2007年08月15日

Jose Gonzalez live in Auckland 07

「また来年」と言って去っていった彼は、本当に一年後に戻ってきた。

去年の7月21日にライヴレポートを書いたホセ・ゴンザレスが、イギリスでは9月24日に発売になるニューアルバム『In Our Nature』のプロモーションツアーの一環で、再びオークランドにやってきた。去年は、その記事にも書いたように、NZで評判の高かったテレビコマーシャルの余波もあって、セイント・ジェームス・シアターという割と規模の大きな会場を一杯にするほどだったが、今回はホープタウン・アルファというかなり小規模のホール。まあ確かにニューアルバム発売前だし、僕の周りでも「え?ホセ、また来るの?」とかいう声が上がったぐらいだから、果たして人が集まるのかという不安もあった。更に彼にとって運が悪かったのは、このコンサートの告知のすぐ後に、同日にオークランド最新最大のアリーナでキュアのコンサートが開催されることが決定したことだ。日程がかぶっていなければ僕も確実にそっちにも行ってたはずだから、これは結構ファン層かぶってると思うよ。7年振りだかでNZに来る大御所と、去年来たばかりの一発屋(@一般的イメージ)、誰がこっちに来るんだ?大丈夫かな…

Hopetoun Alpha

7時半開場だったんだけど、用もないのに7時前に会場に着いてしまった。ドアも当然まだ開いてないから、まだ殆どガラガラの会場横スペースに車を停めて、どっかで腹ごしらえでもするかと思ってたら、リハーサルを終えて食事に出かけるホセと偶然ばったり。その場で、車の中で聴いていた『Veneer』を渡してサインしてもらったよ。ラッキー♪ やっぱりNZでは、「小さなハコには早く行け」ってのは鉄則だね。

Autographed Veneer.gif

会場はやけに縦に細長い。元々は教会として造られた建物らしく、今は結婚式やパーティーに使われているという。一階のフロアに木製の椅子が並べてあり、それを取り囲むような形で二階席が張り出している。ステージが異様に高い場所にあって(僕の身長程あったから、床から1.7メートルぐらい?)一階席からだと見上げ、二階席からだと見下ろす形になる。僕は一階席の前から二列目中央という、かなりいい席をキープできた。見上げる形になるとはいえ、ステージからほどよい距離を置いてあるので、映画館の最前列みたいに首が痛くなるというほどではない。

8時20分に始まった前座の演奏が終わったのが9時ちょうど。そのNZの夫婦デュオの自主制作CDも会場で売ってたんだけど、残念ながら僕を40分集中させておくほどの魅力はなかった。退屈というほど酷いわけでもなかったんだけどね。

マイクと椅子をセットし直して、9時30分ちょうどにホセがステージに姿を現した。簡単な挨拶のあと、調弦がてらいくつかの弦を爪弾き、それがやがて「Deadweight On Velveteen」のイントロになるというオープニングは去年のステージと全く同じ。

DSC09999.JPG

相変わらず、もの凄く正確に力強くリズムを刻むストロークと、全くミスのない繊細なアルペジオが見事。前回の記事にも同じようなことを書いたが、生ギター一本だけなのに、まるで打楽器の演奏を見ているような錯覚に陥る。彼の歌声と生ギターと手拍子と若干の管楽器の音しか入っていない彼のアルバムは、結構それら一つ一つの音が生々しく素直に録音されている方だと思うのだが、こうしてギターから直に出てくる音を聴いてしまうと、もうそんなのは全く別物だと思えてしまう。たいしたアドリブが入るわけでもなく、彼一人がアルバムと同じアレンジで歌い演奏するだけのこんなライヴなのに、何度観てもこれだけ惹き付けられてしまうという事実が、彼の実力を物語っている。

3曲目からは僕の知らない曲が続けて演奏された。ニューアルバムからだろう。印象に残った歌詞の断片を書き写してきて、既に発表されている曲目表と照らし合わせてみたんだけど、半分ぐらいはよくわからない。下に載せるセットリストは、9月にそのニューアルバムを買ってちゃんと歌詞を聴いてから補足することにしよう。

6曲目に入るところでまたゆっくりと練習のように弦をパラパラと爪弾き、それがいきなり加速して「Crosses」のイントロだとわかった瞬間には、背筋がぞくっとする思いがした。ゼロ7と共演もしたこの曲、やっぱり彼の曲の中で一番好きかも。

