2008年05月11日

哀感を湛えた四月 - Sun Kil Moon

4月。新入学、新学期、お花見、ゴールデンウィーク、等々。日本人にとっては、ある意味一年でいちばん明るい気持ちになれる月だろう。アメリカ人にはどうなんだろう。年度の区切りは関係なくても、やっぱり春というのは(地域によるだろうけど)寒くて長い冬を越した、希望の季節なんじゃないのかな。

April.jpg Sun Kil Moon 『April』

なのに、『April』と名付けられた、サン・キル・ムーン(Sun Kil Moon)久々のこのアルバムは、このジャケットからも連想できるように、そんな明るい雰囲気とはかけ離れた内容の、とても落ち着いた、しっとりと深みのある、そして時には執拗な、聴きごたえのある傑作長編になった。

全11曲73分に、さらに4曲のヴァージョン違いが入ったボーナスディスク付きの2枚組。10分前後の曲がいくつも入っているおかげで、流して聴いていると果てしなく曲が続いているように感じる。

基本的には、マーク・コズレック(Mark Kozelek)のギターの弾き語りが中心。朴訥とした歌は、ニール・ヤングを源流とする数多のアメリカのSSWを連想させる(ニール・ヤング自身はアメリカ人ではないけれど、グレイト・レイク・スイマーズなんかも含めた、北米大陸の、という意味でのアメリカね)。長尺の曲での、聴き手の神経を麻痺させるような、輪廻のように延々と続く歪んだギターも、ニール・ヤング譲りと言えるかも。

僕にとっては、いつも熱心に動向を追っかけているという人ではない。でも、彼が92年に最初に始めたレッド・ハウス・ペインターズ(Red House Painters)の時代から、その素晴らしくノスタルジックなアートワークのせいもあり、常に気にかけていた。僕が今持っているレッド・ハウス・ペインターズの編集アルバム『Retrospective』とこの最新アルバム『April』を続けて聴いてみても、彼の作る音楽には一貫した雰囲気が漂っているのがわかる。そう、レッド・ハウス・ペインターズから彼のソロを経由してサン・キル・ムーンに至る、彼の一連のアルバム・ジャケットに漂うあの独特の雰囲気のように。

Retrospective.jpg Red House Painters 『Retrospective』

彼自身とても滋味のあるメランコリックないい曲を書くソングライターなんだけど、他人の曲をカバーする才能にも長けているようで、しかも、カバー曲をアルバムに収録するだけじゃなく、やるときはアルバム全部あるアーティストのカバー、なんてことが多い。僕が持っている、サン・キル・ムーンとしての前作『Tiny Cities』は全曲モデスト・マウスのカバー。だけど、モデスト・マウスとは似ても似つかない、完全に換骨奪胎したマーク・コズレックの音になってしまっている。僕は未聴なんだけど、全曲AC/DCのカバーなんてアルバムもあるらしい。

Tiny Cities.jpg Sun Kil Moon 『Tiny Cities』

そんな彼が、サン・キル・ムーン名義でなくソロとして初来日し、東京で二日間コンサートを開く。来週の火曜日と水曜日だ。本当に残念なことに、僕は両日ともちょっと抜けられない仕事があって、行かれないんだけど。

こちらで音を聴いてみて、もし気に入ったら、近場の人は是非観に行ってみてはいかがだろうか。14日の吉祥寺の方はもう売切れてしまっているようだけど、13日の渋谷は今これを書いている時点ではまだ少数チケットが残っているようだから。

悔しいなあと、あれこれ調べていたら、どうやら明日(というか、もう今日だね)、渋谷と新宿のタワーレコードで、インストア・ライヴとサイン会が開催されるようだ。これも残念ながらサイン会の参加券はもう予定枚数終了とのことなんだけど、せめてインストア・ライヴだけは観に行ってみようかな。昨日からずっと降り続いている雨は、天気予報によるとこれからどんどんひどくなるという話で、ちょっと億劫なんだけど。

4月の話題はちゃんとその月のうちに書ければよかったんだけど、どうもなかなかまとまった時間が取れなかった。なんとかぎりぎりで彼のライヴ前に記事を上げることができたから、せめて偶然これを読んで彼のことを知った人がライヴに行って楽しめればいいのにな。
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2008年04月29日

予告編と出張報告書 - Sonny Landreth

ゴールデンウィークだ。今年は祝日が軒並み土日に重なっててなんだかいまいち有難味がないようだけど、僕にとっては1992年以来16年振りのゴールデンウィーク、ゆっくり楽しませてもらうとしよう。

というわけで、まずは、二週間以上も放ったらかしにしてあったブログを久し振りに更新することにした。例によって書きたいネタは山ほどあったんだけど、ちょっとここしばらく忙しくしていたもので。

Jazz Fest Live 2007.jpg Sonny Landreth 『Live At Jazz Fest 2007』

毎年4月最終週から5月第一週にかけて(おお、ゴールデンウィークつながり)、アメリカはニューオーリンズで開催されている、ジャズ&ヘリテージ・フェスティヴァル。2004年以降、その年の主要なステージが録音されて発売されている。最近になって07年分が40種類ほど発売されたようで、そのうちの1枚がこれ。07年4月28日のサニー・ランドレスのライヴだ。

発売されたといっても、ちゃんとしたレコード会社から出た正規盤というわけではない。どうやらこのフェスティヴァルの主催者側が出している、アーティスト公認の所謂オフィシャル・ブートレッグというやつだ。上のジャケ写横に載せたタイトルにリンクを貼ったオフィシャル・サイトに行けば、CD一枚15ドル(送料含まず)、ダウンロードなら12.5ドル(アートワークも無料でダウンロード可)で買える。CDと書いたけど、送られてくるのはCD-Rだから、これはちょっとわざわざパッケージメディアで買う有難味は薄いかもね。

裏ジャケに記載されているのは全14曲だが、曲間のお喋りなんかも数えられているので、曲としては11曲が収められている。同じく11曲が収録された、05年にシュガーヒルから出たオフィシャルのライヴ盤『Grant Street』 との重複は「Native Stepson」、「Z. Rider」、「Wind In Denver」、「Congo Square」の4曲。『Grant Street』が初出だったブルーズ曲「Wind In Denver」以外は全て彼の代表曲ばかりだ。

おそらくメンバー用に手書きで作ったセットリストを基にしたんだろうか、その裏ジャケの曲目表には間違いや省略が散見される。フェスティヴァルのサイトにもそのまま載っているのに、サニーも他のメンバーも見てないのかな。大らかなのかな。それほど大らかでない僕が正誤表を載せておくね。

1.Port ⇒ Z. Rider
3.Stepson ⇒ Native Stepson
5.Denver ⇒ Wind In Denver
7.Milky Way ⇒ The Milky Way Home
8.When I Still Have You ⇒ When I Still Had You
14.Bayou Tech ⇒ Back To Bayou Teche


1はどうしたことだろう。『Grant Street』にも入っている「Port Of Calling」のつもりか?でもこの曲は誰が何と言おうと「Z. Rider」。あと、曲間のお喋りを、6では「Stage Banter(ステージ上での冗談)」と書いているのに、10では単に「Banter」、13では「Band Intros」としている。些細なことだけど、6と10ぐらいは統一してほしかったね(大らかでない人の意見)。

そろそろ内容にも触れなければね。おそらくミキシングボードから直接録音されたせいか、きちんとプロデュースされたオフィシャル盤『Grant Street』と比べると、平板なミックスと歓声の少なさがちょっと興醒めだけど、それもこの熱い演奏を冷ましてしまうほどではない。冒頭の「Z. Rider」をはじめ、「Native Stepson」、新曲「The Milky Way Home」、「Like Nowhere Else」といったインストゥルメンタル曲の凄さは、去年の4月9日の記事「ルイジアナの風」で紹介した「Z. Rider」や「Taylor's Rock」を聴いたことがある人ならきっと想像がつくことだろう。

初期の名曲「South Of I-10」も「Back To Bayou Teche」も、それぞれ6分を越える白熱した演奏。どちらも僕は大好きな曲だから、これだけアドリブを入れて延々とソロを続けられると、この場にいられなかったのが本当に悔やまれてしまう。それに輪をかけて長いのが、10分近くにも及ぶ、定番「Congo Square」。『Grant Street』では最後を飾っていた曲だが、このアルバムではこの10分の後にさっきの「Back To Bayou Teche」が続くんだから、もうたまったもんじゃない。

03年の『The Road We're On』以来5年振りとなる新作スタジオアルバムが、いよいよ来月20日に発売となる。彼のオフィシャルサイトには相当前から情報が載っていたので、ほとんど更新されることのないそのサイトに飽きずに通い詰めていたこちらとしては、ようやく、という感じだ。そのサイトによると、今回のアルバム『From The Reach』には、エリック・クラプトン(Eric Clapton)、マーク・ノフラー(Mark Knopfler)、ドクター・ジョン(Dr. John)などの豪華ゲストが参加していて、サニーもそれぞれのゲストの演奏スタイルを想定して曲を書いたとのこと。1ヵ月後の6月25日には日本盤も発売になるようだし、この豪華ゲストの助けも借りて、これでようやく彼も日本でメジャーになるんだろうか。

自分で持っているCDやレコードのジャケ写しか載せないというローカルルールがあるんだけど、この新作は20日以内に僕が死んだり地球が爆発しない限りは買うことが決まっているので、フライングで載せてしまおう。

From The Reach..jpg Sonny Landreth 『From The Reach』
Grant Street.jpg Sonny Landreth 『Grant Street』
The Road We're On.jpg Sonny Landreth 『The Road We're On』

なんだかどれも雰囲気似てるよね。渋いセピア色のジャケ『The Road We're On』はかなりブルーズ色の強いアルバムだったし、ブレが躍動感を醸し出している『Grant Street』はアツいライヴ盤。ということは、次作のちょっと上品な色のついた、自分の名前のロゴもお洒落にあしらったジャケは、そのままアルバム自体の派手目な内容を表しているんだろうか。

確かに今回のライヴCD-Rに収録された新曲を聴く限りは、性急なリフにちょっと甘めの歌メロが絡む「When I Still Had You」とか、かなりロックマナーなインスト「The Milky Way Home」とか、ブギーっぽい「Blue Angel」とか、前作に入っていた曲よりも結構ロック寄りかもと思える曲が多くて、個人的には嬉しい。さっきも書いたもう1曲のインスト「Like Nowhere Else」は、発表された新作の曲目表には載ってないけど、収録されないんだろうか。これも格好いいのにな。

というわけで、散々待たされたアルバムが更に待ち遠しくなってしまうような、よくできた予告編のようなライヴ盤だ。誰にでもお勧めできるわけじゃないけど(まずオフィシャル盤からどうぞ)、海賊盤までこまめに揃えているような(僕のような)ファンの人ならこれは欠かせないはず。

ちなみにこのライヴ盤、さっき書いたオフィシャルサイトでも買えるけど、海外からの通販はちょっとと思う人には、ディスクユニオンタワーレコードのサイトで売ってるのも見つけたから、興味があればそちらからどうぞ。

あ、ところで、今年のゴールデンウィーク時期にも開催されている08年ジャズ&ヘリテージ・フェスティヴァル、5月4日にサニー・ランドレス出演と書いてあるな。行きたいなあ。でも、いくら会社が休みとはいえ、わずか1時間のステージのためにニューオーリンズまでは飛べないよ。


さて、もう充分一記事分ぐらいは書いたけど、続けて関連アルバムのことを書こう。しばらく前に、発売してすぐに買ったけど、なかなかブログに書く機会のなかったこのアルバム。

Toolin Around Woodstock.jpg Arlen Roth 『Toolin' Around Woodstock』

実は例によってゲスト参加しているサニーの名前に釣られて買ったものの、この本人アーレン・ロスのことを僕は全然知らなかった。アマゾンの紹介文によると、「ピート・シーガーからリック・ウェイクマンまで様々なアーティストのレコーディングに参加し、ミュージシャンズ・ミュージシャンとして尊敬されている名ギタリスト、マスター・オブ・テレキャスターことアーレン・ロスがリヴォン・ヘルムとの共同作業で制作した7年振りとなる最新ソロ・アルバム」だそうだ。

サニー他ゲストが数名参加しているにも関わらず、アルバムの正式クレジットは「Arlen Roth Featuring Levon Helm」ということで、元ザ・バンドのドラマー、レヴォン・ヘルムの参加が世間的にはこのアルバムの目玉ということだろう(ちなみに、これまたこのブログのローカルルールで、バンド名の定冠詞「The」は省略することになっているんだけど、「The Band」と「The The」だけは「The」を省略すると訳がわからなくなるので、例外として「ザ・バンド」「ザ・ザ」と書くことにする)。

レヴォン・ヘルム翁が熱唱するチャック・ベリー作「Sweet Little Sixteen」をはじめ、ジョー・サウスの「Games People Play」、ボブ・ディランの「Ballad Of A Thin Man」、カール・パーキンスの「Matchbox」、ライチャス・ブラザースの「Unchained Melody」など、ほとんどがカバー曲。でも、カバーだろうと自作だろうと、アーレンのねばりつくような濃密なギターソロをたっぷり堪能させてくれる。特に、歌なしで演奏される「Ballad Of A Thin Man」と「Unchained Melody」が強烈。

一時ニック・ロウのバンドに参加して、小気味よいギターを弾いていた、こちらもテレキャスターの名手ビル・カーチェンも2曲にゲスト参加。そのうち1曲ではボーカルもとっている。

数曲にはアーレンとレヴォンそれぞれの娘、レキシー・ロスとエイミー・ヘルムがボーカルで参加。おっさんばかりで危うく渋々のブルース/ロカビリーアルバムになってしまうところに辛うじて色を添えている。

そして、僕にとってはこのアルバムの目玉、自分のアルバムのレコーディングで忙しかったはずなのに、こんなところまで出張してきているサニー・ランドレス参加の2曲「Tumblin'」と「Deep Feeling」。イントロのモワーンとした音だけでサニーのプレイだとわかる「Tumblin'」は、アーレンとサニー2人のスライドギターだけの演奏だ。このアルバム3曲目になるチャック・ベリー作品「Deep Feeling」は、その2人のスライドギターにレヴォンのドラムスとアメリカ南部風ピアノ(クレジットにないけど誰が弾いてるの?)が絡むゆったりとしたインスト・ブルーズ。

なんとこのアルバムも来月に日本盤が出るようだけど、僕が買ったアメリカ盤はボーナスDVD付。ウッドストックのレヴォン・ヘルムのスタジオでの和やかなレコーディング風景と、先述の「Tumblin'」の演奏風景が丸ごと収録されている。当然、この「Tumblin'」が凄い。2人が向かい合ってソファに腰掛け、5分に亘って延々とスライドギターのバトル。僕は海賊盤も含めてサニーの演奏シーンが入ったビデオをいくつか持っているけど、こんなにじっくり観られるのは結構珍しいかも。というわけで、サニー・ランドレスのファンならこのDVD付を買うべし。


さて、そろそろ朝の4時になってしまうな。明日休みだと思うとつい夜更かししてしまうよ。この人の話を書き始めると止まらないしね。最近、ブログの記事数が少ないんだから、こんなに書くんならやっぱり二つに分ければよかったかな。まあいいや、久々の長文記事、縦読みでも斜め読みでもお好きにどうぞ。
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2008年04月05日

箱庭の王様のうた - Egil Olsen

待ちに待った発売日にいそいそとCDを買いに行ったのも久し振りなら、日本盤の帯に表示されている定価そのままをレジに支払ったのもずいぶん久し振りなんじゃないだろうか。しばらく前にその名前と彼の歌を知り、世間一般の(今の時点での)知名度はともかく、個人的にはまさに“満を持して”発売されたノルウェーのSSWの日本初登場のアルバム。

I Am A Singer Songwriter.jpg Egil Olsen 『I Am A Singer / Songwriter』

アルバムのタイトルトラックであり、彼の代表作ともいえる「Singer/Songwriter」を聴くのが、このエギル・オルセンというアーティストをまず知るには最適だろう。一瞬、小さな女の子が泣いているのかと思ってしまうほど、か細い震えるような声で歌いだされる。左右のチャンネルに重ねられた、夢見るようなアコースティックギターのアルペジオの音だけがその声を支えている。3分に満たないほどの小曲。だけど、彼の作る箱庭のような世界に引き込まれるにはそれで充分だ。

続く、彼がアメリカを放浪していたときの経験を綴ったという「California」から、アルバム4曲目「Deep Down The Basement」まで、同じスタイルの弾き語りが続く。わずか一段落前に自分で書いた「Singer/Songwriter」が彼の代表作というのを取り消したくなってしまうほどの佳曲揃いだ。

5曲目「Same Old Fool」と6曲目「Papers And Pens」はちょっと趣向を変えて、エレクトリック・ギターに持ち替えている。ロックを演っているというわけではないけれど、ちょっと一本調子になってしまいがちなこの手のSSWのアルバムの色調を変えるのに効果的なアクセントの役割を果たしている。とはいえ、ブギっぽいリズムの8曲目「Back On My Feet」はこのアルバムに於いてはかなり異色。まあ、パラノイアックなエンディングの音を聴けば、これもまた彼の箱庭の一風景と理解できるけれども。

彼の歌を特徴づけているのは、やはりその声。ほとんどの部分をハイピッチなファルセットで歌っており、聴く人によっては好き嫌いが分かれるところだろう。ファルセットで歌う男というとどうも色物っぽく受け取られてしまうところがあるかもしれない。けれど、不思議とコミカルでも妖艶でもないこんなファルセット・ボイスには、なかなか出会えるものじゃない。

Singer Songwriter Original.jpg好き嫌いが分かれるといえば、上に載せた日本盤のジャケとは違った、オリジナルのノルウェー盤のこのイラストも。エギル自身が描いたという、彼と彼の愛犬(「You And I(And The Dog)」という曲にも登場する)の自画像は、日本盤のブックレットにも、それぞれの曲の情景を説明するという形で多数掲載されている。愛嬌もインパクトもあって、僕は個人的には嫌いなイラストではないけれど、やはりこのイメージで日本初登場というのは、ちょっとしたリスクだったんだろうね(笑)

「どうしてもこっちのジャケがいい」という人はちょっと苦労してオリジナル盤を手に入れてくれればいいけど、日本盤にはボーナストラックが1曲収録されているから、それもちゃんと考慮するように。彼が以前在籍したアンクルズ・インスティテューションというバンド(ほとんど彼のワンマンだったらしいけど)時代に書いた曲をソロで再録したデモ録音だ。

彼の曲の一節にこういうのがある。

  ほとんど誰も僕のことを聴いたことはないけど
  聴いた人は、僕を王様みたいに思う


こういう、ちょっとした自虐的虚栄心(笑)は彼の詞のあちこちに顔を出していて、アルバムの謝辞の最後にも「このアルバムを買ってくれたあなたへ、そんなにエギル・オルセンの熱狂的なファンでいてくれてありがとう」なんて具合に書かれているんだけど、でも小さな箱庭で愛犬のパグを連れた孤独な王様がこれからどんな音楽を作っていくのかには興味津々だ。

マイスペース
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2008年03月31日

枯れたまま育つ - Dolorean

例えば、トム・ウェイツがデビューしたときって、きっとこんな風だったんじゃないだろうか。シンガー・ソングライターのレコードなんだけど、当時流行していた爽やかな・あるいは内省的なウエストコーストのSSWとは明らかに趣が違う、そのレコードをかけた場所だけが夜の色に染まってしまう感じ。

Not Exotic.jpg Dolorean 『Not Exotic』 

トム・ウェイツの『Closing Time』からちょうど30年後にあたる03年に発表された、アメリカはオレゴン州ポートランドのバンド、ドロリーンのデビューアルバム『Not Exotic』を聴いて、僕はそんな感想を持った。誤解を恐れて(笑)弁明するなら、このアルバムには『Closing Time』のもつあのどこにも行き場のない厭世観はない。でも、これが新人バンドのデビューアルバムかと思ってしまうほどの枯れた世界がここにはある。僕の知っている最近のバンドでこれに一番近い感触を持っているのは、グレイト・レイク・スイマーズだろうか。

そこで鳴っている楽器は極めてオーソドックスなもの。ギターとヴォーカルのアル・ジェイムスを中心とした5人組。強いて言えば、5人目のメンバーの担当楽器がチェロということぐらいがオーソドックスとは言えないか。アルバムは、そのチェロの陰鬱な音で幕を開ける。

統一感のあるアルバムだと思う。その冒頭の曲から一貫して、夕暮れから夜に至るイメージを喚起させてくれる。三拍子の曲がアルバムの大半を占めていることも、この一貫して落ち着いた雰囲気を持続させることの一助になっているのかも。


Violence In The Snowy Fields.bmp Dolorean 『Violence In The Snowy Fields』

翌年発表のセカンドアルバム『Violence In The Snowy Fields』は、一体この人たちに何があったのかと思うほど明るい曲調の「The Search」がオープニング。まるでイーグルスかポコか、といった爽やかなウェストコースト・サウンド。

それでも、ファーストで聴けた、あのしっとりとした雰囲気は健在。いや、むしろ曲の出来という意味ではこのアルバムの方が格段に進歩しているんじゃないかな。日本でほとんど露出のないこのバンドのことをネットで調べていると、何故あちこちでニール・ヤングの名前が引き合いに出されるのかが、このアルバムを聴くとわかる気がする。

とてもよくバランスの取れたアルバムだ。前作にはなかったミディアム・テンポのカントリー調ロックから、相変わらず渋く聴かせるワルツまで。さっき名前を挙げたイーグルスやポコを髣髴とさせる素敵なコーラス・ワークも聴ける。この先まで読み進む人にこういうことを言ってしまうのもなんだけど、このバンドを聴いてみようと思うなら、まずこのアルバムから入るのが正しい聴き方というものだろう。


You Can't Win.jpg Dolorean 『You Can't Win』

もともと僕がこのバンドの名前を知ることになったのは、ニック・ロウやビリー・ブラッグのアルバムを買ったことで定期的に送られてくるようになったイェップ・ロック・レコード(Yep Roc Records)のメルマガを通じてのこと。半年ほど前にこの最新作『You Can't Win』が発売されたときに、アルバム全曲無料ストリーミングという大胆なプロモーションをしていたのがきっかけだった。

だけど、僕はそのときはこのアルバムは買わず、まず先の2枚をあちこちの中古レコ屋で格安で手に入れた。そこで大いにこのバンドのことを気に入って、この最新作のアナログ盤をオーダーしたというわけだ。アナログ盤を買った理由はもちろん、去年7月8日の記事「LPと算数」に書いたニック・ロウのアルバム同様、購入時にMP3音源がダウンロードできたから。LP自体は180グラムの重量盤だし。

最近このLP+MP3無料ダウンロードという方式が増えてきて喜ばしい限りなんだけど、このイェップ・ロック方式は、よくあるジャケットにクーポンが封入されているタイプでなく、ネット上で支払いを済ませた瞬間に即ダウンロードできるというのが優れてるね。まあ、レーベルのサイトから直接買わないといけないというのが、難点といえば難点だけど。そういえば、近々発売されるエルヴィス・コステロの新譜は、なんとLP(+MP3ダウンロード)とMP3のみという形態になるようだね。CDでの発売はないんだって。僕はそれでも全然かまわないんだけど、いよいよ音楽CDというフォーマットも末期という感じだね。

話がずれてしまった。せっかく今日は記事を短くまとめようとしてるってのに。さて、3年ぶりとなるこのサードアルバム、ファースト⇒セカンドへの成長ぶりとは全く違ったベクトルの向きへ方向転換した観がある。

冒頭のアルバムタイトルトラック「You Can't Win」から、音響系のようなぼわーっとした音に、曲名のリフレインが延々と続く奇妙な曲。2曲目「We Winter Wrens」で、前作までのあのしっとりとしたドロリーン節が帰ってくるんだけど、なんとなくそこの繋ぎがちょっと唐突でいまいちしっくりこない感じがしてしまう。

LPでのA面ラスト「You Don't Want To Know」もまたボーカルにリヴァーヴが効きまくった音響系風。LPだとこの2曲がオープニングとエンディングで対になっているというのがわかるけど、これCDで続けて聴くと非常にわかりにくい構成だろうな(と、普段はネットワークウォークマンに入れたMP3音源で聴いている僕が証言)。

彼らのマイスペースに載っている、アルによるアルバム解説によると、ファースト⇒セカンドと成長したところからの予定調和的なアルバムを作りたくなかった故のこの変化だとのこと。それはわかるけれど、でもマイスペースにアップしている4曲(このアルバムのA2、A3、A4、B3)がいずれも正統派ドロリーン風なのをみると、やっぱり曲として自信があるのはその手の曲なんだなと思う。

うーん、どうもけなしてるようにしか読めないかな。では、まずはさっきのマイスペースで「We Winter Wrens」あたりから聴いてみてほしい。決してこのアルバムが駄曲の詰まった失敗作でないというのがわかるから。デビュー時から変わらぬ枯れた味わいの、でもずっと成長した姿がここにある。

ネガティブな意味合いのアルバムタイトルは、このアルバムを制作しはじめた頃のアルの何をやってもうまくいかないという心情を反映していたそうだけど、このアルバムを完成させてリリースにこぎつけた頃には、その同じ言葉がむしろ前向きな意味を帯びてきたという。どうせ勝てないんだから、気負わなくていいよ、って。

そういう考え方って、たまには必要だと思う。何をやってもうまくいかないときにはね。
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2008年03月20日

三部作完結編 - Twinklehead

Twinklehead..jpg Twinklehead 『Twinklehead』

北欧三部作(さっき決めた)の最後を締めくくるのは、ノルウェーの3人組、トゥインクルヘッド。3人組とはいっても、本作のプロデューサーも兼任するヘンリク・モイ・アスキルドセン(Henrik Moy Askildsen)と、本作のエグゼクティヴ・プロデューサーも兼任するトマス・へランド(Thomas Helland)の二人がギターとキーボード類、もう一人がベースという妙な組み合わせ。社長と専務と平社員みたいなものだろうか。

加えて、セッション・ミュージシャンとして9人もの名前がクレジットされている。中でもトップに載っているこれまたキーボード類担当のヴィダール・エルスフォード(Vidar Ersfjord)は、正式メンバーであるベーシストを差し置いて本作の共同プロデューサーとしてもクレジットされている。平社員よりもよっぽど出来のいい派遣社員、といったところか。


爽やかな鳥のさえずりでアルバムは幕を開け、そこにピンク・フロイド「Echoes」のオープニングでおなじみのあのソナーのような音が被さってくる。オリジナルのあの音はピアノのアウトプットをハモンドオルガン用のレズリースピーカーにつないだときに偶然出た音で、その後いくら再現しようとしても同じ音が出なかったという逸話が残っているんだけど、これはもしかするとそのレコードからサンプリングしたものかな。

ピンク・フロイドの名前を出したけれど、この人たちの書くとてもメランコリックなメロディー(ほとんどの曲はヘンリク作)は、僕に初期ピンク・フロイドの曲を思い起こさせる。初期ピンク・フロイドといっても、必ずしもシド・バレットの曲というわけでなく、例えばリック・ライトの手になる「Paintbox」とか、ロジャー・ウォーターズの「Julia Dream」とか。あるいは、『Ram』の頃のポール・マカートニーや初期ビー・ジーズの音に近いといってもいいだろうか。そういう、60年代末期〜70年代初期の匂いがプンプンするメロディーライン。

それが、前述したとおり、ピアノやハモンドなど数々のキーボード類を中心とした音に乗せられて、いかにも北欧ポップらしいジェントルな声で歌われる。隠し味的に使われているメロトロンの音もプログレちっくだし、クレジットに「エレクトリック・ギター」と書かずにあえて「テレキャスター」とこだわった、テレキャス特有のちょっとギスギスした音にも味がある。

彼らのマイスペースに行ってみると、「影響を受けた音楽」として、すごい数のアーティストの名前が挙げられている。曰く、ELO、ピンク・フロイド、ジェネシス、スーパートランプ、イエス、ブラー、ジェイソン・フォークナー、シド・バレット、エール、ビー・ジーズ、ニック・ナイスリー、ジョージ・ハリスン、ビートルズ、キンクス、ビーチ・ボーイズ、アイドル・レース、XTC、ケイト・ブッシュ、ラッシュ(Lの方)、ムーディー・ブルーズ、ペット・ショップ・ボーイズ、ライド、Tレックス、ジェフ・リン...。ああ、わかるわかる。キーワードは60年代〜70年代前半プログレ & 80年代後半〜90年代王道ポップスといったところか。それにしても、ピンク・フロイドとペット・ショップ・ボーイズが両方好きという人たちがここにもいたかと思うと、嬉しくなるね。

アルバムのほとんどがミディアム・テンポのゆったりした曲の中、4曲目「Get It On」(Tレックスに非ず)だけはちょっとアップ・テンポの、いかにも60年代ポップスといった風情のいかした曲。この曲のPVはマイスペースで観られるけど、メンバーの子供の幼稚園での光景を撮っただけなんじゃないのか?というおとぼけぶり。

9曲目「Above The Sky」の途中で、古いテレビから流れているような映画の台詞が入ってくるところもいい。何の映画かはわからないけど。こういうところも『The Wall』〜『The Final Cut』あたりのピンク・フロイド風?

続く10曲目「Forensic Detectives」が、わずか37分のアルバムの幕引き。ピアノの弾き語りで始まり、ベースに導かれて流麗なストリングスがかぶさり、やがてアコースティック・ギターとドラムスも入って徐々に音数が増えていき、コーラスも交えて最高潮に盛り上がったところで、ふと音が途絶える。最後に残るのは悲しげなピアノの音と、鳥のさえずり。ここでまたアルバム冒頭に戻る、というわけだ(こういうところも『The Wall』風?しつこいけど)。


アマゾンなどのネットショップでも、都内の大手CDショップでも見かけたことのないこのCDを僕が入手したのは、友達に教えてもらった、渋谷にあるApple Crumble Recordという小さなレコ屋。ギターポップ、北欧ポップなどのレアなCDやレコードが沢山置いてある、僕みたいな人間にとっては宝箱みたいな素敵なお店だ。


ところで、ふと気づいたんだけど、最近ルナさんがスピッツ話でコメント欄をシマシマにしているシャーウッドのこのアルバム
A Different Light.jpg

と、今回のこのアルバム
Twinklehead..jpg

なんだか似てない?
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2008年03月14日

さらに北へ - Amiina

Kurr..jpg Amiina 『Kurr』

木漏れ日の中をたくさんの妖精が飛び交っている場面。
どこか他の惑星かと思うような、見渡す限りの一枚岩の光景。
一度も来たことはないのに、確かに自分が居た気がする異国の町。

ほんの今まで見ていたはずなのに、目を覚ました瞬間、もうその内容のかけらさえも思い出せない、でもとても気持ちよかった夢の中でかかっていた音楽はいつもこれだったような錯覚に陥る。

こんなにシンプルなのに、これほどまでに視覚に訴えてくる音楽もそう多くはないだろう。そう、確かに耳から聴いているんだけど、音楽を聴いているというよりは、いろいろな(しかもこの上なく抽象的な)光景が目の前に浮かんでくるような感触が心地好い。

アイスランドの音楽学校の同級生だったという、ジャケットに写った4人のメンバーが奏でるヴァイオリン、チェロ、ヴィオラを主に、トランペット、トロンボーン、マンドリン、アコースティック・ギター、木琴、グロッケンシュピール、チャイム、オルガンなどの楽器と、オルゴール、ワイングラス、ノコギリなど身の回りのありとあらゆるものを加え、ほんの少しの電子音を足して出来上がった音。ところどころに、ささやくようなコーラスとハミングが入っている。

暖かくもあり、同時に冷たくもある音。一日の終わりに聴いていると、心臓の周りに絡まった硬い糸のようなものがゆっくりと少しずつ解きほぐされていくのが実感できる。

もちろんそういう所謂ヒーリング音楽としてこれを聴くことは間違ってはいないだろうけど、今のところ僕が実感した一番楽しいアミーナの聴き方は、携帯音楽プレイヤーに入れて、一応遮音性のあるきちんとしたヘッドフォンを着け、轟音で聴きながら歩いてみることだ。どんな雑踏にいようと、たとえ満員電車の中だろうと、確実に自分の周りの景色が変わるよ。

シガー・ロスのアルバムに弦楽四重奏者として参加しただとか、この質感はかつてペンギン・カフェ・オーケストラが持っていたものと非常によく似ているだとか、音楽的に御託を並べることはいくらでもできるけど、今回はそういうのをゴチャゴチャ書くのは野暮というものだろう。こんな音楽を作る人たちがいるアイスランドという国を一度は訪れてみたいと思ってしまう、それだけ。
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2008年02月17日

北欧三昧 - Dylan Mondegreen / Moi Caprice / Ronderlin

2007年9月 お気に入りリンクに入れてある、アコースティック系/パワポ系の音楽を探すときにいつも頼りにさせてもらっているとあるブログで、ちょっと気になるノルウェイのSSWを発見。

2007年10月 日本出張時に、「北欧 POP MAP スウェーデン編」、「北欧 POP MAP アイスランド、ノルウェイ、デンマーク、フィンランド編」という本を購入。自分内で北欧ブームが再燃。

2007年12月 そのノルウェイのSSWのアルバムを購入するために訪れたカナダの某北欧物専門ショップサイトに載っていた全曲を試聴(楽しかった)。そのうち気に入った6枚を購入。

2008年1月 CD到着。通して聴いたところどれもよかったので早速ブログの記事にしようと思ったが、多忙のため脳内で記事にしただけでお蔵入りに。6枚のCD自体はそれ以来繰り返し聴いている。

2008年2月 度重なる出張と残業で1月より更に忙しくなり、週末も家で仕事をする羽目に。締切前にんじんさん状態に陥った挙句、現実逃避でお蔵入り記事を復活させることに。

という、歴史年表並みの経緯を経ての今日の記事、果たして現実回帰猶予期間内に完成するだろうか。紹介するCDは6枚もあるのに。ざっと手短に書いていくことにしよう(「どうせ手短じゃないくせに」と思った人はここをクリック)。


While I Walk You Home.jpg Dylan Mondegreen 『While I Walk You Home』

まずは、最初に書いたノルウェーのSSW、ディラン・モンドグリーン。これは、Borge Sildnes(読み方はボーエ・シルドネスでいいのかな?)という人のソロ・プロジェクトで、このアルバムではストリング・セクションも含めて総勢十数名のメンバーが演奏している。しかしこれって、一人なのにバンド名みたいな名前をつけたバッドリー・ドローン・ボーイのパターンでもなく、自分の本名をそのままバンド名にしたタマス・ウェルズのパターンでもなく、人の名前みたいな芸名をつけた本人兼バンド名というややこしくも新しいパターン?

奇をてらわない、爽やかなアコースティック・サウンド。ギターのキラキラしたアルペジオと涼しげなコーラス。王道ポップスの流れを汲むきらびやかなストリングス。このちょっと甘酸っぱいジャケットのイメージそのままの、本当に素敵な音。

冒頭の「Wishing Well」、彼のマイスペースでPVが観られるアルバム2曲目「Girl In Grass」と続くオープニングから引き込まれる。6曲目の「That Mortal Kiss」は、ジョニー・マー風の流麗なアルペジオと曲の展開がスミスの名曲「Still Ill」を髣髴とさせる。

全10曲、裏ジャケの表記では最初の5曲と後半の5曲の間にスペースがあるんだけど、もしかしたらこのアルバム、アナログ盤が存在するんだろうか。僕が買ったカナダのサイトにもノルウェーのレコ屋のサイトにもCDしか載ってないようだけど、もしあるならこれはLPで持っていたくなるジャケと音だなあ。


では次。

Daisies.jpg Summerfool.jpg Artboy Meets Artgirl.jpg
Moi Caprice 「Daisies & Beatrice」 
Moi Caprice 「Summerfool」
Moi Caprice 「Artboy Meets Artgirl」

デンマークの4人組、モア・カプリスの、02年発表の初期シングル3種。ショップのサイトでは03年のデビューアルバムから06年のサードアルバムまで扱っていたんだけど(しかもそのうち2枚は重量盤アナログもあり)、なんとなくすぐになくなってしまいそうなこのシングルのセットを先に買ってみた。聴いてみて気に入ったらアナログも買おうと思って。

この3枚がどういうスパンで発表されたのかは知らないけれど、上のジャケ写を見てもわかるように、なんとなく連作のような感じ。ちなみに、ジャケに写っている女の子が、このジャケを含めたCD全体のデザインと、それぞれの盤に収められたPVを作ったようだ(全てのPVに出演もしている)。

「Daisies & Beatrice」に4曲(うち一つは同じ曲の短縮版)、「Summerfool」に4曲(うち一つは同じ曲のスロー・バージョン)、「Artboy Meets Artgirl」に3曲と、全部通して聴いたらアルバム1枚分ぐらいにはなる適度な量。中には、ライヴ録音でブルース・スプリングスティーンの「Born To Run」の微笑ましくなるようなバージョンも入っている。

音的にはどう形容したらいいんだろうな。典型的な北欧ポップの、でもあんまりジャカジャカと賑やかな感じじゃない、しっとりした雰囲気。でもちょっと元気な曲では「おお、がんばってるね」なんて応援したくなってしまうような。

先述の通り、それぞれのタイトルトラックのPVが収録されているんだけど、全部同じ監督(ニーナ・ベイアー Nina Beier)の作だけあって、統一されたイメージがある。いかにも北欧らしい透き通った空気感の風景や、ほとんど真っ暗な夜の風景などを、どれもコマ撮りで見せているものだから、素人っぽい作りとはいえ、なかなか味があっていいよ。メンバーの両手両足を縛ったりとか、監督自ら頭と頭でくっついたシャム双生児役をやったりとか、パンツを下ろしてトイレに座っているところとか、無邪気な振りしてどれもちょっとマニアックでフリーキーな味付けがされているところもまた奇妙で面白い。

結構気に入ったから、やっぱりアナログ盤のアルバムも買おうかな。MP3音源がダウンロードできればいいんだけど。


最後はこれ。

Wave Another Day Goodbye.jpg The Great Investigation.jpg
Ronderlin 『Wave Another Day Goodbye』
Ronderlin 『The Great Investigation』

こちらは北欧ポップの聖地、スウェーデンのバンド。ロンダーリンと読むのかな。左側のトンボの死骸ジャケが02年のデビューアルバム。これは今回取り上げた中でも唯一アマゾンでもHMVでも取り扱われている。右側の花火っぽいジャケが昨年発売のセカンド。

ファーストのブックレットには6人のメンバー名が載っているが、セカンドではそのうちべーシストがいなくなり、二人いたギタリストのうち一人がベースとスライドギターを担当するようになっている(ちなみに、ベースとスライドギターって、両方とも僕がもしバンドを組むなら一番やりたい楽器。こいつ僕と気が合うかも)。

まずトンボジャケから聴いてみたんだけど、これがまた、愁いを帯びたメロディーを80年代中期〜90年代初期のUKインディーズっぽい音で鳴らすという、相当僕の心のツボを突いた音。2曲目「Reflected」なんて、初期のベル&セバスチャンみたいなメロディー展開。11曲目「Black Eyebrows」でのオルガンの音もたまらん。

かなり期待しながら、5年のブランクを置いて発表された(僕は両方一度に知ったからいいけど、新人バンドが5年も新作発表しなかったら普通は解散したと思われてただろうね)花火ジャケの方へと移る。

いきなり、ペット・ショップ・ボーイズかと思うようなチャカチャカしたシンセのイントロが聴こえてきて、かなり期待を裏切られる(でも、言っとくけど、これはけなしてるわけじゃないよ。PSBはこのブログの最初の一年で最もよく取り上げられたアーティスト第二位だからね)。

ファーストの雰囲気を期待しないで聴けば、今回はニュー・オーダーばりの哀愁メロディの曲が続けざまに出てきて、これはこれでいいかも。初期のティアーズ・フォー・フィアーズかと思うような曲もあるし、ピアノとストリングスだけでしっとり聴かせる「Hands And Feet」なんてちょっとしみじみするし。

これだけ派手な音作りの方が素朴なファーストよりも飽きずに聴けば聴くほど味わい深くなるってのも妙な話だけど、最初に「あれっ?」と思ってしまった分だけ、このセカンドは僕にとってスルメ級に長く楽しめるアルバムになった。もともとPSBもニュー・オーダーもTFFも大好きなグループばかりだからね。

あえてひとつ難点を挙げるとすれば、最後の曲「The Sound Of The Ice When It Cracks」のイントロのメロディーが「屋根よーりーたーかーい♪」と聞こえてしまうことか。日本人ならではの空耳メロディー。いい曲なのに。


というわけで、年末からこっち、ずっと北欧ポップスにはまっている。今回取り上げたような、普通のCD屋やメジャーなネットショップに売ってないものは取り寄せが面倒だったり単価が高かったりもするんだけど、そこのところはブックオフの250円コーナーでクラウドベリー・ジャムとかポゴ・ポップスとかを買ってうまくバランスを取るようにしている。
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2008年01月05日

挫折の多い司令官 - Joe Strummer

「ジョー、今から君の名前をスクリーンに出す。どう呼んで欲しい?」
インタビュアーが尋ねる。

「パンク・ロックの司令官。そう書いてくれ」
長い音楽的ブランクを終え、新しいバックバンド、メスカレロスとの再出発を直前に迎えた1995年のジョー・ストラマーがそう答える。

このアルバムは、その短いやりとりで幕を開ける。そして、クラッシュの代表曲「White Riot」のヴォーカル・テイクだけの未発表ヴァージョンが続く。

The Future Is Unwritten.jpg Joe Strummer 「The Future Is Unwritten」

ジョー・ストラマーの生涯を、彼と同い年だというジュリアン・テンプルが撮った伝記映画のサントラ盤。ジョーが自分が影響を受けた音楽を次々に紹介するという形を取っていて、まるで彼がDJを務める音楽番組を聴いているよう。実際、彼は99年から3年間−彼が心臓発作で突然亡くなってしまうまで、BBC国際放送の音楽番組でDJを務めていたから、さしずめこのCDはそのダイジェスト版といったところか。

エルヴィス・プレスリーの「Crawfish」という、58年にプレスリーが入隊前最後に撮った白黒映画「闇に響く声(King Creole)」の挿入曲なんていう非常にオブスキュアな(でも、ニューオーリンズ風味満載のとてもいかした)曲に続けて、ティム・ハーディンの「Black Sheep Boy」を紹介。今は(僕が、オカヴィル・リヴァーがカバーしたその曲の原曲を聴きたくて入手したロシア盤以外は)どうやら世界中で廃盤の『Tim Hardin 2』からの彼の代表曲だ。

70年代パンク・バンドの代表格であるクラッシュのフロントマンとしてのジョー・ストラマーしか知らなければ、この辺りの選曲は意外かもしれない。音楽的にクラッシュが影響を受けたと誰もが納得するのは、次に出てくるMC5の「Kick Out The Jams」だろう。その曲に続けて、ジョーがクラッシュ参加前に組んでいた101'ers(ワンオーワナーズ)の「Keys To Your Heart」〜クラッシュの初期代表曲「I'm So Bored With U.S.A.」の未発表デモが並ぶところが、彼の伝記映画のサントラとして一番わかりやすいところだろう。

「パンク・バンドの代表格」なんて書いたけれど、実際には80年代に入る頃、アルバムで言えば『London Calling』の頃から、クラッシュはレゲエを始めとした多彩な音楽を自分達の曲に取り込み始める(正確に言うと、ファースト・アルバムにも1曲レゲエが入っていたんだけど)。一般的には音楽性が開花した『London Calling』が彼らの代表作と言われることになるが、頭の固い所謂“パンクス”からは、「あんなのはクラッシュじゃない」「パンクじゃない」と言われ始める。

冒頭に書いたように、95年の時点でも彼が自分を「パンク・ロックの司令官」だなんて捉えていたんだとすると、80年にわずか3枚目のアルバムが自分達のファン達からそうして否定されたことは、きっと彼にとっては大きなショックだったことだろう。それを受けての彼の名言「パンクはスタイルじゃない。姿勢のことだ」というのを、彼は生涯をかけて証明していくことになる。

このCDでいうと、11曲目、U-ロイがボブ・マーリー&ウェイラーズの「Soul Rebel」を下敷きにした「Natty Rebel」が出てくる辺りからが、ジョーのワールド・ミュージック志向が窺える。コロンビア音楽(クンビア)のアンドレス・ランデロの「Martha Cecilia」や、ジャマイカのギタリスト、アーネスト・ラングリンがセネガルのバーバ・マールをヴォーカルに迎えた「Minuet」(これすごく気持ちいい)などを聴くと、クラッシュ解散後のジョーの音楽の変遷の源がよくわかる。

音楽を聴くにあたって、その音楽が作られた背景だとかミュージシャンの人柄だとかは、本来関係のないことだと思う。どんなに嫌な奴が演奏していようと、いい音楽が聴ければ問題ないわけだし。でも、このジョー・ストラマーという人に関しては、彼の人柄、態度、発言なんかが常に付きまとっていた。訪ねてきたファンを泊めてやったとか、ライヴ終了後もサインを求める最後のファンが帰るまで何時間でも付き合っていたとか。そういう浪花節的なエピソード。そして、さっきの「パンクとは姿勢だ」とか、きりっとした名台詞が決まる人だった。そういう意味で、このCDの後半にウディ・ガスリーやボブ・ディランなどの詩人(あえてこう呼ぶ)が出てくることにも抵抗感はない。

パンク・ロックの先駆者、ワールド・ミュージックの導師といった一見輝かしい見かけに反して、挫折の多い人でもあった。クラッシュ後期のゴタゴタ(と、それに伴って最後のアルバム『Cut The Crap』を最後までなかったことにしようとしていたこと)や、クラッシュ解散後のソロアルバムやサントラがことごとく酷評されたこと。アルバム『Combat Rock』の頃に彼は一時失踪したこともあった。

最近出た彼の伝記「リデンプション・ソング ジョー・ストラマーの生涯」の帯にある言葉もこうだ。

──これまでの君のやった最悪の判断は?
「まず、トッパー・ヒードンをクビにしたこと。それからミック・ジョーンズをクビにしたことだ」

クラッシュ後期のゴタゴタに関してファンが一番もやもやしていたところを、こうして自分のミスとしてさらけ出す。そういう、挫折の多いところ、人間として弱い部分も含めて、彼のファンをやめられないという人も多いだろう。僕もその一人だ。昨日見かけたこの本、ちょっとした辞書よりも分厚いハードカバーで、しかも細かい文字でびっしり二段組。読まないといけない本がまだ沢山あるので躊躇して買ってこなかったけど、やっぱり読みたいな。そのうち買おう。

Redemption.jpg 「リデンプション・ソング ジョー・ストラマーの生涯」

「ストラマーのポスターが壁から落ちて、もうそこには何も残っていない」と歌うことで青春期からの決別を簡潔に表したアズテック・キャメラの「Walk Out To Winter」は名曲だけど、そして、僕ももうポスターを自分の部屋の壁に貼るような歳ではなくなってしまったけれど、僕の心の中の音楽の壁には、今でもジョーの写真が飾ってあるよ。ジョーの死後、沢山の伝記映画が作られたけど、このサントラを聴く限りでは、この映画は僕みたいなファンのために作られたもののような気がする。

肝心の映画は、日本では去年の秋に単館公開が始まっていて、ほとんどの地方ではもうとっくに終わっていた。でも、調べてみたら、僕の家からさほど遠くない映画館で、2月にまたレイトショーがあるみたい。レイトショーなんて久しく足を運んでないけど、これは観に行くことにしよう。
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2007年12月08日

パンク・ファンク・エイティーズ - The Pop Group / ばちかぶり

新しい生活のペースがなかなかつかめない。このまま慌しく過ごしてると次の記事を書くのが来年になりかねない雰囲気になってきたので、手短に一つ書いてみよう。

今滞在しているホテルの近所には、日本有数の大型輸入盤店・中古盤屋がひしめいている。どこも結構夜遅くまでやってるから、ちょっと早めに晩飯を終えた日なんかに軽く足を伸ばせるのが便利。

そんなこんなでこっちに来てから買ったCDがもう14枚になってしまっているんだけど(CDプレーヤーがないから、そのほとんどがまだ未聴なんだけど)、そんな中からちょっとした共通点のあるこの2枚を。

Idealists In Distress From Bristol.jpg The Pop Group 「Idealists In Distress From Bristol」

最近の自分の80年代ニュー・ウェーヴ趣味を反映してそういう発掘モードになっていたのか、今年になって発売されたこのポップ・グループのライヴ盤を中古で発見。そのうち買おうと思いながら、出張で東京に来ていた頃にはどこのCD屋でも見かけず、ましてやこんなのが中古で出回るなんてことがあるなんて思っていなかったから、これはちょっと嬉しい収穫。

もともと彼らの3枚のオリジナル・アルバムは昔から権利関係やらなんやらでなかなか再発されなくて、音質の悪いライヴ録音の海賊盤が数種類出まわっていた。僕も1枚持ってるけど、そのほとんどが日本で作られたものらしいね。

で、そういう海賊盤を封じ込めるために、それらの海賊盤を基にして、ちょっと音質を改善して、オフィシャルに発売されたのがこれ。ファースト・アルバム『Y』用に用意されていながら、過激すぎるとの理由で発禁になったジャケ(表裏とも)を使い、ブックレットには当時のライヴのチラシやインタビューも満載した、かなり嬉しい仕様。ただ、ライナーはちょっと読みにくいけどね。

改善されたとはいえ、音質は海賊盤並み。演奏は、持ち前のタテノリファンクにマーク・スチュアートの絶叫というスタイルから、かなりフリーフォームでぐちゃぐちゃな感じ(&マーク・スチュアートの絶叫)まで、聴いていて高揚する箇所とそうでない箇所があるのも事実。

実際にこのライヴの場に居たらきっと全然違った印象を受けるんだろうけど、ちょっとこの平板な音では2枚組全部を一気に聴き通すのはきついかな。何箇所かのライヴをまとめてあるから、同じ曲が何度も出てくるし(ただ、それが「Forces Of Oppression」とかのかっこいい曲でもあるから許せるんだけどね)。

3枚目のオリジナル・アルバム『We Are Time』を聴いたときにも感じたんだけど、こういう録音を聴くと、彼らの2枚のオリジナル・スタジオ盤『Y』と『For How Much Longer Do We Torelate Mass Murder?』が、いかに彼らの混沌とした魅力を損なうことなく見事に聴きやすくプロデュースされていたかということを思い知らされる。もちろん、どちらも「聴きやすい」なんて類の音楽じゃないんだけど。

ポップ・グループの最初の2枚を持っていて、もっと聴きたいというマニア向けのアルバム。でもこういうのって知らない間に即廃盤になるから、欲しいならお早めに。これからポップ・グループって人はやっぱりこの2枚から。セカンドは今はちょっと入手困難だけど。

Y.jpg The Pop Group 「Y」
For How Much Longer Do We Torelate Mass Murder? The Pop Group 「For How Much Longer」

ブックレットに載ってる当時のライヴ告知チラシの一枚には、ポップ・グループがメイン・アクトで、前座がスクリッティ・ポリッティとDAFなんていうのがある。時期的にはきっと80年頃かな。当時の僕が観てたら(いや、今だって)気絶しそうな面子。



もう一枚。

ばちかぶり.jpg ばちかぶり 「ナゴムコレクション」

時代は少し進んで86年。僕がナゴムギャルだった頃(ウソ)、ばちかぶりのソノシート付きシングル盤『一流』を買って、大層気に入って聴いていた。実は、大阪エッグプラントで彼らのライヴを観たこともある。客が10人もいなくて全く盛り上がらず、トモロヲさん達には気の毒だったけど。

例によって僕の持っていたシングル盤は全て紛失してしまったので、たまに聴きたくなるこの当時のナゴムレコードのシングル盤(ケラとか)はそのうちまた入手しようと思っていた矢先、このナゴム時代の楽曲を全部収録した2枚組を見つけた。これも中古で。日本の中古盤屋は凄いね。

『一流』の一曲目だった「Only You(唯一人)」、やっぱりかっこいいねー。他の曲と通して聴くとこの曲だけかなり異色なことがわかるけど、これだけは(ちょっとSEとかのギミックの入った)ストレートなパンク。

他の曲は、やはりタテノリのパンクを基調としたファンク。後半に行くに従ってどんどん演奏が上手くなり、随分と真っ当なファンクになっていくのが僕にはちょっとつまらないけど。

そういえば、このCDにも入っているけど、彼らの曲に「あぶらだこ、ポップ・グループ、町田町蔵、マダム・エドワルダ、似ている似ている似ている似ている…」なんて歌詞もあった。うん、確かに似てるよ、ポップ・グループ。あの混沌としたライヴ録音とこのかちっとまとまったスタジオ盤を比べるのは不公平だけどね。

あ、こんなこと書いてたらあぶらだこもINUもCDで買いなおしたくなってきた。実はこないだ一緒に見つけたんだよな。若い頃に聴いてたから贔屓目もあるのかもしれないけど、80年代NWでも、こういうちょっとファンクがかったパンクって、超かっこよかったよね。20年ぶりにまたはまってしまいそう。


なにが「手短に」なんだろうね。もう夜中の2時を過ぎてしまったよ。明日もいろいろ忙しいからもういいかげんに寝よう。じゃあ最後に、なくなってしまった『一流』のジャケでも載せて。

一流.bmp ばちかぶり 「一流」
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2007年11月10日

80年代英国NW再発二種 - Public Image Ltd. / Prefab Sprout

◇去年から今年にかけて再発されている、80年代イギリスのいわゆる広義のニュー・ウェーヴと呼ばれたアルバムを二枚取り上げよう。「二枚」とはいえ、盤の枚数を数えると合わせて5枚になるんだけどね。

◇どちらもその時代のシーンを代表する超名盤。今さら僕が事細かに解説する必要もないようなものなんだけど。じゃあまずこれから。

Metal Box.jpg Public Image Ltd.「Metal Box」

◇セックス・ピストルズを解散したジョニー・ロットンが、ジョン・ライドンと改名して(というか、本名に戻して)、元クラッシュのキース・レヴィン、当時は無名のジャー・ウォブルと結成したパブリック・イメージ・リミテッドの2作目。

◇オリジナルの形態は、45回転の12インチ盤が3枚、円形の金属の缶に入っているというもの。なので、タイトルも『金属箱』。

◇缶入りというのは多分に奇をてらったところもあっただろうけど、45回転12インチ盤というのにはれっきとした理由があり(7月8日の記事「LPと算数」に書いたとおり)、この特異な音楽のダイナミズムを存分に味わえるようにとの配慮からだった。

◇さっき80年代と書いたけど、実はこのアルバムが発表されたのは1979年の11月。当然こんな形態で大量生産されるわけもなく、イギリス国内向けに5万枚、輸出用に1万枚がプレスされたのみ。

◇その後、翌年になって33回転12インチ盤(要は普通のLP)2枚組の形で『Second Edition』として発売されることになる。

Second Edition.jpg Public Image Ltd.「Second Edition」

◇当時、輸入盤屋で缶入りを見かけたこともあったはずだけれど、なにしろそれだけのレア物。とても中学生や高校生に手が出せる金額じゃなかった。僕は、81年の初頭になって、このキース・レヴィンの歪んだ顔のジャケが印象的な『Second Edition』の方を手に入れた。

◇ちなみに、それが僕の生涯で買った28枚目のLP。それまでウィングスとかイーグルスとかレッド・ゼッペリンとか、真っ当な中学生らしいLPばかり買っていたのに、81年の2月・3月に買ったこれとポップ・グループのセカンドとピンク・フロイドのファーストが、その後の僕の音楽観を大きく軌道修正することになる。けどそれを書くのが今回の趣旨ではないので。

◇話を戻そう。とにかく、当時のニュー・ウェーヴ少年にとっては、この丸い缶は憧れの的だったというわけだ。それが、27年の時を経て昨年再発された。今度は5000枚限定で。

◇今度は僕も大人だからね。大人買いしますよ。NZに輸入されたものは結構な値段だったけど(しかもNZのレコ屋らしく、新品なのに開封済み)、見かけたときに買っておかないと。

◇で、元々持っていた33回転2枚組と、今回手に入れた45回転3枚組を聴き比べてみた。元の33回転盤も決して悪くはなかったんだけど、やっぱり違うね。ベースの音が全然違う。

◇驚いたのが、曲順が違うこと。33回転2枚組の方はこう。

A1 Albatross
A2 Memories

B1 Swanlake
B2 Poptones
B3 Careering

C1 Socialist
C2 Graveyard
C3 The Suit

D1 Bad Baby
D2 No Birds
D3 Chant
D4 Radio 4


◇オリジナルの、45回転3枚組はこの曲順。

A1 Albatross

B1 Memories
B2 Swanlake

C1 Poptones
C2 Careering

D1 No Birds
D2 Graveyard

E1 The Suit
E2 Bad Baby

F1 Socialist
F2 Chant
F3 Radio 4


◇実際には「Socialist」と「No Birds」の場所が入れ替わってるだけなんだけど、それぞれの盤面の区切り箇所の違いで、例えば今までB面の頭だと思っていた「Swanlake」がB面の締めくくりになってたりするのがちょっとした違和感。

◇あと気づいたのが、レコードがほぼぴったりの大きさの缶に入ってるので、出し入れがしにくいこと。丸いマンホールの蓋が穴に落っこちないのと同じ原理で(かな?)、ちょっとでも斜めにするとひっかかって出てこない。かといって裏返しにすると3枚いっぺんに落ちてくる。それだけ苦労して出した盤をかけても、10分で裏返さないといけない。まあ、それだけマニアックなものを買ったということで、嬉しい悩みではあるんだけどね。

◇いかん、また普通の段落並みの量になってきたぞ。箇条書きなのに。

◇というわけで、内容には殆ど触れていないけど、27年経とうがまったく古ぼけることのない音。何年経っても“ニュー”・ウェーヴ。ちょっと変わった音楽がご趣味で、しかもやっぱりレコードで聴くのが好きという方にお勧め(ほとんど名指し状態)。

◇上にリンクを張ったけど、この缶入り再発盤、まだアマゾンジャパンに在庫あるんだね。6735円か。僕が買ったのよりも少し安いよ。少しでも気になる方、今のうちですよ。もしくは、今から27年後の2034年にまた再発されるかもしれないから、そのときにどうぞ。



◇次は、プリファブ・スプラウト85年の名盤『Steve McQueen』。今年になってリマスター&ボーナスディスクで再発されたものだ。

Steve McQueen.jpg Prefab Sprout「Steve McQueen」

◇冒頭いきなりニュー・ウェーヴという括りでまとめてしまったけど、さっきのアルバムとこれとでは、音楽性が180度違うと言ってもいいだろう。80年代前半にイギリスから出てきたグループは、とにかく一緒くたにニュー・ウェーヴと呼ばれていただけのこと。21世紀のアメリカの優良SSWが全員オルタナ・カントリーと呼ばれてるのと同じ。

◇80年代イギリスのアコースティック系ロックミュージックの名盤は何かと訊かれたら、多分誰もがアズテック・カメラの『High Land Hard Rain』と共にこのアルバムの名を挙げるだろう。

◇きっと、同じ質問を「70年代アメリカのアコースティック・ミュージック」と置き換えたら、誰もが『Harvest』と『Sweet Baby James』を挙げるのと同じように(反論がある方もいらっしゃるであろうことは承知しています。聞き流しておいてください)。

◇ユニヴァーサルのデラックス・エディションやソニーのレガシー・エディションのように、オリジナルアルバムのリマスター版+ボーナストラックで2枚組という形に近い形態での再発。

◇あれ?でもこれソニーだよね。レガシー・エディションとは銘打ってないな。代わりに、キッチンウェアレコード(プリファブ・スプラウトが属していたレーベル)25周年記念のロゴが入ってるけど。

◇2枚組で、一枚目はオリジナルアルバムのリマスター。手がけたのは、オリジナル版のプロデューサーでもあったトーマス・ドルビー(Thomas Dolby)。

◇二枚目は、さっき書いたデラックス・エディションやレガシー・エディションによくある当時のB面曲やリミックス集でなく、この企画のためにリーダーのパディ・マカルーン(Paddy McAloon)が新録した、オリジナルアルバムからの8曲分のアコースティック・ヴァージョン。

◇そしてこれが、またよくあるアコギ弾き語りのデモヴァージョンとかでなく、本人のヴォーカル、ギター、それ以外の弦楽器、ハーモニカなどを幾度も多重録音して作られた、手の込んだものになっている。

◇なんでも、オリジナル(こちらもトーマス・ドルビーお得意の多重録音を駆使したもの)よりもこのアコースティック・ヴァージョンを作る方がより時間がかかったとのこと。

◇これが、実にいい。もう何十回・何百回聴いたかわからないようなこれらの曲を、新しいアレンジで、今のパディの声で(まだ若々しいけど)聴かせてくれるんだから。これはもう、01年の『The Gunman And Other Stories』に続く6年ぶりのニューアルバムのようなものだ。

◇「Desire As」の、2分にも亘るギターの多重録音によるイントロ(まるでスティーヴ・ハウかマイク・オールドフィールドのような)には、本当に驚いた。オリジナルのアルバム内では別に好きでも嫌いでもない曲だったけど、この新録ヴァージョンの中では一番の拾い物かも。

◇オリジナル盤。さっきアコースティック系って書いたけど、実はアコースティック楽器の音なんてほとんど聞こえない。でも見事なプロデュースワークで、こんなに瑞々しい自然な音が溢れた音楽になっている。シンセの音ばっかりなのに、今まで全然そんな印象持ってなかったよ。

◇さっきの缶(または歪み顔)は決して万人に薦められるものじゃないけど、こっちは洋楽ポップスを普通に聞く人でこれを嫌いな人が果たしているんだろうかと思ってしまうようなアルバム。ライナーにも書いてあるね。エヴァーグリーン。まさにそう。


◇いつもfalsoさんが、ご自分が若かった頃に聴かれていた音楽ばかりを繰り返して聴いておられることを半ば自虐的に話しておられるけど、僕だってすぐこうして十代や二十代前半に聴いていた音楽に戻っていってしまうよ。

◇最近こうして80年代のアルバムが次々と形を変えて再発されているというのも、まさに僕のようなカモを捕まえるためなんだろうね。わかってても、こうして見事に全部に食いついてるわけだけど。

◇ところで、今日はこないだよりは幾分かは箇条書き風と言えるようになったかな。
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2007年11月07日

地味豪華チャリティ 「The Cake Sale」

The Cake Sale.jpg 『The Cake Sale』

◇ザ・ケイク・セール。元は06年にオックスファム(Oxfam)という、アジアやアフリカの貧国の民間貿易を支援する団体が作ったチャリティー・アルバム。オックスファム・アイルランドからの発売だった。先月アメリカのイェップ・ロック(Yep Roc)レコードからも発売され、より入手しやすくなった。

◇アイルランドのアーティストを中心に、地味ながらちょっと僕の(そしてこの界隈の一部の読者の方々の)興味を引く面子が参加している。

◇全体を通じて演奏を受け持っているのは、ベル・X1(Bell X1)というアイルランドの中堅インディー・バンドのメンバーと、何故かNZのクラウデッド・ハウスのべーシスト、ニック・シーモア(Nick Seymour)。

◇僕がまず興味を引かれて、且つこのアルバムで一番目立つ存在なのは、全9曲中3曲でリード・ヴォーカルを披露しているリサ・ハニガン(Lisa Hannigan)だろう。5月4日の記事「悲しい夜に」に名前が出てきた、ダミアン・ライス(Damien Rice)のアルバムでもヴォーカルを担当している女性だ。その3曲のうち1曲は、ダミアンの書き下ろし。残念ながら彼自身はこのアルバムには不参加だけど、これがまた実に彼らしい悲しげな曲。

◇冒頭のリサの歌に続く2曲目のリード・ヴォーカルを受け持っているのは、去年11月17日の記事「正統派アメリカンSSWの系譜」で取り上げたジョシュ・リター(Josh Ritter)。これは彼の書いた曲ではないけれど、彼らしい落ち着いたミディアム・テンポの曲に仕上がっている。

◇3曲目を歌っているのは、カーディガンズのニーナ・パーソン(Nina Persson)。カーディガンズのイメージとはかけ離れた、実にしっとりとした綺麗なバラッド。これは結構掘り出し物かも。それにしてもさっきから非アイルランド人が続いてるね。

◇4曲目は人気グループ、スノウ・パトロール(Snow Patrol)のゲイリー・ライトボディとリサ・ハニガンのデュエット。異色のアイルランド人コンビネーション。

◇5曲目の人はよく知らないのでパス。ごめん。6曲目のリード・ヴォーカルは、しばらく前に観に行ったボブ・ディランのコンサートで前座を務めていて、それが気に入ったのでCDを買ってしまったフレイムズ(The Frames)のグレン・ハンザード(Glen Hansard)。彼らもアイルランドのグループ。そのCDも気に入ってたんだけど、これもなかなかいい曲。

◇7曲目は、アイルランドのバンドなのにビーチ・ボーイズみたいな音楽を演ってると、最近出た『Teenager』というアルバムが話題になっているスリルズ(The Thrills)のコナー・ディージー(Conor Deasy)がヴォーカル担当。ああ、この曲も何かに似ている… ビーチ・ボーイズじゃないけど、何だったっけ。

◇先ほど書いた、ダミアン・ライス作=リサ・ハニガン唄の8曲目に続いて、アルバムの最後を6分以上に亘って締めくくっているのが、ディヴァイン・コメディ(Divine Comedy)ことニール・ハノン(Neil Hannon)。ちょっとデイヴィッド・ボウイの「Space Oddity」風のメロディーとシンセ(メロトロン?)がおごそかな曲。ディヴァイン・コメディって、その芸名ゆえか今までちょっと敬遠してたんだけど、これ聴いてちょっと興味を持ったよ。

◇以上、全9曲、わずか34分の短い作品。参加メンバーにも実際の収録曲にも派手なところはないけれど、ここに名前を挙げたようなアイルランドの中堅バンドやSSWが作るような、腰の据わったしっかりとしたアルバムになっている。

◇CDケースは三方見開きのデジパック。上のジャケット写真でわかるかもしれないけど、このプロジェクト名に掛けたケーキの写真が沢山使われている。アルバムクレジットはケーキのレシピのようになってるし。もちろんブックレットにはオックスファムが提唱するフェア・トレードのことが書いてある。デジパックにもブックレットにも結構厚手の紙が使われていて、チャリティ目的のアルバムならもうちょっと質素な作りでもよかったんじゃないの?なんて思うほど。

◇開封してみたら中に入っていたのが、ボーナストラックが無料ダウンロードできるクーポン。ボートラはアルバム最終曲「Aliens」の別バージョン。ワン・デイ・インターナショナル(One Day International)というバンド(?)のクレジットになってるけど、誰なのかよくわからない。一応そのクーポンには“限定”と書いてあるけど、どうなんだろう。全部に入ってそうな気もするけどな。

◇ところで、先のイェップ・ロックのサイトでこのアルバムを購入しようとすると、アルバム本体(+先述のボートラ)15.99ドルというチョイスの他に、35.99ドル、65.99ドル、90.99ドル、115.99ドルという選択肢があるのに気づく。何かとパッケージになってるのかと思いきや、それぞれ差額をオックスファムに寄付、ということらしい。

◇これってどうなんだろうね。趣旨に賛同しないではないけれど、ちょっとあんまり興味を引かれるやり方じゃないな。もっと何か、元手がほとんどかからないもの(でも普通じゃ手に入らないもの)がオマケで付いてくるっていうんなら、もっと僕のような限定モノ好きの気を引くと思うんだけど。例えば、35.99ドルでジャケットに参加メンバー誰か一人のサインがもらえるとか、65.99ドルでこのアルバム用のデモ音源がダウンロードできるとか、115.99ドルで購入者宛のメッセージを吹き込んだ曲のCD-Rが付いてくるとかね。もしダミアン・ライスが自分でデモ用に録音した8曲目「Needles」のCD-Rを、彼の直筆サイン入りでもらえるっていうなら、僕は90.99ドルまでなら考えたと思うよ。チャリティに参加して、いい気分にもなれるし(不純)。

◇最近忙しいのにブログに書きたいCDが大量に手に入ったので、手っ取り早く書こうと、苦肉の策として箇条書き風にしてみたんだけど、ちっとも短くなってないね。というか、全然箇条書きにもなってないね。せめて、少しは読みやすかっただろうか。
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2007年10月20日

11月を過ぎたら Jeb Loy Nichols 「Now Then」 & 「Days Are Mighty」

明日からちょっと長めの出張に出かけることになっていて、その間は、いただいたコメントへの返事ぐらいはできると思うけど、新しい記事を上げることができるかどうかはわからないので、今日のうちに駆け込みでもう一つ書いてしまおう。今日のお題は、2月25日の記事「真夏の午後と冬の夜に」で取り上げた、ジェブ・ロイ・ニコルズ。

まずは、05年にイギリスで発売されて、上記のyascdにもそこから3曲収録した『Now Then』が、新装ジャケ&ボートラ追加で翌年アメリカで発売されたのを、最近比較的安く手に入れることができたので、それについて。

Now Then U.S. Version.jpg Jeb Loy Nichols 『Now Then』

ボーナストラック2曲収録との触れ込みだけど、オリジナルのUK盤にも、裏ジャケットには記載されていないものの、そのうちの1曲は収録済み(yascdにも入れた「Sweet, Tough And Terrible」)なので、実質ボートラは1曲のみ。

「真夏の午後と冬の夜に」では、曲の出来があまりよくないなんてちょっとネガティブな書き方をしてしまったけれど、この人の他のCDに違わず、聴き込めば聴き込むほどそのよさがわかってくる類のアルバムだった。よって、そのコメントは却下。見る目がないね(笑)

プロデューサーは、ラムチョップ(Lambchop)準メンバー券プロデューサーのマーク・ネヴァース(Mark Nevers)。そのツテで、トニー・クロウ(Tony Crow)やポール・バーチ(Paul Burch)など、ラムチョップのメンバーが数名参加。ジェニファー・カー(Jennifer Carr)やウェイン・ニューネス(Wayne Nunes)、それにジェブの奥さんロレイン・モーリー(Loraine Morley)など、以前のアルバムからずっと参加しているメンバーもいるし、有名どころではダン・ペン(Dan Penn)がボーカルで、デニス・ボーヴェル(Dennil Bovell)がコーラスとミキシングで参加している。どういう訳かべーシストが3人もクレジットされている。

以前の記事でも、彼の音楽を表現するのに、レゲエ+カントリー+ソウルのごった煮みたいなものって言ったんだけど、このアルバムでは実際に、今書いたような“オルタナ”カントリー組とレゲエ組のミュージシャンを、トラディショナル・カントリーの聖地ナッシュヴィルに集結させている。

その結果、例えば1曲目「Sometimes Shooting Stars」の、奥行きがありながら、スカスカしているようなこもっているような不思議な音の空間作りは、さすが“プロデュースト・バイ・マーク・ネヴァース、ミクスト・バイ・デニス・ボーヴェル”印だなあと思う。

曲によってはストリングスが多用され(実際に弦楽器を使っているのでなく、ストリング・マシンを使用している)、ちょっとしたノーザン・ソウルっぽい雰囲気。また別の曲では、ホーン・セクションも参加(こちらは本物の楽器)。そういう曲は、Cafe Del MarとかHotel Costesとか、なんとかラウンジとかイビザなんとかってコンピ盤に収録されていてもおかしくないような、ちょっとお洒落な感じ。

ピアノとオルガンだけの伴奏で崇高に歌われる「Painted My Dream House Blue」や、ホーンの音が心地良い「Morning Love」が僕のお気に入り。ブックレットに交換書簡が載っていて、このアルバムのちょっとしたテーマになっていると思しき「Ever Feel Like Leaving」(ダン・ペンとのデュエット)もいいね。このアメリカ盤のみに収録の「Love Me Too」も、彼にしてはちょっと珍しく歌い上げる感じのバラッドでいい感じ。これは買い足してよかったよ。

双子さっき新装ジャケって書いたけど、実は上に載せたこの新しいデザイン(例によってジェブ自身の手による版画)は、この左側に載せたUKオリジナル盤の裏ジャケに使われていたもの。逆に、このUK盤の表ジャケの版画は、アメリカ盤では裏ジャケに使われている。僕はこのオリジナルの方が好きなんだけど、どうして変えたのかな。もしかして、ちょっとシャム双生児を連想させなくもないこのデザインに、どこかからクレームでもついたのかも。他にも、UK盤の方がちょっと厚手の紙を使ったブックレットで、版画の発色もいいんだけど、そんなのにこだわる人はいないだろうから、今から買うなら、上にリンクした安くて収録曲の多いアメリカ盤だろうね。さっき「買い足し」って書いたけど、もちろん「買い替え」の間違いじゃない。僕はジャケ違いのこのUK盤を売ってしまうようなことはしないよ。



Days Are Mighty.jpg Jeb Loy Nichols 『Days Are Mighty』

そして、今年になって発売されたのが、この『Days Are Mighty』。いろんな意味で前作と正反対の性格を持つアルバムだ。前作のようなプチ豪華なゲストは姿を消し、昔からの気心のしれた5人のメンバーだけで、彼の自宅のあるウェールズで録音されている。プロデュースもジェブ自身を含むバンドメンバーの4人。プロデューサーとしてはクレジットに含まれていないロレインはジャケットやブックレットの写真を多数撮っているので、音作りからビジュアル面まで、全てこの5人の手作りということになる。そういえば、ジャケットは94年のフェロウ・トラヴェラーズのライヴアルバム以来となる、ジェブのポートレイトだ(顔は見えないけど)。もちろんブックレットにはお馴染みのジェブの版画が使われているよ。

ホーンやストリングスを多用し、ゲストヴォーカリストも数名参加して、結構派手な音作りだった前作と比べると、とてもパーソナルな音になっている。必要最小限の楽器。奇をてらわないミックス。それだけに曲の良さが際立つ。

ブックレットに歌詞が載っていなくて、彼のサイトを含めてネット上のどこにも歌詞が探せないので、ちょっとこもった歌い方をする彼がなんて歌っているのか完全に聴き取るのはちょっと大変なんだけど、ウェールズの田舎で食物や燃料まで殆ど自給自足の生活をしているという今の彼の心情を綴ったような曲が多いようだ。

実は僕はこのアルバムが出たのをアマゾンUKで見た途端に注文してしまったんだけど、後で調べてみたら、限定の2枚組ヴァージョンというものがあることに気づいた。彼がアルバム作成前に自宅で26曲録音したデモヴァージョンのうち、10曲を収録したものだ。どちらもUK盤で結構値が張ったんだけど、しょうがないので買い替え。ジャケ違いの『Now Then』と違ってこちらは1枚ヴァージョンに特有のものはないから、最初に買った方は、知り合いのジェブ・ロイ応援団・東京支部長に売りつけることにした。

2枚目の10曲のうち8曲が本編の『Days Are Mighty』に収録されたもの。さっきも書いたように、この『Days Are Mighty』自体が最小限の楽器で簡素に録音されたアルバムだから、ジェブがアコースティック・ギターのみで録音したこのデモCDも、最終ヴァージョンとそんなに驚くほど違うという訳じゃない。でも、ずっと後ろに聞こえる鳥のさえずりが、彼の住むウェールズの田舎の様子を描き出す。別に録音しようと意図したわけではないであろうそんな鳥のさえずりが、思わぬ効果を生んでいるよ。

本編では、ウッドベースとヴィブラートのかかったギター、フェンダー・ローズとハーモニカの音がしみじみと心地良い「After November」が、今のところ一番好きな曲かな。

 11月を過ぎたら
 新しい年が扉をノックしはじめるよ


「真夏の午後と冬の夜に」の記事では、彼の音楽はじっとりと暑い真夏の昼下がりにも、凍てつくような冬の夜の暖炉際にも似合うと書いたんだけど、この曲のイメージのせいか、今回のアルバムは秋から冬にかけての季節がぴったりな気がする。日本ではちょうどこれからの季節だね。



先に触れた、『Now Then』のテーマと思しき「Ever Feel Like Leaving」に関する交換書簡の中で、ジェブは自分が生まれ故郷のワイオミングからミズーリ、テキサス、ニューヨーク、ロンドン、そして現在のウェールズへと住まいを移してきたことについて触れている。自分はずっと何かを後にしてきた、というわけだ。

そして僕も、11月を過ぎたら、新しい生活が扉をノックすることになったようだ。これまで世界のいろんな土地を後にしてきたが、いよいよこのオークランドをも後にして、日本に帰ることが決まった。15年ぶりの日本、一体どんな生活が待っているんだろう。
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2007年10月15日

58歳の力作 Bruce Springsteen 「Magic」

ブルース・スプリングスティーンの新作『Magic』について書くにあたって、もうすでにあちこちで語り尽くされているであろうこんなメジャーなアルバムだから、あっさりと感想だけを書くのもつまらないと思い、どういうふうな話の展開にしようかなとずっと考えていたんだけど、たとえば


the rising ltd edition.jpg devils & dust.jpg magic.jpg

初期のマネージャー兼プロデューサー、マイク・アペルと75年にゴタゴタを起こしてからは、一貫してジョン・ランドウと自分でプロデュースを続けてきた彼が、初めて外部の売れっ子プロデューサー、ブレンダン・オブライエンにプロデュースを任せた02年の『The Rising』から今作までのオリジナル・アルバム3作について、それ以前からの音作りの変遷について書くとか、あるいは


the essential bs.jpg weshallovercome.jpg born to run box.jpg
Hammersmith Odeon.jpg american land edition.jpg live in dublin.jpg

03年に(当時は「またか」と思わせつつ)発表された『The Essential』という3枚組ベスト・アルバムを皮切りに、彼自身のルーツ、そして、ピート・シーガーというアーティストの楽曲を通してアメリカ音楽のルーツを掘り下げてきた、もの凄く制作欲旺盛なこの5年間の彼の音楽活動を背景にした、この新作の意義みたいなことを書くとか。


でも、残念ながら、構想段階で力尽きてしまった。こんなの、一週間やそこらで構成を考えてちゃんとしたものを書くなんて到底無理というもの。アイデア自体は面白いと思うから、そのうち機会があれば書いてみたい話ではあるんだけどね。というわけで、今回はあっさりと『Magic』の感想だけを書くことにした。


magic.jpg Bruce Springsteen 『Magic』

オリジナル・アルバムとしては05年の『Devils & Dust』以来2年半ぶりだけど、この6月にダブリンでのライヴ・アルバムが出たばかりなので、それから数えるとわずか4ヶ月ぶりのニュー・アルバム。アメリカはビルボードでの初登場第一位を始めとして、カナダ、イギリス、アイルランド、ノルウェー、イタリア、スペインでチャートのトップを記録。いまやチャートというものにどれだけ権威があるのかよくわからないけど、それにしても、相変わらず人気は衰えていない。

アルバムからのリード・シングルは、9月30日の記事「オークランドCDショップガイド」のコメント欄(10月9日の僕のコメント)にPVのリンクを貼った「Radio Nowhere」。これがアルバム1曲目でもある。久々に彼の格好いい曲を聴いた気がする。このメロディーと曲展開、『The River』セッションで録音されたもののお蔵入りになり、ブートレグで散々話題になった挙句に88年のシングル「One Step Up」にカップリング収録された名曲「Roulette」を少しスローにした感じ。そりゃ格好いいはずだよ。

ただ、この曲は、僕が彼の作る最近の曲(特に今作)に共通して抱いている不満も併せ持っている。初期、特に最初の3枚のアルバムで、あれほど溢れ出るような言葉を詰め込んでいた歌詞が、最近ではすっかり影を潜めてしまい、やたらと同じ言葉のリフレインが多くなってしまっているのがとても物足りない。この曲でいうと、

 これはどこでもない局のラジオ
 誰かそっち側で生きてるのか?
 俺はちゃんとしたリズムを聴きたいよ


という歌詞が執拗なまでに繰り返される。歌詞にしても曲作りにしても、なんでもかんでも初期の曲と比べるべきじゃないのはよくわかってるんだけど、ことこういう曲に関しては、ストーリーテラーとしての彼の魅力はかなり乏しいね、残念ながら。

2曲目「You'll Be Comin' Down」は、サビのところでつい「I'm goin down to lucky town〜♪」と歌ってしまいそうになるほど、展開が92年の「Lucky Town」に似ている曲。そういやあれもアルバム2曲目だったな。

3曲目「Livin' In The Future」は、なんとなく『Born In The U.S.A.』に入っててもおかしくないような感じの曲。「Glory Days」っぽいのかな。

いかんね、どうも過去の○○に似ているって話ばかりをしてしまう。確かに、78年の『Darkness On The Edge Of Town』あたりで彼の作曲に定型みたいなものができてからは、どちらかというとワンパターンな曲作りをする人ではあるんだけどね。

4曲目「Your Own Worst Enemy」は僕には今回一番おもしろくない曲。このノべーッとした歌い方がどうも嫌。ごめんね、パス。

ちょっとかすれたハーモニカの音に導かれて始まる5曲目「Gypsy Rider」あたりからが好きかな。この曲の間奏と後奏では、久々にブルース自身が弾くテレキャスターの硬質な音のソロが聴けるし。

恐らくアナログではA面の最後にあたる、次の「Girls In Their Summer Clothes」は、またしてもノべーッとした歌い方のミディアム・テンポの曲なんだけど、これは許せる。というか、これ結構いい曲。ちょっとスペクター風というか、ブライアン・ウィルソン風というか。最近の彼のアルバムで僕が辟易している厚ぼったいシンセサイザーの音とコーラスも、ここではわりと有効に使われている。

続いて、多分LPのB面1曲目「I'll Work For Your Love」。ああ、もうこのイントロのピアノ、たまらないよ。ロイ・ビタンのピアノが好きだという話は5月11日の「ピアノ三昧」記事を始めとしてあちこちに書いてる気がするけど、この、曲全体を通じて彼のピアノが鳴り響き、要所でクラレンス・クレモンズのサックスが出てくるお決まりの展開が最高。ある意味今回のアルバムの僕にとってのベスト・トラック。曲自体はあんまり大したことないんだけどね(なんだそりゃ)。

8曲目がアルバムのタイトル曲「Magic」。なんてことないアコースティック曲かもしれないけど、これがこの位置に入っていることで、アルバムがぐっと引き締まっているよ。目立たないようにそっと添えられているスージー・タイレルのヴァイオリンもいい。

動⇒静ときて、次は刹那的な動の感じがこれまたたまらない「Last To Die」。ここまで結構、半分けなし気味に書いてきたかもしれないけど、これはいい曲だと思う。やっぱりこっちが僕のベスト・トラックかな。うーん、そのうちどっちかに決めるね。それにしても、アナログだとB面3曲目にあたる地味な位置にこんな曲を入れるなんて、彼のアルバムには今まであまりなかったパターンかも(またしても、極初期を除くよ。「Rosalita」なんて曲がB面の真ん中に収録されてたんだもんね)。

まだまだ続く。10曲目「Long Walk Home」は、きっとコンサートの終盤とかアンコールの最後で演ったら盛り上がるだろうなという感じの曲。しばらく前でいうと「Land Of Hope And Dreams」的な位置づけ。と思って、彼のサイトで公開されているコンサートの演奏曲目を見てみたら(現在進行中のツアーの曲目が、コンサート終了直後に彼の手書きのセットリストと一緒にあっという間にアップされている)、この曲はコンサート本編ラスト手前、「Badlands」の前に必ず演奏されているね。ああ、わかるわかる。なんで最後が「Badlands」なんだ、というのは置いといて(いや、好きな曲なんだけどね。でもトリを務められる柄じゃないでしょ)。

話が飛ぶね。裏ジャケに書いてある曲目表ではアルバムの締めくくり、「Devil's Arcade」は、ここ数年彼が自分の曲のテーマにしてきている、「本当の価値からはるか遠く離れたところをうろついている」自分の祖国アメリカについて歌った曲。そういえば、今回はこの手のテーマの曲が少ないね。

これはこれでアルバムをきりっと締めるいいクローザーなんだけど、実はこの後、13秒のブランクを置いて、隠しトラック「Terry's Song」が入っている。これは、このアルバムのブックレットの最後のページに載ってるように、去る7月に亡くなった、ブルースの長年の友人でありパートナーでもあったテリー・マゴヴァンに捧げた歌。心のこもった、しみじみとしたいい曲。

どうやら、この曲は最初は収録される予定じゃなかったらしく(テリーも死ぬ予定じゃなかっただろうからね)、最後の最後で追加収録されることになったから、このアルバムのごく最初のプレス分にはこの曲が収録されていないらしい。初回ミスプレスってなんだか希少価値で持ってると嬉しいもんだけど、後に出たやつよりも1曲少ないってのは微妙だね。実は僕も、出始めの頃に買ったニルヴァーナの『Nevermind』(きっと初回盤)に、その頃流行りだしたシークレット・トラックのはしりだった「Endless, Nameless」が入ってなくて、がっかりしたものだ。

ほとんど全曲解説(横道逸れ気味)になってしまったね。こうして改めて書いてみると、やっぱり僕は後半が好きだな。もし僕がこのアルバムをアナログで買っていたら、きっとB面ばかり繰り返して聴いていたことだろう。

プロデューサーがブレンダン・オブライエンに替わってから、90年代のブルースのアルバムで聴かれたような厚ぼったい音は若干なりを潜めた感がある。それでも、まだまだぼてっとした音に不満があるんだけどね。なにしろギターが3人もいる上に、ブルースの奥さんまでもがアコギ弾いてるから音が厚くてしょうがない。コーラスも人数多すぎるし。ダニー・フィデリーシはあのかっこいいオルガンに専念して、シンセサイザーは封印してもらいたい。あと、今回どういうわけかニルズ・ロフグレンのギターソロがほとんど入ってないよ。僕がこの世で二番目に好きなギタリストだから、一応彼のギターが鳴ってるのは聴き取れるけど。それもかなり不満。


さっき、今行われているEストリート・バンドとのツアーの曲目がサイトにアップされているって書いたけど、その話も少しだけ書こうかな。実は同じサイトで、毎日一曲ずつ(長い曲の場合は部分的に)収録されたビデオも観られる。それを観てると、メンバーみんな年取ったな、太ったな、って思ってしまう。しょうがないんだけどね、こっちだって年取ってるんだから。

ライヴのオープニングは「Radio Nowhere」、それに続くのは日替わりで「No Surrender」だったり「The Ties That Bind」だったり、もうそれを読むだけで失神しそうな選曲。新旧いろんな曲を挟んで、本編の最後はさっき書いたとおり。アンコールの1曲目「Girls In Their Summer Clothes」に続いて、なんと、セカンド・アルバムのアウトテイク「Thundercrack」なんてのを演ってる。あとはお決まりの「Born To Run」や「Dancing In The Dark」を演って、最後は「American Land」で締め。「Thunder Road」は演ってないんだね。昨日(14日)のカナダでのライヴでは、アンコールにアーケイド・ファイアが飛び入りしたらしい。それは観てみたかったな。

太っても年とっても皆それぞれに年季の入ったいい演奏をしているんだけど、やっぱりクラレンス・クレモンズだけはかなりきつそう。以前麒麟さんが多重人格ブログに書いてらしたけど、管楽器って体力勝負らしいからね。特に彼のように、細かなテクニックよりも、肺活量と勢いでぶわーっと吹くタイプのプレイヤーは、年と共に技術が衰えてくるのも致し方ないだろう。だってもう彼65歳だよ。58歳のブルースより7つも上。ギターとかピアノならどんなに年を取っても練習次第で上達するんだろうけどね。噂されているように、きっと今回のツアーがEストリート・バンドとの最後の共演になるんだろう。寂しいけど、彼抜きのEストリート・バンドなんて最早考えられないし。

長くなってきたね。もしかしたらもうルナさん以外には誰も読んでないかも。ルナさんこれ読んで『Magic』買う気になったかな?それとも、やっぱりやめとこうと思われただろうか。初期のアルバムにはもちろんかなわないけど、58歳で現役のスプリングスティーンが作り得る、かなり高水準のアルバムだと思うけどな。ところで、この記事を書くために「Roulette」や「Thundercrack」を聴きなおそうと、4枚組ボックス『Tracks』をかけたら、もうそっちに引き込まれてしまって。ああ、やっぱりあの頃のスプリングスティーンは違うよ。

というわけで、『Magic』も悪くないけど、やっぱりこっちを先に聴くべきかな、とも思う。ここまで長々と書いてきた今回の記事の趣旨と全然一貫性ない結論だけど(笑)。一応アフィリエイト貼っておくね。お、中古だと2913円から?その値段なら問答無用でしょう。4枚のうち後半2枚はわりとどうでもいいんだけど、前半の2枚だけで2913円以上の価値あるからね。

Tracks.jpg Bruce Springsteen 『Tracks』
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2007年10月07日

円熟期 Fountains Of Wayne 「Traffic And Weather」

ここのところ手に入れたアルバムにいいのが多すぎて、週一回のペースだととても年末までに気に入ったのを全部紹介しきれない。ちょっとこの週末はがんばってもう一記事書こう。こんなペースが続くかどうかはわからないけど。

Traffic And Weather.jpg Fountains Of Wayne 「Traffic And Weather」

以前からコンスタントにポップな好アルバムを作り続けているファウンテンズ・オヴ・ウェインの通算4作目(シングルB面曲集は除く)。今年4月のリリースだから、こんなメジャーなアーティストのアルバムを今さら取り上げることにちょっとした抵抗はあるんだけどね。

ひねたギターの単音で入ってくる一曲目「Someone To Love」から、パワーポップ炸裂。ストレートなギターロックあり、沁みるバラッドあり、とろけるようなカントリー調あり、ひねくれポップあり、端正なワルツあり。全14曲、捨て曲一切なし(なんだか昨日も同じような書き方したな)。

ビーチ・ボーイズの「Little Honda」に対抗してか、二曲目「'92 Subaru」は、15年落ちのおんぼろスバルをバリバリにチューンアップして乗り回す男の歌(世界初、スバルのことを歌った曲?・笑)。

 田舎のレズのカップルから車を買うた
 グリーンピースのステッカーとニューハンプシャーのプレートは外して
 友達はみんな失敗やて言うけど
 まあ見ててみ
 新品のショックアブソーバーとアンチロックブレーキ付けて
 ワンタッチ・イグニッションもあったら便利やな
 完成したらまるで新車やで
 ライムグリーンのプラズマTVも入れて
 皮シートはフェイクには見えへんやろう
 グローブボックスにちょっとだけアルコール入れとこかな
 ムーンルーフ開けたらシート倒して星が見えるで
 そうそう、GPSもあるから今どこにおるかもばっちりや
 アラームは複雑すぎて、どないして入るかもわからんぐらいや
 ベイビー、そこ動くなよ、今行くからな
 この92年後期型の水色のスバルでな


てな感じ。なんだかちょっとしたユーモアが可笑しい。曲はもちろんとびきり格好いいんだけどね。ジャケットにコラージュされた車を見るとどうもこれはレガシーみたいだけど、この曲をこの界隈のスバル乗りの彼女に聴いてもらいたいね。

その曲もだし、アメリカ東海岸の主要ハイウェイを曲名にした「I-95」やアルバムタイトル曲「Traffic And Weather」もそうだけど、今までも今回もやたらと車に関係する曲が多い人たち。今作には更に飛行機関係の曲「Michael And Heather At The Baggage Claim」や「Seatbacks And Traytables」なんてのも入ってるな。

アルバム中、僕が一番好きな五曲目「Fire In The Canyon」は、綺麗なハーモニーに寄り添うオルガンが、軽快なピアノとペダル・スティール(またしても!)に乗って流れるカントリー調の曲。ああ、これもアメリカ西部のキャニオンを車でドライブする曲だね。よもやこのグループをオルタナ・カントリー・バンド扱いする人はいないだろうけど、そのうち僕が(所謂)オルタナ・カントリー名曲集なんてのを作ったら、この曲は確実に入るはず。

普通、アルバム中一番好きな曲が終わってしまうと、多少はがっかりするというか、気が抜けてしまうことがあるんだけど、このアルバムはそうはいかない。六曲目「This Better Be Good」は、これもコーラスが見事なミディアムテンポのパワーポップの見本のような名曲。

「Planet Of Weed」は、“マリファナの惑星”というタイトルに引っ掛けてか、曲の間ずっと調子っぱずれの手拍子や瓶を叩く音なんかが入っている。ザワザワしたパーティーで、後ろの酔っ払いたちが曲に合わせてリズムを取ろうとしてるのになんだかずれてるっていう感じ。笑い声や電話の音なんかも入っていて。バラエティーに富んだ沢山の曲ががちっとまとまってプロデュースされたという印象のこのアルバムを、終盤12曲目のこの曲がちょっとくだけた雰囲気にするのにうまく役立っている。

などなど、本当に全14曲についていちいち説明したいぐらい。よく、「アルバム全曲シングルカットできるような」という言い方をするけど、このアルバムもそれぐらい一曲一曲が粒より。


ジェリーフィッシュ、ELO、ビートルズ、ポウジーズ、カーズ、ジェイホークス、ユートピア、ジャム、ラトルズ、チープ・トリック、ブラー、サザンオールスターズ、… どの曲が誰に似ているというのは難しいけど、僕はこのアルバムを聴いていると、こういったアーティストの名前が次々に頭に浮かんでくる。パクリっていうんじゃないよ、こういった広範囲なパワーポップバンドの様々な要素をあわせ持った、とても優れたアルバムだ。これまでの彼らの作品の中でも、収録曲の完成度という意味で言えば、今作がダントツかもしれない。

ポウジーズといえば、このバンドのドラマー、ブライアン・ヤング(Brian Young)は、『Amazing Disgrace』〜『Success』期のポウジーズのメンバーだったんだ。ゲスト・ミュージシャンの項には元スマッシング・パンプキンズのジェームス・イハ(James Iha)の名前もあるな。まあ、そっちは僕にとってはわりとどうでもいいんだけどね。

今この瞬間の勢いだけでいえば、ポウジーズの名作曲チーム、ジョン・オウア(Jon Auer)&ケン・ストリングフェロウ(Ken Stringfellow)よりも、ここんちの二人、クリス・コリングウッド(Chris Collingwood)&アダム・シュレシンジャー(Adam Schlesinger)の方が優れた曲を書いているかもしれない。このアルバムはプロデュースもアダムが自分でやってるし。まさに今が円熟期かも。もう10年も続いてるベテランだけど、これからもまだまだ楽しみなグループだ。

というわけで、今年度パワーポップ系では今のところ随一のアルバム。日本盤は最後にボートラが一曲多く入ってるらしいけど、このしっとりと終わるアルバムの後にどんな蛇足が入っているのか聴いてみたい気もする。
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2007年10月06日

最新の古典 Iron And Wine 「The Shepherd's Dog」

しばらく前から記事にしようと構想を練っていた何枚かのアルバムを全部すっ飛ばして、先週買ったばかりのこれについて書くことにした。アイアン&ワインの新作『The Shepherd's Dog』。

The Shepherd's Dog.jpg Iron And Wine 「The Shepherd's Dog」

アイアン&ワイン、これって、シンガー・ソングライターであるサム・ビーム(Sam Beam)の芸名といえばいいのかな。一人なのにバンド名みたいなのを付ける人。バッドリー・ドローン・ボーイことデーモン・ゴフ、と同じパターン。02年にデビューアルバムを発表してから、途中で何枚かのEPや共作アルバムも出しているけど、単独名義のフルアルバムとしてはこれが3枚目のはず。

僕は彼のアルバムは04年のセカンド『Our Endless Numbered Days』しか持っていなかったので、それとの比較しかできないんだけど、控えめなバンド演奏を伴った素朴なフォーク・アルバムといった趣だったそのアルバムに比べると、明らかに次のステップに進んだ感がある。いろんな意味で冒険をしているが、そのことごとくが功を奏しているように僕には思える。

以前に比べて印象的なメロディーの曲が多くなり、バラエティーに富んだ一曲一曲がきちんと独り立ちしている。なのに、ほとんどの曲のエンディングの音がほんの短いインタールードを経由して次の曲のイントロにつながっているので、アルバムを通しての統一感というものもきちんと出ている。ざっと読んだだけでは一体何のことについて歌っているのかよくわからない歌詞がほとんどなんだけど、いろんな曲のあちこちに共通した単語が出てくるところも、その統一感に一役買っているのかも。

「White Tooth Man」や「House By The Sea」のエキゾチックなメロディーにからむシタールやアコーディオンの音もたまらないし、アルバムのタイトル曲ともいえる「Wolves (Song Of The Shepherd's Dog)」の中間や後半部分がダブ処理されているのがすごく心地良い。

「Resurrenction Fern」のような、オーソドックスでありながら心にじんわりと沁みるメロディーの曲が、ギター(バンジョー?)とペダル・スティールで丁寧に紡がれるのを聴くと、僕はもう身動きもできないぐらいだ。僕は正統派のカントリー・ミュージックは別に好きでも嫌いでもないんだけど、それをルーツとした所謂オルタナ・カントリー(これもやたら幅広い曖昧な括りではあるんだけど)にこれだけ惹かれてしまうのは、きっとこのペダル・スティールの音に弱いからなんだと思う。

終盤、ニューオーリンズスタイルのよく転がるピアノが気持ちいい「The Devil Never Sleeps」に続いて、“ジャパニーズ・カー”と連呼されるサビの部分がやけに耳に付く「Peace Beneath The City」のちょっと不気味な曲調と不思議な音(オバケの出てくるときの音みたい)でこのアルバムを終えても悪くなかったと思う。が、その不気味な雰囲気を洗い流すような、とても綺麗な三拍子「Flightless Bird, American Mouth」でとどめを刺される。

最終曲を聴いているうちに、また最初の曲からからもう一回聴きたいという気持ちになり、実際に何度もそうしてしまうようなアルバムに出会ったのは、一体いつ以来のことだろう。このアルバムを買ってから今日でちょうど一週間だけど、もう何回聴いたかわからない。全12曲50分、退屈と思える瞬間が一瞬たりとも訪れない。最新版の古典的名作の誕生だ。


このオーソドックスでありながらも小技を効かせた絶妙なプロデュースをしているのは、ブライアン・デック(Brian Deck)。04年のアルバムも彼の手になるものだったけど、他に僕の持っているアルバムで彼のプロデュース作はあったかなと探してみたら、去年11月17日の記事で取り上げて、去年の僕のベスト・アルバム第八位に入れたジョシュ・リターの『The Animal Years』とか、以前クロムさんの記事を読んで興味を持って買ってみた、「足がつったら大声で知らせよう」でお馴染み(笑)カリフォーン(Califone)の『Roots & Crowns』がそうだった。

そういえばそのジョシュ・リターの記事でも、僕はしきりにその凝った音作りについて書いてるね。ブライアン自身、今挙げた全てのアルバムでドラムやパーカッションを演奏してるみたいだし(そういえば、今回のアルバムではパーカッションや手拍子が効果的に使われているな)。今まであまり注意を払ってなかったけど、ちょっとこのプロデューサーには注目してみよう。

アルバム・クレジットに演奏者の名前は載っているんだけど、誰がどんな楽器を演奏しているのかは書いていない。今ブライアンがドラムやパーカッションを演奏していると書いたのは、他のアルバムの表記を見ての憶測。

他にも何名かのゲスト・プレイヤーが参加していて、まずさっきのカリフォーンからジム・ベッカー(Jim Becker)。きっとブライアンが連れてきたのかな。彼はカリフォーンのアルバムの表記ではヴァイオリン、バンジョー、ベース、ループ、エレクトロニクス、パーカッション、シロフォン、ケイジャン・アコーディオン、マンドリン、カリンバとなっている、もの凄いマルチ・プレイヤーだ。

アイアン&ワインの前作はキャレキシコ(Calexico)との共作アルバムだったんだけど、きっとその時からの付き合いで、ジョーイ・バーンズ(ギター?)も参加。他には、ラムチョップ(Lambchop)のペダル・スティール奏者、ポール・ニーハウス(Paul Niehaus)の名前も。

僕が買ったのは、前回のCDショップガイドの記事にちらっと書いたけど、アナログ盤。例によって、アルバム全曲のMP3音源が無料ダウンロードできるとのステッカーに釣られてのこと。残念ながら重量盤じゃないんだけど、それなりに音はいいし、それにこのアルバムのA面B面各6曲ずつの流れがよくわかったのも思わぬ収穫。

ちょっとした問題があって、実は僕がMP3音源をダウンロードしたときに「このフォルダは無効であるか、または壊れています」と表示が出て、聴けなかったんだ。そこで発売元のサブポップのウェブマスターにその旨をメールしたら、なんとほぼ折り返しで回答。再ダウンロードできることになって、無事解決。最近、海外からの通販でこういう問題がいろいろあってメールでやりとりすることも多いんだけど、こんなに素早く的確に解決してもらったことはなかったかも。メールの文面も杓子定規じゃなくて親近感が持てるものだったし。かなり好感度アップなできごと。

サム自身が描いたこのちょっと狂犬病っぽい黄色い目の犬のジャケに戸惑う人もいるかもしれないけど(裏ジャケはこれに輪をかけて不気味)、これは僕の来年初頭のベストアルバム記事でかなり後ろの方に出てくる(=高順位)可能性が高いアルバムだ。今また1曲目に戻って聴き始めたよ。
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2007年09月21日

郷愁 Midlake 「The Trial Of Van Occupanther」 & 「Milkmaid Grand Army EP」

僕が意識して洋楽を聴くようになったのは、1980年頃のこと。だから、70年代の洋楽はほぼ全て後追いで聴いたということになる。それなのに、70年代初期に作られたある種のアメリカのロックを聴くと、無性に郷愁の念にかられてしまうことがある。

例えばCS&Nの「Helplessly Hoping」や「Guinnevere」、アメリカの「I Need You」、ニール・ヤングの「I Believe In You」、マナサスの「So Begins The Task」、等々。なんだろう。洋楽のかかるラジオ番組を聴いていたわけでもなく、レコード屋に通っていたわけでもないその当時の僕が、たとえ無意識にでもそういう曲をリアルタイムで聴いていたなんてことはまずないと思うんだけど、そういう曲を聴くと思い出すのは、まさに70年代初頭に自分がいた風景。もしかするとそれは、そういった曲が、僕だけでなく誰もが郷愁を誘うような雰囲気やメロディーを持っているのかもしれないね。

The Trial Of Van Occupanther.jpg Midlake 『The Trial Of Van Occupanther』

04年にアルバムデビューを果たしたばかりのミッドレイクの、昨年出たこの『The Trial Of Van Occupanther』というアルバムは、今ここに挙げたような70年代初頭の曲の数々と同じ雰囲気とメロディーを持っている。こんな、きっと70年代初頭にはまだ生まれてもいなかったような人たちが作ったアルバムなのに。

ティム・スミスを中心としたテキサス出身の5人組。元は同じ大学でジャズを演奏していた人たちらしく、アコースティック主体の演奏技術はかなりしっかりしている。5人ともが多彩な楽器を演奏していて、例えばティムの担当はヴォーカル、ピアノ、キーボード、アコースティック・ギター、エレクトリック・ギター、フルート。そういえばいくつかの曲でフルートの音が効果的に使われているのに気づく。(一応)ベース担当のポール・アレクサンダーの担当楽器表にはバスーンなんてのも。これはちょっとどこに入ってるのかちょっと聴き取れていないけど。それに加えて数曲で二人のゲスト・プレイヤーがフレンチホルンとヴァイオリンを演奏。

先に挙げた70年代のバンドを知らない人は、この楽器紹介で、ある程度どんな感じの音なのか想像がつくだろうか。というか、それらの70年代のアルバムにフレンチホルンやフルートが使われていたなんて思えないけどね。そういう意味では、単に70年代風の焼き直しではなく、この人たちならではのユニークな音ではある。

アコースティック主体なんて書いたけど、もちろんエレキギターもふんだんに使われていて、たとえば1曲目「Roscoe」での、この上なく切ない歌メロに(少しニール・ヤングを思わせる)ざらざらした触感の歪んだギターの音が被さってくるところなんて、ちょっとやるせない気持ちになってしまう。

歌詞についても触れておこう。4曲目「Van Occupanther」に出てくるヴァン・オキュパンサーという人物についての物語、というわけでもないんだけど、それぞれの曲の歌詞の内容が少しずつ関連しているようにも思える。アルバムタイトルのTrialをどう訳すかが微妙だけど、「ヴァン・オキュパンサーの苦難」といった感じなのかな。

曲から曲へと、不思議な雰囲気の歌詞が続く。石工、山の住民たち、1891年生まれのロスコー、山賊、リヴァイアサンを読む女、ヴァン・オキュパンサー、狩人、などなど。この奇妙なジャケット写真ともあいまって、僕は村上春樹の「世界の終わりとハードボイルド・ワンダーランド」に出てくる、森に囲まれたあの不思議な街のことを思い出す。そういえば前にも何かのアルバムを説明するときに同じ本を持ち出したことがあるね。イメージの蓄積が貧困なもので。


去年あちこちで話題になったこのアルバムを何故今頃になって取り上げたかというと、このアルバムのヒットに便乗して、“幻の”デビューEPが再発されたのを最近入手したから。

Milkmaid Grand Army EP.jpg Midlake 『Milkmaid Grand Army EP』

なんでもこのCD、01年にテキサスのライヴ会場のみで1000枚を売り上げ、その後ずっと廃盤になっていたとのこと。そしてこれを、コクトー・トゥインズのべーシスト、サイモン・レイモンド(僕はこのグループのうち、彼の名前だけ知らなかったんだけど)が気に入って、彼のレーベルからデビューアルバムを出すきっかけになったという話。

『Van Occupanther』と比べると、当然完成度は高くない。持ち前の翳りのあるメロディーは既に随所に聴かれるけれど、目を見張るほどの曲はまだない。わざとだろうけど、古いラジオで聴いているかのようなくぐもった音質になっていて、それはそれで妙に懐古的な雰囲気がある。でも、まだ正式にデビューもしていないグループの自主制作CDがこのクオリティーなら、これは1000枚があっという間にはけるのもわかる気がするよ。

その音質のせいもあるけど、この『Milkmaid Grand Army』から『Van Occupanther』へと続けて聴くと、霧の立ち込めた森の奥深くから急に視界が開けた山の頂上に出たような気持ちになる。やっぱり、『Van Occupanther』の(一聴70年代風の)音作りは大したものだ。そう思って、このアルバムのプロデューサーは誰なんだろうとクレジットを見てみたら、なんとティム・スミス自身(+グループ全員という書き方)。ああ、やっぱり凄いね、この人。自分で曲も歌詞も書いて、こんなクオリティーのアルバムを自分でプロデュースできるんだから。

彼らの去年のライヴを丸ごと収録したビデオを見つけた。60分以上もあるんでまだ全部は観てないんだけど、坊主頭(ハゲじゃないよ)にヒゲ面のティム君、なんだかえらく親しみの持てる風貌してるよ。これ読んで興味のわいた人は、このビデオの9曲目「Roscoe」か11曲目「Head Home」だけでも観てみて。




ところで僕の買った『Van Occupanther』日本盤は、オリジナルに3曲のボーナストラックが入ったもの。さすがV2ジャパン、コンスタントにいい仕事をしてくれるね。ところが、こっちで流通しているオーストラリア/NZ盤は、オリジナル盤に5曲入りのボーナスディスクが付いた2枚組。ボートラの多いそっちに買い換えようかと思ったら、日本盤ボートラのうち2曲はNZ盤には入ってないときた。これじゃNZ盤を買っても日本盤を手放すわけにはいかない。しかも、ダブってないNZ盤の4曲のうち2曲は『Milkmaid Grand Army』から。ということは、NZ盤正規料金(3千円弱!)を払って2枚組『Van Occupanther』を買っても、新たに手に入るのは2曲だけ。これはちょっとさすがの僕も躊躇してしまうよ…
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2007年09月08日

透明感のあるグレー Broken Flight 「On Wings, Under Waves」

The English translation will follow the Japanese text.

あれは何日か前のこと。僕は雨の中を運転していた。静かな渋滞の朝。土砂降りというわけじゃなかったけれど、昨晩からずっと振り続けていた雨。空はなんとなく明るいんだけど、雲が切れる気配はない。見渡す限りの白い空に、幾重にも折り重なる灰色の雲。ほとんど白と見分けのつかないような薄い灰色から、そこから雨が落ちてくるのが見て取れるような真っ黒な雲まで。そういえば普段わざわざ見上げることもなくなっていたけど、曇り空って、こんなにいろんな色でできてるんだってことに、ふと気づいた。

カーステレオから流れていたのはこのCD。けっしてドライビング・ミュージックといった類の音楽ではないんだけど、最近手に入れてからここしばらく続けて聴いている。そして、この瞬間、この気だるい灰色の朝の風景にこの音がとても合うことにも、僕は気づいた。冬の雨の日の音楽。一色一色を言葉で表すことはできないけど、数え切れないほどの種類の灰色で彩られた、でも、そのベースは向こう側にある太陽の存在がわかるような透明感のあるグレーでできている、そんな感触の静かな音。


On Wings, Under Waves.gif Broken Flight 『On Wings, Under Waves』

前回の記事にちらっと書いた、タマス・ウェルズがインタビューで自分の好きな音楽としてホセ・ゴンザレスと共に名前を挙げていたのが、このブロークン・フライトというメルボルンのバンド。

静かに爪弾かれるアコースティックギター、そこに一音ずつ音を確かめるかのように重ねられるピアノ、穏やかな声とハーモニー。そんな感じの「In Patterns」でアルバムは幕を開ける。え、まるでタマス・ウェルズのアルバム紹介のようだって?そうだね、さすがに彼がお気に入りに挙げるだけあって、音の感触はタマス・ウェルズのそれにとても似ているかもしれない。この05年のアルバムのプロデューサーは、ネイサン・コリンズ。どこかで聞いた名前だと思ったら、タマス・ウェルズの『A Plea En Vendredi』のプロデューサー、というか、タマス・ウェルズ(個人でなくバンドとして)のドラマーじゃないか。

サティの「Gymnopedie」を下敷きにしたと思しきイントロを持った2曲目「August」でのフレンチホルンや、6曲目「The Old Man And The City」でのホーナーのメロディカ(日本では一般的にヤマハのピアニカとして有名な楽器。アルバムのブックレットにはホーナーとしか書いてないけど、このアルバムのどこにもハーモニカらしき音は入ってないので、それは多分この曲でこのノスタルジックな音を奏でている楽器のことだろう)などの一風変わった楽器が使われているのが印象的。アルバム全体を通じて薄い灰色のギターとリズム楽器が淡々と演奏される中、あちこちでアクセントをつけるように(でも、あくまでも同じ系統の色合いで)そういう音が重ねられているところが、冒頭に書いた様々な灰色の混じった空のイメージを僕に与えるのかもしれない。

3曲目「In The Woods」とアルバムを締めくくる「A Strange Love」の2曲がインストゥルメンタルなんだけど、どちらもとてもシンプルなメロディーを何度も反復しながら、いろんな楽器やコーラスが幾重にも折り重なって入ってきては出て行くといった構成の曲。前者が7分強、後者に至っては9分を越える長尺で、聴いていると感覚が麻痺してくる感じが実に心地良い。音楽性は全く違うけれど、例えばヴェルヴェット・アンダーグラウンドの「Sister Ray」を17分かけて聴き終えたときのあの感覚、のコンパクト版。

上に載せたジャケットの写真をクリックして拡大してよく見てもらえばわかると思うけど、このCDケース兼ブックレットの作りは一風変わっている。白い紙を何枚も無造作に重ねたものが糸で綴じられていて、背表紙の部分で一緒に綴じられている赤い糸を何重にもぐるぐると巻いて、全体を閉じるようになっている。ブックレットの最後のページにあたる部分が折り紙のように折り畳まれていて、そこにCDを差し込む形。素朴なモノクロのイラストとも相まって、ちょっとした芸術作品を手に入れたようで嬉しい。表紙とか一部のページに和紙を使っても綺麗だったかもしれないね。ただ、やっぱり糸を巻いたり解いたりして何度も出し入れするのはちょっと不便だし、もう既に何度も出し入れしたせいか僕のは白い糸で綴られている上の部分がちょっと破れてきたので、CDの盤自体は別のケースに収納することにした。

On Wings, Under Waves.jpg


03年に出た4曲入りEP『Ray Of Youth』も同時に入手した。05年の『On Wings, Under Waves』でのブロークン・フライト:クリス・リンチ(ギター&ヴォーカル)、ピート・ボイド(ギター&エフェクト)、ニコル・ハーヴィー(フレンチホルン)、ランス・ヴァン・マーネン(チェロ、ピアノ、オルガン、グロッケンシュピール、メロディカ…すごいね、この人)のうち、最初の二人だけがこの当時の正式メンバー。ドラムを叩いてるのは『On Wings』同様ネイサン・コリンズだけど、プロデュースはマーク・ラングという人。

Ray Of Youth.gif Broken Flight 『Ray Of Youth』

より完成された『On Wings』に比べると、曲のメロディーがちょっと単調かな、という感じ。まあ、タマス・ウェルズにしても、日本盤の『A Mark On The Pane』に収録された初期のEPの音源を聞くと、後のアルバムの完成度からは程遠いんだから、これは仕方ないだろう。それに、こんなシンプルな音楽でも、プロデューサーが違うとこんなに音のイメージが違ってくるのかと思わせられる。『On Wings』が僕が上に書いたモノトーンの層を成した曇り空だとしたら、この『Ray Of Youth』は、このジャケ写のイメージどおりの、ちょっと曇り気味の青空にすぎない、という感じだろうか。綺麗なんだけど、少し深みが足りないかな。

面白いのは、この『Ray Of Youth』には「July」という曲が入っていて、『On Wings』には前述の通り「August」という曲が入っていること。きっと次のアルバムには、「September」という曲が収録されるかな。ところで、「August」の歌詞には「いちばん寒い日/葉っぱは全部落ちてしまう」という箇所がある。ああ、そうだよね、メルボルンのバンドだった。

どちらも自主制作のCDだから、どこででも手に入るというわけじゃない。僕が調べた限りでは、ネット上での情報も非常に限られている。もしこれを読んで興味がわいた人がいれば、彼らのマイスペース(http://www.myspace.com/brokenflightband)で数曲試聴可能だし、上のジャケ写の横のタイトルをクリックしてもらえば、CDの入手方法が書いてあるページにたどり着くよ。

あまりタマス・ウェルズに関連付けて紹介するのはよくないのかもしれない。音楽的には似通ってるとはいえ、それぞれが書くメロディーの質感はかなり違うし、あのタマスの「天使の声」と同じものを期待してしまうと肩透かしをくらうかもしれない(クリスの声も、優しくて味のあるいい声なんだけどね)。それでも、タマス・ウェルズのサードアルバムを待ちきれないという人には、じゃあちょっとこれを聴いてみてもいいんじゃない?って言いたくなるような、地味だけど素敵なアルバム。




Transparent grey - Broken Flight 「On Wings, Under Waves」

It was a couple of days ago. I was driving in the rain. A quiet morning in the congested traffic. It wasn't pouring at all, but the rain hasn't stopped since the night before. The sky was somehow light, but it didn't seem like the cloud would go away so soon. In the endless white sky, there were layers of grey coloured clouds. Some pale clouds that you would call it white. Other part of the sky was covered by the black cloud where you would see the raindrops actually fall from. I haven't looked at the cloudy sky for a long time, but I realized there were so many colours out there.

The car stereo was playing this CD. It was not a kind of "driving music", but since I've got it recently, it's been among the top of my playlist. And at that moment, I've also realized this music really fit the lazy grey morning. A music for the winter morning rain. A quiet sort of sound made of transparent grey that you can feel the existence of the sun over there, but layered by the countless numbers of greys, which you can't name each of its colours.


Broken Flight On Wings, Under Waves.gif Broken Flight 『On Wings, Under Waves』

As I touched a little in my last article, Tamas Wells listed this Melbournian band as his favourite, together with Jose Gonzalez.

Acoustic guitars strummed gently. Piano notes put over it carefully, as if it's checking its own position on the score. Tranquil voice and harmony. The album opener In Patterns starts like that. Well, you'd think I'm talking about Tamas Wells' album? Indeed, their sound might resemble each other. No wonder Tamas listed this as his favourite. This 2005 album was produced by Nathan Collins. Hmm, I've heard this name before...well, he was also the producer for Tamas Wells' "A Plea En Vendredi". Or you can say he is the drummer of Tamas Wells (as the band not the individual).

It is impressive that some interesting musical instruments are used in this album such as; French horn in August (its intro reminds me of Satie's "Gymnopedie"), or Hohner's melodica in The Old Man And The City (this instrument is more popularly known as Pianica by Yamaha in Japan. The album's booklet says only Hohner but I can't hear the sound of harmonica anywhere. So I assume this nostalgic sound in this song must be from melodica). Probably the grey sky image that I had was generated from the pale greyish acoustic guitar & rhythm sections all through the album, accented by the layers of the sound from such unique instruments in the same tone of colours.

Two numbers, In The Woods and the album closer A Strange Love are instrumental. Both structured by the simple melodies repeated over and over again, with various instruments and chorus in and out at times. The former tune is 7 minutes plus. The latter is over 9 minutes. Listening to them makes me feel paralyzed, and it feels good. I would say, although it sounds completely different, it's the same feeling you get after listening to 17 minutes-long Sister Ray by The Velvet Underground. Well, the compact versions, these are.

If you click on the CD cover photo above and look closer, you may find the make of the booklet (cum CD case) is somehow very unique one. Some white papers casually tied and stitched at the back. One long red thread also stitched at the centre would bind the whole booklet. The last page of the booklet is folded like an origami, and you put CD in its slit. The simple black and white illustrations add the cool atmosphere, and it makes you feel good to have such a nice piece of art. Perhaps if they'd use Japanese traditional paper as the cover or inside pages then it would be cooler. However, it's not the most convenient way of taking CD out and put it in again by handling the thread. And maybe because I've been doing so quite often, the top of the perforated part already started to torn. I decided to put the CD in the normal jewel case and keep this booklet separately.

On Wings, Under Waves.jpg


I've also got a four-song EP issued in 2003, named "Ray Of Youth". Whereas the members of Broken Flight in 2005 were; Chris Lynch (guitar & vocal), Pete Boyd (guitar & effects), Nicole Harvey (french horn), Lance Van Maanen (cello, piano, organ, glockenspiel, hohner...what a player!), only the first two were the official members in 2003. Nathan Collins played drums same as "On Wings", but this EP was produced by the other guy called Mark Lang.

Ray Of Youth.gif Broken Flight 『Ray Of Youth』

Compared with "On Wings" which was brought closer to the perfection, this album is a bit weak, with rather monotonous melodies. Well, the early EP tracks of Tamas Wells you can now listen to on the Japanese edition of "A Mark On The Pane" are also incomplete compared with the later album tracks. What more would you expect from the debut EPs? It's curious that the different producers makes such different sounds, even with such a simple kind of music. If the sound of "On Wings" is the layer of various monotonous grey clouds as I described above, I dare say the sound of "Ray Of Youth" is a simple blue sky with a bit of white clouds, just like the one on this cover. It's beautiful, but not as deep as more professionally produced "On Wings".

It's interesting to know there's a song called July in "Ray Of Youth" and another one called August in "On Wings". I guess there may be a song called September in the coming album. By the way, there's a line in August goes like this; In the coldest days / The leaves will fall all the way. Ah, yeah, the Melbournians!

Both CDs are from the independent label and hard to find in the normal CD shops. As far as I've checked, their info on the web is very limited too. If you are interested in this band by reading this article, go to their My Space (http://www.myspace.com/brokenflightband ) and you can listen to some of their tunes. Or click on the CD titles above and you reach to the page where you'll know how to purchase them.

It may not be a best idea to correlate Broken Flight to Tamas Wells too much. Although the sound taste resembles each other, Tamas & Chris write quite different melodies. And moreover, you can't expect the "Angelic voice" from this CD (though I dare say Chris' voice is also gentle and tasteful). But I would still recommend this album to anyone who can't help waiting for Tamas Wells' third album. Modest, but a lovely album.
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2007年08月19日

今回は長文 Tamas Wells 「A Mark On The Pane」

音楽業界に属する人にとって、自分が生み出した音楽や、自分が発掘した誰も知らない音楽を、沢山の人に気に入ってもらえるということは、単にそれが自分の仕事だということ以上に喜ばしいことに違いない。別に音楽業界なんてものには属していない僕でさえ、自分のブログで紹介した音楽を聴いてくださった方にコメント欄で「よかった」と一言感想を書きこんでもらえるだけで、とても嬉しい気持ちになるんだから。

去年の10月29日に書いた「心の鎮痛剤」という記事で紹介したタマス・ウェルズの、それからの日本でのいろんな動きを見ていて、そんなことをふと考えてしまった。

その記事に丁寧な長文コメントを書き込んでくださった一本道ノボルさん(執筆されたライナーの通り、大崎暢平さんとお呼びしたほうがいいのかな)が属されている会社のウェブサイトや、今日ここで取り上げるタマス・ウェルズのファーストアルバムのライナーなどを読んでいると、去年の10月にセカンド『A Plea En Vendredi』(以下『Vendredi』と略)が発売されるまでは日本では全く無名だったこのアーティストが、そのアルバムがあちこちで話題になり、やがて入手困難だった以前のCDが日本盤として発売され、そして待望の来日公演までが決定したというサクセスストーリーは、『Vendredi』の発売日から二週間後というわりと早い時期にブログに取り上げることができた僕にとっても、まるで自分のことのように嬉しく思える。

去年の10月に『Vendredi』を聴いて以来、ずっとファーストアルバムを探していたんだけど、ここNZでも、タマスの母国であるオーストラリアのレコード店のウェブサイトでも、その他僕がよく利用している日本・アメリカ・イギリスのサイトでも、まったく見かけることはなかった。iTunesで聴くことができたのは知ってたけど、二つ前の記事にも書いたように僕はダウンロードで音楽を買うのが嫌いで、なんとしてでもCDを見つけ出してやると躍起になっていたんだ。

ようやくそれを見つけたのは今年の2月。日本の某大手チェーン店のウェブサイトにて。手に入るなら金に糸目はつけないつもりでいたけど、送料込みで2500円強。悪くないね。早速注文して、4月に東京に出張した際に入手した。豪Popboomerang Records PB009 - 後に出た日本盤のライナーによると、その時期にレーベルに残っていた最後の在庫200枚が全て日本に輸入され、即完売となったうちの一枚のようだ。そこまで貴重だったとは。

A Mark On The Pane.gif Tamas Wells 『A Mark On The Pane』

先に入手した『Vendredi』同様、このアルバムも最初に聴いてからずっと愛聴している。貴重なアルバムをやっとの思いで手に入れたと一人悦に入っていたんだけど、先述のとおり、先月日本盤が発売された…9曲ものボーナストラック入りで。ライナーノーツに曰く「既に輸入盤を購入された方にとってもアピールとなる要素が必要だ」。はい、アピールされましたよ。日本盤の発売日に友人に代理購入してもらい、NZまで送ってもらう羽目に。

先のコメントで一本道さんが半ば自虐的に語っておられた『Vendredi』日本盤での7000字に及ぶ解説を既に読んだ人を念頭に書いておられるのだろう、細かい字で8ページにも及ぶ(一体何字あるんだろう)、小説かと見紛うほどの超詳細解説に圧倒される。僕は(そして、件のコメントを読まれたこのブログの読者の方々は)大崎さんのタマスに対する熱い思いと、それをどうしても短い言葉にまとめきれないもどかしさを予めわかっているから、この超長文解説も微笑ましく読むことができるが、きっと何も知らずにこのCDを買った人は「一体何だこのライナーは」と驚いているに違いない。

アルバムの内容について少しだけ書こうか。一聴した限りでは、僕が「心の鎮痛剤」と評した『Vendredi』同様、タマス・ウェルズの優しい歌声が、このうえなくデリケートで心地良いメロディに乗って唄われているという構成と大きな変化はない。あのアルバムが好きな人なら、間違いなくこちらも気に入るはずだ。

タマスがまだ、『Vendredi』の質感を印象付けていた乾いた音を出すマンドリンを弾いていないことや、エレキギターを始めとした電気楽器の音が『Vendredi』よりも多用されていることから、音の感触は少し違うように思える。(8ミリフィルムが回転する音だろうか)細かいカラカラ…という音に導かれて始まる2曲目「Broken By The Rise」のイントロで全ての楽器の音がふわーっとフィルインしてくるところは、バンドとしてのタマス・ウェルズ(ややこしいけど、これは個人名でもあるし、バンド名でもある)の魅力を味わえる一瞬だ。

途中で二回出てくるインスト曲について、大崎さんは「インタールードとしても機能していない」とライナーに書かれているが、5曲目「Petit Mal At A Grand Occasion」は、その前の(歌詞からアルバムタイトルが取られた、事実上のタイトルトラック)「Reduced To Clear」の穏やかなメロディーを黒雲のように覆い隠す、神秘的だけど聴衆を不安に陥れる後奏としての役割を果たしており、それが故に、続く6曲目「Even In The Crowds」のただでさえ明るいイントロのエレキギターの音をより暖かいものにすることに成功していると思う。また、8曲目のインスト「Segue In GM」は、どことなく先ほどの4曲目と似たメロディーがマイナーコードで演奏されており、そのことがなんとなくこのアルバム全体を「Reduced To Clear」を中心としたコンセプト・アルバムのように思わせる要素になっている。

アルバムのプロデューサーはティム・ウィッテン。調べてみたら、ゴー・ビトゥイーンズ、フードゥー・グルズ、ハンターズ&コレクターズなど、オーストラリアを代表する中堅ロックバンド(笑)のアルバムを多数手がけているようだ。なるほど、それもあってのこのバンド・サウンドなのか。

日本盤に収録された9曲は、この『A Mark On The Pane』以前に発表された3曲入りシングル「Cigarettes, A Tie And A Free Magazine」と、6曲入りEP「Sticth In Time」からの全曲。この曲順がオリジナル同様だとすると、「Sticth〜」の1曲目は「Reduced To Clear」。よほど彼のお気に入りの曲なんだろう。「Cigarettes〜」は、このシングルを最後に脱退してしまったらしいヴァイオリンの音色が素晴らしい。ゲストとしてでいいから、次のアルバムにまた参加すればいいのに。

ところで、『Vendredi』には歌詞と日本語対訳が載っていたんだけど、この『A Mark On The Pane』には英語の歌詞しかブックレットに載っていない。それはいいんだけど、これが実際に歌われているものとかなり違うんだよね。『Vendredi』もそんな感じがあったけど、あちらはまだ所々の歌詞を端折ったり違う言葉で歌い替えたりしていただけだったからある程度聴きながら歌詞カードを目で追えたんだけど、今回のはちょっとお手上げ。なんでここまで違う歌詞を載せているんだろう。それで対訳を載せるのもやめたのかな。

僕が4月に買った方のオリジナル盤の曲はもちろんこの日本盤には全曲収録されているから、日本盤が届いたらオリジナルの方は中古屋にでも売ろうと思っていたんだけど、

1)日本盤からは(長文解説書のあおりで・笑)削除されてしまった六つ折りブックレット内の、表裏ジャケに通ずる雰囲気のある写真が捨てがたい
2)物悲しい10曲目のインスト「A Dark Horse Will Either Run First Or Last」で終わるしみじみとした気分を味わっていたい
3)なにしろ最後の200枚のうちの一枚

という理由から、両方とも手元に置いておくことにした。こうしてまた同じアルバムが我が家に増えていく…


先述したとおり、今月ついに来日公演が実現した。この週末は金沢、大阪、奈良で既に公演を終えているはず。どこかのサイトを探せばもしかしたらもうライヴレポートが上がっているのかもしれないけど、ちょっとそれはまだ読まないでおこう。だって、僕も観に行くことにしたからね。

これだけ日本で盛り上がった後もNZでは彼は全く無名のまま。隣国オーストラリアでも彼のライヴがいつ行われるのかよくわからない状態。この機会を逃したら、もしかしたら本当に一生観られないかもしれないと、赤道を越えて観に行く決心をした。本当は、30人限定の奈良公演か、50人限定完全アコースティックライヴの東京公演に行きたかったんだけど、僕の仕事の都合と決断が遅かったために、東京での最終日だけにしか参加できなくなってしまった。まあそれにしても、このツアーで最大の集客数であろうこの日が一番盛り上がるだろうことも充分に予想されるので、もちろん悔やんでいるわけではないよ。

もう二枚のアルバムはイントロ当てクイズができるほどに聴き込んだけど、観客席で僕が歌って彼の“天使の歌声”を邪魔するわけにはいかないから、脳内で一緒に歌う練習もしておこう。そうだ、オリジナル盤の『A Mark On The Pane』を持って行って、サインしてもらおうかな。中古屋には売れない理由その4を作るために。
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2007年07月28日

湖畔の音楽 Great Lake Swimmers 「Ongiara」

gls_boat.jpg


荒涼としているけれど寒々しい風景ではない。薄曇りの空。海かと見紛うほどの大きな水面。遠くを横切る船は音も無くその上をゆっくりと進む。全身で受ける、潮の香りがしない乾いた風が心地良い。

オンギアラという不思議なアルバムタイトルは、このアルバムが当初予定されていた、オンタリオ湖にある島での録音に向かう船の名前から取られたという。結局そこでの録音は一部だけが採用されたのみで、このアルバムの大半は同じオンタリオ州のロンドンという町にあるエオリアン・ホールという何世紀も前に建てられた建物で収録された。

Ongiara CD.jpg Great Lake Swimmers 『Ongiara』

6月24日のyascd010に前作からの曲を収録したグレイト・レイク・スイマーズの通算3枚目となるアルバム。以前から細やかな音の響きを大切にするグループだったけれど、今作はそういった録音環境のお陰で実に深みのある音が聴ける。6曲目「Put There By The Land」のイントロでアコースティック・ギターの弦を擦る音の残響を聴いただけで、それがどんな空間で録音されたのかが計り知れるようだ。

全曲を手がけるギターとヴォーカルのトニー・デッカーを中心とした3人組。バンジョー、チェロ、オルガン、鉄琴、アップライト・ベース、スティール・ギターというアコースティック楽器の音色が彼のか細いヴォーカルを静かに引き立てている。

この憂いのあるメロディー、淡々と歌われるか細いヴォーカル、冒頭に書いた風景を思わせる静かな音の雰囲気、誰かに似ていると思ったら、1970年前後のニール・ヤング。もっとピンポイントで言うと、『After The Gold Rush』での彼を髣髴とさせる。カナダという土地はこういう音楽を生み出す土壌があるんだろうか。

たまたま7月8日の「LPと算数」のコメント欄でLPとCDの音の差という話になっているけれど、これは僕は是非アナログで聴いてみたいと思う音だ。もちろんCDでもきちんとした音が聴けるんだけどね。実は僕はこのCDを他の何枚かと一緒にアマゾンUKから買ったので、オリジナルのカナダ盤やアメリカ盤なら前2作と同様にデジパックだったのに、普通のジュエルケースに入ったEU盤が届いてしまった。そういう諸般の事情もあり、トリミングされたCDのジャケとは違う見開きジャケだというLPも通販で注文してしまった。

Ongiara LP.jpg 

一緒に注文したのがこの、500枚限定だという手書きナンバリング入りの6曲入り12インチEP『Hands In Dirty Ground』。ジャケットに3種類の色のバリエーションがあるらしいから、あと2枚買っとこうかな。別にそんな何枚も持ってたいほどいいジャケってわけじゃないんだけど、限定モノに弱い僕。

Hands In Dirty Ground.jpg

7月14日の「異論な意見」のコメント欄では、クロムさんとの間で「日本の音楽雑誌で無視され続けるアーティスト」の話で盛り上がっているんだけど、この人たちも僕から見ればそんなグループの一つ。2003年のファーストアルバムから一貫してこの独特の雰囲気を持った音作りを続け、こんなに滋味のある素晴らしいアルバムを出したというのに、僕がざっと調べた限りでは日本盤発売の予定はなし。最近あまり買ってないから断言はできないけど、過去数年間に日本の音楽雑誌で彼らのことを読んだ覚えもない。なんとももったいない話だね。



<8月12日追記>

Hands In Dirty Ground.JPGコメント欄で「もしかすると入手できないかも」と書いた『Hands In Dirty Ground』が、何の前触れもなく送られてきた。よかった〜。3種類の色のバリエーションがあるらしいと書いたが、僕のはこの写真のとおり、ちょっと茶色がかったグレー。なんだ彼らのイメージにぴったりの渋い色で嬉しい。手作り感満載の、30cm X 60cmの紙を二つに折り曲げただけのしょぼい簡素なジャケットがマニア心をくすぐる。500枚限定のうち、僕の受け取った手書きシリアルナンバーは362番。別に番号順に出荷してるわけじゃないんだろうけど、まさかまだ138枚も残ってるのか?とちょっと疑惑。

早速聴いてみた感想を少しだけ書くね。A面1曲目は、yascd010にも収録した「Song For The Angels」の“Miracle Version”。冒頭からギターのフィードバックノイズが響き渡る、彼らにしては異色のアレンジ。だけど、これがまた格好いい。何がミラクルなんだろう?って思ってたら、この曲が収録されたのが、オンタリオのロンドンにあるHouse Of Miracleという場所だったというだけの話。なんだ。

このEPのタイトルにもなっている2曲目「Hands In Dirty Ground」は、セカンドアルバム『Bodies And Minds』のアウトテイク。ボツにはしたけど発表したかった、というのが理解できる佳曲。

A面3曲目「I Saw You In The Wild」がセカンドアルバム、B面3曲目「This Is Not Like Home」がファーストアルバムにそれぞれ収録されていた曲の、ライヴヴァージョン。「I Saw You In The Wild」の方はドイツで収録されてるな。そういえば、このアルバムに封入されている紙(ブックレットなんて代物じゃない)には、あちこちの地図がコラージュされてるけど、よく見たらここに収録された6曲が録音された場所の地図みたい。うん、ドイツ語らしきのもあるね。

B面1曲目「To Leave It Behind」も、『Bodies And Minds』のアウトテイク。Band Versionとなっているように、こちらの方がオリジナルテイクよりもやや派手(といっても、彼らレベルの「派手」だからね)。

僕にとって一番の聴きモノだったのが、B面2曲目「Innocent W.Y.D.」。このタイトルじゃ咄嗟にわからなかったけど、これはトム・ウェイツの「Innocent When You Dream」のカバー。こないだ別記事で書いたジェイソン・ムラーズのライヴが収録されたシカゴのシューバスでのライヴ録音。残念ながら僕はトム・ウェイツの「Franks Wild Years」もベスト盤の「Beautiful Maladies」も持ってなくて、これまではエルヴィス・コステロがカバーしたバージョンでしかこの曲を聴いたことがなかったんだけど、これが珠玉の出来。トム・ウェイツって、特に最近の曲は本人がダミ声でメチャクチャな歌い方をするからカムフラージュされてしまってるけど、他人がカバーすると、本当に綺麗なメロディーの曲を書くんだってことがよくわかるね。これもその好例。

ちなみにコメント欄でのカブ子さんの質問。このジャケには一体いくつの楽器が隠れているか。正解は5つですね。この最初の記事に載せた白いジャケで確認できるのがほぼ全てです。筒状のもの(丸太のようです)にはちゃんと鍵盤がついてますよ。

いや、これは買って正解だったね。Lunaさんに乗せられたわけじゃないけど、あと2色も買おうかな。どうしよう、ピンクとか全然似合わない色のが送られてきたら。
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2007年07月21日

上質のパスティーシュ The Rutles 「Archaeology」

もう皆さん慣れてるかもしれないけど、今日は長い話になると思うよ。まずは簡単に事実関係の羅列から。76年にイギリスのコメディ番組のためにモンティ・パイソンのエリック・アイドルとボンゾ・ドッグ・バンドのニール・イニスが中心になって結成したビートルズのパロディ・バンドがラトルズ。その後78年にアメリカ向けのより本格的なテレビ番組「All You Need Is Cash」を作成、そのサントラ版として発売されたのが彼らのファースト・アルバム『The Rutles』。そのテレビ番組自体がビートルズの歴史を完全にパロディ化したもので、このアルバムの収録曲も全てがビートルズの何らかの曲のパロディになっている。

The Rutles (1st).jpg The Rutles 『The Rutles』

元々がその番組のための架空のバンドなので(劇団モンティ・パイソンからのエリックは楽器が弾けず、番組ではビートルズでのポールに相当する役を演じていたが、レコードの演奏には参加していない)、その番組とアルバムが彼らの遺した作品の全てだった。ビートルズのファンや評論家からも大絶賛されたにも関わらず、LPやビデオはすぐ廃盤になり、90年になって大量の曲を追加して別ジャケでCD化されたファースト・アルバム(上の写真)だけが一般的には彼らに触れる唯一の術だった…

…96年までは。
96年といえば、本家ビートルズの未発表曲を2枚組CD x 3種に亘って集大成した『Anthology』プロジェクト真っ盛りの時期。音楽ファンの間でビートルズ熱が再燃していた頃だ。その年の暮れに突然発表されたのが、そんなものがあり得るなんて誰も考えていなかったラトルズのセカンド・アルバム『Archaeology』だった。

Archaeology (Orig).jpg The Rutles 『Archaeology』

『Archaeology(考古学)』というタイトルが本家の『Anthology(傑作選)』のパロディならば、このジャケットも、88年に出た「ビートルズ十数年ぶりの新譜」として発表された『Past Masters Volume One』のパロディ。

Past Masters.jpg The Beatles 『Past Masters Volume One』

と、ここまで知ったようなことを延々書いてきたが、僕がリアルタイムで彼らのことを知ったのは実はここから。この『Archaeology』というアルバムを聴いてその虜になり、急いでファースト・アルバムやDVD(これはしばらく後に再発されてから)を買い集めたものだった。

それから11年経ち、廃盤だったこのセカンドアルバムが別ジャケで再発された。基本的に新譜しか取り上げないことにしている僕のブログで、この最高に楽しいアルバムについて書ける機会ができたということだ。

Archaeology (Reissue).jpg The Rutles 『Archaeology』

『Past Masters』が既に20年近く昔のアルバムになってしまい、この黒地に白抜きロゴのインパクトが薄れてしまったためだろうか、新装版のジャケは96年版の内ジャケに使われていた地味なメンバー写真に変更。

16曲入りのオリジナル盤に5曲のボーナストラックが追加されている。96年版の日本盤には4曲のボートラが収録されており、レココレ5月号のアルバム評には「ボーナス・トラックが5曲入りながら日本盤ではすでに4曲が入っていたので我々にはあまりおいしくない」と書かれているが、その日本盤のボートラ4曲のうち「It's Looking Good」(ファースト・アルバム収録曲の別バージョン)は今回収録されておらず、代わりにライヴ演奏の「Under My Skin」が入っている。なので、96年版の日本盤を持っている僕のようなファンでも、2曲の新曲(実際には「Under My Skin」は当時のシングルのB面曲だったようだが)が聴けるということだ。ちなみにそれらのボートラのうちの最初の曲「Lullaby」は、わずか30秒という演奏時間とそのナンセンスな歌詞から考えると、これはビートルズでいうと「The End」のパロディとして96年版のUKオリジナル盤にも入っていた曲なんじゃないかと思ってるんだけど。

しかしそれにしても、こないだ書いたティアーズ・フォー・フィアーズの再発版CDもそうだったけど、旧版に入ってたボートラの一部を新版に入れないってのはなんでかね。旧版を中古市場に流出させないようにってことなのか?買い替えじゃなくて買い増しになってしまうんで、ただでさえCDが増えすぎて困っている僕みたいな人には非常に不便なんだけどな。まあ今回のはジャケも違うし、旧版にはちゃんと綺麗な歌詞カードも付いてたから、旧版の全ボートラが新版に収録されていたとしても旧版を売っ払うつもりはなかったけどね。

アルバム冒頭の「Major Happy's Up And Coming Once Upon A Good Time Band」はそのタイトルを見ても容易に想像が付くとおり「Sgt. Pepper's Lonely Hearts Club Band」のパロディ。「軍曹」を「少佐」に格上げし、「ペッパー」を語感の似た「ハッピー」に、そしてきっと67年当時に初めてこのタイトルを聞いた人たちは「なんて長ったらしくて変なタイトル!」と思ったに違いないビートルズの曲名のややこしさ感までも引き継いだ(しかも長いだけであんまり大した意味のないところがまたいい!)、タイトルからして実に秀逸なパスティーシュだ。

ビートルズの『Sgt. Pepper's』のアルバムがそうであるように、その曲からメドレーで繋がる2曲目は「With A Little Help From My Friends」を真似た「Rendezvous」(タイトルは似てないけどね)。この曲の歌詞は、『Anthology』プロジェクトで陽の目を見たジョンの未発表曲「Free As A Bird」について、きっとジョンなら他のメンバーにこんな風に言ったんじゃないだろうかと思わせる会話調になっている。この曲に限らないけど、ラトルズの音楽って、ビートルズについて(曲に限らず)沢山の知識を持っていれば持っているほど面白くなる、とても奥の深いものだ。もちろん、そんなマニアックなことまで知らなくたって、「この最初の2曲は『Sgt. Pepper's』の冒頭のパロディだな」ってわかるだけでも楽しいし、もっと極端なことを言えば、ビートルズのことなんて知らなくたって、これだけ彼らの名曲に似せて(単なる物真似でなく)作られたポップな曲の数々は充分に堪能できるはず。

このセカンド・アルバムは映像なし・音のみのプロジェクトということで、エリック・アイドルは不参加。それでもニール・イニスという人もモンティ・パイソン流のギャグセンスを持っているということがよくわかる歌詞もまた最高。例えばちょっと「Nowhere Man」風の3曲目「Questionnaire」では、街頭アンケートの立場でこんなことを歌っている。

 この低脂肪ダイエット・シャンプーについてどう思われますか
 1.ジャリジャリする 2.半分ジャリジャリする 3.全然ジャリジャリしない


まあ、ここだけ抜き出してもその可笑しさはよくわからないかもしれないけど、このどうでもいい変なものについての質問といい、意味のない紋切り型の選択肢といい、どういう答えであろうが自分はただの質問表なので気にしないという無表情さが面白い。

4曲目の「We're Arrived! (And To Prove It We're Here)」は、イントロの飛行機の着陸音のSE(サウンドエフェクト)で「Back In The U.S.S.R.」のパロディだとわかるが、演奏が始まってすぐにメンバーが笑ったりして、一旦演奏を止めてまたやり直す。これは、先述のビートルズ『Anthology』に演奏中にメンバーが笑ってしまっているものや演奏ミスをしてやり直しているものまでが含まれていたことのパロディ。しかしそれをわざわざこの冒頭にSEの入った曲でやるというのが可笑しい(失敗した演奏にSEは被せないだろうが!・笑)。そのギャグがやりたかっただけの曲なんだろうなということがよくわかる歌詞がまた笑わせる(タイトルどおり、「俺たちは到着した!俺たちがここにいるってことを証明するために」なんてことを繰り返してるだけ)。

だめだ、このまま全曲解説してしまいそうだよ(笑)。こんなの読んでるだけの人にはちっとも可笑しくないだろうから、あと2〜3曲だけにしとくね(まだあるのか、って思った人がいるね?でも延々と全21曲について書くよりはマシでしょう)。

順番はバラバラになるけど、96年版でも07年版でもボートラとして収録されている18曲目の「Baby S'il Vous Plait」は、ファースト・アルバムに入っていた「Baby Let Me Be」のフランス語バージョン。これは、ビートルズが初期のシングル曲をドイツ向けにドイツ語でも録音していたことのパロディ。本家と違うのは、このフランス語バージョンの歌詞は「僕フランス語がわからないから、英語でしゃべってください」とか言ってるだけってこと(笑)

14曲目「Shangri-La」のイントロでちらっと奏でられるメロディがあるんだけど、これはこの96年当時破竹の勢いだったオエイシスの「Whatever」という94年のヒット曲のメロディに聞こえる。でも実はこれ、ニール・イニス自身が73年に発表した「How Sweet To Be An Idiot」という曲のメロディと全く同一。こんなところでこそっと「みんなが好きなあのヒット曲、実は僕の曲のパクリなんだよ」って言ってるみたい。この「Shangri-La」は後半「Hey Jude」風の盛り上がりを見せるんだけど、そこでニールがまたさっきのメロディを(今度は「Whatever」の歌詞付きで)歌うのが痛快。

アルバム本編の最後となる16曲目の「Back In '64」は、そのタイトルから連想できるように「When I'm 64」のパロディ。出だしこそくすっと笑わせる歌詞だけど、これは(ビートルズの時代でもあった)64年を懐かしむしみじみとした歌詞を持った曲。ああ、笑わせるだけでなく、こんなしんみりした気持ちにもさせてくれるんだと、また感心。

さっきも書いたけど、この人たちの魅力って、ビートルズのことをよく知っていれば知ってるほどよりよくわかるんだけど、だからといって敷居が高い音楽じゃない。今さらビートルズ、なんて思ってちゃんと聴いていない人もいるかも知れないけど、逆にこっちから入ってみて、元ネタとしてのビートルズにたどり着くというのもアリかも。ボートラ以上に今回の新装版が魅力的なのは、その値段。今回はEMIゴールドという、EMIの廉価レーベルからの発売なんだけど、上にアフィリエイトしたアマゾンでも1171円。僕はオークランドで新品未開封を700円弱で手に入れたよ。

The Rutles (1st - Orig).jpg The Rutles 『The Rutles』

今回この記事を書こうとしていろいろ調べてて気づいたんだけど、彼らのファースト・アルバムがオリジナルのデザインで紙ジャケで再発されていた。LPに付属していた16ページのブックレット付きだって。僕はもう紙ジャケにはあまり惹かれないんだけど、これは欲しいな。あ、でも音源は今僕が持ってるものと同じで、リマスターもされてないのか。どうせならリマスターしてからLPと同じ曲順にすればいいのに。しかも3192円!『Archaeology』の良心的な価格設定に比べて、何だよこれ。ちょっとなにかとケチがつきすぎて気が引けてしまうなあ。まあでも、自分の持ってるCD/レコードしか写真を載せないという縛りのこのブログに写真を載せてしまったからには、買うしかないか。廃盤になるまでに買って、自分でオリジナルLPの曲順に入れ替えたCD-Rを作ってこのジャケに入れておこうっと。
posted by . at 21:28| Comment(19) | TrackBack(0) | アルバム | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする