2008年03月20日

三部作完結編 - Twinklehead

Twinklehead..jpg Twinklehead 『Twinklehead』

北欧三部作(さっき決めた)の最後を締めくくるのは、ノルウェーの3人組、トゥインクルヘッド。3人組とはいっても、本作のプロデューサーも兼任するヘンリク・モイ・アスキルドセン(Henrik Moy Askildsen)と、本作のエグゼクティヴ・プロデューサーも兼任するトマス・へランド(Thomas Helland)の二人がギターとキーボード類、もう一人がベースという妙な組み合わせ。社長と専務と平社員みたいなものだろうか。

加えて、セッション・ミュージシャンとして9人もの名前がクレジットされている。中でもトップに載っているこれまたキーボード類担当のヴィダール・エルスフォード(Vidar Ersfjord)は、正式メンバーであるベーシストを差し置いて本作の共同プロデューサーとしてもクレジットされている。平社員よりもよっぽど出来のいい派遣社員、といったところか。


爽やかな鳥のさえずりでアルバムは幕を開け、そこにピンク・フロイド「Echoes」のオープニングでおなじみのあのソナーのような音が被さってくる。オリジナルのあの音はピアノのアウトプットをハモンドオルガン用のレズリースピーカーにつないだときに偶然出た音で、その後いくら再現しようとしても同じ音が出なかったという逸話が残っているんだけど、これはもしかするとそのレコードからサンプリングしたものかな。

ピンク・フロイドの名前を出したけれど、この人たちの書くとてもメランコリックなメロディー(ほとんどの曲はヘンリク作)は、僕に初期ピンク・フロイドの曲を思い起こさせる。初期ピンク・フロイドといっても、必ずしもシド・バレットの曲というわけでなく、例えばリック・ライトの手になる「Paintbox」とか、ロジャー・ウォーターズの「Julia Dream」とか。あるいは、『Ram』の頃のポール・マカートニーや初期ビー・ジーズの音に近いといってもいいだろうか。そういう、60年代末期〜70年代初期の匂いがプンプンするメロディーライン。

それが、前述したとおり、ピアノやハモンドなど数々のキーボード類を中心とした音に乗せられて、いかにも北欧ポップらしいジェントルな声で歌われる。隠し味的に使われているメロトロンの音もプログレちっくだし、クレジットに「エレクトリック・ギター」と書かずにあえて「テレキャスター」とこだわった、テレキャス特有のちょっとギスギスした音にも味がある。

彼らのマイスペースに行ってみると、「影響を受けた音楽」として、すごい数のアーティストの名前が挙げられている。曰く、ELO、ピンク・フロイド、ジェネシス、スーパートランプ、イエス、ブラー、ジェイソン・フォークナー、シド・バレット、エール、ビー・ジーズ、ニック・ナイスリー、ジョージ・ハリスン、ビートルズ、キンクス、ビーチ・ボーイズ、アイドル・レース、XTC、ケイト・ブッシュ、ラッシュ(Lの方)、ムーディー・ブルーズ、ペット・ショップ・ボーイズ、ライド、Tレックス、ジェフ・リン...。ああ、わかるわかる。キーワードは60年代〜70年代前半プログレ & 80年代後半〜90年代王道ポップスといったところか。それにしても、ピンク・フロイドとペット・ショップ・ボーイズが両方好きという人たちがここにもいたかと思うと、嬉しくなるね。

アルバムのほとんどがミディアム・テンポのゆったりした曲の中、4曲目「Get It On」(Tレックスに非ず)だけはちょっとアップ・テンポの、いかにも60年代ポップスといった風情のいかした曲。この曲のPVはマイスペースで観られるけど、メンバーの子供の幼稚園での光景を撮っただけなんじゃないのか?というおとぼけぶり。

9曲目「Above The Sky」の途中で、古いテレビから流れているような映画の台詞が入ってくるところもいい。何の映画かはわからないけど。こういうところも『The Wall』〜『The Final Cut』あたりのピンク・フロイド風?

続く10曲目「Forensic Detectives」が、わずか37分のアルバムの幕引き。ピアノの弾き語りで始まり、ベースに導かれて流麗なストリングスがかぶさり、やがてアコースティック・ギターとドラムスも入って徐々に音数が増えていき、コーラスも交えて最高潮に盛り上がったところで、ふと音が途絶える。最後に残るのは悲しげなピアノの音と、鳥のさえずり。ここでまたアルバム冒頭に戻る、というわけだ(こういうところも『The Wall』風?しつこいけど)。


アマゾンなどのネットショップでも、都内の大手CDショップでも見かけたことのないこのCDを僕が入手したのは、友達に教えてもらった、渋谷にあるApple Crumble Recordという小さなレコ屋。ギターポップ、北欧ポップなどのレアなCDやレコードが沢山置いてある、僕みたいな人間にとっては宝箱みたいな素敵なお店だ。


ところで、ふと気づいたんだけど、最近ルナさんがスピッツ話でコメント欄をシマシマにしているシャーウッドのこのアルバム
A Different Light.jpg

と、今回のこのアルバム
Twinklehead..jpg

なんだか似てない?


posted by . at 20:15| Comment(6) | TrackBack(0) | アルバム | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
にてるにてるー。

>あのソナーのような音
って、ポッポッポポポーポッポッポーポってやつですか?たまに鞄の中で携帯がそんな音出しながら、勝手にグリンさんの家にかけてます。ボタンロックしておけばいいんですけどね。

初期のピンク・フロイドというと私はやっぱりシドの曲が好きですが、「Paintbox」も「Julia Dream」も哀愁あっていいですよね。ヤマタケに通じるところがあると思ってます。この時期の音ってなんでこんなにグッとくるんでしょう。だーいすき!
社長と専務と平社員のプレグレ風三人組、とても興味があります。ハンズの近所に売ってるんですね?

ペット・ショップ・ボーイズはまだ好きになれません。もっと記事を書いてくださらないと。
Posted by カブ子 at 2008年03月22日 17:13
三部作と言わずもっと紹介してください。
Posted by ひより at 2008年03月23日 02:07
試聴は後日してみますが、とりあえず記事読みましたよ〜って足跡残しておきますね。

>社長と専務と平社員
1人の狂える天才と彼を売れるようにまとめあげるためのお付きの者たちという関係かも?!(な〜んてことはないか)

Apple Crumble Recordですね、ハイ、メモりました。もともと私の情報源はレコ屋さんが中心なんで、00年代月5枚モノ探し用にこれは!ってお店があったら、さりげなく記事中で紹介して下さいね〜。

最後の似てジャケ、ウケました〜(笑)!消灯前後って感じですね。病院でいえば、午後9時あたり。

Posted by クロム at 2008年03月23日 16:29
●カブ子さん
ソナーって、潜水艦とかが出す音ですよ。「Echoes」のイントロで、キーーーンって甲高い音が鳴るでしょう。あれです。ところでグリンさんも、なまじ色が青なだけに、迷惑電話を受け続ける羽目に陥っていますね。紫グリンとかに改名するのもひとつの解決案かと。

ヤマタケ、僕はちゃんと聴いたことがないです。こういう感じなのですか。そのうち機会があれば是非聴いてみたいですね。

>プレグレ風三人組
あえて言いまつがいには触れませんが、このアルバム、あまりプログレ風を期待して聴くと、期待外れになってしまいますよ。『The Wall』とか『The Final Cut』とかに似ていると書いたのはあくまでも効果音の使い方のところだけで、音楽的には初期の(プログレ・バンドではない)ピンク・フロイドに似ていると書きましたからね。どちらかというとソフト・ロック風です。マイスペースで聴いてもらえれば大体わかると思いますが。

ペット・ショップ・ボーイズ、もっと記事を書けば好きになれるんでしょうかね。では、彼らのアルバム中一番とっつきにくい、『戦艦ポチョムキン』のサントラ盤の話でもしますか。へそまがりのカブ子さんにはぴったりかもしれません。


●ひよりさん
>もっと紹介してください
ちょっと他にも紹介したいCDが溜まってきたので、一旦ここで止めておきます。またそのうち戻ってきますね。北欧もの、お好きなんですか?

>もうないの?
あるます。さっき数えてみたのですが、今年に入ってからだけで、北欧ものを30枚も買っていますから、今のうちのブログの更新ペースだと、いちいち紹介してたら2009年になっても終わらないぐらいの量はあります。

今年になって買ったCD類が今日時点で全部で90枚。1/3が北欧ものというわけですね。中には名前も知らないしタイトルもろくに読めないのに、ラトヴィアのCDだから珍しいという理由だけで買ったものもあります(裏ジャケに載ってたウエブサイトの末尾がlvだというところから、これはきっとラトヴィアに違いないと見込んで買いました)。内容はたいしたことなかったですが。しかも普通はラトヴィアのことを北欧と呼ぶ人はいませんし。

今日もたまたまデンマークからカナダ経由でうちに届いた2枚のLPと1枚のCDがありまして、まだ全部は聴けていないのですが、これがなかなか強力そうです。「帰ってきた北欧特集」はきっとこれらが取り上げられることでしょう。いつのことかはわかりませんが。


●クロムさん
足跡ありがとうございます。僕も先ほどクロムさんのところに残してきましたよ。

少なくとも、2人目はお付きの者程度以上の活躍はしているようです。平社員のベーシストも、アルバム中一曲の作曲をし、その曲ではリード・ボーカルをとっていますから、あながち単なるパシリというわけでもなさそうです。

Apple Crumbleさんは通販もやっているようなので、なにかお気に召したものがあれば是非どうぞ。きっとクロムさんのパワーポップ系/アコースティック系路線にぴったりなのも見つかると思いますよ。

>病院でいえば
やはり病院でいうんですね。
Posted by yas at 2008年03月23日 22:09
えー、三部作なんて言ってたっけ?
…なんだ。


Twinkleheadね。それからApple Crumble Recordね。私もメモりました。
記事を読んで、けっこう気になったんだけど、今手を広げる余裕がなくて。落ち着いたら、手を出します。

ジャケだけだったら、トゥインクルヘッドの方が好き。

Posted by Luna at 2008年03月24日 08:31
●Lunaさん
別に意図しなくても、三回続けば三部作なのです。そのうちスター・ウォーズみたいに三部作が複数できるかもしれません。

メモってもらえましたか。東京に来られた際には是非行ってみてください。関西にも小さくても気の利いたレコ屋はあると思うんですが、僕が昔通っていた店は、去年久しぶりに行ってみたら、もうどれもこれも潰れるか方針変換(大人のビデオ専門店とか)してしまったところばかりでした。

ジャケ、脂っこいもの好きのルナさんならてっきり前者かと思ったのですが。
Posted by yas at 2008年03月30日 00:58
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