2016年12月04日

Tamas Wells live in Shenzhen

中国に住んでてよかったと思えることなんてそう滅多にあるもんじゃないけど、これだけはひそかに期待していた。そして、思ったより早くその期待は実現した。今のところ最後の来日になる2014年6月から約2年半、ここ中国でタマス・ウェルズのライヴを観る機会がまた巡ってきた。

会場は地下鉄の橋城北駅から徒歩すぐのなんだかおしゃれな地域。A1、A2…とブロックごとに名前のついた一角にあるB10 Liveという名前のライヴ会場は、何故かB10ブロックではなくC2ブロック全部を占める、思ったより大きなハコだった。橋城北はうちから電車一本で行けるものの、万が一迷うといけないと思ってかなり早めに家を出ておいてよかった。改装工事中だったB10ブロックにまずたどり着いたときには、一体何がおこっているのかと焦ってしまった。

そうして迷いながらも開場の1時間も前にB10 Liveに来てみてびっくり。もう既に何十人も並んでるよ。整理番号も何もないから、とにかく並んだ順に入場。慌てて近くのバーで重慶の辛い麺と生ビールを腹に入れ、会場に戻って列の最後尾に並ぶ。これじゃ、ちょっと期待していた最前列なんてとんでもないな。

開場時刻の20時になる結構前(10〜15分ぐらい前かな)に、列がどんどん動き出す。きっと、あまりに列が長すぎて、早めに開場することにしたんだね。綺麗な作りのロビーに入っていくと物販エリアがあって、おなじみのタマスのCDと並んで見たことのない安っぽいジャケの09年北京公演のCD/DVDが売っていたから、迷わず購入。見るからに海賊盤ぽいんだけど、ちゃんとポケットレコーズから出てるオフィシャル盤なんだね。おまけにバッヂももらえてうれしい。

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だだっ広い会場に入っていくと、もうステージ前には人がびっしり集まっていて、左右の壁に沿って置いてある椅子もほとんど埋まっていた。まだ開演まで30分以上あるし、中途半端に真ん中あたりで見るよりはいいかと思い、左側の壁沿い中ほどの椅子に腰かけて待つことにした。会場の広さは、そうだな、東京でいつもタマスが使う会場で言うと、O-nestを縦に三つつなげて、天井を体育館並みに高くしたぐらい?

その大きな会場が、開演時刻の20時半近くになるともうほぼ満員。後ろの方に若干の余裕があったとはいえ、あれはたぶん600〜700人ぐらいは入っていたんじゃないかな。もちろん、座ってる僕の目の前にももうたくさん人が来ていたので、とても座ったままじゃ観られない。

ステージを見ると、マイクスタンドが2本、アコギとエレキ、キーボードが左右2台、後ろにはドラムキットもある。事前にどのサイトを見ても参加メンバーがわからなかったから、きっと今回はタマスのソロかと思っていたんだけど、バンドなんだね。ドラムまであるということはネイサンも来ているだろうし。あとは、前回来日時と同じくアンソニーとクリスかな。それともギターはキムかな。

20時30分ちょうどに中国語と英語でアナウンスがあり、会場が暗転。ものすごい大歓声に迎えられて、タマスと2人のメンバーが登場。ネイサンはドラムキットのところでなくステージ右手に行き、置いてあったフェンダージャガーを肩にかける。ドラムの人は誰だろう。新メンバーかな。アンソニーもクリスもキムもいないや。結構長く伸びた髪の毛をきちんとセットし、グレーのジャケットを着たタマスは、いつものマーティンのアクースティックギターを持ってステージ中央に。

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オープニングは「Vendredi」。歌い始めた途端、僕のすぐそばで「キャーッ」と大声を張り上げる女性ファン。すごいな、日本でのタマスのライヴじゃ想像もできないよ。何人かはタマスに合わせて歌ってるし。まあ、ステージで何が起こってようとずっと友達同士でしゃべり続けてるようなのもあちこちにいるんだけどね。まあいいや、中国のライヴがこんなんだってのは前からYouTubeとか見てわかってるから、こっちは集中してステージを観てよう。

「Writers From Nepean News」の後、タマスが中国語で自己紹介。「こっちは友達のネイサン。友達は“朋友”でよかったよね?」って言うだけで大歓声。そして「こっちのクリスは友達じゃない」と笑わせる。あ、この新キャラもクリスって名前なのか。タマスたちよりちょっと若い感じかな。彼はドラムス、キーボード、メロディカ、ウクレレ担当。あと例のチーンって鐘も。

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「真夏のメルボルンから南京に着いたら雪が降ってたんだ。深圳はなんていい気候なんだ」とか言いながら、セカンド以降の4枚のアルバムから満遍なく選曲されたセットが進む(セトリは最後に)。新譜からの「The Treason At Henderson's Pier」の後、「最近覚えた曲があるんだ。うまく歌えるかどうか自信ないけど」と言って、なんと中国語の歌を披露。もちろん大歓声。そして見渡す限りのスマホ動画撮影者。後で調べたら、「宝貝(Baobei)」って曲だった。これがオリジナル。これがタマスのあの声で歌われるのを想像してみて。



「誰か二人、ステージに来て手伝ってくれないか。口笛の吹ける人がいいんだけど」というのはもちろん「A Riddle」の時。うち一人はどうやら曲を知らなかったようで、例の口笛のフレーズをタマスが主旋律を歌ってる横でずっと吹いてるもんだから、歌ってるタマスも聴いてるこちらもちょっと苦笑い。まあでも、よくできました。

さっきクリスがいろんな楽器を担当してると書いたけど、もちろん彼が動くときはネイサンも別の楽器を担当する。器用な彼のことだから、ギター、キーボード、ドラムスそれぞれそつなくこなし、タマスの声に合わせてハーモニーを入れる。タマスは基本的にギターで、「Melon Street Book Club」をはじめ数曲でキーボードも弾いてたな。

久しぶりに聴く曲はいくつかあったけど(基本的に彼のライヴを観ること自体が2年半ぶりなので何でも久しぶりなんだけど)、新曲はないし、こんなの聴いたことなかったってのはさっきの中国語の曲だけ。曲の紹介にしても、タマスがまたこの話をし始めたなと思った時点でもう次が何の曲かわかってしまうから、「人間には理性に支配されている面ともっと内面から出てくるところがあって」という話をしたときに、あ、次は「Valder Fields」だと先に読めたんだけど、いざタマスがその曲目を口にすると、それはもうものすごい大歓声。そして、大合唱。うわ、こんなタマスのライヴ初めて。

「Valder Fields」の次に「The Northern Lights」と、僕内タマスソングベスト3のうち2曲みたいなのが続く。残る1曲も今回のツアーで演奏していることは知っていたから、もしかしたら本編終盤のここで3曲続けて演るのかなとも思ったけど、本編ラストはまた「何人かステージに来てくれないか。今度はコーラスが要るんだ」と、「I'm Sorry That The Kitchen Is On Fire」。タマスはもう「次の曲はThe Kitchen Is On Fire」としか言わないね。実話だかどうだか結局よくわからない例の逸話ももう紹介しないし。

男女2人ずつ、それぞれみんな背の高さの違う子たちがステージ左手のマイクのところでスマホに歌詞を映しながらコーラス。違うところから上がってきてたから友達同士じゃなかったんだろうけど、なんだか絵になるね。僕ももっと前にいたら手を挙げてステージに上がりたかったんだけど、残念ながら十数メートル離れたこの壁際から中国人をかき分けて前進する勇気はなかった。いきなり(おそらく)会場内最年長みたいな日本人が出て行ってもみんなびっくりしただろうし。

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それが本編ラスト。3人がステージ脇に消えると、すぐさまアンコールを求める歓声。でもこっちの人は「アンコール!」って言うだけで拍手とかしないんだね。そして、すぐに再登場。タマスはキーボードのところに行き、ネイサンがエレキ、クリスがドラムで始まったのは「Fire Balloons」。僕にとってのタマスソングベスト3の三つ目。これ確か前のツアーじゃ演ってないから、ずいぶん久しぶりに聴くことになる。

そしてこれが、ものすごいバージョンに化けていた。タマスが歌い終えた後、キーボード、ギター、ドラムの三つの楽器がそれぞれ同じフレーズを延々と繰り返しながら、どんどん高揚していく。クリスのドラムなんて、決して上手くはないんだけど、どこのハードロックバンドかというぐらいの激しさ。右腕をぶんぶん振り回して憑りつかれたように叩き続けている。

確か前回のツアーでは、エフェクターを通したクリス・リンチのギターの音と、ネイサンがiPadやらなんやらで出す効果音が不思議な空間を作っていたんだけど、今回はまた違った意味で、聴いているこちらの神経が麻痺してしまうようなドローン効果を生み出していた。まさかタマス・ウェルズのライヴでこんな爆音を聴くことになろうとは。

果てしないと思われた「Fire Balloons」でもう終わりだろうと思っていたら、最後は3人が真ん中のマイクに集まって、タマスのギター、クリスのウクレレ、3人の声だけで「Grace And Seraphim」でエンディング。ああ、これは美しいラストだな。

1時間半があっという間だった。しばらく会場にたむろしていたら、楽器を片付けに来るタマス達に会えるかなと思ってたけど、警備員に追い立てられてしまった。しょうがないので会場の外へ。物販には長蛇の列が。開演前に買っといてよかったよ。

外にもしばらくいたんだけど、たぶんまだ数百名残ってるこの場所でたとえタマス達に会えたとしても、とても話なんてできないだろうから、楽しかった余韻を味わいながら地下鉄の駅に向かった。

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後日談:タマスとネイサンにライヴの感想と撮った写真をメールしたら、2人から「会えると思って終演後に外を探したのに」って言われてしまった。ああ、そうだったんだ、もったいないことをした。新メンバーの名前はクリス・ヘルム(Chris Helm)といって、子供が生まれたばかりのクリス・リンチの代わりの参加だそうだ。でも、クリス・リンチが戻ってきたとしても、もう一人のメンバーよりはキーボードも上手く、ドラムも叩けるクリス・ヘルムが外れることはないんじゃないかな。この先、あの人懐っこいアンソニーに会えることはもうないのかなと、ちょっと淋しくなってしまった。


Setlist 27 November 2016 @ B10 Live Shenzhen, China

1. Vendredi
2. Writers From Nepean News
3. Thirty People Away
4. Lichen And Bees
5. Melon Street Book Club
6. The Crime At Edmond Lake
7. The Treason At Henderson's Pier
8. 宝贝
9. A Riddle
10. Signs I Can't Read
11. England Had A Queen
12. Never Going To Read Your Mind
13. Bandages On The Lawn
14. Moonlight Shadow
15. I Left that Ring On Draper Street
16. The Opportunity Fair
17. For The Aperture
18. Valder Fields
19. The Northern Lights
20. I'm Sorry That The Kitchen Is On Fire

[Encore]
1. Fire Balloons
2. Grace And Seraphim


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2016年01月11日

Other live performances in 2015

去年は32のライヴに行った。単純平均すると一月あたり2回より多く3回よりは少な目という感じか。これを読んでくれている人から見ると多いのか少ないのか、微妙なところかも。ただ、気に入った人を何度も観に行くということが多いから、実際観たアーティストはそこまで多くないんだけどね。たとえば、マット・ジ・エレクトリシャンは去年二回来日して、僕は東京近郊で観られる5回全部を観たし、グレン・ティルブルックも来日4公演に加えてUKでもスクイーズで観たから合計5回。32回のうち約1/3はその二人ということか。

3月末にグレンのライヴを観てそれまでほぼ休眠状態だったこのブログを立ち上げなおしたので、それ以前、去年初頭のライヴについては何も書いていないし、それ以降に観たものでもいくつかは忙しかったりとかいろんな理由でパスしてしまったものもあったので、完全に闇に葬り去ってしまう前に、それらのライヴについて覚えていることを少しずつ書いておこう(実際は2014年の後半にもブログに書いていないライヴにいくつか行っているんだけど、そこまで網羅するのも大変なので、あくまで去年一年間のレビューということで)。記憶の片隅をこそげ落としながら書くことになるので、大したことは書けないとは思うけれど。


1月12日 Haruka Nakamura @ 永福町 Sonorium
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今からちょうど一年前の三連休の最終日。初めて観るタイプのライヴ。リサイタルっていえばいいのかな。開始前には、寝てしまうんじゃないかなんて不安がっていたのが嘘のような、とても贅沢な時間を過ごした。ピアノと、いくつかの弦楽器と、厳かなコーラスと、蝋燭の炎。美しいものを経験すると、なんだか人間が一回り成長した気分になるね。実際にはそんなことなくてもね。機会があればまた観てみたい。


2月7日 Radical Face @ 光明寺
2月15日 Radical Face @ Nui

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インパートメント関連が続く。ラディカル・フェイスも、来日したら東京でのライヴには全て足を運んでいるアーティストだ。『Family Tree』の二作目お披露目ツアー。前回のジャックとジェレマイアに代わって、ヴィオラ・ダ・ガンバ奏者であるベンのパートナーのジョシュが同行。光明寺と浅草Nui、どちらも甲乙つけがたい素晴らしい夜だった。『Family Tree』最終作がもうすぐ出るから、また近いうちに来日してくれるかな。


3月1日 The Pop Group @ Liquidroom
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まさかポップグループを観られる日が来るなんて。思えば34年前に『For How Much Longer Do We Tolerate Mass Murder?』を聴いたのが、僕が音楽にここまでのめり込むことになったきっかけだった。ライヴではそのアルバムから一曲も演奏されなかったのが心残り。と思っていたら年内に再来日。残念ながら出張と重なってしまったんだけど、そこではセカンドアルバムからも演奏したというから、悔しさひとしお。


3月23日 Dylan Mondegreen @ 月見ル君想フ
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いつの間にか来日が決まっていて、慌ててチケットを押さえた記憶がある。別に新譜が出たわけでもなかったのに。作成中だというニューアルバムからも数曲演奏したけれど、ちょっとどれも印象が薄かった気がする。もうそろそろ出るのかな。前座として演奏した、台湾から来日したフォー・ペンズもよかったけど、僕にとってのこの日の一番の収穫は、一番手でステージに上がったシュガー・ミーを知ったこと。


3月26日 The Soft Machine Legacy @ Billboard Live Tokyo
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たまに来るビルボードの無料チケット。なかなかタイミングが合うことがないんだけど、今回は他に予定がなかったので行ってみた。きっと、現メンバーの中では古参のドラマー、ジョン・マーシャルが来られなくなったので、席が埋まらなかったんだろうな。時々知ってる曲はそれなりに楽しめたけど、なんだかやっぱりちょっと敷居が高いよ。ソフト・マシーンのアルバムならもっと楽しいのにな。


6月27日 Seth Walker @ Cafe Goatee
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3月末からは順調にブログも復活してたのに、6〜7月にライヴがかなり立て込んできた時にこれが抜け落ちてしまった。全然知らないアーティストだったけど、ゴーティの松本さんのお勧めで最新アルバムを買い、ライヴにも行ってみた。昨今の僕にとってはちょっとブルーズ風味が強いかなとも思ったけど、まあ、この手のアーティストで松本さんの推薦に外れはないからね。ふらっと行ってみてよかった類のライヴ。


11月8日 Anglagard & Anekdoten @ New Pier Hall
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カケハシ・レコードのおかげで、去年中盤はずいぶんとプログレ趣味に揺り戻したものだった。アネクドテンは昔のCD一枚しか持ってなかったし、アングラガルドはその時点では試聴しかしたことなかったのに、ユニオンのプログレ館でまだ比較的いい席が空いていたのでついチケットを買ってしまった。ダブルヘッドライナーということで、フルセットのライヴが二本。堪能できたけど、疲れたよ。脚を伸ばせる席でよかった。


12月18日 Yo La Tengo @ O-East
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なんだかんだでヨラテンゴを観るのもこれで三度目。相変わらず曲名はほとんど覚えられないんだけどね。今回は初期メンバーのギタリスト(ペダルスティールなども)も参加して、新作からのカバー曲を中心に(ほとんど知らない曲ばかりだったけど)いつものような爆音やアイラのキレッキレのアクションもなく、穏やかに和やかに過ごした二時間。こういうヨラもいいね。ジェームズにはもう少し歌ってほしかったけど。


これらと、ブログに書いた23のライヴが去年一年間に観たもの。今年はもう決まっているのはまだ一つだけだけど、今週あたりからちらほらと行きたいライヴの情報が出始めてきたので、そろそろまた手元に何枚ものチケットが集まってくる気がする。
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2015年09月14日

期待値超え - Squeeze

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Squeeze 『Cradle To The Grave』

もうほとんど休止状態だったこのブログを半年ぶりに更新してみようという気にさせてくれたのは、今年の3月のグレン・ティルブルックの来日公演だった。そして、それ以前もその後も、もはや自分が行ったライヴの記録メモとしてしか機能していないここに、調べてみたら2年8か月ぶりにアルバムについて書いてみたい、いや書かずにおれないと僕を奮い立たせたのも、やっぱり同じ人(たち)だった。

新曲からなるオリジナル・アルバムとしては1998年の『Domino』以来17年ぶりとなるスクイーズの新作。2007年の再結成以来、過去曲の再録やライヴ盤、ライヴ会場での録音即売盤、デモ音源集など、マメに追いかけようと思ってもとても全部は集めきれない(特に膨大な数の即売盤)ほどのアイテムが出ていたし、グレンはその間も何度も来日してくれていたから、17年なんてブランクはもちろん感じなかった。

あのときのメンバーをスクイーズと呼ぶのが適切なのかどうかいまだによくわからない『Domino』は申し訳ないけど中途半端な出来のアルバムだった。そして、今回のアルバムに収められることになるいくつかの曲の原型は、2012年の即売盤やデモ集、そして今年初頭のグレンのソロライヴでも披露されていたから、ある程度の内容は想像がついていた。またしても申し訳ないけど、どの曲の原型を聴いてもまあそこそこの出来だよね、という程度の感想しか持っていなかった。

8月13日にスクイーズのサイトでこのCDが1000枚限定で発売されるとの告知。何が限定なのかさっぱりわからなかったけど、躊躇なく注文。送料も含めるとべらぼうな値段になったけど、しょうがない。これまでも決してセンスのいいジャケばかりじゃなかったスクイーズの歴代のアルバムの中でも群を抜いて酷いジャケだけど、それもしょうがない。なんだかわからないけど限定らしいから、またこれが入手不可能なんてことになったらえらいことになる。

先週末、出張から戻ってきた僕の目の前には、見覚えのあるQuixotic Recordsのロゴの入った封筒が。やった、届いた。8月28日の発送開始から約二週間だから、たぶん日本では一番早く入手できた中の一人なんじゃないかな(ドヤ顔失礼)。

上にもリンクを貼ったアマゾンには10月9日発売と書いてある。しかも予定価格は僕がサイトから買った値段(送料込み)の半値ほどだ。むう、限定じゃなかったのか? じゃあ僕の手にしているこのデジパックが限定? それともこのブックレットとは別に入っている切符のレプリカみたいなのが限定? まあなんだかよくわからないけど、とにかくオフィシャル発売の一か月以上も前に入手できたんだからよしとしよう。

さて、ここからは中身について書くから、オフィシャル発売を待って買おうと思ってる人や、スクイーズのサイトからまだ届いてない人で、もしネタバレが嫌ならここで読むのをやめてもらったほうがいいね。


裏ジャケに書いてある全12曲中、これまでなんらかの形で聴いたことのあるタイトルは「Cradle To The Grave」、「Beautiful Game」、「Top Of The Form」、「Haywire」、「Honeytrap」、そして、アルバム先行シングル(盤は出てないけど)としてPVが出回った「Happy Days」の6曲。今年のグレンのソロライヴで、ニューアルバム用の曲と言って演奏した何曲かのタイトルがないね。

いろんな形でもう何度も聴いてきたオープニングの「Cradle To The Grave」の、これは新録。そこから間髪入れずにどんどん曲が繰り出されてくる。初めて聴く「Nirvana」も悪くない。グレンのライヴで聴いた「Beautiful Game」がこんなにいい出来に仕上がってるなんて。そして、久々にスクイーズらしいシングル曲「Happy Days」。

10月に出るLPは2枚組で、ここに収められた12曲がA〜C面に4曲ずつ収録されるのにリンクして、このCDでもそれぞれ4曲ずつがほとんど曲間なしでつながっている。スクイーズにしては珍しい作りだね、こういうの。でも、そういうつなぎも曲順もよく練られてるよ。プロデューサーがグレンとローリー・レイサムだけど、ローリーのいつもの過剰なまでの装飾音とかはうまく抑えられてる。ちなみにLPのD面はボートラ4曲収録予定。

一昨年に出たグレンの『Happy Ending』がやっぱりグレン本人とローリーの共同プロデュースで、正直言わせてもらうと僕にはあのアルバムはそこそこの出来の曲をローリーならではのオーバープロデュースでなんとかやっつけた、若干いただけないアルバムだった。大好きなグレンのアルバムをけなしたくはないんだけど。すごくよかった来日公演のメモリアル盤でもあるし。

でも、今回のアルバムは曲と音作りのバランスが非常によく取れている。さっき書いた曲間のつなぎはあくまでもさりげなく、余計な音はきっぱりと省かれて、そしてなによりも、やっぱり曲がいいよ、今作は。いや、そりゃ「Another Nail」とか「Up The Junction」みたいなのが入ってるかと言われたら、そんなのは最早ないものねだりに近いから無茶言うなってなもんで。それでも、この12曲中、少なくとも半分は僕はライヴで何度も繰り返して聴いてみたくなる曲ばかりだ。そんなバランスのアルバムをスクイーズが出したのって、一体いつ以来だ?

音の感触が何かに似ていると思ったら、『Pandemonium Ensues』だ。ああ、それで僕はこのアルバムを一回目からこんなに好きになってしまったんだな。なんでそんなに似てるんだろうと思ったら、あ、そうか。演奏メンバーがほぼ同じなんだよね。ベントレーが辞めて代わりのベーシストがルーシーになったと聞いたときにはあまりにも予定調和というか、またクリスが拗ねて辞めてしまうんじゃないかと危惧してしまったもんだけど、たぶんサイモンとスティーヴンにとっては、ルーシーのベースの方がしっくりくるんじゃないだろうか。きっと、グレンも。

演奏メンバーが「ほぼ」同じと書いたのも、ブックレットに書いてあるクリスの担当楽器がアコギだけなのに対して、グレンはリードギター、ムーグ、アイパッド、ムーグベース、チェレステ、ティンパニ、ウクレレ、オルガン、パーカッション、ベース、ミニムーグ、シタール、エレクトーン、ストリングス。ついでにスティーヴンはウーリッツァー、ピアノ、オルガン、チェレステ、シンセ、メロディカ。リズム隊の2名は省略するけど、このバンドの音ほぼグレンとスティーヴンで作ってるようなもんだよね。

演奏面でクリスの影が薄いのは今に始まったことじゃないけど、今回ちょっとあれ?と思ったのは、歌詞があまりにもストレートなこと。「Happy Days」なんてPVで観たときにクリス作だなんて信じられなかったほどのあっけらかんとした能天気な歌詞。きっとどこかに僕が聴きとれなかったオチがあるに違いないとブックレットを追ってみたけど、肩すかし。変化球を待って打席に立っていたら、予想外のストレートで見逃し三振。みたいな感じ。

強いて言えば、若者のリビドーを描いた「Haywire」なんかはいかにもクリスが書きそうなタイプの曲かもしれないけど、それにしても彼がこれまでに書いてきた数々のDVや離婚やアル中や猟奇殺人についての曲に比べると、おとなしいよね。まあ、まだ歌詞までじっくり読みながら聴いたのは数回だけだから、これからちょっと深読みしつつ繰り返して聴いていこう。

2012年以降にいろんな形で聴いてきた曲が沢山と書いたけど、曲がりなりにもシングル扱いだった「Tommy」がないなとは思ってたんだ。だから、LPで言うところのB面ラスト、これも新録の「Top Of The Form」の次にあのお馴染みのストリングスが聴こえてきたときにはびっくりした。「Sunny」って、タイトル変えたのか。このアルバムはBBCの同名ドラマのサントラということだから、その登場人物か何かにちなんで変えたんだろうか。これからライヴでこの曲を歌うときは、どっちの歌詞で歌うんだろう。

すっかりかっこよくなって出直してきた「Honeytrap」(デモ集のときは二単語だったのに、微妙にタイトル変更)に続いての「Everything」ってなんか聴いたことある。と思ったら、これグレンがライヴで演ってた「You」じゃないか。歌詞も替わって、タイトルも変更したんだね。

なので、グレンが年初にライヴで披露したにもかかわらず結局ボツになったのは、「Wait」だか「Weight」だかタイトルがわからなかった、ピアノで弾き語りをした曲だけ。結局あの曲名の謎は解けないままか。このアルバムのアウトテイク集が出るのは何十年後のことだろう。

ふう、もうだいたい書きたいことは書いたかな。まだ届いて二日で10回も聴いてないから、これから聴き込んでいったらまた新たな発見とかあるかも。感想も変わるかもしれないし。そのときは追記しよう。

そうそう、ひとつ嬉しく思った発見があった。ブックレットの最後、山ほど書いてあるサンクスクレジットの中に、ジュールズ・ホランドの名前が。しかも、クリス単独のところじゃなくてグレンとクリス連名のところに。なんかちょっと歩み寄りがあったのかな。聞くところによるとジュールズのレイターにスクイーズが出演するらしいから、激久し振りにジュールズ入りスクイーズの演奏が観られるんだね。はやくネットに上がらないかな。


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2013年01月06日

一子相伝 - Ethan Johns

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『If Not Now Then When?』

後に自分の人生に関わってくる人と、知らなかったけれど実はずっと昔に出会っていたなんてことがたまにある。話をしていたら、実はその人と僕は幼稚園で同じ組にいたということがわかって、ずいぶん昔の写真アルバムを引っ張り出してきたなんてこともあったなあ。

ジョン・ハイアットの出世作『Bring The Family』に続く1988年の『Slow Turning』が僕の大のお気に入りアルバムだということは、ずっと昔にサニー・ランドレスを特集した記事に書いたことがある。今ではもう何十枚になるのかわからないほどコンスタントにアルバムを出し続けているジョンの全作品の中でも、僕の中ではトップ3に入るほど大好きなアルバム。

そのアルバムのプロデューサーが、有名なグリン・ジョンズだったことは当時から意識していた。まだ僕が洋楽を聴き始めた中学生の頃、カリフォルニアのバンドであるイーグルズの初期のアルバムがからっと陽気なカリフォルニアサウンドでなくどことなくくぐもった音なのは、英国のプロデューサーであるグリン・ジョンズの仕業だということを何かで読んで、それまで何のためにいるのかよくわからなかったプロデューサーという役割を把握し始めたきっかけになった人だから。

でも、サニー・ランドレスや(今思うとグリン・ジョンズ人脈だったんだろう)初期イーグルズのバーニー・レドンなんていう豪華ゲストに混じってクレジットされていたイーサン・ジョンズという名前には、そのときは特に目を留めることはなかったし、ましてやその彼が、同姓のプロデューサーの息子だなんてことは当時は知らなかった。

そのアルバム、そして翌89年の『Stolen Moments』(これもグリン・ジョンズのプロデュース作)でギター、ドラムス、マンドリンなんて多彩な楽器を演奏していたイーサン某のことを僕がはっきり意識するようになったのは、それから17年も経ってからのこと。このブログを始めたばかりの頃に書いた記事で取り上げた、レイ・ラモンターニュの『Till The Sun Turns Black』にプロデューサーとしてのみならず、マルチ・プレイヤーとして主役のレイと共にほとんどの楽器を演奏していたのを知ったときだ。

その記事にも書いてあるけれど、今に至るまで大好きなそのアルバムがあれほどまで素晴らしいものに仕上がったのは、プロデューサーであるイーサン・ジョンズの貢献が相当大きかった。それからだ、僕がよく知らないアルバムを買うときにこのプロデューサーの名前を頼りにし始めたのは。調べてみたら、買った当時は気にしていなかったけど僕の大好きなジェイホークスの『Rainy Day Music』もこの人のプロデュースだったし。

さらに調べてみると、この(僕の中では既に名プロデューサーの地位を得ていた)イーサン・ジョンズが、なとかの名プロデューサー、グリン・ジョンズの息子だということを知ってびっくり。ミュージシャンの子供がミュージシャンになる例は沢山あるけど(そして、ほとんどの二世ミュージシャンは残念ながら彼らの親ほどの才能に恵まれることは稀なんだけど)、親子二代で名音楽プロデューサーだなんて。

そうやってさかのぼって調べていて気づいたのが、冒頭に書いたジョン・ハイアットのアルバムクレジット。そうか、僕はこのお気に入りプロデューサー兼マルチ・プレイヤーと、もう20年以上も前に既に出会っていたんだ。気が合う人と話をしていたら、実は相手が幼稚園の同じ組だったというぐらいの驚きと喜び。


相変わらず前置きが長くなってしまった。今日取り上げるのは、そのイーサン・ジョンズが自分名義で発表した初のアルバム。ずっと裏方・脇役だった彼が意を決して表舞台に立つことを決めたものの、いざ一人でステージに立とうとすると足がすくんでしまう。果たして自分の歌なんて誰が聴いてくれるものか、本当にお客さんは入っているんだろうか、やっぱり止めておこうか、でも、今やらなければ一体いつできるっていうんだ? というタイトルとジャケ。

さっきのレイ・ラモンターニュをはじめ、彼がこれまでプロデュースしてきた数々のアルバム(ライアン・アダムスの『Gold』や『29』、ローラ・マーリンのセカンド以降、キングス・オヴ・レオンの諸作など)を知っている人なら、きっとイーサンのソロアルバムはこんな音になるんだろうな、という予想そのままの音。イーサン自身はアメリカのミネアポリス生まれのようだけど、父親のグリンはれっきとした英国人。なのにこのどっぷりディープ・アメリカンな音。

謙虚なアルバム・タイトルにしては、しっかりしたいいアルバムだと思う。曲もよく書けているし、レイ・ラモンターニュほどではないけれど、渋味のあるいい声だし。今のところ僕の一番のお気に入りは、木枯らしと雷鳴のような効果音がスローな曲調に沁みるA面ラストの「The Turning」かな。

当然のごとく殆どの楽器を自ら演奏しているが、曲によって結構地味に豪華なゲストが。さっき名前を挙げたライアンやローラはもちろん、A4「Red Rooster Blue」ではベースをビル・ワイマン、キーボードをイアン・マクラガンが担当していたりする(曲の最後で大笑いしているのは誰だろう)。B1「Rally」でベースをダニー・トンプソン、フィドルをデイヴ・スワーブリックが弾いていたりするのは、きっとお父さん人脈なのかも。1曲でクリス・ホランドがオルガンを弾いてるけど、どういうつながりなんだろうか。

あれ?と思ったのは、当然自分のアルバムは自分でプロデュースしているものと思いきや、曲によって5人のプロデューサーが別々に担当している(そのうち2人はライアンとローラ)。ライアンのトラック「Don't Reach Too Far」は彼がベースとドラムスを演奏していて、いかにも彼らしいロックンロールなんだけど、それでもアルバムを通してとっちらかった印象がないのは、イーサン・ジョンズ印のミックスのお陰か。

去年の11月にひっそりと発売されたこのアルバム、今のところLPでしか出ていないようだ(上にリンクを張ったアマゾンだと結構値段が張るけど、イーサンのサイトではもう売り切れになってるから、LPが欲しい人は金に糸目をつけてる場合じゃないかも)。来月CD版が出るようなので、一般的に話題になるのはそれからかな。ちなみにLPは(多分)180グラムの重量盤、ゲイトフォールドのジャケットに、曲毎に歌詞とイラストのついた22ページのブックレット付き。

このアルバム、かなり気に入って聴いているんだけど、残念ながらLP版にはMP3のダウンロードコードはついていないから、日常的にMP3プレイヤーとかで繰り返し聴くにはやっぱり来月出るCDも買うしかないのかな。アマゾンだとCDも結構な値段がついてるね。なんとかならないものか。
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2012年12月23日

序幕 - The Milk Carton Kids

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The Milk Carton Kids 『Prologue』

普段からバンドキャンプとかで未知のアーティストをこまめにチェックしている人たちにとっては言わずもがなだろうけど、もう昔みたいに旺盛な好奇心を持って新しいバンドやミュージシャンを探すようなこともあまりなくなってしまった僕みたいな人間にとっても、何かの拍子に誰かに教えてもらったアルバムに心をわしづかみにされてしまうような瞬間はそれでも年に何度かという頻度で訪れる。

11月にマット・ジ・エレクトリシャンのライヴで鎌倉のカフェ・ゴーティを訪れた際に、それより少し前にゴーティの松本さんがつぶやいておられたアルバムを2枚、ほとんど音も聴かずに購入した。もう最近では松本さんがどういう紹介をしたらどういう音なのかまで大体わかるようになってきた気がするからね(笑)

LA在住のケネス・パッテンゲール(Kenneth Pattengale)とジョーイ・ライアン(Joey Ryan)という二人のSSWが組んだユニットがこのミルク・カートン・キッズ。2011年1月にカリフォルニア、ヴェンチュラのゾーイーズ・カフェ(Zoey's Cafe)で録音されたライヴアルバム『Retrospect』を二人の連名で出し、同じ年にこのミルク・カートン・キッズ名義のファースト・アルバムをリリース。さっき書いたもう1枚のアルバムというのはもちろんこのライヴアルバムのこと。

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二本のアクースティック・ギターに二人のハーモニーという、まあありふれたと言えばもうこの上なくありふれたスタイルの音楽なんだけど、とにかく曲のクオリティが高い。アルバムを聴いていると、あれ?これサイモン&ガーファンクルだっけ?とか、CS&Nにこういう曲があった気がするとか、なんとなくランバート&ナティカムみたいだなあとか、そんな風に感じる瞬間が次々に現れる。もちろん、決してそれらのアーティストのマネだと言ってるわけじゃないよ。

どちらのアルバムにも「ケネスは1954年製マーティン0-15、ジョーイは1951年製ギブソンJ45を使用。どちらのギターもノリック・レンソンによって丁寧にケアされている」とわざわざクレジットされているように、ギターの音には細心の注意(と愛情)が注がれている。以前、ギター収集を趣味にしている会社の先輩がギブソンとマーティンのアコギの違いを語ってくれていたんだけど、こういうアルバムを聴くとそれがよくわかる。

「Michgan」とか「New York」とか(ライヴ盤収録の)「California」とか、やたら地名のついた曲が多い。歌詞は一通りざっと読んだけど、それほど凝ったことを歌っているわけじゃないね。ユニット名から冠詞を外して単数形にした「Milk Carton Kid」という曲があるから、何のことだろうと思って調べてみたら、昔のアメリカでは行方不明になった子供の写真を牛乳箱に印刷したりしていたんだね。ネットで調べていて、最初のミルク・カートン・キッドは30年経っても未だ消息不明とか書いてあるのを読むと、胸が痛くなる。

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でもその曲は特に行方不明の子供のことを歌っているというわけじゃなく、自分の心の痛みがミルク・カートン・キッドのようにある日突然消えてしまったというような比喩に使っているだけ。うーん、アメリカ人にとってのこの単語がどれぐらいの意味合いを持つのかよくわからないけど、なんかこんな重い言葉をそんな風に使うのかと、ちょっとそこだけは違和感を持ってしまった。

『Prologue』の作曲クレジットはすべてユニット名義になっているけど、そちらとは1曲もかぶっていない『Retrospect』の方は、結構長いキャリアを持つ二人がそれぞれの持ち歌を持ち寄った内容のようで、ほぼ交互にケネスとジョーイの曲が並んでいる。それを聴くと大体どっちがどういう感じの曲を書くのかがわかる。

相方の曲のときにはもう一人がコーラスをかぶせるんだけど、二人とも結構似た声質だからなかなか判別しづらい。と思っていたら、NPRのタイニー・デスク・コンサートで二人が演奏しているのを発見。



『Retrospect』のジャケは二人とも顔が半分で切れているし、名前が書いてある箇所と本人の写真が逆になっているから、声どころか見た目もどっちがどっちだかわからなかったんだけど、このビデオでよくわかった。背が高いのがジョーイで、ちっこくてヘラヘラしてるのがケネスと。二人とも(特にジョーイ)、真面目な顔してぼそっと可笑しいことを言うところがなんだか親近感を持てるよ。それにしても、CDを聴いてても思ったけど、「I Still Want A Little More」でのケネスのギターの凄いこと。映像で観られてよかった。

一番上にリンクしたアマゾンでは在庫切れになってるね。米アマゾンにはまだあるみたいだけど、この手のCDが何度もプレスされるとは思わないから、気になったら見かけたときに入手しておいた方が得策。カフェ・ゴーティにはまだ在庫残ってるかな? 実はこの2枚のアルバム、ミルク・カートン・キッズのオフィシャルサイトでフリーダウンロードができるようになってるんだけど、ちょっと聴いてみて気に入った人は、ぜひこの味のあるジャケを手に取ってみてほしい。ゴーティさんの売り上げに貢献して、彼らを日本に呼んでもらうというというのもありだと思うし。

そうは言っても普通の人はダウンロードで済ませてしまうのかな。でも僕はこういうことに関してはあまり普通の人ではないから、LPまで取り寄せてしまった。一番上に載せたCDのジャケとは微妙にトリミングが違うのがわかるだろうか(わかったからといってそれに感心する人は皆無だと思うが)。

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何グラムだかわからないけど手に持ったときにちょっとずっしりくる重量盤。レコードが入っているインナースリーヴに、CD内ジャケ左側の写真(ビルの高層部)が印刷されていて、その上に歌詞が載っている。スリーヴを裏返すと、反対側の写真の下側の写真になっていて、この写真だけはCD版にはない。

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この部分を見ると、アルバムクレジットにある「NY42番街グランドセントラルステーション入口」という写真の意味がわかる。まだ路面電車や馬車が走っていた20世紀初頭のNYだ。ちなみに、CDだとブックレットに歌詞と一緒に載っているジョー・ヘンリーによるライナーは、LPの裏ジャケに載っている。

このブログの偏屈なルールのせいで2011年発表のこのアルバムは来年初頭の僕のベストアルバム記事に載ることはないけれど、そんな縛りさえなければ間違いなく今年初めて聴いたアルバムの中ではトップクラス。序章・序幕という意味合いのこのアルバム、まだ若い(であろう)この二人がこれからどんどん作り出す傑作の序幕役であってほしい。と思っていたら、さっき見た米アマゾンで、1月8日にニューシングル「Snake Eyes」が、しかもメジャー系のアンタイ/エピック配給で出るということを知った(MP3だけみたいなのが残念だけど)。これはいよいよこの人たちこれから注目されるのかもね。祈来日。


<12月24日追記>

ひとつ肝心なことを書き忘れてた。アナログ盤はB面ラストに「Des Moins, IA」というボーナストラックが入った全10曲入り(また地名タイトル)。「I Still Want A Little More」での見事なエンディングの後にはちょっと蛇足と思えなくもないが、まあそれでも未発表曲が一曲でも聴けるのは嬉しいこと。
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2012年10月28日

目隠しフクロウ - Neil Halstead

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Neil Halstead 『Palindrome Hunches』

ニール・ハルステッドの新作は、これまでに増して簡素で朴訥としたアルバムになった。スロウダイヴからモハヴィ3を経てこのソロ3作目に至り、彼は自分の歌とそれを取り巻く必要最小限の音以外のものをどんどんそぎ落としてきたように見える。

それなりにポップな感触を湛えていた前2作に多少なりとも近いのは、アルバム中唯一と言っていいほどの明るいメロディを持ったアルバム2曲目「Bad Drugs And Minor Chords」ぐらいか。あとはもう、ほんとうに淡々と、簡素なメロディを、アコギ、ピアノ、ヴァイオリン、ウッドベース、バンジョー、鉄琴、ハーモニウムといった電気を通さない楽器だけで、静かに、ときに悲痛に奏でているだけ。

例えば、3曲目「Wittgenstein's Arm」(これは実話を基にした歌らしい)にはこんな歌詞がある。

  左手だけで弾ける曲を書いてくれへんか
  俺は前の大戦で腕なくしてしもたんや
  ピアノなんて最初から習ってへんかったらよかった

自殺した兄弟の描写とともにこんな悲しい独白があり、「この家には死が脈々と流れてる」と歌う。そんな歌詞さえ聴かなければ(読まなければ)これも優しげなメロディを朴訥に歌っているだけの曲なんだけどね。

かと思えば、アルバムタイトル曲「Palindrome Hunches」(回文を作る直感?)では、アイリッシュバーに座るカンザス娘のことを想い(その娘が回文好きなのか?)、回文を作っては自分で突っ込むという、そこはかとなく可笑しい歌詞も。

  ガチョウは神を見る?(Do geese see god)
  そんなことはないと思う
  ああ、悪魔がナターシャを見る(Ah satan sees Natasha)
  そう、見るね

いずれにせよ、歌詞にとらわれずに聴けば、彼の穏やかな歌声ともあいまって、実に秋の夕暮れ向きのいいアルバムだと思う。そういえば、前に作った「21世紀の秋の夜長に」というやつに、この人の前作から1曲入れてるね。僕にとっては秋を代表するアーティストだということか。

このアルバムは、通常のスタジオでの作業に飽きてしまったニールが、プロデューサーのニック・ホルトン(Nick Holton - オールミュージックで調べても彼のプロデュース作ってこの1枚だけみたい)の子供達が通っている小学校の音楽室で、2回の週末を使ってライヴ録音されたものらしい。子供達の小太鼓やら鉄琴やらトライアングルやらがそこらじゅうに沢山置いてあって、「このレコーディングで最も難しかったのは、全曲に鉄琴を入れたくなるのを思いとどまること」だったそうな。なんかわかる(笑)

このアルバム、上に写真を載せた通常盤でなく、米アマゾンで見つけた500枚限定だというアマゾン限定バージョンを買ってみた。
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見てのとおり、ノート状になっていて、内側の各ページに1曲ずつ手書き(を印刷した)歌詞が載っている。後ろの方には4ページにもわたるライナーも。
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お世辞にも読みやすい字ではないんだけど、曲によってはおそらくニール自筆のイラストなんかも載ってて、ちょっと楽しい。
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CDは最後のページにスポンジみたいなので留めてある。こういうのってたまにあるけど、なんだか中央のスポンジがすぐ劣化しそうで、ついCDの出し入れも恐る恐るになってしまうんだよね。
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このバージョン、日本アマゾンでも買えるみたいだけど、今見てみたら4270円なんてとんでもない値段がついてるね。写真いっぱい載せて自慢しておいてなんだけど、その価格ほどの価値はないと思うので(苦笑)、米アマゾンから取り寄せようという気のない人はおとなしく一番上のアフィリエイトのリンク踏んで日本で買ってください。この目つきの悪そうな(?)目隠しフクロウのイラストは同じだから。
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2012年10月21日

美ジャケ大賞 - Dylan Mondegreen

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Dylan Mondegreen 『Dylan Mondegreen』

デビュー作でなく、キャリアを積んでからのアルバムをセルフ・タイトルにすることは、そのアーティストにとってどういう意味を持つんだろう。有名どころではビートルズの白いやつがそうだし、サザンオールスターズもデビューして10年以上経ってから(ビートルズのホワイト・アルバムを意識したであろうジャケの)セルフ・タイトル作を出している。ディープ・パープルだったら全盛期前夜のサードアルバムがセルフ・タイトルだし、ヴェルヴェット・アンダーグラウンドもニコ抜きのセルフ・タイトルはサードだね。有名じゃないところでは僕の最近のお気に入りの一人、ゲイリー・ジュールズも3枚目がセルフ・タイトルだ。

一般的には、ちょっとマンネリがかってきたところで心機一転、初心に戻って「これが私の代表作」という気持ちで自分(達)の名前をアルバム・タイトルにするんだろう。まあ、そのわりには必ずしもそのアルバムがそのアーティストの代表作かというと、やや微妙なケースが散見される気がする。名前負けというんじゃないんだろうけど、やっぱり作る方も聴く方も、セルフ・タイトル=代表作みたいに構えてしまうんだろうか。

09年のセカンド『The World Spins On』から3年振りとなるディラン・モンドグリーン待望の3作目。07年のデビュー作『While I Walk You Home』から脈々と受け継がれる美ジャケの中央に、極力目立たないように薄桃色で記されたDYLAN MONDEGREENの文字が、このアルバムがディラン・モンドグリーンことボルゲ・シルネースの会心の作であることを控えめに主張している。さて、その主張が名前負けしていないかどうか、まず聴いてみよう。

前2作に比べて、若干音が派手というか、いくぶんきらびやかになった気がする。もちろん、前2作もキラキラと爽やかな音だったけれど、今回プロデューサーにイアン・カット(Ian Catt - セイント・エティエンヌ等のプロデューサー)を迎えているというのがこの変化をもたらしているんだろうか。いつも大所帯でアルバムを作る人ではあるけれど、今回もストリングス・セクションやサックス、フルート、果てはスティール・ドラムスまで入ってる(A面ラスト「It Takes Two」ではそのスティール・ドラムスがイントロで効果的に使われている)。

シェルフライフ・レコーズ所属となり、今回がアメリカでの初リリースだというのも、セルフ・タイトルにした理由のひとつだろう。あくまでもこれまでの自分の色は崩さず、でもアメリカ市場でもきっちり受けるように、有名プロデューサーを立てて、派手目の音作りにしてきている。別に迎合しているとかそれがよくないとか言ってるわけじゃない。もっと広く聴かれるべきアーティストだと思うからね。

欲を言えば、ファーストの「That Mortal Kiss」やセカンドの「We Cannot Falter」、「Deer In Headlights」など、彼独特の陰りのあるメロディーの曲が欲しかったところ。極端な言い方をすると、全曲「Girl In Grass」の亜流というか、爽やか一直線の曲ばかりがずらりと並んでいる感じがして、ひねくれ者の僕としてはちょっとひっかかりが少ない。5回ほど聴いた今のところの感想だけどね。

8月8日にシェルフライフからメルマガが届き、200枚限定だというLPを即座に注文したはいいけど、9月26日発売のそれが僕の手元に届いたのは先週の木曜日。航空便なのに。フィリピン、郵便事情悪すぎ。やっと郵便局から連絡が来て「関税がかかっているので払いに来たら渡してやる」とかいうから行ってみたら、関税とやらはたったの40ペソ(80円)だし。そんなはした金で人のLPいつまでも留めてるなよ。

いやそれにしても、手にとって間近で見るとほんとに綺麗なジャケ。これはLPにして正解だったね。ダウンロードコードもちゃんと付いてるし。と思いながらこの週末に近所のショッピングモールにあるCD屋に行ってみたら、予想通り出てるよ、フィリピン盤CDが。350ペソで。

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ダウンロードコードがあるから自分でいくらでもCD-Rに焼けるのに、CD屋でこのジャケ見たら、もうレジに持って行かずにはいられない。丁寧な作りの三方見開きデジパックだし。ユニバーサル・フィリピン、いい仕事するね。ついマサさんみたいなことしてしまった記念に、大小並べて写真を撮ってみた。このアルバムが今年の僕のベスト10に入るかどうかはまだわからないけど、ジャケット大賞とか企画したら、間違いなく一位だね。

渋谷での再来日公演には残念ながら行けなかったけど、マメに彼の全アルバムをリリースしているフィリピンにも足を運んでくれないだろうか。ユニバーサル・フィリピンに直訴してみようかな。


<10月27日追記>
うちの近所のCD屋では、このアルバムがマイケル・ジャクソンとかグリーン・デイとかに混じって店頭新譜紹介コーナーに並んでるよ。一体フィリピンの誰にそんなに人気があるのかわからないけど。
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2012年09月29日

復活の挨拶 - Squeeze

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Squeeze 『Live At Th Fillmore』

前の記事から7週間以上もブランクを空けてしまったのはこのブログを始めて以来初めてのことかも。今朝久しぶりにアクセス記録を見てみたら、全然更新していなかったこの7週間の間にも結構なアクセスがあったようで、ありがたいやら申し訳ないやら。きっと皆さん、もうここは更新されないかと思い始めた頃かもしれないね。

僕がこのブログを始めて、グレン・ティルブルックやスクイーズについてあれこれ書き始めた頃には、よもや後にグレンとクリスが仲直りしてスクイーズが再結成するなんて、ファンの誰もが(期待こそはすれ)本当に起こるとは思いもよらなかったはず。10年近くのブランクを置いて見事に復活したスクイーズにちなんで、僕の52日振りの記事は、ちょっと時期を逸してしまったけれど、彼らの最新アルバム、『Live At The Fillmore』について書くことにしよう。

07年に、元々バック・カタログと新しいベスト・アルバムをプロモートするために(当時は一時的なはずだった)スクイーズは再結成を果たし、そのときのツアーを記録した『Five Live』をリリース。その後、グレンとクリスが久々に一緒に新曲を書いているという噂に反してリリースされたセルフ・カバー集『Spot The Difference』が出たのが10年の夏。その直後に、サンフランシスコはフィルモアでのライヴ録音を収録したボーナスディスク付きのバージョンも出て、新しいのが出たらすぐ買う熱心なファンほど馬鹿を見るという経験も味わわされた。

そして、今年の4月になってオフィシャルサイト+アイチューンズ限定でリリースされたのが、今回取り上げるこのライヴ・アルバム。なんだか、再結成してもう5年も経つというのに、ライヴ盤とセルフ・カバー集しか出してないなんて、傍から見たらもう立派な金目当ての再結成レトロバンドだと思われても仕方ないよね。しかも、LP2枚組の今回のアルバムの1枚目は『Spot The Difference』の再発盤と同じ内容ときた。

3000枚限定ということだったので、アナウンスされた直後にオーダー。うちに届いたのが6月16日で、それからすぐにブログに何か書こうと思ってたのに、こんなに遅くなってしまった。ちなみに、さっきオフィシャルサイトを見てみたら、まだ入手可能みたいだね。たった3千枚が半年近くも売り切れずに残ってるなんて、全世界のスクイーズファンはもうレコードプレイヤーを売っ払ってしまったか、もしくはスクイーズオフィシャルが3千枚と煽っておいて実は3万枚ぐらいプレスしているかのどちらかだな。

『Spot The Difference』に付属していた方の10曲入りライヴ盤、あれはあれでベストヒット的内容でまあそれなりに納得はしてたんだけど、それにしても変な曲順だとは思ってたんだよね。本編の『Spot The Difference』が一見とりとめないように見える曲順でいて実はアルファベット順だったという謎解き(というほどのものでもないけど)があったから、前半に大ヒット曲ばかりを詰め込んで後半どんどん地味な曲が増え、(いくらアメリカでのシングルヒット曲だとはいえ)『If I Didnt't Love You』なんて歯切れの悪い曲で終わるなんて、いくらおまけ盤だとはいえ、なんて中途半端な選曲かと。

その謎解きは2年後にやってきたというわけ。まあ、熱心なファンはきっと当日のセットリストを調べて、先のおまけ盤は当日のライヴ前半しか収録していないということぐらいはとっくにわかっていたのかもしれないけど。というわけで、『Cool For Cats』から始まるLPの2枚目まで全部通して聴くと、この日のセットがいかに楽しいものだったかがよくわかるという仕組みになっている。

このブログで何度も書いてきたグレンのソロ・ライヴ同様、ファンなら誰でも一緒に歌えるヒット曲と、全アルバムをしっかり聴き込んだコアなファンが聴いてみたいと思うような隠れた名曲が絶妙なバランスで混ざり合っている。もちろん、一人で2時間以上にわたって30曲以上も演奏するグレンのソロに慣れてしまった身としては、あの曲もないこれも無いという気にはなってしまうけれど、それは贅沢というもの。

さっきも書いたとおり、A面トップから3曲、通常のグレンのライヴなら本編最後からアンコールにかけて演るのが定番な大ヒット曲が続く。B面での意外な聴きものは「It's So Dirty」のグレンのギターソロかな。若干荒くはあるけど抜群のタイム感で弾き倒す感じが最高にかっこいい。あとB面では『Difford & Tilbrook』アルバムから「Hope Fell Down」を演ってるのも個人的には満足。どの曲のときだったか、「小さなステージは楽しいね」とグレンが言ってるけど、フィルモアってそんな小さな会場なのかな。

LPを買ったらMP3がダウンロードできるコードが付いてくる。基本的にLPとMP3の内容は(後述する大きな違いを除けば)同じなんだけど、一点違うところに気がついた。LPはB面の最後「If I Didn't Love You」が終わったところでフェードアウト。それは『Spot The Difference』のボーナス盤と同じなんだけど、MP3バージョンだとその曲が終わって歓声がフェードアウトせずに突然次の「Cool For Cats」のイントロが入ってくるところがものすごく快感。

その曲に加え、珍しい「Someone Else's Heart」でもクリスはソロで歌う。僕は特に好きな曲でもないけど、グレンのソロ・ライヴでは当然聴くことはなかったから、この曲をライヴヴァージョンで聴くのは初めてかも。ちょっとマイナー調なその曲に続けて明るい「Mumbo Jumbo」を今度はグレンが歌うところも、スクイーズというグループの特徴をよく表しているね。

その曲から間髪入れず出てくるC面5曲目の「Up The Junction」からD面全部まで通して、再び大ヒット曲集。鉄壁。さっきの「It's So Dirty」もそうだったけど、いろんな曲でグレンが追加でギターソロを長めに入れる。調子いいときのグレンってこうだよね。

最後の「Pulling Mussels (From The Shell)」であー終わったと思っていたら、LP版は最後にシークレットトラックが。おそらく『Spot The Difference』のときのアウトテイクだと思われる、とある名曲の「Differenceだらけの」セルフ・カバー。グレンがこれぐらいのテンポで歌うのを彼のライヴで見たことはあるけど、バンド・バージョンでこうして聴くのは初めて。アイチューンズのダウンロードもいいけど、LPを買うファンのためにこういうのをちゃんと隠しておいてくれるところが嬉しいね。

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LPは4面とも違った色合いのレーベルが付いたホワイトヴァイナル。こういうのは持ってるだけで楽しくなるね。本当は色とかついてない方が音はいいのかもしれないけど、そこまで聴き分けられる耳があるわけでもなし。

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そして、LPにはおまけのポスターとかステッカーとかいろんなおまけがついてるのがまた嬉しい。CDが出ないからと躊躇しているスクイーズファンの皆さん、3000枚だか30000枚だかがなくなってしまう前にこれ買っといた方がいいよ。まあ、もうしばらく躊躇し続けてても当分なくなりそうにないけどね。
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2012年05月26日

三夜連続記事序章 - Sonny Landreth

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サニー・ランドレス 『Elemental Journey』

「サニー・ランドレスのニュー・アルバム」。思えば、88年2月にジョン・ハイアットのバックバンドの一員として来日した彼のスライドさばきを生で観て衝撃を受け、92年に今は亡き渋谷フリスコで彼の出世作『Outward Bound』を手に入れて以来約20年強、僕はどんな思いでこの言葉を常に待ち続けてきたことか。

だいたい3年から5年の間隔で発表されるソロアルバムだけでは飽き足らず、サニーがアルバム中1曲でも参加しているCDを片っ端から集め続けた結果、うちにある“サニー・ランドレス・コーナー”には既に60枚以上のCDが集まってしまっている(これでも完コレにはほど遠い)。いくつかは若干期待外れ(彼が参加している曲はともかく、他の曲がどうにも性に合わないとか)なこともあるんだけど、それでも集めずにはいられないという、もう僕にとってはとんでもない魅力を持ったギタリストだ。

08年の前作『From The Reach』は(少なくとも僕の脳内では)当然のごとくその年の個人的ベストアルバムの堂々一位に輝いたぐらい、僕にとってはもうとにかく次のアルバムが待ち遠しくてしょうがないという数少ないアーティストの一人。

そのサニーのニューアルバムが出るという話と、彼がジャパン・ブルーズ&ソウル・カーニバル2012というイベントに出演するために来日するというニュースを聴いたのは確かほぼ同時期だったと思う。そのイベントはなんと、奇跡の初来日と言われていた昨年からわずか1年で再来日となったジョニー・ウィンターとのジョイント・ライヴだという。もちろん、すぐさまサニーが登場する全公演2日間のチケットを押さえた。ライヴの模様は、うまくいけば明日・明後日に続けざまにここにアップする予定(という意味での今日の記事タイトル)。

というわけで、このブログでは本当に久々のアルバム・レビュー。ただ、5月23日に発売になったばかりで、買ってからぶっ続けで4〜5回は聴いているとはいえ、まだ存分にレビューができるほど聴き込めていないというのは容赦頂きたい。ちなみにここだけの話、本当は24日に戻ってくるはずだったブラジル出張の帰国便を一日早めたのは、発売日にこのアルバムをゲットするためだというもっぱらの噂。

ここのところずっとギターを弾く自分の写真をジャケにしていたが、今回は一転して上に載せたやたらとシンプルな、星空をバックに文字だけというジャケ。ジャケ下部に入っているサインについては後述。全11曲の今回のアルバムは彼にとっては初の試みとなる全曲インストゥルメンタル。どうしてインストアルバムになったのかなど詳しい情報は、今ちょうど本屋に並んでいるレコードコレクターズ6月号に、五十嵐正さんの含蓄のあるインタビューが載っているから興味のある人はそれを買って読んでもらえばいい。なにしろ、日本の雑誌にサニーの記事が(いくら新譜発売と来日が重なったからとはいえ)6ページも載るなんて、快挙じゃないか。

日本盤CDの帯をはじめ、ありとあらゆるところでエリック・クラプトンの名前を引き合いに出してサニーのことを紹介しているのはちょっと辟易するけど(よく引き合いに出されている「世界で最も過小評価されているギタリスト」という自らの言葉を覆すかのごとく、サニーのことを自分主催のフェスなどに頻繁に起用しているクラプトンにはとても感謝しているけれど)、まだ日本ではそうやって宣伝しないと誰も知らないようなギタリストなんだということに逆に驚いてしまう。

前作はそのエリック・クラプトンをはじめ沢山のゲストがほとんど全曲に入れ替わり立ち代わり参加していたが、今回は11曲中3曲のみ。一般的には冒頭の「Gaia Tribe」でギターソロを弾いているジョー・サトリアーニの参加が一番の話題なんだろうけど、僕にはそれほど思い入れのある人ではないのでそこはさらっと。

5曲目「Passionola」に参加しているエリック・ジョンソンって前作にも入ってたな、どの曲だっけと思って上にリンクした記事を見直してみたら、あの「The Milky Way Home」でサニーと延々ギターソロの掛け合いやってた人か。

もう一名は9曲目「Forgotten Story」に参加しているロバート・グリニッジというスティール・ドラム奏者。うん、確かになんていうんだろう、レゲエっぽいリズムのカリプソっぽい曲調。

今のところの感想を一言でまとめると、ここに入っている11曲が通常のヴォーカルアルバムに数曲ずつ入っていたら、きっともっとそれぞれが映えたんじゃないかな、という感じ。要するに、もったいない。どの曲もいつもながらの超絶スライドでメロディアスなラインを弾きまくっているし、曲によっては生のストリングスが入ったりさっき書いたように普段は使わないようなリズムに乗せたりと様々な試みをしているんだけど、それが11曲立て続けに出てくると、何故かどうにも引っ掛かりが少なくなってしまうように思える。

“通常のヴォーカルアルバム”に入っているインスト曲、それはたとえば「Native Stepson」だったり「Z Rider」だったり「The Milky Way Home」だったりするわけだけど、どれもこれも「ああ、こういう曲ばかり集めたサニーのインストアルバムをいつか聴いてみたい」と思わせるような名曲ばかりなのに、いざこうしてそういう曲ばかりを集めてみると逆の感想を持ってしまうというのは、僕が単にあまのじゃくなだけなのか。それとも、こういう優れたインスト曲は、ヴォーカル曲の間に挟まれてこそ、そのよさをより発揮するということなんだろうか。

そう、勘違いしないでほしいのは、僕はこのアルバムをつまらないと言っているわけじゃないということ。並べてみたら比較的凡庸と言えなくもない曲もあるけれど、ほとんどの曲は1曲だけ抜き出してみると相当かっこよく聴こえる。きっと、こうして11曲通して聴くよりも、ラジオとかでたまたまこの中のどれか1曲に遭遇した方が遥かに輝いて聴こえるんじゃないかな。そういう意味では、おそらく通常セット(要するにちゃんと歌も歌う)であろう今回のライヴの所々で披露されるであろうこのアルバムの曲が僕の耳にどう聴こえるか、かなり楽しみではある。そのために、ちゃんと曲名覚えて行こう(インストの曲名覚えるのが相変わらず苦手)。

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さて、僕が珍しく発売したばかりの日本盤を買った理由は、もちろんこれが大好きなサニーの新譜だからというのもあるけれど、昨日タワーレコード渋谷店で行われた、アルバム発売記念サイン会の参加券をゲットするため。発売初日に買った新宿店から拾ってきたチラシが黄色で、サイン会が行われた渋谷店に置いてあったチラシが緑色だったというのは、きっと僕以外のすべての人にとってはどうでもいいことなのは知っているけど。

実は僕はこのイベントをインストア・ライヴだと勘違いしていて、開始時刻の相当前に渋谷に着くために、出張直後で相当忙しかった仕事を全部放ったらかして行ったんだけど、着いてみたらステージにはギターアンプはおろかマイクすら置いていない。店員さんに聞いてみたら、演奏はないとのこと。チラシを見直してみても、どこにもインストア・ライヴなんて書いてないし。チラシの色の違いを云々する前に書いてあることにまず気付け>自分

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開始時刻のかなり前にステージ前に突っ立っていたら、いつの間にか僕の後ろにずらっと並ぶ人の列。いや、僕は別に一番にサインをもらおうと思って来たわけじゃないからと、一旦列を外れてその辺をブラブラ。会場は渋谷タワー5階。知っている人ならわかると思うけど、そこはブルーズとかジャズがメイン(のはず)だけど、Kポップのコーナーもある(というか、売上的にはきっとこっちがメインなんだろう)。当然この日の5階は、サイン待ちの(おそらく平均年齢が40を下らない)おじさん軍団と、Kポップ目当てで文字通りキャピキャピ騒ぐ、平均年齢がおじさん軍団の半分以下のはずの女子軍団が混然一体となった、かなり不思議な光景。

予定時刻の7時ちょっと前になると、Kポップコーナーにいた女子軍団がエレベーター前の狭いスペースにまず追いやられ(まさかあのKポップ女子たちもおじさん軍団にこんな風に不当占拠されるとは思いもよらなかっただろう)、7時を少し廻ったところでサニー登場。

前に僕がサニーのことをじかに見たのはもう24年も前のことだし、それも遠く離れたステージの上だったから、こんな数メートルの距離で見るのはもちろん初めて。思ったより小柄で、きっと身長は僕とそう変わらない。銀縁の眼鏡に、このままアメリカから飛行機に乗ってきましたといわんばかりのラフな服装。髪の毛にはもう結構白いものが混じってる(でも元が薄い茶色?だから特に違和感もなく)。

間違っても“豪快な米南部人”みたいな人だとは思っていなかったけど、予想通りナイーブそうな人。でも気さくに一人ひとりに自分から「どう、元気?」みたいな感じで声をかけている。隣に通訳の女性がいたけれど、ほとんどの人とは英語で直接話していたみたい。何人かの人は『Elemental Journey』に追加でサインをもらおうと別のアルバムのジャケを持ってきてたりして係員に注意されていた(でもサニーはサインしてあげてたね)。

並んだファンは全部で40人程度だったかな?途中まで傍で見ていた僕もそろそろ列が途切れるというところになってようやく並び、最後の方でサインを貰う。“あの”サニー・ランドレスと直接話すことができるなんて。きっと周りで見てもわかっただろうと思うほど相当緊張している自分。何を話したかな。「明日と明後日観に行きます」とか「楽しみにしてます」とかまあ、そういう他愛のないことしか言えなかったように思う。

最後に手に持っていたA4サイズの写真をサニーに見せた。僕が集めたサニー参加CD、計63枚を並べて撮った写真だ。「わあ、これはすごい。よく集めたね。僕の一生だ(笑)。よく覚えていないのもあるけど」と、しばらく一つ一つのジャケを眺めてくれるサニー。一番左上のエリオット・マーフィーの『Lost Generation』を指さして、「これは懐かしいな。何年だっけ。74年?」とか。やっぱり初期の参加アルバムは印象深いのかな。

二つサインをもらおうとする人は注意されていたから無理かなとは思ったけど、「この写真にもサインもらっていい?」とサニーに訊いてみると、「この上に書くの?どこでもいい?」と快諾。周りのスタッフも黙認してくれた。どうもありがとう。

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これは嬉しいな。ちゃんとラミネート処理して大事にしよう。でも、帰ってきてから、うちにはまだサニー参加CDがあったことを思い出した。しかも、今回のライヴに深く関係する、ジョニー・ウィンターのアルバムじゃないか。しまった(別にサニーはそれが写ってなかったことには一切気付かなかっただろうけど)。

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ジョニー・ウィンター 『Roots』

お台場に新しくできたZepと日比谷野音という大きな会場だから、サニーやジョニーに会ってサインをもらえる機会なんてきっとないだろうけど、一応このCD持ってライヴに行くことにしよう。もしかしたら、電車を降りたところとか会場のトイレで偶然鉢合わせるかもしれないし。
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2011年08月28日

パワーポップの夏が往く

お盆にあたる週は、節電のためということで会社が閉まっていたのをいいことに、一週間ほど帰省がてら大阪や京都や神戸をうろうろしてきた。懐かしい友達と会ったり、毎晩浴びるほど飲み歩いたり、長らくご無沙汰のCD屋巡りをしたりと、ちょうどネット接続環境がよくなかったのをいいことに、一週間のあいだ仕事のことはきっぱり忘れて楽しんできた。

…そのツケはもちろん廻ってくる。休暇明けの先週だけでは到底終わらなかった量の仕事を昨日も今日も家でコツコツと(現実逃避を間に挟みながら)こなしているわけなんだけど、このままだとまた今週もブログ書けずに週末が過ぎていってしまう。ここ数カ月で相当数のCDを買っていて、もちろんその中には大当たり盤も何枚もあるのに、頭の中で温め続けながら結局孵化しなかった記事のタマゴみたいなのがまた増えてしまいそうだから、走り書きでもいいからちょっとまとめて書いておこう。なにしろ、今年になってから「アルバム」カテゴリーで書いた記事は、3月初旬のスクリッティ・ポリッティのベストアルバムだけだからね。いくらなんでもサボり過ぎ。

ちょうど大阪から戻ってきた日はとても涼しかった。もう夏は終わってしまったのかと思ったけど、そんな日は数日だけで、先週はやっぱりまた暑い夏が戻ってきたね。とはいうものの、ここ数日、夜になって吹くのはもう夏の風じゃなくなってきたのも事実。きっともう何週間もしないうちに秋らしくなっていくのかな。

別に夏=パワーポップというわけじゃないけど、この夏はよくできたパワーポップアルバムが何枚も発売されて、僕にしては(中古を待たずに)タイミングよく入手し、通勤中も旅行中もずっとそれらを代わる代わる聴いていたので、夏が往ってしまう前にまとめて書くことにしよう。


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Fountains Of Wayne 『Sky Full Of Holes』

まずは大御所ファウンテンズ・オヴ・ウェイン(以下FOW)の、4年振りとなるこのアルバム。前作はこのブログでも取り上げ、僕の07年の年間ベストの第五位に入れたほどのお気に入り盤。

前作『Traffic And Weather』は古くからのFOWファンにはいまいち受けがよくなかったようだけど、僕はあのよく言えばバラエティに富んだ、悪く言えばとっちらかったアルバムの流れを素直に受け入れられたから、あのアルバムに続く(途中にアダムのティンテッド・ウィンドウズを挟んでの)今作はかなり期待しながら待っていたものだ。

アリスのチャンピオンかと思うようなアコギのイントロで幕を開けるこのアルバム、今までのFOWのアルバムの中でもかなりアクースティック濃度が高めなんじゃないかな。もちろん、“どちらかといえば”という程度の濃度なので、特にアクースティックアルバムというわけではない。そして、今回も曲のクオリティは異常に高い。今日は“走り書き”と断ってあるので一曲ずつ感想を書くようなことはしないけど、「Someone's Gonna Break Your Heart」とか「A Dip In The Ocean」とか「A Road Song」とか、一回目に聴いたときからもう忘れられなくなるような素敵なメロディーの曲が満載。

ちょっとした金額をけちって2曲のボートラ入りの日本盤でなく輸入盤を買ったんだけど(ボートラのうち1曲は輸入盤にも収録されているので)、そのうち適当な値段の中古日本盤を見つけたら買い換えようかな。


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Everybody Else 『Wonderlust』

プッシュ・キングス(The Push Kings)は大好きなバンドだった。バンダイ・ミュージックから出た4枚の日本盤も、ラスト・アルバムとなってしまった01年の『Feel No Fade』も、当時その手の情報も現物もなかなか入手し難かったジャカルタやジェッダ在住時にこまめに買い集めていたものだけど、いつの間にか全く噂を聞かなくなったと思っていたら、いつの間にか解散していたようだ(この手のマイナーなパワーポップバンドにとっては当たり前のように起こることだけど)。

「元プッシュ・キングスのギャーティー兄弟の弟の方、キャリックが新しいバンドをやってますよ。エヴリバディ・エルスっていうんです」と僕に教えてくれたのは、最近の僕の音楽人脈でパワーポップについて語らせたらこの人の右に出る者はいない、うーららさんことN君だった。あれは去年のことだっけ。いや、もう一昨年になるのかな。調べてみたら、僕もCD屋で何度も見かけたことのあるアルバムだった(でも、僕は自分の持ってるステイタス・クオーの『XS All Areas』というベスト盤のジャケとずっと勘違いしていた。だって似てるんだもん)。

そのときは自分内エコ期間だったかたまたま次に見かけたのが高かったかでそのファーストは買わずにいたら、またそのバンドのことは僕の中ではすっかり忘却の彼方に去ってしまっていた。あんなに気に入っていたバンドの後継だというのに、なんでそんなに無関心になってしまっていたんだろう。

「エヴリバディ・エルス、セカンド出ますよ」と教えてくれたのも確かN君だった気がする。今度こそ買わなければと、僕にしては珍しく日本盤新譜をゲット(1995円と良心的な定価だったのも新譜を買った理由)。xiaoさんのところで最近名前をよく見かけるディスク・デシネか。こういうのも出してるんだね。僕は別に紙ジャケファンじゃないけど、こういう丁寧な作りで良心的な値段のCDはどんどん応援してあげたいね。

おっと、“走り書き”のくせに前置き長すぎ。内容はというと、これがプッシュ・キングスの延長線。というか、なんでこの路線でプッシュ・キングス解散する必要あったの?というぐらい前のバンドの音そのまま。もしかしたらお兄ちゃんと喧嘩別れしたのかな。

プッシュ・キングス時代も僕はどちらかと言えばキャリックの作った曲の方が好きなのが多かったので、全然衰えないここでのソングライティングが嬉しい。声を張り上げて歌うと相変わらずポール・マカートニーみたいだし。早くファーストも買わないと。それに、ライナーによると、ファースト発表後に何枚かのEPも出ているんだね。もう廃盤みたいだけど、入手困難というわけじゃなさそうだから、早いとこ買っておこう。


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The Wellingtons 『In Transit』

本日最後はこれ。さっき名前を出したxiaoさんのブログでもちょっと前に取り上げられていた、オーストラリアのウェリントンズのニューアルバム(元ニュージーランド在住者としては、オーストラリアのウェリントンというのがどうも違和感ありなんだけど、このウェリントンは長靴の方なんだろうね。と書いて検索してみたら、オーストラリアにもウェリントンっていう町があるのか)。

僕はセカンドアルバムしか持っていなくて、いつも追いかけてるというバンドじゃないんだけど、xiaoさんを始めあちこちで激賞の声を聞くので、大阪マルビルのタワーで試聴してみたら、もうアレですよ、1曲聴き通せない。いや、悪いんじゃなくて、そんな風にちょこっとつまみ聴きするのがもったいない。こんなのって、サンバサダーのあのアルバム以来かも。曲調とか全然違うけど。で、これも僕にしては珍しく、日本盤新譜お買い上げ。

さっきのxiaoさんの記事にコメントしたけど、近々来日するんだよね。東京は9月6日の新代田と、8日の下北沢。下北の方は単独公演じゃなくてパワーポップアカデミーへのゲスト出演ということで、演奏時間は30分程度ということらしい。

両方行きたいけど、今のこの業務量で同じ週に二回も会社を定時で抜けるのはかなりムリっぽいかもと、とりあえず先にチケットが掃けてしまいそうだった8日分をキープ。パワーポップアカデミーって僕は前回(第一回)は参加しなかったけど、お客さんがそれぞれのMP3プレイヤーをつないで自分たちの好きな曲を掛けられるんだって。なんという僕向きな(笑)イベントなんだ。ちょうど次回のyascd miniの選曲が終わったところなので、もう早速頭の中はパワーポップモード。何入れて行こうかな。あまりポピュラーなのを入れると他の人とかぶるし、かといって超マイナーなの持っていって受けなくても困るしな。そもそも一人あたり何曲ずつ掛けさせてくれるんだろう。初めてなんで勝手がわからないよ。そんなことばかり考えてると、どんどん現実逃避の時間ばかりが過ぎて行ってしまうよ。
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2011年03月06日

不完全な「完璧」 - Scritti Politti

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スクリッティ・ポリッティ 『Absolute』

前回の記事にも書いたように、この時期になるとリアル店舗でもオンラインでもあちこちのCD屋さんでセールをやってて、ついあれこれと買い込んでしまう。先週はそうして買ったダンボール箱がほとんど一日おきに届いて、あっという間にこのPCの隣にはCDの山ができてしまった。

いろいろ書きたい新譜も沢山あるんだけど、今日はこれ。あいかわらず忘れた頃にぽつんとリリースされる、スクリッティ・ポリッティ。5年振りのこのCDは残念ながら新譜ではなく、新曲2曲を含んだベストアルバム。

ずっとにこのブログに書いたように、スクリッティ・ポリッティというのは30年ほどの長いキャリアでたった5枚しかアルバムを発表していないだけでなく、ポストパンク期〜1枚目〜全盛期〜ヒップホップ期〜06年の最新盤で全然音楽のスタイルが違うもんだから、ベスト盤の編集もなかなか難しいものがあるはず。

おそらく、スクリッティ・ポリッティを“知っている”という程度の人はほぼ全員、85年の大ヒットアルバム『Cupid & Psyche 85』で彼らのことを知ったはずなので、その後のどっぷりヒップホップに傾倒した音や、初期のギザギザ&スカスカしたポストパンク期の音や、06年盤のメロウなソロアルバムの音を同じバンドの音楽として素直に受け入れられるとは思えないからね。

なので、どういう選曲してるんだろうと興味をもって見てみる。まずは、「Wood Beez」にはじまる『Cupid & Psyche 85』からの怒涛のシングル攻勢5連発。まあ、そりゃそうだよね。さっき書いたような、ディープなファンでない人にとっては、このグループはこの5曲に尽きるだろうからね。もろに80年代を代表するようなキラキラピカピカした音なのに、全然古臭く聴こえないのは凄い。

続いて、その大ヒットアルバムの続編のような造りの『Provision』からの、マイルス・デイヴィスとロジャー・トラウトマンがそれぞれ参加したシングルカット2曲。まあこれも妥当なところだろう。僕にとっては大好きなこのアルバムからたったこれだけなのはちょっと納得いかないけど。

更に、年代順にその11年後のヒップホップアルバム『Anomie & Bonhomie』から4曲。うーん、4曲はちょっと多すぎるんじゃないの。個人的にはシングルの「Tinseltown To The Boogiedown」とグリーンのボーカルが格好いいアルバム冒頭の「Umm」で十分な感じ。

ここでうんと時間を遡り、違和感ありまくりなのは承知のうえでデビュー曲「Skank Bloc Bologna」に戻り、さらにファーストアルバム『Songs To Remember』から3曲。さっきの『Anomie & Bonhoie』からは非シングル曲をあんなに収録しているのに、このファーストからは「Faithless」が落とされている。結構重要なシングルだと思うんだけどな。不可解。

シャバ・ランクスとの共同シングル「She's A Woman」(yascd013に入れたビートルズのカバー)を挟み、今回の目玉である新録が2曲。あれ?06年の『White Bread Black Beer』はスルー?なんでそんなことになるんだろう。グリーン、あれ気に入ってないのかな。確かに僕もさっき上にリンクした06年の記事ではあんまり気に入ってないような書き方をしていたけれど、結構いい曲も入ってると思うんだけどな。不可解。

待望の新曲は、ライナーを読んでみると実はそれほど新しいというわけでもないようだ。『White Bread Black Beer』の直後の07年に、そのソロアルバム(名義はスクリッティ・ポリッティだけど)とはうって変わって、全盛期のパートナーであるデイヴィッド・ギャムソンと二人で作りあげた曲。たしかに、ちょっとあの頃の香りがするよ。ものすごい名曲というほどではないけれど、いい曲だよね。次のアルバムが一体何年後になるのかわからないけど、またこの二人で(と、できればドラムスのフレッド・マーも一緒に)作ってほしいな。

いかにもスクリッティ・ポリッティらしい秀逸なジャケットに包まれ、なかなか上出来な2曲の新曲も入っているけれど、どうもしっくりこない選曲のこのベストアルバム。まあ、ベストアルバムの選曲なんていつでもそういうものだし、スクリッティ・ポリッティのベスト盤なんて冒頭の5曲が入っていれば大方の人には問題なしなのかもしれないけど(だったら『Cupid & Psyche 85』を聴けばいいんだけど)、ちょっと対抗して自分仕様のベスト盤を作ってみたくなる気にさせられるCDだね。

そうだ、それやってみようかな。このベストアルバムとは曲が一切かぶらない、『裏Absolute』。「Wood Beez」も「Perfect Way」も「Skank Bloc Bologna」も入ってないスクリッティ・ポリッティの編集盤をベストアルバムと呼ぶことに抵抗はあるけれど。実は今、久しぶりのyascdでも作ってみようかなと、ふたつぐらいのアイデアのタマゴが頭の中にあるんだけど、なんだかこれを先に作ってみたくなったよ。というわけで、<つづく>
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2010年12月31日

年の瀬に - Joy Division

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ジョイ・ディヴィジョン 『+- Singles 1978-80』

この年末は未使用の有給休暇を消化しつつ、少しゆっくりさせてもらっている。ちょっと遠くの友達の家に集まって年間ベスト10披露会を夜通ししたり、タマス日本ツアー慰労会をしたり(もちろんタマスは不参加)と、なにかと理由をつけては飲み歩く日々。

お蔭でせっかくの休みなのにちっとも部屋が片付かない。まあ、片付かない一番の理由は、例によってCDの並べ替えからスタートしてしまったこと。ここ数カ月で買ってまだラックに入れていなかった数十枚のCDを収納するついでに、これまでと全体の並び順を替え、ついでに売りに出すCDを選別していたら、それだけであっという間に2日ぐらい経ってしまったり。

ジョイ・ディヴィジョンの発掘音源がここ数年ざくざくと発表され、とても全部はついていけないなあと思っていたら、今度は7インチシングルの10枚組ボックスセットが発売された。

5000セット限定で、ボックスのデザインはピーター・サヴィルだというのに惹かれはするものの、このあまりの商魂のたくましさに、これはちょっと買わなくてもいいやと思っていた。

僕は、ジョイ・ディヴィジョンのシングルを編集したCD『Substance』も、前身ワルソウ(ワルシャワ)の編集CD『Warsaw』も、4枚組のボックスセットも持っているから、このボックスセットに収録されている音源は全部持っているので、どうせこんなの買っても記念品として置いておくだけだし。

Substance.jpg Warsaw CD.jpg Heart And Soul.jpg
ジョイ・ディヴィジョン 『Substance』(左)
ワルソウ 『Warsaw』(中)
ジョイ・ディヴィジョン 『Heart And Soul』(右)

上にリンクしたアマゾンでは18000円越えというとんでもない値付けがされているが、先日立ち寄った某レコード店ではそのほぼ半額。しかも10%オフセール中だという誘惑の嵐。おまけに、僕が店にいた間のBGMがずっとジョイ・ディヴィジョンだという念の入り様。

店内に鳴り響くBGMを振り切り(別に買うものはちゃんと買って)、次に訪れた店でふと“J”のコーナーに目をやると、先ほどよりも更に安い、嘘みたいな価格設定。ああ、これはもう、僕の音楽の神様が「買え」とおっしゃっているんだな。わかりましたよ。買いますよ。

というわけで、この年末の忙しいときに10枚のシングル盤をぐるぐるとひっくり返しながら、落ち着きなく過ごしている。部屋の片づけが一向に進まないんだけど、もしかしてこれは一種の現実逃避なのか?(そうです)

ところで、箱を開けて一枚目のシングル「Warsaw / Leaders Of Men」をかけようとしたら、いきなりこんなミスプレス盤。

Warsaw Single.JPG

丁寧な仕事には定評のあるライノなのに、これはちょっとひどいね。早速次の日に交換してもらいに行った。まだ売りきれずに残っていたのはラッキーだった。せっかく新宿まで来たからと、また追加で買い込んでしまったのは僕のせいじゃない。

内容についても少し触れておこう。『An Ideal For Living』として知られる最初のシングル「Warsaw」を始め、『A Factory Sampler』収録の「Digital / Glass」や、ファクトリー以外から出たシングル「Autosuggestion / From Safety To Where」、ソノシート「Komakino / Incubation / As You Said」など、全10枚21曲。それぞれのジャケットは完全復刻ではないものの、オリジナルのデザインを活かしつつ統一感の取れたいい感じ。さすがピーター・サヴィル監修。

ボーナスディスク扱いの10枚目は、アルバム『Closer』からの「Isolation / Heart And Soul」で、ジャケットは『Closer』そのままというのが、ちょっと拍子抜け。せめて未発表テイクとか、このボックスのための別デザイン(『Closer』の没バージョン?)とかにしてくれればよかったのにな。

ライノレコードのサイトに行って、全曲のMP3バージョンがダウンロードできるコードが入っているが、先述のとおり僕はCDで全部持っているから、それほどありがたみはないかな。ただ、「She's Lost Control」のB面扱いになっている「Love Will Tear Us Apart」は“Pennine Version”という別テイク(ミックス違い?)なのが、微妙に貴重。これ、僕の記憶に間違いなければ、CDとしては初出だと思うんだけど。


さて、今年はこの記事で最後。結局今日まで片づけは終わらなかったけど、紅白始まるからAKB見てこよう。せっかくCDラックを整理し終えた後にまた買ってきたCDを収納する場所も作らないといけないな。それでは、みなさんよいお年を。
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2010年12月25日

サイレント・ナイト - Peter Broderick / Tamas Wells

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ピーター・ブロドリック 『How They Are』

「誰もが悲しそうにしている」と無伴奏で静かに歌い出されるオープニング曲「Sideline」。しんとした静寂の中、落ち着いたクルーナー・ヴォイスの独唱がそのまま訥々と続き、これはこういう曲なんだと思い始めたころ、1分32秒のところで突然奏でられるピアノの音が殊更心に響く。

名前だけは前から知っていたけど、CDを通して聴いたことがなかったピーター・ブロドリックの最新作をふとしたことで安く入手できたので、早速聴いてみた。彼一人の演奏と歌だけが入った全7曲、30分強のコンパクトなアルバム。7曲中3曲がピアノの弾き語り。2曲がアクースティック・ギターの弾き語り。残り2曲がピアノのインスト。全曲スタジオでの一発録りのようだ。

上に写真を載せた、どんよりとした雲の下の雪の積もった街並みを銀色がかったグレー単色で印刷したジャケットが、このアルバムの内容をよく表している。美しいけど、悲しみがたくさん詰まった音楽。裏ジャケに載っている、屋根の上にぽつんと立ったアンテナの写真ですら悲しそうに見えてしまう。

所属はべラ・ユニオン(Bella Union)なんだね。このレーベル、僕はフリート・フォクシズやミッドレイクがぱっと頭に浮かぶけど、ちょっと調べてみたら、アンドリュー・バードとかアート・オブ・ファイティングとかもそうだった。他にも、気になっているけどまだ聴いていないフィリップ・セルウェイとか、MOJOのコンピで聴いたロウ・アンセムとかもいるね。ちょっとこれからしばらく、ここレーベル買いしてしまいそうな気配。

このアルバム、特にクリスマス・アルバムというコンセプトじゃ全然ないんだけど、全体を覆うこの静かな雰囲気がなんだか厳かな気分にさせてくれる。今年の僕のクリスマス・アルバムにしよう。別に今日しか聴かないというわけではなくね。年の瀬にいいアルバムに出会えたよ。安く買えたし(笑)、自分へのクリスマス・プレゼントだ。


クリスマス・プレゼントといえば、タマス・ウェルズとリリコ・レーベルから今日(24日)、素敵なプレゼントが届いた。先日の来日公演で初公開されたショート・フィルム『The Houses There Wear Verandahs Out Of Shyness』が、今日から1月16日までの期間限定でオンライン公開され始めた。

The Houses There Wear Verandahs Out Of Shiness.jpg

あの夜あの場所に居た人達も、残念ながら来られなかった人達も、ぜひ観てみてほしい。特別何が起こるわけでもない他愛もないストーリー(というほどのストーリーすらない)だけど、タマス・ウェルズが好きな人にはきっと気に入ってもらえると思う、とても素敵な映画だ。あるいは、この24日間で、きっとタマス・ウェルズのことを好きになる人が増えるだろう。リンクはこちら↓

The Houses There Wear Verandahs Out Of Shiness

丁寧な日本語訳はリリコ・レーベルの仕事。あ、そういえば、さっきのピーター・ブロドリックもリリコ、というか、インパートメント/p*disのオンライン・ショップで扱ってるから、タマス・ウェルズのファンの皆さんはアマゾンなんかで買わずに(笑)そちらでどうぞ。とか言ってる僕はうっかり別の店で買ってしまったんだけどね。ごめんなさい。これでタマスの次回の来日が1554円分遠くなってしまった(笑)

では皆さん、よいクリスマスを。
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2010年12月24日

北国の人達 - Woodpigeon / Pascal Pinon

12月3日、早稲田奉仕園スコットホールでのこと。開場と同時にホール内に入り、まず前の方に席を確保して、1月のシンガポール公演からほとんど一年振りのタマス・ウェルズのライヴをわくわくしながら待っていた僕は、場内に流れている静かなBGMに気がついた。あ、これブロークン・フライト。

ステッドファスト・シェパードもかかった。ウィンターピルズも。そんなセンスのいい選曲をするのは、もちろん主催者のsinさんだろうな。そんな中、僕は聴いたことなかったけど、すごく気になる曲がかかった。これ誰だろう。

次々に入場してくるお客さんの相手で忙しいsinさんを捕まえて訊いてみる。「今かかってるこれ、誰?」。「ウッドピジョンですよ」。え、そうなの?僕ウッドピジョンのCD持ってるのに、そう言われるまでわからなかった。


そう、あれは今を遡ること3年とちょっと前。そのときもタマス・ウェルズの東京公演のことだった。そのライヴを観るためにニュージーランドから駆け付けた僕と、僕が書いたタマスのセカンドアルバムのレビューにコメントを寄せてくださった一本道ノボルさんとの邂逅。ライヴ後の打ち上げで終電まで語り合った後(そうか、あの頃は終電までに帰るという一般常識を持ち合わせていたんだな、僕たちは)、彼が僕に教えてくれたバンドがあった。「これ、タマスの次にLiricoから出したんですよ。また僕がライナー書いたんで、よかったら聴いてみてください」。

Songbook.jpg
ウッドピジョン 『Songbook』

タイミングというのは大事なものだ。NZに帰って聴いてすぐにいいアルバムだと認識はしたものの、初の生タマスを観た直後の僕は、それからしばらく他のCDなど聴く気もおこらず(今回初めてタマスのライヴを経験された方ならこの気持ちをわかってもらえるでしょう)、1〜2回聴いただけでCDラックにしまい込んでしまった。一本道さん、ごめんなさい。


それから3年。sinさんから衝撃の事実(?)を聞かされた僕は、12月3日の夜(というか4日の未明)、タマス熱に侵されたままの頭で、CDラックから『Songbook』を引っ張り出してきてCDプレイヤーに乗せてみた。3年前より少しは地に足のついた冷静な気持ちで。

こんなにいいバンドだったなんて。

カナダ人シンガー・ソングライター、マーク・ハミルトン(Mark Hamilton)を中心とした7人編成の大所帯バンド。ライナーで引き合いに出されているスフィアン・スティーヴンスやベル・アンド・セバスチャンを連想させる、繊細なメロディーをこざっぱりとしたアレンジで奏でる(大所帯なのに)、凡百のインディーバンドとは明らかに一線を画すセンスのよさ。このジャケ画もいいが、ブックレットに描かれたいくつかの不思議なイラストも大好き。あのときブログに載せなかったのは明らかに失敗だった。

4日後、sinさんのブログに、「Tamas Wells Japan Tour 2010 ツアー後記の前に・・・SEプレイリスト」という記事が載った。あのときかかっていたBGMの選曲リストだ。ウッドピジョンの曲は「Redbeard」というのか。調べてみると、今年の初めに出たサード・アルバムに収録されている曲だ。それにしても、この選曲いいな。これCD-Rに焼いてくれないかな(笑)


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ウッドピジョン 『Die Stadt Muzikanten』

というわけで、早速この最新作を入手。15曲入りのフルアルバムというのはまあ珍しくもないけど、聴いてみたら更にシークレット・トラックが1曲、さらに12曲入りのボーナスディスク『Balladeer』まで封入という、なんなのこのボリューム(笑)。しかも、その全28曲がどれもこれも珠玉のメロディーだというこの凄さ。大げさに言いすぎるのを避けると、確かにそれほどでもない曲もいくつかあるけど、尋常でないクオリティの曲が次から次へと出てくるところが凄いよ。

埃だらけの古いレコードを模したアルバムタイトルトラックからいきなり彼らの(というか、マーク・ハミルトンの)世界にすっと引き込まれる(ちなみに、ファーストでは作曲クレジットにのみ使われていたMark Andrew of the Hamiltonsという名前が、このアルバムでは正式名称として使われているね。それが本名なのか?)。11曲目「Redbeard」はやはり名曲だね。イントロから最初のヴァースに入る箇所なんて、胸をかきむしられるような気持ちになる。

危なかった。こんなに優れたバンドを丁寧に紹介されておきながら、むざむざ自分の中で葬り去ってしまうところだった。早いとこセカンドも買おう。そっちにもボーナスディスクが付いてるみたいだし。


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パスカル・ピノン 『Pascal Pinon』

『Die Stadt Muzikanten』と一緒に買ったのが、サイトで試聴してすぐさま気に入ったこのアルバム。16歳の双子のアイスランド人姉妹だって。アイスランド語の曲と英語の曲が入り混じって出てくるけど、なんかアイスランド語って不思議な語感だね。前にシガー・ロスのライヴに行ったときに、ステージ上でヨンシーとキャータンが交わすアイスランド語がなんだか天使が話してるように聴こえたけど、これもそんな感じ。

アイスランド語で歌われる1曲目「undir heidum himni」で全編に亘って奏でられる不思議な管楽器の音は何だろう。内ジャケに書いてある楽器クレジットにバード・フルートってのがあるな、これかな。2曲目「arestidir」の人懐っこいメロディーはどこかで聴いたことがあるような気がする。何だっけ。この曲の鉄琴の音もいいね。

こういうのもローファイっていうのかな。全部姉妹の部屋で作りました、みたいな手作り感満載のこのアルバム、30分にも満たない軽い感じだけど、同じアイスランドでもビョークやシガー・ロスみたいに完璧に創り込まれた手の届かない世界でなく、アミーナの閉じた不思議な世界に通じるところがある。

和訳されたインタビューを見つけた。このグループ名、フリークスについての本から取ったと書いてあるね。道理でこの名前で検索かけたらなんだか不気味な男の写真がいっぱい出てくるわけだ。


ところで、僕がこの2枚のアルバムを買ったのは、タマス・ウェルズの日本でのディストリビューションをしているインパートメント/p*disのオンライン・ショップ。上に載せたアルバムタイトルに張ったリンクは一応アマゾンに飛ぶようになってて、もしあなたがそこでポチッとクリックしてこれらのCDを買ってくれたら僕の手元に何十円かが届く仕組みになっているんだけど、そんなのはどうでもいいから、もしあなたがこれらのアルバムを聴いてみようと思ってくれたなら、是非こちらのオンライン・ショップで買ってほしい。

別にsinさんが友達だからとか、ましてや彼に宣伝してくれと頼まれて書いてるわけじゃない。僕はただ、この会社にはどんどん儲けてもらって、そのお金で一回でも多くタマス・ウェルズを日本に呼んでほしいという、完全に自分のことだけを考えてそう言ってるだけ。今ならパスカル・ピノンのCDにはポスターも付いてるし、お得ですよ(今見てみたら、このCDまた在庫ナシになってるけど)。僕でも知らないようなアーティストのCDが満載だけど、だいたいどれも試聴できるようになってるから、気になったものはどんどん聴いてみればいいし。

とか書きながら自分でもまたこのサイトに行ってみたら、最近また新入荷が何枚かあったみたいだね。ちょっといくつか聴いてみて、ウッドピジョンのセカンドと一緒に買おうかな。Tシャツ好きとしてはかなり気になるデザインのシャツもいっぱいあるし。
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2010年11月16日

贅沢 - Tamas Wells

The English translation follows the Japanese text.

Thirty People Away.jpg
タマス・ウェルズ 『Thirty People Away』

シドニーに来ている。

例によって休暇や観光じゃなく短期滞在の出張なので、せっかくのからっとした夏も単に暑いとしか思えないのが残念だけど、せいぜい会社で取ってくれた立派なホテルの大きな窓から夜景を眺めながら(でも、妙なところでけちるから、窓の端の方にぴったり顔をつければハーバーブリッジがかろうじて見えるという微妙な位置の部屋で)これを書いているところ。

前回のアジア出張から一旦東京に戻り、その翌々日にまたシドニーへ来るという強行スケジュールにしたのは(シンガポールから直接シドニーに入った方が、時間的にも体力的にもよほど楽なんだけど)、なんとしても11月11日に自宅にいる必要があったから。そう、予約していたタマス・ウェルズの新作が届いているはずの日だ。

帰国したその日、思っていたよりも大ぶりな小包に入っていたのは、沢山の梱包材に丁寧に包まれた紙ジャケCDと、来月の東京公演のチケット2枚、予約特典のダウンロードクーポン、それに、sinさんのツィッターで製作過程をずっと見ていたハンドメイドのオーガニックソープがひとつ。「先着四名様限定」というのは冗談かと思っていたのに、まさか僕のところに送られてくるとは。乾燥が不十分なのでしばらく空気に触れさせておいてほしいという注意書きを読んで、封を開ける。いい匂い。なんだかもったいなくて、使えないよ。このまま部屋に置いておこうかな。この『Thirty People Away』のジャケ画の入った注意書きと一緒に。

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どうも最近調子の悪いPCになんとか音源を取り込み、シドニー出張に備える。でもその前に、やっぱりこのアルバムは最初はきちんとスピーカーから音を出して聴いてみたくて、CDプレイヤーに乗せる。

しばらく前からLiricoのサイトでこのアルバムの音源が試聴できるようになっていたのは知っていた。だけど、僕はこのアルバムをそんな風につまみ聴きするようなことはしたくなかったから、しばらくあのサイトには立ち寄らないようにしていた(行くとついクリックしてしまいそうだったからね。笑)sinさんのブログやツィッターをはじめ、その試聴音源を聴いたという人達の絶賛の声は読んでいたけれど、僕はこの日まで、例によって不思議な雰囲気満載の曲名とジャケ写だけを見ながら、ずっと我慢していた。その音が、ようやく僕の部屋で奏でられる。夜なので、すこしボリュームを絞って。



これまで僕がタマス・ウェルズについて書いてきた文章のいくつか。

> 初めての出会いのあまりの衝撃に、ほとんど何も書くことのできなかったセカンドアルバム『A Plea En Vendredi』について。
> 当時入手困難だったファーストアルバム『A Mark On The Pane』をようやく探し当て、ありったけの知識を込めて書いたもの。
> 当時僕が住んでいたNZから海を越えて駆け付けた、待望の初来日公演。
> サードアルバムにしてタマス・ウェルズ初のソロアルバム『Two Years In April』についての果てしない長文。
> 二度目の来日公演を三夜分まとめて。
> 二度目の海外追っかけ。シンガポール公演について。

さて、いったい僕はこのタマス・ウェルズによる新しいアルバムを聴いて、これ以上何を書けるんだろう。『Two Years In April』のときよりさらに増量した駄文を重ねるべきだろうか。もしあなたが僕のブログをずっと読んでくださっているなら、またいつもと同じような表現で同じようなことをダラダラと書いていると思うかもしれない。そしてもしあなたが偶然(タマス・ウェルズという名前で検索をかけて)ここに来てくださったのであれば、今ここにリンクを張ったいくつかの文章を(たっぷり時間がかかるのを覚悟のうえで)読んでもらえれば、彼の音楽がどういうものかはわかってもらえるだろう。もちろん、ちょっと聴いてみたいという方は、さっきリンクしたLiricoのサイトに行けば、今でもこの新作が試聴できるようになっているはずだ。

一言でまとめるなら、今回のアルバムは、あらゆる意味でとても贅沢なものだ。もちろん、中に収められている音は、豪華絢爛という言葉とは程遠い、いつもながらのタマス・ウェルズの音楽。たとえて言うなら、贅を尽くした食材を潤沢に使った懐石料理。上質の素材だけを使って丁寧に編まれた、素朴なデザインのセーター。醸造されたばかりの、その後数十年熟成されることが定められたヴィンテージのウィスキー。そういったものと同質の贅沢さ。

「あらゆる意味で」と書いたわけ。まず、これまで聴いたことのなかったタマス・ウェルズの曲を、こんなに一度にふんだんに聴ける贅沢。思えば、前作が出てから2年間の間、途中にライヴを二度観ているとはいえ、強度のタマス・ウェルズ渇望症(笑)に罹っていた僕は、彼の初期の曲が収録されたポップブーメランのコンピレーション2枚を入手し、その2曲を慈しむように聴いていたものだ(実は、それらの曲自体は、某友人を通じてずっと以前に聴かせてもらっていたので、初めて聴いたという新鮮な驚きはなかったんだけどね)。その状況と比べると、11曲もの全く新しい曲を、こんな風に続けざまに聴けるなんて、なんと幸せなことか。

Shake Yer Popboomerang 2.jpg Planet Of The Popboomerang Vol.2.jpg
『Shake Yer Popboomerang Volume 2』
『Planet Of The Popboomerang Vol. 2』

そんなオタク的感想はさておき、内容の贅沢さについて。今回のアルバムが、ヤンゴンの自宅でほぼ一人で宅録された前作とはうって変わって、プロデューサー兼ドラマーであるネイサン・コリンズの住むタスマニアのホバートのレコーディングスタジオで、今年に入ってタマスと一緒に活動しているギタリストのキム・ビールズや弦楽器奏者二名を含めた拡大タマス・ウェルズ・バンドの面々と共に録音されたという事実は以前から聞いていたが、それがアルバム冒頭「The Crime At Edmond Lake」のオープニングの最初のクリアなギターの一音を聴いただけで如実にわかる。途中に子供の叫び声も入ってないし(笑)

ホバートのスタジオでの録音風景を勝手に転載させてもらおう。ため息が出るほど素晴らしい環境だよね。今いるシドニーも少し郊外に車で走れば大きな庭のある家や沢山の街路樹が目に入るけど、同じ国でもやっぱりこういう場所は別世界だね。

Tamas in Studio.jpg

この恵まれた環境で、沢山の気の合うメンバーと一緒に、(800円のミャンマー製ではなく)バンコクで手に入れたマーティンのアクースティックギターと、弦楽器やキーボードなど、きっとミャンマーでは入手することすら難しいであろう楽器をたくさん使って録音されたアルバム。インスト2曲を含んだ構成が(インスト曲の配置のされ方も含めて)最初の2枚のアルバムを踏襲しているところからも、やはり前作だけは、本人にとっても異色な位置づけのアルバムだったのだろうということがわかる。

具体的かつ意味深なタイトルなのに、実際に聴いても読んでも、相当深読みしないと意味の掴みづらい歌詞もいつも通り。ライナーで大崎さんも指摘されているとおり、今回のキーワードは火、炎といった、これまで彼の曲にはあまりなかったイメージ。ミャンマーでの爆撃事件がきっかけになった(と、sinさんのツィッターを読んで初めて知った)アルバムタイトル曲「Thirty People Away」を中心にして、アルバム全体に燃え移ったものだろう。そのイメージを代表しているのが、今作を代表する(というか、「Valder Fields」や「The Northern Lights」などと一緒に、タマス・ウェルズの代表曲になり得るであろう)アルバム2曲目「Fire Balloons」。なんか、このタイトルだけでも、想像力をうんとかきたてられるよね。火の風船だって。

初期の「Stitch In Time」のように、悲しく可哀想な歌詞をあえて(彼にしては)明るめの曲調に乗せて歌うという傾向が今回も伺える。「Her Eyes Were Only Scars」という、悲惨なタイトルとアルバム中では比較的具体的な描写のある歌詞を持つ曲などがそうだ。タマスは来月のライヴでこの曲を歌う前に、この曲の背景を教えてくれるだろうか。あの「I'm Sorry That The Kitchen Is On Fire」のように。

その一方で、おそらく彼の一人娘のことを歌っていると思しき最終曲「Your Hands Into Mine」は、その暖かなタイトルと題材にも関わらず、どういうわけかこのアルバム中もっとも沈んだ曲調だ。戦いの終わりという名を持ちながら、実際にはいたるところに絶望ばかりを見てしまうヤンゴンという街に長く住む彼の中では、希望と絶望という相反する感情がまるでコインの裏表のように密接に結びついているのかもしれない。

沈んだ曲調といえば、いつものとおり(?)アルバム5曲目と8曲目に配置されている二つのインストゥルメンタル曲。もしこれが何かの映画のサウンドトラックだとしたら、一体これらはどんなに悲しい場面のBGMなんだと思ってしまうような曲。ピアノを弾いているのはどちらもアンソニー・フランシスだろう。

全11曲、わずか34分しかないこのアルバム(彼のアルバムはいつもそんな感じだけど)、手に入れてからまだ5日しか経ってないのに、もう何十回聴いたかわからない。「今年のベスト10入り確実」なんてもんじゃない。「もしこれが1位でなければ何をこの上に持ってこられるのか」というレベルの作品。

ずっと出張に出ているのでなかなか実物を手に取って見ることのできていない、いつもとはちょっと違った雰囲気のイラストのジャケットも、個人的には今までで一番お気に入りだ(ディスクやブックレットがちょっと出し入れしづらいけど)。内ジャケやブックレットにはちょっとずつ違った家が建っているね。大崎さんの言われるとおり、べったりと赤く塗られたブックレット裏も含めて、これらの家が建っている地面の部分が血に見えてしかたないけど、それをこんな子供が描いたような屈託のない雰囲気に仕上げているところもいい。さしずめ、「絶望の大地に建つ希望の家」といったところか。



来月最初の週末、タマス・ウェルズの2年振りの来日公演が東京と京都で行われる。前回の来日メンバーから、子供の世話で忙しい(笑)ネイサン・コリンズが抜け、代わってキム・ビールズが参加という、僕が年頭に観たシンガポール公演と同じメンバー構成。前回のステッドファスト・シェパード(=ネイサン・コリンズ)のように、キムが前座でソロ演奏をするそうだ。土曜日にヨンシーのライヴさえ入っていなければ、本当は京都まで追っかけたかったんだけどな。まあ、しょうがない。タマス/ヨンシー/タマスなんて贅沢な週末、もう二度とないだろうしね。

Tamas Poster.jpg Tamas Poster back.jpg



シドニーにいる間にも帰りの機内でも書き終えることのできなかったこの記事を、さっき東京の自宅に戻ってきて書きあげ、ブログにアップしようとPCを立ち上げたら、遅ればせながらアウン・サン・スー・チーさん解放のニュースが目に入った。出張中全然ニュースを見る暇もなかったから。そうか、今度こそ本当に。よかった。きっとタマスは来月のステージで、戦いの終わりを意味する名の街で久しぶりに起きた、本当に希望を持てるこの話をしてくれることだろう。いつものあの屈託のない笑顔で。



Luxury - Tamas Wells

Thirty People Away.jpg
Tamas Wells 『Thirty People Away』

I'm in Sydney now.

As usual, since this is not sightseeing or vacation but a short business trip, unfortunately this nice sunny weather is just annoying heat to me. At least while I'm writing this I'm enjoying the nightscape from this luxurious hotel that my office booked (I could hardly see the tip of the Harbour bridge if I try really hard by pressing my face against the large window, since they booked it at the corporate rate).

I've been out on the other business trip around Asia the other week. The reason why I've been home only for 1.5 days and came all the way again to Sydney, although it could've been physically much easier and saving time to go straight from Singapore to here, was simply because I had to be at home on 11 Nov. Yes, the day they release the Tamas Wells' new album in Japan.

The day I got home what I found was an oversized parcel, which included a paper-sleeved CD wrapped carefully with bunch of plastics, two concert tickets for next month, a download coupon for the bonus tracks and a handmade organic soap which I've been watching the way Shin has been producing it and posting on his Twitter. He once tweeted the soap was meant for the first 4 lucky buyer of the album. I didn't expect I would be one of them. It says on the small paper inside that the soap isn't dried enough so you need to keep drying it. I've opened the plastic bag and it scented so good. I can't just consume it as soap as it's too good. Perhaps I'll place it in my room, together with this small instruction paper with "Thirty People Away" illustration on.

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I get prepared for the Sydney trip, while recording the CD into the PC that hasn't been functioning very well these days. But before the trip I would love to listen to this album from the loud speaker first. So I take out the CD from the PC and put it in the CD player.

I knew I would be able to listen to the sampler of every song on this CD at lirico’s website since while ago. But I didn't want to just pick and listen to this album in such a casual way. So I've been avoid visiting the site till I get my own copy of the CD (if I go there I knew I couldn't stop myself clicking the samplers). I've been reading how good this new album was through Shin's blog & Twitter as well as the others’ comments who've already tried the samplers. I’ve tried hard not to listen but just looking at those strangely-named titles of the songs and the album cover art. At last, finally, the tunes will fill my room this night. It's already close to midnight, so I've turned down the volume a little.



Some of the articles I've written about Tamas Wells on this blog.

> About the second album "A Plea en Vendredi" that I couldn't describe almost anything due to the shocking initial encounter.
> About the first album "Mark On The Pane" which was out of print at that time but I finally found, and wrote with as much knowledge as I had then.
> About the first Tokyo gig which I went down all the way from NZ where I lived then.
> A never-ending article about the third and his first solo album "Two Years In April".
> About the second Japan tour, three nights in a row.
> About my second overseas following-the-artist trip to Singapore.

Well, what else can I write listening to this brand new album? Should I write something even longer then the one about "Two Years In April"? If you're a regular reader of my blog, you would think I write same things again in a same tone with same expressions. Or if you come here for the first time (perhaps by searching for some information about Tamas Wells on the web), it should be enough to read these links (be prepared to spend hours!). Of course if you'd like to have a quick listen, you can go to lirico's website that I linked above.

In a nutshell, this brand new album is quite luxurious, from several aspects. Of course, the music within is far from the shiny gorgeous sound, but Tamas Wells as usual. I give you some examples; an authentic Japanese traditional cuisine cooked with well-chosen materials. A humble design hand-woven sweater using high quality wool. Vintage whisky just brewed and to be stored for some ten years. Such kinds of luxury.

The reasons I write "from several aspects". First, the luxury you can listen to a series of Tamas Wells' new songs. For the last two years since "Two Years In April", although I've seen him playing live a couple of times, I've been thirsted for Tamas Wells music. So I've got the two compilation albums from Popboomerang which contained early recordings of theirs, and repeatedly listening to them (it wasn't a fresh surprise to me as I got these two songs from my friend years before though). Compared with the situation, how happy I am to be able to listen to eleven brand new songs at once!

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『Shake Yer Popboomerang Volume 2』
『Planet Of The Popboomerang Vol. 2』

Putting such nerdy comments aside, I write about the luxury of the album itself. I knew the fact that unlike the last album which was recorded at Tamas' house in Yangon by himself, this album was recorded at the recording studio in Hobert where the producer / drummer Nathan Collins resides, together with the larger Tamas Wells band including two strings players and Kim Beales who has been playing with Tamas since earlier this year. You can easily tell the outcome of it by listening to the opening clear guitar sound of "The Crime At Edmond Lake". There's no child's shout in the middle, too :)

Here's the photo during the recording session that I took from Tamas' webpage without permission. Beautiful scenery, isn't it? I could see some large houses with front yards and tall trees alongside the road when I drive outskirts of Sydney, but this is a different world in the same country.

Tamas in Studio.jpg

This blessed atmosphere produced the album, together with close friends, using the Martin acoustic guitar (not the 8 dollar made-in-Myanmar guitar anymore) and the various other musical instruments you could hardly find in Myanmar. The album construction is quite similar to the first two albums, with two instrumental tunes (even the sequence of the instrumentals in the album). That tells the previous album with the different sequences must be considered to be uniquely positioned to him.

The lyrics are concrete and mysterious, yet quite difficult to understand the hidden meaning even after you listen to and read carefully, as usual. As pointed by Yohei in the liner notes, the keywords for this album are flame, or fire, which haven't appeared in his song so much before. Fire started from the album title track "Thirty People Away", which was inspired by the bombing incident in Myanmar (as I've learned from Shin's Twitter), and it spread all over the album. The song which acts for the fire/flame image is the second song of the album "Fire Balloons", which I believe is not merely the main track of this album but represents Tamas Wells’ music together with "Valder Fields" or "The Northern Lights". Fire balloons - the song title alone could rouse your imagination.

There's a tendency this time that the sad and pitiful lyrics sung on the upbeat (for him) tune, just like his early song "Stitch In Time". For instance, "Her Eyes Were Only Scars", which has this scary title and relatively concrete lyrics. Will Tamas explain the background of this song before he sings next month, just like he used to do for "I'm Sorry That The Kitchen Is On Fire"?

On the other hand, the last tune of the album "Your Hands Into Mine" which seems to be written about his daughter has the darkest mood, despite its heartwarming title and the material. I guess the two contradicting feelings, hope and desperation are tightly connected each other just like two sides of a coin in his mind, since he has been too long in the town named the End of Strife, where he's seen desperation everywhere.

Talking about the dark mood, the fifth and eights track (as usual?) of the album are the instrumental tunes. If this were the soundtracks of a movie, you would wonder in what sad scene these tunes are used. The piano player for these tunes must be Anthony Francis.

11 tracks for only 34 minutes (again, just like his album always). I can't count how many times I've already listened to this album in only 5 days since I got it. It's not the level like "must be in my top 10 list of the year", but it's like "what else could be above this if this is not the No.1".

The illustration on the front cover is my favourite among all his albums, though I haven't had enough time to look at the real one since I've been out for business trip (it's a bit hard to take out the disc & the booklet though). There are houses in different shapes in the inner cover and the booklet. I agree what Yohei mentioned in the liner notes that the ground part where these houses are built on looks just like the blood. Nevertheless, it looks quite innocent with these houses on it. You might call it the House of Hopes on the Ground of Desperate.



There will be gigs of Tamas Wells in Tokyo and Kyoto in the first weekend next month, after two years' blank. The same members as the Singapore gig, with Kim Beales on guitar as the replacement of Nathan Collins who is busy taking care of his new born baby :) It says Kim will be the opening act like the Steadfast Shepherd (a.k.a. Nathan Collins) did the last time. If only I hadn't got the ticket for Jonsi on Saturday, I'd follow them to Kyoto. Well, never mind. There'll never be another chance to see Tamas / Jonsi / Tamas in one weekend.

Tamas Poster.jpg Tamas Poster back.jpg



I couldn't finish this article while I was in Sydney and on the plane. When I've finished it at home in Tokyo, I've noticed the news Aung San Suu Kyi has been released from her house arrest. I haven't had time to check the news during the trip. Yes, finally. At last. Tamas must be talking about this hopeful news finally happened in the town called the End of Strife on the stage next month, with his usual innocent smile.
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2010年11月01日

イタコ - Ben Folds / Nick Hornby

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ベン・フォールズ/ニック・ホーンビィ 『Lonely Avenue』

きっかけは人それぞれなはず。

誰かは、1956年にエド・サリヴァン・ショーに登場したエルヴィス・プレスリーを観て感銘を受けたのかもしれない。別の誰かは、1977年にマンチェスターのクラブにセックス・ピストルズを観に行き、自分の人生が少し違った方向にずれるのを感じたのかもしれない。もしくは、1980年代の日本のとある郊外の新興住宅地で、情操教育に熱心な母親に買い与えられたピアノを夢中で練習する子供だったのかもしれない。

なにがきっかけだったにせよ、音楽を好きになった子供が、やがて自分でも演奏したい、歌いたい、自分の音楽を作りたいと思い始めるのはごく自然なことだろう。

そんな人たちの中から、自分の音楽の才能に気付く者が沢山でてくる。練習すればするほど楽器の腕前が上がる人。聴く者誰もの心を揺さぶる声を持つ人。時代を越えて歌い継がれる曲を作ることのできる人。あるいは、音楽的な才能はそれほど飛びぬけたものではないかもしれないけれど、人並み外れたルックスで勝負ができる人。そんな、自分の次の世代に、自分が得たのと同じきっかけを与えられる人たち。

でも、言うまでもなく、世の中にはそんな選ばれた人たちよりも、自分には音楽の才能がないと気付いてしまう人の方が遥かに多く存在する。そんな彼らは(「僕らは」と書こうか)、やがてギターの弦を張り替えることもしなくなり、二次会のカラオケボックスで妥協することを覚え、ノートの後ろの方のページに書いた気恥ずかしい自作の歌詞のことなんてすっかり忘れてしまう。

それでもやはり音楽に対する愛情を捨てきれない、音楽を通して誰かに何かを伝えたい人は、他人の作った音楽を通じてそれを達成しようとする。自分が感じている気持ちを歌ってくれているアーティストや自分の衝動を代弁してくれる音を出すバンドは、世の中に沢山いるから。そういう人たちは、DJになったり、レコード会社に勤めてコンピレーション・アルバムを作ったりすることで、自分を表現する(あるいは、ヘタクソな文章をブログに書き散らして、ネット上にばらまく)。



92年、アーセナルに向けた執拗なまでの愛情を綴ったノンフィクション/自伝『Fever Pitch』が、そのきめ細かな感情描写と如何にも英国的な自虐的ユーモアが意外なほどに受けた挙句に映画化されるに至り、その処女作に続く次回作は、フィクション/小説という形を取ってはいるものの、作者ニック・ホーンビィは、より自分自身を真摯に投影した物語にするつもりだったはずだ。

その次回作『High Fidelity』が当然の如く大ブレイクし、世界中の優柔不断で自分勝手な音楽オタク達にあれはまさに自分の物語だと錯覚させた後、彼がしたことは(実際に次に書いた『About A Boy』を今度はヒュー・グラント主演のヒット映画に仕立て上げたことをあえて端折ると)、31曲のポップ・ソングを彼一流の感傷的でありながらユーモアに溢れた文章を添えて並べたエッセイ集、その名も『31 Songs』を発表することだった。

そこに取り上げられた曲の数々、ティーンエイジ・ファンクラブに始まり、ブルース・スプリングスティーンからスイサイド、グレゴリー・アイザックスからO.V.ライト、ロイクソップを経てパティ・スミスへと回帰する、一見支離滅裂のようでありながら、これを書いた彼があの『High Fidelity』のロブだと思えば妙に納得してしまう選曲。

この本は、ニックが作って世の中に発表した、初めてのコンピレーション・アルバムだ(もちろん彼のような人は、これ以前に数百ものミックステープを作ってきたはずだが、それらを聴く恩恵にあやかれた彼の幸運な友人や恋人以外は、残念ながらその存在を知ることはないだろう)。当然これは本だから、“アルバム”と呼ぶのは正しくないかもしれない。でも、この本の第一章、前書きとして置かれた「Your Love Is The Place Where I Come From」を読むと、僕にはその曲が元々収められていた『Songs From Northern Britain』を聴くよりも確実に心に響く。繰り返して言う。このエッセイ集『31 Songs』は、それほど優れたコンピレーション・アルバムだ。

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ニック・ホーンビィ 『31 Songs』

本が出たときから既に予定されていたのかどうかは知らないが、そのエッセイ集をベースにしたCDが03年に発売された。今やアマゾンジャパンのどこを探しても見当たらないが(上のリンク先は別ジャケットの同じCDがマーケットプレイスに出品されているアマゾンUK)、全31曲のうち1枚のCDに収録可能な18曲をピックアップしたこのアルバムは、他人が作ったコンピレーション・アルバムにはあまり興味をそそられることのない僕にとっては珍しい、かなりリピート率の高いCDとなった。

1曲目はもちろん、ティーンエイジ・ファンクラブの名曲「Your Love Is The Place Where I Come From」だが、それに続く2曲目がブルース・スプリングスティーンの「Thunder Road」だというところに、如何にニックがあのエッセイ集を書いた際に実際の音の流れを想像していたかというのが如実に表現されている。この曲を知る人なら誰でも、「Thunder Road」なんてA面1曲目以外の何ものでもないと思うだろう? そういう人には是非この秀逸なコンピレーションを聴いてみてほしい。



ニック・ホーンビィが実際に楽器を演奏したり歌を歌ったりするのかどうかは僕は知らない。きっと想像するに、プロとしてデビューできるほどの腕前ではないんだろう。でも、彼はこの本をもって、音楽家としてのデビューを果たしたと言っていい(コンピレーションCDはあくまでもこのエッセイ集に載っていた曲を知らない人達に向けての副産物だ)。

そんな彼が次に企んだのは、自分が書いた歌詞を、自分を代弁してくれるアーティストの曲に乗せ、それを演奏してCDとして発表してもらうことだったと考えるのは不思議な流れではないだろう。贅沢な望みだとはいえ、そこは腐ってもニック・ホーンビィだ(別に腐ってないけど)。『High Fidelity』を読んで、あれは(かつての)自分の物語だと思ったプロのミュージシャンは山ほどいただろう。だからこそ、あの御大ブルース・スプリングスティーンまでがノー・クレジットで映画『High Fidelity』に出演したんだろうし。ニックさえその気なら、手を上げるアーティストは沢山いたに違いない。

ニックが相棒として選んだのは、『31 Songs』の中でも特にその洞察力と感情描写に秀でた歌詞を評価していたベン・フォールズだった(その本の中でも僕の大好きな章の一つである「Smoke」で)。そのベンにあえて歌詞を書かせず、11の自作の歌詞を託し、CDにライナーノーツを寄せたニック。更に、上に写真を載せたスペシャル・ヴァージョンには、彼の短編小説が4つ収録されている。

このアルバムを、ベン・フォールズとニック・ホーンビィのコラボレーション・アルバムと捉えるのは自然なことだろう。CDショップに行けば当然ベン・フォールズのコーナーに置いてある。人によっては、スランプに陥ったベンがニックに歌詞を依頼したと勘繰るかもしれない。でも僕にはこれが、残念ながら音楽的な才能には恵まれなかったニック・ホーンビィによる、『31 Songs』を経てようやく完成したファースト・アルバムのように思える。それも、ベン・フォールズという、ニックの世界観を表現するには世界でも指折りのイタコを使って作った作品。

実際にこのアルバムがどういう経緯を経て作製されたのかは知らない。でも、この推察が正しいとすると、きっとどの曲も詞先だろう。それを証明するかのように、ブックレット冒頭には、ニックによる全曲解説が載っている。彼の詞がベンによってどう完成されたかを綴った、短いけれど彼ならではの言葉のセンスが詰め込まれた解説。

昨年の来日公演でも披露された、このアルバムを代表するスロー・バラッド「Picture Window」に寄せられた、ほんの二行しかない解説の一節。

 この曲は私が頭に思い描いてたよりも少しテンポが速すぎる気がするけど
 それは単に聴いているあなたがほんの少し早くほろ苦い気持ちになるだけのこと


上手いよね、こういう言い回し(僕の日本語訳がその上手い言い回しを上手く伝えられているかどうかはともかく)。とにかく、こういうニック・ホーンビィ節が、ライナー・ノーツから全ての曲の歌詞、それから4つの短編小説に至るまでびっしりと詰め込まれている。通常版のCDがどういう作りになっているのかは知らないけど、厚手のケースに収められたハード・カバーの本のような造りのこのスペシャル・ヴァージョンは、やはりこの作品がニック・ホーンビィ主導で作られたのではないかという僕の持説を後押ししてくれているようだ。

4つの短編小説は書き下ろしの新作ではなく、これまでニックがあちこちで発表してきたもののようだ。クラブの黒服からギャラリーの警備員に転身した男の語り口による『Nipplejesus』、自分の息子がポルノビデオに出演していることを知ってしまった母親の話『Not A Star』、ニックにしては珍しくちょっとSF風味の『Otherwise Pandemonium』、ヨーロッパの架空の小国に住む少年の話『Small Country』。どれも僕は今回初めて読んだけど、面白かったよ。

まだろくに肝心の音楽の話を全然書いてないのに、もうこんな量になってしまった。手短に書くと、まるで『31 Songs』のように、そして『High Fidelity』のように、ニック・ホーンビィの音楽趣味が色濃く反映されたものになっている。ニック自身によるライナーから固有名詞を拾ってみた。ドク・ポウマス、ブルース・スプリングスティーン、エルヴィス・コステロ、テディ・ペンダーグラス。で、実際に演奏して歌っているのが、ベン・フォールズと。まあ、そういうことだ。

何名かのゲスト・ミュージシャンが参加しているが、殆どの楽器の演奏はベン自身によるもの。そして、ストリングスのアレンジメントを施しているのが、巨匠ポール・バックマスター。僕は普段クラシック楽器の音なんてそれほど注意して聴いているわけじゃないけれど、こういうのを聴くと、本当に素晴らしいストリングス演奏というのがどういうものなのかがよくわかるね。

『Songs For Silverman』にせよ『Way To Normal』にせよ、ベン・フォールズのスペシャル版CDというのはどうも一般受けが悪いようで、あちこちのCDショップで在庫処分扱いを受けているのをよく見かける。今でも十分に評価の高いアーティストだと思うんだけど、どうしてCDが売れないんだろう。せめて、この素晴らしい作品が同じような目に合わないように願っているよ。英語の小説なんて読めないからと躊躇している人も、勉強だと思って(あるいは、お布施だと思って)これ買ってみてよ。
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2010年10月11日

逃避行 - Gin Blossoms

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ジン・ブラッサムズ 『No Chocolate Cake』

4年前のちょうど今頃。LAに出張する機会があり、空港での待ち時間を利用してCDを8枚ほど買いこんできた。その8枚の中でも僕が大層気に入り、立て続けにこのブログに取り上げたうえ、その年の年間ベストアルバムの第四位と第三位に選んだのが、一昨日の記事にしたレイ・ラモンターニュの前々作『Till The Sun Turns Black』と、今日これから書くジン・ブラッサムズの前々作『Major Lodge Victory』だった。

その後、レイ・ラモンターニュは08年に、ジン・ブラッサムズは09年に、僕にとってはちょっと今一つの(なので記事にはしていない)アルバムを出した後、今年になってまたほぼ同時にニューアルバムを発表し、僕がたまたまそれらをアマゾンで一緒にオーダーし、つい先日一緒に届いたのもまたなんか妙な偶然。ちなみに記事の順番は逆だったけれど、そのレイ・ラモンターニュの記事を書いたのがちょうど4年前の今日だった。

派手さ・話題性皆無なのも共通していると言っていいだろう。音楽性はずいぶん違うけれど、どちらもアメリカ音楽最後の良心と言っても過言ではないような音。他にも偶然共通する歌詞が出てくるとかあるけど、そんなの書いてると長くなるし、レイのことは一昨日書いたばかりで今日改めて書くことはあまりないので、今日はジン・ブラッサムズの話を。

4年前の記事にも書いたとおり、新しいアルバムだからといって音楽性ががらりと変わるようなバンドじゃない。今作もまた、いつもどおりの疾走感溢れる曲ばかりが11曲。とはいえ、いくつか目立った変化もある。

まず一番最初に気付くのは、上に載せたダサいジャケット。これまでの彼らのアートワークって、取り立てて素晴らしいものばかりというわけではなかったけれど、前作の薄曇りの青空とか、音楽性に見合ったこざっぱりしたものが多かったはず。それが一体どうしたことか。これはちょっと、よほどのファンでもなければ購買欲そそられないよね。ニセモノかと思ったよ。

音楽的な面から見ると、解散前も再結成後もずっとプロデュースにあたっていたジョン・ハンプトン(John Hampton)の名前が見当たらないこと。今回はバンドメンバーによる初のセルフ・プロデュース(デビュー時からのプロデューサーと別れて初のセルフ・プロデュースというところも、レイ・ラモンターニュのニューアルバムとのもうひとつの偶然の一致)。

それがまた、全11曲中、7曲がギターのジェシ・ヴァレンズェラ(Jesse Valenzuela)と元レンブランツ(The Rembrandts)のダニー・ワイルド(Danny Wilde)の共同プロデュース、3曲がヴォーカルのロビン・ウィルソン(Robin Wilson)によるプロデュース、そして最終曲がジェシ、ダニーとリード・ギタリストのスコッティ・ジョンソン(Scotty Johnson)3名によるプロデュース。一体なんでそんなバラバラにやるんだ?仲悪いのか?

そして、再結成時に唯一戻ってこなかったオリジナル・ドラマーに代わって前作でドラムスを叩いていたスコット・カズミレック(Scott Kusmirek)は今回1曲だけに参加。残りは新規でメンバー扱いされているジョン・リチャードソン(John Richardson)という人が担当。

「もうとにかくこのアルバムを聴いて僕の印象に残るのがドラムの音」。4年前の記事に僕はこう書いた。今回のアルバムも当然のようにスネアの音で幕を開けるほど、ドラムスの音が全体の音作りの中で重要な位置を占めている。今回のドラマーもとてもいいんだけど、この手のライヴ・バンドに於いて、サウンドの要となるべきドラマーが固定しないというのは、かなり致命的ではないだろうか。

といった、いくつかの変化を別にすれば、先述したとおり、いつもどおりのジン・ブラッサムズ。疾走感いっぱいなのに、聴いていると何故か切なくなるメロディーライン、正統派アメリカン・ロックの直系としてイーグルズやポコの流れを汲む素晴らしいハーモニー、そして、やはり僕はこのバンドのここが一番好きだったんだと今回改めて気付かされた、ロビン・ウィルソンのタフなくせに甘い声。

全11曲、どれも粒よりなんだけど、欲を言えば、このアルバムといえばこれ!というキラー・チューンが欲しかったかな。デビュー作『New Miserable Experience』なら「Hey Jealousy」、「Until I Fall Away」、「Found Out About You」。セカンド『Congratulations I'm Sorry』なら「Follow You Down」、「As Long As It Matters」。前作『Major Lodge Victory』なら「Learning The Hard Way」、「Come On Hard」といったところ。

今作で強いて言えばどれだろう。「I Don't Want To Lose You」か「Go Crybaby」か。アルバム中唯一のスローナンバー「If You'll Be Mine」もいいね。なんだか今の気分に左右されてそうなチョイスではあるけれど、前作のように一回聴いただけで「これ!」とわかる曲がないのも事実。まあ、逆に言うとどれも皆おしなべてそこそこ高水準とも言えるんだけどね。

ところで、ちょっと調べ物をしているときに気付いた。このアルバム、iTunesだとボートラが1曲追加されてるんだね。なんでわざわざ高い金払って、ダサいジャケ(笑)のCD買って、現物がドンブラコと届くまで何週間も待たされて、おまけに曲数まで少ないんだ? CD売上が落ちているとか言うけど、その一因はこういう訳のわからない商品設定だろうが。でも、いいよ。どんな扱いを受けようと、僕は多分ずっとCDやLPを買い続けるから。ボートラの「Please Don't Ask Me」もそのうち再発盤とかシングルのカップリングとかで入手できるだろうし。


三連休の中日の今日、昨日から朝まで降り続いていた雨も昼までにはあがって、空が高く見える薄曇りのいい天気になった。まるで『Major Lodge Victory』のジャケみたいな。3年前に日本に戻ってきてから一度も車を運転していないけど、今日はなんだか無性にどこかに行きたくなった。本当はどこまで行っても羊と牛しかいないようなNZの田舎道を頭をからっぽにして延々と走れたらいいんだけど、そんな贅沢は言わない。自分では買わないような真っ黒なオープンカーを借りて、Tシャツの上に合皮のジャケットを羽織って、誰も僕のことを知らない、誰とも口をきかなくていい場所へ。どこか観光地でもなんでもない山奥がいいな。そんなとき、レンタカーのカーステでずっとリピートしているのはきっとこのアルバムだ。
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2010年10月09日

前の季節の終わりに - Ray LaMontagne and The Pariah Dogs

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レイ・ラモンターニュ 『God Willin' & The Creek Don't Rise』

あんなに暑かった夏。誰もが口を揃えて異常気象だと言っていた季節。あまりにずっと続いてたから、いつのまにか、なんとなく、あのままずっと終わることなんてないような気がしていた。そんなことあるはずないのに。でも、なんだかんだ言っても、居心地よかったんだよ、僕は。不快なほど暑くても、やっぱり夏だからね。

オフィスの中ではまだ腕まくりをするぐらいだったそんな一日。なんの変哲もない木曜日。駅からの帰りみち、吹き付ける夜風はもう冷たかった。まくった袖を戻しながら、もうすっかり体に馴染んでいたあの季節は終わってしまっていたんだと気づく。

いつもよりちょっとたくさんため息をつきながら帰宅すると、シカゴから届いていた小さな茶色い箱がそこに。ああ、そうか、しばらく前に買い損ねていたCDを何枚かまとめて注文したんだった。

派手なジャケットのCDにまじって、ひときわ地味な文字だけのジャケのこのアルバムから聴くことにした。2年ぶりのレイ・ラモンターニュ。ライヴ盤を除けばきっちり2年毎にアルバムを出している彼。そう思うと、あの大好きだった『Till The Sun Turns Black』からもう4年になるんだな。あの記事を書いたのも、4年前のちょうど今頃だった。それを書いた僕のまわりの季節は今とは正反対だったけれど。

地味なジャケとは裏腹に、たくさんの素晴らしく美しい写真と一緒に収められた内ジャケの写真には、レイを含めた5人のメンバーが仲睦まじく収まっている。

これまでのすべてのアルバムをプロデュースしていたイーサン・ジョンズ(Ethan Johns)とは別れ、今回は初のセルフ・プロデュース。それに、上のジャケをちゃんと読めばわかるとおり、今回からはレイ・ラモンターニュ&ザ・パライア・ドッグス(Ray LaMontagne & The Pariah Dogs)というバンド名義。とはいえ、メンバーは、前作『Gossip In The Grain』でもバックを務めていたギターのエリック・ヘイウッド(Eric Heywood)、ベースのジェニファー・コンドウズ(Jennifer Condos)など、大きな変化はない。

一番の変化はきっと、今回のアルバムの音をまるっきり彼の色に染めている、グレッグ・リーズ(Greg Leisz)の存在だろう。このブログにも何度か名前は登場している(主にマシュー・スウィート関連で)、敏腕ペダル・スティール奏者。

彼の貢献は大きいと思う。ちょっとファンキーなオープニング「Repo Man」とブルーズがかったエンディング「Devil's In The Jukebox」を除けば、あとはいつもながらのレイ・ラモンターニュ色が8曲。そのほとんどで(もちろん前出の2曲にも)ペダル・スティールはもちろん、ラップ・スティール、リゾネイター、バリトン・ギター、アクースティック・ギターなど様々な種類の弦楽器で彩りを添えている。

ちょうど帰りみちに聴いていたマナサスの72年の未発表曲集と同じ匂いがしたと思った。スティーヴン・スティルスの、せつなさという概念をかためたような声とはちょっと違うけれど、6年前のデビューから全然変わらないレイの声もまた、ささくれだった気持ちをなだめてくれるようだ。いつものように、無骨に。

そういえば、偶然だね。さっきリンクした4年前の記事に書いたけれど、この人が曲を作って歌っていくことを決意したのは、スティーヴン・スティルスの「Treetop Flyer」を聴いたことがきっかけなんだった。音的にはそれほど酷似しているというわけではないけれど、そうだな、同じ匂いという言い方がいちばんしっくりくる。

  何が起こってるんか、わかってへん振りできたらええのに
  耐えてみるつもりや、もうちょっとだけな
  でも、俺が倒れそうになったら、誰か支えてくれるかな
  なあ、俺ら、ほんまにもう終わってしもたんかな

アルバム中もっとも静かな一曲「Are We Really Through」が何故か気持ちに沁みる。聴くだけで自分も失恋したような気分になれる曲(笑)。急に寒くなったこんな季節のせいかな。

とても暑かったこの前の季節は、ジェブ・ロイ・ニコルズの『Long Time Traveller』がヘヴィ・ローテーションだった(少なくとも、アラーム祭り開催前まではね)。暑かったけど楽しかった季節の終わりを告げた日に届いたこのCDが、僕のこれからの季節を代表するアルバムになるんだろうな。
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2010年09月20日

砂漠と箱庭 - Tunng

And Then We Saw Land.jpg
タン 『And Then We Saw Land』

変わってないところ: ちょっと悲しげなメロディ。これもシンセで作ってるんじゃないかと思えるほど瑞々しいアコギの音と、それにうまくからまる気持ちのいい電子音。ロバート・ワイアットの声と同じ成分が入っている男性ヴォーカル。

変わったところ: 全編にわたってフィーチャーされるようになった女性ヴォーカル。以前効果的に使われていたサウンドコラージュが減り、そのためか少し開放的になった音作り。ドラムとベース、ギターソロの追加。CDブックレットに必ず付いていたメンバークレジットがなくなったこと。

3年ぶりになるタンの4枚目のアルバム。毎回違ったテイストで執拗に描き込まれたイラストのジャケ。今回のはよく見るとタツノオトシゴが2匹隠れている曼荼羅模様風。グループ名もアルバムタイトルもちゃんと書いてあるんだね。

僕がこの人たちを知ったのが06年のセカンド『Comments Of The Inner Chorus』からで、後追いでファーストを入手したすぐ後にサードアルバムが出たせいか、とにかくひっきりなしにアルバムを出していたような印象を持っていたけど、実際にはクレジットを見ても、最初の2枚が06年、サードは07年だから、確かに2年間で3枚というハイペースでのリリースだったようだ。

それが、3年のブランクを置いての今作。最初に挙げたように、いつもと変わらぬ音のようで、微妙な変化点が見られることに気付いた。もともと、サム・ジェンダーズ(Sam Genders)とマイク・リンゼイ(Mike Lindsay)の二人のギタリスト兼ヴォーカリストが始めたユニットで、これまでのアルバムでもずっと作曲クレジットはグループ名ながら、各曲をどちらが作ったのかはちゃんと明記してあったのに、今回はシンプルに“all songs written by Tunng”という表記のみ。

メンバー名も書いてないし、おかしいなと思って彼らのサイトを見てみたら、しばらく前からライヴ活動には参加していなかったサムが“stepped aside completely”とのこと。これは脱退したと捉えるべきなのか。前作『Good Arrows』ではほぼ全曲を作曲していた中心人物の不在が、上記の変化点として表れていると見て間違いない。

不思議なのは、作曲の中心だったサムが抜けても曲のメロディラインはそんなに変わっていないのに、ずっとプロデュースも手掛けてきた、グループの音作りの中心人物のマイクが残っているのに、今回も変わらず彼が作ったはずの音の感触に微妙な変化があるということ。

ベッキー・ジェイコブス(Becky Jacobs)の透明感のある穏やかな歌声が各曲を印象付けているおかげで、以前のような緻密に作り込まれた箱庭的な音の触感が減っても(というか、減ったおかげでというべきか)、おそらく今作の変化は、より多くのファンを獲得できるのではないかと思う。


Tunng Tinariwen.jpg
タン&ティナリウェン 『Live @ Koko』

彼らの所属レーベルであるフル・タイム・ホビーのサイト限定で、何種類かのパッケージが入手可能。このアルバムのCD版とLP版、トートバッグ、それからここにジャケ写を載せたDVDの組み合わせ。僕はLPで持っておきたいほど好きなジャケじゃなかったこと(あとLP版は少し高いこと)と、あちこちのレコ屋のキャンペーンでもらったLPサイズのトートバッグはもう山ほど持っているので、CD+DVDのパッケージを購入。

アフリカ、マリ出身のトゥアレグ人の「砂漠のブルーズ」バンド、ティナリウェン(Tinariwen)。マリ出身とはいえ、トゥアレグ人とはフランスが19世紀に分割支配したサハラ地域のニジェール、アルジェリア、モーリタニア、リビアなど広範囲に住んでいた人種。そこで遊牧民のような生活をしている彼らに、どこの国出身という意識はあまりないのかも。

リビアのカダフィ議長のキャンプがグループ結成のきっかけになり、ボブ・ディランやボブ・マーリーなどに影響を受け、音楽的にはエレキギターとアフリカの打楽器類を中心にした、北アフリカのアラブミュージックの色が濃く出たブルーズ。そんなバンドと、基本的にはアコギとコンピューターだけでちまちまと音楽を作るタンが一緒にライヴを?

09年の初頭、わずか4日間のリハーサルだけで10日間の英国ツアー。曲間に挟まれたインタビューで、特にティナリウェン側が「難しかった。タンのことは名前も知らなかった。コンピューターと機械に囲まれて演奏をするのは異様だった。我々がどこに向かっているのかわからなかった」ということをしきりに言っていたように、この話はどちらかというとタン側から持ちかけられたようだ。

それでも、双方のグループがインタビューで「意義のあるコラボレーションだった」と語っているように、ロンドンのココといういい雰囲気の会場で行われたこのライヴ(おそらく10日間の最後?)は、全く方向性の違う二つのグループの音がそれなりに溶け合った姿が観られる。去年のライヴだから既に新作に近い開放的な音作りにはなっているものの、それでも砂漠のブルーズの前では非常に箱庭的なタンの音。

アフリカの多くのグループと同じく大所帯のティナリウェンからは、中心人物のイブラヒーム(Ibrahim Ag Alhabib)は不参加。ギターのアブダラ(Abdallah Ag Alhousseyni)、ベース&ギターのイヤドゥ(Eyadou Ag Leche)と打楽器のサイード(Said Ag Ayad)の3人のみ。3人とも、アラブ風の布を顔にぐるぐる巻いているから、素顔がほとんどわからない。ちなみに上のジャケットのイラストは、そのアラブ風の布を巻いた人物と、タンを象徴しているフードをかぶった人物を対比させた、このDVDの内容を簡潔に表したいいデザインだと思う。

DVDは全7曲、47分ほど。タンの曲とティナリウェンの曲を交互に収録。タンのは、ファーストから「Mothers Daughter」と「People Folk」、セカンドから「Jenny Again」、サードから「Bullets」。ティナリウェンのアルバムは僕は1枚しか持っていないけど、そこに収録された「Tamatant Tilay」を演っている。

上のジャケに書いてあるトゥアレグ語のアルファベット、Tifinarhが本編でもうまく使われており、エキゾチックな雰囲気を醸し出している(ちなみにジャケに書いてあるのは、上の行がTunng、下の行がTinariwen。+がTを表すのだろうということぐらいはわかるけど)。本編自体もくどすぎない編集がセンスいいなと思わせてくれる。これなら、繰り返しの視聴にもじゅうぶん耐えられるよ。

英語のタンの曲にはティナリウェンがトゥアレグ語で一部を、トゥアレグ語またはフランス語のティナリウェンの曲にはタンが英語で一部を歌っている。演奏的にも一応お互いが参加しているが、どうもタンの曲になると、サイードがカラバシュ(丸い大理石みたいなのを木の棒で叩く楽器)などで参加するだけで、他のティナリウェンのメンバーは手拍子をとったり踊ったりしているだけで、残念ながらちょっと音楽的にあまり融合しているとは思えない。

ベッキーが鳥かごに入った小鳥のおもちゃで鳥のさえずりをマイクに拾わせ、そこに印象的なアコギのフレーズが被って始まるのは、かつてyascdに採用した「Jenny Again」。イントロのチャイムの音に心がきゅっと締めつけられる。そういえばこの曲を書いたのもサムだったな。この人たちはもうこういう曲は書かなく(書けなく)なるんだろうか。

「泣かなーいで。泣かなーいで」という不思議な日本語SEとピンク・フロイドの「One Of My Turns」そっくりな歌メロの「Bullets」がエンディング。ああ、これもサムの曲だ。彼の“step aside”度合いがどの程度なのかわからないけど、今後も少なくとも作曲では参加し続けてくれないかな。あと、このビデオから判断するに、あのロバート・ワイアットを少し低くしたような声の持ち主は、このライヴでベッキーと共にリード・ヴォーカルを取っているマイクじゃなく、ここにはいないサムのような気がする。だとすると、今回のアルバムにもサムはヴォーカルで一部参加しているということなのか? どうやら、僕が今後もタンのアルバムを買い続けるかどうかは、きっと今後どれだけサム・ジェンダーズ色が薄れずに残っていくかにかかっているんだろうな。
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2010年09月11日

まだ続いています - The Alarm

Direct Action.jpg
アラーム 『Direct Action』

富士登山の後のセミ・オールナイト・パーティーを終えて帰国後、ダブリンでのフェス出演を皮切りに、9月8日からのアメリカ9都市でのツアー、更にUKに戻って11月末まで32都市でのアクースティック・ツアーという過密スケジュールが始まったばかりのマイク・ピーターズ。先日発表された最新ニュースによると、来年1月に行われるビッグ・カントリーの再結成ツアーに、ステュアート・アダムソンの代わりにリード・ヴォーカルとして参加するという。

確かに、04年のライヴアルバムで、ステュアート・アダムソンに捧げた長いMCの後に「In A Big Country」を演奏していたけど、まさかここまでマジで入れ込んでいたとは。アラームとビッグ・カントリーって、そこはかとない垢抜けなさがなんとなく似ているから、マイクのヴォーカル、意外に合うかも。ビッグ・カントリーのファンはどう思うんだろう。

さて、一方こちらは引き続きアラーム祭り続行中。4月に出たこのニューアルバムを、先日のオールナイト・パーティーの少し前に慌ててオーダーしたのに、メールのやりとりの不手際などもあって、残念ながら僕の手元にこのアルバムが届いたのはライヴの3日後。ライヴ当日、会場の物販コーナーで同じものが売られているのを指をくわえて見ていたんだけど、この真っ黒いジャケじゃサインもらってもよく見えないしと、相変わらずのすっぱい葡萄的思考で我慢していた。

“The Alarm”の後ろのローマ数字がとうとうMMXになった11年目の新生アラーム。僕のような古いファンはどうもオリジナル・メンバーのことばかり贔屓目で見てしまいがちだけど、現在のメンバーももう10年一緒に演っているんだと思うと感慨深い。マイクがこのメンバーでアラームを名乗って活動を始めた時は、『Cut The Crap』期のクラッシュを思い起こさせたものだけど、ジョーとポール以外は無名の新人ばかりだった当時のクラッシュとは違い、新生アラームのメンバーは、

  ジェームズ・スティーヴンソン(James Stevenson)
     ギター: 元チェルシー、ジーン・ラヴズ・ジザベル
  クレイグ・アダムズ(Craig Adams)
     ベース: 元シスターズ・オブ・マーシー、ミッション、カルト
  スティーヴ・グラントリー(Steve Grantley)
     ドラムス: 元スティッフ・リトル・フィンガーズ

という、地味なメンツながら80年代UKスーパーバンドだった。どうりで演奏しっかりしてるよね。

今回のアルバムの内容はというと、これもまたいつも変らぬ新生アラーム・サウンド。僕は08年の『Guerilla Tactics』はまだ持っていないので、04年の『In The Poppy Fields』、06年の『Under Attack』との比較しかできないんだけど、04年の「45 R.P.M.」、06年の「Superchannel」に相当する、アルバムを代表するナンバーは、2曲目の「Release The Pressure」だね。

もちろん、冒頭の「Direct Action」もキャッチーな佳曲。先日のライヴで、アラームをほとんど初めて聴いた人たちが、その場でサビを一緒に歌えたと言っていたのを思い出すよ。もしあの晩これを演奏していたとしても、きっと大合唱(というほどの人数はいなかったけど)になったことだろう。

実際にあの晩このアルバムから演奏したのは、6曲目の「One Guitar」。確かステージにブライアンはいたけどグレンはいなかった時と記憶しているから、マイクのセカンド・ステージ(withブライアン)かな。出たばかりの新作からわずか1曲しか演らなかったのは、やっぱり古くからのファンがよく知ってる曲ばかりを聴かせてくれようとしたんだろうね。

7曲目の「Change III」は、89年のアルバム『Change』収録の「Change II」(及びその当時のシングルB面曲「Change I」)の、なんと21年越しの続編。これ今後も延々と続くのかな。

さっきの書き方を続けると、04年の「The Drunk And The Disordery」、06年の「This Is The Way We Are」に匹敵するアルバム屈指の感涙ナンバーは、ラストの「After The Rock And Roll Has Gone」になるのかな。個人的に言わせてもらえば「This Is The Way We Are」を越えてはいないけど(その曲にしても、名曲「Spirit Of '76」の焼き直しと言えなくもないけど)。

そして今回のアルバムも、DVDとの2枚組。DVDは『Under Attack』同様、アルバム全曲のPV入り。と思いきや、アルバム全14曲のうち11曲のPV入り。プラス、アルバム未収録曲のPVが2曲。何故こんな風になっているんだろう。落とされた曲も決して捨て曲というわけじゃないのにな。PVもフィルム撮りのざらっとした画質の、ちょっと手を入れすぎといった感じのものが多く、これも『Under Attack』付属のPV集の方がよかったかなと思う。

でも、比較的ストレートに演奏シーンを収めた「Direct Action」や、ディランの「Subterranean Homesick Blues」風に文字を書いた紙をマイクが一枚一枚めくっていくシーンが印象的な「Release The Pressure」など、PVとして出来のいい曲もいくつかあるよ。


InSessions.JPG

前回の記事に載せたこの2枚のCD、実は、先述したメールの不手際のお詫びのつもりだったのか、送られてきた『Direct Action』に同封されていたもの。こういう気配りが嬉しいね。おかげでその後も立て続けに注文しまくっているよ(またしてもメールの返事がないんだけど…)。

左側のが03年11月のアラーム4人でのセッション+インタビュー。このすぐ後にリリースされる『In The Poppy Fields』のお披露目用だろう。そのアルバムから「Coming Home」と「The Unexplained」、おそらく未発表曲の「The Normal Rules Do Not Apply」、それに代表曲「Spirit Of '76」と「Sixty Eight Guns」を演奏。それぞれの曲間に入っているインタビューがやたら長いので、あまり何度も繰り返して聴くようなものじゃないけどね。

右側のそっけないジャケのは、06年のマイク一人でのアクースティック・ギター弾き語り+インタビュー。時期的に『Under Attack』のリリース時のFM放送用のようだ。こちらもインタビューを交えているが、11曲も演奏している。前回「All The Young Dudes」を歌い終わったときに「Sorry, David」って言ったと書いたけど、今日聴き直してみたら、間奏時に苦笑しながら言ってるね。「This Is The Way We Are」を歌い終えた瞬間にホストが思わずもらしたコメント「Outstanding!」に、心から同感。


今日は短い記事になるだろうと思っていたのに、やっぱり相変わらずの長さだな。この辺までくるともう多分うさぴょんさんぐらいしか真面目に読んでくれていないかもしれないけど、しょうがないね。多分来週ぐらいにマイク・ピーターズ・オフィスから大量のCDが届くはずなので、僕のアラーム祭りはまだ当分終わりそうにないよ。
posted by . at 23:28| Comment(7) | TrackBack(0) | アルバム | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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