見ると、スティングも終始ニコニコしている。そりゃ、これだけの大歓声に大合唱、嬉しくないわけないだろう。

続く「Seven Days」はオリジナルとがらっと変わった、なにやら拍を数えるのも大変なほどの難しいリズム展開のアレンジ。どのメンバーも超達者。まあ当然だろうけど。86年の名ライヴ盤『Bring On The Night』で聴けた、大きな波に乗っているかのようなうねりを持ったリズムは、当時とはすっかり代替わりしたメンバーでも依然健在。

二曲目となるポリース・ナンバー「Demlition Man」は、始まった瞬間どんなハードロックを演るのかと思ったほどの激しいアレンジ。ここらへんまで聴いてようやくわかった。今回のツアーって、単にスティングがベースを弾きますよというよりは、最近オーケストラと競演とかあれこれお上品な方向に触手を伸ばしていた彼が、まさにあの『Bring On The Night』時代のように、また“バンド”の一員としてツアーに出てみようと思ったんだ、きっと。手馴れた曲にも新鮮なアレンジを施したりして。

しばらく前に入手して聴いた、08年再結成ポリースのライヴ盤『Certifiable』での、現役時代と打って変わったやたらとゴツい音とどうしても比較してしまうんだけど、これだけのテクニシャンが集まってこれだけしなやかかつふくよかな演奏を聴くと、もう僕にはポリースの再結成なんて全く必要なく思えてしまう。ポリース時代の曲しか演奏できないなんて妙な縛りも気にしなくていいしね。

事実、終わってみたら全演奏曲目のほぼ半数がポリース時代、残りがソロになってからの新旧織り交ぜた選曲というバラエティは、実にいいバランスだった。単なるヒット曲集でなく、地味ながらも聞かせる曲も多かったし(多少中だるみした部分もなきにしもあらずだったけど)。

テーブルに置いてあった小さな狐のぬいぐるみを手に、「フィリピンに狐はいないだろう。イングランドには沢山いて、ニワトリを襲って食べたりするんだ。次の曲は雄と雌の二匹の狐の物語」と説明して始めた「The End Of The Game」。オーケストラと競演した最近の、その名も『Symphonicities』というアルバムに含まれた曲みたいだけど、元々は「Brand New Day」のシングルB面だったんだね。『Brand New Day』は僕が律儀に彼のアルバムを続けて買っていた最後の時代のアルバムだな。99年か。もう10年以上前になるのか。

これに続く「Fields Of Gold」とか、観客とのコール&レスポンスが延々続いた「Heavy Cloud No Rain」に続いた「Message In A Bottle」とか、曲の緩急のつけ方が抜群。ちょっとだれてきたなと思った瞬間、突然「Message In A Bottle」のあのイントロのギターリフが流れてきたときなんて、失神するかと思った。

同じく、静かな曲が3曲ほど続いてちょっと中だるみ感があったところにあの「De Do Do Do De Da Da Da」のイントロは破壊力抜群。盛り上がるのなんのって。こちらも観客に散々歌わせ、かなり長く続いたところで突如トーンが変わって、いきなりジャズっぽいインプロビゼーションに突入。リード楽器の3名がそれぞれソロを取る。デイヴィッドのジャジーなオルガンソロは予想の範疇だったけど、ピーターの超速弾きヴァイオリンは凄かった(このパート以前にも何かの曲で速弾きソロを披露)。

この人、スタジオ盤ではブランフォード・マルサリスが吹いているサックスのラインをヴァイオリンでそのまま(音色まで似せて)なぞったり、かなり聴かせたね。特にこの即興演奏パートでの、ステージを動き回りながら、弓をぼろぼろにしながらのソロは格好よかった。

この即興パート、どこのセットリストを見てもタイトル書いてないけど、これだけで独立した1曲と言われても違和感ないぐらいの充実度と長さだったよ。なので僕の中では今回のライヴの16曲目はこの曲。タイトル不明。

そして、またしても説明不要のイントロ。「Roxanne」だ。時計は見ていなかったけど、もう既にかなり長時間に及んでいたから、おそらくこれが本編最後だということは誰が聴いてもわかる。コール&レスポンスが延々と続き、大歓声の中、メンバーがステージを降りる。

アンコールの嵐の中、ほどなく再登場。「Desert Rose」、「King Of Pain」ときて、最後はお決まりの「Every Breath You Take」。こうして聴くと、イントロのリフ一発でどの曲かすぐにわかって観客大爆発、みたいな持ち歌がほんとに多いね、この人。

「Every Breath You Take」で大団円かと思いきや、一旦引っ込んだメンバーが再度ステージに登場。これも激しいスネア連打のイントロですぐにそれとわかる、ポリースのデビューアルバム冒頭を飾る「Next To You」。最後はバタバタバタという感じでルースに演奏を終え、ゆっくりとメンバー全員がステージ前方に一列に並んで肩を組み、大きく頭を下げて終了。またそれぞれが出てきた方向にステージを降りていく。

僕の周りではこれで席を立った人もいたけれど、依然として歓声は鳴り止まないし、客電も点かない。と思っていたら、またしても再登場。本日3度目のアンコールだ。スティングは片手にクラシックギター(ボディーの形はフォークギターっぽくカッタウェイが入っていたけど)を持っている。この日初めてスティングがベース以外の楽器を手にした瞬間。僕のところからはちょっと見えなかったんだけど、ドミニクがベースに持ち替えていたのかな。

「ミンダナオ島の台風被害者の方々にこの曲を捧げます」と、12月だというのに500人以上もの死者を出したつい先週のタイムリーな台風の話題を盛り込みながら、曲はお約束の「Fragile」。最後はしっとりと演奏を終え、今度はもう肩を組んで並ぶこともなく、それぞれ観客席に挨拶しながらステージを降りる。常にステージの向こう側から出入りしていたスティングも、このときだけは一旦こっち側に来て挨拶をしてから向こうに戻っていった。

この時点で11時直前。よくこんな大会場のライヴをこんな時間までやってるよ、皆帰れるのかなと思いながら外に出てみると、巷はまだ普通にラッシュアワー。さすがマニラ。とんでもない値段のチケット代に比べると比較的お手ごろ価格(1100ペソ=2200円)なTシャツを購入。いろんなデザインや、シャツの他にもスウェットやニット帽もあったけど(このくそ暑いマニラで誰があんなのかぶるんだ)、一番オーソドックスなツアーTにした。

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背中の開催地一覧に日本が載っていないのが、日本人的にはちょっとレアかも。

結局、待機していてくれた運転手との連携がうまくいき、大混雑の出口をすり抜けてすんなりと車に乗り、猛スピードで(これはいつものこと)帰ったら、当初の悪い予感に反して11時半前にはあっさり家に着けてしまった。なんか、出かける前のうんざりした気持ちとは打って変わって、すごくいい気持ちで一日を終えることができたよ。あれこれと困難を乗り越えて(笑)観に行ってよかった。

Setlist 9 Dec 2012 @ Smart Araneta Coliseum, Manila

1. If I Ever Lose My Faith In You
2. Every Little Thing She Does Is Magic
3. Englishman In New York
4. Seven Days
5. Demolition Man
6. I Hung My Head
7. The End Of The Game
8. Fields Of Gold
9. Driven To Tears
10. Heavy Cloud No Rain
11. Message In A Bottle
12. Shape Of My Heart
13. The Hounds Of Winter
14. Wrapped Around Your Finger
15. De Do Do Do De Da Da Da
16. (Improvisation)
17. Roxanne

[Encore 1]
1. Desert Rose
2. King Of Pain
3. Every Breath You Take

[Encore 2]
1. Next To You

[Encore 3]
1. Fragile


この記事をアップしようとして気づいたけど、今日は12/12/12のゾロ目だね。ゾロ目といえば09/09/09のビートルズ再発祭りとかあったけど、よく考えると今生きている人がゾロ目日付を経験できるのは今日が最後だ。だからどうってことないんだけど、せっかくなので今日一日この日付を堪能しよう。記事はもう書けたけど、せっかくだから12時12分まで待ってアップしよう。
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2012年11月05日

Matt The Electrician live in Fuji

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この季節になるとかなり早い時間に日が落ちてしまう。20時開場の富士でのライヴ会場にたどり着く途中で雪を被り始めた富士山が見られるかなと期待していたけど、もうあたりは真っ暗。

生まれて初めて降り立つ富士駅。駅前にあるチェーン店の顔ぶれは地方駅でも東京でも同じだね。もちろん、この地方ならではの海産物を売り物にするお店もあちこちに見受けられるけれど。会場のネヴァーランドは駅からほど近い建物の、外から上がる階段を2階に上がったところにある、ほんとに小さなお店だった。

長方形の店のかたちに沿ってコの字型のカウンター。その手前部分だけに何脚かのスツールが置いてあり、向こう側には椅子が7脚とPA卓、あとはマットの楽器とマイクスタンドがところ狭しと設置してある。一番前の椅子に座るためにはマイクにぶつからないように注意しないといけないような至近距離だ。

開演時刻が近づくにつれて店は満杯になる。でもほとんどのお客さんはカウンターの演者とは反対側から場所を埋めていくね。最終的にはコの字の短辺の椅子のない場所にまで立ち見のお客さんが何人もいたから、全部で30人弱はいたことになるのかな。おそらく、今回マット・ジ・エレクトリシャンというアーティスト目当てでわざわざこの場所に足を運んだ客は、僕と一緒に行った友達の他にはあまりいなかったんじゃないだろうか。ほとんどのお客さんは顔見知りみたいで、きっとここでライヴがあるたびに集まってくるんだろうね。

なんだかこういうのいいね。まるでロンドンのパブやNYのコーヒーハウスみたいに、行きつけのお店で(きっと)名も知らぬアーティストのライヴを観て盛り上がるなんて。しかも、ゴーティー主催のライヴは結構な頻度でここを使っているから、(大変失礼ながら)こんな地方都市の小さなお店でこんな質の高い(でも一般的には無名の)アーティストのライヴを何度も観られて、富士の音楽ファンは相当目が肥えてしまうよね。

開演前に外の階段のところで一服しているマットのところに行く。「昨日帰るときにリクエストしてくれた曲は『Breathing』とあと何だっけ?」と、向こうから訊いてきてくれる。あれとこれと、それから今日新たにリクエストしたい曲もいくつかあるんだけどと、相手がきっちりセットリストを作ってライヴに臨むような人じゃないとわかった途端に図々しく何曲もリクエストする僕。「オーケー、それとそれはできるかどうかわからないけど、やってみるよ」と、一応承諾してくれた。はたして全部覚えていてくれるかな。

開演予定時刻の8時半を過ぎてしばらくした頃、他のお客さんや松本さんと歓談していたマットがようやくステージ(というものはないけど)のところに来てギターのチューニングを始める。昨日と同じ赤と黒のチェックのネルシャツの下に着ている赤いTシャツはさすがに昨日とは違うね。彼が腰掛けているのはスツールじゃなくてカホンだ。「これは座っていてしっくりくるね」とマット。曲によっては右足でカホンを叩いてリズムを加えていた。

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オープニングは僕の知らない静かな曲だった。終演後にマットに聞いてみたら「あれも新曲」。今回聞いたどの新曲も結構レベル高いよ。来年のアルバムが楽しみ。2曲目は昨日のオープニングだった「Accidental Thief」。

続いて弾き始めたイントロでわかった、僕のリクエストした「I Will Do The Breathing」。去年の僕のベスト10の第九位だった『Accidental Thief』の粒揃いの曲の中でも、悲しげなメロディが際立つ名曲だ。歌い終えたときに、おそらくこの曲を知らなかった沢山のお客さんがひときわ大きな拍手をしてくれたのは、あながち僕の思い込みのせいではなかったと思う。

前半では他に「My Dog」とか「Osaka In The Rain」とか演ったかな。1曲僕の知らない曲があったからまた新曲かと思っていたら、演奏後にカバーだと説明。説明されても知らない人だったけど、松本さんのツイートによると、アーロン・リー・タスジャン(Aaron Lee Tasjan)という、ニューヨークドールズの再結成に参加したギタリストの「Summer Of Legs」という曲だそうだ。マットが「ニューヨークドールズに参加していたギタリストで当時19歳、今でもまだ若くて26歳ぐらい」と説明したときはてっきり冗談かと思ってたけど、再結成のときの話だったんだね。

「今日も45分のセットを2つ演るよ」と言っていたのに、最初の曲から30分ほどで「次が前半最後の曲」と言って「Milo」を始めた。途中にポール・サイモンの曲を2つとグレイトフル・デッドを挟む。確か去年の横浜でのライヴでポール・サイモン・メドレーを演ったのもこの曲だったかな。当時はまだこの人の曲を全然知らなかったからわからなかったけど。デッドを演ったのは、ちょうど演奏しているマットの真後ろにデッドのロゴのネオンがあったからだって。

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休憩時間中にマットに「前半短かったね」と言うと、「今日は後半しっかり長く演るから」とのこと。その言葉通り、後半は充実したセットだった。まずは、「Got Your Back」でスタート。

続いて、僕がリクエストした「Wish You Didn't Feel Like My Home」。地味でライヴ映えするような曲じゃないけど、これも『Accidental Thief』の中で大好きな曲。しっとりと滲みる。

さらに続けて、これもリクエストした「Permanent Record」。さっきできるかどうかわからないと言われた曲なのに、ちゃんと演ってくれた。スタジオバージョンではリズムボックスやらホーンやらがせかせかと入った曲だけど(それはそれでいいアレンジなんだけど)、素のメロディはコステロばりの名曲だと思う。これは是非弾き語りで聴いてみたかった。案の定素晴らしい演奏で、このときも大きな拍手が。

次が「College」で、その次が「Diaryland」だったはず。とにかく僕がリクエストした曲をこの第二部前半で立て続けに(きっと、忘れてしまう前に)ほとんど演奏してくれたのが嬉しかった。マットは特に何も言わなかったけど、僕にとっては一大リクエストコーナーだった。いやー、満足。

小さなバンジョーを“バンジョレレ”と紹介し、昨日同様「Animal Boy」を。でもこれが最終曲というわけではない。続けてスタンダードの「On The Sunny Side Of The Street」を。ユーチューブではもっとベタな(アバとかの)カバーが沢山観られるけど、この日は地味渋なカバーが多かったな。

「All I Know」を歌い終えたときに、何人ものお客さんがおもしろがってサビの「アウーー」ってところを繰り返して歌ってたのが可笑しかった。

この日は常連のお客さんの一人の誕生日だったらしく、「Happy Birthday」を歌う一幕も。そして、「最後の1曲」と言い、左膝に置いた歌詞を見ながら、ピーターパンの「I Won't Grow Up」を、観客にコーラスを要求して歌う。途中の「I will never grow a mustache」って歌詞が可笑しかったね。

アンコールに答え、「じゃあもう1曲だけ」と言って、カバー曲をファルセットで。これも知らない曲だったので終演後にマットに訊いて、それでもわからなかったから紙にメモしてもらった。メルヴァーン・テイラー(Melvern Taylor)の「Sad And Blue」という曲だそうだ。このアンコールも含めて後半は1時間超。合計で辻褄合わせてくれたね。

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マニラから持参した『Made For Workin』のジャケに、前日鎌倉の文房具店で買った白い油性ペンでサインをしてもらう。このどう見ても「nb」としか読めない簡単なサイン、本人によると「Sever」と書いてあるんだそうだ。でもどの部分がどう「Sever」なのかは本人にも解読不能(笑)

「リクエストした曲ほとんど演奏してくれてありがとう。でも『For Angela』は演ってくれなかったね」と言うと、「うん、あの歌詞は日本人にはきっと難しいから」と。まあそうだね。今度いつかアメリカに観に行ってリクエストすることにするよ。

帰り際、「マニラまで気をつけて帰って」と言ってくれる優しいマット。「来年も日本に来てくれたら観にくるから。またそのときに」と言い残して、もうすっかり寒くなった道を富士駅に向かった。
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2012年11月04日

Matt The Electrician & Goro Nakagawa live in Kamakura

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先月のジョー・ヘンリー&リサ・ハニガンはたまたま入った東京出張のついでに観たんだけど、去年の横浜でのライヴを観て以来すっかりファンになってしまったマット・ジ・エレクトリシャンの来日公演を観るために、今度は自腹で(と言っても航空券代はマイレージで賄ったんだけど)日本に駆けつけた。おあつらえ向きに11月1日からフィリピンでは4連休。ちょうどそのスケジュールに合う、1日の鎌倉と2日の富士での公演を観ることにした。

まずは鎌倉公演。この日は通常のライヴではなく、中川五郎とのジョイントライヴ+トークショー。マニラの自宅を朝7時半に出て、飛行機とNEXと在来線を乗り継いで鎌倉に着いたのは夕方5時前。開場までまだ2時間ほどあるなと思いつつ、キャリーバッグを転がしてカフェゴーティーへ。ちょうどリハーサルというか打ち合わせが始まるところだったので、バッグだけ預かってもらって時間まで鎌倉の町をうろうろする。

08年にタマス・ウェルズを観て以来、その後は主にゴーティーでのライヴのたびに何度かうろついている小町通り、来るたびにあちこちのお店が変わってる気がする。やっぱりこういう観光地の商店街は競争が激しいんだろうね。そんな中、(表通りではないとはいえ)ゴーティーさん地道にがんばってるよなあ。あの規模で、決して毎回儲かってるという訳でもないであろう(失礼)、でも凄く質の高いライヴを提供しながら。

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開場と同時に入店し、正面の席を確保して、あとは時間までいつものように店頭のCDを見たりしながら過ごす。店の外でタバコを吸っているマットに話しかけ、しばし世間話も。前日の新丸子でのライヴは45分のセットx2という充実したものだったそうだ。去年の横浜でのジム・ボジアを含めた4人のライヴの話とかもした。でもトークショーの際に質問コーナーもあるということなので、音楽関係の質問は控えめに。

まず最初は中川五郎。バンジョーを抱えた姿がなんだウディ・ガスリーみたいだなあと思っていたら、後のほうのMCで、自分が音楽を始めたのはウディやピート・シーガーに影響を受けてということを話していたから、きっと意識しているんだね。マットとはオースティンつながりだということでジェリー・ジェフ・ウォーカーの「Mr. Bojangle」を日本語でカバーしたものを含めて5曲を披露。3.11以降に書かれた反原発の曲が2曲もあったのを聴いて、この人は過去45年間ずっと(いい意味で)このままなんだろうなと思った。

10分の休憩の後、中川さんとマットの座談会、というか質問コーナー。「一番最初に影響を受けたアーティストは?」「ポール・サイモン」(だから去年のライヴでポール・サイモン・メドレーを演ったんだね)。「一番最初に書いた曲は?」「94年に詩のクラスで、詩の代わりに当時の彼女のために曲を書いたのが最初。でももう忘れた」。「覚えている中で最初に書いた曲は?」「確か96年に書いた曲で、『Heater』というやつ。でももう長い間演奏していない」。などなど。中川さんは話を聞くのに夢中でつい訳すのを忘れがちで、結局ゴーティーの松本さんがほとんど通訳をすることに。それにしても松本さん詳しいな。マットが話してないことまで注釈つきで解説してるよ。

この会のために特別に中川さんが翻訳したマットの3曲「Accidental Thief」「Animal Boy」「Osaka In The Rain」のプリントを全員に配布し、それらについての本人による詳しい解説も。こういうのはいいね。

観客からの質問コーナー。「マットの祖先はどこから来たの?」「スロベニア。セヴァー(Sever)という苗字はスロベニアのものなんだ。でも僕はサンフランシスコ生まれだから(と、アメリカ人だということをしきりに強調)」。「トム・フロインドのためにマットの奥さんがデザインしたシャツは日本からも買える?」(なんてマニアックな質問・笑)「買えるはずだよ。ramonsterwear.comにアクセスしてみて」(見てみたけど、とても日本人が着こなせる感じではない相当カウボーイッシュなシャツでした)。

僕からもいくつか質問。「ニューアルバムは作ってる?」「曲を書き始めたところ。春になったらデンマークに行って録音するよ。たぶん来年の9月ぐらいにはリリースできるはず」「デンマークにはバンドは連れて行ってないからソロアルバムになるね」。「(アルバム『Animal Boy』収録の)「For Angela」の歌詞は実話?」「うん、ウォルマートに実際に手紙を送ったし、彼女にCDを渡そうと思って何度かあの店に行ってみたけど、もう会えなかった」などなど。

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45分の予定だったトークショーは、なごやかに(時にゆるーい感じで)過ぎてゆき、あっという間に1時間近くになってしまった。また5分ほどの休憩を挟み、いよいよ本日のメインイベント、マット・ジ・エレクトリシャンのライヴへ。

18フレットしかない小柄なギターを抱え、オープニングは「Accidental Thief」をしめやかに演奏。2曲目に入るところで「バンジョー使っていい?」と、中川さんのバンジョーを弾き始める。ほとんどチューニングもせずにそのまま弾けるものなんだね。その後知らない曲がいくつか続いたのは、ニューアルバムのための新曲かな。

5曲目でまた自分のギターに持ち替え、「Osaka In The Rain」を。どうやら今日は短いセットの中に、トークショーで話した3曲を全部演奏するつもりだな。それどころか、なんと次の曲は「Heater」。さっきのトークショーで自分はライヴのときには特にセットリストは作らないで、最初の数曲以外は思いつきで演奏するって言ってたけど、今日話題に出た曲を全部こうして聴かせてくれようという気配りが嬉しいね(さすがに「For Angela」は演らなかったけど)。

別の新曲を弾き始めようとして途中で止め、「やっぱりこっちの曲にしよう。これも新曲」と途中で別の曲にし、「やっぱりこの曲はバンジョーで演りたい」とまた途中で止め、後ろに置いてあったバンジョーに持ち換えるという場面も。

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最後は自分の小柄なバンジョーで「Animal Boy」。その後、客席で観ていた中川さんを呼んで「Goodnight Eileen」を二人で分け合って歌い、終了。全部で10曲ちょっと演ったかな。あっさり終わってしまったけど、まだ翌日もあるし、トークショー楽しかったからこれはこれでいいや。

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終演後にまた外でタバコを巻いていたマットをつかまえ、持参した『One Thing Right』にサインをもらう。一緒に写真も撮ってもらった。もう少しゆっくり話してたかったけど、終電の時刻が刻々と近づいてきていたので、ゴーティー印のCDを何枚か急いで買って帰路についた。

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2012年10月18日

Joe Henry / Lisa Hannigan / John Smith live in Tokyo

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ジョー・ヘンリーは、10年ほど前に『Scar』を聴いてすぐに過去盤をほとんど集め、その後も新作が出るごとにほぼ押さえているから、うちには相当数のCDがあるんだけど、曲名を覚えるほどには聴き込めていない、僕の中ではファンなのかそうでないのかいまいち微妙な位置付けのアーティスト。

リサ・ハニガンは、おそらくほとんどの人がそうであるように、僕もダミアン・ライスのアルバムを通じて知った。彼女の2枚のソロアルバムは、好きなんだけどダミアンの2枚ほどではないかなという程度。ファーストなんて、つい最近ダミアンファンの某氏に頂くまで聴いてなかったからね。

ジョン・スミスは、五十嵐正さんがあちこちで褒めておられるのを読み、(申し訳ないけど)中古で安く見つけて購入。とても気に入った曲もあったけれど、アルバム全体を通しては、僕にはちょっとブリティッシュフォーク色が強すぎるかなという印象があり、何度も聴き返すほどではなかった。

なんてのっけから告白してしまうほど、僕にとっては「もし観られたら観ておこうかな」という微熱程度の興味の3名。10月16日、渋谷DUOでの日本公演最終日。今週、というかこの月火ピンポイントで東京に出張に来て、当初予定されていた火曜夜の会議がキャンセルになったので、「観られるようだからじゃあ観ておこう」と、週末にチケットを押さえて出かけてきた。

アンコールを含めて20曲程度、ジョンがリードボーカルを取る数曲以外はジョーとリサがほぼ交互に半分ずつ持ち歌を歌う(1曲だけリサがジョーの曲を歌ったのと、アンコール2曲はカバーだった)。素晴らしい演奏とハーモニーはそれだけで存分に楽しめたけど、なんでこの人たちのアルバムをもっとちゃんと聴き込んでこなかったのかということが悔やまれる夜にもなった。

3日前に取ったチケットのわりには比較的早めに入場することができ、この会場にしては珍しくフロアに置かれた椅子席の隅のほうに座ることができた。あっという間に超満員になり、後ろや両脇は相当数の人混みだったから、これはラッキーだったね。悪名高いDUOの2本の柱も邪魔にならない場所だったから、ステージも端から端まで見渡せたし。

エミ・マイヤーという京都生まれアメリカ育ちの歌手が前座で4曲ほど。英語曲と日本語曲が半分ずつだったかな。曲によってベースとギターを持ち替えて伴奏をつける日本人のギタリストを従え、本人はキーボードを弾きながら歌う。少しつたなく、少し京都アクセントが混じる日本語MCがかわいかった。

7時開場・8時開演で、前座が20分程度。キーボードを入れ替えたりして、いよいよ本編のジョー&リサ、そしてサポートのジョンとロスが登場したのが8時45分頃。日本のライヴにしてはかなり遅めのスタート。まず初めにリードボーカルを取ったのはジョー。

アルバムで聴かれる薄皮をまとったような特異なサウンドではもちろんないけれど、一度聴いたら忘れられない、まぎれもないジョーの声だ。そこにリサとジョンが綺麗なハーモニーを重ねる。ジョーは自分の持ち歌のときは白いピックガードのついた黒いギターを弾く。リサはマンドリンをちょこんと抱え、ジョンは見た目ごく普通のアクースティックギター(ブランドまでは見えなかった)。

ジョーはサポートに回るときは別のギターに持ち替え(もしかしたらキーによって換えていただけかもしれないけど)、ジョンは自分のギターと最初にリサが使っていたマンドリンをとっかえひっかえ。リサはアクースティックギターに持ち替えたり、目の前に置いてあるアコーディオンみたいなキーボード(暗くてよく見えなかったけどあれなんだろう)を弾いたり、シェイカーを振ったりと大忙し。ドラマーのロスも、曲によってはウクレレを弾いていたね。

アルバムではレイ・ラモンターニュとデュエットしているリサの「O Sleep」をジョーとデュエットしてくれるのかなと思っていたら、確か6曲目あたりでジョーが後ろに下がり、リサとジョンが二人でその曲を歌う。ああ、確かに少しかすれたジョンの声のほうがこの曲には合うかも。単に声がレイ似ということだけど。

何曲目だか忘れたけど後半、ステージ上にジョンだけが残り、椅子に腰掛けて膝の上にギターを寝かせて演奏した曲が凄かった。右手でボディをパーカッションのように叩いたり弦を弾いたり、左手はネックにつけたカポの右側を触ったり左側をチョロチョロ弾いたり、とにかくギターひとつであれだけ多彩なことをやりながらあんなに迫力のある歌を歌えるなんて。確か僕はこの演奏をビデオで観たことがあるんだけど、実際に目の前で観るのは全然違ったね。あれできっと物販の売れ行きが相当変わったんじゃないかな。

曲間でのギターのチューニングに3人ともしっかり時間がかかり、おそらく日本人客はその間もじっと静かに待っているというのをこの10日ほどに覚えたからだろう、3人が3人ともばつの悪そうな顔をしていた。「待たせて悪いね、このチューニングの時間はなんとかならないものかね」とジョー。

全体的に照明が暗めだったせいもあるかもしれないけど、曲によってリサがまだ幼い少女のようにも何十年もキャリアを積んだ年配の女性のようにも見えたのは、ハスキーなくせによく通る、しかもちょっと甘えたような彼女の不思議な歌声のせいだろうか。前にダミアンのPVで見たときはあんまり印象に残らなかったんだけど、かわいい顔立ちだね。なぜか家政婦のミタを思い出す。それもにこやかな。それは普通に松嶋菜々子ということか。

本編を終え、ステージで4人が肩を組んで挨拶。すぐに割れんばかりのアンコールで再登場。「次の曲は僕らじゃない人が書いたんだ。ジャクソン・ブラウンがたった16歳のときに書いた優れた曲」とジョーが紹介して、「These Days」を。

その1曲でまた並んで挨拶して退場し、また大きな拍手で再登場。今度は最初から4人で肩を寄せるようにステージ中央に集まる。ギターを持っているのはジョン一人。「今年の初め、僕らは、そして貴方達は大切な人を失った。リヴォン・ヘルムだ」とジョーが紹介し、「The Night They Drove Old Dixie Down」へ。ジョンの簡素な演奏に乗せて、リサ、ジョン、ジョーの順でリードボーカルを取る。観客席からも、大合唱というには程遠いけど、合わせてコーラスを歌う声が聞こえる。

ジョーは最後まで三つ揃えのスーツを脱がなかったし、ジョンもネクタイをきりっと締めたままだったね。二人の間に立つリサの質素なワンピースと合わせて見ると、少し違った時代からタイムスリップしてきた人達のように思えた。まるで、ジョーのアルバムがいつも湛えているレトロな雰囲気のように。そうか、ジョーは生音を自分色に染める代わりに、少し暗めの照明も含めたこのステージ全体をプロデュースしたんだね。見事としか言いようがないよ。

リサの『Passenger』のジャケを模した、飾りのついたTシャツがほしかったけど残念ながら女性用しかなく(というかあからさまに女性用のデザインなんだけど)、泣く泣くごった返す物販を後に会場を出たのは、もう少しで11時になろうかという時刻だった。たっぷり2時間演ったんだね。

充実した夜だった。きっと、イントロを聴いただけで曲名が出てくるぐらいまで聴き込んでいれば、もっと深い楽しみ方もできたはずだったけど、それは自分のせいなのでしょうがない。昔、誰かが「ヴァン・モリソンを聴くことは『贅沢』である」と書いたのを読んだことがあるけど、この夜はまさにそんな感じだった。演奏それ自体は簡素なものだったけど、なんとも贅沢な時間を過ごせた。運よく東京公演の日に東京出張が入ってよかった。運よくその夜の会議がキャンセルになってよかった。きっと、音楽の神様ってほんとにいるんだよ。
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2012年07月14日

Mark Kozelek live in Tokyo

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4年前の来日時はスケジュールが合わず、渋谷と新宿のタワーで行われたインストアライヴにしか行けなかったマーク・コズレックが再来日。今回は一日だけの東京公演に行くことができた。場所は、品川のグローリアチャペル。教会でライヴを観るのはNZでのホセ・ゴンザレス、青山早稲田でのタマス・ウェルズ以来かな。随分大きな教会で、両側の壁には高い天井に届くほどのパイプオルガンが据え付けてある。

発売開始と同時に押さえたチケットは悪くない整理番号だった。前から2列目の好位置(とはいえ、ステージから最前列の座席まで結構距離があるので、間近という感じではなかった)。ステージには椅子が一脚ぽつんと置いてあるだけで、その前にマイクスタンドとエフェクター。ステージ左右にスピーカー(たぶん下側の大きいのがギター用で、上に乗せてあったのがヴォーカル用?)。ただでさえ広いステージが余計にだだっ広く見えてしまう配置。前回の来日はフィル・カーニーと二人だったけど、今回は一人だけみたいだね。サン・キル・ムーン名義のアルバムが出たばかりだけど、今回の公演はマークのソロ名義だし。

大きな教会で座席も沢山あったけど、開場時刻に整理番号順に入場した人数は前から数列を埋める程度。ありゃ、これはちょっとロケーション間違えたんじゃないの。と思っていたら、開演時刻前にはもうかなり後ろの方までびっしりになっていた。平日(しかも品川駅から歩いて10分ぐらいというあまり便利でない立地)だから皆ぎりぎりになってしまったのかな。それにしても、あのキャパの会場で、開場から開演まで1時間というのは持て余すよ。教会だから当然アルコールなんて売ってないし。

開演時刻の8時を少し廻ったところで暗転。ステージ一番奥のドアを開けてマークが歩いてくる。ほとんど真っ暗な中、彼の座る場所だけに薄暗くスポットライトが当たっている。そんなだから、彼の表情も服の色もよくわからない。黒っぽい色のシャツに黒っぽいズボン。黒い革靴。クラシック・ギター。

彼のレーベルサイトで予告だけされていていつまで経っても出る気配を見せないLPを待ち続けているものだから、僕はまだ新作『Among The Leaves』を聴いていない(実をいうと、ダウンロードコードのついていないLPを買った前作『Admiral Fell Promises』もそれほど聴けていないんだけど)。なので、おそらくその2作からがほとんどだったと思われるこの日のセット、僕はほとんど曲を認識することができなかった。数曲知っているのはあったけど、4年前のインストアのときのような「代表曲」みたいなのは全くといっていいほど演らなかったと思う。

椅子に腰かけ、調弦しながら試し弾きなのかイントロなのかよくわからない感じでおもむろにポロポロと爪弾き始める。ディレイのかかった奥行きの深い綺麗な音が高い天井によく響く。数知れないほど出ている彼のライヴ盤のリストに、こういう会場で録音したものも加えればいいのにと思った。

1曲目、これはこういうインスト曲なんだろうなと思い始めた頃に突然歌が入る。声にもかなりエコーがかけられている。口からマイクまで結構離れて歌っているのに(しかも決して大きな声を出しているわけではないのに)よく通る声なのはそのエコーのせいか。

3曲ほど演奏した後、何かボソボソと喋る。話し声にまでエコーがかかっているから、ただでさえくぐもった声がすごく聴き取りにくい。たぶん「元気?」みたいな軽い挨拶だったはずなんだけど、客席無反応。その後も相変わらずボソボソと話すけれど全然反応がないので「ダメだこいつら言葉通じねえ」みたいな顔で苦笑いするマーク。客席左後方からアメリカ人が「もうちょっと大きな声で話して」って言ってくれたけど、それにも何かボソボソと返事しただけでちっとも会話が進まない。

各曲間で相当時間を取ってチューニング。「いつもはもっと何か話しながらチューニングするんだけど(話通じないから)。何話そうか。日本食は美味い。緑茶ばかりを飲んでいるよ」とか言いながらペットボトルのお茶を飲む。曲間はそんな感じでちょっと間延びしてしまっていたけど、一旦演奏に入るとすっと空気が変わる。あれは見事だよね、いつ聴いても。

ただ、僕の知っている曲が少なかったせいもあるかもしれないけど、あのスタイルで似たような曲調をずっと続けられると、後半ちょっとだれてくるのは否めない。ライヴ本編が1時間20分。その後2曲のアンコールを含めてトータル1時間半程度と、コミュニケーション取れてないわりには(苦笑)しっかりとフルサイズのライヴを演ってくれたんだけど、終わってみたらちょっと長すぎたかなと贅沢な感想。

結局、音響効果を狙っての教会という設定(それは見事に奏功していたけれど)が、ステージと客席との遠すぎる距離や暗すぎるステージといういくつかの副作用を生み、観ている側も演奏している方もなんとなくぎこちない雰囲気のまま終わってしまったという感想を持ったのは僕だけだったんだろうか。あの規模の集客なら、たとえばクアトロとかデュオとか、そういうもう少し緊密な雰囲気を保てる場所で観たかった気がする。2時間立ちっぱなしでもいいから、アルコール付きで。

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2012年06月02日

Jim Boggia live in Kamakura 2012

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お台場と日比谷でサニー&ジョニーを満喫していた週末、実はそこから50キロほど南東に下った鎌倉では、ジム・ボジアの再来日公演が行われていた。2月に先行予約でチケットを押さえたサニー&ジョニーと違って、この公演日程が発表されたのはほんの数週間前。当初はサニー&ジョニー公演と完全にぶつかる5月26・27日の2日間の予定だったのが、なんとか翌日にもう一晩追加されることになった。

