2016年12月04日

Tamas Wells live in Shenzhen

中国に住んでてよかったと思えることなんてそう滅多にあるもんじゃないけど、これだけはひそかに期待していた。そして、思ったより早くその期待は実現した。今のところ最後の来日になる2014年6月から約2年半、ここ中国でタマス・ウェルズのライヴを観る機会がまた巡ってきた。

会場は地下鉄の橋城北駅から徒歩すぐのなんだかおしゃれな地域。A1、A2…とブロックごとに名前のついた一角にあるB10 Liveという名前のライヴ会場は、何故かB10ブロックではなくC2ブロック全部を占める、思ったより大きなハコだった。橋城北はうちから電車一本で行けるものの、万が一迷うといけないと思ってかなり早めに家を出ておいてよかった。改装工事中だったB10ブロックにまずたどり着いたときには、一体何がおこっているのかと焦ってしまった。

そうして迷いながらも開場の1時間も前にB10 Liveに来てみてびっくり。もう既に何十人も並んでるよ。整理番号も何もないから、とにかく並んだ順に入場。慌てて近くのバーで重慶の辛い麺と生ビールを腹に入れ、会場に戻って列の最後尾に並ぶ。これじゃ、ちょっと期待していた最前列なんてとんでもないな。

開場時刻の20時になる結構前(10〜15分ぐらい前かな)に、列がどんどん動き出す。きっと、あまりに列が長すぎて、早めに開場することにしたんだね。綺麗な作りのロビーに入っていくと物販エリアがあって、おなじみのタマスのCDと並んで見たことのない安っぽいジャケの09年北京公演のCD/DVDが売っていたから、迷わず購入。見るからに海賊盤ぽいんだけど、ちゃんとポケットレコーズから出てるオフィシャル盤なんだね。おまけにバッヂももらえてうれしい。

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だだっ広い会場に入っていくと、もうステージ前には人がびっしり集まっていて、左右の壁に沿って置いてある椅子もほとんど埋まっていた。まだ開演まで30分以上あるし、中途半端に真ん中あたりで見るよりはいいかと思い、左側の壁沿い中ほどの椅子に腰かけて待つことにした。会場の広さは、そうだな、東京でいつもタマスが使う会場で言うと、O-nestを縦に三つつなげて、天井を体育館並みに高くしたぐらい?

その大きな会場が、開演時刻の20時半近くになるともうほぼ満員。後ろの方に若干の余裕があったとはいえ、あれはたぶん600〜700人ぐらいは入っていたんじゃないかな。もちろん、座ってる僕の目の前にももうたくさん人が来ていたので、とても座ったままじゃ観られない。

ステージを見ると、マイクスタンドが2本、アコギとエレキ、キーボードが左右2台、後ろにはドラムキットもある。事前にどのサイトを見ても参加メンバーがわからなかったから、きっと今回はタマスのソロかと思っていたんだけど、バンドなんだね。ドラムまであるということはネイサンも来ているだろうし。あとは、前回来日時と同じくアンソニーとクリスかな。それともギターはキムかな。

20時30分ちょうどに中国語と英語でアナウンスがあり、会場が暗転。ものすごい大歓声に迎えられて、タマスと2人のメンバーが登場。ネイサンはドラムキットのところでなくステージ右手に行き、置いてあったフェンダージャガーを肩にかける。ドラムの人は誰だろう。新メンバーかな。アンソニーもクリスもキムもいないや。結構長く伸びた髪の毛をきちんとセットし、グレーのジャケットを着たタマスは、いつものマーティンのアクースティックギターを持ってステージ中央に。

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オープニングは「Vendredi」。歌い始めた途端、僕のすぐそばで「キャーッ」と大声を張り上げる女性ファン。すごいな、日本でのタマスのライヴじゃ想像もできないよ。何人かはタマスに合わせて歌ってるし。まあ、ステージで何が起こってようとずっと友達同士でしゃべり続けてるようなのもあちこちにいるんだけどね。まあいいや、中国のライヴがこんなんだってのは前からYouTubeとか見てわかってるから、こっちは集中してステージを観てよう。

「Writers From Nepean News」の後、タマスが中国語で自己紹介。「こっちは友達のネイサン。友達は“朋友”でよかったよね?」って言うだけで大歓声。そして「こっちのクリスは友達じゃない」と笑わせる。あ、この新キャラもクリスって名前なのか。タマスたちよりちょっと若い感じかな。彼はドラムス、キーボード、メロディカ、ウクレレ担当。あと例のチーンって鐘も。

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「真夏のメルボルンから南京に着いたら雪が降ってたんだ。深圳はなんていい気候なんだ」とか言いながら、セカンド以降の4枚のアルバムから満遍なく選曲されたセットが進む(セトリは最後に)。新譜からの「The Treason At Henderson's Pier」の後、「最近覚えた曲があるんだ。うまく歌えるかどうか自信ないけど」と言って、なんと中国語の歌を披露。もちろん大歓声。そして見渡す限りのスマホ動画撮影者。後で調べたら、「宝貝(Baobei)」って曲だった。これがオリジナル。これがタマスのあの声で歌われるのを想像してみて。



「誰か二人、ステージに来て手伝ってくれないか。口笛の吹ける人がいいんだけど」というのはもちろん「A Riddle」の時。うち一人はどうやら曲を知らなかったようで、例の口笛のフレーズをタマスが主旋律を歌ってる横でずっと吹いてるもんだから、歌ってるタマスも聴いてるこちらもちょっと苦笑い。まあでも、よくできました。

さっきクリスがいろんな楽器を担当してると書いたけど、もちろん彼が動くときはネイサンも別の楽器を担当する。器用な彼のことだから、ギター、キーボード、ドラムスそれぞれそつなくこなし、タマスの声に合わせてハーモニーを入れる。タマスは基本的にギターで、「Melon Street Book Club」をはじめ数曲でキーボードも弾いてたな。

久しぶりに聴く曲はいくつかあったけど(基本的に彼のライヴを観ること自体が2年半ぶりなので何でも久しぶりなんだけど)、新曲はないし、こんなの聴いたことなかったってのはさっきの中国語の曲だけ。曲の紹介にしても、タマスがまたこの話をし始めたなと思った時点でもう次が何の曲かわかってしまうから、「人間には理性に支配されている面ともっと内面から出てくるところがあって」という話をしたときに、あ、次は「Valder Fields」だと先に読めたんだけど、いざタマスがその曲目を口にすると、それはもうものすごい大歓声。そして、大合唱。うわ、こんなタマスのライヴ初めて。

「Valder Fields」の次に「The Northern Lights」と、僕内タマスソングベスト3のうち2曲みたいなのが続く。残る1曲も今回のツアーで演奏していることは知っていたから、もしかしたら本編終盤のここで3曲続けて演るのかなとも思ったけど、本編ラストはまた「何人かステージに来てくれないか。今度はコーラスが要るんだ」と、「I'm Sorry That The Kitchen Is On Fire」。タマスはもう「次の曲はThe Kitchen Is On Fire」としか言わないね。実話だかどうだか結局よくわからない例の逸話ももう紹介しないし。

男女2人ずつ、それぞれみんな背の高さの違う子たちがステージ左手のマイクのところでスマホに歌詞を映しながらコーラス。違うところから上がってきてたから友達同士じゃなかったんだろうけど、なんだか絵になるね。僕ももっと前にいたら手を挙げてステージに上がりたかったんだけど、残念ながら十数メートル離れたこの壁際から中国人をかき分けて前進する勇気はなかった。いきなり(おそらく)会場内最年長みたいな日本人が出て行ってもみんなびっくりしただろうし。

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それが本編ラスト。3人がステージ脇に消えると、すぐさまアンコールを求める歓声。でもこっちの人は「アンコール!」って言うだけで拍手とかしないんだね。そして、すぐに再登場。タマスはキーボードのところに行き、ネイサンがエレキ、クリスがドラムで始まったのは「Fire Balloons」。僕にとってのタマスソングベスト3の三つ目。これ確か前のツアーじゃ演ってないから、ずいぶん久しぶりに聴くことになる。

そしてこれが、ものすごいバージョンに化けていた。タマスが歌い終えた後、キーボード、ギター、ドラムの三つの楽器がそれぞれ同じフレーズを延々と繰り返しながら、どんどん高揚していく。クリスのドラムなんて、決して上手くはないんだけど、どこのハードロックバンドかというぐらいの激しさ。右腕をぶんぶん振り回して憑りつかれたように叩き続けている。

確か前回のツアーでは、エフェクターを通したクリス・リンチのギターの音と、ネイサンがiPadやらなんやらで出す効果音が不思議な空間を作っていたんだけど、今回はまた違った意味で、聴いているこちらの神経が麻痺してしまうようなドローン効果を生み出していた。まさかタマス・ウェルズのライヴでこんな爆音を聴くことになろうとは。

果てしないと思われた「Fire Balloons」でもう終わりだろうと思っていたら、最後は3人が真ん中のマイクに集まって、タマスのギター、クリスのウクレレ、3人の声だけで「Grace And Seraphim」でエンディング。ああ、これは美しいラストだな。

1時間半があっという間だった。しばらく会場にたむろしていたら、楽器を片付けに来るタマス達に会えるかなと思ってたけど、警備員に追い立てられてしまった。しょうがないので会場の外へ。物販には長蛇の列が。開演前に買っといてよかったよ。

外にもしばらくいたんだけど、たぶんまだ数百名残ってるこの場所でたとえタマス達に会えたとしても、とても話なんてできないだろうから、楽しかった余韻を味わいながら地下鉄の駅に向かった。

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後日談:タマスとネイサンにライヴの感想と撮った写真をメールしたら、2人から「会えると思って終演後に外を探したのに」って言われてしまった。ああ、そうだったんだ、もったいないことをした。新メンバーの名前はクリス・ヘルム(Chris Helm)といって、子供が生まれたばかりのクリス・リンチの代わりの参加だそうだ。でも、クリス・リンチが戻ってきたとしても、もう一人のメンバーよりはキーボードも上手く、ドラムも叩けるクリス・ヘルムが外れることはないんじゃないかな。この先、あの人懐っこいアンソニーに会えることはもうないのかなと、ちょっと淋しくなってしまった。


Setlist 27 November 2016 @ B10 Live Shenzhen, China

1. Vendredi
2. Writers From Nepean News
3. Thirty People Away
4. Lichen And Bees
5. Melon Street Book Club
6. The Crime At Edmond Lake
7. The Treason At Henderson's Pier
8. 宝贝
9. A Riddle
10. Signs I Can't Read
11. England Had A Queen
12. Never Going To Read Your Mind
13. Bandages On The Lawn
14. Moonlight Shadow
15. I Left that Ring On Draper Street
16. The Opportunity Fair
17. For The Aperture
18. Valder Fields
19. The Northern Lights
20. I'm Sorry That The Kitchen Is On Fire

[Encore]
1. Fire Balloons
2. Grace And Seraphim
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2016年01月11日

Other live performances in 2015

去年は32のライヴに行った。単純平均すると一月あたり2回より多く3回よりは少な目という感じか。これを読んでくれている人から見ると多いのか少ないのか、微妙なところかも。ただ、気に入った人を何度も観に行くということが多いから、実際観たアーティストはそこまで多くないんだけどね。たとえば、マット・ジ・エレクトリシャンは去年二回来日して、僕は東京近郊で観られる5回全部を観たし、グレン・ティルブルックも来日4公演に加えてUKでもスクイーズで観たから合計5回。32回のうち約1/3はその二人ということか。

3月末にグレンのライヴを観てそれまでほぼ休眠状態だったこのブログを立ち上げなおしたので、それ以前、去年初頭のライヴについては何も書いていないし、それ以降に観たものでもいくつかは忙しかったりとかいろんな理由でパスしてしまったものもあったので、完全に闇に葬り去ってしまう前に、それらのライヴについて覚えていることを少しずつ書いておこう(実際は2014年の後半にもブログに書いていないライヴにいくつか行っているんだけど、そこまで網羅するのも大変なので、あくまで去年一年間のレビューということで)。記憶の片隅をこそげ落としながら書くことになるので、大したことは書けないとは思うけれど。


1月12日 Haruka Nakamura @ 永福町 Sonorium
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今からちょうど一年前の三連休の最終日。初めて観るタイプのライヴ。リサイタルっていえばいいのかな。開始前には、寝てしまうんじゃないかなんて不安がっていたのが嘘のような、とても贅沢な時間を過ごした。ピアノと、いくつかの弦楽器と、厳かなコーラスと、蝋燭の炎。美しいものを経験すると、なんだか人間が一回り成長した気分になるね。実際にはそんなことなくてもね。機会があればまた観てみたい。


2月7日 Radical Face @ 光明寺
2月15日 Radical Face @ Nui

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インパートメント関連が続く。ラディカル・フェイスも、来日したら東京でのライヴには全て足を運んでいるアーティストだ。『Family Tree』の二作目お披露目ツアー。前回のジャックとジェレマイアに代わって、ヴィオラ・ダ・ガンバ奏者であるベンのパートナーのジョシュが同行。光明寺と浅草Nui、どちらも甲乙つけがたい素晴らしい夜だった。『Family Tree』最終作がもうすぐ出るから、また近いうちに来日してくれるかな。


3月1日 The Pop Group @ Liquidroom
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まさかポップグループを観られる日が来るなんて。思えば34年前に『For How Much Longer Do We Tolerate Mass Murder?』を聴いたのが、僕が音楽にここまでのめり込むことになったきっかけだった。ライヴではそのアルバムから一曲も演奏されなかったのが心残り。と思っていたら年内に再来日。残念ながら出張と重なってしまったんだけど、そこではセカンドアルバムからも演奏したというから、悔しさひとしお。


3月23日 Dylan Mondegreen @ 月見ル君想フ
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いつの間にか来日が決まっていて、慌ててチケットを押さえた記憶がある。別に新譜が出たわけでもなかったのに。作成中だというニューアルバムからも数曲演奏したけれど、ちょっとどれも印象が薄かった気がする。もうそろそろ出るのかな。前座として演奏した、台湾から来日したフォー・ペンズもよかったけど、僕にとってのこの日の一番の収穫は、一番手でステージに上がったシュガー・ミーを知ったこと。


3月26日 The Soft Machine Legacy @ Billboard Live Tokyo
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たまに来るビルボードの無料チケット。なかなかタイミングが合うことがないんだけど、今回は他に予定がなかったので行ってみた。きっと、現メンバーの中では古参のドラマー、ジョン・マーシャルが来られなくなったので、席が埋まらなかったんだろうな。時々知ってる曲はそれなりに楽しめたけど、なんだかやっぱりちょっと敷居が高いよ。ソフト・マシーンのアルバムならもっと楽しいのにな。


6月27日 Seth Walker @ Cafe Goatee
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3月末からは順調にブログも復活してたのに、6〜7月にライヴがかなり立て込んできた時にこれが抜け落ちてしまった。全然知らないアーティストだったけど、ゴーティの松本さんのお勧めで最新アルバムを買い、ライヴにも行ってみた。昨今の僕にとってはちょっとブルーズ風味が強いかなとも思ったけど、まあ、この手のアーティストで松本さんの推薦に外れはないからね。ふらっと行ってみてよかった類のライヴ。


11月8日 Anglagard & Anekdoten @ New Pier Hall
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カケハシ・レコードのおかげで、去年中盤はずいぶんとプログレ趣味に揺り戻したものだった。アネクドテンは昔のCD一枚しか持ってなかったし、アングラガルドはその時点では試聴しかしたことなかったのに、ユニオンのプログレ館でまだ比較的いい席が空いていたのでついチケットを買ってしまった。ダブルヘッドライナーということで、フルセットのライヴが二本。堪能できたけど、疲れたよ。脚を伸ばせる席でよかった。


12月18日 Yo La Tengo @ O-East
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なんだかんだでヨラテンゴを観るのもこれで三度目。相変わらず曲名はほとんど覚えられないんだけどね。今回は初期メンバーのギタリスト(ペダルスティールなども)も参加して、新作からのカバー曲を中心に(ほとんど知らない曲ばかりだったけど)いつものような爆音やアイラのキレッキレのアクションもなく、穏やかに和やかに過ごした二時間。こういうヨラもいいね。ジェームズにはもう少し歌ってほしかったけど。


これらと、ブログに書いた23のライヴが去年一年間に観たもの。今年はもう決まっているのはまだ一つだけだけど、今週あたりからちらほらと行きたいライヴの情報が出始めてきたので、そろそろまた手元に何枚ものチケットが集まってくる気がする。
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2015年09月14日

期待値超え - Squeeze

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Squeeze 『Cradle To The Grave』

もうほとんど休止状態だったこのブログを半年ぶりに更新してみようという気にさせてくれたのは、今年の3月のグレン・ティルブルックの来日公演だった。そして、それ以前もその後も、もはや自分が行ったライヴの記録メモとしてしか機能していないここに、調べてみたら2年8か月ぶりにアルバムについて書いてみたい、いや書かずにおれないと僕を奮い立たせたのも、やっぱり同じ人(たち)だった。

新曲からなるオリジナル・アルバムとしては1998年の『Domino』以来17年ぶりとなるスクイーズの新作。2007年の再結成以来、過去曲の再録やライヴ盤、ライヴ会場での録音即売盤、デモ音源集など、マメに追いかけようと思ってもとても全部は集めきれない(特に膨大な数の即売盤)ほどのアイテムが出ていたし、グレンはその間も何度も来日してくれていたから、17年なんてブランクはもちろん感じなかった。

あのときのメンバーをスクイーズと呼ぶのが適切なのかどうかいまだによくわからない『Domino』は申し訳ないけど中途半端な出来のアルバムだった。そして、今回のアルバムに収められることになるいくつかの曲の原型は、2012年の即売盤やデモ集、そして今年初頭のグレンのソロライヴでも披露されていたから、ある程度の内容は想像がついていた。またしても申し訳ないけど、どの曲の原型を聴いてもまあそこそこの出来だよね、という程度の感想しか持っていなかった。

8月13日にスクイーズのサイトでこのCDが1000枚限定で発売されるとの告知。何が限定なのかさっぱりわからなかったけど、躊躇なく注文。送料も含めるとべらぼうな値段になったけど、しょうがない。これまでも決してセンスのいいジャケばかりじゃなかったスクイーズの歴代のアルバムの中でも群を抜いて酷いジャケだけど、それもしょうがない。なんだかわからないけど限定らしいから、またこれが入手不可能なんてことになったらえらいことになる。

先週末、出張から戻ってきた僕の目の前には、見覚えのあるQuixotic Recordsのロゴの入った封筒が。やった、届いた。8月28日の発送開始から約二週間だから、たぶん日本では一番早く入手できた中の一人なんじゃないかな(ドヤ顔失礼)。

上にもリンクを貼ったアマゾンには10月9日発売と書いてある。しかも予定価格は僕がサイトから買った値段(送料込み)の半値ほどだ。むう、限定じゃなかったのか? じゃあ僕の手にしているこのデジパックが限定? それともこのブックレットとは別に入っている切符のレプリカみたいなのが限定? まあなんだかよくわからないけど、とにかくオフィシャル発売の一か月以上も前に入手できたんだからよしとしよう。

さて、ここからは中身について書くから、オフィシャル発売を待って買おうと思ってる人や、スクイーズのサイトからまだ届いてない人で、もしネタバレが嫌ならここで読むのをやめてもらったほうがいいね。


裏ジャケに書いてある全12曲中、これまでなんらかの形で聴いたことのあるタイトルは「Cradle To The Grave」、「Beautiful Game」、「Top Of The Form」、「Haywire」、「Honeytrap」、そして、アルバム先行シングル(盤は出てないけど)としてPVが出回った「Happy Days」の6曲。今年のグレンのソロライヴで、ニューアルバム用の曲と言って演奏した何曲かのタイトルがないね。

いろんな形でもう何度も聴いてきたオープニングの「Cradle To The Grave」の、これは新録。そこから間髪入れずにどんどん曲が繰り出されてくる。初めて聴く「Nirvana」も悪くない。グレンのライヴで聴いた「Beautiful Game」がこんなにいい出来に仕上がってるなんて。そして、久々にスクイーズらしいシングル曲「Happy Days」。

10月に出るLPは2枚組で、ここに収められた12曲がA〜C面に4曲ずつ収録されるのにリンクして、このCDでもそれぞれ4曲ずつがほとんど曲間なしでつながっている。スクイーズにしては珍しい作りだね、こういうの。でも、そういうつなぎも曲順もよく練られてるよ。プロデューサーがグレンとローリー・レイサムだけど、ローリーのいつもの過剰なまでの装飾音とかはうまく抑えられてる。ちなみにLPのD面はボートラ4曲収録予定。

一昨年に出たグレンの『Happy Ending』がやっぱりグレン本人とローリーの共同プロデュースで、正直言わせてもらうと僕にはあのアルバムはそこそこの出来の曲をローリーならではのオーバープロデュースでなんとかやっつけた、若干いただけないアルバムだった。大好きなグレンのアルバムをけなしたくはないんだけど。すごくよかった来日公演のメモリアル盤でもあるし。

でも、今回のアルバムは曲と音作りのバランスが非常によく取れている。さっき書いた曲間のつなぎはあくまでもさりげなく、余計な音はきっぱりと省かれて、そしてなによりも、やっぱり曲がいいよ、今作は。いや、そりゃ「Another Nail」とか「Up The Junction」みたいなのが入ってるかと言われたら、そんなのは最早ないものねだりに近いから無茶言うなってなもんで。それでも、この12曲中、少なくとも半分は僕はライヴで何度も繰り返して聴いてみたくなる曲ばかりだ。そんなバランスのアルバムをスクイーズが出したのって、一体いつ以来だ?

音の感触が何かに似ていると思ったら、『Pandemonium Ensues』だ。ああ、それで僕はこのアルバムを一回目からこんなに好きになってしまったんだな。なんでそんなに似てるんだろうと思ったら、あ、そうか。演奏メンバーがほぼ同じなんだよね。ベントレーが辞めて代わりのベーシストがルーシーになったと聞いたときにはあまりにも予定調和というか、またクリスが拗ねて辞めてしまうんじゃないかと危惧してしまったもんだけど、たぶんサイモンとスティーヴンにとっては、ルーシーのベースの方がしっくりくるんじゃないだろうか。きっと、グレンも。

演奏メンバーが「ほぼ」同じと書いたのも、ブックレットに書いてあるクリスの担当楽器がアコギだけなのに対して、グレンはリードギター、ムーグ、アイパッド、ムーグベース、チェレステ、ティンパニ、ウクレレ、オルガン、パーカッション、ベース、ミニムーグ、シタール、エレクトーン、ストリングス。ついでにスティーヴンはウーリッツァー、ピアノ、オルガン、チェレステ、シンセ、メロディカ。リズム隊の2名は省略するけど、このバンドの音ほぼグレンとスティーヴンで作ってるようなもんだよね。

演奏面でクリスの影が薄いのは今に始まったことじゃないけど、今回ちょっとあれ?と思ったのは、歌詞があまりにもストレートなこと。「Happy Days」なんてPVで観たときにクリス作だなんて信じられなかったほどのあっけらかんとした能天気な歌詞。きっとどこかに僕が聴きとれなかったオチがあるに違いないとブックレットを追ってみたけど、肩すかし。変化球を待って打席に立っていたら、予想外のストレートで見逃し三振。みたいな感じ。

強いて言えば、若者のリビドーを描いた「Haywire」なんかはいかにもクリスが書きそうなタイプの曲かもしれないけど、それにしても彼がこれまでに書いてきた数々のDVや離婚やアル中や猟奇殺人についての曲に比べると、おとなしいよね。まあ、まだ歌詞までじっくり読みながら聴いたのは数回だけだから、これからちょっと深読みしつつ繰り返して聴いていこう。

2012年以降にいろんな形で聴いてきた曲が沢山と書いたけど、曲がりなりにもシングル扱いだった「Tommy」がないなとは思ってたんだ。だから、LPで言うところのB面ラスト、これも新録の「Top Of The Form」の次にあのお馴染みのストリングスが聴こえてきたときにはびっくりした。「Sunny」って、タイトル変えたのか。このアルバムはBBCの同名ドラマのサントラということだから、その登場人物か何かにちなんで変えたんだろうか。これからライヴでこの曲を歌うときは、どっちの歌詞で歌うんだろう。

すっかりかっこよくなって出直してきた「Honeytrap」(デモ集のときは二単語だったのに、微妙にタイトル変更)に続いての「Everything」ってなんか聴いたことある。と思ったら、これグレンがライヴで演ってた「You」じゃないか。歌詞も替わって、タイトルも変更したんだね。

なので、グレンが年初にライヴで披露したにもかかわらず結局ボツになったのは、「Wait」だか「Weight」だかタイトルがわからなかった、ピアノで弾き語りをした曲だけ。結局あの曲名の謎は解けないままか。このアルバムのアウトテイク集が出るのは何十年後のことだろう。

ふう、もうだいたい書きたいことは書いたかな。まだ届いて二日で10回も聴いてないから、これから聴き込んでいったらまた新たな発見とかあるかも。感想も変わるかもしれないし。そのときは追記しよう。

そうそう、ひとつ嬉しく思った発見があった。ブックレットの最後、山ほど書いてあるサンクスクレジットの中に、ジュールズ・ホランドの名前が。しかも、クリス単独のところじゃなくてグレンとクリス連名のところに。なんかちょっと歩み寄りがあったのかな。聞くところによるとジュールズのレイターにスクイーズが出演するらしいから、激久し振りにジュールズ入りスクイーズの演奏が観られるんだね。はやくネットに上がらないかな。


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2012年09月29日

復活の挨拶 - Squeeze

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Squeeze 『Live At Th Fillmore』

前の記事から7週間以上もブランクを空けてしまったのはこのブログを始めて以来初めてのことかも。今朝久しぶりにアクセス記録を見てみたら、全然更新していなかったこの7週間の間にも結構なアクセスがあったようで、ありがたいやら申し訳ないやら。きっと皆さん、もうここは更新されないかと思い始めた頃かもしれないね。

僕がこのブログを始めて、グレン・ティルブルックやスクイーズについてあれこれ書き始めた頃には、よもや後にグレンとクリスが仲直りしてスクイーズが再結成するなんて、ファンの誰もが(期待こそはすれ)本当に起こるとは思いもよらなかったはず。10年近くのブランクを置いて見事に復活したスクイーズにちなんで、僕の52日振りの記事は、ちょっと時期を逸してしまったけれど、彼らの最新アルバム、『Live At The Fillmore』について書くことにしよう。

07年に、元々バック・カタログと新しいベスト・アルバムをプロモートするために(当時は一時的なはずだった)スクイーズは再結成を果たし、そのときのツアーを記録した『Five Live』をリリース。その後、グレンとクリスが久々に一緒に新曲を書いているという噂に反してリリースされたセルフ・カバー集『Spot The Difference』が出たのが10年の夏。その直後に、サンフランシスコはフィルモアでのライヴ録音を収録したボーナスディスク付きのバージョンも出て、新しいのが出たらすぐ買う熱心なファンほど馬鹿を見るという経験も味わわされた。

そして、今年の4月になってオフィシャルサイト+アイチューンズ限定でリリースされたのが、今回取り上げるこのライヴ・アルバム。なんだか、再結成してもう5年も経つというのに、ライヴ盤とセルフ・カバー集しか出してないなんて、傍から見たらもう立派な金目当ての再結成レトロバンドだと思われても仕方ないよね。しかも、LP2枚組の今回のアルバムの1枚目は『Spot The Difference』の再発盤と同じ内容ときた。

3000枚限定ということだったので、アナウンスされた直後にオーダー。うちに届いたのが6月16日で、それからすぐにブログに何か書こうと思ってたのに、こんなに遅くなってしまった。ちなみに、さっきオフィシャルサイトを見てみたら、まだ入手可能みたいだね。たった3千枚が半年近くも売り切れずに残ってるなんて、全世界のスクイーズファンはもうレコードプレイヤーを売っ払ってしまったか、もしくはスクイーズオフィシャルが3千枚と煽っておいて実は3万枚ぐらいプレスしているかのどちらかだな。

『Spot The Difference』に付属していた方の10曲入りライヴ盤、あれはあれでベストヒット的内容でまあそれなりに納得はしてたんだけど、それにしても変な曲順だとは思ってたんだよね。本編の『Spot The Difference』が一見とりとめないように見える曲順でいて実はアルファベット順だったという謎解き(というほどのものでもないけど)があったから、前半に大ヒット曲ばかりを詰め込んで後半どんどん地味な曲が増え、(いくらアメリカでのシングルヒット曲だとはいえ)『If I Didnt't Love You』なんて歯切れの悪い曲で終わるなんて、いくらおまけ盤だとはいえ、なんて中途半端な選曲かと。

その謎解きは2年後にやってきたというわけ。まあ、熱心なファンはきっと当日のセットリストを調べて、先のおまけ盤は当日のライヴ前半しか収録していないということぐらいはとっくにわかっていたのかもしれないけど。というわけで、『Cool For Cats』から始まるLPの2枚目まで全部通して聴くと、この日のセットがいかに楽しいものだったかがよくわかるという仕組みになっている。

このブログで何度も書いてきたグレンのソロ・ライヴ同様、ファンなら誰でも一緒に歌えるヒット曲と、全アルバムをしっかり聴き込んだコアなファンが聴いてみたいと思うような隠れた名曲が絶妙なバランスで混ざり合っている。もちろん、一人で2時間以上にわたって30曲以上も演奏するグレンのソロに慣れてしまった身としては、あの曲もないこれも無いという気にはなってしまうけれど、それは贅沢というもの。

さっきも書いたとおり、A面トップから3曲、通常のグレンのライヴなら本編最後からアンコールにかけて演るのが定番な大ヒット曲が続く。B面での意外な聴きものは「It's So Dirty」のグレンのギターソロかな。若干荒くはあるけど抜群のタイム感で弾き倒す感じが最高にかっこいい。あとB面では『Difford & Tilbrook』アルバムから「Hope Fell Down」を演ってるのも個人的には満足。どの曲のときだったか、「小さなステージは楽しいね」とグレンが言ってるけど、フィルモアってそんな小さな会場なのかな。

LPを買ったらMP3がダウンロードできるコードが付いてくる。基本的にLPとMP3の内容は(後述する大きな違いを除けば)同じなんだけど、一点違うところに気がついた。LPはB面の最後「If I Didn't Love You」が終わったところでフェードアウト。それは『Spot The Difference』のボーナス盤と同じなんだけど、MP3バージョンだとその曲が終わって歓声がフェードアウトせずに突然次の「Cool For Cats」のイントロが入ってくるところがものすごく快感。

その曲に加え、珍しい「Someone Else's Heart」でもクリスはソロで歌う。僕は特に好きな曲でもないけど、グレンのソロ・ライヴでは当然聴くことはなかったから、この曲をライヴヴァージョンで聴くのは初めてかも。ちょっとマイナー調なその曲に続けて明るい「Mumbo Jumbo」を今度はグレンが歌うところも、スクイーズというグループの特徴をよく表しているね。

その曲から間髪入れず出てくるC面5曲目の「Up The Junction」からD面全部まで通して、再び大ヒット曲集。鉄壁。さっきの「It's So Dirty」もそうだったけど、いろんな曲でグレンが追加でギターソロを長めに入れる。調子いいときのグレンってこうだよね。

最後の「Pulling Mussels (From The Shell)」であー終わったと思っていたら、LP版は最後にシークレットトラックが。おそらく『Spot The Difference』のときのアウトテイクだと思われる、とある名曲の「Differenceだらけの」セルフ・カバー。グレンがこれぐらいのテンポで歌うのを彼のライヴで見たことはあるけど、バンド・バージョンでこうして聴くのは初めて。アイチューンズのダウンロードもいいけど、LPを買うファンのためにこういうのをちゃんと隠しておいてくれるところが嬉しいね。

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LPは4面とも違った色合いのレーベルが付いたホワイトヴァイナル。こういうのは持ってるだけで楽しくなるね。本当は色とかついてない方が音はいいのかもしれないけど、そこまで聴き分けられる耳があるわけでもなし。

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そして、LPにはおまけのポスターとかステッカーとかいろんなおまけがついてるのがまた嬉しい。CDが出ないからと躊躇しているスクイーズファンの皆さん、3000枚だか30000枚だかがなくなってしまう前にこれ買っといた方がいいよ。まあ、もうしばらく躊躇し続けてても当分なくなりそうにないけどね。
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2011年08月28日

パワーポップの夏が往く

お盆にあたる週は、節電のためということで会社が閉まっていたのをいいことに、一週間ほど帰省がてら大阪や京都や神戸をうろうろしてきた。懐かしい友達と会ったり、毎晩浴びるほど飲み歩いたり、長らくご無沙汰のCD屋巡りをしたりと、ちょうどネット接続環境がよくなかったのをいいことに、一週間のあいだ仕事のことはきっぱり忘れて楽しんできた。

…そのツケはもちろん廻ってくる。休暇明けの先週だけでは到底終わらなかった量の仕事を昨日も今日も家でコツコツと(現実逃避を間に挟みながら)こなしているわけなんだけど、このままだとまた今週もブログ書けずに週末が過ぎていってしまう。ここ数カ月で相当数のCDを買っていて、もちろんその中には大当たり盤も何枚もあるのに、頭の中で温め続けながら結局孵化しなかった記事のタマゴみたいなのがまた増えてしまいそうだから、走り書きでもいいからちょっとまとめて書いておこう。なにしろ、今年になってから「アルバム」カテゴリーで書いた記事は、3月初旬のスクリッティ・ポリッティのベストアルバムだけだからね。いくらなんでもサボり過ぎ。

ちょうど大阪から戻ってきた日はとても涼しかった。もう夏は終わってしまったのかと思ったけど、そんな日は数日だけで、先週はやっぱりまた暑い夏が戻ってきたね。とはいうものの、ここ数日、夜になって吹くのはもう夏の風じゃなくなってきたのも事実。きっともう何週間もしないうちに秋らしくなっていくのかな。

別に夏=パワーポップというわけじゃないけど、この夏はよくできたパワーポップアルバムが何枚も発売されて、僕にしては(中古を待たずに)タイミングよく入手し、通勤中も旅行中もずっとそれらを代わる代わる聴いていたので、夏が往ってしまう前にまとめて書くことにしよう。


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Fountains Of Wayne 『Sky Full Of Holes』

まずは大御所ファウンテンズ・オヴ・ウェイン(以下FOW)の、4年振りとなるこのアルバム。前作はこのブログでも取り上げ、僕の07年の年間ベストの第五位に入れたほどのお気に入り盤。

前作『Traffic And Weather』は古くからのFOWファンにはいまいち受けがよくなかったようだけど、僕はあのよく言えばバラエティに富んだ、悪く言えばとっちらかったアルバムの流れを素直に受け入れられたから、あのアルバムに続く(途中にアダムのティンテッド・ウィンドウズを挟んでの)今作はかなり期待しながら待っていたものだ。

アリスのチャンピオンかと思うようなアコギのイントロで幕を開けるこのアルバム、今までのFOWのアルバムの中でもかなりアクースティック濃度が高めなんじゃないかな。もちろん、“どちらかといえば”という程度の濃度なので、特にアクースティックアルバムというわけではない。そして、今回も曲のクオリティは異常に高い。今日は“走り書き”と断ってあるので一曲ずつ感想を書くようなことはしないけど、「Someone's Gonna Break Your Heart」とか「A Dip In The Ocean」とか「A Road Song」とか、一回目に聴いたときからもう忘れられなくなるような素敵なメロディーの曲が満載。

ちょっとした金額をけちって2曲のボートラ入りの日本盤でなく輸入盤を買ったんだけど(ボートラのうち1曲は輸入盤にも収録されているので)、そのうち適当な値段の中古日本盤を見つけたら買い換えようかな。


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Everybody Else 『Wonderlust』

プッシュ・キングス(The Push Kings)は大好きなバンドだった。バンダイ・ミュージックから出た4枚の日本盤も、ラスト・アルバムとなってしまった01年の『Feel No Fade』も、当時その手の情報も現物もなかなか入手し難かったジャカルタやジェッダ在住時にこまめに買い集めていたものだけど、いつの間にか全く噂を聞かなくなったと思っていたら、いつの間にか解散していたようだ(この手のマイナーなパワーポップバンドにとっては当たり前のように起こることだけど)。

「元プッシュ・キングスのギャーティー兄弟の弟の方、キャリックが新しいバンドをやってますよ。エヴリバディ・エルスっていうんです」と僕に教えてくれたのは、最近の僕の音楽人脈でパワーポップについて語らせたらこの人の右に出る者はいない、うーららさんことN君だった。あれは去年のことだっけ。いや、もう一昨年になるのかな。調べてみたら、僕もCD屋で何度も見かけたことのあるアルバムだった(でも、僕は自分の持ってるステイタス・クオーの『XS All Areas』というベスト盤のジャケとずっと勘違いしていた。だって似てるんだもん)。

そのときは自分内エコ期間だったかたまたま次に見かけたのが高かったかでそのファーストは買わずにいたら、またそのバンドのことは僕の中ではすっかり忘却の彼方に去ってしまっていた。あんなに気に入っていたバンドの後継だというのに、なんでそんなに無関心になってしまっていたんだろう。

「エヴリバディ・エルス、セカンド出ますよ」と教えてくれたのも確かN君だった気がする。今度こそ買わなければと、僕にしては珍しく日本盤新譜をゲット(1995円と良心的な定価だったのも新譜を買った理由)。xiaoさんのところで最近名前をよく見かけるディスク・デシネか。こういうのも出してるんだね。僕は別に紙ジャケファンじゃないけど、こういう丁寧な作りで良心的な値段のCDはどんどん応援してあげたいね。

おっと、“走り書き”のくせに前置き長すぎ。内容はというと、これがプッシュ・キングスの延長線。というか、なんでこの路線でプッシュ・キングス解散する必要あったの?というぐらい前のバンドの音そのまま。もしかしたらお兄ちゃんと喧嘩別れしたのかな。

プッシュ・キングス時代も僕はどちらかと言えばキャリックの作った曲の方が好きなのが多かったので、全然衰えないここでのソングライティングが嬉しい。声を張り上げて歌うと相変わらずポール・マカートニーみたいだし。早くファーストも買わないと。それに、ライナーによると、ファースト発表後に何枚かのEPも出ているんだね。もう廃盤みたいだけど、入手困難というわけじゃなさそうだから、早いとこ買っておこう。


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The Wellingtons 『In Transit』

本日最後はこれ。さっき名前を出したxiaoさんのブログでもちょっと前に取り上げられていた、オーストラリアのウェリントンズのニューアルバム(元ニュージーランド在住者としては、オーストラリアのウェリントンというのがどうも違和感ありなんだけど、このウェリントンは長靴の方なんだろうね。と書いて検索してみたら、オーストラリアにもウェリントンっていう町があるのか)。

僕はセカンドアルバムしか持っていなくて、いつも追いかけてるというバンドじゃないんだけど、xiaoさんを始めあちこちで激賞の声を聞くので、大阪マルビルのタワーで試聴してみたら、もうアレですよ、1曲聴き通せない。いや、悪いんじゃなくて、そんな風にちょこっとつまみ聴きするのがもったいない。こんなのって、サンバサダーのあのアルバム以来かも。曲調とか全然違うけど。で、これも僕にしては珍しく、日本盤新譜お買い上げ。

さっきのxiaoさんの記事にコメントしたけど、近々来日するんだよね。東京は9月6日の新代田と、8日の下北沢。下北の方は単独公演じゃなくてパワーポップアカデミーへのゲスト出演ということで、演奏時間は30分程度ということらしい。

両方行きたいけど、今のこの業務量で同じ週に二回も会社を定時で抜けるのはかなりムリっぽいかもと、とりあえず先にチケットが掃けてしまいそうだった8日分をキープ。パワーポップアカデミーって僕は前回(第一回)は参加しなかったけど、お客さんがそれぞれのMP3プレイヤーをつないで自分たちの好きな曲を掛けられるんだって。なんという僕向きな(笑)イベントなんだ。ちょうど次回のyascd miniの選曲が終わったところなので、もう早速頭の中はパワーポップモード。何入れて行こうかな。あまりポピュラーなのを入れると他の人とかぶるし、かといって超マイナーなの持っていって受けなくても困るしな。そもそも一人あたり何曲ずつ掛けさせてくれるんだろう。初めてなんで勝手がわからないよ。そんなことばかり考えてると、どんどん現実逃避の時間ばかりが過ぎて行ってしまうよ。
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2011年03月06日

不完全な「完璧」 - Scritti Politti

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スクリッティ・ポリッティ 『Absolute』

前回の記事にも書いたように、この時期になるとリアル店舗でもオンラインでもあちこちのCD屋さんでセールをやってて、ついあれこれと買い込んでしまう。先週はそうして買ったダンボール箱がほとんど一日おきに届いて、あっという間にこのPCの隣にはCDの山ができてしまった。

いろいろ書きたい新譜も沢山あるんだけど、今日はこれ。あいかわらず忘れた頃にぽつんとリリースされる、スクリッティ・ポリッティ。5年振りのこのCDは残念ながら新譜ではなく、新曲2曲を含んだベストアルバム。

ずっとにこのブログに書いたように、スクリッティ・ポリッティというのは30年ほどの長いキャリアでたった5枚しかアルバムを発表していないだけでなく、ポストパンク期〜1枚目〜全盛期〜ヒップホップ期〜06年の最新盤で全然音楽のスタイルが違うもんだから、ベスト盤の編集もなかなか難しいものがあるはず。

おそらく、スクリッティ・ポリッティを“知っている”という程度の人はほぼ全員、85年の大ヒットアルバム『Cupid & Psyche 85』で彼らのことを知ったはずなので、その後のどっぷりヒップホップに傾倒した音や、初期のギザギザ&スカスカしたポストパンク期の音や、06年盤のメロウなソロアルバムの音を同じバンドの音楽として素直に受け入れられるとは思えないからね。

なので、どういう選曲してるんだろうと興味をもって見てみる。まずは、「Wood Beez」にはじまる『Cupid & Psyche 85』からの怒涛のシングル攻勢5連発。まあ、そりゃそうだよね。さっき書いたような、ディープなファンでない人にとっては、このグループはこの5曲に尽きるだろうからね。もろに80年代を代表するようなキラキラピカピカした音なのに、全然古臭く聴こえないのは凄い。

続いて、その大ヒットアルバムの続編のような造りの『Provision』からの、マイルス・デイヴィスとロジャー・トラウトマンがそれぞれ参加したシングルカット2曲。まあこれも妥当なところだろう。僕にとっては大好きなこのアルバムからたったこれだけなのはちょっと納得いかないけど。

更に、年代順にその11年後のヒップホップアルバム『Anomie & Bonhomie』から4曲。うーん、4曲はちょっと多すぎるんじゃないの。個人的にはシングルの「Tinseltown To The Boogiedown」とグリーンのボーカルが格好いいアルバム冒頭の「Umm」で十分な感じ。

ここでうんと時間を遡り、違和感ありまくりなのは承知のうえでデビュー曲「Skank Bloc Bologna」に戻り、さらにファーストアルバム『Songs To Remember』から3曲。さっきの『Anomie & Bonhoie』からは非シングル曲をあんなに収録しているのに、このファーストからは「Faithless」が落とされている。結構重要なシングルだと思うんだけどな。不可解。

シャバ・ランクスとの共同シングル「She's A Woman」(yascd013に入れたビートルズのカバー)を挟み、今回の目玉である新録が2曲。あれ?06年の『White Bread Black Beer』はスルー?なんでそんなことになるんだろう。グリーン、あれ気に入ってないのかな。確かに僕もさっき上にリンクした06年の記事ではあんまり気に入ってないような書き方をしていたけれど、結構いい曲も入ってると思うんだけどな。不可解。

待望の新曲は、ライナーを読んでみると実はそれほど新しいというわけでもないようだ。『White Bread Black Beer』の直後の07年に、そのソロアルバム(名義はスクリッティ・ポリッティだけど)とはうって変わって、全盛期のパートナーであるデイヴィッド・ギャムソンと二人で作りあげた曲。たしかに、ちょっとあの頃の香りがするよ。ものすごい名曲というほどではないけれど、いい曲だよね。次のアルバムが一体何年後になるのかわからないけど、またこの二人で(と、できればドラムスのフレッド・マーも一緒に)作ってほしいな。

いかにもスクリッティ・ポリッティらしい秀逸なジャケットに包まれ、なかなか上出来な2曲の新曲も入っているけれど、どうもしっくりこない選曲のこのベストアルバム。まあ、ベストアルバムの選曲なんていつでもそういうものだし、スクリッティ・ポリッティのベスト盤なんて冒頭の5曲が入っていれば大方の人には問題なしなのかもしれないけど(だったら『Cupid & Psyche 85』を聴けばいいんだけど)、ちょっと対抗して自分仕様のベスト盤を作ってみたくなる気にさせられるCDだね。

そうだ、それやってみようかな。このベストアルバムとは曲が一切かぶらない、『裏Absolute』。「Wood Beez」も「Perfect Way」も「Skank Bloc Bologna」も入ってないスクリッティ・ポリッティの編集盤をベストアルバムと呼ぶことに抵抗はあるけれど。実は今、久しぶりのyascdでも作ってみようかなと、ふたつぐらいのアイデアのタマゴが頭の中にあるんだけど、なんだかこれを先に作ってみたくなったよ。というわけで、<つづく>
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2010年12月25日

サイレント・ナイト - Peter Broderick / Tamas Wells

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ピーター・ブロドリック 『How They Are』

「誰もが悲しそうにしている」と無伴奏で静かに歌い出されるオープニング曲「Sideline」。しんとした静寂の中、落ち着いたクルーナー・ヴォイスの独唱がそのまま訥々と続き、これはこういう曲なんだと思い始めたころ、1分32秒のところで突然奏でられるピアノの音が殊更心に響く。

名前だけは前から知っていたけど、CDを通して聴いたことがなかったピーター・ブロドリックの最新作をふとしたことで安く入手できたので、早速聴いてみた。彼一人の演奏と歌だけが入った全7曲、30分強のコンパクトなアルバム。7曲中3曲がピアノの弾き語り。2曲がアクースティック・ギターの弾き語り。残り2曲がピアノのインスト。全曲スタジオでの一発録りのようだ。

上に写真を載せた、どんよりとした雲の下の雪の積もった街並みを銀色がかったグレー単色で印刷したジャケットが、このアルバムの内容をよく表している。美しいけど、悲しみがたくさん詰まった音楽。裏ジャケに載っている、屋根の上にぽつんと立ったアンテナの写真ですら悲しそうに見えてしまう。

所属はべラ・ユニオン(Bella Union)なんだね。このレーベル、僕はフリート・フォクシズやミッドレイクがぱっと頭に浮かぶけど、ちょっと調べてみたら、アンドリュー・バードとかアート・オブ・ファイティングとかもそうだった。他にも、気になっているけどまだ聴いていないフィリップ・セルウェイとか、MOJOのコンピで聴いたロウ・アンセムとかもいるね。ちょっとこれからしばらく、ここレーベル買いしてしまいそうな気配。

このアルバム、特にクリスマス・アルバムというコンセプトじゃ全然ないんだけど、全体を覆うこの静かな雰囲気がなんだか厳かな気分にさせてくれる。今年の僕のクリスマス・アルバムにしよう。別に今日しか聴かないというわけではなくね。年の瀬にいいアルバムに出会えたよ。安く買えたし(笑)、自分へのクリスマス・プレゼントだ。


クリスマス・プレゼントといえば、タマス・ウェルズとリリコ・レーベルから今日(24日)、素敵なプレゼントが届いた。先日の来日公演で初公開されたショート・フィルム『The Houses There Wear Verandahs Out Of Shyness』が、今日から1月16日までの期間限定でオンライン公開され始めた。

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あの夜あの場所に居た人達も、残念ながら来られなかった人達も、ぜひ観てみてほしい。特別何が起こるわけでもない他愛もないストーリー(というほどのストーリーすらない)だけど、タマス・ウェルズが好きな人にはきっと気に入ってもらえると思う、とても素敵な映画だ。あるいは、この24日間で、きっとタマス・ウェルズのことを好きになる人が増えるだろう。リンクはこちら↓

The Houses There Wear Verandahs Out Of Shiness

丁寧な日本語訳はリリコ・レーベルの仕事。あ、そういえば、さっきのピーター・ブロドリックもリリコ、というか、インパートメント/p*disのオンライン・ショップで扱ってるから、タマス・ウェルズのファンの皆さんはアマゾンなんかで買わずに(笑)そちらでどうぞ。とか言ってる僕はうっかり別の店で買ってしまったんだけどね。ごめんなさい。これでタマスの次回の来日が1554円分遠くなってしまった(笑)

では皆さん、よいクリスマスを。
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2010年12月24日

北国の人達 - Woodpigeon / Pascal Pinon

12月3日、早稲田奉仕園スコットホールでのこと。開場と同時にホール内に入り、まず前の方に席を確保して、1月のシンガポール公演からほとんど一年振りのタマス・ウェルズのライヴをわくわくしながら待っていた僕は、場内に流れている静かなBGMに気がついた。あ、これブロークン・フライト。

ステッドファスト・シェパードもかかった。ウィンターピルズも。そんなセンスのいい選曲をするのは、もちろん主催者のsinさんだろうな。そんな中、僕は聴いたことなかったけど、すごく気になる曲がかかった。これ誰だろう。

次々に入場してくるお客さんの相手で忙しいsinさんを捕まえて訊いてみる。「今かかってるこれ、誰?」。「ウッドピジョンですよ」。え、そうなの?僕ウッドピジョンのCD持ってるのに、そう言われるまでわからなかった。


そう、あれは今を遡ること3年とちょっと前。そのときもタマス・ウェルズの東京公演のことだった。そのライヴを観るためにニュージーランドから駆け付けた僕と、僕が書いたタマスのセカンドアルバムのレビューにコメントを寄せてくださった一本道ノボルさんとの邂逅。ライヴ後の打ち上げで終電まで語り合った後(そうか、あの頃は終電までに帰るという一般常識を持ち合わせていたんだな、僕たちは)、彼が僕に教えてくれたバンドがあった。「これ、タマスの次にLiricoから出したんですよ。また僕がライナー書いたんで、よかったら聴いてみてください」。

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ウッドピジョン 『Songbook』

タイミングというのは大事なものだ。NZに帰って聴いてすぐにいいアルバムだと認識はしたものの、初の生タマスを観た直後の僕は、それからしばらく他のCDなど聴く気もおこらず(今回初めてタマスのライヴを経験された方ならこの気持ちをわかってもらえるでしょう)、1〜2回聴いただけでCDラックにしまい込んでしまった。一本道さん、ごめんなさい。


それから3年。sinさんから衝撃の事実(?)を聞かされた僕は、12月3日の夜(というか4日の未明)、タマス熱に侵されたままの頭で、CDラックから『Songbook』を引っ張り出してきてCDプレイヤーに乗せてみた。3年前より少しは地に足のついた冷静な気持ちで。

こんなにいいバンドだったなんて。

カナダ人シンガー・ソングライター、マーク・ハミルトン(Mark Hamilton)を中心とした7人編成の大所帯バンド。ライナーで引き合いに出されているスフィアン・スティーヴンスやベル・アンド・セバスチャンを連想させる、繊細なメロディーをこざっぱりとしたアレンジで奏でる(大所帯なのに)、凡百のインディーバンドとは明らかに一線を画すセンスのよさ。このジャケ画もいいが、ブックレットに描かれたいくつかの不思議なイラストも大好き。あのときブログに載せなかったのは明らかに失敗だった。

4日後、sinさんのブログに、「Tamas Wells Japan Tour 2010 ツアー後記の前に・・・SEプレイリスト」という記事が載った。あのときかかっていたBGMの選曲リストだ。ウッドピジョンの曲は「Redbeard」というのか。調べてみると、今年の初めに出たサード・アルバムに収録されている曲だ。それにしても、この選曲いいな。これCD-Rに焼いてくれないかな(笑)


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ウッドピジョン 『Die Stadt Muzikanten』

というわけで、早速この最新作を入手。15曲入りのフルアルバムというのはまあ珍しくもないけど、聴いてみたら更にシークレット・トラックが1曲、さらに12曲入りのボーナスディスク『Balladeer』まで封入という、なんなのこのボリューム(笑)。しかも、その全28曲がどれもこれも珠玉のメロディーだというこの凄さ。大げさに言いすぎるのを避けると、確かにそれほどでもない曲もいくつかあるけど、尋常でないクオリティの曲が次から次へと出てくるところが凄いよ。

埃だらけの古いレコードを模したアルバムタイトルトラックからいきなり彼らの(というか、マーク・ハミルトンの)世界にすっと引き込まれる(ちなみに、ファーストでは作曲クレジットにのみ使われていたMark Andrew of the Hamiltonsという名前が、このアルバムでは正式名称として使われているね。それが本名なのか?)。11曲目「Redbeard」はやはり名曲だね。イントロから最初のヴァースに入る箇所なんて、胸をかきむしられるような気持ちになる。

危なかった。こんなに優れたバンドを丁寧に紹介されておきながら、むざむざ自分の中で葬り去ってしまうところだった。早いとこセカンドも買おう。そっちにもボーナスディスクが付いてるみたいだし。


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パスカル・ピノン 『Pascal Pinon』

『Die Stadt Muzikanten』と一緒に買ったのが、サイトで試聴してすぐさま気に入ったこのアルバム。16歳の双子のアイスランド人姉妹だって。アイスランド語の曲と英語の曲が入り混じって出てくるけど、なんかアイスランド語って不思議な語感だね。前にシガー・ロスのライヴに行ったときに、ステージ上でヨンシーとキャータンが交わすアイスランド語がなんだか天使が話してるように聴こえたけど、これもそんな感じ。

アイスランド語で歌われる1曲目「undir heidum himni」で全編に亘って奏でられる不思議な管楽器の音は何だろう。内ジャケに書いてある楽器クレジットにバード・フルートってのがあるな、これかな。2曲目「arestidir」の人懐っこいメロディーはどこかで聴いたことがあるような気がする。何だっけ。この曲の鉄琴の音もいいね。

こういうのもローファイっていうのかな。全部姉妹の部屋で作りました、みたいな手作り感満載のこのアルバム、30分にも満たない軽い感じだけど、同じアイスランドでもビョークやシガー・ロスみたいに完璧に創り込まれた手の届かない世界でなく、アミーナの閉じた不思議な世界に通じるところがある。

和訳されたインタビューを見つけた。このグループ名、フリークスについての本から取ったと書いてあるね。道理でこの名前で検索かけたらなんだか不気味な男の写真がいっぱい出てくるわけだ。


ところで、僕がこの2枚のアルバムを買ったのは、タマス・ウェルズの日本でのディストリビューションをしているインパートメント/p*disのオンライン・ショップ。上に載せたアルバムタイトルに張ったリンクは一応アマゾンに飛ぶようになってて、もしあなたがそこでポチッとクリックしてこれらのCDを買ってくれたら僕の手元に何十円かが届く仕組みになっているんだけど、そんなのはどうでもいいから、もしあなたがこれらのアルバムを聴いてみようと思ってくれたなら、是非こちらのオンライン・ショップで買ってほしい。

別にsinさんが友達だからとか、ましてや彼に宣伝してくれと頼まれて書いてるわけじゃない。僕はただ、この会社にはどんどん儲けてもらって、そのお金で一回でも多くタマス・ウェルズを日本に呼んでほしいという、完全に自分のことだけを考えてそう言ってるだけ。今ならパスカル・ピノンのCDにはポスターも付いてるし、お得ですよ(今見てみたら、このCDまた在庫ナシになってるけど)。僕でも知らないようなアーティストのCDが満載だけど、だいたいどれも試聴できるようになってるから、気になったものはどんどん聴いてみればいいし。

とか書きながら自分でもまたこのサイトに行ってみたら、最近また新入荷が何枚かあったみたいだね。ちょっといくつか聴いてみて、ウッドピジョンのセカンドと一緒に買おうかな。Tシャツ好きとしてはかなり気になるデザインのシャツもいっぱいあるし。
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2010年11月16日

贅沢 - Tamas Wells

The English translation follows the Japanese text.

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タマス・ウェルズ 『Thirty People Away』

シドニーに来ている。

例によって休暇や観光じゃなく短期滞在の出張なので、せっかくのからっとした夏も単に暑いとしか思えないのが残念だけど、せいぜい会社で取ってくれた立派なホテルの大きな窓から夜景を眺めながら(でも、妙なところでけちるから、窓の端の方にぴったり顔をつければハーバーブリッジがかろうじて見えるという微妙な位置の部屋で)これを書いているところ。

前回のアジア出張から一旦東京に戻り、その翌々日にまたシドニーへ来るという強行スケジュールにしたのは(シンガポールから直接シドニーに入った方が、時間的にも体力的にもよほど楽なんだけど)、なんとしても11月11日に自宅にいる必要があったから。そう、予約していたタマス・ウェルズの新作が届いているはずの日だ。

帰国したその日、思っていたよりも大ぶりな小包に入っていたのは、沢山の梱包材に丁寧に包まれた紙ジャケCDと、来月の東京公演のチケット2枚、予約特典のダウンロードクーポン、それに、sinさんのツィッターで製作過程をずっと見ていたハンドメイドのオーガニックソープがひとつ。「先着四名様限定」というのは冗談かと思っていたのに、まさか僕のところに送られてくるとは。乾燥が不十分なのでしばらく空気に触れさせておいてほしいという注意書きを読んで、封を開ける。いい匂い。なんだかもったいなくて、使えないよ。このまま部屋に置いておこうかな。この『Thirty People Away』のジャケ画の入った注意書きと一緒に。

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どうも最近調子の悪いPCになんとか音源を取り込み、シドニー出張に備える。でもその前に、やっぱりこのアルバムは最初はきちんとスピーカーから音を出して聴いてみたくて、CDプレイヤーに乗せる。

しばらく前からLiricoのサイトでこのアルバムの音源が試聴できるようになっていたのは知っていた。だけど、僕はこのアルバムをそんな風につまみ聴きするようなことはしたくなかったから、しばらくあのサイトには立ち寄らないようにしていた(行くとついクリックしてしまいそうだったからね。笑)sinさんのブログやツィッターをはじめ、その試聴音源を聴いたという人達の絶賛の声は読んでいたけれど、僕はこの日まで、例によって不思議な雰囲気満載の曲名とジャケ写だけを見ながら、ずっと我慢していた。その音が、ようやく僕の部屋で奏でられる。夜なので、すこしボリュームを絞って。



これまで僕がタマス・ウェルズについて書いてきた文章のいくつか。

> 初めての出会いのあまりの衝撃に、ほとんど何も書くことのできなかったセカンドアルバム『A Plea En Vendredi』について。
> 当時入手困難だったファーストアルバム『A Mark On The Pane』をようやく探し当て、ありったけの知識を込めて書いたもの。
> 当時僕が住んでいたNZから海を越えて駆け付けた、待望の初来日公演。
> サードアルバムにしてタマス・ウェルズ初のソロアルバム『Two Years In April』についての果てしない長文。
> 二度目の来日公演を三夜分まとめて。
> 二度目の海外追っかけ。シンガポール公演について。

さて、いったい僕はこのタマス・ウェルズによる新しいアルバムを聴いて、これ以上何を書けるんだろう。『Two Years In April』のときよりさらに増量した駄文を重ねるべきだろうか。もしあなたが僕のブログをずっと読んでくださっているなら、またいつもと同じような表現で同じようなことをダラダラと書いていると思うかもしれない。そしてもしあなたが偶然(タマス・ウェルズという名前で検索をかけて)ここに来てくださったのであれば、今ここにリンクを張ったいくつかの文章を(たっぷり時間がかかるのを覚悟のうえで)読んでもらえれば、彼の音楽がどういうものかはわかってもらえるだろう。もちろん、ちょっと聴いてみたいという方は、さっきリンクしたLiricoのサイトに行けば、今でもこの新作が試聴できるようになっているはずだ。

一言でまとめるなら、今回のアルバムは、あらゆる意味でとても贅沢なものだ。もちろん、中に収められている音は、豪華絢爛という言葉とは程遠い、いつもながらのタマス・ウェルズの音楽。たとえて言うなら、贅を尽くした食材を潤沢に使った懐石料理。上質の素材だけを使って丁寧に編まれた、素朴なデザインのセーター。醸造されたばかりの、その後数十年熟成されることが定められたヴィンテージのウィスキー。そういったものと同質の贅沢さ。

「あらゆる意味で」と書いたわけ。まず、これまで聴いたことのなかったタマス・ウェルズの曲を、こんなに一度にふんだんに聴ける贅沢。思えば、前作が出てから2年間の間、途中にライヴを二度観ているとはいえ、強度のタマス・ウェルズ渇望症(笑)に罹っていた僕は、彼の初期の曲が収録されたポップブーメランのコンピレーション2枚を入手し、その2曲を慈しむように聴いていたものだ(実は、それらの曲自体は、某友人を通じてずっと以前に聴かせてもらっていたので、初めて聴いたという新鮮な驚きはなかったんだけどね)。その状況と比べると、11曲もの全く新しい曲を、こんな風に続けざまに聴けるなんて、なんと幸せなことか。

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『Shake Yer Popboomerang Volume 2』
『Planet Of The Popboomerang Vol. 2』

そんなオタク的感想はさておき、内容の贅沢さについて。今回のアルバムが、ヤンゴンの自宅でほぼ一人で宅録された前作とはうって変わって、プロデューサー兼ドラマーであるネイサン・コリンズの住むタスマニアのホバートのレコーディングスタジオで、今年に入ってタマスと一緒に活動しているギタリストのキム・ビールズや弦楽器奏者二名を含めた拡大タマス・ウェルズ・バンドの面々と共に録音されたという事実は以前から聞いていたが、それがアルバム冒頭「The Crime At Edmond Lake」のオープニングの最初のクリアなギターの一音を聴いただけで如実にわかる。途中に子供の叫び声も入ってないし(笑)

ホバートのスタジオでの録音風景を勝手に転載させてもらおう。ため息が出るほど素晴らしい環境だよね。今いるシドニーも少し郊外に車で走れば大きな庭のある家や沢山の街路樹が目に入るけど、同じ国でもやっぱりこういう場所は別世界だね。

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この恵まれた環境で、沢山の気の合うメンバーと一緒に、(800円のミャンマー製ではなく)バンコクで手に入れたマーティンのアクースティックギターと、弦楽器やキーボードなど、きっとミャンマーでは入手することすら難しいであろう楽器をたくさん使って録音されたアルバム。インスト2曲を含んだ構成が(インスト曲の配置のされ方も含めて)最初の2枚のアルバムを踏襲しているところからも、やはり前作だけは、本人にとっても異色な位置づけのアルバムだったのだろうということがわかる。

具体的かつ意味深なタイトルなのに、実際に聴いても読んでも、相当深読みしないと意味の掴みづらい歌詞もいつも通り。ライナーで大崎さんも指摘されているとおり、今回のキーワードは火、炎といった、これまで彼の曲にはあまりなかったイメージ。ミャンマーでの爆撃事件がきっかけになった(と、sinさんのツィッターを読んで初めて知った)アルバムタイトル曲「Thirty People Away」を中心にして、アルバム全体に燃え移ったものだろう。そのイメージを代表しているのが、今作を代表する(というか、「Valder Fields」や「The Northern Lights」などと一緒に、タマス・ウェルズの代表曲になり得るであろう)アルバム2曲目「Fire Balloons」。なんか、このタイトルだけでも、想像力をうんとかきたてられるよね。火の風船だって。

初期の「Stitch In Time」のように、悲しく可哀想な歌詞をあえて(彼にしては)明るめの曲調に乗せて歌うという傾向が今回も伺える。「Her Eyes Were Only Scars」という、悲惨なタイトルとアルバム中では比較的具体的な描写のある歌詞を持つ曲などがそうだ。タマスは来月のライヴでこの曲を歌う前に、この曲の背景を教えてくれるだろうか。あの「I'm Sorry That The Kitchen Is On Fire」のように。

その一方で、おそらく彼の一人娘のことを歌っていると思しき最終曲「Your Hands Into Mine」は、その暖かなタイトルと題材にも関わらず、どういうわけかこのアルバム中もっとも沈んだ曲調だ。戦いの終わりという名を持ちながら、実際にはいたるところに絶望ばかりを見てしまうヤンゴンという街に長く住む彼の中では、希望と絶望という相反する感情がまるでコインの裏表のように密接に結びついているのかもしれない。

沈んだ曲調といえば、いつものとおり(?)アルバム5曲目と8曲目に配置されている二つのインストゥルメンタル曲。もしこれが何かの映画のサウンドトラックだとしたら、一体これらはどんなに悲しい場面のBGMなんだと思ってしまうような曲。ピアノを弾いているのはどちらもアンソニー・フランシスだろう。

全11曲、わずか34分しかないこのアルバム(彼のアルバムはいつもそんな感じだけど)、手に入れてからまだ5日しか経ってないのに、もう何十回聴いたかわからない。「今年のベスト10入り確実」なんてもんじゃない。「もしこれが1位でなければ何をこの上に持ってこられるのか」というレベルの作品。

ずっと出張に出ているのでなかなか実物を手に取って見ることのできていない、いつもとはちょっと違った雰囲気のイラストのジャケットも、個人的には今までで一番お気に入りだ(ディスクやブックレットがちょっと出し入れしづらいけど)。内ジャケやブックレットにはちょっとずつ違った家が建っているね。大崎さんの言われるとおり、べったりと赤く塗られたブックレット裏も含めて、これらの家が建っている地面の部分が血に見えてしかたないけど、それをこんな子供が描いたような屈託のない雰囲気に仕上げているところもいい。さしずめ、「絶望の大地に建つ希望の家」といったところか。



来月最初の週末、タマス・ウェルズの2年振りの来日公演が東京と京都で行われる。前回の来日メンバーから、子供の世話で忙しい(笑)ネイサン・コリンズが抜け、代わってキム・ビールズが参加という、僕が年頭に観たシンガポール公演と同じメンバー構成。前回のステッドファスト・シェパード(=ネイサン・コリンズ)のように、キムが前座でソロ演奏をするそうだ。土曜日にヨンシーのライヴさえ入っていなければ、本当は京都まで追っかけたかったんだけどな。まあ、しょうがない。タマス/ヨンシー/タマスなんて贅沢な週末、もう二度とないだろうしね。

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シドニーにいる間にも帰りの機内でも書き終えることのできなかったこの記事を、さっき東京の自宅に戻ってきて書きあげ、ブログにアップしようとPCを立ち上げたら、遅ればせながらアウン・サン・スー・チーさん解放のニュースが目に入った。出張中全然ニュースを見る暇もなかったから。そうか、今度こそ本当に。よかった。きっとタマスは来月のステージで、戦いの終わりを意味する名の街で久しぶりに起きた、本当に希望を持てるこの話をしてくれることだろう。いつものあの屈託のない笑顔で。



Luxury - Tamas Wells

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Tamas Wells 『Thirty People Away』

I'm in Sydney now.

As usual, since this is not sightseeing or vacation but a short business trip, unfortunately this nice sunny weather is just annoying heat to me. At least while I'm writing this I'm enjoying the nightscape from this luxurious hotel that my office booked (I could hardly see the tip of the Harbour bridge if I try really hard by pressing my face against the large window, since they booked it at the corporate rate).

I've been out on the other business trip around Asia the other week. The reason why I've been home only for 1.5 days and came all the way again to Sydney, although it could've been physically much easier and saving time to go straight from Singapore to here, was simply because I had to be at home on 11 Nov. Yes, the day they release the Tamas Wells' new album in Japan.

The day I got home what I found was an oversized parcel, which included a paper-sleeved CD wrapped carefully with bunch of plastics, two concert tickets for next month, a download coupon for the bonus tracks and a handmade organic soap which I've been watching the way Shin has been producing it and posting on his Twitter. He once tweeted the soap was meant for the first 4 lucky buyer of the album. I didn't expect I would be one of them. It says on the small paper inside that the soap isn't dried enough so you need to keep drying it. I've opened the plastic bag and it scented so good. I can't just consume it as soap as it's too good. Perhaps I'll place it in my room, together with this small instruction paper with "Thirty People Away" illustration on.

liricoOrganicSoap.JPG

I get prepared for the Sydney trip, while recording the CD into the PC that hasn't been functioning very well these days. But before the trip I would love to listen to this album from the loud speaker first. So I take out the CD from the PC and put it in the CD player.

I knew I would be able to listen to the sampler of every song on this CD at lirico’s website since while ago. But I didn't want to just pick and listen to this album in such a casual way. So I've been avoid visiting the site till I get my own copy of the CD (if I go there I knew I couldn't stop myself clicking the samplers). I've been reading how good this new album was through Shin's blog & Twitter as well as the others’ comments who've already tried the samplers. I’ve tried hard not to listen but just looking at those strangely-named titles of the songs and the album cover art. At last, finally, the tunes will fill my room this night. It's already close to midnight, so I've turned down the volume a little.



Some of the articles I've written about Tamas Wells on this blog.

> About the second album "A Plea en Vendredi" that I couldn't describe almost anything due to the shocking initial encounter.
> About the first album "Mark On The Pane" which was out of print at that time but I finally found, and wrote with as much knowledge as I had then.
> About the first Tokyo gig which I went down all the way from NZ where I lived then.
> A never-ending article about the third and his first solo album "Two Years In April".
> About the second Japan tour, three nights in a row.
> About my second overseas following-the-artist trip to Singapore.

Well, what else can I write listening to this brand new album? Should I write something even longer then the one about "Two Years In April"? If you're a regular reader of my blog, you would think I write same things again in a same tone with same expressions. Or if you come here for the first time (perhaps by searching for some information about Tamas Wells on the web), it should be enough to read these links (be prepared to spend hours!). Of course if you'd like to have a quick listen, you can go to lirico's website that I linked above.

In a nutshell, this brand new album is quite luxurious, from several aspects. Of course, the music within is far from the shiny gorgeous sound, but Tamas Wells as usual. I give you some examples; an authentic Japanese traditional cuisine cooked with well-chosen materials. A humble design hand-woven sweater using high quality wool. Vintage whisky just brewed and to be stored for some ten years. Such kinds of luxury.

The reasons I write "from several aspects". First, the luxury you can listen to a series of Tamas Wells' new songs. For the last two years since "Two Years In April", although I've seen him playing live a couple of times, I've been thirsted for Tamas Wells music. So I've got the two compilation albums from Popboomerang which contained early recordings of theirs, and repeatedly listening to them (it wasn't a fresh surprise to me as I got these two songs from my friend years before though). Compared with the situation, how happy I am to be able to listen to eleven brand new songs at once!

Shake Yer Popboomerang 2.jpg Planet Of The Popboomerang Vol.2.jpg
『Shake Yer Popboomerang Volume 2』
『Planet Of The Popboomerang Vol. 2』

Putting such nerdy comments aside, I write about the luxury of the album itself. I knew the fact that unlike the last album which was recorded at Tamas' house in Yangon by himself, this album was recorded at the recording studio in Hobert where the producer / drummer Nathan Collins resides, together with the larger Tamas Wells band including two strings players and Kim Beales who has been playing with Tamas since earlier this year. You can easily tell the outcome of it by listening to the opening clear guitar sound of "The Crime At Edmond Lake". There's no child's shout in the middle, too :)

Here's the photo during the recording session that I took from Tamas' webpage without permission. Beautiful scenery, isn't it? I could see some large houses with front yards and tall trees alongside the road when I drive outskirts of Sydney, but this is a different world in the same country.

Tamas in Studio.jpg

This blessed atmosphere produced the album, together with close friends, using the Martin acoustic guitar (not the 8 dollar made-in-Myanmar guitar anymore) and the various other musical instruments you could hardly find in Myanmar. The album construction is quite similar to the first two albums, with two instrumental tunes (even the sequence of the instrumentals in the album). That tells the previous album with the different sequences must be considered to be uniquely positioned to him.

The lyrics are concrete and mysterious, yet quite difficult to understand the hidden meaning even after you listen to and read carefully, as usual. As pointed by Yohei in the liner notes, the keywords for this album are flame, or fire, which haven't appeared in his song so much before. Fire started from the album title track "Thirty People Away", which was inspired by the bombing incident in Myanmar (as I've learned from Shin's Twitter), and it spread all over the album. The song which acts for the fire/flame image is the second song of the album "Fire Balloons", which I believe is not merely the main track of this album but represents Tamas Wells’ music together with "Valder Fields" or "The Northern Lights". Fire balloons - the song title alone could rouse your imagination.

There's a tendency this time that the sad and pitiful lyrics sung on the upbeat (for him) tune, just like his early song "Stitch In Time". For instance, "Her Eyes Were Only Scars", which has this scary title and relatively concrete lyrics. Will Tamas explain the background of this song before he sings next month, just like he used to do for "I'm Sorry That The Kitchen Is On Fire"?

On the other hand, the last tune of the album "Your Hands Into Mine" which seems to be written about his daughter has the darkest mood, despite its heartwarming title and the material. I guess the two contradicting feelings, hope and desperation are tightly connected each other just like two sides of a coin in his mind, since he has been too long in the town named the End of Strife, where he's seen desperation everywhere.

Talking about the dark mood, the fifth and eights track (as usual?) of the album are the instrumental tunes. If this were the soundtracks of a movie, you would wonder in what sad scene these tunes are used. The piano player for these tunes must be Anthony Francis.

11 tracks for only 34 minutes (again, just like his album always). I can't count how many times I've already listened to this album in only 5 days since I got it. It's not the level like "must be in my top 10 list of the year", but it's like "what else could be above this if this is not the No.1".

The illustration on the front cover is my favourite among all his albums, though I haven't had enough time to look at the real one since I've been out for business trip (it's a bit hard to take out the disc & the booklet though). There are houses in different shapes in the inner cover and the booklet. I agree what Yohei mentioned in the liner notes that the ground part where these houses are built on looks just like the blood. Nevertheless, it looks quite innocent with these houses on it. You might call it the House of Hopes on the Ground of Desperate.



There will be gigs of Tamas Wells in Tokyo and Kyoto in the first weekend next month, after two years' blank. The same members as the Singapore gig, with Kim Beales on guitar as the replacement of Nathan Collins who is busy taking care of his new born baby :) It says Kim will be the opening act like the Steadfast Shepherd (a.k.a. Nathan Collins) did the last time. If only I hadn't got the ticket for Jonsi on Saturday, I'd follow them to Kyoto. Well, never mind. There'll never be another chance to see Tamas / Jonsi / Tamas in one weekend.

Tamas Poster.jpg Tamas Poster back.jpg



I couldn't finish this article while I was in Sydney and on the plane. When I've finished it at home in Tokyo, I've noticed the news Aung San Suu Kyi has been released from her house arrest. I haven't had time to check the news during the trip. Yes, finally. At last. Tamas must be talking about this hopeful news finally happened in the town called the End of Strife on the stage next month, with his usual innocent smile.
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2009年11月01日

Vol.2.5 - Matthew Sweet & Susanna Hoffs

Under The Covers Vol. 2.5.jpg
『Under The Covers Vol.2.5』 Matthew Sweet And Susanna Hoffs

「こういう誠意のある日本のインディーズは是非応援してあげたい」

8月16日の記事のコメント欄に書いたのは、誓って嘘じゃない。だけど、そのコメントを書いてまもなく、こんなものの存在を知ってしまったのが運の尽き。せめて、日本盤が発売されて初動が収まるぐらいの期間はそっとしておくのがこちらから示せる精一杯の誠意かと、しばらくの間この記事を脳内で寝かせておいた。

マシュー・スウィート&スザンナ・ホフスの70年代カバー集『Under The Covers Vol.2』の日本盤には、僕がレビューした輸入盤には入っていないボーナストラックが5曲も含まれているのは、8月のその記事のコメント欄にあるとおり。

ところが、あれこれ調べているうちに、どうやらその5曲のボートラ以外にもまだボツになったテイクがあるらしいことを知った。そして、とあるサイトで、10曲入りのボーナスディスクが付属した『Vol.2』を発見。誠意のある日本のインディーズには大変申し訳ないが、そっちをオーダーしてしまった。

届いてみたら、それは別に2枚組というわけではなく、通常のデジパックの『Vol.2』に、カラーコピーのジャケ(上の写真)がついたプラケース入りの、何の記載もないCD-Rがおまけとしてついているという形態だった。ハサミで切ったような歪んだ正方形のジャケは、こんなの一枚一枚手で切ってたら余計に手間がかかるだろうと思わせるような手作り感満載の出来。権利関係はどうなってるんだろうか。

日本盤ボートラの5曲は全て含まれているが、順番は日本盤とは全然違う。本編の「Beware Of Darkness」で一旦しんみりと終わった後に威勢よく始まる「(What's So Funny 'bout) Peace, Love And Understanding」を持って来て、最後は再びしんみりと「You Can Close Your Eyes」で締めるという日本盤の曲順は実によく考えられたものだと思うけれど、この『Vol.2.5』と名付けられた10曲入りのCD-Rの曲順もなかなかのものだ(太字は日本盤に収録)。

1. Dreaming
2. Marquee Moon
3. I Wanna Be Sedated
4. Baby Blue
5. You Say You Don't Love Me
6. (What's So Funny 'bout) Peace, Love And Understanding
7. You Can Close Your Eyes
8. Melissa
9. Killer Queen
10. A Song For You

ブロンディの「Dreaming」はきっと泣く泣く本編から落としたんだろうね。それぐらい上出来。スザンナの声って、こういう曲にほんとによく合うね。

僕にとって、このCD-Rで一二を争うハイライトが早速2曲目に。オリジナルよりもわずかにスピードを上げて、より芯の太いギターの音で幕を開ける“あの”イントロ。マシュー・スウィートが演奏する「Marquee Moon」なんて、これこそ想像するだけで鳥肌ものだろう。贅沢を言うなら、隣でギターを弾いているのがリチャード・ロイドだったら最高なんだけど、あいにく今回のレコーディングには彼は不参加。

スザンナも当然参加しているけど、もうほとんどマシューのソロ作品と言ってもいいようなアレンジ。それでも、オリジナルのヘロヘロ感と比べると、バックにしっかりと入っているスザンナのコーラスの分、音に厚みと甘味がある。マシューのギターソロが散々堪能できる、オリジナルに匹敵する11分弱の大作。

続いては、日本盤にも収録のラモーンズ。いいね、これ。この二人で一緒に歌ってる意味が一番感じられる、気持ちのいいデュエット曲(もちろん、本編の「Go All The Way」とかは除いての話)。

バッドフィンガーの「Baby Blue」は、本当は好きな曲なんだけど、ここでの出来はあと一歩というところかな。本編での「Maggie May」にも感じたんだけど、どうもスザンナちょっと気張りすぎというか。

バズコックスって、パンクという枠で括られて入るけど、ほんとにポップでいい曲書くよね、というのがよくわかる「You Say You Don't Love Me」。それは2曲前のラモーンズにも言えることだけどね。こういう曲を書けるから、単なるブームに乗って出てきては消えた有象無象とは一線を画してるんだよね。

僕にとっては今回の最大のお目当て。ニック・ロウの「(What's So Funny 'bout) Peace, Love And Understanding」。誠意のある日本のインディーズがこの曲をボートラの1曲目に持ってきたことは評価に値するけれど、これがあたかもエルヴィス・コステロの曲だと誤解されるような表記の仕方はやめてほしい。元はと言えばニック・ロウが在籍したブリンズリー・シュウォーツ最後のアルバムに収録されていた曲で、今でもニックの代表曲。

とは言え、やはり一般的には『Armed Forces』の米盤に収録されていたコステロのヴァージョンが有名なのかも。ここでの演奏は、派手なドラムで始まるイントロがアトラクションズ版、そしてこの曲を印象付ける綺麗なハーモニーがブリンズリー版、といった合わせ技。いや、これは満足。再来週のニックとライ・クーダーのライヴ、多分この曲演るだろうけど、このアレンジで演ってくれないかなあ。それでライのスライドギターのソロなんてやられたら、もう失神ものだよ。

気を落ち着けて、次はジェームス・テイラーの「You Can Close Your Eyes」。僕はこの曲が最初に収録された『Mud Slide Slim And The Blue Horizon』をはじめ、何枚かのライヴ盤でこの曲を持っているんだけど、タイトルを聞いただけでは即座に曲が思い浮かばなかった。でも、たとえこれがジェームスの曲だと知らなかったとしても、スザンナが歌うこのメロディーを聴けば、一発で彼の曲だとわかるはず。名曲。

オールマン・ブラザース・バンドは初期のライヴ盤を何種類か持っているだけなので、この「Melissa」という曲は知らなかった。悪くはないけど、特筆すべきこともないかな。

多分一般的にはこの中で一番有名なクイーンの「Killer Queen」。僕は8月の記事のコメント欄で「これもまたヴァースの部分をマシューが歌い始め、コーラスでスザンナに交代(マシューはそのままバックコーラスに移動)という感じでしょうか」などと妄想を炸裂させているが、実際はその逆だった。

うーん、どうだろう。僕はやっぱり自分が想像したように、マシューが最初でサビの部分でスザンナという役割の方がよかったかもしれない。さっき「Baby Blue」のところで書いたように、スザンナの声ってあまり低音に向いてないと思うんだけどな。マシューの裏声もいまいちだし。

まあ、それでも、ブライアン・メイ風のマシューのギター(もしかするとグレッグ・リーズ?)はよくできているし、それなりに聴き応えのある出来だろう。

最後は、70年代でこのタイトルならてっきりカーペンターズだろうと思っていたら、グラム・パーソンズの方だった。マシューの別プロジェクト、ソーンズ(The Thorns)のアルバムに入っててもおかしくない、全編に響き渡るグレッグ・リーズのペダル・スティールが泣かせる佳曲。


という全10曲。必ずしも僕のコメントの長さがそれぞれの曲の出来を示しているというわけではないが、この10曲中、日本盤のボートラに選ばれた5曲は、やはりそれなりの出来だったからというのがわかる。テレヴィジョンの「Marquee Moon」にそれほど思い入れのない人であれば、日本盤の5曲で充分満足なんじゃないかな。

というわけで、罪滅ぼしにもう一回日本盤のリンク貼っておくよ。みんなで日本盤買って日本のレコード会社を応援して、次に『Vol.3』が出るときには、日本盤だけ2枚組になっていることを期待しよう。


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2009年10月04日

また出た - Mark Kozelek

Lost Verses Live.jpg Mark Kozelek 『Lost Verses Live』

去年の4月に『April』、年末に『Finally LP』と、かなりのハイペースでアルバムをリリースしているマーク・コズレック。彼は実はその上にさらに何枚ものライヴアルバムも出している。

『April』とほぼ同時期に出た彼の詩集に付属していた『Nights LP』(*1)。『April』のすぐ後に出た1500枚限定の『7 Songs Belfast』(*2)。今年の4月に出たサイト限定のフリーCD『Find Me, Ruben Olivares - Live In Spain』。そして、5月には今日取り上げる最新ライヴ盤『Lost Verses Live』。

 *1:これは純粋なライヴ盤でなく、ライヴ録音やデモバージョンを集めたもの。
 *2:もたもたしていて買う機会を逸してしまった僕に、親切な上に同じCDを何枚も買うことで有名なマサさんが譲ってくださった。マサさん、ありがとうございました。

それら以前にも、06年の暮れに出た『White Christmas Live』と『Little Drummer Boy Live』という、クリスマスというテーマで対になった2種類のライヴアルバム(実際その二つは限定盤LPでは4枚組の一つのアルバムとして出た)があったから、今現在彼のサイトに載っているだけで6種類のライヴ盤が出ていることになる。

いくらレッド・ハウス・ペインターズ時代から20年近くに亘るキャリアを誇る彼とはいえ、これだけの短い期間にそれだけの数のライヴ盤を出せば、当然内容は似通ってくる。そんなに演奏スタイルに幅のある人でもないしね。

今回のアルバムも、数曲を除いてほぼ全部、以前のどれかのライヴ盤に収録されていた曲ばかり。だから、3月に彼のサイトを観ていて、フリーCDの『Find Me〜』に続いてこのアルバムが出ることを知ったときの僕の正直な感想は、この記事のタイトルと同じようなものだった。

そのうち、6月にはカラービニールの限定LPが出ることも同じサイトで案内されたが、そのニュース自体は6月を過ぎても更新されることはなかった(ちなみに、今でも同じ文句が書いてある)。

9月になり、サイトのトップページを見て「まだ出ないな」と思いながら何の気なしにショップのページに移ってみたら、そこには既に売り出し中のアイコンが。黒ビニールと白ビニールの2種。限定100枚ずつ。おまけに、LPにはCD未収録の「I Am A Rock」と「Last Tide / Floating」を収録とのこと。

White Vinyl.JPG

というわけで、今僕の目の前には、この白盤があるというわけ。「また出るのか」とか思ってた気持ちも、限定の二文字には簡単に折れる。ちなみに、僕が買った数日後に同じサイトを見てみたら、白盤は売り切れていたけど、今日見たらまた再入荷したようだ。いずれにせよ、過去の例からみても、今回のがなくなったらもう入手困難になるのは明らか。

2枚組アナログ盤の各面に4曲ずつ、全16曲のうち8曲が『April』から。そのアルバムは11曲入りだったから、ほとんど全部を演奏していることになるね。逆に言うと、今回のライヴ盤は“April + Best Selection Live”という趣。さっきも書いたとおり、収録曲のほとんどが過去のライヴ盤でも取り上げられているような代表曲ばかりだし。

07年の10月から08年の暮れにかけて主にアメリカとヨーロッパで録音されたようで、どの曲がどことは書いていないものの、日付と会場が内ジャケに明記してある。その最後に載っているのが、Kings Arms Tavern - Auckland, New Zealand, August 1, 2008。懐かしいな、僕がスリッツを観た場所だ。

内容は、これまたいつものマーク・コズレックとしか言いようがない。マークとフィル・カーニーのアコースティックギター2本に、マークの声、それだけ。今みたいな晴れた日曜の昼下がりにあまり似合うタイプの音楽ではないけれど、夜一人で聴いていると確実にどこかに連れて行ってくれる音。ボートラ収録のサイモン&ガーファンクルの曲ですら、しっかりとこのジャケットのように鈍い光を放つ黒色に染められているようだ。

残念ながら最近よくあるアナログ盤を買えばMP3音源が付いてくるといったものではないから、これを聴くときは必ずレコードプレーヤーを使わないといけないんだけど、オフィシャルサイトから買った僕にはさっき書いたフリーCDが付いてきたから、ウォークマンに入れて聴くのはもっぱらこちら。

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Mark Kozelek 『Find Me, Ruben Olivares - Live In Spain』

フリーCDだからといって、内容が悪いというわけじゃない。13曲入り64分のフルアルバム。『April』以降のライヴ盤が必ずそうであるように、ラスト前のクライマックスに「Tonight In Bilbao」が来るのも定番。この曲を聴くと今でもあの素晴らしかったインストア・ライヴを思い出すよ。


同じようなライヴ盤ばかり買ってもしょうがないと思う気持ちを限定商法で押し切られ、でもオマケとしてもう一枚立派なライヴ盤をつけてくれるという、憤っていいんだか喜んでいいんだかわからない状態だけど、あのインストアのときの眉間にシワを寄せたぶっきらぼうな喋り方や、サイトのトップページの4月のニュースが未だに更新されていないいい加減さに付き合っていくのが、この人のファンでいるということなのかと、妙に自分を納得させていたら、

同じサイトに、去年の12月に出た『Finally LP』が“09年6月に”2曲の未発表曲を追加してアナログで再発されることが書いてあるのを見つけた。

・・・やっぱり憤ることの方がちょっとだけ多いかな。
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2009年08月16日

鳥肌 - Matthew Sweet & Susanna Hoffs

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『Under The Covers Vol. 2』 Matthew Sweet & Susanna Hoffs

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『Under The Covers Vol. 1』 Matthew Sweet & Susanna Hoffs

ドタタドタタ、ドドン。乱れ打ち風のドラムスに被さる、聴き覚えのあるギターリフ。失敗。一瞬の間を置いて、再スタート。

後世に残るパワーポップの名曲を書きたければ、こんなリフを作ればいい。いつ聴いてもそう思えるソリッドなあのイントロ。“Ma-ma, Yeah!”オリジナルのエリック・カルメンと同じキーで叫ぶスージー。流れるようなAメロを歌い始めるのは、シド。そのメロディが五線譜上を駆け上がり、さあコーラスに入るぞというその瞬間、歌詞でいうと“Baby, please”のちょうど真ん中で絡まるように分け入ってくるスージーのボーカル。

こんな描写をしても、曲を知らない人には何のことだかわからないだろうけど、これはこのアルバムの2曲目。ラズベリーズの「Go All The Way」のカバー・バージョンだ。僕はそのコーラスまで聴いた瞬間、特に悲しいわけでも感動したわけでもないのに、自分の目に涙が浮かぶのを感じて、ちょっとショックを受けた。え?何これ。土曜の朝だよ。別に酒を飲んで気持ちが昂ぶっていたというわけでもない(僕がそのとき飲んでいたのはコーヒーだ)。両腕にはびっしりと鳥肌が立っている。


このブログを昔から読んでくださっている方なら、上に載せた二枚の写真のうち、下側のは見た覚えがあるかも。そう、おととしの1月(もうそんなになるのか…)にその前年のベスト20アルバムを特集した記事に登場している、シドことマシュー・スウィートと、スージーことスザンナ・ホフスの二人による、60年代ポップスのカバー・アルバム。

そのアルバムのブックレットの最後に「See you next time! XO」と記されていたように、それから3年後の今年(こんなに待たされることになるとは思ってもみなかったけど)、見ての通り、オレンジと黄緑と薄茶という、一層夏らしさを増した色合いのジャケに包まれた第二集が発売された。

実は、1月のときもそうだったように、今回もやはり“ティルブルック・シンドローム”に罹ってしまっていて、先月末からこちら、CD屋にも行かなければ、新譜をチェックするためにオンラインショップのサイトを見ることすらしていなかった。なんだかスクイーズ/グレン以外の音楽を聴く気分になれなくてね。

このアルバムも、グレンのライヴのしばらく前に、いつも巡回しているLA MOSCAさんのブログを見てリリースされていることを知り、早く買わなくちゃなんて思ってたのに、ようやく入手したのが昨日という次第。

アルバムとしては素晴らしかった『Vol. 1』だけど、60年代という時代背景のため、僕が元々知っていた曲はアルバム中約半数程度だった。それに比べて今回の『Vol. 2』は70年代特集。大半の曲は知っている。それどころか、さすがマシュー、やっぱりこの人のやることに間違いはないね、と思える、ツボを突いた選曲。

おととしの記事に「斬新さのかけらもないようなアルバム」なんて書いてしまっているけど、きっと僕がマシューのファンでなければ、こんな後ろ向きの企画、と切り捨ててしまっていたかもしれない。だって、よくあるよね、もう曲が書けなくなってしまったアーティストが、過去の他人の名曲を再現、なんて。そしてその大半は、過去の他人の名曲をそのまま聴いていた方がいくらかマシというような出来でしかない。

ところが、冒頭に書いたような始末だ。お馴染みのマシュー・スウィート・バンド(この記事あたりで紹介済み)による、ワイルドながらタイトな、小気味のいい演奏。そしてデビューから何年経とうと何十キロ太ろうと全く不変な、マシューのあの声。それらが一緒になって編み出す魔法のような音楽を前にすれば、もうそれがどんな陳腐な企画であろうと僕は抗えない。

他にも、エリック・クラプトンとデュエイン・オールマンのツイン・リードを再現した(さすがに彼らほど達者ではないものの)、マシューとグレッグ・リーズのギターの絡みが嬉しい、デレク&ザ・ドミノズの「Bell Bottom Blues」(『Layla And Other Assorted Love Songs』からならもうどの曲を選んでくれてもOKだというのに、よりによってこいつをピックアップするそのセンスがたまらない)。

ジョン・レノンの「Gimme Some Truth」も嬉しい。マシューの声質を活かすなら、この選曲は大当たりだと思う。スザンナによるイントロの「アー」ってコーラスも、このざらっとした曲にほどよい甘さを加えているし、かと思えば、曲がフェードアウトしていくところでの彼女のハスキーなシャウトもいいよね。そしてまたこの曲でも、グレッグのスライドが実に魅力的にきまっている。

『Vol. 1』にニール・ヤングの曲だけが2回(どうしてもどちらも落せなかったからという理由で)出てきたように、この『Vol. 2』にはトッド・ラングレンが2曲収められている。そういうところも僕的にはかなりツボ。ちょうど前回が『Everybody Knows This Is Nowhere』からメロウなタイトル曲とハードな「Cinnamon Girl」の2曲が選ばれていたように、今回は『Something/Anything?』からの代表的バラッド「Hello It's Me」と元祖パワーポップみたいな「Couldn't I Just Tell You」が収録されている。

そして、「Willin'」! リトル・フィートの数ある名曲の中で、おそらく僕が一番好きなのがこれ。ライ・クーダー、ローウェル・ジョージという名だたるスライド・ギタリストが奏でてきたあの旋律をなぞるのはもちろん、グレッグのペダル・スティール。滲みるね。

順不同ながら、もうこのまま全曲について書いてしまってもいいぐらいだけど、夜も更けてきたのであと1曲だけ。おそらく今回のソングリストの中で一番異色なのが、イエスの「I've Seen All Good People」だろう。ゲスト・ギタリストはなんとスティーヴ・ハウご自身。でも、(かつてyascd002に入れた)「Thunderstorm」みたいな9分半もある組曲を作ったりとか、この人ってきっとプログレも好きなんだろうなとは思ってたよ。彼自身が書いたライナーによると、イエスのレコードを聴いてベースの練習をしたとか。クリス・スクワイアだよ。あんなの真似できないよ。すごいね。

ああ、それに、きっとこの人はイエスのファンだったんだろうなと僕が最初に思ったのが、97年の『Blue Sky On Mars』。このタイトルと名前のロゴ、わざわざロジャー・ディーンに描いてもらったんだよね。

Blue Sky On Mars.jpg 『Blue Sky On Mars』 Matthew Sweet

せっかくリンクしたのに、廃盤なの?これ。地味だけどいいアルバムなのにね、もったいない。まあ、中古で150円とかで売ってるから、これからマシューのアルバム集めたいという人は、5枚目か6枚目あたりはこれにすればいい。

マシューの前作『Sunshine Lies』を取り上げた記事のコメント欄で僕が悔しがっていたように、『Vol. 1』はマイナーなレコード会社からボートラ入りの日本盤が出たんだよね(まだ買ってないや。廃盤になる前になんとかしないと)。実はこの『Vol. 2』も9月16日に日本盤が出るということで、もしかしたらまたそれもボートラ入りで、悔しい思いをすることになるのかもしれないけど、そのボートラの選曲次第では、もう一枚買っても構わない。それより、日本盤を待ってる間こんなに素敵なアルバムを1ヶ月も聴けないなんて方が僕には問題だから、ちっとも悔しくなんてないよ。

そして嬉しいことに、今回のブックレットの最後のページにも、「SEE YOU NEXT TIME! XO」の一文が。次は80年代編だね。すっごく楽しみ。たとえまた3年待たないといけないとしてもね。
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2009年06月06日

横入り - Tinted Windows

Tinted Windows.jpg 『Tinted Windows』

5月のGWは遠出をせずに、東京でも普段あまり行かない街に行って、ちょっとした小旅行気分を味わっていた。僕がリゾートでなく都会に旅行に行ったらすることは大体決まっていて、今まで雑誌広告でしか名前を見たことがなかったような輸入盤店や、初開拓のブックオフなんかを手当たり次第に攻略していた。

1月のグレン・ティルブルック公演以来あまりCDを買っていなかった反動か、そのGWをきっかけに、5月になってから結構な枚数のCDやレコードを買い続けてしまっている。もう6月なのに「5月になってから」なんて書いてるのは、6月になってからも引き続き、通販で買ったものが届いたり、昨晩もセールをやっていた某店で6枚買い込んできたりしているという、現在進行形のお話だから。

それだけの枚数を買っていればそれなりに当たり盤も多かったから、どれから書こうかと考えていたところ、5月の最終日になって通販で届いた1枚のCDが、順番待ちをしていた数十枚の行列に横入りして、今日の記事の候補になってしまった。聴いたばかりのCDのことをこんなに急いで書きたくなったのなんて、おととしの10月のこの記事以来のことだったと思う。結局そのときのアルバムは2007年の僕の個人的ベストアルバムでトップに立ったことを思えば、今から書くこのアルバムのことを僕がどれだけ気に入っているか、想像はつくかもしれない。

輸入盤を買ったのにシュリンクラップに貼ってあった日本語のステッカーによると、“全米で話題沸騰の「超」スーパーグループ誕生!”だそうだ。

果たしてスーパーグループなのか、しかもそれが「超」なのかどうかは微妙なところだと思う。4人のメンバーそれぞれが属していた(いる)グループと、それらのグループ内での各メンバーの立ち位置を考えると。

まず、このグループの音楽的な核であろう、ファウンテンズ・オヴ・ウェイン(Fountains Of Wayne)のアダム・シュレシンジャー(Adam Schlesinger)。主に僕のブログからのみ音楽的知識を仕入れている数名の奇特な読者の方々は、さっきのコワい犬の翌日に書いたこの記事を覚えておられるかもしれない。そのバンドのソングライターコンビのうちの一人。でも、担当楽器はベースで、歌は歌わない方。

そのFOWのアルバムにもゲスト参加していた(そして僕は彼についてわざわざ「まあ、そっちは僕にとってはわりとどうでもいいんだけどね」なんて書いた)元スマッシング・パンプキンズのジェームス・イハ(James Iha)がギター。“スーパーグループ”が目的なら、スマパンからならビリー・コーガンを連れてくる方がいいんだろうけど、ここはアダムのお友達ということで。

ヴォーカルのテイラー・ハンソン(Taylor Hanson)が、一般的には一番の失笑モノなのかもね。いや、一般的にはもう10年以上も前にヒットした「MmmBop☆」なんて忘れられているから、「ハンソン?誰?」ってな感じか。「一般的には」なんて書き方をしているのは、もちろん僕的にはハンソンは大のお気に入りグループだったから。奇特な読者様はこの記事の6・7曲目のところを参照。その6曲目を声変わり中のハスキーヴォイスで歌っていたお兄ちゃんが、やあしばらく見ない間にすっかり大きくなって、と親戚のおじさん気分。

この3人が意気投合して「バズコックスからナック、チープ・トリックまで」を意識して作ったグループがこのティンテッド・ウィンドウズ(Tinted Windows)。「チープ・トリックのバーニー・カルロス(Bun E. Carlos)みたいに叩けるドラマーはいないものか」と探して、たどり着いたのがバーニー本人、ということらしい。きっとグループ内では彼がほんとにおじさん気分でいることだろう。チープ・トリック全盛期にはテイラーなんてまだ生まれてもいなかったからね。チープ・トリックを知らない奇特な読者様はこちらをどうぞ。10曲目のジャケの右端が彼。

こうして見ると、スマパン以外は少なくとも一度は僕のブログで取り上げてきたバンドばかりだから、この「スーパーグループ」は僕にとってはそれなりに興味の的ではあった。ただ、ニック・ロウやジョン・ハイアットやライ・クーダーという、僕にとってより「スーパー」なメンバーが結成したリトル・ヴィレッジのアルバムがイマイチだったのを始め、こういう所謂スーパーグループってあんまりうまくいったためしがないのも事実。

なので、それほど期待せずに聴いてみた。これを買ったのも、某通販サイトの「○枚買ったら○%引き」の数合わせのためというのが正直なところだったし。おまけに安かったし(上にリンクしたアマゾンでも、輸入盤954円?35分ちょっとしかないとはいえ、11曲も入ったれっきとしたフルアルバムだよ)。

聴いてみた結果が、冒頭三段落目に書いたとおり。これがもう、とにかくかっこいい。ジリジリしたメタリックなギターの音に導かれて始まる、シングル曲「Kind Of A Girl」がオープニング。そこにドカドカドカドカと切り込んでくるバーニーのドラム。ああ、この音が欲しかったんだね、というのがよくわかるよ。

そして、この声!てっきり僕は、ハンソンのアルバムでのテイラーの声は声変わり中だからあんなにハスキーで時折り裏返ったりかすれたりするんだと思ってたけど(そしてそれが理由で、子供なのにあんなにセクシーな歌声になっているんだと)、あの声と歌い方は今もそのまま。全然変わってないよと思って、ハンソンのファーストを聴きかえしてみたら、さすがに声のトーンは随分低くなっていたけれど。

FOW内でのクリスとアダムの作曲分担がどうなっているのかは知らないけど、きっとヴォーカリストでもあるクリスが詞を書いて、アダムが曲を書いているのかもしれない。そして彼がFOWで使わなかったかっこいい曲は全部こっちに持ってきたんじゃないかと思えるぐらい、粒揃いのポップでキャッチーな曲が次から次へと出てくる。11曲中、7曲が彼の作で、2曲がイハ、1曲がテイラー、最後の1曲がテイラーとアダムの共作なんだけど、アダムが作曲した曲のクオリティーがどう聴いてもダントツに高い。

安いと思って輸入盤買ったけど、こうなってくると日本盤に入ってるボートラも気になるな。だれかにこれを売りつけて、そっちに買いなおそうかな。ちょっと誰か、マイスペースで試聴してみて、気に入ったら連絡ちょうだい。

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2009年05月30日

軽めの呪術 - Winterpills

Central Chambers Vinyl.jpg Winterpills 『Central Chambers』

仲間内では皆に知れ渡っているほど大変なことがあったという友達。様子を見がてら心配して会いに行ったら、これが意外なほどに元気でちょっと拍子抜けしてしまった。だけど、話がふと途切れたときに見せる彼の表情が覆っている、その下にある想像もできないほど深い悲しみを垣間見る瞬間。

アルバム冒頭で爪弾かれるアコースティックギターの弦。頻繁に静から動へと移り変わるのに、決して激昂することのない演奏。時折り添えられる、壊れた機械が立てるような電子音。ベトナムでフィールドレコーディングしたという雑踏の音。遠くで鳴っているようなピアノ。

二つの声。どこまでも静かに、淡々とうたう。キーはわりと高いのに耳に心地良く馴染む女性ボーカル。時折り使うファルセットがシアウォーターのジョナサン・メイバーグを思い起こさせる男性ボーカル。彼の書く悲しげなメロディーラインが余計にそう思わせるのかもしれない。

同じフレーズが一曲の中で何度も何度もマントラのように繰り返される。あるいは、一つの短い文章が少しずつ形を変えて歌われる。以前、確かブルース・スプリングスティーンについて書いた記事で、同じ言葉のリフレインが多いのは嫌だと書いたけれど、どういうわけかこのアルバムではそれが全く気にならない。むしろ、ちょっと軽めの呪術に掛けられてしまったかのように聴き入ってしまう。

昨年10月に発売になった、アメリカはマサチューセッツの5人組、ウィンターピルズの3枚目のアルバムが、どうしてそんなことになったのかはわからないけど、今年の1月になって、装丁を大きく変えて、ボーナストラックを1曲追加した上で、LPで発売された。ちなみにCD版は最初のままのジャケットと曲順で、今でも普通に流通している。

Central Chambers CD.jpg Winterpills 『Central Chambers』

一番上に載せた、雪で形作った指先とハートというモチーフは、それはそれでとても綺麗なんだけど、ちょっとロマンチックすぎるかなと僕には思えてしまう。古い建物の上に尾を引く飛行機雲という、オリジナルのCDのジャケ、更に言えば、それを白黒にした上でトリミングを大胆に変えた今回のLPの内袋の写真が、このアルバムの音を最も端的に表しているように思える。

Central Chambers Inner.JPG

LP用に新たにマスタリングされた音は、それぞれの楽器の音がとても立体的に構成されたように聴こえる。もちろん高音質MP3ダウンロード用のコードが付いているから、LPを聴ける環境にあって、iPodやウォークマンでも聴きたいという人は迷わずこちらを選べばいい。裏ジャケの、ぴんと張られた(ちょっとくたびれた)荒縄を包み込むように積もった綿毛のような雪の写真も雰囲気あるし。この人たちのビジュアルセンス、すごくいいね。

ビジュアルセンスのよさを再確認できる素敵なPVも観られる彼らのマイスペースのサイドバーにある、「影響を受けた音楽」の欄。リストの最初にあるのがイノセンス・ミッションだというのに納得。ちなみに、その下には「作家」の欄もあって、最初に書いてある名前は、ムラカミ。そして、「映画」(最初はベルイマンの「野いちご」)の下に続く「その他」の欄にはこう書いてある。

  睡眠不足
  死への恐怖
  郷愁
  幻想
  廃墟

イノセンス・ミッションについてはこのブログに書いたことはないけど、そんなの説明しだすとまた長くなるので省略して、それと村上春樹とイングマール・ベルイマンと睡眠不足と死への恐怖と(以下略)とをよく混ぜ合わせて作られた、そういう音。早く最初の2枚も手に入れないと。
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2009年04月05日

354/400 - Glenn Tilbrook

Aussie P.jpg Glenn Tilbrook 『Aussie P』

そういえばあのEPが出たとき、買わなくちゃなんて思ってたのに、どういうわけかスルーしてたんだよね。気でも狂ってたのかな、僕は。

そう書いたのは1月17日の記事。グレン・ティルブルック京都公演レポート。グレンが歌う「Private Number」を初めて聴いたときに、自分が買いそびれていた限定CDにその曲が収められていることを知った。

東京に帰ってすぐにイーベイでアラート設定をしたんだけど、そう簡単に出てくるブツじゃない。なにしろ世界中に400枚しか存在しないCD。それを知ってるファンはまず手放すことはないだろうから。まあ、気長に待ってればいいや。一刻を争って聴かないといけないものでもないし。

通知メールは意外なほど早く届いた。あれは2月の末だったかな。開始価格はUS$9.99。オークション終了はそれから約一週間後。

普段ネットオークションでCDとかを買うときには、大体自分の頭の中で上限価格を設定して臨むよね。たまに熱くなってその上限をオーバーすることもあるけど。あとはその価格で入札するタイミング。最後まで競りそうなものは相手の入札価格を推定しながらぎりぎりまで粘ったりとか。イーベイは欧米からの出品が多いから、終了時刻が日本の深夜とか明け方になることが多くって、最後に競り負けることもよくある。

今回僕が決めた上限価格は、なし。何ドルまで上がっても絶対に買う。これを逃すと次はいつ出るかわからないしね。とはいえ、そうそう早い時期から高い金額を入れると、競合相手に手を読まれるから、入札するタイミングには細心の注意を払って。いくらでも出すつもりとはいえ、安ければそれにこしたことはないし。

運が良かったことに、今回の出品者はオーストラリア在住。向こうの夜の終了時刻が、ちょうどこっちの夕方(しかも週末)。最後は秒刻みで相手の出方を見られる。

終了時刻のかなり直前まで“普通の”CDの値段だった入札価格は、終了前日あたりからいきなり数十倍に跳ね上がり、最後はほんとに数秒差、最後にお互いが出し合った最高額の差が僅か2ドルという接戦の末、落札することができた。

具体的な金額は書かないけど、これは僕がこれまで一枚のCDに払った最高額。記録によると、それより数千円高く払ったこともあるけど、それは9枚組のCDボックスセットだったから。そういうボックスセット類を除けば、これまでの最高額は、これもオークションで手に入れたスクリッティ・ポリッティの『4 A Sides』という12インチシングル。あれも僕はリアルタイムでたまたま買い逃してて、何年も経ってから“上限価格なし”ポリシーで買ったんだった。皆さん、将来希少価値がつきそうなものは、迷わず買っておきましょう。まあ、そうやって買ったものの、中古屋でわんさか叩き売られてるようなのもよくあるんだけどね。

肝心のCDの話に移ろう。届いてみたら、スリップケースの裏側に手書きのシリアルナンバーが。354/400。その具体的な番号が、自分以外にこれを持ってる人が世界中にあと399人しかいないんだと実感させてくれる。CDもスリップケースも、お世辞にもミントといえるようなコンディションじゃないけど、コピーしたCD-R盤とかじゃないのを確認して、一安心。再生に問題のあるほどの汚れでもなかったし。

全7曲入りで、2曲目を除いて全てオーストラリアでのライヴ録音。1曲目が、京都で聴いた「Private Number」。ロックウィズ(Rockwiz)という、地元テレビのクイズ番組が企画した『Rockwiz Duets』というCD向けに録音されたものらしい(一応リンクは貼ってみたものの、どうも廃盤っぽいね)。デュエット相手のリンダ・ブル(Linda Bull)は、その番組のパーソナリティーぽい人なのかな。けっこうソウルフルに歌ってて、グレンとの掛け合いもきまってるよ。

調べてみると、この曲は、ジュディ・クレイ&ウィリアム・ベル(Judy Clay & William Bell)の68年の小ヒット。作者の「Jones/Bell」の片側って、ブッカー・T・ジョーンズだね。ちなみに、一昨年再発された『Greasy Truckers Party』に、オリジナルの5曲に10曲も追加されたブリンズリー・シュウォーツ(Brinsley Schwarz)のライヴ演奏が収録されていて、若き日のニック・ロウ(Nick Lowe)が歌う同曲を聴くことができるよ。もともと貴重盤のわりにブリンズリー比率が少なくて買うのを躊躇していたニック・ロウ・ファンは、この拡大版を是非どうぞ。

Greasy Truckers Party.jpg 『Greasy Truckers Party』

2曲目は、『Transatrantic Ping Pong』からの「One For The Road」。オリジナルとは違って、バックを務めるのはフラッファーズ。オリジナルよりもテンポを上げて、スティーヴンのオルガンソロも軽快でいい感じ。この曲だけがグラスゴーでの録音。05年12月2日。その年のオーストラリア公演はソロだったからね。

3曲目以降は全て、05年9月16日のシドニーでのソロ公演から。「Third Rail」を歌う前の観客とのやりとりが可笑しい。The Basementという会場の名前から察するに、小さなハコなんだろうね。口々にリクエストの曲名を叫ぶ観客。「Tempted!」「Cool For Cats!」(どこにでもこれをリクエストする奴がいるんだね)グレンが「ははは、それはありえないよ」だって。

「Third Rail!」とリクエストがあり、「あぁ、今のはきっと僕のレコード会社に雇われた人だね。さもないとこんな曲、誰も聴きたいはずがないから」と笑わせて、あの(日本公演で何度も演奏されたのを聴いた人には懐かしい)アコギのイントロに入る。

4曲目「Hostage」の12弦ギターのイントロも懐かしいね。この曲とか、この2曲後の「By The Light Of The Cash Machine」とか、隠れた名曲的なのが入っていなければ、僕はこのEPにここまでこだわることはなかったかも。

5曲目の「Elephant Ride」も今回の来日公演で頻繁に演奏してたね。「この曲はブライアン・ウィルソンの影響を受けて書いたんだ。今聴き返してみると、どこにそんな影響があるのかさっぱりわからないけど、とにかくあの当時はそう思っていたんだ」と、相変わらずの自虐的なジョークで紹介。そういえば、07年の来日公演のとき、ブライアン・ウィルソンのSmileシャツを着ていったんだった(そのときの写真)。

6曲目「By The Light Of The Cash Machine」は「ロン・セクスミス(Ron Sexsmith)と」、7曲目「Untouchable」は「クリス・ブレイド(Chris Braide)と」それぞれ一緒に書いた曲だと紹介。特にクリスのことは、「素晴らしいソングライターだ。一緒に曲を書くことができて嬉しい」なんて言ってるね。

「Untouchable」はこの日の本編ラスト前だったようで、演奏終了後に「今日は本当にありがとう。あと一曲でお別れだ。次の曲は…」という台詞にエコーがかけられてこのCDは終わる。このCD、それぞれの曲間もブツ切りだし、録音状態もバラバラで、いかにも速成のプロモーション用といった風情なのに、この部分だけがそんな風に編集されているのがちょっと意外。

という感じで、わずか20分強のCDは終了。物足りないのでまた最初に戻って聴き直す。この感覚、なんだっけ。あ、そうか、つい数ヶ月前に『Pandemonium Ensues』を何度も何度も繰り返して聴いてたのと同じだ。ほんとにクセになるね、この人の歌は。
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2009年01月25日

中毒 - Glenn Tilbrook & The Fluffers

The English translation follows the Japanese text.

Pandemonium Ensues.jpg 
Glenn Tilbrook And The Fluffers 『Pandemonium Ensues』

あれからもう一週間も経つというのに、気持ちが全然元に戻らない。典型的な祭りの後症候群。さすがに日常生活ではいつまでも呆けているわけにもいかないので仕事は渋々やっているが、音楽に関してはからっきしだ。グレンのライヴの記事に書いたとおり、吉祥寺での三夜連続ライヴのときには、毎日ちょっと早めに出かけて、吉祥寺中のCD屋をうろついて、10枚のCDを買ったんだけど、あれから約二週間、その10枚は机の上に放置されたままだ。何枚かは聴いてみたんだけど、ちっとも耳に入ってこない。

僕は自分でわりといろんな種類の音楽を聴く方だと思っているし、一枚のアルバムを聴いた後で全然違ったものを続けて聴くことには全く抵抗がない。というか、むしろ似たようなものばかり続けて聴くことの方が稀かも。ましてや、同じアルバムを何度もリピートして聴くことなんて、まずしない。飽きるからね。

そんな僕が、自分でも信じられないことに、このグレン・ティルブルックのニュー・アルバム『Pandemonium Ensues』を、最初に手に入れた日以来何度も何度も繰り返して聴いている。平均して少なくとも一日2回は聴いているから、もうかれこれ30回以上は聴いているはずだ。もう隅々までどこにどんな音が入っているかも覚えたぐらい。でも全然飽きない。「Too Close To The Sun」の最後の音が消えた瞬間、また再生ボタンを押している。こんなに中毒性の高いアルバムだとは思わなかった。

そんなわけで、今の僕には他のアーティストのことを書くのは到底無理。楽しかったグレン祭りの締めくくりとして、このアルバムについて書くことにしよう。

04年の『Transatrantic Ping Pong』以来、4年以上も待たされた新作。その間には、僕にとって最初のグレン祭りとなった06年の来日もあったし、デモ集が2枚も出たし、スクイーズのライヴ盤やデラックス盤も各種出ていたから、実はそれほど待たされたという感じはしていなかったことは事実。

オフィシャルには2月9日発売ということだけど、今回の来日に合わせてミュージックプラントが先行輸入。ライヴ会場で世界に先駆けての発売ということになったのは、日本のファンとしては嬉しいニュースだった。


Incomplete.jpgスクイーズ解散後最初のソロアルバム『The Incomplete』は、決して悪いアルバムというわけではなかった。リードシングルの「This Is Where You Ain't」は好きな曲だし、UK盤のボーナスディスクに収められた何曲かのアコースティック・ヴァージョンなんて、今聴いても新鮮だ。だけど、僕にとっては、あれは『Cafe Bleu』や『Welcome To The Beautiful South』を最初に聴いたときと同じ気持ちにさせられたアルバムだった。大好きなバンドが解散したあとの、中心人物が出した最初のアルバム。いつもの声、耳に馴染んだメロディーライン、でも何かが違う。『The Incomplete』の場合は特に、大きな欠落感がつきまとっていた。それは、クリス・ディフォードの声。

TPP.jpg『Transatrantic Ping Pong』には、大好きな曲がいくつも詰まっていた。「Neptune」、「Hostage」、「Reinventing The Wheel」などは、そのエヴァーグリーンなメロディーが今回の来日公演でも聴けたし(最後のやつは最初のヴァースだけだったけど)。もうこの頃には、グレンのアルバムにクリスの声が入っていないことにも慣れてきたし、純粋に大好きなアルバムと言えた。記録をひっくり返してみたら、04年のベスト10の一枚に僕はこのアルバムを選んでるね(ちなみに、クリスの『I Didn't Get Where I Am』も同じリストに入ってる)。


それらのアルバムにも参加していたメンバーがフラッファーズと名乗り、グレン・ティルブルック・アンド・ザ・フラッファーズ名義で初めて出たのが今回のアルバム。最初に聴いたときに前の2枚と音の感触が全然違うなと思ったら、今回のはわずかなオーバーダビングを除いては、ほとんどスタジオでの一発録音ということ。なるほど、それでこのライヴ感か。

さっき中毒性の高いアルバムと書いたけど、おそらく中毒性という意味では、アルバム一曲目「Best Of Times」が一番かもしれない。最初に聴いたときには、なんだか地味な曲と思ったんだけど、やがてスティーヴン・ラージの弾くアコーディオンの音が耳について離れなくなる。

ライヴのときのグレンのMCによると、フェイセズ、特にロニー・レインに影響を受けて書いたというこの曲、言われてみれば確かにこのアルバムとかに雰囲気似てるかも。

Anymore For Anymore.jpg 
Ronnie Lane & Slim Chance 『Anymore For Anymore』

僕はロニーのマニアックなファンという訳ではないので、アルバムも何枚かしか持っていないんだけど、グレンが歳を重ねてこういう感じの音を目指したいと思うようになったのはよくわかるな。ゆるいんだけど、かったるくない。ふくよかでアーシーな音。そんな音にぴったりの、泣かせる歌詞。地味な曲なんて誰が言った?(笑)。名曲。

続く「Through The Net」は、1月11日のライヴ終了後、最後まで会場に残っていた数十人にとっては、このアルバムの中で一番愛着を持つ羽目になった一曲だろう。グレン、早くプロモーションビデオをYouTubeにアップしてくれないかな。

「♪ララララララ」ジャン!とCDの音に合わせて脳内でコーラスのエンディングを終えたら、次に聴こえてくるのはこのアルバムで一番の異色曲。ベースのルーシー・ショウがリードボーカルを取る「Product」だ。スクイーズ時代もアルバム中何曲かは他のメンバーにリードボーカルを任せることはあったけど、女性ボーカルが入っていたことはもちろんないので、なんだか妙な感じ。

ライヴのMCで、これはとある女優をモデルにした曲だということを話していたけど、そうか、このルーシーのやたらとフラットな歌い方も、その女優の真似をしているんだね。ジョークとしては面白いけど、グレンが歌うこの曲を聴いてしまった身としては、やっぱりちょっと物足りなく思ってしまうよ。ちなみに、ここまでの3曲だけが、今回の来日公演7日間全ての会場で歌われている。最初の2曲はともかく、グレンこの曲そんなにお気に入りなんだね。わかったよ、もう金輪際この曲の悪口言わないから(笑)

続いては、ライヴでは“パンク”だと説明していた「Slaughtered Artist」。なるほど、“パンク/ニューウェーヴ”な頃のスクイーズみたい。ジュールス・ホランド風のピアノがちっともパンクじゃないけどね(だからあの頃のスクイーズも全然パンクなんかじゃなかったのに)。曲のエンディングで聞こえてくる笑い声から察するに、これはグレン流のパンクのパロディーのつもりなんだろうね。さっきの60年代風フレンチポップのパロディーに引き続いての。

グレンのマイスペースによると、2月2日にダウンロードオンリーでシングルカットされるだけなのに格好いいジャケまで用意されている「Still」。ウーリッツァーとストリングスが心地良いミディアム・テンポ。来日公演では大半の会場でアンコールで演奏したことを考えると、彼にとっては(他に主にアンコールで演奏した)「Black Coffee In Bed」や「Another Nail In My Heart」級の曲ということなのかも。それもうなずけるけどね。

東京公演最終日に、サインをもらいながらグレンにリクエストした「Relentless Pursuit」(結局最終日まで一回も演らなかったけど)。この華やかなコーラスを取り払ったら一体この曲がどういう風に聴こえるのか、興味あったんだけどな。ティルブルック・マジック満載の歌メロは、きっとアコギ一本の演奏でも素晴らしかったはず。

もしこのアルバムがLPでリリースされたとしたらA面のラストに当たる「Interest & Love」は、(きっと今はジョニー・デップ夫人としての方が通りがよくなったはずの)ヴァネッサ・パラディとのデュエット。とろけるような甘い声だよね。今回は名古屋だけで演奏した模様。聴いてみたかったな。

すると、B面の頭をクールなピアノで開けるのは、前回の来日公演で、グレンが一人で録音したバンドの音源をバックに既に歌われていた「Melancholy Emotion」。前二作ではよく一緒に作曲していたクリス・ブレイドとの共作。クリスは今回のアルバムではこの曲と「Little Ships」だけにピアノで参加。フラッファーズにも参加しなかったし、もうあんまり仲良くなくなったのかな。

「Relentless Pursuit」をリクエストしたときに、グレンが「She Makes Meだっけ?」とボケた訳がわかった。このアルバムでその二曲が、グレンとドラマーのサイモン・ハンソンとの共作だったからだ、きっと。グレンの頭の中では、「あれとあれはサイモンが歌詞を書いた曲」ということになってるんだね。リクエストしても歌ってくれなかったのは、さては、歌詞覚えてないな(笑)

東京の三日間は欠かさず演奏してたのに、そのうち演らなくなった「Happy Disposition」。あ、これもクリス・ブレイドとの共作か。東京初日に「ロンドンに帰ってきた」というこの曲の歌詞を聴いて、「ああ、そうだ、この人はロンドンからはるばる来たんだった」と当たり前のことを思ったことを思い出した。大阪公演で隣に座っていたMさんによると、「Helter Skelter」に構造が似ている曲。なるほどね。

アルバム中最もポップなメロディーの「Black Sheep」。トランペットなんかも使ったりして、気持ちいいね。お、手拍子メンバーの中にはルイス・ティルブルック君(息子)もいるぞ。童謡の「Baa Baa Black Sheep」のラインをトゥワンギーなギターで弾いたソロパートもお茶目。

一転して、ワウギターのイントロがいかす、性急な「Beachland Ballroom」。このあたりの緩急のつけ方がいいね。ところで、さっきの「Black Sheep」のクレジットが「Written by Stephen Large and Glenn Tilbrook」。この曲が「Written by Glenn Tilbrook and Stephen Large」。どっちかが、スティーヴンが曲を書いてグレンが詞を書いてるってことなのかな。普通は作詞家が先?ということは、この曲を作曲したのはスティーヴンってことかな。

目立たないけれど、僕にとってはこのアルバムのもう一つのハイライトと言っても過言ではないぐらいに好きな「Little Ships」。あ、これもクリス・ブレイドとの共作だ。仲良くないなんて取り越し苦労だね。それにしても、なんでこんないい曲を今回の来日公演では一度も演らなかったんだろう。

I have loved you from your first breath and always will till my last

僕のヘタクソな訳で濁したくない、こんな素敵な歌詞。前々から子供達への愛情を隠さなかったグレンだけど、特に今回のアルバムではいたるところにこうした感情が描かれている。

その曲がしっとりとフェードアウトするところに宇宙っぽいムーグの音が被さってきて、前作の「One For The Road」に引き続いてのインストゥルメンタルのエンディング「Too Close To The Sun」になる。多分、一般的にはこのアルバムの話題作りに一番手っ取り早いと思われるのが、この曲にジョニー・デップがナレーションで参加しているということだろう。実際、ジョニーのファンサイトとかでこのアルバムが結構な話題になっているとのこと。彼がスクイーズのファンだということで実現したゲスト参加だそうだ。いい趣味してるね、ジョニー。

それにしても、てっきりアルバムのリードシングルだと思っていた、11月29日の記事で取り上げた『Binga Bong!』。収録曲4曲ともこのアルバムには入らなかったどころか、今回の来日公演でも一回も演奏してないよ。一体あれは何だったんだ。アルバム先行アウトテイク集か?


ふぅ、いつになく全曲解説なんてしてしまったよ(ろくに解説になってないのもあるけど)。それぐらい、捨て曲なしだということ。今回グレンのライヴに来ていた人たちは皆もう会場で買って聴いているだろうし、同じように思ってくれているんじゃないかな。

残念ながらライヴには行けなかった人、一応上にアマゾンのアフィリエイトを貼っておいたけど、2月の発売まで待ちきれなければ、ミュージックプラントのサイトで通信販売を始めたようだから、そちらへどうぞ。

ミュージックプラントからディスクユニオンにもディストリビュートされたらしく、今日久し振りに出かけた新宿店でも店に入ってすぐのところにディスプレイされてたよ。クリスのアルバムと並んでね。余談だけど、ウォークマンで「Melancholy Emotion」まで聴いて店に入ったら、BGMで「She Makes Me」がかかっていたのにはちょっとびっくりしたよ。

ユニオンでは中古盤セールをやっていて、いつものように目ぼしいものを手当たり次第に手に取り始めたんだけど、欲しいと思っていたはずのどのCDもなんだかそんなに聴きたくなくって、結局全部棚に戻してきてしまった。で、ウォークマンで「She Makes Me」からの続きを聴きながら帰ってきたよ。

2009年の10日目にこのアルバムに出会ってからもう15日経ったけど、今のところ他のアーティストのことなんて全く考えられないぐらいに、このアルバムは僕の頭の中を占領している。果たしてこの先ディフェンディング・チャンピオンとして、今年あと残り340日を勝ち残って、来年初頭にこのブログの「2009年個人的ベストアルバム」という題名の記事の最後にこのちょっと『Pet Sounds』風のジャケ写が載ることになるんだろうか。今の僕には、それ以外の可能性を冷静に考えることなんてできないよ。



Addictive - Glenn Tilbrook & The Fluffers

Pandemonium Ensues.jpg 
Glenn Tilbrook And The Fluffers 『Pandemonium Ensues』

It's been a week since then, but I'm still struggling to get back to the real life. A typical after-the-ball syndrome. Started to work reluctantly just because I had to, but my musical life still needs time to recover. As I wrote in my articles about Glenn's gigs, I went to Kichijoji a little earlier to hang around all the CD shops there in those 3 consecutive days. I bought 10 CDs there beside Glenn's one. Almost two weeks now, those 10 CDs are just left on my desk, mostly unopened. I've tried to listen to some of them, but they didn't really get into me.

I think I'm the kind of person who listens to various kinds of music. I have no hesitation to listen to a totally different type of music one after another. Rather I would say it's rare for me to listen to similar type of music continuously. Moreover, it's totally not my habit to repeat the same album. I'd just get bored.

To my surprise, I've been repeating this new album by Glenn Tilbrook called Pandemonium Ensues over and over again since the first day I get it. In average twice a day at least, so it's been more than 30 times I guess. I can recall every bit of sound in the whole album now. I don't get bored at all. The moment the last sound of Too Close To The Sun fades out, I find myself to push the play button. What an addictive album.

So, it's impossible for me to write about any other artists now. As the closer of the fun-filled GLENNFEST, I write about this album.

This new album is released after the 4 years' blank since Transatrantic Ping Pong in '04. However, during the 4 years, there were my first GLENNFEST in '06, two demo albums, Squeeze's live albums & deluxe editions, etc. To be frank, 4 years wasn't so much long for me.

This album will officially be released on 9th Feb in UK, but in conjunction with this Japan tour, The Music Plant imported some bunch especially for us prior to the official release. Lucky to be the fans in Japan.


Incomplete.jpgThe first solo album since Squeeze split, The Incomplete, wasn't a bad album. I like This Is Where You Ain't. And some acoustic tracks in the UK bonus disc still sound fresh to me. However, that album reminded me of Cafe Bleu or Welcome To The Beautiful South. The very first albums that the main songwriters released after my favourite bands broke up. Same voices, familiar melodies, but something was different. Especially for The Incomplete, it lacked the voice of Chris Difford.

TPP.jpgThere were plenty of my favourite tunes in Transatrantic Ping Pong. Neptune, Hostage or Reinventing The Wheel, to name a few. We could listen to those evergreen melodies in this time's gigs (not sure why Glenn stopped playing Reinventing The Wheel after the first verse on the second night in Tokyo though). By then I already got used to Glenn's voice not accompanied by Chris'. I purely loved the album. As I checked my record, I've chosen this album as one of my top 10 in '04 (together with Chris' I Didn't Get Where I Am).

Some members in those two albums got together as The Fluffers, and released this new album under the name of Glenn Tilbrook and The Fluffers, not Glenn's solo for the first time ever. With the first listen, it sounded very different from the previous two. According to the album credit, this album was recorded live, with some minor overdubs. Hence this live-feeling.

I've just wrote this album was addictive. Perhaps that addiction is mainly caused by the album opener Best Of Times. When I listened to it for the first time, I thought it just a plain song. But the more you listen to it, the more Stephen Large's accordion starts to stick into your ears.

According to Glenn's MC at the gig, he wrote this song with the influence by Faces, especially Ronnie Lane. I tend to agree the atmosphere of the song is kinda similar to this album of him.

Anymore For Anymore.jpg
Ronnie Lane & Slim Chance - Anymore For Anymore

I'm not a hardcore fan of Ronnie and own only a few album of him, but I can understand that Glenn wants to play like this as he gets older. Loose but not dull. Plump and earthy. Sentimental lyrics in line with such abundant sound. Who said this was a plain song?:) A masterpiece.

The next song Through The Net must be the most attached song to some thirty-odd people who stayed after the show on the second night in Tokyo. I'm looking forward to see the video on YouTube.

Lalala lalala, Bang! You finish the song singing the chorus in your head. Then what you hear next is the most unusual song in the album. The bassist Lucy Shaw sings Product. In most of Squeeze's albums the band members took the lead vocals, but of course never a female vocal. Maybe that's why it sounded a bit weird to me.

During the gigs Glenn explained this song is about an actress. Ah, so Lucy mimics the actress and sings in such a flat tone. A good joke, but as I've been listening to Glenn singing this song during the tour, I can't help thinking if Glenn was singing this song in the album too. By the way, only these three songs were played in all the 7 venues during this Japan tour. Not to mention about the first two, but Glenn must be so much fond of this song too. Well, sorry Glenn, I will never complain about this song anymore:)

Next one is explained as "Punk" during the gigs. Slaughtered Artist. Indeed, it sounds like the "Punk / New Wave" era Squeeze. Though the Jools Holland-ish piano doesn't sound like punk at all (hence, Squeeze then wasn't punk at all). Judging by the laughter at the end of the song, Glenn must be imitating Punk by this, just as he imitated 60's French Pop by Product.

According to Glenn's MySpace, the next song Still will be released as the download only single, but the site shows the good-looking CD cover art. A medium tempo tune with the comfortable Wurlitzer and strings sounds. Since he played this song mostly during the encore, this song must be positioned next to Black Coffee In Bed or Another Nail In My Heart for him. I agree with it.

I've requested Glenn to play Relentless Pursuit while I asked for the autograph after the third night in Tokyo (the request was never realized though). I was interested in how this song would be by taking out the flamboyant chorus. This vocal melody filled with the Tilbrook Magic must've sounded special even if it's naked.

If this album is released in vinyl, the following Interest & Love should be the last song of side A. It's the duet with Vanessa Paradis (who nowadays must be more famous as Johnny Depp's partner). An enchanted sweet voice. Glenn sang this only in Nagoya this time. Wish I was there..

Then the side B opener with the cool piano sound is Melancholy Emotion, which Glenn has already played on the last Tokyo tour in '06 with the self-recorded back band sound. Co-written by Chris Blaide, who used to write together with Glenn in the previous albums. This time Chris plays piano only in this song and Little Ships. He didn't join The Fluffers. I wonder if he's not so close to Glenn anymore.

When I requested Relentless Pursuit, Glenn was confused it with She Makes Me. I know why by now. Those two songs are co-written with the drummer Simon Hanson. Glenn must categorize those two as Simon's songs. I know why Glenn didn't sing either of them. I guess he didn't know the lyrics:)

He played Happy Disposition every night in Tokyo, but gradually not playing in the other venues. Oh, this is also co-written with Chris Blaide. I recall when I heard this song for the first time on the first night in Tokyo. Listening to him singing "three months later, we're back in London. We're just at home the other side of the world", I thought "well, this guy has just come all the way from London". Yeah, of course. I also remember my friend sitting next to me in Osaka told me the structure of this song resembled Helter Skelter. Well, you could say that.

The most "pop" song in the album, Black Sheep. Groovy trumpet sound. Ah, one of the hand-clapping members is Louis Tilbrook. A mischievous twangy guitar solo tracing the nursery rhyme Baa Baa Black Sheep.

Changing the mood to the impetuous Beachland Ballroom with the nice Wah guitar. A good variance of the pace from the previous song. By the way, the credit for Black Sheep is Written by Stephen Large and Glenn Tilbrook. And this one is Written by Glenn Tilbrook and Stephen Large. Does that mean Glenn wrote lyrics not the melody of one of the songs? Usually the lyricist first in the credit. So this song (melody) was written by Stephen?

It's not very outstanding, but to me it's another highlight of the album, Little Ships. Well, this is also co-written with Chris Blaide. I was wrong to guess he's not so close anymore. Nevertheless, I can't understand why Glenn hasn't played such a good song at all during the Japan tour.

I have loved you from your first breath and always will till my last

I don't want to ruin such beautiful lyrics with my poor translation (nothing to do with this English article though). Glenn, who hasn't hidden his love and affection to his family, now expresses this kind of deep feeling all over this album.

As the song gracefully fades out, the spacy moog sound kicks in, and it becomes Too Close To The Sun, which again is the instrumental ending tune following One For The Road from the previous album. Probably the easiest way to introduce this new album to anyone is to say Johnny Depp is doing narration in this tune. Actually, I've heard Johnny's fansite has been talking about this album. This guest appearance was realized since Johnny was the Squeeze fan. Good taste, Johnny.

By the way, I have thought it as the album's lead single and picked it up in my article on 29th Nov, but none of the 4 songs are on the album, nor played during Japan tour. Binga Bong! What was that single for? The album's lead out-takes?


Phew, I don't usually explain about all the songs in the album (though I don't actually "explain" about some). To that extent, this album hasn't got any filler. Most of the audience who joined Glenn's Japan tour should've got it, and I think they should feel the same.

For those who are unfortunate enough not to join the tour, I've pasted a link to Amazon's page, but if you can't wait till Feb, you can buy it now at The Music Plant's website.

There must've been some distribution from The Music Plant to Disk Union. I went to Shinjuku store today and found the album was displayed at the entrance, next to Chris Difford's album. A digression. When I walk into the store my Walkman was playing Melancholy Emotion, then I realized the BGM in the store was about to turn to She Makes Me. What a coincidence!

There was a used CD sale going on at Disk Union. As usual, I've grabbed some CDs, but not brought them to the till in the end. All those CDs that I wanted weren't so much attractive to me today. I started play from She Makes Me on my Walkman and headed back home.

I got this album on the 10th day of 2009. It's been 15 days since then. This album occupies my mind so that I can't even think of the other artists. I wonder if this album will be the defending champion through another 340 days. And this Pet Sound-ish cover art will be listed at the end (which means the best) of the article of this blog early next year titled My Top 10 Albums 2009. I can't imagine any other possibility as of now.
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2008年12月26日

唯一無二 - Jeff Hanson

Madam Owl.jpg Jeff Hanson 『Madam Owl』

特異な声は要らない。一昨日の記事にそう書いたばかりだけど。では、素敵なメロディーの、心に染み入るドラマチックな曲を歌うのが、唯一無二の特異な声だとしたらどうだろう。

ジェフ・ハンソン。彼の歌を初めて聴く人は、それを歌っているのが男性だということをにわかには信じられないかもしれない。透き通るような、少女のような歌声。

これだけ素晴らしい曲を書いて、しかもファーストアルバムではピアノ以外の全ての楽器を自分で演奏していたほどの優れたマルチプレイヤーが、この声だけで評価を受けてしまうことは避けたいとは思うんだけれど。

僕はこの歌声しか知らないから、彼の地声が一体どんな風なのかはわからないけれど、写真を見たところごく普通のアメリカ人青年である彼がいきなりこの声で歌いだすのを聴いた人はさぞかし引いたことだろう、なんて余計な心配をしてしまうほどのインパクトはある。

感動的な03年のデビューアルバム『Son』、05年の自らの名前を冠したセカンド(散々NZの中古屋で見かけたこれを何故か僕は未聴)に続く三枚目『Madam Owl』。発売元が一貫してキル・ロック・スターズなのも、彼がことあるごとに故エリオット・スミスと比較される一因なのかも。

確かに、エリオット・スミスを好きな人はきっと彼のことも気に入るとは思うけど、同時に、彼を単なるエリオット・スミス・フォロワーの一人みたいな座に彼を置いておくのはあまりにも勿体無いことだとも思う。それほどの、オリジナリティー。

マルチプレイヤーである彼があえて沢山のゲストを呼んでの、豪華な音作り。クレジットに載っている楽器を読み上げてみると、ギター、ベース、ドラムス、バンジョー、ラップスティール、ピアノ、キーボード、ヴァイオリン、ヴィオラ、チェロ、トランペット、フリューゲルホーン、テナーサックス、トロンボーン、アコーディオン、ソウ(横山ホットブラザースか)。

弾き語りの曲はあくまでもシンプルに。弦や管を加えた曲は、控えめながらもじわじわとドラマチックに盛り上げる。それでいて、あくまでも主人公はこの声。いいプロダクションだね。プロデューサーは、ジェフ本人と、ロバート・バートルソン(Robert Bartleson)という人。この人のことはよく知らない。

マイスペースに載っている4曲が果たして彼を代表する4曲かどうかはともかくとして、興味のある人は聴いてみてほしい。そして、少しでもひっかかるところがあれば、是非このアルバムを手にしみてほしい。決してキワモノじゃない、優れたSSWのアルバム。

地味なジャケの裏側は更にこんなに地味
Madam Owl Back.jpg

虫嫌いな人、ごめん。こないだうちにスキャナー買ったんで、つい嬉しくて何かスキャンしてみたくなっただけ。
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2008年09月15日

黒猫ジャケに夢中 - Akeboshi

Akeboshi.jpg Akeboshi 『Akeboshi』

ガツンときた。

知ってる人には何を今さらなのかもしれないけど、映画「ぐるりのこと」の主題歌を歌っている人がいいよと友達に教えられ、中古屋で見つけたこの3年前のアルバムを聴いて、まずオープニングのピアノの音に打たれた。

ティン・ホイッスルとフィドルの物悲しげな音色が、否応なくケルト・ミュージックを想起させる。ブラシとリムショットを効果的に使った、乾いたドラムの音。柔らかなアコースティック・サウンドと朴訥とした声に、ほんの少しだけ隠し味のように使われたプログラミング。5/8なんていう、複雑なのに気持ちいいリズム。不思議と懐かしい気持ちにさせられるメロディー。

僕がそれを最初に聴いたときの状況も多分に影響していたのかもしれない。先月、短い休暇を取って、高速バスに乗って旅に出たときのことだった。見渡す限りの緑と、ゆっくりと沈む夕陽をぼーっと見ながらこれを聴いていたら、悲しいわけでも感動したわけでもないのに、涙が出そうになった。

なんていうんだろう。子供の頃から胸の奥の方に持っていた敏感な気持ちのかたまりみたいな部分に、大人になるにつれて少しずつ蓄積してしまっていた澱を、栗の渋皮をむくみたいに丁寧に取り除いてもらっているような気持ちにされたんだ。

子供といえば、この1曲目「Wind」は、アニメ番組「NARUTO」のエンディングテーマに使われたんだってね。6年も前の話なのか。その頃マレーシアに住んでいた僕は、近所の日本人の子供達がその番組のことを話していたのは知ってたけど、一緒にビデオを見せてもらっておくんだったな。それにしても、こんな素敵な曲を毎週テレビで聴いて育つ今の子供がうらやましくなるよ。

インディーズ時代に出した3枚のEPからの曲と当時の新曲を再編集した13曲。13曲目の後に収録されたシークレットトラックが、もろにケルト風味のインストゥルメンタル。これがまた、しっとりと滲みる。


Roundabout.jpg Akeboshi 『Roundabout』

あまりに気に入ってしまったので、件の映画の主題歌が入った新しいアルバムもすぐ欲しくなった。6月に発売された初回限定のDVD付がまだなくならないうちに。

よく似たジャケのこちらは、これまでに出たシングルとアルバムからの曲に、上に書いたアルバムからの数曲のライヴ録音を併せて収録した編集アルバム。付属のDVDには、5曲のPVと、去年出たアルバム『Meet Along The Way』作成時のドキュメンタリー・フィルムが収録されている。

これもいいね。メジャー初となったシングル「Rusty Lance」もまた7/8という小気味のいいリズムの曲だし、他の曲とは明らかに世界が違う歌詞の「Yellow Moon」は、井上揚水との共作だった。淡々とした物語が進んでいくような「Perua」もいい(これが映画の主題歌)。

ドキュメンタリー・フィルム「Meet Along The Way」は、北イングランドとアイルランドを旅しながら、途中のパブとかで出合った地元のミュージシャンたちにその場で録音に参加してもらっていく様子を綴ったもの。長すぎない編集が観ていて飽きないし、素晴らしい景色と田舎町の様子が存分に楽しめる。こんなの観てしまったら、そのアルバムも手に入れないわけにはいかないよ。エコ月間は何処へ?(最近こんな終わり方ばっかり)。
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2008年09月06日

待望! - Glenn Tilbrook / Squeeze

またおととしの話になるけど、この記事とかこの記事とかこの記事とかこの記事とかこの記事でさんざん僕が騒いでいたことを憶えている人もいるだろう。その年僕のブログで最も多くの回数取り上げられることになり、彼の一連のコンサートが僕にとって06年の最大の音楽的なイベントとなった、あのグレン・ティルブルックがまた日本にやってくることになった。

日程と公演地は、

  1月10日(土)吉祥寺 Star Pine's Cafe
  1月11日(日)吉祥寺 Star Pine's Cafe
  1月12日(祝)吉祥寺 Star Pine's Cafe
  1月13日(火)横浜 Thumbs Up
  1月15日(木)名古屋 TOKUZO
  1月16日(金)京都 Irish Pub Gnome
  1月17日(土)大阪 Shangri - La

前回は東京だけでの5回公演だったが、今回はなんと横浜、名古屋、京都、大阪も含めた全7回公演。falsoさんも今度は行けるだろうか。

詳細はこちら。今日の午前0時に発売開始になったばかりだから、今ならまだわりと早めの整理番号がゲットできるかも。僕も既に複数日分予約したから、これを読んで行くことにした人とは、どこかの会場で会えるかもね。

彼のライヴがどんなに楽しくて、毎日違う内容だからファンなら何回でも通う価値のあるものだというのは、去年のライヴ評に書いたとおり。

今年の初頭だかに出るという話だった新しいソロアルバムはいまだに完成していないようだから、マテリアル的には2年前から大きな変化はないかもしれないけど、彼自身にはこの2年間に大きな変化があったはず。おそらくソロアルバムのリリースが遅れていることもこれが原因だと思われる、去年7月のスクイーズの再結成だ。

もともと彼がここ数年ずっとソロで演っている理由も、長年のチームメイトだったクリス・ディフォード(Chris Difford)との関係がちょっとぎくしゃくしたからだったということらしいけど、一昨年の東京公演の際にはその場でクリスに電話をするなど、「なんだ、仲いいんじゃない」と思わせてくれる展開もあった。それが、その一年後には、ほぼ10年ぶりとなる再結成につながった。

再結成とはいえ、彼ら二人以外には重要メンバーは戻ってきていないんだけど、まあとにかく僕たちファンにとっては、グレンとクリスが一緒に何かを始めてくれたということが一番の大きなニュース。話によると、新しいスタジオ盤も作り始めていて、来年のリリースになるらしい(グレンのソロは一体いつになるんだろう)。

当初その再結成は、スクイーズの旧譜の再発を記念しての、UKとアメリカだけでの単発の企画だったと思ったんだけど、スクイーズのホームページを見ると、今月になってもまだツアーが続いているね。これを年内ぐらいまで続けてから解散し、1月にはソロで来日、ということなんだろうか。そういうことなら、いっそクリスにも一緒に来日してほしかったとつい欲が出てしまうんだけど…



数年前からのスクイーズの旧譜再発プロジェクトは、6月8日の記事で取り上げた名盤『Argybargy』期のライヴ録音とか、発掘音源が次から次へと出てくるという嬉しい展開になっている。そんな発掘音源がまた最近ひとつ発売されたので、早速入手した。エコ月間だけど、買わないといけないものは買う。

The Complete BBC Sessions.jpg Squeeze 『The Complete BBC Sessions』

メジャー・デビュー前の77年8月から、『Some Fantastic Place』発表後の94年まで、17年間、計8回にわたるBBCでのスタジオ・ライヴ録音の集大成だ。2枚組で全29曲というかなりのボリューム(「Pulling Mussels (From The Shell)」と「Labelled With Love」がメドレーで一曲としてカウントされているので、実際には30曲ある)。

前半には、ファーストアルバム以前のEPからの曲や、当時の未発表曲も何曲か入っており、きっと当時の彼らのコンサートはこんな曲をこんな順番で演奏してたんだろうな、と思わせてくれる。

中盤(89年)は、アコースティック・ギターだけでグレンとクリスが歌う『Frank』期からと過去の名曲。おととしのグレンの東京公演と同じスタイルだけど、やっぱりクリスの声が入ると、長年のファンとしてはちょっと感傷的になるね。

後半(2枚目)は短いスパン(92年〜94年)に4回の録音だから、結構同じ曲がダブって収録されている。「Some Fantastic Place」と「Third Rail」が2回ずつ、「Tempted」が3回。それぞれアコースティックとバンド形式とか、「Tempted」はオリジナル通りポール・キャラック(Paul Carrack)が歌ってるヴァージョンとグレンが歌ってるのとか、微妙に違うアレンジが楽しめる(そういうのを楽しめる人は、ってことだけどね)。

他には、国営放送で放送禁止用語規制が厳しかったのか、ファーストアルバム1曲目「Sex Master」はサビのところの歌詞を“Evil Master”と変えて歌っているとか、

セカンドアルバムではクリスがリード・ヴォーカルをとっている「The Knack」を、そのアルバムの発売前になるこの78年の録音ではグレンが歌っていて、アルバム収録までの間に一体何があったんだろうと想像させてくれたりとか、

アルバム『Frank』が出た直後のはずの89年10月録音の「Melody Motel」(『Frank』収録曲)を、オリジナルとは全然違う歌メロで歌っていてびっくりしたとか、

さっき書いたヴァージョン違い以外にも、オリジナルを聴き込んでいる人ならより深く掘り下げて楽しめる内容になっているよ。ライナーも、マニアックな情報をきっちり網羅しながらも読みやすい(かつ感情のこもった)文章で好感が持てるしね。欲を言えば、『Argybargy』からの曲が「Pulling Mussels」一曲しか入っていないことか。

彼らがBBCに出演した記録を全部は知らないんだけど、録音時期が78年から82年までぽっかり飛んでいて、全盛期の『Cool For Cats』〜『Argybargy』〜『East Side Story』期にBBCに全く出ていないとも思えないので、“The Complete”というタイトルとは裏腹に、その時期の録音がまた後で出たりするのかな。



全7日間の公演のうち、少しでも行ける可能性のある日のチケットはとりあえず全部押さえた。あとは、その週に出張や大きな会議がぶつかったりしないように、てるてる坊主とかわら人形とか作ってお祈りしておくだけ。

東京での会場、Star Pine's Cafeは、昔スラップ・ハッピーの来日公演で一度だけ行ったことがあるけど、なかなかいいハコだった記憶がある。もう今から楽しみでしょうがないよ。また前回みたいにリクエスト箱が用意されるのかな。前回一度も演奏しなかった曲とか、昔のアルバムで忘れ去られている曲とか、シングルB面曲とか、家にあるCDやレコードを全部おさらいして、リクエストしたい曲を今からリストアップしておこう。こんな楽しい気持ちがこれから4ヶ月も続くのか。うれしいな。
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2008年07月20日

クォンタム・リープ - Sonny Landreth

From The Reach..jpg Sonny Landreth 『From The Reach』

相変わらず、どうやってそんな音を出しているのか見当もつかない、この人にしか出せない特異な音。控えめにミュートされながらも緊迫感みなぎる、そんな金属的なギターのリフでアルバムが幕を開ける。性急なスピード感とは裏腹に、最初の歌詞を二度繰り返す12小節形式の古典的なブルーズ・マナーに則った「Blue Tarp Blues」。95年の傑作アルバム『South Of I-10』での「Shooting For The Moon」同様、今回のアルバム冒頭を飾るこの曲にゲスト参加しているのは、元ダイア・ストレイツのマーク・ノフラー(Mark Knopfler)。

このアルバムに収録された曲は、それぞれに参加しているゲスト・ミュージシャンを頭に思い浮かべて書いたとサニー本人が述べているとおり、この曲でのマークの流暢なギター・ソロは、彼の往年の名曲「Sultans Of Swing」を髣髴とさせるものがある。しかも、いくつもあるダイア・ストレイツのライヴ・アルバムでほぼ必ず演奏されているその曲のうち、彼が最高にノッていた時のものに匹敵すると言っても過言ではないだろう。ひとつ違いがあるとすれば、ここで聴かれる芯の太い安定した音は、「Sultans Of Swing」で使われていたストラトキャスターでなく、後年『Brothers In Arms』などで多用していたレスポールを使ったものだろう。それが、サニーのストラトキャスターのやんちゃな音とうまくブレンドしている。

そう、今回のアルバムは、5人のギタリスト(と、一人のピアニスト)をゲストに迎え、他流試合と言っていいようなギター・ソロ合戦が満喫できる超豪華盤。バックを務めるのは、サニーの参加アルバムには欠かせない彼の片腕デイヴィッド・ランソン(David Ranson)がベース、ドラムスは前作あたりから一緒に演っているマイケル・バーチ(Michael Burch)、キーボードに長年の盟友スティーヴ・コン(Steve Conn)の、いわば拡大ゴウナーズ。

この、僕が近年聴いた中でも最高に格好いい曲の殿堂に入れてもいいと思える1曲目だけでも書きたいことはまだまだあるんだけど(ちなみにその殿堂には、今世紀に入ってまだ5曲もエントリーされていないというほど、一応厳しい脳内審査があるんだけどね)、どこまで聴き進んでも駄曲がないこのアルバムを一曲一曲そこまで詳しく書き連ね始めると本当にきりがないのでこの辺にして、次の曲について書こう。

2曲目「When I Still Had You」で、ファンキーなギターのリフをサニーと一緒に演奏しているのは、エリック・クラプトン(Eric Clapton)。特に最近の傾向では、昔の曲でさえ、落ち着いたクールなトーンで余裕を持って弾くことの多い彼だけど、ここでは、自分が“世界で最も過小評価されている”と評したこのギタリストと真っ向から、本当に楽しそうに張り合っている。そして、サニーもまたそれに応えて、自分のギターの6弦全部から全ての音を搾り出すようなワイルドなプレイを披露。キャッチーなこの曲の歌詞の一節から、アルバム・タイトル『From The Reach』が取られている。確かに、曲の良さといい、ゲストの豪華さといい、アルバムを代表するに相応しい曲だ。4月29日の記事で取り上げたオフィシャル・ブートレグでも既にこの曲を演奏しているが(そのときのギタリストはサニー一人)、それを聴いたときにはこの曲がここまでいいとは気づかなかった。エリック・クラプトン参加というのは伊達じゃないね。

エリックは、自身が主催しているクロスロード・ギター・フェスティヴァルに、サニーを含む自分よりも若いギタリストを多数招待して、活躍の場を与えているし、確か一昨年ニュージーランドに来たときのサイド・ギタリストはデレク・トラックスだった。サニーといい、デレクといい、おそらく今の自分よりもテクニック的には上と言っていいようなギタリストと共演することは、彼にとってもリスクの高いことだと思うけれど、きっと、そういう次の世代の有能なギタリストを(自分のネームバリューを使って)どんどん世に送り出し、自分のギター・プレイの刺激にもしようとしているんだろうね。かつて自分がジョン・メイオール道場で同じ経験をしたように。そういうところが、この人凄いと思う。

三曲目「Way Past Long」のゲスト、ロベン・フォード(Robben Ford)には、実は僕はあまり馴染みがない。この前の2曲では、それぞれ優れたヴォーカリストでもあるマークとエリックがサニーのバックでコーラスを決めているが、ロベンはこの曲でサニーとヴォーカル・パートを分け合っている。ヴォーカルの表現力という意味では、ロベンが若干上をいくか。

せっかくゲストにヴォーカル・パートを与えていても、この曲のハイライトもやはりサニーとロベンのギター・バトル。ギター・ソロを演りたいがために、間にやむなくヴォーカルを入れたと言っても過言でないほど延々と果てしなく、二人のギター・テクニックを堪能できる。

「やむなく」が本当だったのかどうか、続く4曲目「The Milky Way Home」は、ゲストにエリック・ジョンソン(Eric Johnson)を迎えての、インストゥルメンタル曲。これが、凄い。このエリック・ジョンソンというありがちな名前の人も僕はあまりよく知らなかったんだけど、名前で検索してみたら、見たことのあるジャケが出てきた。ジョー・サトリアーニ、スティーヴ・ヴァイという、僕にとってはバリバリのメタルの人たちと3人で、G3というユニットを組んで、ライヴ・アルバムを発表していた人だ。この人自身がメタル畑出身なのかどうかは知らないけど、そのバカテク二人に混じってトリオを組むような人だから、きっと凄いテクニシャンなんだろうね。

この「The Milky Way Home」も前出のライヴ・ブートレグで演奏されていたけど、このスタジオ盤での聴きものは、当然サニーとエリックのギターの掛け合い。左チャネルのサニーの引きずるようなスライド、右チャネルのエリックの滑らかなエレキ、その丁々発止が気持ちいい。曲の途中、2〜20小節ずつ交互にソロを弾き合う場面がずっと続いていて、それを聴いているだけでもかなりスリリングなんだけど、中で一箇所、小節の途中でサニーが弾いているフレーズをそのままエリックが引き継ぐ箇所があって、これは相当ぞくっとくるよ。曲自体も、「天の川を渡る帰り道」という壮大なタイトルに負けないスケールの大きな佳曲。

続く5曲目「Storm Of Worry」は、打って変わってベタベタのブルーズ(とはいえ、プロデュースのせいか、音的には結構からっとした仕上がり)。ゲスト・ギタリストは再びエリック・クラプトン。もう、エリックもサニーもこういうブルーズ大好きだから、二人とも心ゆくまで弾き合っているよ。ところで、サニーのヴォーカルって、ブルーズ向きの塩昆布みたいなのに、ちょっと噛むと甘味が出てくるような、絶妙な味付けのいい声だなと思う。こういうブルーズでも、しっかりコブシをきかせて歌っているんだけど、苦みばしったところがまったくないというか。

ここまで全て、サニーのギターが左チャネル、ゲストのギターが右チャネルで来たのだが、次の「Howlin' Moon」でサニーのギターが右に移る。代わって左チャネルでいぶし銀のようなピアノの音を鳴らしているのが、ドクター・ジョン(Dr. John)。彼も95年の『South Of I-10』に参加して、「Mojo Boogie」という名演を残しているんだけど、どうやらこの「Howlin' Moon」はスタジオ盤としては前作にあたる『The Road We're On』を作っていたときにデモ録音されたのがきっかけだそうだ。「Mojo Boogie」同様、ドクター・ジョンのピアノとヴォーカルがなければ成立しないような曲。この曲にはバック・ヴォーカルでジミー・バフェットも参加しているんだけど、流石にドクターの後ろでは立場がない。

ふう、これでやっとアルバム半分か。ちょっとペース上げようかな。もうすでによっぽど興味のある人以外には誰も読んでいないだろうことはわかってるけど、曲解説以外にも書きたいこともあるから、さすがにこの調子だと今日中に書き終えられるかどうかわからないしね。

7曲目「The Goin' On」のゲスト・ギタリスト兼ヴォーカリストは、ヴィンス・ギル(Vince Gill)。彼のことも、僕は名前しか知らなかった。これはいかにもサニーらしい曲。もろニュー・オーリンズ風味の「Howlin' Moon」の直後だから、やけにさわやかに聴こえる。ヴィンスのヴォーカルがそうさせているのかもしれないけれど。

8曲目「Let It Fly」には、ゲスト奏者はなし。バック・ヴォーカルにナディーラ・シャクール(Nadirah Shakoor)という女性。ブックレットのこの曲の見開き対面ページに載っている、地平線と雲の写真のように、大らかなギターのイントロが心地良い曲。

アルバム終盤、早歩きペースのブルーズ曲「Blue Angel」も、先述のライヴ・ブートレッグで演奏されていた中の一曲。ゲストは、ロベン・フォードがギター、ヴィンス・ギルがバック・ヴォーカル。

その曲に続いて、急に何かに急き立てられたように突入するのが、このアルバム2曲目のインスト「Uberesso」。これもゲストはなし。先述したエリック・クラプトン主催のクロスロード・ギター・フェスティヴァルの07年度DVDでオープニングを飾っている曲だ。ちょっとこの記事も文字ばかりになってきたから、YouTubeにアップされているそのビデオでも貼り付けてみようかな。ここまで僕が延々書いてきた彼のプレイの凄さがどんなものなのか、これを見ればわかるから。



CDの許容範囲いっぱいに70分以上も詰め込むこともなく、かといって最近ありがちなSSWのアルバムのように30分強であっさりと終わってしまうというわけでもない、昔ながらのアルバムらしい46分半という程良いサイズのこのCDの最後を締めくくるのは、これまたゲスト・ギタリストなし(バック・ヴォーカルはヴィンス・ギル)でしっとりと演奏される「Universe」。僕のお気に入りの曲である『South Of I-10』ラストの「Great Gulf Wind」にも勝るとも劣らない名曲だ(あそこまでブラスが入ったりリプライズが付いたりといった仕掛けはないが)。最後のギターの一音、そしてその余韻までが、いつまでも耳に残る。“貫禄”という言葉が脳裏に浮かぶ。


近年の彼のアルバム同様、デジパック仕様のジャケットに、20ページに及ぶ丁寧な作りのブックレットが封入されている。上に載せたアルバム・カバー共々、そのブックレットにふんだんに使われている、実に味わい深い写真を提供しているのは、ジャック・スペンサー(Jack Spencer)という写真家。単純にセピア色という言葉では形容できないその不思議な色世界、彼のHPでも存分に堪能できるよ。興味がある人は是非見てみて。

さっき、アルバム・タイトル『From The Reach』は、「When I Still Had You」の歌詞の一節から取られたと書いたが、実はこのアルバムのキーワードになっているのが、“Reach”という単語。アルバム後半、「Let It Fly」、「Universe」といった曲にも、繰り返し登場する。サニー自身の言葉を借りると、こうだ。

俺が歌詞を書くときはね、流れに任せて、何が頭に浮かんでくるかを待つんよ。今回はその“Reach”っちゅう単語が繰り返し浮かんできた。“到着する”っていうそのままの意味もあるけど、“広がり”っていうことも意味してるよね。見渡す限りの空とか、砂漠とか、水。そう、水の流れとか、水域とかね。海員用語で“風向き”っていう意味もある。そういう言葉全部が、このアルバムのテーマとしてしっくり来ると思ったんや。俺にとってこのタイトルは、曲作りの過程からこのプロジェクト全体に至るまでをつなぐ糸みたいなもんやね。俺がここに参加してる素晴らしいアーティスト達に手を伸ばして(“reached out”)、それでできたのが、今あんたが聴いてるこのアルバムちゅうわけや。

最近のサニーのアルバムは全て日本発売が見送られていたが、なんと今作はバッファロー・レコードという鎌倉を拠点とするインディーズ(?)から日本盤が発売された。快挙じゃないか。申し訳ないが、ボートラが入っているわけでもなく、アメリカでの発売(5月末)から一月遅れの6月25日発売まで待てなかったので、僕はUS盤を買ってしまったんだけど(それから約1.5ヶ月、タマス・ウェルズ症候群に陥っていた時期を除いて、一日2回ずつ、合計で既に50回は聴き倒したと思うから、この長文レビューに免じて許してくれるよね)、もしこの記事を読んで興味を持ってくれた人は、是非日本盤を買って、こういう良心的なレーベルを応援してあげてほしい。


もしあなたが、格好いいロックを聴いてみたいと思ったら、

明けても暮れてもエレキギターの練習をしている人なら、

ブルーズ(・ロック)に興味があるけど、誰のどのアルバムから聴いてみればいいのかよくわからないなら、

最近のエリック・クラプトンはすっかり落ち着いてしまって、『Slowhand』や『Backless』の頃の彼が懐かしいと思っているなら、

メジャーになってしまってからのダイアー・ストレイツやマーク・ノップラーのソロは大仰だったり地味だったりでつまらない。やっぱり「悲しきサルタン」の頃が最高!という意固地な人なら、

そして、このブログを読んで、僕の感性を信じてくれるなら、

このアルバムを聴いてみればいい。掛け値なし、全力でお薦めするよ。


僕は今でも、さっきから何度も引き合いに出している95年の彼のアルバム『South Of I-10』が彼の最高傑作だと思っている。でも、このニュー・アルバムをこれまで50回ほど聴いて、その気持ちが大いに揺らいでいる。『South Of I-10』の素晴らしさに文句をつけるつもりなど微塵もない。でも、過去12年に亘って数十回(もしかしたら数百回)聴いてきて、自分の一部みたいになってしまっているあのアルバムに対する愛着をちょっと横に置いて、冷静に比べてみたらどうだろう。アルバムとしての完成度、ゲストの豪華さ、歌、演奏。サニー・ランドレス初心者にまず聴かせたいアルバムはこっちになってしまうかも。

いみじくも、アルバム最終曲「Universe」の歌詞にこの言葉が出てくる。QUANTUM LEAP − 一大飛躍。まさにこの言葉が、この世界で一番過小評価されたギタリストの渾身のアルバムを最もうまく言い表している。
posted by . at 00:18| Comment(15) | TrackBack(0) | アルバム | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする