2007年10月07日

円熟期 Fountains Of Wayne 「Traffic And Weather」

ここのところ手に入れたアルバムにいいのが多すぎて、週一回のペースだととても年末までに気に入ったのを全部紹介しきれない。ちょっとこの週末はがんばってもう一記事書こう。こんなペースが続くかどうかはわからないけど。

Traffic And Weather.jpg Fountains Of Wayne 「Traffic And Weather」

以前からコンスタントにポップな好アルバムを作り続けているファウンテンズ・オヴ・ウェインの通算4作目(シングルB面曲集は除く)。今年4月のリリースだから、こんなメジャーなアーティストのアルバムを今さら取り上げることにちょっとした抵抗はあるんだけどね。

ひねたギターの単音で入ってくる一曲目「Someone To Love」から、パワーポップ炸裂。ストレートなギターロックあり、沁みるバラッドあり、とろけるようなカントリー調あり、ひねくれポップあり、端正なワルツあり。全14曲、捨て曲一切なし(なんだか昨日も同じような書き方したな)。

ビーチ・ボーイズの「Little Honda」に対抗してか、二曲目「'92 Subaru」は、15年落ちのおんぼろスバルをバリバリにチューンアップして乗り回す男の歌(世界初、スバルのことを歌った曲?・笑)。

 田舎のレズのカップルから車を買うた
 グリーンピースのステッカーとニューハンプシャーのプレートは外して
 友達はみんな失敗やて言うけど
 まあ見ててみ
 新品のショックアブソーバーとアンチロックブレーキ付けて
 ワンタッチ・イグニッションもあったら便利やな
 完成したらまるで新車やで
 ライムグリーンのプラズマTVも入れて
 皮シートはフェイクには見えへんやろう
 グローブボックスにちょっとだけアルコール入れとこかな
 ムーンルーフ開けたらシート倒して星が見えるで
 そうそう、GPSもあるから今どこにおるかもばっちりや
 アラームは複雑すぎて、どないして入るかもわからんぐらいや
 ベイビー、そこ動くなよ、今行くからな
 この92年後期型の水色のスバルでな


てな感じ。なんだかちょっとしたユーモアが可笑しい。曲はもちろんとびきり格好いいんだけどね。ジャケットにコラージュされた車を見るとどうもこれはレガシーみたいだけど、この曲をこの界隈のスバル乗りの彼女に聴いてもらいたいね。

その曲もだし、アメリカ東海岸の主要ハイウェイを曲名にした「I-95」やアルバムタイトル曲「Traffic And Weather」もそうだけど、今までも今回もやたらと車に関係する曲が多い人たち。今作には更に飛行機関係の曲「Michael And Heather At The Baggage Claim」や「Seatbacks And Traytables」なんてのも入ってるな。

アルバム中、僕が一番好きな五曲目「Fire In The Canyon」は、綺麗なハーモニーに寄り添うオルガンが、軽快なピアノとペダル・スティール(またしても!)に乗って流れるカントリー調の曲。ああ、これもアメリカ西部のキャニオンを車でドライブする曲だね。よもやこのグループをオルタナ・カントリー・バンド扱いする人はいないだろうけど、そのうち僕が(所謂)オルタナ・カントリー名曲集なんてのを作ったら、この曲は確実に入るはず。

普通、アルバム中一番好きな曲が終わってしまうと、多少はがっかりするというか、気が抜けてしまうことがあるんだけど、このアルバムはそうはいかない。六曲目「This Better Be Good」は、これもコーラスが見事なミディアムテンポのパワーポップの見本のような名曲。

「Planet Of Weed」は、“マリファナの惑星”というタイトルに引っ掛けてか、曲の間ずっと調子っぱずれの手拍子や瓶を叩く音なんかが入っている。ザワザワしたパーティーで、後ろの酔っ払いたちが曲に合わせてリズムを取ろうとしてるのになんだかずれてるっていう感じ。笑い声や電話の音なんかも入っていて。バラエティーに富んだ沢山の曲ががちっとまとまってプロデュースされたという印象のこのアルバムを、終盤12曲目のこの曲がちょっとくだけた雰囲気にするのにうまく役立っている。

などなど、本当に全14曲についていちいち説明したいぐらい。よく、「アルバム全曲シングルカットできるような」という言い方をするけど、このアルバムもそれぐらい一曲一曲が粒より。


ジェリーフィッシュ、ELO、ビートルズ、ポウジーズ、カーズ、ジェイホークス、ユートピア、ジャム、ラトルズ、チープ・トリック、ブラー、サザンオールスターズ、… どの曲が誰に似ているというのは難しいけど、僕はこのアルバムを聴いていると、こういったアーティストの名前が次々に頭に浮かんでくる。パクリっていうんじゃないよ、こういった広範囲なパワーポップバンドの様々な要素をあわせ持った、とても優れたアルバムだ。これまでの彼らの作品の中でも、収録曲の完成度という意味で言えば、今作がダントツかもしれない。

ポウジーズといえば、このバンドのドラマー、ブライアン・ヤング(Brian Young)は、『Amazing Disgrace』〜『Success』期のポウジーズのメンバーだったんだ。ゲスト・ミュージシャンの項には元スマッシング・パンプキンズのジェームス・イハ(James Iha)の名前もあるな。まあ、そっちは僕にとってはわりとどうでもいいんだけどね。

今この瞬間の勢いだけでいえば、ポウジーズの名作曲チーム、ジョン・オウア(Jon Auer)&ケン・ストリングフェロウ(Ken Stringfellow)よりも、ここんちの二人、クリス・コリングウッド(Chris Collingwood)&アダム・シュレシンジャー(Adam Schlesinger)の方が優れた曲を書いているかもしれない。このアルバムはプロデュースもアダムが自分でやってるし。まさに今が円熟期かも。もう10年も続いてるベテランだけど、これからもまだまだ楽しみなグループだ。

というわけで、今年度パワーポップ系では今のところ随一のアルバム。日本盤は最後にボートラが一曲多く入ってるらしいけど、このしっとりと終わるアルバムの後にどんな蛇足が入っているのか聴いてみたい気もする。
posted by . at 18:02| Comment(14) | TrackBack(0) | アルバム | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
ったく
ひとつ前の記事にコメント入れようと思って開けたら、もう次の記事があがっていました。


スバルの訳詞を読んで聴いてみたくなりました。
私、「ベイビー」に弱いんです。
Posted by Luna at 2007年10月07日 19:50
鬼太郎のコスチュームを思わせる黄色と黒のシマシマ太陽がイカシてます。ジャケだけ見るとyascd009のMIKAっぽい感じですが、きっと中身は違うのでしょう。

>捨て曲一切なし
いい買い物しましたね。
Posted by 麒麟 at 2007年10月08日 18:14
レズのカップルから車を買うたらグリーンピースのステッカーがついているのやね。

なるほど!と膝を打ちました。

水色のスバルってのも渋くて好きです。
Posted by minira at 2007年10月08日 20:26
いつも1枚1枚丁寧に紹介しているyasさんには、全く頭が下がりますよ〜。私なんか、あれもこれも書きたいな〜とか思ってるうちに、記事にしたかどうかさえわからなくなってきてます。近々、コレ前にも出たじゃんってなことが起こりそうな・・・。例によって、アルファベットやジャンル別みたいな記事の整理もできていないし(笑)。

う〜ん、コレも聴きたいなぁ。でも、(端から見れば)どうでもいいようなCDばっか買ってるせいで、なかなか資金が捻出できそうにありません。悲しい。
Posted by クロム at 2007年10月09日 00:00
あっ、もう1つ。
グリーンピースのステッカーの意味がわかりませ〜ん!解説して下さい。
Posted by クロム at 2007年10月09日 00:02
●Lunaさん
「ベイビー」に弱いのは知ってましたが、誰に言われてもいいとは思ってもみませんでした(笑)。ついでにもう一つベイビーものをグリンさんとこで訳しておきましたので、お時間があればどうぞそちらにも。


●麒麟さん
ああ、言われてみればこれは太陽ですね。あまりにコラージュが大胆なんで、ぼーっと見ていました。とすると、その横の海葡萄みたいなのは雨粒ですね。逆に刺さると頭に穴が開きそうです。

