2019年07月21日

後悔 Pet Shop Boys 「Inner Sanctum」

5056167112167.jpg Pet Shop Boys 『Inner Sanctum』

年を取ると何でもつい最近の出来事と思いがちになってしまうけど、改めて考えてみると実はそんなに最近でもなかったというようなことがよくある。ペット・ショップ・ボーイズの今のところの最新アルバム『Super』がもう3年も前のアルバムだなんて。

90年代から毎回アルバム発表ごとに律儀にツアーに出ている彼らだから、このスーパー・ツアーはそのアルバム発表からもう足掛け4年も続けていることになる。その最後のレッグとなったアジアツアー、今年の3−4月のシンガポール、香港、東京、大阪という4都市は、今僕が住んでいるところからは微妙に遠く、でも無理すれば行けなくはないといった程度の距離だったんだけど、なにしろ6年前にマニラで観たエレクトリック・ツアーが、僕にとっては選曲といい周りの観客といいちょっとイマイチの印象だったものだから、今回はまあいいや、って思ってしまったんだよね。今回取り上げるこのライヴBD/CDが出ることも、その頃にはもうわかってたし。買って家で観ればいいや、と。

知り合いやツイッターでフォローしている何人かが武道館でのライヴをべた褒めしていたのを読んで、それをおそらく同じセットであろうこのBDを期待を持って観てみたんだけど、いやもう、最初に出てきた感想が今回のタイトルですよ。本当に、大後悔。無理してでも行っとけばよかった。なんでまあいいやなんて思ったんだか。

1991年のパフォーマンス・ツアー以来、ほぼ全てのツアーをビデオ作品として発表しているPSBの、これは7つ目の作品となるはず(1989年に当初は日本のみで発売された8曲入り『Highlights』を入れると8つ目)。そのほぼ全部と、ビデオ作品にはならなかった前述のエレクトリック・ツアーと比較してみても、今回のものは選曲、演奏、演出、どれをとってもダントツでいい。あと、これが確かPSBとしては初めてBDで出したビデオ作品だから、これまでのものとは全然画質が違う。


ロンドンはコヴェント・ガーデンのロイヤル・オペラ・ハウスの外観で幕を開けるビデオはまるで映画のオープニングのよう(ちなみに最後のクレジットもまるで映画のエンディング)。そこからカメラがゆっくりとオペラ・ハウスの中に入り、『Super』のジャケにちなんだカラフルな丸(球)をモチーフにしたステージへと移る。「Inner Sanctum」のイントロに合わせて左右に並んだ大きな球がゆっくりと回転すると、PSBの二人が球の裏側から現れるという仕組み。このあたりは、最初に付属のCDだけを聴いていたときには、どうしてその部分で大歓声が上がるのかがよくわからなかったから、このセットはまずBD/DVDを先に観るのがおすすめ。

エレクトリック・ツアーのときとは違った、ニールは半球状、クリスは顔をすっぽりと覆う球体の被り物で登場。サングラスをかけたニールの顔の下半分だけを見ると、ああさすがに歳食ったなあ、という感じ。もう今月65歳になるんだから当然なんだけど。でも、この人の声だけは全然変わらないね。もともと無理しないと声が出ないような音階の曲もないから、変にフェイク入れないと歌えないような曲もないし(あえてオリジナルとはメロディーを変えて歌っているようなのは別)。

3曲目、最新アルバムからの「The Pop Kids」に続けて、「In The Night」なんて珍しい選曲。ファーストアルバム前のシングルのB面だよ。少なくとも上に書いた、これまでのツアーでは演ってないはず。そこからさらに続けて、また最新作から「Burn」へ。このメドレーの途中で、さっき二人が登場した巨大な球がステージ脇にどけられて、背後から登場した3人のサポートメンバーのうち1人の女性が前に出てきてニールとデュエット。でも、銀色のガッチャマンみたいな被り物してるから顔がよくわからない。

続く「Love Is A Bourgeois Construct」(アルバム『Electric』で一番いい曲なのに、何故かエレクトリック・ツアーでは演奏しなかった)では、その同じ彼女がエレクトリック・ヴァイオリンであの印象的なイントロのリフを奏でる。これはいいな。ガッチャマンの被り物を取ったら、アジア人っぽい風貌のその彼女。クレジットで調べてみると、クリスティーナ・ハイゾン(Christina Hizon)という名前。本人のサイト見ても特に明記してないけど、フィリピン人の名前だよね。

前半(CDでいうと1枚目)はその後も「Love Comes Quickly」なんて初期からの固定曲だと思いきや実はこれまでのツアーではほとんど演ってなかったものや、定番シングル曲の数々、最新アルバムからの曲が続く。前半の締めは「West End Girls」(ビデオだと別に前半後半分かれてるわけじゃないけど)。たしかこの曲のときかな、観客の大合唱を聴いて、ずっと無表情なクリスが一瞬ニヤリとする瞬間が見られる。前半で聴いてすぐわからなかったのが「The Dictator Decides / Inside A Dream」という、最新作とひとつ前のアルバムからの2曲のメドレー。どうもここ数作のアルバム、あんまり聴き込めてないんだよね。だから気が付かないうちに3年経ったりしてるわけだけど。

CDの2枚目、ここからの流れが凄い。別に前半が悪かったわけじゃないけど、まったく捨て曲なしの見事な流れ。「Home And Dry」にメドレーで続くインストの「The Enigma」って、どのアルバムに入ってたっけ。持ってるCD全部見てみたけどわからん。でもその曲のリフが出てきたときに皆さんやたらと盛り上がってるよな。なんで知ってんの?

『Electric』からの地味なシングルカット「Vocal」のエンディング、バックの演奏が少しずつ聞き覚えのあるパターンになってきたなと思ったら、そこから一気に「The Sodom And Gomorah Show」。ここしばらくのツアーではセトリから外されていたこの名曲、パッケージの表記ではさっきの「Vocal」とメドレーになってるけど、ほぼオリジナル通り最後まで歌い、そのまま続けて、今度はパッケージではメドレー扱いされていない次の「It's A Sin」へ。2013年〜2006年〜1987年をさかのぼるタイムトリップみたいな怒涛のメドレー。このライヴのハイライト。

「古い曲を演るよ、新しいバージョンで」とニールが紹介して、その通り聞いたことのないイントロに導かれて始まったのが「Left To My Own Devices」。CDではわからないけど、ビデオだとここでカラフルな風船みたいなコスチュームの「スーパー・ダンサーズ」が登場。

「次も古い曲を新しいバージョンで。どの曲かな? 沢山あるからね」と言って、静かに歌い始めたのは「Heart」の歌詞。わあ、こんなスローな「Heart」初めて聴いた、と思っているうちに、おや?なんか演奏のコード進行が変わっていくぞ。そう気付いた瞬間、「Go West」のあのイントロが。。ちょっとここは、不覚にも涙が出そうになった。これをその場で体験していたかもしれないことを想像すると、もうとんでもなく悔しいよ。

メンバー紹介を含めた長い長い「Go West」で本編は終了。「ウィ・アー・ザ・ペット・ショップ・ボーイズ」って、定冠詞付けるんだね。前からそうだっけ? アンコールは割とオリジナルに忠実なバージョンの「Domino Dancing」。そして、「もう1曲演ろう」とニールが言った瞬間に、あの「Always On My Mind」の必殺のイントロ。わかっていても背筋がぞくっとする。そして最後は「The Pop Kids」のややスローなバージョンを繰り返し、大団円で先にステージを去るPSBの二人。スーパー・ダンサーズが踊り、バンドの3人が演奏を続ける中、緞帳がゆっくりと下りてきて、演奏終了の瞬間ステージが見えなくなる。完璧なラスト。

こういう展開にするのなら、どうして今回のツアータイトルを「The Pop Kids」にしなかったんだろうと思う。前半の「The Pop Kids」の紹介の際に「今夜は僕らはみんなポップ・キッズだ」とか言ってるし、ビデオのエンディングのクレジットのバックに流れるのもその曲だし。


この2018年7月27-28日のロンドンでのライヴ盤に、ボーナス映像として2017年9月17日のロック・イン・リオでのほぼ同内容のビデオが収録されている。カツ丼を注文したらおまけでミニ天丼が付いてきたぐらいのボリュームだ。本編と比べると、前半のいくつかの曲がカットされているのと、大団円の「The Pop Kids」がない。そうか、ツアーの初期にはその曲はそれほど重要視されていなかったのか。

ここ30年ほど、律儀に2-3年おきにアルバムを発表してきた(そして、2012年まではその2-3年のインターバル中に何枚もの編集盤やベスト盤やライヴ盤を出し、結局毎年なんらかのCDを発表してきた)PSBが、2013年の「Electric」から2016年の「Super」の間には何も発表せず、そして2017年以降はこのツアーに明け暮れていたので、さすがにそろそろ次のアルバムかと思っていたら、今年になって4曲入り12インチシングル『Agenda』を発売。これはどういうことなんだろう。ネタ切れ? それとも、これとは別に次のアルバムは出るのかな? 悪い出来のシングルではないんだけど、ちょっとこれじゃ物足りない。

まあいいや、こんな凄いライヴを見逃した罪滅ぼし(?)に、その新しいシングルと、イマイチ聴き込めてない最近(といっても2012年以降)の3枚のアルバムをもう一回しっかり聴き込んで、いつになるかわからないけど、次のツアーに備えておくことにしよう。もう聴いてすぐわからないなんて曲がないようにね。


posted by . at 17:51| Comment(0) | ビデオ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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