新曲の中でも、彼のマイスペースで公開されている2曲はわかった。9曲目「Killing For Love」と、後半彼が「あと2曲ね」と言ってから始めた「Down The Line」。後者はシングル発売されて、PVも作られるそうだ。彼のPVはいつもユニークで面白いので、これも楽しみ。たしかこの曲かな?それまでずっと淡々と音程を外さずに歌っていた彼が、ちょっと力んで声高に歌ってしまい、照れたような顔をしていたのがほほえましかったのは。

「あと2曲」の2曲目は、去年も本編ラストで演奏した、マッシヴ・アタックの「Teardrop」。へえ、よっぽどこの曲気に入ってるんだね、と思ったら、ニューアルバムにも収録されている模様。

そこで一旦舞台裏に下がり、すぐ再登場。ほとんどカタコトと言っていいようなつたない英語(失礼!)で「僕が小さな頃は、教会で音楽を聞いても拍手さえできなかったんだ。それを君たちは足を踏み鳴らすなんて」と軽い冗談。去年のコンサートと、今回ライヴ前にサインをねだったときを含めても、これが僕が聞いた彼の最長台詞かも(笑)

DSC00001.JPG

先ほどの本編最後のマッシヴ・アタックのカバーに引き続き、アンコール一曲目はカイリー・ミノーグのカバー「Hand On Your Heart」、そして、件のコマーシャル曲「Heartbeats」(これもナイフというスウェーデンのバンドのカバー)。やっぱりこの曲のイントロが始まった瞬間が、一番客席が沸いたね。

最後に「あと1曲」と言って始めたのが、去年は聴けなくてとても口惜しい思いをした、ジョイ・ディヴィジョンの「Love Will Tear Us Apart」。ついに聴けた。そしてこれが、ジョイ・ディヴィジョンのオリジナル録音よりも、彼がカバーしたCDでのバージョンよりも、もの凄くスピードアップされたメチャクチャ格好いい演奏。小手先の技など使わずにフルストロークでかき鳴らされるギターの音のメタリックなまでの響き。これは、待った甲斐があった。数限りなくカバーされているジョイ・ディヴィジョンのこの名曲を、彼ら自身よりもスリリングに演奏し(しかも生ギター一本で!)、そしてイアン・カーティスに切迫するほど切実に歌ったものは、僕の知る限りでは昨夜のこの演奏以外にはなかった。

今度は「また来年」とは言わずに手を振って彼が退場したと同時に客電が点き、アンコールを含めても1時間弱の短いライヴが終了した。時間的にはこれも短くて物足りない思いをした去年のライヴと似たようなものだったけど、これだけの演奏を聴けた今回は大満足で会場を後にすることができた。1万2千人のアリーナでキュアの3時間マラソンコンサートを観るより、こっちに足を運んだのは正解だったと素直に思える、気持ちのいい夜だった。



セットリスト

1. Deadweight On Velveteen
2. Hints
3. How Low
4. Fold
5. In Our Nature
6. Crosses
7. Time To Send Someone Away
8. Abram
9. Killing For Love
10. Cycling Trivialities (?)
11. Lovestain
12. Down The Line
13. Teardrop

Encore
1. Hand On Your Heart
2. Heartbeats
3. Love Will Tear Us Apart


DSC00004.JPG


posted by . at 19:56| Comment(7) | TrackBack(0) | コンサート | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
ごちゃごちゃ言わないところが、名人っぽくていいですね。
来て、する事だけマチガイなくやりました、みたいな簡潔な感じがしますね。
風貌もおだやかな雰囲気ですね。賛美歌のギター伴奏してるとこやで、と言われたら、そうか、と納得してしまいそうです。
Posted by 青グリン at 2007年08月16日 00:45
去年のセイント・ジェームス・シアターもいい会場でしたけど、今回も素敵なコンサート会場でしたね(まるで行ったかのような口調)。

ちょっと前から急にホセ・ゴンザレスが聴きたくなったんですよ。ああ、聴きたい。このコンサートのレポート読んで、ますます聴きたくなりました。生にはかなわないですけどね。こじんまりした会場で短い時間のライブ。ギューっと凝縮されたいい時間が伝わってきました。
Posted by カブ子 at 2007年08月16日 04:16
まるで、私もライブに参加しているかのような、臨場感ある文章でした。

個人的にはここがすき。
>残念ながら僕を40分集中させておくほどの魅力はなかった。退屈というほど酷いわけでもなかったんだけどね。

こういう本編と関係ないエピソードが入ると、ライブが始まる前の、期待するそわそわ感と相俟って、リアルな感じがします。

ご本人に出会って、サインをいただけるなんて!
本当にラッキーですね。

アーティストに出会ったときに、怯まずにサインをお願いするには、なんて声をかければ良いのですか?
声をかける勇気が無かったばっかりに、千載一遇のチャンスを逃した私は、次に海外アーティストにあった時には、絶対に声をかけよう。
と、決めているのです。
Posted by ぺこぽこ at 2007年08月16日 14:25
ああ、楽しいライヴだったんですね。
満足した様子が伝わってきます。
6曲目の説明ところがいいですね。快感だったんですね。

ライヴの記事はリラックスして読めます。
Posted by Luna at 2007年08月16日 23:54
●青グリンさん
寡黙な男の人というのはいいですよね。実は、「来て、する事だけマチガイなくやりました」という意味では、この数日前にタダ券を貰って行った某有名アーティストのコンサートがそうだったんですが、そちらの方は、有名曲を次から次へと淡々と演奏して、ろくに挨拶もせずにきっちり時間通りに終えて帰って行ったという印象だったんですよ。なんだかルーティンで適当にこなされたライヴだったなという感じがしてしまいました。それに比べると、同じ寡黙なライヴでも、この夜はどこか真摯な雰囲気が漂っていた気がします。単なる僕のひいき目でしょうか。

サインをもらう時に少しだけ話したんですが、はにかみながらポツポツと話す、とても穏やかそうな人でしたよ。


●カブ子さん
まるで行ったかのように思っていただけるほどにこの記事でちゃんと雰囲気が伝わったかと思うと、なんだか嬉しいです。前回のもここも、日本のコンサート会場にはあまりない旧いヨーロッパ風の装いが素敵でした。そういえば昨日セイント・ジェームスの前を通りがかったら、改装中でした。変に現代風の内装に変えられていなければいいんですが。

ホセ・ゴンザレス、もうすぐ手に入りそうでしょうか。待望のセカンドアルバムもあと1ヶ月ほどで発売です。妙なイラストのジャケも健在のようです。そういえば、記事に書いた二曲の新曲のPVを彼のサイトで観たんですが、ちょっと二度と見たくないほど異様でした。カブ子さんならお気に召されるかもしれません。


●ぺこぽこさん
>臨場感ある文章でした
なんだか今回は皆さんにこうやって言っていただいて、嬉しいですよ。やっぱり帰ってきてすぐに書いたのがよかったんでしょうね。

では、記事からは端折った、本編とは関係のない別のエピソードもご紹介しましょうか。会場入り口にお知らせの紙がプリントアウトして貼ってあったんですが、その内容がこうです。

‐演奏中は周囲の人と話すことはお控えください。
‐携帯電話はマナーモードにお切り替えください。
‐プロモーターは、演奏中に携帯電話を鳴らした奴を殺すことをお客様に許可します。ただし、お静かにお願いします。

なんだか、無味乾燥になりがちなこの手の警告をちょっとくすっと読ませる、こういうユーモアがいいですよね。

>なんて声をかければ良いのですか?
これは英語で何と言うかというご質問ですか?とりあえず日本語でそのときの会話を再現しますと、

僕「あ、ホセ。今日あんたのライヴ観に来てんで」
ホセ「ありがと」
僕「ちょっと待って、サインちょうだい」
ホセ「ああ、オッケー」

このとおり、特に勇気など必要ありません。ところで、千載一隅のチャンスを逃したそのアーティストはどなただったのでしょう。


●Lunaさん
相変わらずピンポイントで反応してくださいますね。ありがとうございます。はい、今思い返しても、あの6曲目が始まる瞬間があのライヴのハイライトだったと思います。聴かせてあげたかったですよ。

ライヴ記事は日記風に起こったことが順番に書いてあるからきっと読みやすいんですね。これからも日記風を目指しますので、ご贔屓のほど。
Posted by yas at 2007年08月20日 18:49
>千載一隅のチャンスを逃したそのアーティストはどなただったのでしょう。

▼これです。。。
http://ameblo.jp/hujiya/day-20070415.html

そっか、
ぺこ『あ、グレゴリー?、今、おまえさんの美術展をみてきたんダニ?』
グレ『ありがとー』
ぺこ『この写真集にサインをくれるけ?大事にするでねー』
グレ『ああ、オッケー』

…といった所かしら?
うふふ。
やってみるダニ♪
Posted by ぺこぽこ at 2007年08月21日 19:19
●ぺこぽこさん
しばらく留守にしていたもので、一週間近くも返事せずに放置してしまいました。ごめんなさい。

そういえば、この記事読んだ覚えがありましたよ。これで次回のチャンスは、この長野弁を英訳すればばっちりですね。

Posted by yas at 2007年08月27日 14:28
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