ちなみに「あと一日追加するとしたら前日の金曜と翌日の月曜のどちらがいいですか?」と、なんともアットホームな感じでツィッターでファンに呼びかけてくれたゴーティーの松本さんに僕は「金曜日」と返事したものの、それだとジムが休みなしで5日間連続公演ということになってしまうからと月曜に決定。月曜はきついなあと思いつつも発売即チケット購入。ところが、金曜にはサニー・ランドレスの渋谷でのサイン会が(これまた直前に)アナウンスされたので、結果オーライでサニー3日+ボジア1日という、なんとも豪華な、忘れられない4日間を過ごすことができた。

というわけで、月曜に普通に会社に行ってたのでは間違いなく開場時刻に間に合わないので、午前の重要会議が終わったところで突然オフィスから蒸発。午後5時には鎌倉駅前の某居酒屋で、これも同じく一時的に会社と折り合いをつけてきた友人数名と腹ごしらえ開始。大量のジンジャー&ライムハイボールで腹を満たし、開場時刻の少し前にゴーティーへ。

ゴーティーに来るのはこれで4回目になるのかな。これまで大体正面2列目とかちょっと右側とかにばかり座っていたので、今回は初めてとなる左側のピアノ傍へ。ピアノに体が当たらないようにじっと座っているのが難しいほどの至近距離。もちろん、ジムがピアノを弾く時は、目の前数十センチで歌っているのを観られるという超VIP席。

まず席を確保し、いつものようにカウンター近くの椅子でくつろぐジムを捕まえて話をさせてもらう。「昨日とおとといはサニー・ランドレスとジョニー・ウィンターを観に行ってたから来られなかったんだ」と言うと、「サニーのライヴはアトランタ(だったかな?)で観たことあるよ。すごいギターを弾くよね」とジム。そして、「去年来たときに話してくれたライヴ盤はどうなったの?」と切り出すと、「もうほぼ完成。たぶん9月には出せると思うよ」とのこと。「へえ、日本でのライヴも入ってるのかな?」と訊くと、「いや、今回のライヴ盤はあちこちで録音したものを集めたもので、去年出たゴーティーでのライヴ盤が一か所での小ぢんまりしたライヴを収録したのとは対みたいな位置づけなんだ」と説明してくれる。

そしてそこから、ライヴ前だというのに話好きなジムは延々と話し始めてくれた。曰く、「ライヴ盤の次には11月頃にクリスマス・アルバムを出そうと思っている」、「その後に控えてるのが、ウクレレだけで録音したアルバム。歌入りのもあればインストも入れる予定。たぶん年明けぐらいかな」、「ニューアルバムはその後。今から1年後ぐらいに出せるとは思うけど、契約次第だな」と。ブルーハンモックとの契約がこじれていてアルバムを出せない状態だという話は去年の来日時に教えてくれたけど、その状態がまだくすぶっているようで、「自分の他にも何人ものアーティストが同じ目に合っているんだよ」とのこと。裁判という話にもなっているようだけど、あまりそういう話をこと細かく書くものでもないから、この程度で。

途中で他のファンの方が「ジム、今日も来たよ」と挨拶に来ているのに、ハイタッチしたらまたこっち向いて契約問題の話を続けてくれるジム(苦笑)。もう開演時刻も過ぎているし、この話はそろそろにして今日演ってほしい曲のリクエストしたいんだけどと思いながら、そうはいっても滅多に聞ける話じゃないので興味深く聞かせてもらう。

「ところで」と半ば無理やり話をさえぎり、「今日演奏してほしい曲があるんだけど」と、いくつか曲名を挙げてみるものの、「ごめん、曲は知ってるけど歌詞がわからないよ。その曲もそう。どうも僕は歌詞を覚えるのが得意じゃないんだ。自分の曲だって忘れるぐらいだから」と、ことごとく断られる。さすがにこれはわかるだろうと、「じゃあ、ポールの“The Back Seat Of My Car”は?」と訊くと、「ああ、それはわかる。でも、最後のパートでいつも僕はバックコーラスの方を歌ってしまうんだ」とのこと。それから、「この曲についてはエイミー・マンと口論になってね。彼女とは同じポールのファンでもなかなか意見が合わないんだ」みたいな話をしてくれる。で、ところで「The Back Seat Of My Car」は演ってくれるのかな?


そんな感じで、少し遅れて始まったのは僕のせいでもあります。皆さん申し訳ない(特に、ぎりぎりで終演後に終電逃したN君)。1曲目はおなじみ「To And Fro」。おそらく今回三夜連続で来られている方がほとんどじゃないかと思う満員(といってもおそらく20人強)のファンが歌う歌う。ジムも間奏のところで「カマクラ・バック・シンガーズ!」とか叫ぶ。その曲の演奏後、満面の笑みで「早くもピークに達してしまったよ。この後どうすればいいんだ。もう終わろうか」なんて冗談めかして言うジム。

そういえば、この曲の途中、一瞬歌詞を忘れたジムが僕の方を見て「ほら、言ったとおりだろう」とニヤリ。そんな楽屋落ちみたいなこと言われても。嬉しいけど。

そのまま立て続けに「Bubblegum 45」、「Toy Boat」とアップテンポな曲を続ける。「Toy Boat」のときにボウイの「Fame」の歌詞をちらっと挟み、くすっと笑わせる。今回は最初から焼酎のお湯割りをちびちび飲みながら歌うジム。

「次の曲は、エイミー・マンと一緒に書いたんだ。彼女とはポール・マカートニーについての意見が合わなくてね。彼女には言わないでよ」と、「Shine」を。みんなクスクス笑ってたけど、なんであんな台詞が出てきたのかあの時点でわかったのがきっと僕だけだというのがまた嬉しい(それとも、もしかしたら同じ話を以前にもしたのかな)。

「この曲を今まで鎌倉で演奏したかどうか覚えてないけど、3分後には少なくとも1回は演奏したことを覚えてるよ。これは90年代の曲、1890年代じゃないよ」と紹介して歌ったスローな曲が、帰り道に仲間の誰に訊いてもわからなかったので、おそらくタイトルだろうと思われるサビの歌詞を頼りにネットで調べてみたら、「Rosemary Comes Along」というジムの自作曲だった。過去のセットリストに出てくるし、ASCAPのサイトにもジェイムズ・ボジア作として載っている(ちなみに、そこには僕が聞いたこともないようなタイトルの曲が沢山載っているぞ。あんなに未発表曲があるんだ。それとも、新譜に収録予定の曲なのかな)。

これも大コーラス大会となった「Live And Let Die」のカバーに続いて、「リクエストある?」。開演前にリクエストしたのにと思いつつ、もう一度「“I Can Barely Wait”」とリクエストする。「あ、そうだった」みたいな顔でこっちを指さすジム。この曲も、今回のツアーが始まってから、松本さんがツィッターで「誰かこの曲知りませんか?」とビデオを貼られていたのを、さっきみたいにサビの歌詞からASCAPとかに辿り着き、「これじゃないですかね」と返事してみたもの。本当にいい曲。一緒に観に行った友達曰く、「出だしのメロディーがスクイーズで、サビのところがコステロ」。なるほど、言い得て妙。

ビートルズの「Do You Want To Know A Secret」を歌いだしたと思ったらと思ったら、途中から「♪ショーの最初にアップテンポな曲ばかり集めたら後でこまるよ。あんまりいいやり方じゃないね」みたいな替え歌になってまたクスクス笑わせる。

続く「On Your Birthday」では、「こないだは常連の彼(と指さす)の誕生日だったんだ。この中でほかに、今年誕生日が来る人はいる? すごい、全員だ!」とか言ってまた笑わせる。

事前にリクエストされたという「Underground」に続き、「本当は今の曲を演る前に次の曲で前半終了と言っておくべきだった。次の曲で休憩に入るんだけど、誰かリクエストある?」と訊くジム。まあ本当に行き当たりばったりで曲順決めてるんだね。隣に座っていたNさんが「Once」をリクエストし、「本当は前半の最後だからもうちょっと賑やかに終わるのがいいんだけど、まあいいよ、静かに始めて賑やかに歌い終えるよ」とリクエストに応える。こういうしっとりとした曲で前半を閉めるのも中々いいよ、ジム。

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後半は「Live The Proof」から。そうだよ、賑やかな曲のストックはまだまだあるよね。そして、お待ちかねの「Listening To NRBQ」。後半のNRBQカバーは「I Want You Bad」。いつもみたいに途中に挟むというよりも、もうほぼメドレー状態で最後まで歌う。そういえば、途中のソロのところはギターじゃなくピアノソロだったね。空手チョップみたいにして弾くのがテリー・アダムスのマネなんだって。テリーと共演したとも言ってたね。

再度お客さんのリクエストに応えた「That's Not Why I Hate New York」の後、ピアノに移って「Let Me Believe」、そしてこれもリクエストだったという「Where's The Party?」。この曲を生で聴くのは初めてだな。それにしても、自分の目の前数十センチで演奏されるというのは観ているこちらの方が緊張してしまうよ。

ギターに戻って、これも僕は初めて生で聴く、サイモン&ガーファンクル「The Only Living Boy In New York」のカバー。「Three Weeks Shy」の前にはまたちょっと歌い辛そうにしていたね。「でも熱心にリクエストされたから」と。

「普段この曲はウクレレでは演奏しないんだけど」と「Talk About The Weather」、そして定番「Thunder Road」。その曲をフェードアウト気味に終え、あれ?今日はメドレーで演らないんだと思わせておいて、次の曲はやっぱり「Over The Rainbow」。きっとこのあたりの曲が、さっき言ってたウクレレ・アルバムに収録されるんだろうね。

本編最後は定番曲をずらっと。最後の「Several Thousand」ではスティーヴィー・ワンダーの「Overjoyed」の一節を挟む。結局、開演前にリクエストした「The Back Seat Of My Car」は演ってくれなかったね。あと、僕が話していたときにTomに一緒にリクエストしてと頼まれて伝えた(そしてジムはOKと言ったはずの)「The Harry Nilsson Song」も。もうこの辺までくると、本日2杯目の焼酎お湯割りでいい気分になっていたのかな。

お客さんが一杯なので楽屋(なんてないけど)まで戻らずにくるっと振り返ってすぐにアンコール。ブルウの「B.O.S.T.O.N.」の替え歌で「Kamakura」(「K.A.M.A.K.U.R.A.」と表記すべきか)を。お客さんのコーラスとか、日本語でのコール&レスポンスとか、じっくり時間をかけて楽しんだよ。そして、今回の日本公演は「I Realized This Afternoon While Driving To Connecticut」で終了。

終演後はまた沢山のお客さんと歓談するジム。友達のRさんは鎌倉初日にジムに貸してあげたというテレキャスター・デザインのウクレレにサインしてもらってた(それにしても相変わらずそのとき喋ってる内容をそのままサインと一緒にダダ漏れで書くジム。ウクレレにもなにやら沢山書いてあったよ・笑)。僕は開演前に随分独占して話させてもらったから、終演後は一緒に写真だけ撮らせてもらって、「またすぐ来てね」と言って帰ることにした。終電を逃したN君が一緒に飲みに行こうと誘ってくれたけど、申し訳ないが世の中は月曜日。ごめんよ、また近いうちに、週末に。


Setlist 28 May 2012 @ Cafe Goatee

1. To And Fro
2. Bubblegum 45
3. Toy Boat
4. Shine
5. Annie Also Run / Something In The Air
6. Rosemary Comes Along
7. Live And Let Die
8. I Can Barely Wait
9. Do You Want To Know A Secret
10. On Your Birthday
11. Underground
12. Once

13. Live The Proof
14. Listening To NRBQ / I Want You Bad
15. That's Not Why I Hate New York
16. Let Me Believe
17. Where's The Party?
18. The Only Living Boy In New York
19. 3 Steps At A Time
20. Three Weeks Shy
21. Talk About The Weather
22. Thunder Road
23. Over The Rainbow
24. No Way Out
25. Made Me So Happy
26. Several Thousand

Encore
1. B.O.S.T.O.N. (K.A.M.A.K.U.R.A.)
2. I Realized This Afternoon While Driving To Connecticut
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2012年05月28日

Japan Blues & Soul Carnival 2012

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日比谷公園。快晴。もう午後3時前だというのに、新橋駅から10分ほど歩いただけで、麻のジャケットも着ていられなくなるほどの陽気だ。もう5月も末だからね。おあつらえ向きに今日は日比谷オクトーバーフェスの最終日だとのこと。人混みに酔いながら、なるべく短い列のブースを探してドイツビールにありつく。時折涼しい風が吹く木陰で飲む、ちょっと色と味の濃いビールは最高だね。それ自体がずっしりと重いジョッキにたっぷりと注がれた500ミリの黒い液体があっという間になくなってしまう。

そうこうしているうちに3時15分の開場時刻が近づく。今日も指定席だから別に開場時刻に並ばなくてもいいんだけど、これ以上ビールを腹に入れるとライヴ中トイレに通うことになってしまうので、早々に入場。公園には何度か来たことがあるけれど、この歴史ある野外音楽場でライヴを観るのは僕はこれが初めて。

果てしなく遠い2階席の後ろから数えて2列目という、先行予約で押さえたとはやにわに信じがたい劣悪な座席の前日とは打って変わって(劣悪だったのは目前に座った座高男のせいだったんだけど)、今日はかなりステージに近い、しかも自分の前が通路なのでゆったりと脚を伸ばせる嬉しい席番号。しかも、ステージに向かって左側、つまり、サニー側だ。

サニーとジョニーだけだった前日とは違って、ジャパン・ブルーズ&ソウル・カーニヴァルというイベントの今日は、その2組に加えてさらに2組(+ゲストシンガー)という盛り沢山な内容。どうせサニーが出てくるのは6時ぐらいだろうから、あまりよく知らない他の人たちはパスしてそれぐらいの時間に来ようかなとも思ったけど、ドイツビールにも惹かれてやっぱり定刻通りに到着。

その2組についてまでこと細かく書いていたら本当にきりがないので、ごく手短かにすませよう。まずはMCも務めたゴトウゆうぞう率いるワニクマ・デロレン&マキ、控えめに言ってもすっごくよかった。「What's Going On」とか「What A Wonderful World」とかの有名曲を日本語(関西弁)に翻訳して歌うんだけど、アドリブで入れる時事問題とか、まるで河内屋菊水丸かランキン・タクシーかというぐらい。ギタリストのカメリヤ・マキはなんでこんな綺麗な人がブルーズ・ギターなんてやってるんだ?という、いい意味での違和感ありまくりの存在感。そしてなりより、ゴトウゆうぞうの語り。彼は自分のステージだけでなく、最後までセット間のMCを務めたんだけど、まあこれがとにかく面白い。場つなぎのブルーズ・クイズとか、三味線を持ち出しての弾き語りとか、ユーモアいっぱいのメンバー紹介とか。夏に西麻布でライヴ演るっていうから、観に行ってみようかな。

ああ、どこが手短かなんだ。毎度のこととはいえ、すみませんね。次に登場したのは近藤房之助。名前は聞いたことあるかなあと思っていたら、BBクィーンズの人か、おどるポンポコリンの(とか本人は言われたくないのかもしれないけどね)。これがまた剛速球ストレートみたいな、「Stormy Monday」で始まるバリバリのブルーズ大会。いい声してるねぇ。ブルーズ・ハープ(ハーモニカ)だけのメンバーがいるというのもまた凄いよね。

以上二組がそれぞれ大体30〜40分ずつぐらい。セットチェンジ(といっても前日同様アンプぐらいしか換えるものはないけど)の間はゴトウゆうぞうの爆笑トークであっという間に過ぎ、サニー・ランドレスとバンドが登場したのが確か5時半頃。サニーは紫色の絞り染めみたいなシャツと、一見ジーンズに見えるけどあれは多分もっとゆったりした素材のストレートなパンツ。前日同様もうほとんど鎖骨のところまで持ち上げた赤いストラトキャスターを抱えて登場。

僕は前日ほとんど姿を見なかったデイヴ・ランソンは、銀色の髪の毛をオールバックになでつけ、サニー同様銀縁の眼鏡をかけた、ちょっとインテリっぽい風貌。なんだか、(エルヴィス・コステロの)アトラクションズにいそうな見かけ。特にアトラクションズの誰に似ているというわけでもないんだけど。

ドラムスのブライアンは、僕の位置から見るとちょうど後ろのライトが直接目に入ってきて(あれ結構ずっと目障りだったんだけど、この会場っていつもああなのかな)、今日はほとんど彼の方は見なかった。というか、この至近距離からサニーがギターを弾くのを観れるのに、他に何を見るというのか。

「Z Rider」から始まるセットリストは前日とほぼ同じ。詳細なセットリストは後述するけど、昨日書いた赤とサンバーストのストラトを頻繁に交換して弾く件、もしかしたら1曲ごとにチューニングが狂うからなのかなんて書いたけど、今日はそれに注意して見てたら、違うね。あれは意図的に(おそらく違うチューニングで)曲によってギターを使い分けていたと思う。簡単に言うと、冒頭の「Z Rider」以外はヴォーカル曲で赤い方を使っていたかな。

昨日タイトルがわからなかった4曲目、今日必死で歌詞を聴き取ってきて、ネットで調べてようやく見当がついた。スキップ・ジェイムズの「Cherry Ball Blues」という曲だね。ああわかってよかった。

その4曲目までが前日と同じで、「Hell At Home」を演らずに「新しいアルバムを出してね」と紹介し始めたから、これは前日とはセットリスト変えてきてるのかなとほんのり期待。しかも、新作から演ったのは前日とは違って「Wonderide」だった。

ただ、その新曲の次に「The Milky Way Home」も演らずに「この曲はハリケーン・カトリーナのことについて書いたんだ」と紹介したときにちょっと嫌な予感が。これって、もしかしてセットリスト変えてきてるんじゃなくて、単に端折ってるんじゃないのか?

その悪い予感は的中し、「Blue Tarp Blues」の後は前日同様「Brave New Girl」から「Uberesso」のメドレー。そこでメンバー紹介をしてステージを去るサニー。なんだって?40分も演ってないんじゃない?これじゃ最初の二組よりも短いぐらいだよ。

と思っていたら、MCのゴトウゆうぞうが出てきて、サニーを再度呼び出す。ああよかった。アンコールは前日も最後に演奏した「Pedal To Metal」。ものすごい演奏だよね。今日何人もギタリストを見たけど、こんな人他にいないよ。例えて言えば、一秒間に何十個も精密部品を作る工業機械か何かを見ているような感じ。前にも書いたかもしれないけど、自分の目の前で見ているのに、何をどうやったらギターからあんな音が出てくるのかがわからない、まるで高速の手品のような演奏。

あ、そういえば一つ今回発見したのが、「Blue Tarp Blues」のあの印象的なイントロの金属音のような音とドローン音の組み合わせは、右掌を震わせて全部の弦に触れると同時に、スライドバーの後ろで左の人差し指で弦を爪弾いて出していたということを発見。凄いなというよりも、どうしてそんなことをしてあんな音を出そうと(出せると)思ったかということの方が驚きだよ。


サニーのパートが前日よりも2曲分短かったのは残念でしょうがないけれど、1時間弱に亘って彼の手元を凝視し続けることができたのは何よりも幸せだった。もう今日はこれだけで来た甲斐あり。あとは、ジョニー・ウィンターはどうせ前日と同じセットだろうから、缶チューハイでも飲みながらまったりとくつろいで観てよう。

なんてすかしたことを言ってはみても、やはりこの至近距離でジョニー・ウィンターを観られるというのはちょっとした感激。腕の刺青もくっきりと見えるよ(刺青自体はもうすでにくっきりしてはいないけど)。本編のセットリストは前日と全く同じ。演奏の内容もほぼ同じと言っていいだろう(ジョニーが立ち上がる箇所も同じ・笑)。改めて感心したのが、ちょっと危なっかしいところも散見されるジョニーをサポートする3人のメンバーの確実な演奏技術。誰一人としてジョニーを差し置いて出しゃばったりはしないけど、この人たちだからこそお客さんもあれだけ盛り上がることができるんだなあと思わせる卓越した演奏。ベースの音とか超かっこよかったよね。

満員の日比谷野音のお客さんは前座扱いのサニーよりもジョニーの方で相当盛り上がっていたようだけれど、明日も朝から会社に行かないといけない身としては、ちょっとアンコールまで飛ばさせてもらおう。

アンコールの拍手に応えて、ファイアバードを手に再登場したジョニー。左手の小指にはサニーのガラス製のとは違って金属製のスライドバーが嵌っている。ここまで前日と同じセットリストだったから、この後すぐにサニーが出てくるかと思っていたら、椅子に座るや否や「Highway 61」と言って超高速演奏を始めた。ええっ?もしかしてここも端折るの?

と思ったら、長尺のその曲を終えてもジョニーはギターを下ろさない。そして、「君たちが待ち望んでいたゲストを呼ぶよ。そんなに待ち望んでいたかどうかはわからないけど」とかなんだか微妙な紹介で、サニーを呼び出す。いや、当然僕は待ち望んでいましたよ。予想通り、サニーだけでなく、本日の出演者一同、とまではいかないけれど、三味線のゴトウゆうぞう、同バンドからギターのカメリヤ・マキ、近藤房之助バンドからブルーズ・ハープのKOTEZが参加。曲は、これまた予想通り前日同様の「Dust My Broom」。

最初の数回のソロは自分が弾いて、後半「サニー・ランドレス!」とサニーにソロを譲り、12小節終えたところで再度「サニー・ランドレス!」ともう一回ソロを取らせる。ただ、その後、サニーも自分がソロを弾いていいものやら、誰か他のゲストに譲っていいものやら、妙な譲り合いみたいな12小節が2回ほど続いた。誰も弾かないとわかるとKOTEZが咄嗟にブルーズ・ハープを入れたりね。

なんていうのは、あの幸せな空間の中ではほんの些細なこと。中央で椅子に腰かけてギブソン・ファイアバードでスライドを弾きまくるジョニー御大を囲んだ拡大ブルーズ・バンドの面々が演奏する「Dust My Broom」は格別だった。観ている途中、「あ、もしかしたらジョニーを観るのはこれが最後なのかも」なんて不謹慎にも思ってちょっとうるっとしてしまったけど、きっとあのよぼよぼした見かけよりもずっと元気だよね、あの人。あと何回来日してくれるかわからないけど、こうして人間国宝みたいな佇まいでこれからもずっとやっていってほしいよ。


Setlist 27 May 2012 @ Hibiya Open-Air Concert Hall

Sonny Landreth
1. Z Rider
2. Native Stepson
3. Promised Land
4. Cherry Ball Blues
5. Wonderide
6. Blue Tarp Blues
7. Brave New Girl
8. Uberesso

[Encore]
1. Pedal To Metal


Johnny Winter
1. (Intro)
2. Hideaway
3. She Likes To Boogie Real Low
4. Good Morning Little School Girl
5. Got My Mojo Working
6. Johnny B. Goode
7. Black Jack
8. Tore Down
9. Lone Wolf
10. Don't Take Advantage Of Me / Gimme Shelter
11. It's All Over Now

[encore]
1. Highway 61 Revisited
2. Dust My Broom w/ all stars
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2012年05月27日

Sonny Landreth & Johnny Winter live in Tokyo

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2月にこのジャパン・ブルーズ&ソウル・カーニバルの先行予約葉書が送られてきたときに書いてあった会場名Zepp DiverCity Tokyoが、うちからはやたら遠いことで僕の中では悪名高いあのZepp東京が、最近オープンした話題のショッピングセンター、ダイバーシティ東京の中に作った同じ名前の会場だということを知ったのは比較的最近。元々この辺のお台場とか有明とかの地理に疎い僕が最寄駅の東京テレポートに降り立ってみたら、なんだ、元のZeppと同じ駅、しかもずっと駅近じゃないか。会場に入ってみたら、元のZeppよりは若干小ぶりな造り、とはいえそんなに大きな違いがあるわけじゃなさそう。これは、こっちの方がよっぽど便利だよね。元の方は取り壊すのかな。

ただし、ウェブサイトに書いてあった、東京テレポート駅より徒歩3分というのはかなり誇張してあるぞ。なにしろオープンしたばかりのショッピングセンター、その中でも一番駅から遠い場所にある会場までは、ダイバーシティの入口に到達してから更に3分以上かかることを覚悟しておいた方がいい。ましてや、途中でフードコートの中を通り過ぎる作りになっているもんだから、下手に食事時に急いで通り過ぎようものなら、ラーメンをトレイに乗せて席を確保しようとキョロキョロしている親子にぶつかってラーメン汁を頭からかぶる羽目になるよ(これも誇張済み)。まあ、次回からは建物の外を通って行くけどね。皆さんも是非そうしてください。

先行予約でも僕のことならどうせろくな整理番号が当たるまいと思い、今回は1000円高い2階の指定席を予約してみた。去年のジョニー・ウィンターのときみたいに、ギタリストの顔しか見えないというのもちょっと冴えないからね。なので、今回は開場時刻(なんと、夕方4時)のことは気にせず、開演時刻5時の20分ぐらい前に会場に着くように出かけた。

500円のコインを生ビールと交換し、2階席へ。先行予約でも僕のことだからやっぱり5列しかないのに4列目だったりしたけど、ほぼ中央付近の席で、しかも結構前後に傾斜がついているから、ステージまではかなりの距離があるけど、まあ見やすいかな。僕の前の数列には誰も座ってないし。このまま誰もこなければいいのに。

と思っていたら、開演5分前になって、僕の真ん前に左右のお客さんよりも明らかに20センチは座高の高い、しかもやたらと頭部の大きい男が座った。ステージ半分見えないよ… なんてついてないんだ。1万円の席でこれかよ。

しょうがないので左に片寄りながら、少なくともサニーの立つステージ左半分だけは観ようとしていると、開演時刻を少し過ぎたあたりでメンバー登場。サニーがステージを去るときにいつものようにざっと早口で紹介したのを聞くと、ベースはもちろんサニーとずっと一緒に演ってるデイヴィッド・ランソン(David Ranson)、ドラムスはブライアン・ブリグナック(Brian Brignac)だったようだ。結局今回僕がデイヴィッドのことを見られたのは、この登場時と、ステージを降りる時だけだったけど。

オープニングは「Z Rider」!これは盛り上がるなあ。サニーが赤いストラトキャスターを弾いてるのを見るのはこれが初めてかも(もちろん、僕が実物のサニーを見たのは、昨日の記事に書いたとおり1988年のジョン・ハイアットのライヴと、金曜日のサイン会の2回だけだから、何色のストラトキャスターを弾くところも実際には見るのはほとんど初めてのようなものなんだけどね。そういうことじゃなくて、彼がギターを弾いている写真は、大抵サンバーストのストラトか、(こちらは最近滅多に見ることがなくなったけど)同じくサンバーストのファイアバードだったから。

続いて、サニーが調弦しながら単音を弾いた音を聴いて、あ、次はあれだろうなとわかってしまった(それが何の音なのかは楽器もろくにできないし絶対音感もない僕にはわからないけど、どの曲のイントロの最初の音かはわかる。伊達に彼の音楽を聴き続けているわけじゃない)、「Native Stepson」だ。金曜のサイン会がもしインストア・ライヴだったら、最前列に陣取って、どさくさまぎれにこの曲をリクエストしようと思ってたぐらい、あるいは携帯の着信音なんてプリセットのものしか使わない僕にしては珍しく一時期この曲のアクースティック・ヴァージョン(サニーのサイトからダウンロードした)を着うたにしていたぐらいに、大好きな曲。いみじくも、昨日の記事で僕が書いたサニーの代表的な3つのインスト曲のうち2つを冒頭から立て続けに演奏。

2曲演奏したところで、挨拶。どの曲のときだったか、日本語で「コンバンハ」とか言ってたっけ。「アリガトウゴザイマス」だったかな。最初の2曲を聴いて、もしかしたら今回は新譜のコンセプトに合わせてインスト曲しか演らないのかもと一瞬思ってしまったけど、3曲目は歌入りの「Promised Land」。88年の来日時はもちろんサニーは1曲も歌ってないから、これが僕がサニーの歌声を生で聴く最初の瞬間だった。この人、いい声してるよね。

4曲目は知らない曲だった。僕にわからないサニーの曲があるなんて、軽いショック。特に説明もなく始めたから、新曲というわけでもなさそうだし。ミディアム・テンポのブルーズ曲。どっかで聴いたことあるような気がしたけど、こういう感じの頭の歌詞を二度繰り返すミディアム・テンポのブルーズ曲なんて星の数ほどあるから、わからないよ。あの曲、どのアルバムかに入ってたっけ。もし誰かわかった人がいたら、教えてください。

それ以外の曲は、もちろん全部わかった。その場で咄嗟にタイトルの出てこないものもあったけど、“あのアルバムのあの辺に入ってる曲”とかいう感じで大体記憶してメモってきた(咄嗟にタイトルが出てこないのは大体インスト曲)。セットリストは(4曲目以外)後述するので、後は印象的だったことをいくつか書こう。

印象的といえば一番印象的だったのが、サニーがさっき書いた赤いストラトと、お馴染みのサンバーストのストラトを、殆ど1-2曲ごとに取り換えていたこと。どっちもストラトキャスターだから出てくる音にそう大きな違いはないはずなんだけど、もしかしたら2本とも違う調弦してあるのかな。それとも、1曲弾いたらチューニングが狂ってくるから、一旦交換してバックステージでチューニングしてもらってたんだろうか。謎。

ほとんど動き回ることなく、胸のうんと上の方にギターを抱えるようにして、1曲たりともスライドバーを指から外すことなく(僕の位置からはっきり見えるわけもないんだけど、ときどき光を受けて反射する具合を見ると、ガラス製だったみたい)、右脚でリズムを取りながら演奏するサニー。指先とかまでよく見えないけど、右手をパーにしたりネックの方で弾いたり、あの多彩な音はああやって出してるんだなあと感激。

「新しいアルバムを出してね、それがインストゥルメンタル・アルバムなんだ。そこから1曲」と言って始めたのが「Forgotten Story」。アルバムではスティール・ドラムスのロバート・グリニッジをゲストに迎えた曲だけど、もちろんここでは3人によるストレートな演奏(でも途中のレゲエっぽいリズムはそのままで)。

「次はロックンロールいってみる?」みたいなことを言って、なんだろうと思っていたら、「The Milky Way Home」だった。こちらももちろん、アルバムではエリック・ジョンソンが弾いているパートまで一人で全部演奏。これで、昨日の記事に書いた僕が好きなサニーのインスト曲3つ全部演ってくれた。嬉しいな。

「この曲はハリケーン・カトリーナのことについて書いたんだ」と始めたのは、「Blue Tarp Blues」。歌詞読めば歌ってることはわかるんだけどなんのことだろね、と思っていたけど、そう言われて改めて歌詞読んでみたら、あ、そうかと納得。08年のアルバムでカトリーナのことを歌ってるとは思わなかったもので。

再び新譜からの「Brand New Girl」を終えた瞬間、ほとんどメドレーのように始めたのが「Uberesso」。そして、ラストは『Levee Town』の09年の再発盤ボーナスディスク収録の「Pedal To Metal」。結局、11曲中7曲がインストだったね。そういう意味では新譜のコンセプトに合わせたのかもしれないけど、肝心の『Elemental Journey』からはそのうちわずか2曲だけ。まあ、他の5曲が超悶絶的にかっこいい曲ばかりだったから僕としては何の問題もないけど。

さっき書いたようにざっとメンバーを紹介して、1時間弱の演奏を終えてあっさりとステージを去るサニー。あーあ、もう終わっちゃった。次にジョニー・ウィンターが控えてるから、アンコールはなし。ステージのセット交換が始まるが、ドラムキットは共用しているからほとんど換えるものがない。アンプを交換してギターやベースをちょっと試し弾きして、あっという間に終了。あとは、ジョニー・ウィンター用の黒い(たぶん革張りの)椅子。


それからしばらくして(確かサニー達が去ってから20分後ぐらい)、ジョニー・ウィンター・バンドの3人とカウボーイ・ハットをかぶったMCが登場。去年とまったく同じパターンだね。そして、バンドがイントロ曲(きっとまた「Intro」というタイトルなんだろう)を演奏していると、お馴染みヘッドレスのレイザーを手にしたジョニーが、腰を曲げてよぼよぼと登場。そして、イントロ曲の間は、椅子の前で立ったまま演奏(!)。まあ、2階席から見ている限りは、別に座ってても直立不動で立っててもあんまり見た目変わらないんだけどね。

殆どの曲を、曲目紹介しながら演奏していくんだけど、椅子に腰かけての最初の曲が「Hideaway」だというのを聞いて、もしかしたら今日のセットリスト、去年とまったく同じかもという疑念が頭をよぎる。まあ、去年のセトリ全部覚えてるわけじゃないし、たとえ同じであっても別に問題ないんだけどね。

続いて、「She Likes To Boogie Real Low」。やっぱり同じだ。と思っていたけど、帰ってきて去年のセトリ見てみたら、去年はこの2曲の間に「Sugar Coated Love」を演ってるね。微妙には変えてたんだ。

演奏もジョニーの歌も、去年観たときとほとんど同じ感想。曲によってはかなりヴォーカルが聴きづらいほど弱ってしまった声がやっぱり悲しい。ギターソロも、失礼ながらテクニックという意味ではサイドギタリストのポール・ネルソン(Paul Nelson)の方が冴えていたんじゃないだろうか。まあ、テクニックといっても、別にきらびやかな速弾きができることが偉いわけじゃないからね。

というわけで、去年の記事を読み返してしまったら、なんだか同じようなことばかり書いてしまいそうなので、適当に飛ばしながら書き進めよう。もうサニーのパートで散々書き散らかしたから、後半適当でもいいよね。

「マディー・ウォーターズの曲を」と言って始めた「Got My Mojo Working」や、その次に「ロックンロールを演るよ」と言って始めた(昔みたいに「ロックンローーール!!」じゃなかったのがやっぱり寂しい)「Johnny B. Goode」みたいな僕でも知ってる超有名曲から、去年の記事や直近のツアーのセトリを見ないと曲名を思い出せなかったようなマイナーなブルーズ曲まで、淡々と、でもそこはさすが腐ってもジョニー・ウィンターなのでアツくステージが進む。1階のお客さんも、サニーのときは借りてきた猫みたいだったのが、今書いた2曲のサビとかでは歌う歌う。

「Don't Take Advantage Of Me」(という曲だというのは帰ってきてセトリを見るまで思い出せなかったけど)にメドレーで続けて、いつの間にか知ってる曲になってるなあと思いながら歌詞聴いていたら、「Gimme Shelter」じゃないか。

そして、いよいよ本編ラストというところでステージ脇からスタッフが出てきてジョニーのマイクスタンドの高さを上げる。おおっ!と思っていたら、ジョニー立ち上がる(笑)。ここでまた大歓声(笑)。ラストはこれも去年と同じく「It's All Over Now」。

アンコールの拍手に応えて再度登場。メンバー3人とジョニー、そしてジョニーのお手伝いのスタッフも。ジョニーが手にしているのは、これも去年と同じく、彼のトレードマークのギブソン・ファイアバード。やっぱりそっけないデザインのレイザーよりも、この人はこっちの方が遥かに絵になるよね。

ジョニーが椅子に腰かけている間にステージ脇からもう一人現れた。サニーだ!!やった!この二人の共演が観られるなんて!しかも、僕から観やすいように、座高男を避けてジョニーの左側に立ってくれたよ!(笑)。

曲は、ジョニーの新作『Roots』から、サニー参加曲「T-Bone Shuffle」ではなく、何故かデレク・トラックスが参加していた「Dust My Bloom」(「何故か」というか、これも去年と同じということね)。本編では一切披露しなかったジョニーのスライドプレイを堪能。曲中で何度か訪れるギターソロを全部ジョニーが弾くもんだから、おいおいサニーは隣で伴奏してるだけかよ、と思い始めた矢先、ジョニーが「サニー・ランドレス!」と言ってサニーのソロへ。それも数小節とかの短いのじゃなく、たっぷりと弾き倒してくれたよ。超満足。

そこでサニーだけがステージを降り(あーあ…)、ジョニーとバンドは恒例の超高速「Highway 61 Revisited」で幕。ずっと見づらかったけど、なんだかんだ言って結構楽しめたよ。ジョニーもまだまだ元気そうでよかった(歩くときにいちいちポールに手助けしてもらわないといけないのが見ててちょっと不安になるけど)。遠くてよく見えなかったところは、明日(もう今日だ)の日比谷でじっくり観よう。

さあ帰ろうと、椅子の下に置いてあったカバンを手に取ると、なんだか湿ってる。。椅子の下を覗き込むと、隣の席の奴が飲み残したビールのカップを倒して行ってやがる。最悪。道理でさっきアンコールのときに急にビール臭くなったと思ったよ。あーあ、なんだかライヴ本体以外はどうもついてない日だったな。予想外にかなり早く終わった(まだたったの8時過ぎ)のでさっきのダイバーシティのフードコートで何か食べて帰ろうかと思ったけど、とても一人で席を確保できるような状態じゃなかったし。まあ、今日はもうこの記事をさっさと書いて、野音に備えて早いとこ寝よう。


Setlist 26 May 2012 @ Zepp DiverCity Tokyo

Sonny Landreth
1. Z Rider
2. Native Stepson
3. Promised Land
4. Cherry Ball Blues
5. Hell At Home
6. Forgotten Story
7. The Milky Way Home
8. Blue Tarp Blues
9. Brave New Girl
10. Uberesso
11. Pedal To Metal


Johnny Winter
1. (Intro)
2. Hideaway
3. She Likes To Boogie Real Low
4. Good Morning Little School Girl
5. Got My Mojo Working
6. Johnny B. Goode
7. Black Jack
8. Tore Down
9. Lone Wolf
10. Don't Take Advantage Of Me / Gimme Shelter
11. It's All Over Now

[encore]
1. Dust My Broom w/ Sonny Landreth
2. Highway 61 Revisited
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2012年05月12日

Team Me & Kyte live in Tokyo

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メイン・アクトと前座という立場ではなかったからどっちが先でもよかったんだろうけど、4年前にデビューして同時期に来日、既に3枚のアルバムのキャリアがあるカイトと、今年ファーストアルバムを出したばかりのティーム・ミーという組み合わせなら、まあ当然後者がオープニング・アクトで前者がトリという順番になるだろう。

だから、当日になって主催元のホステスがその順序をツィッターで発表したときには別に何の驚きもなかったんだけど、ライヴを観た僕の率直な感想は、あの順番はちょっとカイトに可哀想だったなというもの。メインと前座じゃないからこそ、あえて逆にしてあげればよかったのに、と。それぐらい圧倒的に、残酷なまでに歴然とした差が両者のステージにはあった。

大気の状態が不安定でまた関東を竜巻が襲うかもしれないから注意してくださいと天気予報に言われ(いったいどう注意すれば竜巻から逃れられるのか?)、恵比寿駅からリキッドルームまでの間のわずか5分の道のりで傘をさしていたにも関わらずずぶ濡れになってしまった6月9日の夜。せっかく先行発売で僕にしては珍しい若い整理番号をゲットしていたのに、さあ会社を出ようというその瞬間に会議に引きずり込まれ、会場にたどり着いたときにはもう番号のコールが終わっていたという、のっけから悲しい展開。それでも、左脇の階段あたりに場所を見つけたので、ちょっと遠いけれども小高いところから落ち着いて観ることができた。

大気の状態が不安定で喉が渇いていたからワンドリンクのモスコミュールをあっという間に飲み干し、おそらくホステス関係なんだろうと思われる、僕のよく知らないドンドンコンコンいう音楽が流れる中をひたすら待つ。最近ライヴに行ったら誰かしら知り合いがいるというのに慣れてしまっているから、一人で開演を待つのがこんなに退屈かというのを久しぶりに味わった。

やがて、開演時刻の7時半を10分以上過ぎ、BGMがアークティック・モンキーズとかボン・イヴェールとか僕にも馴染みのあるものに変わった頃、場内が真っ暗になった。さあ、始まる。

6人のメンバーのうち5人が最前列にずらっと並ぶ様は先日観たミャオウとよく似ている。キーボードとか鉄琴とか様々な楽器がバリケードのように並んでいるのも同じだし、男女混合メンバーというのも一緒だね。真ん中で白いジャズマスターを弾いているのがリーダーのマリウスだろう。その他、左からベース(と鉄琴)、キーボード(この人だけ女性)、キーボードも弾くマリウスを挟んで右にギター(とフロアタム)、キーボード、という布陣。ステージ後方にドラムス。

みんな思い思いのフェイスペインティングをして、マイクスタンドには折り紙で作ったような色とりどりの三角形の飾りつけ。右側のギタリストが弾く青いストラトには緑の蛍光色のテープが沢山貼ってある。ただでさえ音楽性があんななのに、もうそういうのを見ただけでまるで(学芸会のように手作り感満載の)どこかの国のお祭りに来たみたいだ。

オープニングは瞬間的にトップギアまで持っていく「Patrick Wolf & Daniel Johns」だったはず。続けて「Weathervanes And Chemicals」かな。このあたりまで(とラスト近辺)は曲順覚えてたけど、あとはちょっと順番うろ覚え。先行発売で買った客にはあとでセットリストが送られてくるということだから、それが来たら転記しよう。ファーストアルバムからは「Fool」と「Looking Thru The Eyes Of David Brewster」以外全曲演ったはず。ファーストのボートラとEPからは以外にも全然演らなかったね(ファーストで再演しているEPの2曲は除く)。

さっき、真ん中にいるのがマリウス「だろう」と書いたのは、右側のギタリスト(CDのブックレットから転載してもいいけど皆あまりにも名前が長いから省略)がほとんどツインヴォーカルのように一緒に歌っていたから。長身の彼とちょっと背が低めの真ん中の人と、最初どっちがマリウスなのかわからなかった。それに加えて、前列にいる他の3人のメンバーがほぼ全曲で、ティーム・ミーの祝祭色豊かな音楽性を支えているあの特徴的なユニゾンのコーラスを入れる。

CDのブックレットによると、このティーム・ミーというのは、マリウス・ドログサス・ハーゲン(Marius Drogseis Hagen 一度ぐらいはフルネームで書いておこう。それにしても長い名前)がいくつかのバンドを掛け持ちでやっていたうちの一つのユニット(というか、Team Meという名前そのまま、マリウス一人)だったのが、母国ノルウェーの国営ラジオ局のコンテストに応募したら突如人気が出てしまい、そのコンテストのために急遽メンバーを寄せ集めたという変わった経歴のバンドらしい。

という話を読んでいたので、この夜の一体感のある演奏にはびっくり。それぞれのメンバーの演奏技術もかなり高いし、転調をふんだんに含むあの複雑な長尺曲を楽々と(マリウスに至っては床に転がったりしながら、文字通り楽しそうに)演奏していたね。中でも、ドラマーが抜群の安定感。ハンサム揃いのティーム・ミーのメンバーの中では唯一だるまさんみたいな体形の彼、何も喋らないしコーラスも入れない(ついでに言えば彼だけフェイスペインティングもない)けど、ステージ後方にどっかり座って、ものすごくいい音を響かせる。僕はあんなに音のいいドラムを聴いたのは、かつてオークランドで観たジョン・ケイルのライヴ以来だと思う。

CDを聴いて予習していたときにはきっとこの曲は演らないだろう、あるいは演ってもつまらないだろうなと予想していた「Favorite Ghost」が秀逸だったのが嬉しい驚き。何曲目だったか忘れたけど確か中盤。「あ、これ演るのか」と比較的醒めた耳で聴いていたら、後半の長い激しい演奏がスタジオ録音を遥かに上回るスリリングな展開。CDでも8分強ある曲だけど、多分この日は10分以上演ったんじゃないかな。

本編終盤の曲順は確か、「Daggers」〜「Show Me」〜「Dear Sister」という流れだったはず。特に、なんだかもわーんとしたイントロをしばらく奏でた後、マリウスが「つぎの曲は“Show Me”」と紹介し、あの特徴のあるイントロになだれ込んだ瞬間のかっこよさったらなかったね。そして、やはりこの曲でも何度か入るタメのスネアの音の強烈さは、CDの比ではなかった。

日本盤CDは5曲もどっさり入っているボートラの前にあえて3分もの空白を入れているほど大事にしているアルバム本編ラスト曲「Daggers」でもう終わりかと思わせておいて、その後立て続けにアルバム内でも相当盛りあがる部類に入るその2曲に続けて締めるところ。あるいは、先に書いた冒頭のアゲアゲ2曲でぐいっと自分たちの世界に聴いているこちらを引き込むところ。もともとの曲のよさというものももちろんあるけれど、そういうステージ構成がとても上手だと感心した。

1時間弱のステージを終え、メンバー退出。と思った瞬間にもう戻ってきて「もう1曲聴く?」だって。アンコールの拍手をする間もなかったよ。きっと時間押してたんだろうね。そして最後は、これもまたファーストアルバムの中ではかなり重要な(そしてタイトルが一番長い)「With My Hands Covering Both Of My Eyes I Am Too Scared To Have A Look At You Now」。後で物販の写真見たら、このタイトルだけをプリントしたTシャツが売ってたみたいだね。

1曲のアンコール(?)を含めてちょうど1時間ぐらいだったと思う。申し分なしのほんとにいいライヴだった。セットチェンジで賑やかな飾り付けがどんどん取り払われていくのを見て悲しい気持ちになってしまうぐらいに。


kyte_liquid.bmp

いかにもカイトのライヴ前らしくシガー・ロスなんかがBGMで流れる中、今度は実にあっさりしたステージになった。左奥にドラムキット、その前にマックブック、ステージ中央に以前も見た小さな機械(あれキーボードなのかな)。あとはテレキャスターばかりのギター数本とベースが置いてあるだけ。メンバーが自分たちで楽器をセットして、音出したりしていつまでもステージ上にいるから、もうそのまま始まるのかと思った。

そんなわけもなく一旦ステージを降り、しばらくして(9時を少し廻った頃だったかな)再度メンバー登場。前に観たときは5人組で、その後2人が抜けたという話を聞いていたけど、出てきたのは4人。ベーシストが助っ人なのかな。前に観たときと同じようなフェンダーのジャズベース使ってるけど、あれはこのバンドの備品なのか。

一応3枚のアルバムは全部持っているけど、どれを何度聴いても同じように聞こえる(またこんなことを書いてファンの気持ちを逆撫でする僕)。だからティーム・ミーと違ってこちらはセットリストを覚えるのは端から諦めてたんだけど、たぶんオープニングは最近完成したばかりだというニューアルバムからだろうと思う。

音楽性が違うからしょうがないとはいうものの、祭りのようなあのティーム・ミーの盛り上がりを体感した直後だから、どうしてもカイトのこの音の前では客はシーンとしてしまう。メンバーも盛り上げようと手拍子を催促したりするんだけど、なんだかぎこちない感じがする。

前に観たときよりは演奏自体は格段に上手になっているんだけど、ちょっと猫背気味にハンドマイクで歌うニックの声が出ていないんだかマイクボリュームが小さすぎるんだか、歌がかなり聞こえづらいというのも盛り上がりに欠けた一因だったと思う。ティーム・ミーのときは全然問題なかったから、必ずしも僕の聴いていた位置の問題じゃないと思うんだけど。

逆にベースの音がかなり強烈にブンブンと響いてきて、やっぱりジャズベの音いいなと思っていたら、ある曲ではベーシストもギターを弾いているのに、ベース音がバリバリ鳴っている。あ、あの音ってマックから鳴らしてたのかと、また一気に興醒め。ただ、その後ベースに持ち替えた曲でのベース音の響きは違ったから、やっぱりジャズベの音はよかったんだけど、それでもその場で演奏していない音が鳴るラップトップミュージックのライヴにはどうしても馴染めない。

どれも同じ曲に聴こえるから、「あと2曲演るよ」と言って演奏した2曲(比較的よく覚えてたから、たぶん僕にも馴染みのあるファーストからの曲)もそれまでと同じように淡々と終わり、あっさりとステージを降りる。そしてこちらも、まだアンコールの拍手がそれほど始まってもいないうちに再登場し、「もう2曲」とアンコール。終了は10時ちょっと過ぎだったから、やはりこちらも1時間ちょうどぐらいのステージだった。


というわけで、僕の主観が入りまくった(僕のブログなんだから当たり前なんだけど)、やたらティーム・ミー寄りのレビューになってしまった。終演後は竜巻に巻き込まれるといけないと思ってそそくさと出てきたんだけど、後でツィッターとか見てみたら、物販には沢山のTシャツとかティーム・ミーのLPとかがあったみだいだね。残念だけど、最近散財が激しいからちょうどよかったよ。

ちなみに今回のライヴ、紙チケットの代わりに携帯にダウンロードしてそれを会場入り口でピッとするやり方。スマートでいいんだけど、携帯の充電切れたらどうしようかとちょっと気が気でないところが玉に傷。

そうやってチケットを購入したお客さんにはライヴの写真が送られてきたり(上に勝手に貼らせてもらったのはその4枚のうちの2枚)、セットリストが送られてきたり(まだ来てないけど)、メンバーとのミート&グリート参加権の抽選に参加できたり(はずれたけど)、カイトの新曲がダウンロードできるコードをくれたり(個人的にはティーム・ミーのを欲しかったけど)と、なかなかいいサービス。先行販売割引がきちんとできていなかったからと、会場出口で返金してくれたのもスムーズだったし(喫煙所近くだったからそんな場所にずっといるのだけは嫌だったけど。というか、なんでリキッドはあのもうもうとした煙の中を通り抜けないと外に出られない造りになってるんだ?なんとかしてほしいよ)。

外に出てみたら、台風一過のように静かな夜空。カイトにはちょっと残念な思いをしたけど(前回同様、やっぱりこの人たちはCDで聴くのがいいという僕の結論)、去年の年末にEPを聴いて以来かなり贔屓にしていたティーム・ミーのライヴがあれだけよかったことに気をよくしながら帰途についた。


 5月13日追記

ホステスからはまだセットリストを送ってこないけど、RO69のサイトにもう載ってたので、転載させてもらおう。上に「ファーストのボートラとEPからは以外にも全然演らなかったね」なんて書いたけど、EPから「Kennedy Street」と「Come Down」もしっかり演ってたね。まったくいい加減な記憶。

Setlist 9 May 2012 @ Liquidroom Tokyo

Team Me
1. Patrick Wolf & Daniel Johns
2. Weathervanes And Chemicals
3. Riding My Bicycle (From Ragnvalsbekken To Sorkedalen)
4. Kennedy Street
5. Favorite Ghost
6. Come Down
7. Daggers
8. Show Me
9. Dear Sister

Encore
1. With My Hands Covering Both Of My Eyes I Am Too Scared To Have A Look At You Now

Kyte
1. Every Nightmare
2. Love To Be Lost
3. Breaking Bones
4. Friend Of A Friend
5. Sunlight
6. Alone Tonight
7. Aerials
8. Half Alone
9. Scratches
10. IHNFSA

Encore
1. Boundaries
2. The Smoke Saves Lives
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2012年04月30日

Ron Sexsmith live in Tokyo

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派手なところは一切ないけれど、いい曲を達者なバンドの演奏に乗せて1時間ちょっと聴かせるだけ、そんな感じの実にシンプルなライヴだった。ロン・セクスミスのビルボードライヴ東京での来日公演。僕が行ったのは2日目のセカンドセット。東京での最終公演だ。

にも書いたことがあるけれど、僕は16年前に彼のデビューアルバムを買ったものの、周囲の高い評判に反してどうも今一つのめり込むことができず、その後に買ったアルバムはなんだかどれ聴いても同じ曲ばかりだなあと、中古屋に売り飛ばしていた程度の、とてもファンとは呼べないような立場だった。

それが、昨年のベストアルバムにも選んだ『Long Player Late Bloomer』を聴いて、あれ?この人ってこんなにいい曲書くんだっけと、昔からのファンにとっては今更何をというような感想を持ち、ちょうどタイミングよく来日公演が発表されたので、足を運んでみることにしたというわけ。

チケットを押さえてから、ちゃんと曲を予習しないとと思って、中古で何枚か買って聴いてみたものの、やっぱりどれ聴いても同じ曲に聴こえる(失礼)。まあ、新譜の曲はかなり聴き込んであるから、それだけでもわかればいいやと六本木に向かった。

そんないい加減なファンである僕が、どういうわけかこういう時に限ってえらくいい整理番号で、正面真ん中、ベストポジションに陣取ることができた。ステージを見渡してみると、中央のロンのマイクのところには楽器は置いてないが、その後ろにはヤマハのドラムキット。その右側に、ダンエレクトロの相変わらずふざけた形のベース(ダンエレクトロってベースなんて出してたんだね。調べたらDano 63って型だった)、更に右にはごっついアームのついたギブソンのセミアコと、これまたふざけた形の、なんだか紫色の虫みたいな12弦のエレクトリック・マンドリン(帰って調べてみたら、たぶんヴォックスのマンドギターってやつ)。そして、ステージ左側にもの凄い存在感ででんと構えているのが、スタインウェイのグランドピアノ。上にノードらしき赤いキーボードが置いてあるね。

ほぼ定刻にロンとメンバー登場。ハンチングをかぶった右端のギタリストがティム・ボヴァコンティ(Tim Bovaconti)、隣のヒゲメガネのベーシストがジェイスン・マーサー(Jason Mercer)、僕の位置からはロンが邪魔で全く見えない長髪ドラマーがドン・カー(Don Kerr)、ピアニストは妖怪人間ベムみたいな黒いハットに黒いスーツのデイヴィッド・マシスン(David Matheson)。と、かつてロンと一緒にアルバムを作ったドン以外は全く知らないメンバー名をビルボードのサイトから(どうでもいい見た目情報と共に)丸写し。ちなみに新作の制作メンバーとは全然違うんだね。

最近のアルバムジャケから推測して、いったいどんなに太ってしまっているんだろうと想像していたロン(なにしろ、この同じビルボードで目撃したマシュー・スウィートは、一連のアー写がいかに細く見せようとうまく撮られていたかを実感させられたほどの凄さだったからね)、意外に超デブというわけではなかった。なんだか一所懸命ダイエットしてるんだろうなと思わせるような涙ぐましい体型を、黒い襟のついたエンジ色の芸人みたいなジャケットと相変わらずヒラヒラしたフリルの沢山ついた水色のシャツに包んで。真上からスポットの当たったカーリーヘアは金髪かと錯覚したけど、上の写真でもわかるとおり普通に黒髪。手にしたアコギは小ぶりなテイラー。ペグからはみ出た弦をカットしてないから、6本の弦がヘッドのところでぐちゃぐちゃに絡まってる。

何も言わずに演奏を始めたオープニングは「Heart's Desire」(僕と違って全アルバムをきちんと聴き込んでいる一緒に観ていた友達が、いくつかの曲名を教えてくれた)。ティムがチロチロと弾く繊細なギターの音が心地良い。

その曲が終わって「じゃ、おやすみ!」と去ろうとするロン。あ、こういうお茶目なキャラだったんだね。「新作から何曲か演るよ」と、『Long Player Late Bloomer』の曲順通り最初の2曲を続けて。

その後も、「これは懐かしいファーストアルバムから」とか「これはセカンド『Other Songs』から」とか、比較的古いアルバムからの曲が多かったように思う。まあ、僕にとってはどれも同じ曲に聴こえるんだけど。

「また新作から何曲か。まずはアルバムのタイトルトラック」と言って「Late Bloomer」。それに続けて何も言わずに演奏したのが、僕が去年のベストアルバム10枚から1曲ずつ集めて作ったCD-Rに収録した、アルバム中一番好きな「Believe It When I See It」。ああこれは嬉しい。

10曲目でジェイスンとデイヴィッドがステージを降り、ロンとドンが並んでアコギを持って並ぶ(ドンのは4弦だったな。ベースでもなくウクレレでもなく、なんだか小ぶりなアコギ。ほんとにこの人たち不思議な楽器ばかり持ってるね)。隣でティムがマンドギターを添える。05年のセクスミス&カー名義のアルバムから「Listen」。これいい曲だね。アルバム買おう。

次の曲でさらにドンとティムがステージを降り、ロンが一人でピアノに座って1曲。ピアノもうまいね。ピアノといえば、ここで書くのが妥当なのかどうかわからないけど、デイヴィッドが弾いてもロンが弾いても、ピアノの音が本当に綺麗に聴こえる。僕にグランドピアノの音の何がわかるのかと言いたい人もいるかもしれないけど、いやほんとに、さすがスタインウェイと思わされたよ。

「次の曲はカバー」と言って始めた、アルバム『Exit Strategy Of The Soul』からの「Brandy Alexander」。誰のカバーと言ったのか聴こえなかったけど、コンサート前半からやたらと騒いでいた最上階にいたカナダ人らしき観客に向かって「君たちなら彼女のことわかるだろう」とロンが話しかけていたので、きっとカナダ人女性アーティストなんだろう。と思って、帰ってから調べてみたら(このアルバムは予習のために買っておいた)、ロンとファイスト(Feist)の共作曲だった。

9時に始まった本編は10時10分にひとまず終了(なんできっちり時刻を覚えてるかというと、この日の夜10時に発売開始となっていたジム・ボジア5月公演のチケットを押さえるべく、本編終了と同時にアンコールの拍手もせずに携帯からメールを送っていたから)。

ちょうどメールを送信したところでメンバーが再登場。「東京で最後の公演だから2曲演るよ」と、「Tell You」と、その曲が終わって間髪入れず歌い始めた、僕みたいなにわかファンにすらよくわかる、デビューアルバム1曲目「Secret Heart」で幕。「Secret Heart」では、自分でギターソロを弾いていたね。


これからまたバックカタログを全部集めなおすかというとちょっと疑問だけど、聴いてきて気に入った曲が入ったアルバムは買ってみようかなと思わされるような、いいライヴだった。アルバムカバーでもライヴ中でもいつも眉間に皺を寄せて人のことを睨んでるような三白眼のロンだけど(ひどい言い方)、アットホームなライヴは安心して聴いていられる気持ちいいものだった。ついでに、終演後に友達と行った飲み屋も、ふらっと入ったにしては中々味もよく料金も良心的だったので、今後ビルボードのときは贔屓にしてあげようかと思う。


Setlist 28 April 2012 (second set) @ Billboard Live Tokyo

1. Heart's Desire
2. Get In Line
3. The Reason Why
4. Wastin' Time
5. Late Bloomer
6. Believe It When I See It
7. Nothing Good
8. Gold In Them Hills
9. Nowadays
10. Listen
11. Fallen
12. Up The Road
13. Imaginary Friends
14. All In Good Time
15. Love Shines
16. Brandy Alexander
17. How On Earth
18. It Never Fails

Encore
1. Tell You
2. Secret Heart
posted by . at 21:16| Comment(2) | TrackBack(0) | コンサート | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする