2016年12月04日

Tamas Wells live in Shenzhen

中国に住んでてよかったと思えることなんてそう滅多にあるもんじゃないけど、これだけはひそかに期待していた。そして、思ったより早くその期待は実現した。今のところ最後の来日になる2014年6月から約2年半、ここ中国でタマス・ウェルズのライヴを観る機会がまた巡ってきた。

会場は地下鉄の橋城北駅から徒歩すぐのなんだかおしゃれな地域。A1、A2…とブロックごとに名前のついた一角にあるB10 Liveという名前のライヴ会場は、何故かB10ブロックではなくC2ブロック全部を占める、思ったより大きなハコだった。橋城北はうちから電車一本で行けるものの、万が一迷うといけないと思ってかなり早めに家を出ておいてよかった。改装工事中だったB10ブロックにまずたどり着いたときには、一体何がおこっているのかと焦ってしまった。

そうして迷いながらも開場の1時間も前にB10 Liveに来てみてびっくり。もう既に何十人も並んでるよ。整理番号も何もないから、とにかく並んだ順に入場。慌てて近くのバーで重慶の辛い麺と生ビールを腹に入れ、会場に戻って列の最後尾に並ぶ。これじゃ、ちょっと期待していた最前列なんてとんでもないな。

開場時刻の20時になる結構前(10〜15分ぐらい前かな)に、列がどんどん動き出す。きっと、あまりに列が長すぎて、早めに開場することにしたんだね。綺麗な作りのロビーに入っていくと物販エリアがあって、おなじみのタマスのCDと並んで見たことのない安っぽいジャケの09年北京公演のCD/DVDが売っていたから、迷わず購入。見るからに海賊盤ぽいんだけど、ちゃんとポケットレコーズから出てるオフィシャル盤なんだね。おまけにバッヂももらえてうれしい。

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だだっ広い会場に入っていくと、もうステージ前には人がびっしり集まっていて、左右の壁に沿って置いてある椅子もほとんど埋まっていた。まだ開演まで30分以上あるし、中途半端に真ん中あたりで見るよりはいいかと思い、左側の壁沿い中ほどの椅子に腰かけて待つことにした。会場の広さは、そうだな、東京でいつもタマスが使う会場で言うと、O-nestを縦に三つつなげて、天井を体育館並みに高くしたぐらい?

その大きな会場が、開演時刻の20時半近くになるともうほぼ満員。後ろの方に若干の余裕があったとはいえ、あれはたぶん600〜700人ぐらいは入っていたんじゃないかな。もちろん、座ってる僕の目の前にももうたくさん人が来ていたので、とても座ったままじゃ観られない。

ステージを見ると、マイクスタンドが2本、アコギとエレキ、キーボードが左右2台、後ろにはドラムキットもある。事前にどのサイトを見ても参加メンバーがわからなかったから、きっと今回はタマスのソロかと思っていたんだけど、バンドなんだね。ドラムまであるということはネイサンも来ているだろうし。あとは、前回来日時と同じくアンソニーとクリスかな。それともギターはキムかな。

20時30分ちょうどに中国語と英語でアナウンスがあり、会場が暗転。ものすごい大歓声に迎えられて、タマスと2人のメンバーが登場。ネイサンはドラムキットのところでなくステージ右手に行き、置いてあったフェンダージャガーを肩にかける。ドラムの人は誰だろう。新メンバーかな。アンソニーもクリスもキムもいないや。結構長く伸びた髪の毛をきちんとセットし、グレーのジャケットを着たタマスは、いつものマーティンのアクースティックギターを持ってステージ中央に。

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オープニングは「Vendredi」。歌い始めた途端、僕のすぐそばで「キャーッ」と大声を張り上げる女性ファン。すごいな、日本でのタマスのライヴじゃ想像もできないよ。何人かはタマスに合わせて歌ってるし。まあ、ステージで何が起こってようとずっと友達同士でしゃべり続けてるようなのもあちこちにいるんだけどね。まあいいや、中国のライヴがこんなんだってのは前からYouTubeとか見てわかってるから、こっちは集中してステージを観てよう。

「Writers From Nepean News」の後、タマスが中国語で自己紹介。「こっちは友達のネイサン。友達は“朋友”でよかったよね?」って言うだけで大歓声。そして「こっちのクリスは友達じゃない」と笑わせる。あ、この新キャラもクリスって名前なのか。タマスたちよりちょっと若い感じかな。彼はドラムス、キーボード、メロディカ、ウクレレ担当。あと例のチーンって鐘も。

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「真夏のメルボルンから南京に着いたら雪が降ってたんだ。深圳はなんていい気候なんだ」とか言いながら、セカンド以降の4枚のアルバムから満遍なく選曲されたセットが進む(セトリは最後に)。新譜からの「The Treason At Henderson's Pier」の後、「最近覚えた曲があるんだ。うまく歌えるかどうか自信ないけど」と言って、なんと中国語の歌を披露。もちろん大歓声。そして見渡す限りのスマホ動画撮影者。後で調べたら、「宝貝(Baobei)」って曲だった。これがオリジナル。これがタマスのあの声で歌われるのを想像してみて。



「誰か二人、ステージに来て手伝ってくれないか。口笛の吹ける人がいいんだけど」というのはもちろん「A Riddle」の時。うち一人はどうやら曲を知らなかったようで、例の口笛のフレーズをタマスが主旋律を歌ってる横でずっと吹いてるもんだから、歌ってるタマスも聴いてるこちらもちょっと苦笑い。まあでも、よくできました。

さっきクリスがいろんな楽器を担当してると書いたけど、もちろん彼が動くときはネイサンも別の楽器を担当する。器用な彼のことだから、ギター、キーボード、ドラムスそれぞれそつなくこなし、タマスの声に合わせてハーモニーを入れる。タマスは基本的にギターで、「Melon Street Book Club」をはじめ数曲でキーボードも弾いてたな。

久しぶりに聴く曲はいくつかあったけど(基本的に彼のライヴを観ること自体が2年半ぶりなので何でも久しぶりなんだけど)、新曲はないし、こんなの聴いたことなかったってのはさっきの中国語の曲だけ。曲の紹介にしても、タマスがまたこの話をし始めたなと思った時点でもう次が何の曲かわかってしまうから、「人間には理性に支配されている面ともっと内面から出てくるところがあって」という話をしたときに、あ、次は「Valder Fields」だと先に読めたんだけど、いざタマスがその曲目を口にすると、それはもうものすごい大歓声。そして、大合唱。うわ、こんなタマスのライヴ初めて。

「Valder Fields」の次に「The Northern Lights」と、僕内タマスソングベスト3のうち2曲みたいなのが続く。残る1曲も今回のツアーで演奏していることは知っていたから、もしかしたら本編終盤のここで3曲続けて演るのかなとも思ったけど、本編ラストはまた「何人かステージに来てくれないか。今度はコーラスが要るんだ」と、「I'm Sorry That The Kitchen Is On Fire」。タマスはもう「次の曲はThe Kitchen Is On Fire」としか言わないね。実話だかどうだか結局よくわからない例の逸話ももう紹介しないし。

男女2人ずつ、それぞれみんな背の高さの違う子たちがステージ左手のマイクのところでスマホに歌詞を映しながらコーラス。違うところから上がってきてたから友達同士じゃなかったんだろうけど、なんだか絵になるね。僕ももっと前にいたら手を挙げてステージに上がりたかったんだけど、残念ながら十数メートル離れたこの壁際から中国人をかき分けて前進する勇気はなかった。いきなり(おそらく)会場内最年長みたいな日本人が出て行ってもみんなびっくりしただろうし。

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それが本編ラスト。3人がステージ脇に消えると、すぐさまアンコールを求める歓声。でもこっちの人は「アンコール!」って言うだけで拍手とかしないんだね。そして、すぐに再登場。タマスはキーボードのところに行き、ネイサンがエレキ、クリスがドラムで始まったのは「Fire Balloons」。僕にとってのタマスソングベスト3の三つ目。これ確か前のツアーじゃ演ってないから、ずいぶん久しぶりに聴くことになる。

そしてこれが、ものすごいバージョンに化けていた。タマスが歌い終えた後、キーボード、ギター、ドラムの三つの楽器がそれぞれ同じフレーズを延々と繰り返しながら、どんどん高揚していく。クリスのドラムなんて、決して上手くはないんだけど、どこのハードロックバンドかというぐらいの激しさ。右腕をぶんぶん振り回して憑りつかれたように叩き続けている。

確か前回のツアーでは、エフェクターを通したクリス・リンチのギターの音と、ネイサンがiPadやらなんやらで出す効果音が不思議な空間を作っていたんだけど、今回はまた違った意味で、聴いているこちらの神経が麻痺してしまうようなドローン効果を生み出していた。まさかタマス・ウェルズのライヴでこんな爆音を聴くことになろうとは。

果てしないと思われた「Fire Balloons」でもう終わりだろうと思っていたら、最後は3人が真ん中のマイクに集まって、タマスのギター、クリスのウクレレ、3人の声だけで「Grace And Seraphim」でエンディング。ああ、これは美しいラストだな。

1時間半があっという間だった。しばらく会場にたむろしていたら、楽器を片付けに来るタマス達に会えるかなと思ってたけど、警備員に追い立てられてしまった。しょうがないので会場の外へ。物販には長蛇の列が。開演前に買っといてよかったよ。

外にもしばらくいたんだけど、たぶんまだ数百名残ってるこの場所でたとえタマス達に会えたとしても、とても話なんてできないだろうから、楽しかった余韻を味わいながら地下鉄の駅に向かった。

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後日談:タマスとネイサンにライヴの感想と撮った写真をメールしたら、2人から「会えると思って終演後に外を探したのに」って言われてしまった。ああ、そうだったんだ、もったいないことをした。新メンバーの名前はクリス・ヘルム(Chris Helm)といって、子供が生まれたばかりのクリス・リンチの代わりの参加だそうだ。でも、クリス・リンチが戻ってきたとしても、もう一人のメンバーよりはキーボードも上手く、ドラムも叩けるクリス・ヘルムが外れることはないんじゃないかな。この先、あの人懐っこいアンソニーに会えることはもうないのかなと、ちょっと淋しくなってしまった。


Setlist 27 November 2016 @ B10 Live Shenzhen, China

1. Vendredi
2. Writers From Nepean News
3. Thirty People Away
4. Lichen And Bees
5. Melon Street Book Club
6. The Crime At Edmond Lake
7. The Treason At Henderson's Pier
8. 宝贝
9. A Riddle
10. Signs I Can't Read
11. England Had A Queen
12. Never Going To Read Your Mind
13. Bandages On The Lawn
14. Moonlight Shadow
15. I Left that Ring On Draper Street
16. The Opportunity Fair
17. For The Aperture
18. Valder Fields
19. The Northern Lights
20. I'm Sorry That The Kitchen Is On Fire

[Encore]
1. Fire Balloons
2. Grace And Seraphim
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2016年01月11日

Other live performances in 2015

去年は32のライヴに行った。単純平均すると一月あたり2回より多く3回よりは少な目という感じか。これを読んでくれている人から見ると多いのか少ないのか、微妙なところかも。ただ、気に入った人を何度も観に行くということが多いから、実際観たアーティストはそこまで多くないんだけどね。たとえば、マット・ジ・エレクトリシャンは去年二回来日して、僕は東京近郊で観られる5回全部を観たし、グレン・ティルブルックも来日4公演に加えてUKでもスクイーズで観たから合計5回。32回のうち約1/3はその二人ということか。

3月末にグレンのライヴを観てそれまでほぼ休眠状態だったこのブログを立ち上げなおしたので、それ以前、去年初頭のライヴについては何も書いていないし、それ以降に観たものでもいくつかは忙しかったりとかいろんな理由でパスしてしまったものもあったので、完全に闇に葬り去ってしまう前に、それらのライヴについて覚えていることを少しずつ書いておこう(実際は2014年の後半にもブログに書いていないライヴにいくつか行っているんだけど、そこまで網羅するのも大変なので、あくまで去年一年間のレビューということで)。記憶の片隅をこそげ落としながら書くことになるので、大したことは書けないとは思うけれど。


1月12日 Haruka Nakamura @ 永福町 Sonorium
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今からちょうど一年前の三連休の最終日。初めて観るタイプのライヴ。リサイタルっていえばいいのかな。開始前には、寝てしまうんじゃないかなんて不安がっていたのが嘘のような、とても贅沢な時間を過ごした。ピアノと、いくつかの弦楽器と、厳かなコーラスと、蝋燭の炎。美しいものを経験すると、なんだか人間が一回り成長した気分になるね。実際にはそんなことなくてもね。機会があればまた観てみたい。


2月7日 Radical Face @ 光明寺
2月15日 Radical Face @ Nui

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インパートメント関連が続く。ラディカル・フェイスも、来日したら東京でのライヴには全て足を運んでいるアーティストだ。『Family Tree』の二作目お披露目ツアー。前回のジャックとジェレマイアに代わって、ヴィオラ・ダ・ガンバ奏者であるベンのパートナーのジョシュが同行。光明寺と浅草Nui、どちらも甲乙つけがたい素晴らしい夜だった。『Family Tree』最終作がもうすぐ出るから、また近いうちに来日してくれるかな。


3月1日 The Pop Group @ Liquidroom
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まさかポップグループを観られる日が来るなんて。思えば34年前に『For How Much Longer Do We Tolerate Mass Murder?』を聴いたのが、僕が音楽にここまでのめり込むことになったきっかけだった。ライヴではそのアルバムから一曲も演奏されなかったのが心残り。と思っていたら年内に再来日。残念ながら出張と重なってしまったんだけど、そこではセカンドアルバムからも演奏したというから、悔しさひとしお。


3月23日 Dylan Mondegreen @ 月見ル君想フ
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いつの間にか来日が決まっていて、慌ててチケットを押さえた記憶がある。別に新譜が出たわけでもなかったのに。作成中だというニューアルバムからも数曲演奏したけれど、ちょっとどれも印象が薄かった気がする。もうそろそろ出るのかな。前座として演奏した、台湾から来日したフォー・ペンズもよかったけど、僕にとってのこの日の一番の収穫は、一番手でステージに上がったシュガー・ミーを知ったこと。


3月26日 The Soft Machine Legacy @ Billboard Live Tokyo
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たまに来るビルボードの無料チケット。なかなかタイミングが合うことがないんだけど、今回は他に予定がなかったので行ってみた。きっと、現メンバーの中では古参のドラマー、ジョン・マーシャルが来られなくなったので、席が埋まらなかったんだろうな。時々知ってる曲はそれなりに楽しめたけど、なんだかやっぱりちょっと敷居が高いよ。ソフト・マシーンのアルバムならもっと楽しいのにな。


6月27日 Seth Walker @ Cafe Goatee
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3月末からは順調にブログも復活してたのに、6〜7月にライヴがかなり立て込んできた時にこれが抜け落ちてしまった。全然知らないアーティストだったけど、ゴーティの松本さんのお勧めで最新アルバムを買い、ライヴにも行ってみた。昨今の僕にとってはちょっとブルーズ風味が強いかなとも思ったけど、まあ、この手のアーティストで松本さんの推薦に外れはないからね。ふらっと行ってみてよかった類のライヴ。


11月8日 Anglagard & Anekdoten @ New Pier Hall
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カケハシ・レコードのおかげで、去年中盤はずいぶんとプログレ趣味に揺り戻したものだった。アネクドテンは昔のCD一枚しか持ってなかったし、アングラガルドはその時点では試聴しかしたことなかったのに、ユニオンのプログレ館でまだ比較的いい席が空いていたのでついチケットを買ってしまった。ダブルヘッドライナーということで、フルセットのライヴが二本。堪能できたけど、疲れたよ。脚を伸ばせる席でよかった。


12月18日 Yo La Tengo @ O-East
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なんだかんだでヨラテンゴを観るのもこれで三度目。相変わらず曲名はほとんど覚えられないんだけどね。今回は初期メンバーのギタリスト(ペダルスティールなども)も参加して、新作からのカバー曲を中心に(ほとんど知らない曲ばかりだったけど)いつものような爆音やアイラのキレッキレのアクションもなく、穏やかに和やかに過ごした二時間。こういうヨラもいいね。ジェームズにはもう少し歌ってほしかったけど。


これらと、ブログに書いた23のライヴが去年一年間に観たもの。今年はもう決まっているのはまだ一つだけだけど、今週あたりからちらほらと行きたいライヴの情報が出始めてきたので、そろそろまた手元に何枚ものチケットが集まってくる気がする。
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2015年09月14日

期待値超え - Squeeze

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Squeeze 『Cradle To The Grave』

もうほとんど休止状態だったこのブログを半年ぶりに更新してみようという気にさせてくれたのは、今年の3月のグレン・ティルブルックの来日公演だった。そして、それ以前もその後も、もはや自分が行ったライヴの記録メモとしてしか機能していないここに、調べてみたら2年8か月ぶりにアルバムについて書いてみたい、いや書かずにおれないと僕を奮い立たせたのも、やっぱり同じ人(たち)だった。

新曲からなるオリジナル・アルバムとしては1998年の『Domino』以来17年ぶりとなるスクイーズの新作。2007年の再結成以来、過去曲の再録やライヴ盤、ライヴ会場での録音即売盤、デモ音源集など、マメに追いかけようと思ってもとても全部は集めきれない(特に膨大な数の即売盤)ほどのアイテムが出ていたし、グレンはその間も何度も来日してくれていたから、17年なんてブランクはもちろん感じなかった。

あのときのメンバーをスクイーズと呼ぶのが適切なのかどうかいまだによくわからない『Domino』は申し訳ないけど中途半端な出来のアルバムだった。そして、今回のアルバムに収められることになるいくつかの曲の原型は、2012年の即売盤やデモ集、そして今年初頭のグレンのソロライヴでも披露されていたから、ある程度の内容は想像がついていた。またしても申し訳ないけど、どの曲の原型を聴いてもまあそこそこの出来だよね、という程度の感想しか持っていなかった。

8月13日にスクイーズのサイトでこのCDが1000枚限定で発売されるとの告知。何が限定なのかさっぱりわからなかったけど、躊躇なく注文。送料も含めるとべらぼうな値段になったけど、しょうがない。これまでも決してセンスのいいジャケばかりじゃなかったスクイーズの歴代のアルバムの中でも群を抜いて酷いジャケだけど、それもしょうがない。なんだかわからないけど限定らしいから、またこれが入手不可能なんてことになったらえらいことになる。

先週末、出張から戻ってきた僕の目の前には、見覚えのあるQuixotic Recordsのロゴの入った封筒が。やった、届いた。8月28日の発送開始から約二週間だから、たぶん日本では一番早く入手できた中の一人なんじゃないかな(ドヤ顔失礼)。

上にもリンクを貼ったアマゾンには10月9日発売と書いてある。しかも予定価格は僕がサイトから買った値段(送料込み)の半値ほどだ。むう、限定じゃなかったのか? じゃあ僕の手にしているこのデジパックが限定? それともこのブックレットとは別に入っている切符のレプリカみたいなのが限定? まあなんだかよくわからないけど、とにかくオフィシャル発売の一か月以上も前に入手できたんだからよしとしよう。

さて、ここからは中身について書くから、オフィシャル発売を待って買おうと思ってる人や、スクイーズのサイトからまだ届いてない人で、もしネタバレが嫌ならここで読むのをやめてもらったほうがいいね。


裏ジャケに書いてある全12曲中、これまでなんらかの形で聴いたことのあるタイトルは「Cradle To The Grave」、「Beautiful Game」、「Top Of The Form」、「Haywire」、「Honeytrap」、そして、アルバム先行シングル(盤は出てないけど)としてPVが出回った「Happy Days」の6曲。今年のグレンのソロライヴで、ニューアルバム用の曲と言って演奏した何曲かのタイトルがないね。

いろんな形でもう何度も聴いてきたオープニングの「Cradle To The Grave」の、これは新録。そこから間髪入れずにどんどん曲が繰り出されてくる。初めて聴く「Nirvana」も悪くない。グレンのライヴで聴いた「Beautiful Game」がこんなにいい出来に仕上がってるなんて。そして、久々にスクイーズらしいシングル曲「Happy Days」。

10月に出るLPは2枚組で、ここに収められた12曲がA〜C面に4曲ずつ収録されるのにリンクして、このCDでもそれぞれ4曲ずつがほとんど曲間なしでつながっている。スクイーズにしては珍しい作りだね、こういうの。でも、そういうつなぎも曲順もよく練られてるよ。プロデューサーがグレンとローリー・レイサムだけど、ローリーのいつもの過剰なまでの装飾音とかはうまく抑えられてる。ちなみにLPのD面はボートラ4曲収録予定。

一昨年に出たグレンの『Happy Ending』がやっぱりグレン本人とローリーの共同プロデュースで、正直言わせてもらうと僕にはあのアルバムはそこそこの出来の曲をローリーならではのオーバープロデュースでなんとかやっつけた、若干いただけないアルバムだった。大好きなグレンのアルバムをけなしたくはないんだけど。すごくよかった来日公演のメモリアル盤でもあるし。

でも、今回のアルバムは曲と音作りのバランスが非常によく取れている。さっき書いた曲間のつなぎはあくまでもさりげなく、余計な音はきっぱりと省かれて、そしてなによりも、やっぱり曲がいいよ、今作は。いや、そりゃ「Another Nail」とか「Up The Junction」みたいなのが入ってるかと言われたら、そんなのは最早ないものねだりに近いから無茶言うなってなもんで。それでも、この12曲中、少なくとも半分は僕はライヴで何度も繰り返して聴いてみたくなる曲ばかりだ。そんなバランスのアルバムをスクイーズが出したのって、一体いつ以来だ?

音の感触が何かに似ていると思ったら、『Pandemonium Ensues』だ。ああ、それで僕はこのアルバムを一回目からこんなに好きになってしまったんだな。なんでそんなに似てるんだろうと思ったら、あ、そうか。演奏メンバーがほぼ同じなんだよね。ベントレーが辞めて代わりのベーシストがルーシーになったと聞いたときにはあまりにも予定調和というか、またクリスが拗ねて辞めてしまうんじゃないかと危惧してしまったもんだけど、たぶんサイモンとスティーヴンにとっては、ルーシーのベースの方がしっくりくるんじゃないだろうか。きっと、グレンも。

演奏メンバーが「ほぼ」同じと書いたのも、ブックレットに書いてあるクリスの担当楽器がアコギだけなのに対して、グレンはリードギター、ムーグ、アイパッド、ムーグベース、チェレステ、ティンパニ、ウクレレ、オルガン、パーカッション、ベース、ミニムーグ、シタール、エレクトーン、ストリングス。ついでにスティーヴンはウーリッツァー、ピアノ、オルガン、チェレステ、シンセ、メロディカ。リズム隊の2名は省略するけど、このバンドの音ほぼグレンとスティーヴンで作ってるようなもんだよね。

演奏面でクリスの影が薄いのは今に始まったことじゃないけど、今回ちょっとあれ?と思ったのは、歌詞があまりにもストレートなこと。「Happy Days」なんてPVで観たときにクリス作だなんて信じられなかったほどのあっけらかんとした能天気な歌詞。きっとどこかに僕が聴きとれなかったオチがあるに違いないとブックレットを追ってみたけど、肩すかし。変化球を待って打席に立っていたら、予想外のストレートで見逃し三振。みたいな感じ。

強いて言えば、若者のリビドーを描いた「Haywire」なんかはいかにもクリスが書きそうなタイプの曲かもしれないけど、それにしても彼がこれまでに書いてきた数々のDVや離婚やアル中や猟奇殺人についての曲に比べると、おとなしいよね。まあ、まだ歌詞までじっくり読みながら聴いたのは数回だけだから、これからちょっと深読みしつつ繰り返して聴いていこう。

2012年以降にいろんな形で聴いてきた曲が沢山と書いたけど、曲がりなりにもシングル扱いだった「Tommy」がないなとは思ってたんだ。だから、LPで言うところのB面ラスト、これも新録の「Top Of The Form」の次にあのお馴染みのストリングスが聴こえてきたときにはびっくりした。「Sunny」って、タイトル変えたのか。このアルバムはBBCの同名ドラマのサントラということだから、その登場人物か何かにちなんで変えたんだろうか。これからライヴでこの曲を歌うときは、どっちの歌詞で歌うんだろう。

すっかりかっこよくなって出直してきた「Honeytrap」(デモ集のときは二単語だったのに、微妙にタイトル変更)に続いての「Everything」ってなんか聴いたことある。と思ったら、これグレンがライヴで演ってた「You」じゃないか。歌詞も替わって、タイトルも変更したんだね。

なので、グレンが年初にライヴで披露したにもかかわらず結局ボツになったのは、「Wait」だか「Weight」だかタイトルがわからなかった、ピアノで弾き語りをした曲だけ。結局あの曲名の謎は解けないままか。このアルバムのアウトテイク集が出るのは何十年後のことだろう。

ふう、もうだいたい書きたいことは書いたかな。まだ届いて二日で10回も聴いてないから、これから聴き込んでいったらまた新たな発見とかあるかも。感想も変わるかもしれないし。そのときは追記しよう。

そうそう、ひとつ嬉しく思った発見があった。ブックレットの最後、山ほど書いてあるサンクスクレジットの中に、ジュールズ・ホランドの名前が。しかも、クリス単独のところじゃなくてグレンとクリス連名のところに。なんかちょっと歩み寄りがあったのかな。聞くところによるとジュールズのレイターにスクイーズが出演するらしいから、激久し振りにジュールズ入りスクイーズの演奏が観られるんだね。はやくネットに上がらないかな。


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2012年09月29日

復活の挨拶 - Squeeze

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Squeeze 『Live At Th Fillmore』

前の記事から7週間以上もブランクを空けてしまったのはこのブログを始めて以来初めてのことかも。今朝久しぶりにアクセス記録を見てみたら、全然更新していなかったこの7週間の間にも結構なアクセスがあったようで、ありがたいやら申し訳ないやら。きっと皆さん、もうここは更新されないかと思い始めた頃かもしれないね。

僕がこのブログを始めて、グレン・ティルブルックやスクイーズについてあれこれ書き始めた頃には、よもや後にグレンとクリスが仲直りしてスクイーズが再結成するなんて、ファンの誰もが(期待こそはすれ)本当に起こるとは思いもよらなかったはず。10年近くのブランクを置いて見事に復活したスクイーズにちなんで、僕の52日振りの記事は、ちょっと時期を逸してしまったけれど、彼らの最新アルバム、『Live At The Fillmore』について書くことにしよう。

07年に、元々バック・カタログと新しいベスト・アルバムをプロモートするために(当時は一時的なはずだった)スクイーズは再結成を果たし、そのときのツアーを記録した『Five Live』をリリース。その後、グレンとクリスが久々に一緒に新曲を書いているという噂に反してリリースされたセルフ・カバー集『Spot The Difference』が出たのが10年の夏。その直後に、サンフランシスコはフィルモアでのライヴ録音を収録したボーナスディスク付きのバージョンも出て、新しいのが出たらすぐ買う熱心なファンほど馬鹿を見るという経験も味わわされた。

そして、今年の4月になってオフィシャルサイト+アイチューンズ限定でリリースされたのが、今回取り上げるこのライヴ・アルバム。なんだか、再結成してもう5年も経つというのに、ライヴ盤とセルフ・カバー集しか出してないなんて、傍から見たらもう立派な金目当ての再結成レトロバンドだと思われても仕方ないよね。しかも、LP2枚組の今回のアルバムの1枚目は『Spot The Difference』の再発盤と同じ内容ときた。

3000枚限定ということだったので、アナウンスされた直後にオーダー。うちに届いたのが6月16日で、それからすぐにブログに何か書こうと思ってたのに、こんなに遅くなってしまった。ちなみに、さっきオフィシャルサイトを見てみたら、まだ入手可能みたいだね。たった3千枚が半年近くも売り切れずに残ってるなんて、全世界のスクイーズファンはもうレコードプレイヤーを売っ払ってしまったか、もしくはスクイーズオフィシャルが3千枚と煽っておいて実は3万枚ぐらいプレスしているかのどちらかだな。

『Spot The Difference』に付属していた方の10曲入りライヴ盤、あれはあれでベストヒット的内容でまあそれなりに納得はしてたんだけど、それにしても変な曲順だとは思ってたんだよね。本編の『Spot The Difference』が一見とりとめないように見える曲順でいて実はアルファベット順だったという謎解き(というほどのものでもないけど)があったから、前半に大ヒット曲ばかりを詰め込んで後半どんどん地味な曲が増え、(いくらアメリカでのシングルヒット曲だとはいえ)『If I Didnt't Love You』なんて歯切れの悪い曲で終わるなんて、いくらおまけ盤だとはいえ、なんて中途半端な選曲かと。

その謎解きは2年後にやってきたというわけ。まあ、熱心なファンはきっと当日のセットリストを調べて、先のおまけ盤は当日のライヴ前半しか収録していないということぐらいはとっくにわかっていたのかもしれないけど。というわけで、『Cool For Cats』から始まるLPの2枚目まで全部通して聴くと、この日のセットがいかに楽しいものだったかがよくわかるという仕組みになっている。

このブログで何度も書いてきたグレンのソロ・ライヴ同様、ファンなら誰でも一緒に歌えるヒット曲と、全アルバムをしっかり聴き込んだコアなファンが聴いてみたいと思うような隠れた名曲が絶妙なバランスで混ざり合っている。もちろん、一人で2時間以上にわたって30曲以上も演奏するグレンのソロに慣れてしまった身としては、あの曲もないこれも無いという気にはなってしまうけれど、それは贅沢というもの。

さっきも書いたとおり、A面トップから3曲、通常のグレンのライヴなら本編最後からアンコールにかけて演るのが定番な大ヒット曲が続く。B面での意外な聴きものは「It's So Dirty」のグレンのギターソロかな。若干荒くはあるけど抜群のタイム感で弾き倒す感じが最高にかっこいい。あとB面では『Difford & Tilbrook』アルバムから「Hope Fell Down」を演ってるのも個人的には満足。どの曲のときだったか、「小さなステージは楽しいね」とグレンが言ってるけど、フィルモアってそんな小さな会場なのかな。

LPを買ったらMP3がダウンロードできるコードが付いてくる。基本的にLPとMP3の内容は(後述する大きな違いを除けば)同じなんだけど、一点違うところに気がついた。LPはB面の最後「If I Didn't Love You」が終わったところでフェードアウト。それは『Spot The Difference』のボーナス盤と同じなんだけど、MP3バージョンだとその曲が終わって歓声がフェードアウトせずに突然次の「Cool For Cats」のイントロが入ってくるところがものすごく快感。

その曲に加え、珍しい「Someone Else's Heart」でもクリスはソロで歌う。僕は特に好きな曲でもないけど、グレンのソロ・ライヴでは当然聴くことはなかったから、この曲をライヴヴァージョンで聴くのは初めてかも。ちょっとマイナー調なその曲に続けて明るい「Mumbo Jumbo」を今度はグレンが歌うところも、スクイーズというグループの特徴をよく表しているね。

その曲から間髪入れず出てくるC面5曲目の「Up The Junction」からD面全部まで通して、再び大ヒット曲集。鉄壁。さっきの「It's So Dirty」もそうだったけど、いろんな曲でグレンが追加でギターソロを長めに入れる。調子いいときのグレンってこうだよね。

最後の「Pulling Mussels (From The Shell)」であー終わったと思っていたら、LP版は最後にシークレットトラックが。おそらく『Spot The Difference』のときのアウトテイクだと思われる、とある名曲の「Differenceだらけの」セルフ・カバー。グレンがこれぐらいのテンポで歌うのを彼のライヴで見たことはあるけど、バンド・バージョンでこうして聴くのは初めて。アイチューンズのダウンロードもいいけど、LPを買うファンのためにこういうのをちゃんと隠しておいてくれるところが嬉しいね。

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LPは4面とも違った色合いのレーベルが付いたホワイトヴァイナル。こういうのは持ってるだけで楽しくなるね。本当は色とかついてない方が音はいいのかもしれないけど、そこまで聴き分けられる耳があるわけでもなし。

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そして、LPにはおまけのポスターとかステッカーとかいろんなおまけがついてるのがまた嬉しい。CDが出ないからと躊躇しているスクイーズファンの皆さん、3000枚だか30000枚だかがなくなってしまう前にこれ買っといた方がいいよ。まあ、もうしばらく躊躇し続けてても当分なくなりそうにないけどね。
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2010年12月25日

サイレント・ナイト - Peter Broderick / Tamas Wells

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ピーター・ブロドリック 『How They Are』

「誰もが悲しそうにしている」と無伴奏で静かに歌い出されるオープニング曲「Sideline」。しんとした静寂の中、落ち着いたクルーナー・ヴォイスの独唱がそのまま訥々と続き、これはこういう曲なんだと思い始めたころ、1分32秒のところで突然奏でられるピアノの音が殊更心に響く。

名前だけは前から知っていたけど、CDを通して聴いたことがなかったピーター・ブロドリックの最新作をふとしたことで安く入手できたので、早速聴いてみた。彼一人の演奏と歌だけが入った全7曲、30分強のコンパクトなアルバム。7曲中3曲がピアノの弾き語り。2曲がアクースティック・ギターの弾き語り。残り2曲がピアノのインスト。全曲スタジオでの一発録りのようだ。

上に写真を載せた、どんよりとした雲の下の雪の積もった街並みを銀色がかったグレー単色で印刷したジャケットが、このアルバムの内容をよく表している。美しいけど、悲しみがたくさん詰まった音楽。裏ジャケに載っている、屋根の上にぽつんと立ったアンテナの写真ですら悲しそうに見えてしまう。

所属はべラ・ユニオン(Bella Union)なんだね。このレーベル、僕はフリート・フォクシズやミッドレイクがぱっと頭に浮かぶけど、ちょっと調べてみたら、アンドリュー・バードとかアート・オブ・ファイティングとかもそうだった。他にも、気になっているけどまだ聴いていないフィリップ・セルウェイとか、MOJOのコンピで聴いたロウ・アンセムとかもいるね。ちょっとこれからしばらく、ここレーベル買いしてしまいそうな気配。

このアルバム、特にクリスマス・アルバムというコンセプトじゃ全然ないんだけど、全体を覆うこの静かな雰囲気がなんだか厳かな気分にさせてくれる。今年の僕のクリスマス・アルバムにしよう。別に今日しか聴かないというわけではなくね。年の瀬にいいアルバムに出会えたよ。安く買えたし(笑)、自分へのクリスマス・プレゼントだ。


クリスマス・プレゼントといえば、タマス・ウェルズとリリコ・レーベルから今日(24日)、素敵なプレゼントが届いた。先日の来日公演で初公開されたショート・フィルム『The Houses There Wear Verandahs Out Of Shyness』が、今日から1月16日までの期間限定でオンライン公開され始めた。

The Houses There Wear Verandahs Out Of Shiness.jpg

あの夜あの場所に居た人達も、残念ながら来られなかった人達も、ぜひ観てみてほしい。特別何が起こるわけでもない他愛もないストーリー(というほどのストーリーすらない)だけど、タマス・ウェルズが好きな人にはきっと気に入ってもらえると思う、とても素敵な映画だ。あるいは、この24日間で、きっとタマス・ウェルズのことを好きになる人が増えるだろう。リンクはこちら↓

The Houses There Wear Verandahs Out Of Shiness

丁寧な日本語訳はリリコ・レーベルの仕事。あ、そういえば、さっきのピーター・ブロドリックもリリコ、というか、インパートメント/p*disのオンライン・ショップで扱ってるから、タマス・ウェルズのファンの皆さんはアマゾンなんかで買わずに(笑)そちらでどうぞ。とか言ってる僕はうっかり別の店で買ってしまったんだけどね。ごめんなさい。これでタマスの次回の来日が1554円分遠くなってしまった(笑)

では皆さん、よいクリスマスを。
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2010年12月24日

北国の人達 - Woodpigeon / Pascal Pinon

12月3日、早稲田奉仕園スコットホールでのこと。開場と同時にホール内に入り、まず前の方に席を確保して、1月のシンガポール公演からほとんど一年振りのタマス・ウェルズのライヴをわくわくしながら待っていた僕は、場内に流れている静かなBGMに気がついた。あ、これブロークン・フライト。

ステッドファスト・シェパードもかかった。ウィンターピルズも。そんなセンスのいい選曲をするのは、もちろん主催者のsinさんだろうな。そんな中、僕は聴いたことなかったけど、すごく気になる曲がかかった。これ誰だろう。

次々に入場してくるお客さんの相手で忙しいsinさんを捕まえて訊いてみる。「今かかってるこれ、誰?」。「ウッドピジョンですよ」。え、そうなの?僕ウッドピジョンのCD持ってるのに、そう言われるまでわからなかった。


そう、あれは今を遡ること3年とちょっと前。そのときもタマス・ウェルズの東京公演のことだった。そのライヴを観るためにニュージーランドから駆け付けた僕と、僕が書いたタマスのセカンドアルバムのレビューにコメントを寄せてくださった一本道ノボルさんとの邂逅。ライヴ後の打ち上げで終電まで語り合った後(そうか、あの頃は終電までに帰るという一般常識を持ち合わせていたんだな、僕たちは)、彼が僕に教えてくれたバンドがあった。「これ、タマスの次にLiricoから出したんですよ。また僕がライナー書いたんで、よかったら聴いてみてください」。

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ウッドピジョン 『Songbook』

タイミングというのは大事なものだ。NZに帰って聴いてすぐにいいアルバムだと認識はしたものの、初の生タマスを観た直後の僕は、それからしばらく他のCDなど聴く気もおこらず(今回初めてタマスのライヴを経験された方ならこの気持ちをわかってもらえるでしょう)、1〜2回聴いただけでCDラックにしまい込んでしまった。一本道さん、ごめんなさい。


それから3年。sinさんから衝撃の事実(?)を聞かされた僕は、12月3日の夜(というか4日の未明)、タマス熱に侵されたままの頭で、CDラックから『Songbook』を引っ張り出してきてCDプレイヤーに乗せてみた。3年前より少しは地に足のついた冷静な気持ちで。

こんなにいいバンドだったなんて。

カナダ人シンガー・ソングライター、マーク・ハミルトン(Mark Hamilton)を中心とした7人編成の大所帯バンド。ライナーで引き合いに出されているスフィアン・スティーヴンスやベル・アンド・セバスチャンを連想させる、繊細なメロディーをこざっぱりとしたアレンジで奏でる(大所帯なのに)、凡百のインディーバンドとは明らかに一線を画すセンスのよさ。このジャケ画もいいが、ブックレットに描かれたいくつかの不思議なイラストも大好き。あのときブログに載せなかったのは明らかに失敗だった。

4日後、sinさんのブログに、「Tamas Wells Japan Tour 2010 ツアー後記の前に・・・SEプレイリスト」という記事が載った。あのときかかっていたBGMの選曲リストだ。ウッドピジョンの曲は「Redbeard」というのか。調べてみると、今年の初めに出たサード・アルバムに収録されている曲だ。それにしても、この選曲いいな。これCD-Rに焼いてくれないかな(笑)


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ウッドピジョン 『Die Stadt Muzikanten』

というわけで、早速この最新作を入手。15曲入りのフルアルバムというのはまあ珍しくもないけど、聴いてみたら更にシークレット・トラックが1曲、さらに12曲入りのボーナスディスク『Balladeer』まで封入という、なんなのこのボリューム(笑)。しかも、その全28曲がどれもこれも珠玉のメロディーだというこの凄さ。大げさに言いすぎるのを避けると、確かにそれほどでもない曲もいくつかあるけど、尋常でないクオリティの曲が次から次へと出てくるところが凄いよ。

埃だらけの古いレコードを模したアルバムタイトルトラックからいきなり彼らの(というか、マーク・ハミルトンの)世界にすっと引き込まれる(ちなみに、ファーストでは作曲クレジットにのみ使われていたMark Andrew of the Hamiltonsという名前が、このアルバムでは正式名称として使われているね。それが本名なのか?)。11曲目「Redbeard」はやはり名曲だね。イントロから最初のヴァースに入る箇所なんて、胸をかきむしられるような気持ちになる。

危なかった。こんなに優れたバンドを丁寧に紹介されておきながら、むざむざ自分の中で葬り去ってしまうところだった。早いとこセカンドも買おう。そっちにもボーナスディスクが付いてるみたいだし。


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パスカル・ピノン 『Pascal Pinon』

『Die Stadt Muzikanten』と一緒に買ったのが、サイトで試聴してすぐさま気に入ったこのアルバム。16歳の双子のアイスランド人姉妹だって。アイスランド語の曲と英語の曲が入り混じって出てくるけど、なんかアイスランド語って不思議な語感だね。前にシガー・ロスのライヴに行ったときに、ステージ上でヨンシーとキャータンが交わすアイスランド語がなんだか天使が話してるように聴こえたけど、これもそんな感じ。

アイスランド語で歌われる1曲目「undir heidum himni」で全編に亘って奏でられる不思議な管楽器の音は何だろう。内ジャケに書いてある楽器クレジットにバード・フルートってのがあるな、これかな。2曲目「arestidir」の人懐っこいメロディーはどこかで聴いたことがあるような気がする。何だっけ。この曲の鉄琴の音もいいね。

こういうのもローファイっていうのかな。全部姉妹の部屋で作りました、みたいな手作り感満載のこのアルバム、30分にも満たない軽い感じだけど、同じアイスランドでもビョークやシガー・ロスみたいに完璧に創り込まれた手の届かない世界でなく、アミーナの閉じた不思議な世界に通じるところがある。

和訳されたインタビューを見つけた。このグループ名、フリークスについての本から取ったと書いてあるね。道理でこの名前で検索かけたらなんだか不気味な男の写真がいっぱい出てくるわけだ。


ところで、僕がこの2枚のアルバムを買ったのは、タマス・ウェルズの日本でのディストリビューションをしているインパートメント/p*disのオンライン・ショップ。上に載せたアルバムタイトルに張ったリンクは一応アマゾンに飛ぶようになってて、もしあなたがそこでポチッとクリックしてこれらのCDを買ってくれたら僕の手元に何十円かが届く仕組みになっているんだけど、そんなのはどうでもいいから、もしあなたがこれらのアルバムを聴いてみようと思ってくれたなら、是非こちらのオンライン・ショップで買ってほしい。

別にsinさんが友達だからとか、ましてや彼に宣伝してくれと頼まれて書いてるわけじゃない。僕はただ、この会社にはどんどん儲けてもらって、そのお金で一回でも多くタマス・ウェルズを日本に呼んでほしいという、完全に自分のことだけを考えてそう言ってるだけ。今ならパスカル・ピノンのCDにはポスターも付いてるし、お得ですよ(今見てみたら、このCDまた在庫ナシになってるけど)。僕でも知らないようなアーティストのCDが満載だけど、だいたいどれも試聴できるようになってるから、気になったものはどんどん聴いてみればいいし。

とか書きながら自分でもまたこのサイトに行ってみたら、最近また新入荷が何枚かあったみたいだね。ちょっといくつか聴いてみて、ウッドピジョンのセカンドと一緒に買おうかな。Tシャツ好きとしてはかなり気になるデザインのシャツもいっぱいあるし。
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2010年11月16日

贅沢 - Tamas Wells

The English translation follows the Japanese text.

Thirty People Away.jpg
タマス・ウェルズ 『Thirty People Away』

シドニーに来ている。

例によって休暇や観光じゃなく短期滞在の出張なので、せっかくのからっとした夏も単に暑いとしか思えないのが残念だけど、せいぜい会社で取ってくれた立派なホテルの大きな窓から夜景を眺めながら(でも、妙なところでけちるから、窓の端の方にぴったり顔をつければハーバーブリッジがかろうじて見えるという微妙な位置の部屋で)これを書いているところ。

前回のアジア出張から一旦東京に戻り、その翌々日にまたシドニーへ来るという強行スケジュールにしたのは(シンガポールから直接シドニーに入った方が、時間的にも体力的にもよほど楽なんだけど)、なんとしても11月11日に自宅にいる必要があったから。そう、予約していたタマス・ウェルズの新作が届いているはずの日だ。

帰国したその日、思っていたよりも大ぶりな小包に入っていたのは、沢山の梱包材に丁寧に包まれた紙ジャケCDと、来月の東京公演のチケット2枚、予約特典のダウンロードクーポン、それに、sinさんのツィッターで製作過程をずっと見ていたハンドメイドのオーガニックソープがひとつ。「先着四名様限定」というのは冗談かと思っていたのに、まさか僕のところに送られてくるとは。乾燥が不十分なのでしばらく空気に触れさせておいてほしいという注意書きを読んで、封を開ける。いい匂い。なんだかもったいなくて、使えないよ。このまま部屋に置いておこうかな。この『Thirty People Away』のジャケ画の入った注意書きと一緒に。

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どうも最近調子の悪いPCになんとか音源を取り込み、シドニー出張に備える。でもその前に、やっぱりこのアルバムは最初はきちんとスピーカーから音を出して聴いてみたくて、CDプレイヤーに乗せる。

しばらく前からLiricoのサイトでこのアルバムの音源が試聴できるようになっていたのは知っていた。だけど、僕はこのアルバムをそんな風につまみ聴きするようなことはしたくなかったから、しばらくあのサイトには立ち寄らないようにしていた(行くとついクリックしてしまいそうだったからね。笑)sinさんのブログやツィッターをはじめ、その試聴音源を聴いたという人達の絶賛の声は読んでいたけれど、僕はこの日まで、例によって不思議な雰囲気満載の曲名とジャケ写だけを見ながら、ずっと我慢していた。その音が、ようやく僕の部屋で奏でられる。夜なので、すこしボリュームを絞って。



これまで僕がタマス・ウェルズについて書いてきた文章のいくつか。

> 初めての出会いのあまりの衝撃に、ほとんど何も書くことのできなかったセカンドアルバム『A Plea En Vendredi』について。
> 当時入手困難だったファーストアルバム『A Mark On The Pane』をようやく探し当て、ありったけの知識を込めて書いたもの。
> 当時僕が住んでいたNZから海を越えて駆け付けた、待望の初来日公演。
> サードアルバムにしてタマス・ウェルズ初のソロアルバム『Two Years In April』についての果てしない長文。
> 二度目の来日公演を三夜分まとめて。
> 二度目の海外追っかけ。シンガポール公演について。

さて、いったい僕はこのタマス・ウェルズによる新しいアルバムを聴いて、これ以上何を書けるんだろう。『Two Years In April』のときよりさらに増量した駄文を重ねるべきだろうか。もしあなたが僕のブログをずっと読んでくださっているなら、またいつもと同じような表現で同じようなことをダラダラと書いていると思うかもしれない。そしてもしあなたが偶然(タマス・ウェルズという名前で検索をかけて)ここに来てくださったのであれば、今ここにリンクを張ったいくつかの文章を(たっぷり時間がかかるのを覚悟のうえで)読んでもらえれば、彼の音楽がどういうものかはわかってもらえるだろう。もちろん、ちょっと聴いてみたいという方は、さっきリンクしたLiricoのサイトに行けば、今でもこの新作が試聴できるようになっているはずだ。

一言でまとめるなら、今回のアルバムは、あらゆる意味でとても贅沢なものだ。もちろん、中に収められている音は、豪華絢爛という言葉とは程遠い、いつもながらのタマス・ウェルズの音楽。たとえて言うなら、贅を尽くした食材を潤沢に使った懐石料理。上質の素材だけを使って丁寧に編まれた、素朴なデザインのセーター。醸造されたばかりの、その後数十年熟成されることが定められたヴィンテージのウィスキー。そういったものと同質の贅沢さ。

「あらゆる意味で」と書いたわけ。まず、これまで聴いたことのなかったタマス・ウェルズの曲を、こんなに一度にふんだんに聴ける贅沢。思えば、前作が出てから2年間の間、途中にライヴを二度観ているとはいえ、強度のタマス・ウェルズ渇望症(笑)に罹っていた僕は、彼の初期の曲が収録されたポップブーメランのコンピレーション2枚を入手し、その2曲を慈しむように聴いていたものだ(実は、それらの曲自体は、某友人を通じてずっと以前に聴かせてもらっていたので、初めて聴いたという新鮮な驚きはなかったんだけどね)。その状況と比べると、11曲もの全く新しい曲を、こんな風に続けざまに聴けるなんて、なんと幸せなことか。

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『Shake Yer Popboomerang Volume 2』
『Planet Of The Popboomerang Vol. 2』

そんなオタク的感想はさておき、内容の贅沢さについて。今回のアルバムが、ヤンゴンの自宅でほぼ一人で宅録された前作とはうって変わって、プロデューサー兼ドラマーであるネイサン・コリンズの住むタスマニアのホバートのレコーディングスタジオで、今年に入ってタマスと一緒に活動しているギタリストのキム・ビールズや弦楽器奏者二名を含めた拡大タマス・ウェルズ・バンドの面々と共に録音されたという事実は以前から聞いていたが、それがアルバム冒頭「The Crime At Edmond Lake」のオープニングの最初のクリアなギターの一音を聴いただけで如実にわかる。途中に子供の叫び声も入ってないし(笑)

ホバートのスタジオでの録音風景を勝手に転載させてもらおう。ため息が出るほど素晴らしい環境だよね。今いるシドニーも少し郊外に車で走れば大きな庭のある家や沢山の街路樹が目に入るけど、同じ国でもやっぱりこういう場所は別世界だね。

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この恵まれた環境で、沢山の気の合うメンバーと一緒に、(800円のミャンマー製ではなく)バンコクで手に入れたマーティンのアクースティックギターと、弦楽器やキーボードなど、きっとミャンマーでは入手することすら難しいであろう楽器をたくさん使って録音されたアルバム。インスト2曲を含んだ構成が(インスト曲の配置のされ方も含めて)最初の2枚のアルバムを踏襲しているところからも、やはり前作だけは、本人にとっても異色な位置づけのアルバムだったのだろうということがわかる。

具体的かつ意味深なタイトルなのに、実際に聴いても読んでも、相当深読みしないと意味の掴みづらい歌詞もいつも通り。ライナーで大崎さんも指摘されているとおり、今回のキーワードは火、炎といった、これまで彼の曲にはあまりなかったイメージ。ミャンマーでの爆撃事件がきっかけになった(と、sinさんのツィッターを読んで初めて知った)アルバムタイトル曲「Thirty People Away」を中心にして、アルバム全体に燃え移ったものだろう。そのイメージを代表しているのが、今作を代表する(というか、「Valder Fields」や「The Northern Lights」などと一緒に、タマス・ウェルズの代表曲になり得るであろう)アルバム2曲目「Fire Balloons」。なんか、このタイトルだけでも、想像力をうんとかきたてられるよね。火の風船だって。

初期の「Stitch In Time」のように、悲しく可哀想な歌詞をあえて(彼にしては)明るめの曲調に乗せて歌うという傾向が今回も伺える。「Her Eyes Were Only Scars」という、悲惨なタイトルとアルバム中では比較的具体的な描写のある歌詞を持つ曲などがそうだ。タマスは来月のライヴでこの曲を歌う前に、この曲の背景を教えてくれるだろうか。あの「I'm Sorry That The Kitchen Is On Fire」のように。

その一方で、おそらく彼の一人娘のことを歌っていると思しき最終曲「Your Hands Into Mine」は、その暖かなタイトルと題材にも関わらず、どういうわけかこのアルバム中もっとも沈んだ曲調だ。戦いの終わりという名を持ちながら、実際にはいたるところに絶望ばかりを見てしまうヤンゴンという街に長く住む彼の中では、希望と絶望という相反する感情がまるでコインの裏表のように密接に結びついているのかもしれない。

沈んだ曲調といえば、いつものとおり(?)アルバム5曲目と8曲目に配置されている二つのインストゥルメンタル曲。もしこれが何かの映画のサウンドトラックだとしたら、一体これらはどんなに悲しい場面のBGMなんだと思ってしまうような曲。ピアノを弾いているのはどちらもアンソニー・フランシスだろう。

全11曲、わずか34分しかないこのアルバム(彼のアルバムはいつもそんな感じだけど)、手に入れてからまだ5日しか経ってないのに、もう何十回聴いたかわからない。「今年のベスト10入り確実」なんてもんじゃない。「もしこれが1位でなければ何をこの上に持ってこられるのか」というレベルの作品。

ずっと出張に出ているのでなかなか実物を手に取って見ることのできていない、いつもとはちょっと違った雰囲気のイラストのジャケットも、個人的には今までで一番お気に入りだ(ディスクやブックレットがちょっと出し入れしづらいけど)。内ジャケやブックレットにはちょっとずつ違った家が建っているね。大崎さんの言われるとおり、べったりと赤く塗られたブックレット裏も含めて、これらの家が建っている地面の部分が血に見えてしかたないけど、それをこんな子供が描いたような屈託のない雰囲気に仕上げているところもいい。さしずめ、「絶望の大地に建つ希望の家」といったところか。



来月最初の週末、タマス・ウェルズの2年振りの来日公演が東京と京都で行われる。前回の来日メンバーから、子供の世話で忙しい(笑)ネイサン・コリンズが抜け、代わってキム・ビールズが参加という、僕が年頭に観たシンガポール公演と同じメンバー構成。前回のステッドファスト・シェパード(=ネイサン・コリンズ)のように、キムが前座でソロ演奏をするそうだ。土曜日にヨンシーのライヴさえ入っていなければ、本当は京都まで追っかけたかったんだけどな。まあ、しょうがない。タマス/ヨンシー/タマスなんて贅沢な週末、もう二度とないだろうしね。

Tamas Poster.jpg Tamas Poster back.jpg



シドニーにいる間にも帰りの機内でも書き終えることのできなかったこの記事を、さっき東京の自宅に戻ってきて書きあげ、ブログにアップしようとPCを立ち上げたら、遅ればせながらアウン・サン・スー・チーさん解放のニュースが目に入った。出張中全然ニュースを見る暇もなかったから。そうか、今度こそ本当に。よかった。きっとタマスは来月のステージで、戦いの終わりを意味する名の街で久しぶりに起きた、本当に希望を持てるこの話をしてくれることだろう。いつものあの屈託のない笑顔で。



Luxury - Tamas Wells

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Tamas Wells 『Thirty People Away』

I'm in Sydney now.

As usual, since this is not sightseeing or vacation but a short business trip, unfortunately this nice sunny weather is just annoying heat to me. At least while I'm writing this I'm enjoying the nightscape from this luxurious hotel that my office booked (I could hardly see the tip of the Harbour bridge if I try really hard by pressing my face against the large window, since they booked it at the corporate rate).

I've been out on the other business trip around Asia the other week. The reason why I've been home only for 1.5 days and came all the way again to Sydney, although it could've been physically much easier and saving time to go straight from Singapore to here, was simply because I had to be at home on 11 Nov. Yes, the day they release the Tamas Wells' new album in Japan.

The day I got home what I found was an oversized parcel, which included a paper-sleeved CD wrapped carefully with bunch of plastics, two concert tickets for next month, a download coupon for the bonus tracks and a handmade organic soap which I've been watching the way Shin has been producing it and posting on his Twitter. He once tweeted the soap was meant for the first 4 lucky buyer of the album. I didn't expect I would be one of them. It says on the small paper inside that the soap isn't dried enough so you need to keep drying it. I've opened the plastic bag and it scented so good. I can't just consume it as soap as it's too good. Perhaps I'll place it in my room, together with this small instruction paper with "Thirty People Away" illustration on.

liricoOrganicSoap.JPG

I get prepared for the Sydney trip, while recording the CD into the PC that hasn't been functioning very well these days. But before the trip I would love to listen to this album from the loud speaker first. So I take out the CD from the PC and put it in the CD player.

I knew I would be able to listen to the sampler of every song on this CD at lirico’s website since while ago. But I didn't want to just pick and listen to this album in such a casual way. So I've been avoid visiting the site till I get my own copy of the CD (if I go there I knew I couldn't stop myself clicking the samplers). I've been reading how good this new album was through Shin's blog & Twitter as well as the others’ comments who've already tried the samplers. I’ve tried hard not to listen but just looking at those strangely-named titles of the songs and the album cover art. At last, finally, the tunes will fill my room this night. It's already close to midnight, so I've turned down the volume a little.



Some of the articles I've written about Tamas Wells on this blog.

> About the second album "A Plea en Vendredi" that I couldn't describe almost anything due to the shocking initial encounter.
> About the first album "Mark On The Pane" which was out of print at that time but I finally found, and wrote with as much knowledge as I had then.
> About the first Tokyo gig which I went down all the way from NZ where I lived then.
> A never-ending article about the third and his first solo album "Two Years In April".
> About the second Japan tour, three nights in a row.
> About my second overseas following-the-artist trip to Singapore.

Well, what else can I write listening to this brand new album? Should I write something even longer then the one about "Two Years In April"? If you're a regular reader of my blog, you would think I write same things again in a same tone with same expressions. Or if you come here for the first time (perhaps by searching for some information about Tamas Wells on the web), it should be enough to read these links (be prepared to spend hours!). Of course if you'd like to have a quick listen, you can go to lirico's website that I linked above.

In a nutshell, this brand new album is quite luxurious, from several aspects. Of course, the music within is far from the shiny gorgeous sound, but Tamas Wells as usual. I give you some examples; an authentic Japanese traditional cuisine cooked with well-chosen materials. A humble design hand-woven sweater using high quality wool. Vintage whisky just brewed and to be stored for some ten years. Such kinds of luxury.

The reasons I write "from several aspects". First, the luxury you can listen to a series of Tamas Wells' new songs. For the last two years since "Two Years In April", although I've seen him playing live a couple of times, I've been thirsted for Tamas Wells music. So I've got the two compilation albums from Popboomerang which contained early recordings of theirs, and repeatedly listening to them (it wasn't a fresh surprise to me as I got these two songs from my friend years before though). Compared with the situation, how happy I am to be able to listen to eleven brand new songs at once!

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『Shake Yer Popboomerang Volume 2』
『Planet Of The Popboomerang Vol. 2』

Putting such nerdy comments aside, I write about the luxury of the album itself. I knew the fact that unlike the last album which was recorded at Tamas' house in Yangon by himself, this album was recorded at the recording studio in Hobert where the producer / drummer Nathan Collins resides, together with the larger Tamas Wells band including two strings players and Kim Beales who has been playing with Tamas since earlier this year. You can easily tell the outcome of it by listening to the opening clear guitar sound of "The Crime At Edmond Lake". There's no child's shout in the middle, too :)

Here's the photo during the recording session that I took from Tamas' webpage without permission. Beautiful scenery, isn't it? I could see some large houses with front yards and tall trees alongside the road when I drive outskirts of Sydney, but this is a different world in the same country.

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This blessed atmosphere produced the album, together with close friends, using the Martin acoustic guitar (not the 8 dollar made-in-Myanmar guitar anymore) and the various other musical instruments you could hardly find in Myanmar. The album construction is quite similar to the first two albums, with two instrumental tunes (even the sequence of the instrumentals in the album). That tells the previous album with the different sequences must be considered to be uniquely positioned to him.

The lyrics are concrete and mysterious, yet quite difficult to understand the hidden meaning even after you listen to and read carefully, as usual. As pointed by Yohei in the liner notes, the keywords for this album are flame, or fire, which haven't appeared in his song so much before. Fire started from the album title track "Thirty People Away", which was inspired by the bombing incident in Myanmar (as I've learned from Shin's Twitter), and it spread all over the album. The song which acts for the fire/flame image is the second song of the album "Fire Balloons", which I believe is not merely the main track of this album but represents Tamas Wells’ music together with "Valder Fields" or "The Northern Lights". Fire balloons - the song title alone could rouse your imagination.

There's a tendency this time that the sad and pitiful lyrics sung on the upbeat (for him) tune, just like his early song "Stitch In Time". For instance, "Her Eyes Were Only Scars", which has this scary title and relatively concrete lyrics. Will Tamas explain the background of this song before he sings next month, just like he used to do for "I'm Sorry That The Kitchen Is On Fire"?

On the other hand, the last tune of the album "Your Hands Into Mine" which seems to be written about his daughter has the darkest mood, despite its heartwarming title and the material. I guess the two contradicting feelings, hope and desperation are tightly connected each other just like two sides of a coin in his mind, since he has been too long in the town named the End of Strife, where he's seen desperation everywhere.

Talking about the dark mood, the fifth and eights track (as usual?) of the album are the instrumental tunes. If this were the soundtracks of a movie, you would wonder in what sad scene these tunes are used. The piano player for these tunes must be Anthony Francis.

11 tracks for only 34 minutes (again, just like his album always). I can't count how many times I've already listened to this album in only 5 days since I got it. It's not the level like "must be in my top 10 list of the year", but it's like "what else could be above this if this is not the No.1".

The illustration on the front cover is my favourite among all his albums, though I haven't had enough time to look at the real one since I've been out for business trip (it's a bit hard to take out the disc & the booklet though). There are houses in different shapes in the inner cover and the booklet. I agree what Yohei mentioned in the liner notes that the ground part where these houses are built on looks just like the blood. Nevertheless, it looks quite innocent with these houses on it. You might call it the House of Hopes on the Ground of Desperate.



There will be gigs of Tamas Wells in Tokyo and Kyoto in the first weekend next month, after two years' blank. The same members as the Singapore gig, with Kim Beales on guitar as the replacement of Nathan Collins who is busy taking care of his new born baby :) It says Kim will be the opening act like the Steadfast Shepherd (a.k.a. Nathan Collins) did the last time. If only I hadn't got the ticket for Jonsi on Saturday, I'd follow them to Kyoto. Well, never mind. There'll never be another chance to see Tamas / Jonsi / Tamas in one weekend.

Tamas Poster.jpg Tamas Poster back.jpg



I couldn't finish this article while I was in Sydney and on the plane. When I've finished it at home in Tokyo, I've noticed the news Aung San Suu Kyi has been released from her house arrest. I haven't had time to check the news during the trip. Yes, finally. At last. Tamas must be talking about this hopeful news finally happened in the town called the End of Strife on the stage next month, with his usual innocent smile.
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2009年11月01日

Vol.2.5 - Matthew Sweet & Susanna Hoffs

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『Under The Covers Vol.2.5』 Matthew Sweet And Susanna Hoffs

「こういう誠意のある日本のインディーズは是非応援してあげたい」

8月16日の記事のコメント欄に書いたのは、誓って嘘じゃない。だけど、そのコメントを書いてまもなく、こんなものの存在を知ってしまったのが運の尽き。せめて、日本盤が発売されて初動が収まるぐらいの期間はそっとしておくのがこちらから示せる精一杯の誠意かと、しばらくの間この記事を脳内で寝かせておいた。

マシュー・スウィート&スザンナ・ホフスの70年代カバー集『Under The Covers Vol.2』の日本盤には、僕がレビューした輸入盤には入っていないボーナストラックが5曲も含まれているのは、8月のその記事のコメント欄にあるとおり。

ところが、あれこれ調べているうちに、どうやらその5曲のボートラ以外にもまだボツになったテイクがあるらしいことを知った。そして、とあるサイトで、10曲入りのボーナスディスクが付属した『Vol.2』を発見。誠意のある日本のインディーズには大変申し訳ないが、そっちをオーダーしてしまった。

届いてみたら、それは別に2枚組というわけではなく、通常のデジパックの『Vol.2』に、カラーコピーのジャケ(上の写真)がついたプラケース入りの、何の記載もないCD-Rがおまけとしてついているという形態だった。ハサミで切ったような歪んだ正方形のジャケは、こんなの一枚一枚手で切ってたら余計に手間がかかるだろうと思わせるような手作り感満載の出来。権利関係はどうなってるんだろうか。

日本盤ボートラの5曲は全て含まれているが、順番は日本盤とは全然違う。本編の「Beware Of Darkness」で一旦しんみりと終わった後に威勢よく始まる「(What's So Funny 'bout) Peace, Love And Understanding」を持って来て、最後は再びしんみりと「You Can Close Your Eyes」で締めるという日本盤の曲順は実によく考えられたものだと思うけれど、この『Vol.2.5』と名付けられた10曲入りのCD-Rの曲順もなかなかのものだ(太字は日本盤に収録)。

1. Dreaming
2. Marquee Moon
3. I Wanna Be Sedated
4. Baby Blue
5. You Say You Don't Love Me
6. (What's So Funny 'bout) Peace, Love And Understanding
7. You Can Close Your Eyes
8. Melissa
9. Killer Queen
10. A Song For You

ブロンディの「Dreaming」はきっと泣く泣く本編から落としたんだろうね。それぐらい上出来。スザンナの声って、こういう曲にほんとによく合うね。

僕にとって、このCD-Rで一二を争うハイライトが早速2曲目に。オリジナルよりもわずかにスピードを上げて、より芯の太いギターの音で幕を開ける“あの”イントロ。マシュー・スウィートが演奏する「Marquee Moon」なんて、これこそ想像するだけで鳥肌ものだろう。贅沢を言うなら、隣でギターを弾いているのがリチャード・ロイドだったら最高なんだけど、あいにく今回のレコーディングには彼は不参加。

スザンナも当然参加しているけど、もうほとんどマシューのソロ作品と言ってもいいようなアレンジ。それでも、オリジナルのヘロヘロ感と比べると、バックにしっかりと入っているスザンナのコーラスの分、音に厚みと甘味がある。マシューのギターソロが散々堪能できる、オリジナルに匹敵する11分弱の大作。

続いては、日本盤にも収録のラモーンズ。いいね、これ。この二人で一緒に歌ってる意味が一番感じられる、気持ちのいいデュエット曲(もちろん、本編の「Go All The Way」とかは除いての話)。

バッドフィンガーの「Baby Blue」は、本当は好きな曲なんだけど、ここでの出来はあと一歩というところかな。本編での「Maggie May」にも感じたんだけど、どうもスザンナちょっと気張りすぎというか。

バズコックスって、パンクという枠で括られて入るけど、ほんとにポップでいい曲書くよね、というのがよくわかる「You Say You Don't Love Me」。それは2曲前のラモーンズにも言えることだけどね。こういう曲を書けるから、単なるブームに乗って出てきては消えた有象無象とは一線を画してるんだよね。

僕にとっては今回の最大のお目当て。ニック・ロウの「(What's So Funny 'bout) Peace, Love And Understanding」。誠意のある日本のインディーズがこの曲をボートラの1曲目に持ってきたことは評価に値するけれど、これがあたかもエルヴィス・コステロの曲だと誤解されるような表記の仕方はやめてほしい。元はと言えばニック・ロウが在籍したブリンズリー・シュウォーツ最後のアルバムに収録されていた曲で、今でもニックの代表曲。

とは言え、やはり一般的には『Armed Forces』の米盤に収録されていたコステロのヴァージョンが有名なのかも。ここでの演奏は、派手なドラムで始まるイントロがアトラクションズ版、そしてこの曲を印象付ける綺麗なハーモニーがブリンズリー版、といった合わせ技。いや、これは満足。再来週のニックとライ・クーダーのライヴ、多分この曲演るだろうけど、このアレンジで演ってくれないかなあ。それでライのスライドギターのソロなんてやられたら、もう失神ものだよ。

気を落ち着けて、次はジェームス・テイラーの「You Can Close Your Eyes」。僕はこの曲が最初に収録された『Mud Slide Slim And The Blue Horizon』をはじめ、何枚かのライヴ盤でこの曲を持っているんだけど、タイトルを聞いただけでは即座に曲が思い浮かばなかった。でも、たとえこれがジェームスの曲だと知らなかったとしても、スザンナが歌うこのメロディーを聴けば、一発で彼の曲だとわかるはず。名曲。

オールマン・ブラザース・バンドは初期のライヴ盤を何種類か持っているだけなので、この「Melissa」という曲は知らなかった。悪くはないけど、特筆すべきこともないかな。

多分一般的にはこの中で一番有名なクイーンの「Killer Queen」。僕は8月の記事のコメント欄で「これもまたヴァースの部分をマシューが歌い始め、コーラスでスザンナに交代(マシューはそのままバックコーラスに移動)という感じでしょうか」などと妄想を炸裂させているが、実際はその逆だった。

うーん、どうだろう。僕はやっぱり自分が想像したように、マシューが最初でサビの部分でスザンナという役割の方がよかったかもしれない。さっき「Baby Blue」のところで書いたように、スザンナの声ってあまり低音に向いてないと思うんだけどな。マシューの裏声もいまいちだし。

まあ、それでも、ブライアン・メイ風のマシューのギター(もしかするとグレッグ・リーズ?)はよくできているし、それなりに聴き応えのある出来だろう。

最後は、70年代でこのタイトルならてっきりカーペンターズだろうと思っていたら、グラム・パーソンズの方だった。マシューの別プロジェクト、ソーンズ(The Thorns)のアルバムに入っててもおかしくない、全編に響き渡るグレッグ・リーズのペダル・スティールが泣かせる佳曲。


という全10曲。必ずしも僕のコメントの長さがそれぞれの曲の出来を示しているというわけではないが、この10曲中、日本盤のボートラに選ばれた5曲は、やはりそれなりの出来だったからというのがわかる。テレヴィジョンの「Marquee Moon」にそれほど思い入れのない人であれば、日本盤の5曲で充分満足なんじゃないかな。

というわけで、罪滅ぼしにもう一回日本盤のリンク貼っておくよ。みんなで日本盤買って日本のレコード会社を応援して、次に『Vol.3』が出るときには、日本盤だけ2枚組になっていることを期待しよう。


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2009年08月16日

鳥肌 - Matthew Sweet & Susanna Hoffs

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『Under The Covers Vol. 2』 Matthew Sweet & Susanna Hoffs

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『Under The Covers Vol. 1』 Matthew Sweet & Susanna Hoffs

ドタタドタタ、ドドン。乱れ打ち風のドラムスに被さる、聴き覚えのあるギターリフ。失敗。一瞬の間を置いて、再スタート。

後世に残るパワーポップの名曲を書きたければ、こんなリフを作ればいい。いつ聴いてもそう思えるソリッドなあのイントロ。“Ma-ma, Yeah!”オリジナルのエリック・カルメンと同じキーで叫ぶスージー。流れるようなAメロを歌い始めるのは、シド。そのメロディが五線譜上を駆け上がり、さあコーラスに入るぞというその瞬間、歌詞でいうと“Baby, please”のちょうど真ん中で絡まるように分け入ってくるスージーのボーカル。

こんな描写をしても、曲を知らない人には何のことだかわからないだろうけど、これはこのアルバムの2曲目。ラズベリーズの「Go All The Way」のカバー・バージョンだ。僕はそのコーラスまで聴いた瞬間、特に悲しいわけでも感動したわけでもないのに、自分の目に涙が浮かぶのを感じて、ちょっとショックを受けた。え?何これ。土曜の朝だよ。別に酒を飲んで気持ちが昂ぶっていたというわけでもない(僕がそのとき飲んでいたのはコーヒーだ)。両腕にはびっしりと鳥肌が立っている。


このブログを昔から読んでくださっている方なら、上に載せた二枚の写真のうち、下側のは見た覚えがあるかも。そう、おととしの1月(もうそんなになるのか…)にその前年のベスト20アルバムを特集した記事に登場している、シドことマシュー・スウィートと、スージーことスザンナ・ホフスの二人による、60年代ポップスのカバー・アルバム。

そのアルバムのブックレットの最後に「See you next time! XO」と記されていたように、それから3年後の今年(こんなに待たされることになるとは思ってもみなかったけど)、見ての通り、オレンジと黄緑と薄茶という、一層夏らしさを増した色合いのジャケに包まれた第二集が発売された。

実は、1月のときもそうだったように、今回もやはり“ティルブルック・シンドローム”に罹ってしまっていて、先月末からこちら、CD屋にも行かなければ、新譜をチェックするためにオンラインショップのサイトを見ることすらしていなかった。なんだかスクイーズ/グレン以外の音楽を聴く気分になれなくてね。

このアルバムも、グレンのライヴのしばらく前に、いつも巡回しているLA MOSCAさんのブログを見てリリースされていることを知り、早く買わなくちゃなんて思ってたのに、ようやく入手したのが昨日という次第。

アルバムとしては素晴らしかった『Vol. 1』だけど、60年代という時代背景のため、僕が元々知っていた曲はアルバム中約半数程度だった。それに比べて今回の『Vol. 2』は70年代特集。大半の曲は知っている。それどころか、さすがマシュー、やっぱりこの人のやることに間違いはないね、と思える、ツボを突いた選曲。

おととしの記事に「斬新さのかけらもないようなアルバム」なんて書いてしまっているけど、きっと僕がマシューのファンでなければ、こんな後ろ向きの企画、と切り捨ててしまっていたかもしれない。だって、よくあるよね、もう曲が書けなくなってしまったアーティストが、過去の他人の名曲を再現、なんて。そしてその大半は、過去の他人の名曲をそのまま聴いていた方がいくらかマシというような出来でしかない。

ところが、冒頭に書いたような始末だ。お馴染みのマシュー・スウィート・バンド(この記事あたりで紹介済み)による、ワイルドながらタイトな、小気味のいい演奏。そしてデビューから何年経とうと何十キロ太ろうと全く不変な、マシューのあの声。それらが一緒になって編み出す魔法のような音楽を前にすれば、もうそれがどんな陳腐な企画であろうと僕は抗えない。

他にも、エリック・クラプトンとデュエイン・オールマンのツイン・リードを再現した(さすがに彼らほど達者ではないものの)、マシューとグレッグ・リーズのギターの絡みが嬉しい、デレク&ザ・ドミノズの「Bell Bottom Blues」(『Layla And Other Assorted Love Songs』からならもうどの曲を選んでくれてもOKだというのに、よりによってこいつをピックアップするそのセンスがたまらない)。

ジョン・レノンの「Gimme Some Truth」も嬉しい。マシューの声質を活かすなら、この選曲は大当たりだと思う。スザンナによるイントロの「アー」ってコーラスも、このざらっとした曲にほどよい甘さを加えているし、かと思えば、曲がフェードアウトしていくところでの彼女のハスキーなシャウトもいいよね。そしてまたこの曲でも、グレッグのスライドが実に魅力的にきまっている。

『Vol. 1』にニール・ヤングの曲だけが2回(どうしてもどちらも落せなかったからという理由で)出てきたように、この『Vol. 2』にはトッド・ラングレンが2曲収められている。そういうところも僕的にはかなりツボ。ちょうど前回が『Everybody Knows This Is Nowhere』からメロウなタイトル曲とハードな「Cinnamon Girl」の2曲が選ばれていたように、今回は『Something/Anything?』からの代表的バラッド「Hello It's Me」と元祖パワーポップみたいな「Couldn't I Just Tell You」が収録されている。

そして、「Willin'」! リトル・フィートの数ある名曲の中で、おそらく僕が一番好きなのがこれ。ライ・クーダー、ローウェル・ジョージという名だたるスライド・ギタリストが奏でてきたあの旋律をなぞるのはもちろん、グレッグのペダル・スティール。滲みるね。

順不同ながら、もうこのまま全曲について書いてしまってもいいぐらいだけど、夜も更けてきたのであと1曲だけ。おそらく今回のソングリストの中で一番異色なのが、イエスの「I've Seen All Good People」だろう。ゲスト・ギタリストはなんとスティーヴ・ハウご自身。でも、(かつてyascd002に入れた)「Thunderstorm」みたいな9分半もある組曲を作ったりとか、この人ってきっとプログレも好きなんだろうなとは思ってたよ。彼自身が書いたライナーによると、イエスのレコードを聴いてベースの練習をしたとか。クリス・スクワイアだよ。あんなの真似できないよ。すごいね。

ああ、それに、きっとこの人はイエスのファンだったんだろうなと僕が最初に思ったのが、97年の『Blue Sky On Mars』。このタイトルと名前のロゴ、わざわざロジャー・ディーンに描いてもらったんだよね。

Blue Sky On Mars.jpg 『Blue Sky On Mars』 Matthew Sweet

せっかくリンクしたのに、廃盤なの?これ。地味だけどいいアルバムなのにね、もったいない。まあ、中古で150円とかで売ってるから、これからマシューのアルバム集めたいという人は、5枚目か6枚目あたりはこれにすればいい。

マシューの前作『Sunshine Lies』を取り上げた記事のコメント欄で僕が悔しがっていたように、『Vol. 1』はマイナーなレコード会社からボートラ入りの日本盤が出たんだよね(まだ買ってないや。廃盤になる前になんとかしないと)。実はこの『Vol. 2』も9月16日に日本盤が出るということで、もしかしたらまたそれもボートラ入りで、悔しい思いをすることになるのかもしれないけど、そのボートラの選曲次第では、もう一枚買っても構わない。それより、日本盤を待ってる間こんなに素敵なアルバムを1ヶ月も聴けないなんて方が僕には問題だから、ちっとも悔しくなんてないよ。

そして嬉しいことに、今回のブックレットの最後のページにも、「SEE YOU NEXT TIME! XO」の一文が。次は80年代編だね。すっごく楽しみ。たとえまた3年待たないといけないとしてもね。
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2009年06月06日

横入り - Tinted Windows

Tinted Windows.jpg 『Tinted Windows』

5月のGWは遠出をせずに、東京でも普段あまり行かない街に行って、ちょっとした小旅行気分を味わっていた。僕がリゾートでなく都会に旅行に行ったらすることは大体決まっていて、今まで雑誌広告でしか名前を見たことがなかったような輸入盤店や、初開拓のブックオフなんかを手当たり次第に攻略していた。

1月のグレン・ティルブルック公演以来あまりCDを買っていなかった反動か、そのGWをきっかけに、5月になってから結構な枚数のCDやレコードを買い続けてしまっている。もう6月なのに「5月になってから」なんて書いてるのは、6月になってからも引き続き、通販で買ったものが届いたり、昨晩もセールをやっていた某店で6枚買い込んできたりしているという、現在進行形のお話だから。

それだけの枚数を買っていればそれなりに当たり盤も多かったから、どれから書こうかと考えていたところ、5月の最終日になって通販で届いた1枚のCDが、順番待ちをしていた数十枚の行列に横入りして、今日の記事の候補になってしまった。聴いたばかりのCDのことをこんなに急いで書きたくなったのなんて、おととしの10月のこの記事以来のことだったと思う。結局そのときのアルバムは2007年の僕の個人的ベストアルバムでトップに立ったことを思えば、今から書くこのアルバムのことを僕がどれだけ気に入っているか、想像はつくかもしれない。

輸入盤を買ったのにシュリンクラップに貼ってあった日本語のステッカーによると、“全米で話題沸騰の「超」スーパーグループ誕生!”だそうだ。

果たしてスーパーグループなのか、しかもそれが「超」なのかどうかは微妙なところだと思う。4人のメンバーそれぞれが属していた(いる)グループと、それらのグループ内での各メンバーの立ち位置を考えると。

まず、このグループの音楽的な核であろう、ファウンテンズ・オヴ・ウェイン(Fountains Of Wayne)のアダム・シュレシンジャー(Adam Schlesinger)。主に僕のブログからのみ音楽的知識を仕入れている数名の奇特な読者の方々は、さっきのコワい犬の翌日に書いたこの記事を覚えておられるかもしれない。そのバンドのソングライターコンビのうちの一人。でも、担当楽器はベースで、歌は歌わない方。

そのFOWのアルバムにもゲスト参加していた(そして僕は彼についてわざわざ「まあ、そっちは僕にとってはわりとどうでもいいんだけどね」なんて書いた)元スマッシング・パンプキンズのジェームス・イハ(James Iha)がギター。“スーパーグループ”が目的なら、スマパンからならビリー・コーガンを連れてくる方がいいんだろうけど、ここはアダムのお友達ということで。

ヴォーカルのテイラー・ハンソン(Taylor Hanson)が、一般的には一番の失笑モノなのかもね。いや、一般的にはもう10年以上も前にヒットした「MmmBop☆」なんて忘れられているから、「ハンソン?誰?」ってな感じか。「一般的には」なんて書き方をしているのは、もちろん僕的にはハンソンは大のお気に入りグループだったから。奇特な読者様はこの記事の6・7曲目のところを参照。その6曲目を声変わり中のハスキーヴォイスで歌っていたお兄ちゃんが、やあしばらく見ない間にすっかり大きくなって、と親戚のおじさん気分。

この3人が意気投合して「バズコックスからナック、チープ・トリックまで」を意識して作ったグループがこのティンテッド・ウィンドウズ(Tinted Windows)。「チープ・トリックのバーニー・カルロス(Bun E. Carlos)みたいに叩けるドラマーはいないものか」と探して、たどり着いたのがバーニー本人、ということらしい。きっとグループ内では彼がほんとにおじさん気分でいることだろう。チープ・トリック全盛期にはテイラーなんてまだ生まれてもいなかったからね。チープ・トリックを知らない奇特な読者様はこちらをどうぞ。10曲目のジャケの右端が彼。

こうして見ると、スマパン以外は少なくとも一度は僕のブログで取り上げてきたバンドばかりだから、この「スーパーグループ」は僕にとってはそれなりに興味の的ではあった。ただ、ニック・ロウやジョン・ハイアットやライ・クーダーという、僕にとってより「スーパー」なメンバーが結成したリトル・ヴィレッジのアルバムがイマイチだったのを始め、こういう所謂スーパーグループってあんまりうまくいったためしがないのも事実。

なので、それほど期待せずに聴いてみた。これを買ったのも、某通販サイトの「○枚買ったら○%引き」の数合わせのためというのが正直なところだったし。おまけに安かったし(上にリンクしたアマゾンでも、輸入盤954円?35分ちょっとしかないとはいえ、11曲も入ったれっきとしたフルアルバムだよ)。

聴いてみた結果が、冒頭三段落目に書いたとおり。これがもう、とにかくかっこいい。ジリジリしたメタリックなギターの音に導かれて始まる、シングル曲「Kind Of A Girl」がオープニング。そこにドカドカドカドカと切り込んでくるバーニーのドラム。ああ、この音が欲しかったんだね、というのがよくわかるよ。

そして、この声!てっきり僕は、ハンソンのアルバムでのテイラーの声は声変わり中だからあんなにハスキーで時折り裏返ったりかすれたりするんだと思ってたけど(そしてそれが理由で、子供なのにあんなにセクシーな歌声になっているんだと)、あの声と歌い方は今もそのまま。全然変わってないよと思って、ハンソンのファーストを聴きかえしてみたら、さすがに声のトーンは随分低くなっていたけれど。

FOW内でのクリスとアダムの作曲分担がどうなっているのかは知らないけど、きっとヴォーカリストでもあるクリスが詞を書いて、アダムが曲を書いているのかもしれない。そして彼がFOWで使わなかったかっこいい曲は全部こっちに持ってきたんじゃないかと思えるぐらい、粒揃いのポップでキャッチーな曲が次から次へと出てくる。11曲中、7曲が彼の作で、2曲がイハ、1曲がテイラー、最後の1曲がテイラーとアダムの共作なんだけど、アダムが作曲した曲のクオリティーがどう聴いてもダントツに高い。

安いと思って輸入盤買ったけど、こうなってくると日本盤に入ってるボートラも気になるな。だれかにこれを売りつけて、そっちに買いなおそうかな。ちょっと誰か、マイスペースで試聴してみて、気に入ったら連絡ちょうだい。

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2009年05月30日

軽めの呪術 - Winterpills

Central Chambers Vinyl.jpg Winterpills 『Central Chambers』

仲間内では皆に知れ渡っているほど大変なことがあったという友達。様子を見がてら心配して会いに行ったら、これが意外なほどに元気でちょっと拍子抜けしてしまった。だけど、話がふと途切れたときに見せる彼の表情が覆っている、その下にある想像もできないほど深い悲しみを垣間見る瞬間。

アルバム冒頭で爪弾かれるアコースティックギターの弦。頻繁に静から動へと移り変わるのに、決して激昂することのない演奏。時折り添えられる、壊れた機械が立てるような電子音。ベトナムでフィールドレコーディングしたという雑踏の音。遠くで鳴っているようなピアノ。

二つの声。どこまでも静かに、淡々とうたう。キーはわりと高いのに耳に心地良く馴染む女性ボーカル。時折り使うファルセットがシアウォーターのジョナサン・メイバーグを思い起こさせる男性ボーカル。彼の書く悲しげなメロディーラインが余計にそう思わせるのかもしれない。

同じフレーズが一曲の中で何度も何度もマントラのように繰り返される。あるいは、一つの短い文章が少しずつ形を変えて歌われる。以前、確かブルース・スプリングスティーンについて書いた記事で、同じ言葉のリフレインが多いのは嫌だと書いたけれど、どういうわけかこのアルバムではそれが全く気にならない。むしろ、ちょっと軽めの呪術に掛けられてしまったかのように聴き入ってしまう。

昨年10月に発売になった、アメリカはマサチューセッツの5人組、ウィンターピルズの3枚目のアルバムが、どうしてそんなことになったのかはわからないけど、今年の1月になって、装丁を大きく変えて、ボーナストラックを1曲追加した上で、LPで発売された。ちなみにCD版は最初のままのジャケットと曲順で、今でも普通に流通している。

Central Chambers CD.jpg Winterpills 『Central Chambers』

一番上に載せた、雪で形作った指先とハートというモチーフは、それはそれでとても綺麗なんだけど、ちょっとロマンチックすぎるかなと僕には思えてしまう。古い建物の上に尾を引く飛行機雲という、オリジナルのCDのジャケ、更に言えば、それを白黒にした上でトリミングを大胆に変えた今回のLPの内袋の写真が、このアルバムの音を最も端的に表しているように思える。

Central Chambers Inner.JPG

LP用に新たにマスタリングされた音は、それぞれの楽器の音がとても立体的に構成されたように聴こえる。もちろん高音質MP3ダウンロード用のコードが付いているから、LPを聴ける環境にあって、iPodやウォークマンでも聴きたいという人は迷わずこちらを選べばいい。裏ジャケの、ぴんと張られた(ちょっとくたびれた)荒縄を包み込むように積もった綿毛のような雪の写真も雰囲気あるし。この人たちのビジュアルセンス、すごくいいね。

ビジュアルセンスのよさを再確認できる素敵なPVも観られる彼らのマイスペースのサイドバーにある、「影響を受けた音楽」の欄。リストの最初にあるのがイノセンス・ミッションだというのに納得。ちなみに、その下には「作家」の欄もあって、最初に書いてある名前は、ムラカミ。そして、「映画」(最初はベルイマンの「野いちご」)の下に続く「その他」の欄にはこう書いてある。

  睡眠不足
  死への恐怖
  郷愁
  幻想
  廃墟

イノセンス・ミッションについてはこのブログに書いたことはないけど、そんなの説明しだすとまた長くなるので省略して、それと村上春樹とイングマール・ベルイマンと睡眠不足と死への恐怖と(以下略)とをよく混ぜ合わせて作られた、そういう音。早く最初の2枚も手に入れないと。
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2009年04月05日

354/400 - Glenn Tilbrook

Aussie P.jpg Glenn Tilbrook 『Aussie P』

そういえばあのEPが出たとき、買わなくちゃなんて思ってたのに、どういうわけかスルーしてたんだよね。気でも狂ってたのかな、僕は。

そう書いたのは1月17日の記事。グレン・ティルブルック京都公演レポート。グレンが歌う「Private Number」を初めて聴いたときに、自分が買いそびれていた限定CDにその曲が収められていることを知った。

東京に帰ってすぐにイーベイでアラート設定をしたんだけど、そう簡単に出てくるブツじゃない。なにしろ世界中に400枚しか存在しないCD。それを知ってるファンはまず手放すことはないだろうから。まあ、気長に待ってればいいや。一刻を争って聴かないといけないものでもないし。

通知メールは意外なほど早く届いた。あれは2月の末だったかな。開始価格はUS$9.99。オークション終了はそれから約一週間後。

普段ネットオークションでCDとかを買うときには、大体自分の頭の中で上限価格を設定して臨むよね。たまに熱くなってその上限をオーバーすることもあるけど。あとはその価格で入札するタイミング。最後まで競りそうなものは相手の入札価格を推定しながらぎりぎりまで粘ったりとか。イーベイは欧米からの出品が多いから、終了時刻が日本の深夜とか明け方になることが多くって、最後に競り負けることもよくある。

今回僕が決めた上限価格は、なし。何ドルまで上がっても絶対に買う。これを逃すと次はいつ出るかわからないしね。とはいえ、そうそう早い時期から高い金額を入れると、競合相手に手を読まれるから、入札するタイミングには細心の注意を払って。いくらでも出すつもりとはいえ、安ければそれにこしたことはないし。

運が良かったことに、今回の出品者はオーストラリア在住。向こうの夜の終了時刻が、ちょうどこっちの夕方(しかも週末)。最後は秒刻みで相手の出方を見られる。

終了時刻のかなり直前まで“普通の”CDの値段だった入札価格は、終了前日あたりからいきなり数十倍に跳ね上がり、最後はほんとに数秒差、最後にお互いが出し合った最高額の差が僅か2ドルという接戦の末、落札することができた。

具体的な金額は書かないけど、これは僕がこれまで一枚のCDに払った最高額。記録によると、それより数千円高く払ったこともあるけど、それは9枚組のCDボックスセットだったから。そういうボックスセット類を除けば、これまでの最高額は、これもオークションで手に入れたスクリッティ・ポリッティの『4 A Sides』という12インチシングル。あれも僕はリアルタイムでたまたま買い逃してて、何年も経ってから“上限価格なし”ポリシーで買ったんだった。皆さん、将来希少価値がつきそうなものは、迷わず買っておきましょう。まあ、そうやって買ったものの、中古屋でわんさか叩き売られてるようなのもよくあるんだけどね。

肝心のCDの話に移ろう。届いてみたら、スリップケースの裏側に手書きのシリアルナンバーが。354/400。その具体的な番号が、自分以外にこれを持ってる人が世界中にあと399人しかいないんだと実感させてくれる。CDもスリップケースも、お世辞にもミントといえるようなコンディションじゃないけど、コピーしたCD-R盤とかじゃないのを確認して、一安心。再生に問題のあるほどの汚れでもなかったし。

全7曲入りで、2曲目を除いて全てオーストラリアでのライヴ録音。1曲目が、京都で聴いた「Private Number」。ロックウィズ(Rockwiz)という、地元テレビのクイズ番組が企画した『Rockwiz Duets』というCD向けに録音されたものらしい(一応リンクは貼ってみたものの、どうも廃盤っぽいね)。デュエット相手のリンダ・ブル(Linda Bull)は、その番組のパーソナリティーぽい人なのかな。けっこうソウルフルに歌ってて、グレンとの掛け合いもきまってるよ。

調べてみると、この曲は、ジュディ・クレイ&ウィリアム・ベル(Judy Clay & William Bell)の68年の小ヒット。作者の「Jones/Bell」の片側って、ブッカー・T・ジョーンズだね。ちなみに、一昨年再発された『Greasy Truckers Party』に、オリジナルの5曲に10曲も追加されたブリンズリー・シュウォーツ(Brinsley Schwarz)のライヴ演奏が収録されていて、若き日のニック・ロウ(Nick Lowe)が歌う同曲を聴くことができるよ。もともと貴重盤のわりにブリンズリー比率が少なくて買うのを躊躇していたニック・ロウ・ファンは、この拡大版を是非どうぞ。

Greasy Truckers Party.jpg 『Greasy Truckers Party』

2曲目は、『Transatrantic Ping Pong』からの「One For The Road」。オリジナルとは違って、バックを務めるのはフラッファーズ。オリジナルよりもテンポを上げて、スティーヴンのオルガンソロも軽快でいい感じ。この曲だけがグラスゴーでの録音。05年12月2日。その年のオーストラリア公演はソロだったからね。

3曲目以降は全て、05年9月16日のシドニーでのソロ公演から。「Third Rail」を歌う前の観客とのやりとりが可笑しい。The Basementという会場の名前から察するに、小さなハコなんだろうね。口々にリクエストの曲名を叫ぶ観客。「Tempted!」「Cool For Cats!」(どこにでもこれをリクエストする奴がいるんだね)グレンが「ははは、それはありえないよ」だって。

「Third Rail!」とリクエストがあり、「あぁ、今のはきっと僕のレコード会社に雇われた人だね。さもないとこんな曲、誰も聴きたいはずがないから」と笑わせて、あの(日本公演で何度も演奏されたのを聴いた人には懐かしい)アコギのイントロに入る。

4曲目「Hostage」の12弦ギターのイントロも懐かしいね。この曲とか、この2曲後の「By The Light Of The Cash Machine」とか、隠れた名曲的なのが入っていなければ、僕はこのEPにここまでこだわることはなかったかも。

5曲目の「Elephant Ride」も今回の来日公演で頻繁に演奏してたね。「この曲はブライアン・ウィルソンの影響を受けて書いたんだ。今聴き返してみると、どこにそんな影響があるのかさっぱりわからないけど、とにかくあの当時はそう思っていたんだ」と、相変わらずの自虐的なジョークで紹介。そういえば、07年の来日公演のとき、ブライアン・ウィルソンのSmileシャツを着ていったんだった(そのときの写真)。

6曲目「By The Light Of The Cash Machine」は「ロン・セクスミス(Ron Sexsmith)と」、7曲目「Untouchable」は「クリス・ブレイド(Chris Braide)と」それぞれ一緒に書いた曲だと紹介。特にクリスのことは、「素晴らしいソングライターだ。一緒に曲を書くことができて嬉しい」なんて言ってるね。

「Untouchable」はこの日の本編ラスト前だったようで、演奏終了後に「今日は本当にありがとう。あと一曲でお別れだ。次の曲は…」という台詞にエコーがかけられてこのCDは終わる。このCD、それぞれの曲間もブツ切りだし、録音状態もバラバラで、いかにも速成のプロモーション用といった風情なのに、この部分だけがそんな風に編集されているのがちょっと意外。

という感じで、わずか20分強のCDは終了。物足りないのでまた最初に戻って聴き直す。この感覚、なんだっけ。あ、そうか、つい数ヶ月前に『Pandemonium Ensues』を何度も何度も繰り返して聴いてたのと同じだ。ほんとにクセになるね、この人の歌は。
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2009年01月25日

中毒 - Glenn Tilbrook & The Fluffers

The English translation follows the Japanese text.

Pandemonium Ensues.jpg 
Glenn Tilbrook And The Fluffers 『Pandemonium Ensues』

あれからもう一週間も経つというのに、気持ちが全然元に戻らない。典型的な祭りの後症候群。さすがに日常生活ではいつまでも呆けているわけにもいかないので仕事は渋々やっているが、音楽に関してはからっきしだ。グレンのライヴの記事に書いたとおり、吉祥寺での三夜連続ライヴのときには、毎日ちょっと早めに出かけて、吉祥寺中のCD屋をうろついて、10枚のCDを買ったんだけど、あれから約二週間、その10枚は机の上に放置されたままだ。何枚かは聴いてみたんだけど、ちっとも耳に入ってこない。

僕は自分でわりといろんな種類の音楽を聴く方だと思っているし、一枚のアルバムを聴いた後で全然違ったものを続けて聴くことには全く抵抗がない。というか、むしろ似たようなものばかり続けて聴くことの方が稀かも。ましてや、同じアルバムを何度もリピートして聴くことなんて、まずしない。飽きるからね。

そんな僕が、自分でも信じられないことに、このグレン・ティルブルックのニュー・アルバム『Pandemonium Ensues』を、最初に手に入れた日以来何度も何度も繰り返して聴いている。平均して少なくとも一日2回は聴いているから、もうかれこれ30回以上は聴いているはずだ。もう隅々までどこにどんな音が入っているかも覚えたぐらい。でも全然飽きない。「Too Close To The Sun」の最後の音が消えた瞬間、また再生ボタンを押している。こんなに中毒性の高いアルバムだとは思わなかった。

そんなわけで、今の僕には他のアーティストのことを書くのは到底無理。楽しかったグレン祭りの締めくくりとして、このアルバムについて書くことにしよう。

04年の『Transatrantic Ping Pong』以来、4年以上も待たされた新作。その間には、僕にとって最初のグレン祭りとなった06年の来日もあったし、デモ集が2枚も出たし、スクイーズのライヴ盤やデラックス盤も各種出ていたから、実はそれほど待たされたという感じはしていなかったことは事実。

オフィシャルには2月9日発売ということだけど、今回の来日に合わせてミュージックプラントが先行輸入。ライヴ会場で世界に先駆けての発売ということになったのは、日本のファンとしては嬉しいニュースだった。


Incomplete.jpgスクイーズ解散後最初のソロアルバム『The Incomplete』は、決して悪いアルバムというわけではなかった。リードシングルの「This Is Where You Ain't」は好きな曲だし、UK盤のボーナスディスクに収められた何曲かのアコースティック・ヴァージョンなんて、今聴いても新鮮だ。だけど、僕にとっては、あれは『Cafe Bleu』や『Welcome To The Beautiful South』を最初に聴いたときと同じ気持ちにさせられたアルバムだった。大好きなバンドが解散したあとの、中心人物が出した最初のアルバム。いつもの声、耳に馴染んだメロディーライン、でも何かが違う。『The Incomplete』の場合は特に、大きな欠落感がつきまとっていた。それは、クリス・ディフォードの声。

TPP.jpg『Transatrantic Ping Pong』には、大好きな曲がいくつも詰まっていた。「Neptune」、「Hostage」、「Reinventing The Wheel」などは、そのエヴァーグリーンなメロディーが今回の来日公演でも聴けたし(最後のやつは最初のヴァースだけだったけど)。もうこの頃には、グレンのアルバムにクリスの声が入っていないことにも慣れてきたし、純粋に大好きなアルバムと言えた。記録をひっくり返してみたら、04年のベスト10の一枚に僕はこのアルバムを選んでるね(ちなみに、クリスの『I Didn't Get Where I Am』も同じリストに入ってる)。


それらのアルバムにも参加していたメンバーがフラッファーズと名乗り、グレン・ティルブルック・アンド・ザ・フラッファーズ名義で初めて出たのが今回のアルバム。最初に聴いたときに前の2枚と音の感触が全然違うなと思ったら、今回のはわずかなオーバーダビングを除いては、ほとんどスタジオでの一発録音ということ。なるほど、それでこのライヴ感か。

さっき中毒性の高いアルバムと書いたけど、おそらく中毒性という意味では、アルバム一曲目「Best Of Times」が一番かもしれない。最初に聴いたときには、なんだか地味な曲と思ったんだけど、やがてスティーヴン・ラージの弾くアコーディオンの音が耳について離れなくなる。

ライヴのときのグレンのMCによると、フェイセズ、特にロニー・レインに影響を受けて書いたというこの曲、言われてみれば確かにこのアルバムとかに雰囲気似てるかも。

Anymore For Anymore.jpg 
Ronnie Lane & Slim Chance 『Anymore For Anymore』

僕はロニーのマニアックなファンという訳ではないので、アルバムも何枚かしか持っていないんだけど、グレンが歳を重ねてこういう感じの音を目指したいと思うようになったのはよくわかるな。ゆるいんだけど、かったるくない。ふくよかでアーシーな音。そんな音にぴったりの、泣かせる歌詞。地味な曲なんて誰が言った?(笑)。名曲。

続く「Through The Net」は、1月11日のライヴ終了後、最後まで会場に残っていた数十人にとっては、このアルバムの中で一番愛着を持つ羽目になった一曲だろう。グレン、早くプロモーションビデオをYouTubeにアップしてくれないかな。

「♪ララララララ」ジャン!とCDの音に合わせて脳内でコーラスのエンディングを終えたら、次に聴こえてくるのはこのアルバムで一番の異色曲。ベースのルーシー・ショウがリードボーカルを取る「Product」だ。スクイーズ時代もアルバム中何曲かは他のメンバーにリードボーカルを任せることはあったけど、女性ボーカルが入っていたことはもちろんないので、なんだか妙な感じ。

ライヴのMCで、これはとある女優をモデルにした曲だということを話していたけど、そうか、このルーシーのやたらとフラットな歌い方も、その女優の真似をしているんだね。ジョークとしては面白いけど、グレンが歌うこの曲を聴いてしまった身としては、やっぱりちょっと物足りなく思ってしまうよ。ちなみに、ここまでの3曲だけが、今回の来日公演7日間全ての会場で歌われている。最初の2曲はともかく、グレンこの曲そんなにお気に入りなんだね。わかったよ、もう金輪際この曲の悪口言わないから(笑)

続いては、ライヴでは“パンク”だと説明していた「Slaughtered Artist」。なるほど、“パンク/ニューウェーヴ”な頃のスクイーズみたい。ジュールス・ホランド風のピアノがちっともパンクじゃないけどね(だからあの頃のスクイーズも全然パンクなんかじゃなかったのに)。曲のエンディングで聞こえてくる笑い声から察するに、これはグレン流のパンクのパロディーのつもりなんだろうね。さっきの60年代風フレンチポップのパロディーに引き続いての。

グレンのマイスペースによると、2月2日にダウンロードオンリーでシングルカットされるだけなのに格好いいジャケまで用意されている「Still」。ウーリッツァーとストリングスが心地良いミディアム・テンポ。来日公演では大半の会場でアンコールで演奏したことを考えると、彼にとっては(他に主にアンコールで演奏した)「Black Coffee In Bed」や「Another Nail In My Heart」級の曲ということなのかも。それもうなずけるけどね。

東京公演最終日に、サインをもらいながらグレンにリクエストした「Relentless Pursuit」(結局最終日まで一回も演らなかったけど)。この華やかなコーラスを取り払ったら一体この曲がどういう風に聴こえるのか、興味あったんだけどな。ティルブルック・マジック満載の歌メロは、きっとアコギ一本の演奏でも素晴らしかったはず。

もしこのアルバムがLPでリリースされたとしたらA面のラストに当たる「Interest & Love」は、(きっと今はジョニー・デップ夫人としての方が通りがよくなったはずの)ヴァネッサ・パラディとのデュエット。とろけるような甘い声だよね。今回は名古屋だけで演奏した模様。聴いてみたかったな。

すると、B面の頭をクールなピアノで開けるのは、前回の来日公演で、グレンが一人で録音したバンドの音源をバックに既に歌われていた「Melancholy Emotion」。前二作ではよく一緒に作曲していたクリス・ブレイドとの共作。クリスは今回のアルバムではこの曲と「Little Ships」だけにピアノで参加。フラッファーズにも参加しなかったし、もうあんまり仲良くなくなったのかな。

「Relentless Pursuit」をリクエストしたときに、グレンが「She Makes Meだっけ?」とボケた訳がわかった。このアルバムでその二曲が、グレンとドラマーのサイモン・ハンソンとの共作だったからだ、きっと。グレンの頭の中では、「あれとあれはサイモンが歌詞を書いた曲」ということになってるんだね。リクエストしても歌ってくれなかったのは、さては、歌詞覚えてないな(笑)

東京の三日間は欠かさず演奏してたのに、そのうち演らなくなった「Happy Disposition」。あ、これもクリス・ブレイドとの共作か。東京初日に「ロンドンに帰ってきた」というこの曲の歌詞を聴いて、「ああ、そうだ、この人はロンドンからはるばる来たんだった」と当たり前のことを思ったことを思い出した。大阪公演で隣に座っていたMさんによると、「Helter Skelter」に構造が似ている曲。なるほどね。

アルバム中最もポップなメロディーの「Black Sheep」。トランペットなんかも使ったりして、気持ちいいね。お、手拍子メンバーの中にはルイス・ティルブルック君(息子)もいるぞ。童謡の「Baa Baa Black Sheep」のラインをトゥワンギーなギターで弾いたソロパートもお茶目。

一転して、ワウギターのイントロがいかす、性急な「Beachland Ballroom」。このあたりの緩急のつけ方がいいね。ところで、さっきの「Black Sheep」のクレジットが「Written by Stephen Large and Glenn Tilbrook」。この曲が「Written by Glenn Tilbrook and Stephen Large」。どっちかが、スティーヴンが曲を書いてグレンが詞を書いてるってことなのかな。普通は作詞家が先?ということは、この曲を作曲したのはスティーヴンってことかな。

目立たないけれど、僕にとってはこのアルバムのもう一つのハイライトと言っても過言ではないぐらいに好きな「Little Ships」。あ、これもクリス・ブレイドとの共作だ。仲良くないなんて取り越し苦労だね。それにしても、なんでこんないい曲を今回の来日公演では一度も演らなかったんだろう。

I have loved you from your first breath and always will till my last

僕のヘタクソな訳で濁したくない、こんな素敵な歌詞。前々から子供達への愛情を隠さなかったグレンだけど、特に今回のアルバムではいたるところにこうした感情が描かれている。

その曲がしっとりとフェードアウトするところに宇宙っぽいムーグの音が被さってきて、前作の「One For The Road」に引き続いてのインストゥルメンタルのエンディング「Too Close To The Sun」になる。多分、一般的にはこのアルバムの話題作りに一番手っ取り早いと思われるのが、この曲にジョニー・デップがナレーションで参加しているということだろう。実際、ジョニーのファンサイトとかでこのアルバムが結構な話題になっているとのこと。彼がスクイーズのファンだということで実現したゲスト参加だそうだ。いい趣味してるね、ジョニー。

それにしても、てっきりアルバムのリードシングルだと思っていた、11月29日の記事で取り上げた『Binga Bong!』。収録曲4曲ともこのアルバムには入らなかったどころか、今回の来日公演でも一回も演奏してないよ。一体あれは何だったんだ。アルバム先行アウトテイク集か?


ふぅ、いつになく全曲解説なんてしてしまったよ(ろくに解説になってないのもあるけど)。それぐらい、捨て曲なしだということ。今回グレンのライヴに来ていた人たちは皆もう会場で買って聴いているだろうし、同じように思ってくれているんじゃないかな。

残念ながらライヴには行けなかった人、一応上にアマゾンのアフィリエイトを貼っておいたけど、2月の発売まで待ちきれなければ、ミュージックプラントのサイトで通信販売を始めたようだから、そちらへどうぞ。

ミュージックプラントからディスクユニオンにもディストリビュートされたらしく、今日久し振りに出かけた新宿店でも店に入ってすぐのところにディスプレイされてたよ。クリスのアルバムと並んでね。余談だけど、ウォークマンで「Melancholy Emotion」まで聴いて店に入ったら、BGMで「She Makes Me」がかかっていたのにはちょっとびっくりしたよ。

ユニオンでは中古盤セールをやっていて、いつものように目ぼしいものを手当たり次第に手に取り始めたんだけど、欲しいと思っていたはずのどのCDもなんだかそんなに聴きたくなくって、結局全部棚に戻してきてしまった。で、ウォークマンで「She Makes Me」からの続きを聴きながら帰ってきたよ。

2009年の10日目にこのアルバムに出会ってからもう15日経ったけど、今のところ他のアーティストのことなんて全く考えられないぐらいに、このアルバムは僕の頭の中を占領している。果たしてこの先ディフェンディング・チャンピオンとして、今年あと残り340日を勝ち残って、来年初頭にこのブログの「2009年個人的ベストアルバム」という題名の記事の最後にこのちょっと『Pet Sounds』風のジャケ写が載ることになるんだろうか。今の僕には、それ以外の可能性を冷静に考えることなんてできないよ。



Addictive - Glenn Tilbrook & The Fluffers

Pandemonium Ensues.jpg 
Glenn Tilbrook And The Fluffers 『Pandemonium Ensues』

It's been a week since then, but I'm still struggling to get back to the real life. A typical after-the-ball syndrome. Started to work reluctantly just because I had to, but my musical life still needs time to recover. As I wrote in my articles about Glenn's gigs, I went to Kichijoji a little earlier to hang around all the CD shops there in those 3 consecutive days. I bought 10 CDs there beside Glenn's one. Almost two weeks now, those 10 CDs are just left on my desk, mostly unopened. I've tried to listen to some of them, but they didn't really get into me.

I think I'm the kind of person who listens to various kinds of music. I have no hesitation to listen to a totally different type of music one after another. Rather I would say it's rare for me to listen to similar type of music continuously. Moreover, it's totally not my habit to repeat the same album. I'd just get bored.

To my surprise, I've been repeating this new album by Glenn Tilbrook called Pandemonium Ensues over and over again since the first day I get it. In average twice a day at least, so it's been more than 30 times I guess. I can recall every bit of sound in the whole album now. I don't get bored at all. The moment the last sound of Too Close To The Sun fades out, I find myself to push the play button. What an addictive album.

So, it's impossible for me to write about any other artists now. As the closer of the fun-filled GLENNFEST, I write about this album.

This new album is released after the 4 years' blank since Transatrantic Ping Pong in '04. However, during the 4 years, there were my first GLENNFEST in '06, two demo albums, Squeeze's live albums & deluxe editions, etc. To be frank, 4 years wasn't so much long for me.

This album will officially be released on 9th Feb in UK, but in conjunction with this Japan tour, The Music Plant imported some bunch especially for us prior to the official release. Lucky to be the fans in Japan.


Incomplete.jpgThe first solo album since Squeeze split, The Incomplete, wasn't a bad album. I like This Is Where You Ain't. And some acoustic tracks in the UK bonus disc still sound fresh to me. However, that album reminded me of Cafe Bleu or Welcome To The Beautiful South. The very first albums that the main songwriters released after my favourite bands broke up. Same voices, familiar melodies, but something was different. Especially for The Incomplete, it lacked the voice of Chris Difford.

TPP.jpgThere were plenty of my favourite tunes in Transatrantic Ping Pong. Neptune, Hostage or Reinventing The Wheel, to name a few. We could listen to those evergreen melodies in this time's gigs (not sure why Glenn stopped playing Reinventing The Wheel after the first verse on the second night in Tokyo though). By then I already got used to Glenn's voice not accompanied by Chris'. I purely loved the album. As I checked my record, I've chosen this album as one of my top 10 in '04 (together with Chris' I Didn't Get Where I Am).

Some members in those two albums got together as The Fluffers, and released this new album under the name of Glenn Tilbrook and The Fluffers, not Glenn's solo for the first time ever. With the first listen, it sounded very different from the previous two. According to the album credit, this album was recorded live, with some minor overdubs. Hence this live-feeling.

I've just wrote this album was addictive. Perhaps that addiction is mainly caused by the album opener Best Of Times. When I listened to it for the first time, I thought it just a plain song. But the more you listen to it, the more Stephen Large's accordion starts to stick into your ears.

According to Glenn's MC at the gig, he wrote this song with the influence by Faces, especially Ronnie Lane. I tend to agree the atmosphere of the song is kinda similar to this album of him.

Anymore For Anymore.jpg
Ronnie Lane & Slim Chance - Anymore For Anymore

I'm not a hardcore fan of Ronnie and own only a few album of him, but I can understand that Glenn wants to play like this as he gets older. Loose but not dull. Plump and earthy. Sentimental lyrics in line with such abundant sound. Who said this was a plain song?:) A masterpiece.

The next song Through The Net must be the most attached song to some thirty-odd people who stayed after the show on the second night in Tokyo. I'm looking forward to see the video on YouTube.

Lalala lalala, Bang! You finish the song singing the chorus in your head. Then what you hear next is the most unusual song in the album. The bassist Lucy Shaw sings Product. In most of Squeeze's albums the band members took the lead vocals, but of course never a female vocal. Maybe that's why it sounded a bit weird to me.

During the gigs Glenn explained this song is about an actress. Ah, so Lucy mimics the actress and sings in such a flat tone. A good joke, but as I've been listening to Glenn singing this song during the tour, I can't help thinking if Glenn was singing this song in the album too. By the way, only these three songs were played in all the 7 venues during this Japan tour. Not to mention about the first two, but Glenn must be so much fond of this song too. Well, sorry Glenn, I will never complain about this song anymore:)

Next one is explained as "Punk" during the gigs. Slaughtered Artist. Indeed, it sounds like the "Punk / New Wave" era Squeeze. Though the Jools Holland-ish piano doesn't sound like punk at all (hence, Squeeze then wasn't punk at all). Judging by the laughter at the end of the song, Glenn must be imitating Punk by this, just as he imitated 60's French Pop by Product.

According to Glenn's MySpace, the next song Still will be released as the download only single, but the site shows the good-looking CD cover art. A medium tempo tune with the comfortable Wurlitzer and strings sounds. Since he played this song mostly during the encore, this song must be positioned next to Black Coffee In Bed or Another Nail In My Heart for him. I agree with it.

I've requested Glenn to play Relentless Pursuit while I asked for the autograph after the third night in Tokyo (the request was never realized though). I was interested in how this song would be by taking out the flamboyant chorus. This vocal melody filled with the Tilbrook Magic must've sounded special even if it's naked.

If this album is released in vinyl, the following Interest & Love should be the last song of side A. It's the duet with Vanessa Paradis (who nowadays must be more famous as Johnny Depp's partner). An enchanted sweet voice. Glenn sang this only in Nagoya this time. Wish I was there..

Then the side B opener with the cool piano sound is Melancholy Emotion, which Glenn has already played on the last Tokyo tour in '06 with the self-recorded back band sound. Co-written by Chris Blaide, who used to write together with Glenn in the previous albums. This time Chris plays piano only in this song and Little Ships. He didn't join The Fluffers. I wonder if he's not so close to Glenn anymore.

When I requested Relentless Pursuit, Glenn was confused it with She Makes Me. I know why by now. Those two songs are co-written with the drummer Simon Hanson. Glenn must categorize those two as Simon's songs. I know why Glenn didn't sing either of them. I guess he didn't know the lyrics:)

He played Happy Disposition every night in Tokyo, but gradually not playing in the other venues. Oh, this is also co-written with Chris Blaide. I recall when I heard this song for the first time on the first night in Tokyo. Listening to him singing "three months later, we're back in London. We're just at home the other side of the world", I thought "well, this guy has just come all the way from London". Yeah, of course. I also remember my friend sitting next to me in Osaka told me the structure of this song resembled Helter Skelter. Well, you could say that.

The most "pop" song in the album, Black Sheep. Groovy trumpet sound. Ah, one of the hand-clapping members is Louis Tilbrook. A mischievous twangy guitar solo tracing the nursery rhyme Baa Baa Black Sheep.

Changing the mood to the impetuous Beachland Ballroom with the nice Wah guitar. A good variance of the pace from the previous song. By the way, the credit for Black Sheep is Written by Stephen Large and Glenn Tilbrook. And this one is Written by Glenn Tilbrook and Stephen Large. Does that mean Glenn wrote lyrics not the melody of one of the songs? Usually the lyricist first in the credit. So this song (melody) was written by Stephen?

It's not very outstanding, but to me it's another highlight of the album, Little Ships. Well, this is also co-written with Chris Blaide. I was wrong to guess he's not so close anymore. Nevertheless, I can't understand why Glenn hasn't played such a good song at all during the Japan tour.

I have loved you from your first breath and always will till my last

I don't want to ruin such beautiful lyrics with my poor translation (nothing to do with this English article though). Glenn, who hasn't hidden his love and affection to his family, now expresses this kind of deep feeling all over this album.

As the song gracefully fades out, the spacy moog sound kicks in, and it becomes Too Close To The Sun, which again is the instrumental ending tune following One For The Road from the previous album. Probably the easiest way to introduce this new album to anyone is to say Johnny Depp is doing narration in this tune. Actually, I've heard Johnny's fansite has been talking about this album. This guest appearance was realized since Johnny was the Squeeze fan. Good taste, Johnny.

By the way, I have thought it as the album's lead single and picked it up in my article on 29th Nov, but none of the 4 songs are on the album, nor played during Japan tour. Binga Bong! What was that single for? The album's lead out-takes?


Phew, I don't usually explain about all the songs in the album (though I don't actually "explain" about some). To that extent, this album hasn't got any filler. Most of the audience who joined Glenn's Japan tour should've got it, and I think they should feel the same.

For those who are unfortunate enough not to join the tour, I've pasted a link to Amazon's page, but if you can't wait till Feb, you can buy it now at The Music Plant's website.

There must've been some distribution from The Music Plant to Disk Union. I went to Shinjuku store today and found the album was displayed at the entrance, next to Chris Difford's album. A digression. When I walk into the store my Walkman was playing Melancholy Emotion, then I realized the BGM in the store was about to turn to She Makes Me. What a coincidence!

There was a used CD sale going on at Disk Union. As usual, I've grabbed some CDs, but not brought them to the till in the end. All those CDs that I wanted weren't so much attractive to me today. I started play from She Makes Me on my Walkman and headed back home.

I got this album on the 10th day of 2009. It's been 15 days since then. This album occupies my mind so that I can't even think of the other artists. I wonder if this album will be the defending champion through another 340 days. And this Pet Sound-ish cover art will be listed at the end (which means the best) of the article of this blog early next year titled My Top 10 Albums 2009. I can't imagine any other possibility as of now.
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2008年12月26日

唯一無二 - Jeff Hanson

Madam Owl.jpg Jeff Hanson 『Madam Owl』

特異な声は要らない。一昨日の記事にそう書いたばかりだけど。では、素敵なメロディーの、心に染み入るドラマチックな曲を歌うのが、唯一無二の特異な声だとしたらどうだろう。

ジェフ・ハンソン。彼の歌を初めて聴く人は、それを歌っているのが男性だということをにわかには信じられないかもしれない。透き通るような、少女のような歌声。

これだけ素晴らしい曲を書いて、しかもファーストアルバムではピアノ以外の全ての楽器を自分で演奏していたほどの優れたマルチプレイヤーが、この声だけで評価を受けてしまうことは避けたいとは思うんだけれど。

僕はこの歌声しか知らないから、彼の地声が一体どんな風なのかはわからないけれど、写真を見たところごく普通のアメリカ人青年である彼がいきなりこの声で歌いだすのを聴いた人はさぞかし引いたことだろう、なんて余計な心配をしてしまうほどのインパクトはある。

感動的な03年のデビューアルバム『Son』、05年の自らの名前を冠したセカンド(散々NZの中古屋で見かけたこれを何故か僕は未聴)に続く三枚目『Madam Owl』。発売元が一貫してキル・ロック・スターズなのも、彼がことあるごとに故エリオット・スミスと比較される一因なのかも。

確かに、エリオット・スミスを好きな人はきっと彼のことも気に入るとは思うけど、同時に、彼を単なるエリオット・スミス・フォロワーの一人みたいな座に彼を置いておくのはあまりにも勿体無いことだとも思う。それほどの、オリジナリティー。

マルチプレイヤーである彼があえて沢山のゲストを呼んでの、豪華な音作り。クレジットに載っている楽器を読み上げてみると、ギター、ベース、ドラムス、バンジョー、ラップスティール、ピアノ、キーボード、ヴァイオリン、ヴィオラ、チェロ、トランペット、フリューゲルホーン、テナーサックス、トロンボーン、アコーディオン、ソウ(横山ホットブラザースか)。

弾き語りの曲はあくまでもシンプルに。弦や管を加えた曲は、控えめながらもじわじわとドラマチックに盛り上げる。それでいて、あくまでも主人公はこの声。いいプロダクションだね。プロデューサーは、ジェフ本人と、ロバート・バートルソン(Robert Bartleson)という人。この人のことはよく知らない。

マイスペースに載っている4曲が果たして彼を代表する4曲かどうかはともかくとして、興味のある人は聴いてみてほしい。そして、少しでもひっかかるところがあれば、是非このアルバムを手にしみてほしい。決してキワモノじゃない、優れたSSWのアルバム。

地味なジャケの裏側は更にこんなに地味
Madam Owl Back.jpg

虫嫌いな人、ごめん。こないだうちにスキャナー買ったんで、つい嬉しくて何かスキャンしてみたくなっただけ。
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2008年09月06日

待望! - Glenn Tilbrook / Squeeze

またおととしの話になるけど、この記事とかこの記事とかこの記事とかこの記事とかこの記事でさんざん僕が騒いでいたことを憶えている人もいるだろう。その年僕のブログで最も多くの回数取り上げられることになり、彼の一連のコンサートが僕にとって06年の最大の音楽的なイベントとなった、あのグレン・ティルブルックがまた日本にやってくることになった。

日程と公演地は、

  1月10日(土)吉祥寺 Star Pine's Cafe
  1月11日(日)吉祥寺 Star Pine's Cafe
  1月12日(祝)吉祥寺 Star Pine's Cafe
  1月13日(火)横浜 Thumbs Up
  1月15日(木)名古屋 TOKUZO
  1月16日(金)京都 Irish Pub Gnome
  1月17日(土)大阪 Shangri - La

前回は東京だけでの5回公演だったが、今回はなんと横浜、名古屋、京都、大阪も含めた全7回公演。falsoさんも今度は行けるだろうか。

詳細はこちら。今日の午前0時に発売開始になったばかりだから、今ならまだわりと早めの整理番号がゲットできるかも。僕も既に複数日分予約したから、これを読んで行くことにした人とは、どこかの会場で会えるかもね。

彼のライヴがどんなに楽しくて、毎日違う内容だからファンなら何回でも通う価値のあるものだというのは、去年のライヴ評に書いたとおり。

今年の初頭だかに出るという話だった新しいソロアルバムはいまだに完成していないようだから、マテリアル的には2年前から大きな変化はないかもしれないけど、彼自身にはこの2年間に大きな変化があったはず。おそらくソロアルバムのリリースが遅れていることもこれが原因だと思われる、去年7月のスクイーズの再結成だ。

もともと彼がここ数年ずっとソロで演っている理由も、長年のチームメイトだったクリス・ディフォード(Chris Difford)との関係がちょっとぎくしゃくしたからだったということらしいけど、一昨年の東京公演の際にはその場でクリスに電話をするなど、「なんだ、仲いいんじゃない」と思わせてくれる展開もあった。それが、その一年後には、ほぼ10年ぶりとなる再結成につながった。

再結成とはいえ、彼ら二人以外には重要メンバーは戻ってきていないんだけど、まあとにかく僕たちファンにとっては、グレンとクリスが一緒に何かを始めてくれたということが一番の大きなニュース。話によると、新しいスタジオ盤も作り始めていて、来年のリリースになるらしい(グレンのソロは一体いつになるんだろう)。

当初その再結成は、スクイーズの旧譜の再発を記念しての、UKとアメリカだけでの単発の企画だったと思ったんだけど、スクイーズのホームページを見ると、今月になってもまだツアーが続いているね。これを年内ぐらいまで続けてから解散し、1月にはソロで来日、ということなんだろうか。そういうことなら、いっそクリスにも一緒に来日してほしかったとつい欲が出てしまうんだけど…



数年前からのスクイーズの旧譜再発プロジェクトは、6月8日の記事で取り上げた名盤『Argybargy』期のライヴ録音とか、発掘音源が次から次へと出てくるという嬉しい展開になっている。そんな発掘音源がまた最近ひとつ発売されたので、早速入手した。エコ月間だけど、買わないといけないものは買う。

The Complete BBC Sessions.jpg Squeeze 『The Complete BBC Sessions』

メジャー・デビュー前の77年8月から、『Some Fantastic Place』発表後の94年まで、17年間、計8回にわたるBBCでのスタジオ・ライヴ録音の集大成だ。2枚組で全29曲というかなりのボリューム(「Pulling Mussels (From The Shell)」と「Labelled With Love」がメドレーで一曲としてカウントされているので、実際には30曲ある)。

前半には、ファーストアルバム以前のEPからの曲や、当時の未発表曲も何曲か入っており、きっと当時の彼らのコンサートはこんな曲をこんな順番で演奏してたんだろうな、と思わせてくれる。

中盤(89年)は、アコースティック・ギターだけでグレンとクリスが歌う『Frank』期からと過去の名曲。おととしのグレンの東京公演と同じスタイルだけど、やっぱりクリスの声が入ると、長年のファンとしてはちょっと感傷的になるね。

後半(2枚目)は短いスパン(92年〜94年)に4回の録音だから、結構同じ曲がダブって収録されている。「Some Fantastic Place」と「Third Rail」が2回ずつ、「Tempted」が3回。それぞれアコースティックとバンド形式とか、「Tempted」はオリジナル通りポール・キャラック(Paul Carrack)が歌ってるヴァージョンとグレンが歌ってるのとか、微妙に違うアレンジが楽しめる(そういうのを楽しめる人は、ってことだけどね)。

他には、国営放送で放送禁止用語規制が厳しかったのか、ファーストアルバム1曲目「Sex Master」はサビのところの歌詞を“Evil Master”と変えて歌っているとか、

セカンドアルバムではクリスがリード・ヴォーカルをとっている「The Knack」を、そのアルバムの発売前になるこの78年の録音ではグレンが歌っていて、アルバム収録までの間に一体何があったんだろうと想像させてくれたりとか、

アルバム『Frank』が出た直後のはずの89年10月録音の「Melody Motel」(『Frank』収録曲)を、オリジナルとは全然違う歌メロで歌っていてびっくりしたとか、

さっき書いたヴァージョン違い以外にも、オリジナルを聴き込んでいる人ならより深く掘り下げて楽しめる内容になっているよ。ライナーも、マニアックな情報をきっちり網羅しながらも読みやすい(かつ感情のこもった)文章で好感が持てるしね。欲を言えば、『Argybargy』からの曲が「Pulling Mussels」一曲しか入っていないことか。

彼らがBBCに出演した記録を全部は知らないんだけど、録音時期が78年から82年までぽっかり飛んでいて、全盛期の『Cool For Cats』〜『Argybargy』〜『East Side Story』期にBBCに全く出ていないとも思えないので、“The Complete”というタイトルとは裏腹に、その時期の録音がまた後で出たりするのかな。



全7日間の公演のうち、少しでも行ける可能性のある日のチケットはとりあえず全部押さえた。あとは、その週に出張や大きな会議がぶつかったりしないように、てるてる坊主とかわら人形とか作ってお祈りしておくだけ。

東京での会場、Star Pine's Cafeは、昔スラップ・ハッピーの来日公演で一度だけ行ったことがあるけど、なかなかいいハコだった記憶がある。もう今から楽しみでしょうがないよ。また前回みたいにリクエスト箱が用意されるのかな。前回一度も演奏しなかった曲とか、昔のアルバムで忘れ去られている曲とか、シングルB面曲とか、家にあるCDやレコードを全部おさらいして、リクエストしたい曲を今からリストアップしておこう。こんな楽しい気持ちがこれから4ヶ月も続くのか。うれしいな。
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2008年07月20日

クォンタム・リープ - Sonny Landreth

From The Reach..jpg Sonny Landreth 『From The Reach』

相変わらず、どうやってそんな音を出しているのか見当もつかない、この人にしか出せない特異な音。控えめにミュートされながらも緊迫感みなぎる、そんな金属的なギターのリフでアルバムが幕を開ける。性急なスピード感とは裏腹に、最初の歌詞を二度繰り返す12小節形式の古典的なブルーズ・マナーに則った「Blue Tarp Blues」。95年の傑作アルバム『South Of I-10』での「Shooting For The Moon」同様、今回のアルバム冒頭を飾るこの曲にゲスト参加しているのは、元ダイア・ストレイツのマーク・ノフラー(Mark Knopfler)。

このアルバムに収録された曲は、それぞれに参加しているゲスト・ミュージシャンを頭に思い浮かべて書いたとサニー本人が述べているとおり、この曲でのマークの流暢なギター・ソロは、彼の往年の名曲「Sultans Of Swing」を髣髴とさせるものがある。しかも、いくつもあるダイア・ストレイツのライヴ・アルバムでほぼ必ず演奏されているその曲のうち、彼が最高にノッていた時のものに匹敵すると言っても過言ではないだろう。ひとつ違いがあるとすれば、ここで聴かれる芯の太い安定した音は、「Sultans Of Swing」で使われていたストラトキャスターでなく、後年『Brothers In Arms』などで多用していたレスポールを使ったものだろう。それが、サニーのストラトキャスターのやんちゃな音とうまくブレンドしている。

そう、今回のアルバムは、5人のギタリスト(と、一人のピアニスト)をゲストに迎え、他流試合と言っていいようなギター・ソロ合戦が満喫できる超豪華盤。バックを務めるのは、サニーの参加アルバムには欠かせない彼の片腕デイヴィッド・ランソン(David Ranson)がベース、ドラムスは前作あたりから一緒に演っているマイケル・バーチ(Michael Burch)、キーボードに長年の盟友スティーヴ・コン(Steve Conn)の、いわば拡大ゴウナーズ。

この、僕が近年聴いた中でも最高に格好いい曲の殿堂に入れてもいいと思える1曲目だけでも書きたいことはまだまだあるんだけど(ちなみにその殿堂には、今世紀に入ってまだ5曲もエントリーされていないというほど、一応厳しい脳内審査があるんだけどね)、どこまで聴き進んでも駄曲がないこのアルバムを一曲一曲そこまで詳しく書き連ね始めると本当にきりがないのでこの辺にして、次の曲について書こう。

2曲目「When I Still Had You」で、ファンキーなギターのリフをサニーと一緒に演奏しているのは、エリック・クラプトン(Eric Clapton)。特に最近の傾向では、昔の曲でさえ、落ち着いたクールなトーンで余裕を持って弾くことの多い彼だけど、ここでは、自分が“世界で最も過小評価されている”と評したこのギタリストと真っ向から、本当に楽しそうに張り合っている。そして、サニーもまたそれに応えて、自分のギターの6弦全部から全ての音を搾り出すようなワイルドなプレイを披露。キャッチーなこの曲の歌詞の一節から、アルバム・タイトル『From The Reach』が取られている。確かに、曲の良さといい、ゲストの豪華さといい、アルバムを代表するに相応しい曲だ。4月29日の記事で取り上げたオフィシャル・ブートレグでも既にこの曲を演奏しているが(そのときのギタリストはサニー一人)、それを聴いたときにはこの曲がここまでいいとは気づかなかった。エリック・クラプトン参加というのは伊達じゃないね。

エリックは、自身が主催しているクロスロード・ギター・フェスティヴァルに、サニーを含む自分よりも若いギタリストを多数招待して、活躍の場を与えているし、確か一昨年ニュージーランドに来たときのサイド・ギタリストはデレク・トラックスだった。サニーといい、デレクといい、おそらく今の自分よりもテクニック的には上と言っていいようなギタリストと共演することは、彼にとってもリスクの高いことだと思うけれど、きっと、そういう次の世代の有能なギタリストを(自分のネームバリューを使って)どんどん世に送り出し、自分のギター・プレイの刺激にもしようとしているんだろうね。かつて自分がジョン・メイオール道場で同じ経験をしたように。そういうところが、この人凄いと思う。

三曲目「Way Past Long」のゲスト、ロベン・フォード(Robben Ford)には、実は僕はあまり馴染みがない。この前の2曲では、それぞれ優れたヴォーカリストでもあるマークとエリックがサニーのバックでコーラスを決めているが、ロベンはこの曲でサニーとヴォーカル・パートを分け合っている。ヴォーカルの表現力という意味では、ロベンが若干上をいくか。

せっかくゲストにヴォーカル・パートを与えていても、この曲のハイライトもやはりサニーとロベンのギター・バトル。ギター・ソロを演りたいがために、間にやむなくヴォーカルを入れたと言っても過言でないほど延々と果てしなく、二人のギター・テクニックを堪能できる。

「やむなく」が本当だったのかどうか、続く4曲目「The Milky Way Home」は、ゲストにエリック・ジョンソン(Eric Johnson)を迎えての、インストゥルメンタル曲。これが、凄い。このエリック・ジョンソンというありがちな名前の人も僕はあまりよく知らなかったんだけど、名前で検索してみたら、見たことのあるジャケが出てきた。ジョー・サトリアーニ、スティーヴ・ヴァイという、僕にとってはバリバリのメタルの人たちと3人で、G3というユニットを組んで、ライヴ・アルバムを発表していた人だ。この人自身がメタル畑出身なのかどうかは知らないけど、そのバカテク二人に混じってトリオを組むような人だから、きっと凄いテクニシャンなんだろうね。

この「The Milky Way Home」も前出のライヴ・ブートレグで演奏されていたけど、このスタジオ盤での聴きものは、当然サニーとエリックのギターの掛け合い。左チャネルのサニーの引きずるようなスライド、右チャネルのエリックの滑らかなエレキ、その丁々発止が気持ちいい。曲の途中、2〜20小節ずつ交互にソロを弾き合う場面がずっと続いていて、それを聴いているだけでもかなりスリリングなんだけど、中で一箇所、小節の途中でサニーが弾いているフレーズをそのままエリックが引き継ぐ箇所があって、これは相当ぞくっとくるよ。曲自体も、「天の川を渡る帰り道」という壮大なタイトルに負けないスケールの大きな佳曲。

続く5曲目「Storm Of Worry」は、打って変わってベタベタのブルーズ(とはいえ、プロデュースのせいか、音的には結構からっとした仕上がり)。ゲスト・ギタリストは再びエリック・クラプトン。もう、エリックもサニーもこういうブルーズ大好きだから、二人とも心ゆくまで弾き合っているよ。ところで、サニーのヴォーカルって、ブルーズ向きの塩昆布みたいなのに、ちょっと噛むと甘味が出てくるような、絶妙な味付けのいい声だなと思う。こういうブルーズでも、しっかりコブシをきかせて歌っているんだけど、苦みばしったところがまったくないというか。

ここまで全て、サニーのギターが左チャネル、ゲストのギターが右チャネルで来たのだが、次の「Howlin' Moon」でサニーのギターが右に移る。代わって左チャネルでいぶし銀のようなピアノの音を鳴らしているのが、ドクター・ジョン(Dr. John)。彼も95年の『South Of I-10』に参加して、「Mojo Boogie」という名演を残しているんだけど、どうやらこの「Howlin' Moon」はスタジオ盤としては前作にあたる『The Road We're On』を作っていたときにデモ録音されたのがきっかけだそうだ。「Mojo Boogie」同様、ドクター・ジョンのピアノとヴォーカルがなければ成立しないような曲。この曲にはバック・ヴォーカルでジミー・バフェットも参加しているんだけど、流石にドクターの後ろでは立場がない。

ふう、これでやっとアルバム半分か。ちょっとペース上げようかな。もうすでによっぽど興味のある人以外には誰も読んでいないだろうことはわかってるけど、曲解説以外にも書きたいこともあるから、さすがにこの調子だと今日中に書き終えられるかどうかわからないしね。

7曲目「The Goin' On」のゲスト・ギタリスト兼ヴォーカリストは、ヴィンス・ギル(Vince Gill)。彼のことも、僕は名前しか知らなかった。これはいかにもサニーらしい曲。もろニュー・オーリンズ風味の「Howlin' Moon」の直後だから、やけにさわやかに聴こえる。ヴィンスのヴォーカルがそうさせているのかもしれないけれど。

8曲目「Let It Fly」には、ゲスト奏者はなし。バック・ヴォーカルにナディーラ・シャクール(Nadirah Shakoor)という女性。ブックレットのこの曲の見開き対面ページに載っている、地平線と雲の写真のように、大らかなギターのイントロが心地良い曲。

アルバム終盤、早歩きペースのブルーズ曲「Blue Angel」も、先述のライヴ・ブートレッグで演奏されていた中の一曲。ゲストは、ロベン・フォードがギター、ヴィンス・ギルがバック・ヴォーカル。

その曲に続いて、急に何かに急き立てられたように突入するのが、このアルバム2曲目のインスト「Uberesso」。これもゲストはなし。先述したエリック・クラプトン主催のクロスロード・ギター・フェスティヴァルの07年度DVDでオープニングを飾っている曲だ。ちょっとこの記事も文字ばかりになってきたから、YouTubeにアップされているそのビデオでも貼り付けてみようかな。ここまで僕が延々書いてきた彼のプレイの凄さがどんなものなのか、これを見ればわかるから。



CDの許容範囲いっぱいに70分以上も詰め込むこともなく、かといって最近ありがちなSSWのアルバムのように30分強であっさりと終わってしまうというわけでもない、昔ながらのアルバムらしい46分半という程良いサイズのこのCDの最後を締めくくるのは、これまたゲスト・ギタリストなし(バック・ヴォーカルはヴィンス・ギル)でしっとりと演奏される「Universe」。僕のお気に入りの曲である『South Of I-10』ラストの「Great Gulf Wind」にも勝るとも劣らない名曲だ(あそこまでブラスが入ったりリプライズが付いたりといった仕掛けはないが)。最後のギターの一音、そしてその余韻までが、いつまでも耳に残る。“貫禄”という言葉が脳裏に浮かぶ。


近年の彼のアルバム同様、デジパック仕様のジャケットに、20ページに及ぶ丁寧な作りのブックレットが封入されている。上に載せたアルバム・カバー共々、そのブックレットにふんだんに使われている、実に味わい深い写真を提供しているのは、ジャック・スペンサー(Jack Spencer)という写真家。単純にセピア色という言葉では形容できないその不思議な色世界、彼のHPでも存分に堪能できるよ。興味がある人は是非見てみて。

さっき、アルバム・タイトル『From The Reach』は、「When I Still Had You」の歌詞の一節から取られたと書いたが、実はこのアルバムのキーワードになっているのが、“Reach”という単語。アルバム後半、「Let It Fly」、「Universe」といった曲にも、繰り返し登場する。サニー自身の言葉を借りると、こうだ。

俺が歌詞を書くときはね、流れに任せて、何が頭に浮かんでくるかを待つんよ。今回はその“Reach”っちゅう単語が繰り返し浮かんできた。“到着する”っていうそのままの意味もあるけど、“広がり”っていうことも意味してるよね。見渡す限りの空とか、砂漠とか、水。そう、水の流れとか、水域とかね。海員用語で“風向き”っていう意味もある。そういう言葉全部が、このアルバムのテーマとしてしっくり来ると思ったんや。俺にとってこのタイトルは、曲作りの過程からこのプロジェクト全体に至るまでをつなぐ糸みたいなもんやね。俺がここに参加してる素晴らしいアーティスト達に手を伸ばして(“reached out”)、それでできたのが、今あんたが聴いてるこのアルバムちゅうわけや。

最近のサニーのアルバムは全て日本発売が見送られていたが、なんと今作はバッファロー・レコードという鎌倉を拠点とするインディーズ(?)から日本盤が発売された。快挙じゃないか。申し訳ないが、ボートラが入っているわけでもなく、アメリカでの発売(5月末)から一月遅れの6月25日発売まで待てなかったので、僕はUS盤を買ってしまったんだけど(それから約1.5ヶ月、タマス・ウェルズ症候群に陥っていた時期を除いて、一日2回ずつ、合計で既に50回は聴き倒したと思うから、この長文レビューに免じて許してくれるよね)、もしこの記事を読んで興味を持ってくれた人は、是非日本盤を買って、こういう良心的なレーベルを応援してあげてほしい。


もしあなたが、格好いいロックを聴いてみたいと思ったら、

明けても暮れてもエレキギターの練習をしている人なら、

ブルーズ(・ロック)に興味があるけど、誰のどのアルバムから聴いてみればいいのかよくわからないなら、

最近のエリック・クラプトンはすっかり落ち着いてしまって、『Slowhand』や『Backless』の頃の彼が懐かしいと思っているなら、

メジャーになってしまってからのダイアー・ストレイツやマーク・ノップラーのソロは大仰だったり地味だったりでつまらない。やっぱり「悲しきサルタン」の頃が最高!という意固地な人なら、

そして、このブログを読んで、僕の感性を信じてくれるなら、

このアルバムを聴いてみればいい。掛け値なし、全力でお薦めするよ。


僕は今でも、さっきから何度も引き合いに出している95年の彼のアルバム『South Of I-10』が彼の最高傑作だと思っている。でも、このニュー・アルバムをこれまで50回ほど聴いて、その気持ちが大いに揺らいでいる。『South Of I-10』の素晴らしさに文句をつけるつもりなど微塵もない。でも、過去12年に亘って数十回(もしかしたら数百回)聴いてきて、自分の一部みたいになってしまっているあのアルバムに対する愛着をちょっと横に置いて、冷静に比べてみたらどうだろう。アルバムとしての完成度、ゲストの豪華さ、歌、演奏。サニー・ランドレス初心者にまず聴かせたいアルバムはこっちになってしまうかも。

いみじくも、アルバム最終曲「Universe」の歌詞にこの言葉が出てくる。QUANTUM LEAP − 一大飛躍。まさにこの言葉が、この世界で一番過小評価されたギタリストの渾身のアルバムを最もうまく言い表している。
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2008年07月13日

ホバートからの挨拶状 - The Steadfast Shepherd

The English translation follows the Japanese text.

タマス・ウェルズ症候群とでも言おうか。あの三晩連続ライヴからもう丸一週間も経つというのに、どうも他の音楽が聴けない。いや、聴いてはいるんだけど、なんだかうまく気持ちの中に入ってこなくて、ついタマスばかりを聴いてしまう日々が続いている。昨日・今日とこんなにいい天気なのに、新しい音楽を求めてCD屋に出かける気さえ起こらない。以前コメント欄で、同時にいろんな種類の音楽が聴けるなんてまるで異星人のよう、なんて言われたこともあるのに、これじゃすっかり地球人に戻ってしまったみたいだ。

リハビリのため、というわけでもないけれど、少なくとも今現在そんな状態の僕が無理なく聴けるこのCDのことを書いてみることにしよう。

The Open Sky.JPG The Steadfast Shepherd 『The Open Sky』

前回の記事を読んでくれた人には紹介は不要だろう。タマス・ウェルズ(・バンド)のドラマーであり、タマス・ウェルズの傑作セカンドアルバムやブロークン・フライトのデビューアルバムのプロデューサーでもあり、今回のタマス・ウェルズ(・トリオ)来日公演ではギターとコーラスを担当し、そして、そのほとんどの開催地で前座を務めた、ステッドファスト・シェパードことネイサン・コリンズの初EP。

より具体的には、ステッドファスト・シェパードとは、ネイサンと彼の妻であるフェアリー・コリンズのユニット。ジャケットには楽器クレジットがないので、どちらが何を担当しているのかはわからないが、いずれにせよそんなに沢山の種類の楽器が演奏されているわけではない。アコースティック・ギター、タンバリン、ハーモニカ、キーボード、といったところか。そして、ネイサンとフェアリーのヴォーカル。主にネイサンだけど。

CDのジャケは、ゲイトフォールド(見開き)と呼ぶのがためらわれてしまうような、手作り感満載の厚紙ジャケ。クレジットを見ると、今年の5月に友達の家などで録音されたばかりのようだ。

ところで、僕は数ヶ月前から彼らのマイスペースを訪れていたんだけど、ちょっと彼らのビジュアル的なイメージと音のイメージが掴みづらいところがあった。例えば、漫画っぽい羊のイラストに手書きのロゴというこの牧歌的なイメージが、彼らが2月に行ったコンサートの告知ポスター。

Feb Show Poster.jpg

そして、5月に行われたコンサートの告知ポスターはこうだ。一転して、中世風の装飾文字と馬の骨格というアーティスティックなイメージに変わる。

May Show Poster.jpg

それが、今回のEPは、上に載せたように、冬枯れの大木にシンプルなロゴという、アシッドフォークなのか、あるいはもしやゴス系なのかと思わされるデザイン。しかも、裏ジャケを見ると、一曲目のタイトルが、エクスクラメーションマーク付きの「Disaster!(災害!あるいは、大失敗!)」だ。一体どういう音を想像すればいいのか、知らない人は戸惑ってしまうことだろう。

では、早速聴いてみることにしよう。予想に反して、一曲目「Disaster!」は、ネイサンとフェアリーのリード・ヴォーカルが交互に出てくる、かなり牧歌的というか、レイドバックした曲。結局あの2月のポスターのイメージが彼らの本質だったのかと思ってしまうような。

しかし、二曲目以降へ聴き進むにつれて、次第に趣が変わってくる。あたかも、春の牧場から徐々に木枯らしが吹く枯野へと向かうように。

三曲目がこのEPのタイトルトラック「The Open Sky」。この曲は彼らのマイスペースでも聴いてダウンロードすることができるし、僕が観た両日のライヴでも必ず演奏されていた。

こちらもライヴで演奏された、四曲目「Recurring Dream」は1分ほどの小曲。よく聴くと、これは先に出てくる二曲目「Would You Tremble?」と同じメロディーを、より陰鬱にした感じ。歌詞を全部聴き取ったわけではないけれど、この短い6曲入りEPの中で、この二曲がちょっとしたプチ組曲を成しているようだ。

その短い四曲目をイントロのように使って、五曲目「Painting The Leaves Back On The Trees」が始まる。この曲もマイスペースにアップされていて、ジャケのイメージも含めて、僕はこれが(タイトル曲の「The Open Sky」は別として)このEPの核になる曲だと思っているんだけど、何故かこれはライヴでは演奏されなかった。一曲目のレイドバックした雰囲気と、それ以降の荒涼とした雰囲気がうまくミックスされた曲だと思うんだけどな。

最終曲「Thou Art My Son...」は、わずか3分の曲のうち1分強がイントロ、エンディングはふっと途切れるように終わるという、ちょっと異色な曲。低音のハーモニーが荘厳な雰囲気を醸し出している。二曲目のタイトルを思い出させる“How you tremble”なんて歌詞が出てくるあたり、ここでもまたプチ組曲風の仕掛けが。

マイスペースにずっとアップされていて、今回のライヴでもそれぞれオープニングとエンディングに演奏された「Sticks And Bones」も「Golden Point」も、このEPには収録されなかった。きっとそれらは、現在製作中だというフルアルバムに入ることになるんだろう。

それ以外にも、このEPには収録されていないが、今回のライヴで演奏された曲が(僕が聴いただけでも)通算で4曲あった。中でも、確か両日ともに三曲目で演奏された、ハーモニカを吹き、タンバリンを足で踏みながら歌った曲を僕は結構気に入ったので、おそらくそれが収録されることになるアルバムがとても楽しみだ。

それまでは、このEPを何度も聴いておくことにしよう。言っちゃ悪いが、決して「本年度ナンバーワン!」とかいった出来ではない。だけど、タマス・ウェルズの最初の二枚のEPや、ブロークン・フライトの『Ray Of Youth』も、彼らのその後のアルバムに比べると、少し物足りないあっさりした内容だったことから考えても、このEPはきっと、後にステッドファスト・シェパードのデビューアルバムが出たときにこそ、彼らのルーツとしてよりよく味わえるようになるんだと思う。

今回のタマス・ウェルズのコンサートに行けなくてこのCDが買えなかった人も、彼らのマイスペースを通じて10オーストラリアドル(+送料2ドル)で買えるよ。興味があれば是非どうぞ。

もともとタマスと同じくメルボルン出身の彼らだが、現在はタスマニアのホバートという街に移り住んでいるとのこと。タスマニア、どんなところなんだろうね。きっとこれからとても寒くなるオーストラリア最南端からの、短いけど気の利いた挨拶状を今日は紹介した。



Greetings from Hobart, Tas

Should I call it Tamas Wells syndrome? It's been a whole week since the three nights show, but I still can't listen to the other music. No, actually even if I hear the other music, they just don't reach my heart. And I stop them and play Tamas again. It's been sunny days this weekend, but I don't feel like going out to the CD shops to search for the new music. In the comment column I used to be called as an Alien since I could listen to various kind of music at the same time, but now I am an earthling.

Not exactly for the rehabilitation purpose, but let me try to write about this CD that I am able to listen to in my current mood.

The Open Sky.JPG The Steadfast Shepherd 『The Open Sky』

If you have already read my article last week, this CD doesn't need the introduction. The drummer from Tamas Wells (Band). The producer for the masterpiece second album of Tamas Wells and Broken Flight's debut album. The guitarist / backing vocalist for Tamas Wells (Trio). And the opening act for most of the Tamas Wells' shows in Japan this time. This is the debut EP from Nathan Collins a.k.a. The Steadfast Shepherd.

To be precise, The Steadfast Shepherd is a unit by Nathan and his wife Fairlie Collins. As there's no instrument credit on the CD cover, I only can guess which played what instruments. Anyway, there aren't so many of them - just acoustic guitars, tambourine, harmonica and keyboards. And of course the voices of Nathan and Fairlie. Mainly Nathan's though.

The CD is in the paper-sleeved gatefold cover. It looks like a real hand-made. According to the credit, this CD has only been recorded in May in some of their friends' houses.

By the way, since I started to visit their Myspace some months ago, I've been struggling to grasp their visual & musical images. For example, this is the poster for their concert in February. A pastoral image with the cartoonish sheep illustration and the hand-written logo.

Feb Show Poster.jpg

And this is the poster for their concert in May. Turns into an artistic image with the horse skeleton and the medieval calligraphy.

May Show Poster.jpg

And this time, the cover art of the EP is (as per the above photo) the withered big tree and the simple logo. You may wonder if this artist is an acid folk singer or maybe a goth. Not only that, the title of the first song on the back cover is Disaster with the exclamation mark. If you don't know them, you will wonder what sort of music is in this CD.

Ok, let's have a listen then. Contrary to the estimation from the cover or the exclamation mark, the first track Disaster! is rather pastoral laid-back song featuring both Nathan's & Fairlie's lead vocals. You may want to jump to the conclusion that the February poster image was their real nature.

But if you keep listening after the second tune, the atmosphere gradually changes, as if you're heading from the warm spring sheep farm to the wasteland with a wintry blast.

The third tune is the title track The Open Sky. This can be listened to and downloaded from their Myspace. And this was also played at the two shows that I saw the other day.

The fourth track Recurring Dream is a 1-minute short song. This was also played at the two shows. If you listen carefully, this song has the same melody as the second track Would You Tremble?, with more gloomy touch. I haven't caught all the lyrics, but these two songs seem to form a petit-suite in this 6-song short EP.

Using the fourth track just like its introduction, starts the fifth track Painting The Leaves Back On The Trees. This song is also posted on their Myspace. Considering the CD cover image, I think this song is the core of this EP (beside the title track The Open Sky), but this was not played at the Japan shows. I don't know why... Still I think this is a good song with the nice mixture of the laid-back touch from the first song and the desolate atmosphere from the later songs.

The last track Thou Art My Son... is a little unique song with one-minute-long introduction out of 3-minute, and the ending part suddenly fades out. The low tone harmony gives the solemn atmosphere. There's a line saying How You Tremble which reminds you of the second tune. Another trick for the petit-suite.

Two songs, Sticks And Bones and Golden Point, which have been posted on their Myspace, and were played respectively as the opener & the closer of his show, are not included in this EP. I guess they will be in the forthcoming album that Nathan told me he's making now.

Beside those two, there were 4 more songs (as far as I listened) played during his show this time. I liked the third song of both shows (if my memory's correct) that he blew harmonica and played the tambourine with his foot. I'm looking forward to hear that again in the new album.

Till I hear that, I keep listening to this EP. Sorry to say, this is not a This Year's Best! kind of CD. However, if you recall the first two EPs of Tamas Wells or Broken Flight's Ray Of Youth were very simple and not as good as their later full albums, this EP must sound profoundly as their roots when you eventually listen to the debut album of The Steadfast Shepherd.

If you didn't go to Tamas Wells' concert this time and couldn't get this EP at the venue, you still can purchase it through their Myspace. It's only A$10 (+ A$2 postage worldwide) if you're interested.

Originally they were from Melbourne same as Tamas, but now they reside in Hobart, Tasmania. I wonder how you feel to live in Tasmania. Today, I introduced a short but fancy greetings from the south-end of Australia, where the weather is getting harsher.
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2008年05月15日

成長型記事 『Two Years In April』 - Tamas Wells

The English translation will follow the Japanese text.

Two Years In April.jpg Tamas Wells 『Two Years In April』

2008年5月15日(木)

明日が発売日のはずだったのに、今日もう入荷したとの連絡を受けた途端、いてもたってもいられなくなり、最近連日で深夜残業していたのを言い訳に、CD屋が閉まってしまう前に会社を抜け出した。

まだ二回しか聴いていないから、というよりは、ちょっとこれは下手にやっつけ仕事で適当にまとめた文章にはしたくないという気持ちが強くて、時間をかけてじっくり聴き込んで、きちんと気持ちを込めて書きたいと思った。

だけど、そうして時間をかけて後回しにしてしまった挙句に書く時間がなかなか取れず、結局記事にできたのは当初の予定から何ヶ月も経ってから、というのがもうここ数ヶ月ずっと続いていることを考えると、この大事なアルバムをそんな目に合わせるわけにはいかないと思い、まずこうして取っ掛かりの文章をしたためることにした。

これから少しずつ文章をふくらませていこう。サグラダ・ファミリアのように。



2008年5月19日(月)

 1.ブリンズリー・シュウォーツ
 2.マリリン・マンソン
 3.タマス・ウェルズ

問い:時代も国籍も音楽性も違うこれらのミュージシャンに共通するものはなんだ?

答え:三組とも、リーダーの名前がそのままバンド名になっていること。
まあ、確かに細かいことを言えば、マリリン・マンソンは当然本名なんかじゃないし、ブリンズリー・シュウォーツで頭角を現してその後ソロでブレイクしたのはニック・ロウの方だから、誰がリーダーかというとややこしい話になるんだけど(この話題を僕が出すと、すかさずコメント欄でクロムさんがスペンサー・デイヴィス・グループとJ.ガイルズ・バンドの話に振ってくれるのは最早伝統芸能級の決まりごとということで)。

タマス・ウェルズの過去2枚のアルバムは、4名からなるタマス・ウェルズ(・バンド)によって演奏されていた。どちらのアルバムにも共通して、きちんとアルファベット順にブックレットに掲載された彼ら。

 ネイサン・コリンズ(Nathan Collins):ドラムス、打楽器、キーボード
 アンソニー・フランシス(Anthony Francis):ピアノ、オルガン、キーボード
 オウエン・グレイ(Owen Gray):ベース、キーボード
 タマス・ウェルズ(Tamas Wells):ギター、ピアノ、オルガン、マンドリン

基本的にはアルバムでも穏やかに爪弾かれるアコースティック・ギターやマンドリンと端正なピアノが彼らの音楽の骨格を形作っていたとはいうものの、それらの曲がほとんどギター一本のみの弾き語りで演奏された去年のタマス・ウェルズのソロコンサートを体験した僕は、上に列記したその他の楽器がアルバムでは如何にその存在感を主張していたかということを、逆説的に気づかされたものだ。

どちらがいいとか悪いとかいう話ではない。去年の8月のあの夜、ちょっと音が不確かなミャンマー製の800円のアコースティック・ギターだけの音を頼りに、まるで瓦礫の中に立ちすくむように在った「あの声」は、他の楽器の音がなかったがために、より強く、よりストレートに僕らに届いたと言えるかもしれない。

06年のセカンド・アルバム『A Plea En Vendredi』から1年半振りに届けられたこのニュー・アルバムのブックレットには、二人の演奏者の名前しかない。ジョー・グリフィス(Jo Griffiths)というヴィオラ奏者が何曲かで色付けをしてはいるものの、今回のアルバムのクレジット“Tamas Wells”は、バンド名でなく個人を指している。これは、サード・アルバムにして初の、タマス・ウェルズのソロアルバムになる。

演奏されている楽器は、タマス自身の手によるアコースティック・ギター(その音色から、件の800円ギターだとわかる)、いつものマンドリンでなくバンジョー、打楽器(ライナーによると、ミャンマーのシーという民族楽器ということだが、ちょっと調べてみたところ、シィというのはビルマ語で太鼓というほどの意味のようだ。チェイ・シィがトライアングル、シィ・コウがシンバル、など。このアルバムに入っているのはどれだろう)、それと、先ほど書いたヴィオラ、それだけ。前二作に比べて、遥かに少ない音数。

大半の曲は、「トゥー、スリー、フォー」とカウントをするタマスの囁きで始まる。そのざっくりとした感じが、綺麗にプロデュースされたスタジオ録音と言うよりは、なんだか新規発掘されたデモ音源を聴いているような気分にさせる。

プロデュースといえば、ファースト・アルバム『A Mark On The Pane』のプロデューサーは、去年8月19日の記事にも書いたとおり、ゴー・ビトゥイーンズ、フードゥー・グルズ、ハンターズ&コレクターズなど、オーストラリアのバンドを数多く手がけた、ティム・ウィッテン(Tim Whitten)、セカンド・アルバム『A Plea En Vendredi』は、タマス・ウェルズ・バンドのドラマーでもあるネイサン・コリンズのプロデュース作。そして、ヤンゴンの自宅で録音された今回のアルバムをプロデュースしたのは、タマス・ウェルズ本人。そりゃ確かに、混乱のヤンゴンにわざわざ来てくれるようなプロデューサーはいなかっただろうからね。

以前のアルバムと聴き比べると、オーストラリアで録音された前二作では、きちんとした作りの立派なアコースティック・ギターを使っていたんだなというのがよくわかる(800円以上のね。笑)。それに、やはりネイサン・コリンズというのは、地味ながら実に味わい深いいいプロデュースワークをしていたんだなあと感心させられる。昨年9月8日の記事に書いた、ブロークン・フライトのアルバムと同様に。

そうそう、蛇足ながら、ネイサンのマイスペースに、ブロークン・フライトが新作を製作中というニュースが載っているんだけど、そこでブロークン・フライトを紹介している一文が、がんばって英語でも書いた先の記事からの引用なんだ。プロデューサー直々に推薦文として使ってもらえて、嬉しいよ。

閑話休題。昨年のソロコンサートで、唯一タマスの歌とギターをサポートしていた楽器があった。タマスの奥さんブロンウィンが数曲で弾いていた、ピアノだ。

あの素朴なソロコンサートを髣髴とさせるこの新作に一つ物足りないものがあるとすれば、それはやはりピアノの音だろう。前作、前々作にそれぞれ2曲ずつ収められていた物悲しいピアノ・インストが、今作には未収録となっている。それも、今回のアルバムの印象を以前の2作と違ったものにする原因になっているはずだ。

やれやれ、まだ一曲一曲にも触れず、歌詞にもタイトルにも全然言及していないのに、もうこんな量になってしまったよ。とりあえずまだ月曜だし、今週もちょっと忙しい日が続くから、今日のところはこれぐらいにしておこうかな。



2008年5月25日(日)

前2作を通じてタマス・ウェルズの音楽を形作っていたものといえば、かの“天使の歌声”と、デリケートというよりはフラジャイルと形容したくなるような美しいメロディ、そして、抽象的で難解な歌詞だろう。

先週書いたとおり、アルバムが録音された状況は前2作と違ってはいるものの、今作『Two Years In April』にも基本的にはその3つの要素が全て揃っている。

声については何も述べることはないだろう。CDであれ、ライヴであれ、彼の歌声を一度でも聴いたことのある人にならわかってもらえるであろうあの声は、もちろん今作でも健在。

名曲「Valder Fields」を筆頭に、きらめくような珠玉のメロディを持った曲の数々のみで構成されていた前作『A Plea En Vendredi』に収められていたとしても全く遜色のない曲が、今回のアルバムにもいくつもある。質量のない球が坂道を弾みながら転がり落ちる光景を見ているようなオープニング「Fine, Don't Follow A Tiny Boat For A Day」の朗らかなメロディ。続く「I Want You To Know It's Now Or Never」のメロディは、まるで半音ずつ刻まれた永遠の階段をせわしなく駆け上ったり駆け下りたりしているかのよう。

もちろん、去年のコンサートで書かれたばかりの新曲として演奏され、一体この人の頭の中からはどれだけ無尽蔵にこれほどの瑞々しいメロディが湧き出てくるんだと、会場にいた誰もを魅了した「The Northern Lights」も、まさにあのとき披露されたそのままの姿で、このアルバムの中心に据えられている。

そして、抽象的で難解な歌詞。

例えば、去年の東京ライヴの記事に書いたけれど、前作収録の「I'm Sorry That The Kitchen Is On Fire」のようにかなり具体的な物語について書かれたような曲でも、歌詞をそのまま読んだり聴いたりしているだけでは一体それが何についての歌なのかさっぱりわからないほど。いっそのこと、あのときのように、自分の曲がそれぞれどういうことについて歌われているのかタマス本人に解説してほしいものだ。

ところが、今回のアルバムは、こともあろうにコンセプト・アルバムである。デニース・ロックヘッドという名の少女にまつわる物語。全10曲につけられたやたらと長いタイトルは、きっとこの30分強に亘る物語をそれなりに説明しているのだろうと思いきや、曲のタイトルから具体的に何かがわかるのは、その余りにも生々しい描写がこの物語が楽しいものではないということを明示している8曲目「The Day That She Drowned, Her Body Was Found」ぐらいのものだ。

ブックレットを開くと、それぞれの曲のタイトルに続いて、サブタイトルのようなものがつけられている。やたらと長い割りにいまいち状況をかいつまんでいないタイトルと、それほど難しい単語を使っているわけでもないのに相変わらず何のことを歌っているのかはっきりと掴みづらい歌詞の間を埋める橋渡し的な役割を、それらサブタイトルが担っているようだ。こんな風に。

1.4月 極東を巡る彼女らの旅の始まり
2.サンクチュアリ・グリーン・テニス・クラブ。外科医とデニース
3.エレベータのドア。病院の匂い
4.1月 旅はさらに中東へ
5.そして、スカンジナビアでの別離
6.9月 郊外からの通勤についての微妙な問題
7.嫉妬、地方選挙、堰についての論議
8.3月20日午前10時30分、デニース・ロックヘッド行方不明となる
9.寒くなると彼らは外でゴミを燃やす
10.この4月で2年に


前半は特に、「世界の終わりとハードボイルド・ワンダーランド」や「ねじまき鳥クロニクル」の各章に付けられたサブタイトルのようだね。なんだか、わかったような、わからないような。もちろんこれらはサブタイトルだから、これらを読んだだけで内容が全てわかるはずがない。とはいえ、歌詞を全て読んだところで、頭に浮かんでくる具体的な情景は、これらのサブタイトルだけを読んだ場合とそう変わらない。少なくとも僕の場合は。読解力に難があるんだろうか。

さっき余りにも生々しい描写のタイトルと書いた8曲目から、サブタイトルのトーンも変わっているのに気づかれただろうか。難解な歌詞で綴られたこの物語も、その曲中で主人公のデニースが海で溺れ死ぬ場面で風雲急を告げる。

ヴィオラによるドローンと、ぽつぽつと爪弾かれるギターだけを伴奏に訥々と歌われる9曲目「Signs I Can't Read」。僕はこれを聴く度に、白装束のデニースが立つ三途の川の光景が目に浮かんで仕方がない。これだけの少ない音で、こんなに質素な録音で、こんなことができるアーティストが他にいるだろうか。

そしてここで明らかになる、簡単な単語の羅列なのに僕にはいまいち掴めていなかったアルバム・タイトル『Two Years In April』の意味。彼女が4月に最初に旅に出てから、不慮の死を遂げてしまった後に、最終曲「Grace And Seraphim」で天使に囲まれながら永遠の旅に出る4月までがちょうど2年ということだったんだ。

そういえば、先週書いた、このアルバムでタマスが演奏しているというミャンマーの民族楽器シー。あちこちの曲のエンディングで、チーン、チーンと、まるで仏具の“りん”のような音を立てている、ちょっと響きのくぐもったトライアングルみたいな楽器がきっとそうなんだろうね。

そう思うと、さっき“朗らかなメロディ”なんて書いた1曲目「Fine, Don't Follow A Tiny Boat For A Day」のエンディングで既にその音が鳴らされていることから、この二つの4月の物語は、その出だしの4月から既に不吉な予兆を内包していたことが見事に暗示されている。繰り返すテーマのメロディもなく、歌詞が壮大な叙事詩になっているわけでもないが、そんなほんのささやかなシーの音で綴られた、タマス・ウェルズらしい実に繊細なコンセプト・アルバムだと僕は思う。



2008年5月31日(土)

今日はちょっと手短に、CDのアートワークの話でもしよう。この記事も、冒頭にアルバムジャケットの写真を載せただけで、あとはいくらスクロールしても延々と白とオレンジの文字が出てくるだけなので、読んでくれてる人も相当うんざりしてきた頃だろうから、そろそろここらでまた写真でも載せてみようか。

A Mark On The Pane.gif 『A Mark On The Pane』
Plea en Vendredi.jpg 『A Plea En Vendredi』
Two Years In April.jpg 『Two Years In April』

今作を含む、タマス・ウェルズの3枚のアルバムジャケット。意識的なのかどうかはわからないけれど、雰囲気的にどれもかなり似通ってるよね。くすんだ青を基調にした無機的なデザイン。

ファースト『A Mark On The Pane』のジャケは、僕の持っているオリジナルのオーストラリア盤ブックレットの内側に載っている数枚の写真と併せて考えると、おそらくこのアルバムが録音されたスタジオ内の風景だと思う(シドニーとメルボルンの計3つのスタジオで録音されているので、そのうちのどれかということまではわからないけど)。

僕が初めてタマス・ウェルズについて書いた06年10月29日の短い記事にもあるように、セカンドアルバム『A Plea En Vendredi』の一見何が写っているのかわからない無機質なジャケットには、何故だか妙に僕の興味を引くものがある。今作のライナーによると、そのジャケはタマスのおじいさんが書いた壁画の写真だそうだ。と言われてもなお、これが一体何が描かれた壁画なのかさっぱりわからない。あれ?先週の追記でタマスの歌詞について同じようなこと書いたよね。さすが、この祖父にしてこの孫あり、ということか。

そして、今作。数ヶ月前にネットでこのジャケの小さな写真を初めて見たとき、僕はそれが『A Plea En Vendredi』の贋作、もしくはパロディかと思ったほど、色合いも構図も前作と似通っている。実物を手にとって見ると、油絵の描かれたキャンバスのクローズアップである今作は、おそらく水彩絵の具が使われている前作の壁画とはかなり趣が異なったものだったけど。

ここには写真を載せていないけど、水平線(または地平線)を思わせる両者の裏ジャケのデザインも、僕はそっくりだと思う。この2枚のCDを持っている人は、是非見比べてみてほしい(「別に似てない」と思った人はその旨コメント欄までどうぞ)。

くすんだ青、赤、白からグレーを経て黒。その単純な色で構成されたジャケットの絵の解釈に関しては、ライナーで大崎さんが深く考察されているので、あえて僕はそれには触れないでおこう。代わりに、見開き10ページのこのブックレットについて少々。

開いたページのどちらかに、ジャケットの油絵の一部分のクローズアップが載っていて(その中にはジャケットにはない部分もあることから考えると、これは元々もっと大きな絵の一部だとわかる)、その反対側のページにそれぞれ1曲〜3曲分の歌詞が掲載されている。

それらの歌詞の背景の色もまたジャケットと同じ色合いを使っているんだけど、それがまたこのコンセプト・アルバムの流れにうまく沿っているように思える。全ページの写真が載せられれば、このアルバムを持っていない人にもよくわかってもらえるんだけど、うちにはスキャナーがないので、なんとか文章で表現してみよう。

まず、先週の追記で軽く触れたアルバムのオープニング2曲の背景の色は、黒から濃い青へのグラデーション。暗い舞台の幕が開き、青を基調にしたこの物語への導入部のようだ。見開きの右側のページには、このアルバムのジャケットで唯一目を引く雲(のようなもの)が大きく写っている。

続く3曲の背景も、先ほどのページをそのまま引き継いだような濃い青から明るい青へのグラデーション。見開きの右側のページと合わせて、青の物語の主要部分を成している。

スカンジナビアでの別離を経た後の、(もしこのアルバムがLPならB面の冒頭にあたるはずの)6曲目〜7曲目のページは、一転して暗雲が立ち込めたような黒。見開きの左側のページにはグレーの雲も見られるし、歌詞の載っている右側のページも、黒からグレーへのグラデーションが見られ、その暗雲が長く続くものではないことが暗示されているのだが…

続く、問題の8曲目だけが左端にぽつんと掲載されたページの中央部分で、黒からグレーを経たグラデーションが、白や元の青の物語に戻るのではなく、突然に血の色へと変わってしまう。この赤い余白(余「白」なのに赤なのはおかしいと一瞬思ってしまったけど、そんな話がしたいわけではないので却下)が、この物語の中でこの8曲目がどれほどの意味を持っているかを端的に表している。見開き右側のページを一言で表現するとすれば、「混乱」か。

そして、デニースが天へと旅立つエンディングの2曲は、葬儀の際に彼女が着せられていたという白装束の色が背景だ。見開き右ページの、白だけが塗られた部分のキャンバスに残る筆の跡が、昇天する魂を表しているようにも見えるし、この物語を締めくくる、僕ら現世の人間には読めないエンディングクレジット(「Signs I Can't Read」…)を象徴しているようにも見える。

あまりにも深読みのしすぎだろうか。まあいいや、ライナーの大崎さんもきっとそうだろうけど、こういう作品って、どれだけ自分が深読みしてその物語の中に入っていけるかで、愛着の持ち方が随分変わってくるものだからね。

ところで、3枚のアルバムのアートワークを見ていて他にも気づいたことがあるんだけど。表ジャケの名前の表記が、ファーストでは全て小文字(tamas wells)、セカンドでは大文字と小文字の組み合わせ(Tamas Wells)、サードでは全て大文字(TAMAS WELLS)になっている。これにも何か意味が…?とふと思ったけど、そこまでの深読みをしても誰もついてこられないだろう。なのでこれも却下。

じゃあ今回はこのへんで。僕のブログをいつも読んでくださっている人なら、冒頭に書いた「手短に」という言葉に何の意味もなかったというのは予測の範囲内だったはず。いつもすみませんね。



Growing article - Tamas Wells 「Two Years In April」

Two Years In April.jpg Tamas Wells 『Two Years In April』

15 May 2008 (Thu)

It was supposed to be tomorrow, but when I got the news that it was already in-store, I sneaked out of the office to get to the CD shop before it'd be closed. I didn't care whatever workload I had. I've been working overtime every night anyway.

Not just because I have listened to it only twice, but because I didn't want to write an easy article on this album, I decided to listen to the CD over and over again first so that I may be able to write something in-depth.

But how many albums that I wanted to write in-depth had finally resulted to be the article after many months due to my recent busy schedule? I just didn't want to treat this important album like that, so I've opened this article with this short essay, so that it'd keep remind me to continue writing about it.

I will make this grow little by little - just like Sagrada Familia.


19 May 2008 (Mon)

1. Brinsley Schwarz
2. Marilyn Manson
3. Tamas Wells

Q: What's in common among these 3 bands who are totally different in their musical style, in various times, from different countries?

A: These bands were named after their respective leaders.

Well, Marilyn Manson is of course not his real name. And you would argue who's the real leader when Nick Lowe wrote most of the songs for Brinsley Schwarz and finally made his own successful solo career.

There were 4 members in Tamas Wells (the band) in the last two albums. On both CD booklet listed their names alphabetically;

Nathan Collins: Drums, Percussions, Keyboards
Anthony Francis: Piano, Organ, Keyboards
Owen Gray: Bass, Keyboard
Tamas Wells: Guitar, Piano, Organ, Mandolin

Though the music in the albums were played by the band, they were largely formed by the quiet acoustic guitar and mandolin, and the noble piano sound. However, when I heard the same songs being played almost by one acoustic guitar in last year's Tamas Wells' solo concert in Tokyo, I paradoxically realized how much the other instruments listed above actually asserted themselves in the albums.

I'm not saying which is better. That August night in Tokyo, "the voice" reached straight and strongly to our heart, accompanied only by the precarious sound by the Myanmar-made 8-dollar acoustic guitar, as if his voice was solely standing in the midst of the ruins.

There are only two players' names on the booklet of this new album, which was released 1 1/2 years after the second album A Plea en Vendredi in 2006. Though the viola player Jo Griffiths adds the colour on a few songs, the album credit "Tamas Wells" in this album represents Tamas Wells himself, not the band. This third album by Tamas Wells is the first solo album by Tamas Wells himself.

The musical instruments used in this album are; the acoustic guitar by Tamas (I'd guess it's the 8-dollar guitar by the sound), Banjo not the Mandolin, Percussion (according to the liner notes, it's the folk instrument in Myanmar called Se. As I checked, Se meant the percussion in Burmese. Kyey Se is a kind of triangular gong. Chu Se is like a jingle bell. I wonder which is the one used in this album), and then the Viola, as I mentioned earlier. That's it. Far sparser sound than the previous albums.

Most of the songs start with Tamas whispering "two, three, four..." The rough make makes me imagine as if I'm listening to the newly-found demo recordings, not the properly produced studio recordings.

Talking about the producer, the first album A Mark On The Pane was produced by Tim Whitten, who used to produce many Aussie bands' albums such as Go Betweens, Hoodoo Gurus, Hunters & Collectors, etc (see my previous article on the album - but sorry it's not translated in English yet). The second album A Plea en Vendredi was produced by Nathan Collins, who was also the drummer of the band. And the producer of this new album, recorded at Tamas' own house in Yangon, was Tamas Wells himself. I would guess no producer would be willing to go to the chaotic Yangon.

If you compare this album with the previous ones, it's easy to tell Tamas was using the well-crafted acoustic guitars (cost more than 8 dollars!) in the Aussie-made albums. And I'm amazed again to realize how much Nathan Collins produced simple but exquisite albums, like I wrote about Broken Flight's album (see my previous article - this one's in English).

Oh, by the way, when I saw the news article about Broken Flight recording the new album on Nathan's MySpace, I found a part of the article quoted from my blog. Though the news has gone already, I'm glad the producer chose my words as the introduction. Good that I translated that with great difficulty.

Let's go back to the subject. At the last year's concert, there was one instrument which supported Tamas' voice & guitar. It was the piano occasionally played by Tamas' wife Bronwyn.

If I point out something missing from this album, which greatly reminds me of the naïve solo concert, it's the piano sound. There were two sadly-sounded piano instrumentals respectively in the previous albums. This new one doesn't have one. That should be another factor why it sounds so different from the previous ones.

Well, I haven't touched upon each song yet, not talking about the lyrics or the song titles too. But look how much I've already written! It's only Monday and the busy week's coming through. I think I should stop it for now.


25 May 2008 (Sun)

What formed the music of Tamas Wells throughout the past albums were; the famous "angelic voice", the beautiful melody that I would describe as fragile not just delicate, and the abstract lyrics that are hard to comprehend.

As I wrote last week, though the situation this album was recorded in was quite different from the previous ones, the new album Two Years In April basically contains all those three elements.

There's nothing I should say about the voice. Be it on CD or at the live concert, once you've heard his voice before, you'll never forget it. The unforgettable voice of course exists in this album again.

The former album A Plea en Vendredi was made up only by the songs you'd call the gems, represented by the masterpiece Valder Fields. You can find some songs that are almost equivalent to them in this album. A cheerful melody of the opening number Fine, Don’t Follow A Tiny Boat For A Day, just like you're watching the scene the weight-less bouncing balls rolling down the slope. The melody of the following number I Want You To Know It's Now Or Never is like it's hurriedly run up & down the eternal stairs that have every semitone steps.

Of course, The Northern Lights, which was played in the last year's concert as the newly written song, and which fascinated everyone at the venue to wonder how many more of such fresh melodies sprung from the guy, sits at the centre of this album exactly the same as what we heard then.

And, the abstract lyrics.

For instance, as I wrote in the last year's concert report, a song like I'm Sorry That The Kitchen Is On Fire which was written based on the specific story could be hard to understand what it was all about, if you only listen to it or just read the lyrics. We might as well ask Tamas himself to explain about every song like he did for I'm Sorry That The Kitchen Is On Fire then.

Moreover, you'd be surprised to know that this new CD is the concept album. The story about the girl called Denise Lochhead. You would think the lengthy titles for the 10 songs should explain this half an hour story in its own way. But I should say there's only one song title that you could guess something about the story - the too vivid description specifies that this whole story is not the cheerful one - the 8th song of the album, The Day That She Drowned, Her Body Was Found.

When you open the booklet, you can find the subtitles after each song's title. These subtitles act as mediators between the lengthy but not very specific song titles and the abstract lyrics which consist of only simple words. Just like these;

1. April And The Beginning Of Their Travels Through The Far East
2. Sanctuary Green Tennis Club, The Butcher And Denise
3. On Elevator Doors And Hospital Smells
4. January And Further Travels In The Near East
5. And The Separation In Scandinavia
6. September And Facing The Delicate Questions Of Commuting From The Outer Suburbs
7. On Jealousy, The Local Election And A Controversy About The Weir
8. Denise Lochhead Was Reported Missing At 10:30am On March 20
9. When It Is Cold They Burn The Rubbish Outside
10. It Will Be Two Years In April


Especially the early ones remind me of the subtitles from Haruki Murakami's Hard-Boiled Wonderland And The End Of The World or The Wind-Up Bird Chronicle. You think you get the point, but not exactly... Of course these are only the subtitles. You'll never comprehend everything about the story only by them. But if I read the whole lyrics, the exact image I'd get is more or less the same as when I read only these subtitles. Hmm...I may have a problem in reading comprehension ability.

You may notice the tone of the subtitle changed at the eighth song, which I described earlier as too vivid. This abstractly constructed story has grown tense when Denise drowns at the sea in the song.

Only the drone sound of viola and the strumming guitar back up the halting voice in the 9th track Signs I Can't Read. Every time I hear this song, it makes me clearly see Denise in white stands alone at the Styx. Who else could do this magic with only such a few instruments and in this simple production?

And here you finally understand the real meaning of the album title Two Years In April, which consists of only simple words but I didn't really get the point. It's exactly two years from the April she started the first journey to the April in the last song Grace And Seraphim that she went on the final (& eternal) journey accompanied by the angels after the unexpected death.

Then I recall what I wrote last week, the Myanmar folk musical instrument Se that Tamas was playing in this album. The muffed triangle-like sound that's ringing here and there like the gong in the Buddhist altar must be the one.

Thinking that way, although I described the first song Fine, Don’t Follow A Tiny Boat For A Day as a cheerful melody, since the Se was already ringing at the ending of the song, it is clearly hinted that this two April story already connoted an ill-omen from the first April. There's no repeating theme melody. No spectacular epic poetry. But this is a very delicately crafted concept album sewn by a little Se sound.


31 May 2008 (Sat)

Let's briefly talk about the artwork of the CD today. You must be so bored to see the words after words in just white & orange colours, ever since you saw the album cover at the top. Ok, let's put some more photos. Here you go.

A Mark On The Pane.gif 『A Mark On The Pane』
Plea en Vendredi.jpg 『A Plea En Vendredi』
Two Years In April.jpg 『Two Years In April』


These are the album covers of all the three albums by Tamas Wells. They all have a similar atmosphere, though I'm not sure if he intentionally aimed it. Inorganic designs based on dull blue.

Judging from the other photos on the booklet of the original Australian version, I think the cover photo of the first album A Mark On The Pane is the interior of one of the studios the album was recorded, though I don't know which one of the three studios in Sydney & Melbourne.

Like I wrote in my first article about Tamas Wells on 29 Oct 06 (sorry, it's not in English), there's something appealing to me in the monotonous album cover of the second album A Plea en Vendredi, though it doesn't make sense to me what's in it at a glance. According to the liner notes of the new album, it was the painting on the wall by Tamas' grandfather. Having heard that, it's still so hard to understand what's in the painting. Did I write the same about Tamas' lyrics? Well, like grandfather, like grandson.

And the new album. When I saw the tiny photo of this cover art for the first time on the net a few months back, I thought it was a fake or a parody of A Plea en Vendredi. So much the colours and the composition of the two albums look alike. If you have a close look at the actual CD, you notice the close up of the oil painted canvas is quite different from the water-coloured (I guess) wall painting.

Though I don't post the photos here, the artwork of the back covers of the two albums look alike, too. They both remind me of the horizon. If you have both of these two albums, have a look - and post your objection in the comment box if you think otherwise :).

Dull blue, red, white through gray to black. Yohei has already put together his deep thought about the interpretation of the cover painting consists of those simple colours. I don't dare to argue with him by my own interpretation. Instead, I touch upon this 10 pages booklet.

One side of the open pages is the close up of the oil painting of the cover art (you realize the cover art is also a part of a much bigger painting, as some of the pages show the parts not seen in the cover art). And there are the lyrics of 1-3 songs on the opposite sides.

The backgrounds of the lyrics pages use the same colourings as the cover art. I think these colour patterns are very thoughtfully arranged in line with the story of the album. If only I can post the photos of all the pages, anyone who don't have this album could see what I mean. But as I don't have a scanner, I try to describe it as much as I can.

First, the background colour of the first two songs that I briefly touched on last week is the gradation from black to navy blue. It represents the unlit stage into this blue-based story. The right-hand page shows the white clouds (I think), which is the most eye-catching part in the album cover.

As the story goes, the background of the following three songs also changes from navy to light blue. Together with the painting on the opposite page, they form the main part of this blue story.

After the separation in Scandinavia, the background of the 6th to 7th tracks (they should be the openers of the side B if this is a record) turns into black, as if an overcast sky suddenly kicks in. You actually see the gray rain clouds in the left hand page. Though you'd expect the gradation from black into gray on the opposite page gives you a hint that the rain would stop soon...

But, the next pages have the song in question - the 8th track. The left hand page has the lyrics at the edge. At the centre of the page, the gradation from the overcast black turns, not into white or the blue-story blue, but suddenly into the blood colour. This red blank (just had a quick thought the word blank / blanc should mean white not red... well, never mind. It's not the time to argue about that now) straightforwardly indicates how much this 8th track means in this whole story. If you describe the painting on the opposite page in one word, it's Chaos.

And, the background of the last two songs that Denise starts on a journey to heaven is the colour of the dress she was wearing at her funeral. The traces of the brush on the right hand page which is painted only in white look as if it's representing her ascending soul, or indicating the ending credit that's unreadable by human beings like us (Signs I Can’t Read...).

Am I reading too much? I guess Yohei had the same feeling when he wrote his well-thought liner notes. The deeper you go into the story even if it's your own interpretation, the more you grow to love it.

There's another thing that I noticed by looking at the three albums' artworks. The inscriptions of the name on the album covers are all different. The first album is all lower case (tamas wells). The second album is the combination of the upper & lower cases (Tamas Wells). And the third album is all upper case (TAMAS WELLS). There must be some hidden message behind them...? No, I guess nobody wants to read any more of my crooked interpretation. Think I should stop it for now.

If you are the regular reader of my blog, you already knew the word 'briefly' at the beginning of today's article didn't mean anything. Sorry about that :)
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2007年09月08日

透明感のあるグレー Broken Flight 「On Wings, Under Waves」

The English translation will follow the Japanese text.

あれは何日か前のこと。僕は雨の中を運転していた。静かな渋滞の朝。土砂降りというわけじゃなかったけれど、昨晩からずっと振り続けていた雨。空はなんとなく明るいんだけど、雲が切れる気配はない。見渡す限りの白い空に、幾重にも折り重なる灰色の雲。ほとんど白と見分けのつかないような薄い灰色から、そこから雨が落ちてくるのが見て取れるような真っ黒な雲まで。そういえば普段わざわざ見上げることもなくなっていたけど、曇り空って、こんなにいろんな色でできてるんだってことに、ふと気づいた。

カーステレオから流れていたのはこのCD。けっしてドライビング・ミュージックといった類の音楽ではないんだけど、最近手に入れてからここしばらく続けて聴いている。そして、この瞬間、この気だるい灰色の朝の風景にこの音がとても合うことにも、僕は気づいた。冬の雨の日の音楽。一色一色を言葉で表すことはできないけど、数え切れないほどの種類の灰色で彩られた、でも、そのベースは向こう側にある太陽の存在がわかるような透明感のあるグレーでできている、そんな感触の静かな音。


On Wings, Under Waves.gif Broken Flight 『On Wings, Under Waves』

前回の記事にちらっと書いた、タマス・ウェルズがインタビューで自分の好きな音楽としてホセ・ゴンザレスと共に名前を挙げていたのが、このブロークン・フライトというメルボルンのバンド。

静かに爪弾かれるアコースティックギター、そこに一音ずつ音を確かめるかのように重ねられるピアノ、穏やかな声とハーモニー。そんな感じの「In Patterns」でアルバムは幕を開ける。え、まるでタマス・ウェルズのアルバム紹介のようだって?そうだね、さすがに彼がお気に入りに挙げるだけあって、音の感触はタマス・ウェルズのそれにとても似ているかもしれない。この05年のアルバムのプロデューサーは、ネイサン・コリンズ。どこかで聞いた名前だと思ったら、タマス・ウェルズの『A Plea En Vendredi』のプロデューサー、というか、タマス・ウェルズ(個人でなくバンドとして)のドラマーじゃないか。

サティの「Gymnopedie」を下敷きにしたと思しきイントロを持った2曲目「August」でのフレンチホルンや、6曲目「The Old Man And The City」でのホーナーのメロディカ(日本では一般的にヤマハのピアニカとして有名な楽器。アルバムのブックレットにはホーナーとしか書いてないけど、このアルバムのどこにもハーモニカらしき音は入ってないので、それは多分この曲でこのノスタルジックな音を奏でている楽器のことだろう)などの一風変わった楽器が使われているのが印象的。アルバム全体を通じて薄い灰色のギターとリズム楽器が淡々と演奏される中、あちこちでアクセントをつけるように(でも、あくまでも同じ系統の色合いで)そういう音が重ねられているところが、冒頭に書いた様々な灰色の混じった空のイメージを僕に与えるのかもしれない。

3曲目「In The Woods」とアルバムを締めくくる「A Strange Love」の2曲がインストゥルメンタルなんだけど、どちらもとてもシンプルなメロディーを何度も反復しながら、いろんな楽器やコーラスが幾重にも折り重なって入ってきては出て行くといった構成の曲。前者が7分強、後者に至っては9分を越える長尺で、聴いていると感覚が麻痺してくる感じが実に心地良い。音楽性は全く違うけれど、例えばヴェルヴェット・アンダーグラウンドの「Sister Ray」を17分かけて聴き終えたときのあの感覚、のコンパクト版。

上に載せたジャケットの写真をクリックして拡大してよく見てもらえばわかると思うけど、このCDケース兼ブックレットの作りは一風変わっている。白い紙を何枚も無造作に重ねたものが糸で綴じられていて、背表紙の部分で一緒に綴じられている赤い糸を何重にもぐるぐると巻いて、全体を閉じるようになっている。ブックレットの最後のページにあたる部分が折り紙のように折り畳まれていて、そこにCDを差し込む形。素朴なモノクロのイラストとも相まって、ちょっとした芸術作品を手に入れたようで嬉しい。表紙とか一部のページに和紙を使っても綺麗だったかもしれないね。ただ、やっぱり糸を巻いたり解いたりして何度も出し入れするのはちょっと不便だし、もう既に何度も出し入れしたせいか僕のは白い糸で綴られている上の部分がちょっと破れてきたので、CDの盤自体は別のケースに収納することにした。

On Wings, Under Waves.jpg


03年に出た4曲入りEP『Ray Of Youth』も同時に入手した。05年の『On Wings, Under Waves』でのブロークン・フライト:クリス・リンチ(ギター&ヴォーカル)、ピート・ボイド(ギター&エフェクト)、ニコル・ハーヴィー(フレンチホルン)、ランス・ヴァン・マーネン(チェロ、ピアノ、オルガン、グロッケンシュピール、メロディカ…すごいね、この人)のうち、最初の二人だけがこの当時の正式メンバー。ドラムを叩いてるのは『On Wings』同様ネイサン・コリンズだけど、プロデュースはマーク・ラングという人。

Ray Of Youth.gif Broken Flight 『Ray Of Youth』

より完成された『On Wings』に比べると、曲のメロディーがちょっと単調かな、という感じ。まあ、タマス・ウェルズにしても、日本盤の『A Mark On The Pane』に収録された初期のEPの音源を聞くと、後のアルバムの完成度からは程遠いんだから、これは仕方ないだろう。それに、こんなシンプルな音楽でも、プロデューサーが違うとこんなに音のイメージが違ってくるのかと思わせられる。『On Wings』が僕が上に書いたモノトーンの層を成した曇り空だとしたら、この『Ray Of Youth』は、このジャケ写のイメージどおりの、ちょっと曇り気味の青空にすぎない、という感じだろうか。綺麗なんだけど、少し深みが足りないかな。

面白いのは、この『Ray Of Youth』には「July」という曲が入っていて、『On Wings』には前述の通り「August」という曲が入っていること。きっと次のアルバムには、「September」という曲が収録されるかな。ところで、「August」の歌詞には「いちばん寒い日/葉っぱは全部落ちてしまう」という箇所がある。ああ、そうだよね、メルボルンのバンドだった。

どちらも自主制作のCDだから、どこででも手に入るというわけじゃない。僕が調べた限りでは、ネット上での情報も非常に限られている。もしこれを読んで興味がわいた人がいれば、彼らのマイスペース(http://www.myspace.com/brokenflightband)で数曲試聴可能だし、上のジャケ写の横のタイトルをクリックしてもらえば、CDの入手方法が書いてあるページにたどり着くよ。

あまりタマス・ウェルズに関連付けて紹介するのはよくないのかもしれない。音楽的には似通ってるとはいえ、それぞれが書くメロディーの質感はかなり違うし、あのタマスの「天使の声」と同じものを期待してしまうと肩透かしをくらうかもしれない(クリスの声も、優しくて味のあるいい声なんだけどね)。それでも、タマス・ウェルズのサードアルバムを待ちきれないという人には、じゃあちょっとこれを聴いてみてもいいんじゃない?って言いたくなるような、地味だけど素敵なアルバム。




Transparent grey - Broken Flight 「On Wings, Under Waves」

It was a couple of days ago. I was driving in the rain. A quiet morning in the congested traffic. It wasn't pouring at all, but the rain hasn't stopped since the night before. The sky was somehow light, but it didn't seem like the cloud would go away so soon. In the endless white sky, there were layers of grey coloured clouds. Some pale clouds that you would call it white. Other part of the sky was covered by the black cloud where you would see the raindrops actually fall from. I haven't looked at the cloudy sky for a long time, but I realized there were so many colours out there.

The car stereo was playing this CD. It was not a kind of "driving music", but since I've got it recently, it's been among the top of my playlist. And at that moment, I've also realized this music really fit the lazy grey morning. A music for the winter morning rain. A quiet sort of sound made of transparent grey that you can feel the existence of the sun over there, but layered by the countless numbers of greys, which you can't name each of its colours.


Broken Flight On Wings, Under Waves.gif Broken Flight 『On Wings, Under Waves』

As I touched a little in my last article, Tamas Wells listed this Melbournian band as his favourite, together with Jose Gonzalez.

Acoustic guitars strummed gently. Piano notes put over it carefully, as if it's checking its own position on the score. Tranquil voice and harmony. The album opener In Patterns starts like that. Well, you'd think I'm talking about Tamas Wells' album? Indeed, their sound might resemble each other. No wonder Tamas listed this as his favourite. This 2005 album was produced by Nathan Collins. Hmm, I've heard this name before...well, he was also the producer for Tamas Wells' "A Plea En Vendredi". Or you can say he is the drummer of Tamas Wells (as the band not the individual).

It is impressive that some interesting musical instruments are used in this album such as; French horn in August (its intro reminds me of Satie's "Gymnopedie"), or Hohner's melodica in The Old Man And The City (this instrument is more popularly known as Pianica by Yamaha in Japan. The album's booklet says only Hohner but I can't hear the sound of harmonica anywhere. So I assume this nostalgic sound in this song must be from melodica). Probably the grey sky image that I had was generated from the pale greyish acoustic guitar & rhythm sections all through the album, accented by the layers of the sound from such unique instruments in the same tone of colours.

Two numbers, In The Woods and the album closer A Strange Love are instrumental. Both structured by the simple melodies repeated over and over again, with various instruments and chorus in and out at times. The former tune is 7 minutes plus. The latter is over 9 minutes. Listening to them makes me feel paralyzed, and it feels good. I would say, although it sounds completely different, it's the same feeling you get after listening to 17 minutes-long Sister Ray by The Velvet Underground. Well, the compact versions, these are.

If you click on the CD cover photo above and look closer, you may find the make of the booklet (cum CD case) is somehow very unique one. Some white papers casually tied and stitched at the back. One long red thread also stitched at the centre would bind the whole booklet. The last page of the booklet is folded like an origami, and you put CD in its slit. The simple black and white illustrations add the cool atmosphere, and it makes you feel good to have such a nice piece of art. Perhaps if they'd use Japanese traditional paper as the cover or inside pages then it would be cooler. However, it's not the most convenient way of taking CD out and put it in again by handling the thread. And maybe because I've been doing so quite often, the top of the perforated part already started to torn. I decided to put the CD in the normal jewel case and keep this booklet separately.

On Wings, Under Waves.jpg


I've also got a four-song EP issued in 2003, named "Ray Of Youth". Whereas the members of Broken Flight in 2005 were; Chris Lynch (guitar & vocal), Pete Boyd (guitar & effects), Nicole Harvey (french horn), Lance Van Maanen (cello, piano, organ, glockenspiel, hohner...what a player!), only the first two were the official members in 2003. Nathan Collins played drums same as "On Wings", but this EP was produced by the other guy called Mark Lang.

Ray Of Youth.gif Broken Flight 『Ray Of Youth』

Compared with "On Wings" which was brought closer to the perfection, this album is a bit weak, with rather monotonous melodies. Well, the early EP tracks of Tamas Wells you can now listen to on the Japanese edition of "A Mark On The Pane" are also incomplete compared with the later album tracks. What more would you expect from the debut EPs? It's curious that the different producers makes such different sounds, even with such a simple kind of music. If the sound of "On Wings" is the layer of various monotonous grey clouds as I described above, I dare say the sound of "Ray Of Youth" is a simple blue sky with a bit of white clouds, just like the one on this cover. It's beautiful, but not as deep as more professionally produced "On Wings".

It's interesting to know there's a song called July in "Ray Of Youth" and another one called August in "On Wings". I guess there may be a song called September in the coming album. By the way, there's a line in August goes like this; In the coldest days / The leaves will fall all the way. Ah, yeah, the Melbournians!

Both CDs are from the independent label and hard to find in the normal CD shops. As far as I've checked, their info on the web is very limited too. If you are interested in this band by reading this article, go to their My Space (http://www.myspace.com/brokenflightband ) and you can listen to some of their tunes. Or click on the CD titles above and you reach to the page where you'll know how to purchase them.

It may not be a best idea to correlate Broken Flight to Tamas Wells too much. Although the sound taste resembles each other, Tamas & Chris write quite different melodies. And moreover, you can't expect the "Angelic voice" from this CD (though I dare say Chris' voice is also gentle and tasteful). But I would still recommend this album to anyone who can't help waiting for Tamas Wells' third album. Modest, but a lovely album.
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2007年08月19日

今回は長文 Tamas Wells 「A Mark On The Pane」

音楽業界に属する人にとって、自分が生み出した音楽や、自分が発掘した誰も知らない音楽を、沢山の人に気に入ってもらえるということは、単にそれが自分の仕事だということ以上に喜ばしいことに違いない。別に音楽業界なんてものには属していない僕でさえ、自分のブログで紹介した音楽を聴いてくださった方にコメント欄で「よかった」と一言感想を書きこんでもらえるだけで、とても嬉しい気持ちになるんだから。

去年の10月29日に書いた「心の鎮痛剤」という記事で紹介したタマス・ウェルズの、それからの日本でのいろんな動きを見ていて、そんなことをふと考えてしまった。

その記事に丁寧な長文コメントを書き込んでくださった一本道ノボルさん(執筆されたライナーの通り、大崎暢平さんとお呼びしたほうがいいのかな)が属されている会社のウェブサイトや、今日ここで取り上げるタマス・ウェルズのファーストアルバムのライナーなどを読んでいると、去年の10月にセカンド『A Plea En Vendredi』(以下『Vendredi』と略)が発売されるまでは日本では全く無名だったこのアーティストが、そのアルバムがあちこちで話題になり、やがて入手困難だった以前のCDが日本盤として発売され、そして待望の来日公演までが決定したというサクセスストーリーは、『Vendredi』の発売日から二週間後というわりと早い時期にブログに取り上げることができた僕にとっても、まるで自分のことのように嬉しく思える。

去年の10月に『Vendredi』を聴いて以来、ずっとファーストアルバムを探していたんだけど、ここNZでも、タマスの母国であるオーストラリアのレコード店のウェブサイトでも、その他僕がよく利用している日本・アメリカ・イギリスのサイトでも、まったく見かけることはなかった。iTunesで聴くことができたのは知ってたけど、二つ前の記事にも書いたように僕はダウンロードで音楽を買うのが嫌いで、なんとしてでもCDを見つけ出してやると躍起になっていたんだ。

ようやくそれを見つけたのは今年の2月。日本の某大手チェーン店のウェブサイトにて。手に入るなら金に糸目はつけないつもりでいたけど、送料込みで2500円強。悪くないね。早速注文して、4月に東京に出張した際に入手した。豪Popboomerang Records PB009 - 後に出た日本盤のライナーによると、その時期にレーベルに残っていた最後の在庫200枚が全て日本に輸入され、即完売となったうちの一枚のようだ。そこまで貴重だったとは。

A Mark On The Pane.gif Tamas Wells 『A Mark On The Pane』

先に入手した『Vendredi』同様、このアルバムも最初に聴いてからずっと愛聴している。貴重なアルバムをやっとの思いで手に入れたと一人悦に入っていたんだけど、先述のとおり、先月日本盤が発売された…9曲ものボーナストラック入りで。ライナーノーツに曰く「既に輸入盤を購入された方にとってもアピールとなる要素が必要だ」。はい、アピールされましたよ。日本盤の発売日に友人に代理購入してもらい、NZまで送ってもらう羽目に。

先のコメントで一本道さんが半ば自虐的に語っておられた『Vendredi』日本盤での7000字に及ぶ解説を既に読んだ人を念頭に書いておられるのだろう、細かい字で8ページにも及ぶ(一体何字あるんだろう)、小説かと見紛うほどの超詳細解説に圧倒される。僕は(そして、件のコメントを読まれたこのブログの読者の方々は)大崎さんのタマスに対する熱い思いと、それをどうしても短い言葉にまとめきれないもどかしさを予めわかっているから、この超長文解説も微笑ましく読むことができるが、きっと何も知らずにこのCDを買った人は「一体何だこのライナーは」と驚いているに違いない。

アルバムの内容について少しだけ書こうか。一聴した限りでは、僕が「心の鎮痛剤」と評した『Vendredi』同様、タマス・ウェルズの優しい歌声が、このうえなくデリケートで心地良いメロディに乗って唄われているという構成と大きな変化はない。あのアルバムが好きな人なら、間違いなくこちらも気に入るはずだ。

タマスがまだ、『Vendredi』の質感を印象付けていた乾いた音を出すマンドリンを弾いていないことや、エレキギターを始めとした電気楽器の音が『Vendredi』よりも多用されていることから、音の感触は少し違うように思える。(8ミリフィルムが回転する音だろうか)細かいカラカラ…という音に導かれて始まる2曲目「Broken By The Rise」のイントロで全ての楽器の音がふわーっとフィルインしてくるところは、バンドとしてのタマス・ウェルズ(ややこしいけど、これは個人名でもあるし、バンド名でもある)の魅力を味わえる一瞬だ。

途中で二回出てくるインスト曲について、大崎さんは「インタールードとしても機能していない」とライナーに書かれているが、5曲目「Petit Mal At A Grand Occasion」は、その前の(歌詞からアルバムタイトルが取られた、事実上のタイトルトラック)「Reduced To Clear」の穏やかなメロディーを黒雲のように覆い隠す、神秘的だけど聴衆を不安に陥れる後奏としての役割を果たしており、それが故に、続く6曲目「Even In The Crowds」のただでさえ明るいイントロのエレキギターの音をより暖かいものにすることに成功していると思う。また、8曲目のインスト「Segue In GM」は、どことなく先ほどの4曲目と似たメロディーがマイナーコードで演奏されており、そのことがなんとなくこのアルバム全体を「Reduced To Clear」を中心としたコンセプト・アルバムのように思わせる要素になっている。

アルバムのプロデューサーはティム・ウィッテン。調べてみたら、ゴー・ビトゥイーンズ、フードゥー・グルズ、ハンターズ&コレクターズなど、オーストラリアを代表する中堅ロックバンド(笑)のアルバムを多数手がけているようだ。なるほど、それもあってのこのバンド・サウンドなのか。

日本盤に収録された9曲は、この『A Mark On The Pane』以前に発表された3曲入りシングル「Cigarettes, A Tie And A Free Magazine」と、6曲入りEP「Sticth In Time」からの全曲。この曲順がオリジナル同様だとすると、「Sticth〜」の1曲目は「Reduced To Clear」。よほど彼のお気に入りの曲なんだろう。「Cigarettes〜」は、このシングルを最後に脱退してしまったらしいヴァイオリンの音色が素晴らしい。ゲストとしてでいいから、次のアルバムにまた参加すればいいのに。

ところで、『Vendredi』には歌詞と日本語対訳が載っていたんだけど、この『A Mark On The Pane』には英語の歌詞しかブックレットに載っていない。それはいいんだけど、これが実際に歌われているものとかなり違うんだよね。『Vendredi』もそんな感じがあったけど、あちらはまだ所々の歌詞を端折ったり違う言葉で歌い替えたりしていただけだったからある程度聴きながら歌詞カードを目で追えたんだけど、今回のはちょっとお手上げ。なんでここまで違う歌詞を載せているんだろう。それで対訳を載せるのもやめたのかな。

僕が4月に買った方のオリジナル盤の曲はもちろんこの日本盤には全曲収録されているから、日本盤が届いたらオリジナルの方は中古屋にでも売ろうと思っていたんだけど、

1)日本盤からは(長文解説書のあおりで・笑)削除されてしまった六つ折りブックレット内の、表裏ジャケに通ずる雰囲気のある写真が捨てがたい
2)物悲しい10曲目のインスト「A Dark Horse Will Either Run First Or Last」で終わるしみじみとした気分を味わっていたい
3)なにしろ最後の200枚のうちの一枚

という理由から、両方とも手元に置いておくことにした。こうしてまた同じアルバムが我が家に増えていく…


先述したとおり、今月ついに来日公演が実現した。この週末は金沢、大阪、奈良で既に公演を終えているはず。どこかのサイトを探せばもしかしたらもうライヴレポートが上がっているのかもしれないけど、ちょっとそれはまだ読まないでおこう。だって、僕も観に行くことにしたからね。

これだけ日本で盛り上がった後もNZでは彼は全く無名のまま。隣国オーストラリアでも彼のライヴがいつ行われるのかよくわからない状態。この機会を逃したら、もしかしたら本当に一生観られないかもしれないと、赤道を越えて観に行く決心をした。本当は、30人限定の奈良公演か、50人限定完全アコースティックライヴの東京公演に行きたかったんだけど、僕の仕事の都合と決断が遅かったために、東京での最終日だけにしか参加できなくなってしまった。まあそれにしても、このツアーで最大の集客数であろうこの日が一番盛り上がるだろうことも充分に予想されるので、もちろん悔やんでいるわけではないよ。

もう二枚のアルバムはイントロ当てクイズができるほどに聴き込んだけど、観客席で僕が歌って彼の“天使の歌声”を邪魔するわけにはいかないから、脳内で一緒に歌う練習もしておこう。そうだ、オリジナル盤の『A Mark On The Pane』を持って行って、サインしてもらおうかな。中古屋には売れない理由その4を作るために。
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