ミカちゃんにも似てなくはないですよ、ポップなところが。こちらの方がちょっと聴いたところでは真面目にやってそうな感じがしますが。

お昼に開けるとサンルーフ、夜に開けるとムーンルーフです。ついでに言うと、雨の日に開けるとレインルーフ、トンネル内で開けると排気ガスルーフです(最後だけ日本語)。


●miniraさん
もれなくグリーンピースのステッカーがついてるのかどうかは知りませんよ(笑)。でも実は、このオリジナルの歌詞では「レズ」とは言ってないんですよ。歌詞の雰囲気と、インタビューでの彼らの発言から、ちょっと意訳しました。

「水色」も若干意訳です。原詞は「In my late 92 baby blue subaru」です。TWO、BLUE、SUBARUと、細かく韻を踏んでいるところが快感です。今にして思えば、「水色」と訳さずにそのまま「ベイビーブルー」にすれば、Lunaさんが反応したかもしれませんね(笑)


●クロムさん
どもども、久々のクロムさんお得意の褒め殺し攻撃ですね(笑)。いや、クロムさんの熱意があれば、例え同じアルバムが何度紹介されていようと、全然問題なしですよ。それか、数日かけて、「リオ・ライザー全アルバム紹介」とか「スティーヴ・モーズ全キャリア完全網羅」とかやってみてくださいよ。とても数日で済むとは思えませんが。

これ、クロムさんのパワポ好き側面にビシビシ来ると思いますよ。FOW(こう略します)は中古屋出現率高なので、そのうちブックオフあたりで是非どうぞ。

あ、グリーンピースのステッカーの件ですね。環境保護団体のグリーンピースはご存知ですよね?僕自身の彼らへのコメントは差し控えますが、要はこの曲の主人公(15年落ちの中古車しか買えず、それをチューンアップして乗り回すような中流〜下層階級の男)の視点から見ると、リベラルな北部の州に住んでる、自分達の実生活に関係もない環境保護なんかに精を出してる呑気な女同士のカップルめ、てな感じの歌詞なんじゃないかなと思いますよ。
Posted by yas at 2007年10月09日 17:50
>誰に言われてもいいとは思ってもみませんでした(笑)。

失礼な!(笑)
グリンちゃんのとこのも見てきました。
気になる指数が上がりました。
Posted by Luna at 2007年10月09日 18:20
●Lunaさん
失礼しました(笑)

グリンさんとこに追記コメントしようかと思いましたけど、こっちで話を続けますね。ニール・ヤングのソロを聴き始められるのであれば、まずお勧めは、グリンさんの挙げられていた70年代初期の2枚の代表作が妥当ですが、僕としては79年のライヴ・アルバム『Live Rust』が一番のお勧めです。僕はこのアルバムから入りました。前半アコースティック、後半エレクトリックという構成で、彼の二面がどちらも堪能できます。

『After The Gold Rush』の一つ前、『Everybody Knows This Is Nowhere』も、9分強の「Down By The River」、10分半の「Cowgirl In The Sand」という、アナログ時代の両面それぞれのラストを飾る長尺曲が痺れるほど格好いいですよ。

70年代ものばかり薦めてしまいましたね。もちろん80年以降にも重要作はいくつもありますが、記事並みに長くなるのでこのへんにしときますね。さしあたり、去年あたりに出たお手軽ベスト盤を買ってみるというのも手っ取り早いかもしれませんが。
Posted by yas at 2007年10月10日 16:51
今のところ海外ミステリーの中では、中産階級の主人公が中古のホンダやトヨタに乗っているという描写が結構出てきます。たまに容疑者のお金持ちがレクサスに乗っていたり。
マツダのロードスターもちょくちょく出てくるのですが、スバルはあんまり出てこないよなぁとこの記事を読んでいて思ってました。
今日読み終わった小説についにスバル登場です。91年に書かれた小説だったのですが、メイン州の中産階級で、ロハス的(この小説の時代にはまだそんな言葉はなかったみたいですけど)生活を目指す主婦が主人公でした。
スバルってそんな層に人気があったのでしょうかね?
Posted by きんぎょ at 2007年10月25日 15:03
●きんぎょさん
yascdでもないのに長文コメントありがとうございます。中古のホンダやトヨタって、安くて実用的な自動車の代名詞みたいなものなんでしょうかね。容疑者の金持ちがベンツやアメ車でなくレクサスってのは、日本車ということに対して偏見があるのでしょうか。それともレクサスがそういうヨーロッパやアメリカの高級車よりも高級という風な暗黙の了解があるのでしょうか。スバルはやっぱり出てきませんか。まあ、日本でもそれほどメジャーじゃないですしね。中古でもあまり出回っていないのかもしれませんね。でも実はNZではひそかに人気があるんですけどね。それも安いからというよりも、憧れの車という意味合いで。

メイン州って、やっぱりアメリカの東海岸の北部ですね。この歌詞に出てくるニュー・ハンプシャーと同じようなイメージで見られているのかもしれませんね。ところでメイン州って、僕はスティーヴン・キングの一連の作品を読んで、そういう州があることを覚えました。ちなみにニュー・ハンプシャーを覚えたのは、ホテル・ニューハンプシャーでしたね。日本人は大抵そうかもしれませんが。
Posted by yas at 2007年11月03日 13:23
ぎゃあああ!
すみませんすみませんすみません!!

いや、読んだんですよ。おかんの
『ったく
ひとつ前の記事にコメント入れようと思って開けたら、もう次の記事があがっていました。』

も覚えていますもん!
オフ会で『ぺこ向けの記事』と仰っていた物ですね。。。
ううう、スットコドッコイを炸裂して、クリスマスにコンサートに30分遅刻して行きました。
『2007年粗相の総決算』等と言っていたのですが。。。

嗚呼、2ヶ月と20日も遅刻するとは!!
ごーめーんなーさーい!
…また来ます。
とりいそぎ。
Posted by ぺこぽこ at 2007年12月27日 02:25
●ぺこぽこさん
いえいえ、いいんですよ。勉強に仕事に大忙しのぺこちゃんに、こんな長文を無理矢理読ませるのに気が引けてもいましたから。遅れてでも読んでコメント入れてくれてどうもありがとうございました。

クリスマスコンサートはちょっと残念でしたね。でも力の入った二部構成のレポート読ませてもらいましたよ。

何故粗相に気づいたか?

1)自慢のインプが突然誰かに水色に塗られていた
2)2ヶ月と20日温めておくと幸運が訪れると思った
3)神のお告げ

どれか当たってますか?
Posted by yas at 2007年12月28日 16:29
うーん?
コメント入れたのですが、反映されないなあ?

ちょっと押し出し。
えい、ぷちゅん。
Posted by ぺこぽこ at 2008年01月09日 18:50
●ぺこちゃん
あれれ?押し出されるはずのコメントがないですね。忙しいところせっかく書きに来てくれたのに、消えちゃったのかな。もったいない。

何を書いてくれたのかはわかりませんが、大抵のことはご迷惑でもなんでもありませんよ。


●この数日にコメントを入れて下さった皆様
返事が遅れていてごめんなさい。先日最後の引越し荷物が到着し、家の中が段ボール箱の樹海状態。立錐の余地もないんです。まずはCDの箱から開け始めたんですが、開けども開けどもゴールは見えず。ラックに入れられるのを待つCDの山ばかりが家中のあちこちに林立しています。

思えば、荷出しの際に引越し屋の兄ちゃんがあれほど膨大な時間をかけて梱包したCD、カオス理論によれば、大量の段ボール箱に無秩序に詰められたそれらのCDを再度秩序立ててラックに収めるのは更に膨大な時間と手間と根気が必要なのです(そうですよね、クロムさん・笑)。

頂いたコメントそれぞれにどう返事しようかというのは既に考えてはいるんですが、それを実行に移す時間がちょっと取れません。週末ぐらいにはなんとかしたいと思っていますので、今しばらくお待ちください。
Posted by yas at 2008年01月10日 01:46
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