2017年12月03日

Tamas Wells live in Shenzhen 2017

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開演の1時間半前に着いたのに入口前の長蛇の列に悔しい思いをした去年の反省を活かして、今回は開演の3時間半ほど前にB10に行ってみた。

もちろん、誰もいない。しょうがないので、B10周辺、深圳随一のおしゃれスポット華僑城の中を写真など撮りながらうろうろする。相変わらずマニアックなノイズ系のレコードばかり置いてあるおそらく深圳唯一のレコ屋を覗いたりして。

まだ誰もいないのはわかってるけど、なんだか気が気でなくて1時間ほどでまたB10に戻る。やっぱり誰もいない。入口前でぼーっとしていると、そこに現れたタマス達が僕に気が付いて声を掛けてくれた。去年この場所でライヴは観たけど、こうして会って話すのは3年半ぶりか。去年は不参加だったクリス・リンチもいるよ。

「今から他にすることないなら一緒に楽屋おいでよ。これからサウンドチェックだからあまり相手できないけど」とネイサン。というわけで、思いがけずリハーサルまで見られることになった。

ステージ上には、去年はなかったグランドピアノが置いてある。「これがあるなら、持ってきたキーボードは使わないからセッティングしなくていいよ」とタマスが言っているのが聞こえる。ドラムキットも既に置いてあって、そこに持参のシンバルをセットするクリス・ヘルム。足元は裸足にサンダルだ。

ネイサンは赤いフェンダーのベースでしきりに新曲「I Threw A Shoe At Their Alsatian」を練習している。クリス・リンチの綺麗なサンバーストのテレキャスターに「それいいね」と言うと、新しく買ったんだと嬉しそう。タマスは会場の一番後ろに立って、おそらく、ステージがどんな風に見えるか、音がどう聴こえるか、難しい顔をしていた。

ステージに戻ってきたタマスがピアノで「Melon Street」を弾き出すと、クリス・ヘルムがメロディカを持って来て隣の床に座り、合わせて演奏を始める。これは、今まで聴いた中で一番素敵なバージョンの「Melon Street」かもしれない。期待が高まる。


本番に移ろう。今回はめでたくほぼ最前列(ぎりぎりまでタマス達と楽屋で話してて、開場の瞬間に出遅れた)で、タマスとクリス・リンチの中間ぐらいの場所を確保。ここならステージ左手のピアノもよく見える。予定時刻の20時半ちょうどに暗転。メンバー4人が登場して、1曲目は「Fine, Don't Follow A Tiny Boat For A Day」。去年のツアーではこの曲は演ってないから、中国のファンにとっても久々に聴く曲のはずだ。

ステージ中央に、いつものマーティンを抱えたタマス。右側にクリス・リンチ。左側にグランドピアノが置いてあって、その後ろあたりでネイサンがベースを弾き、中央後方のドラムキットにクリス・ヘルムが座る。そういえば、タマスのライヴでベーシストが入るのを見たのは今回が初めてかも。

間髪入れずに「Bandages On The Lawn」、そして、「次の曲は今度新しく作ったアルバムから」と「I Threw A Shoe At Their Alsatian」へ。一旦演奏を始めてから、「曲の説明をするのを忘れてた」と止めて説明を始めるタマス。「抽象画を習い始めたけど、まだ下手なんだ。で、近所に住む人が僕の絵を見てヘタクソだと言うから、彼らが飼ってるジャーマンシェパードに靴を投げてやった」「みんな、犬には靴を投げるよね?投げないの?僕だけ?」とか言って笑わせる。そして、今作屈指のポップなメロディーを持つこの曲へ。

続いてタマスが「Vendredi」のイントロを弾き始めると、ドラムキットのところからクリス・ヘルムが走ってきて、ピアノでイントロの「ポーン」という音を間一髪で間に合わせる。お見事。二音目の「ポーン」は、間違えたのかわざとなのか、最初の音より高い(でも、和音が合ってるから、彼の前任者のように間違っては聴こえない)。そして、三音目に(今度は確信犯で)更に高い「ピーン」って音を出したら、タマスがそこで笑ってしまって歌えない。「ごめん、もうしません」とクリス。

すっかり複雑になった「Friday」の後半のコーラスを聴いて、上手になったものだと思う。僕がタマスのライヴを最初に観た10年前のO-nestでは、もちろん彼一人だったからコーラスなんてなかったんだけど、その後何度も観たいろんなメンバーの組み合わせの中でも、4人全員がハモれることなんてなかったからね。

ハーモニーもそうだけど、楽器演奏についても、マルチプレイヤーがバンドに2人いるというのは大きいね。基本の編成は最初に書いた通りだけど、クリス・ヘルムがピアノを弾くときはネイサンがドラムス。逆にクリスがドラムスに留まったままネイサンがピアノを弾く曲もあり(ネイサンによると、ピアノソロでアルバムを作っている自分よりもクリスの方がピアノが上手なんだそうだ)。ちなみに、クリス・ヘルムはメルボルンのスキッピング・ガール・ヴィネガー(Skipping Girl Vinegar)というバンドのドラマーらしく、そのバンドのことをクリス・リンチの奥さんが在籍していたことで知っていた僕にはちょっとした驚き。

タマスがピアノに座り、聴いたことのないイントロを弾き始める。なんだろうと思っていると、歌いだした歌詞は「Fire Balloons」だった。鳥肌。もうこんな早くに演るのか。そして、去年同様、後半はクリス・ヘルムの何かに取り憑かれたかのようなドラムスに、クリス・リンチのドローン効果満載のギターとネイサンのベースによるフィードバックノイズの嵐。やはり今回の公演の白眉もこの曲だろう。

そのノイズがまだ鳴っている間に、タマスが「Melon Street Book Club」を弾く。動から静へ。途中からクリス・ヘルムがメロディカで合奏。ところが、前曲のとてつもない演奏で息が上がっているのか、ロングブレスが続かない。それで焦ったか、ミストーンも目立つ。ああ、これはもったいない。終演後、こっそりネイサンに「あれはリハーサルの方がよかったね」と言うと「うん、そうだね。クリスも謝ってたよ。完全に消耗してしまったって。曲順考えないとな」って言ってた。

タマス以外の3人が右側のボーカルマイクの前に立ち、一本のマイクに顔を寄せ合ってのコーラスコーナー。まずは「Grace And Seraphim」。クリス・ヘルムは裸足だ。この人裸足でドラムやってるのか。手になんか持ってるから楽器かなと思ったら、水のペットボトル。「Fire Balloons」でそんなに消耗したんだね(笑)。「オールドスクールタイプの合唱隊みたいにしようとしたんだ。次の曲は君達がコーラスを頼むよ。きっとこいつらより上手くできるはず」と言って、「Valder Fields」へ。もちろん大合唱の観客。

もう1曲、「The Opportunity Fair」をそのスタイルで歌った後、各位持ち場に戻って、「The Northern Lights」。またしても鳥肌。「England Had A Queen」を挟み、「A Riddle」では観客の一人をステージに上げて口笛を吹かせ、続く「Writers From Nepean News」では初めてクリス・リンチがベースに移り、ネイサンがピアノ、クリス・ヘルムがドラムスという編成に。そして、「次の曲が最後」と言ってタマスがピアノに座って歌い始めたのは、「那些花儿」という去年とは別の中国語の歌。毎年違う曲を覚えてすごいなあ。「歌詞の意味はわからないんだ」とは言ってたけど。



曲の後半、他の3人がまだ演奏を続けているときに、タマスは歌を続けながらピアノからボーカルマイクに移り、腕を大きく振ったりステージ左右に挨拶をしに行ったりと、すっかりエンターテイナー。10年前の、「タマチャンと呼んでください」と恥ずかしそうにしていたあの人と同一人物とはとても思えない。成長したなあ。もう髪の毛にも結構白いものが混じり始めてるし、タマスも40だもんな。

そういえば、楽屋でタマスと話してたときに「いつか、家族で中国に一か月か二か月住もうと思ってるんだ。この国は気に入ってるし、娘たちも中国語を勉強できるかもしれない。アパートの家賃はいくらぐらいかな?」って聞くから「よくわからないけど、きっと1000ドルぐらい?」って言うとまんざらでもなさそうな顔をしてたから、かなり真剣に考えてるのかも。でも、適当に答えてしまったけど、深圳で月1000ドル(米ドルか豪ドルかも言ってないけど)なんてちょっと厳しいか。ごめん、タマス。

アンコールに応えてすぐ再登場し、「The Crime At Edmond Lake」。そして、最後は新曲「Prone To Losing」。これも後半、「Fire Balloons」に負けないほどの激しい盛り上がりを見せて終了。実は、終演後にクリスに見せてもらった自分用のセトリによると、これまでの数公演ではこの後に「Postcards On The Bathroom Door(「Archibald」という仮題で書いてあった)」があったとのこと。あれも好きな曲なのに、聴けなくて残念。

更に言うと、「Melon Street」の代わりに「Benedict Island」を演奏した日もあったらしいし、「First Time」という仮題も書いてあった。ネイサンと話してたんだけど、中国ではすぐに観客がおしゃべりしたりするから、なんとか楽しませようと違う曲を試したり、観客をステージに上げて口笛を吹いてもらったり、いろいろと趣向を凝らしてるんだそうだ。「日本人はその点、真剣に聴いてくれるからね」って言ってたけど、確かに日本のライヴで誰か一人ステージに上がってきて口笛を吹けと言われても手を挙げる人はいなさそう。

【12/4追記】クリス・リンチから返事が来た。「First Time」は「A Reason Not To Stay」の仮題だって。ちなみに「The Northern Lights」と「England Had A Queen」の間に演奏していたようだ。最初の4公演では新作から5曲も演奏したんだ。なんで深圳では落としたんだろう。それだけがちょっと残念。

終演後、ロビーの物販のところでサイン会。日本盤の『The Plantation』は紙ジャケだけど、中国盤はプラケース(ちなみに前作『On The Volatility Of The Mind』も)。しかも、今回のツアーで販売しているものはこのツアー用に急遽特別プレスしたもので、オフィシャルリリースは来年になるらしい。

殆どが若い女性ファンで、花束を持ってきた人や、メンバーの似顔絵を額縁に入れて持ってきた人など、熱心なファンが多い。サイン会と写真撮影も、ほとんどライヴ本編と同じぐらいの長さがあったんじゃないだろうかと思うほど、延々と続いていた。決してそういうことに嫌な顔をするメンバー達じゃないけど、最後の方はさすがに疲れていたみたいだ。そりゃ、4日間で4つのライヴをこなし、更にこの後2日残ってるからね。少しは体力を温存しておきたいと思ってもおかしくないだろう。


その他、タマス達と話せたことの備忘録。

やっぱり、アルバムにもツアーにも参加していないアンソニーのことが気になったので真っ先に聞いてみたんだけど、お子さん達が中学生になって、ちょっと今は音楽に没頭する気分じゃないだけで、別に喧嘩別れしたとかヘタクソだから外したとかそんなんじゃないらしい。「確か、前作のツアーの一環でメルボルンでライヴをしたときには、彼も参加してくれたよ」とネイサン。「いつかもっと先に、子供たちが手を離れたら、また一緒に演れるんじゃないかな」って。アルバムの参加メンバーに彼の名がなかったのは寂しかったけど、サンクスクレジットの一番最後に、アンソニーへの特別の謝辞を見つけたときはちょっとじわっときたよ。

オーストラリア本国での『The Plantation』のリリースも来年になるとのこと。長年彼のアルバムを出してきたポップブーメランはもうレーベルとして機能していないらしいけど、そこのスコット・サーリングが自分のコネクションを使ってリリースしてくれる会社を探してくれているらしい。ちなみにタマス曰く「スコットは確か2万枚だかなんだかのCDを持っているよ。君とどっちが多いかな」って、そんなレコード会社の社長と比べないでくれ。さすがにうちには2万はないよ。

最初、『The Plantation』は11曲入りのアルバムとタマスが自分のFBでアナウンスしていたけど、結局10曲になった件。実は、メドレーぽくつながった2曲があったんだけど、どうもその前半の曲が少し弱かったために途中でカットし、後半だけを収録したそうで、その後半が今作唯一のインスト曲「A Wife To A Gunfight」なんだって。

僕が観に行った2012年のシンガポールでのライヴで、オープニングで会場が明るくなった時に最前列に座っていた僕を見て笑いそうになったタマス、実はライヴが始まる前に楽屋で、場内を映したモニターを見ていたら僕がいることに気づいていたらしい。なんでいるんだ?って。でも、そこに座ってるのを知っていたのに、いざステージに出て僕の顔を見たら笑い出しそうになってしまったんだって。

去年のツアーからタマス・ウェルズ・バンドに参加し始めたクリス・ヘルムは、実はタマスの学生時代からの友達だそうだ。あんなに上手なのに、なんで今まで一緒にやってなかったのかな。まあ、最初から彼が入ってたら、きっとアンソニーの居場所がなかったかもしれなかったから、僕にとっては結果オーライだけどね。ちなみにネイサンとクリス・リンチも学生時代からの付き合いらしい。その他にも、誰と誰の家がどれぐらい近いとか(タマスとアンソニーの家は2ブロックしか離れてないらしい)、キム・ビールスがタスマニアのホバートに引っ越すとか、ずいぶんいろんなことを教えてもらってとても覚えきれない(笑)


Setlist 02 December 2017 @ B10 Live Shenzhen, China

1. Fine, Don't Follow A Tiny Boat For A Day
2. Bandages On The Lawn
3. I Threw A Shoe At Their Alsatian
4. Vendredi
5. I'm Sorry That The Kitchen Is On Fire
6. Please Emily
7. Thirty People Away
8. Moonlight Shadow
9. Fire Balloons
10. Melon Street Book Club
11. Grace And Seraphim
12. Valder Fields
13. The Opportunity Fair
14. The Northern Lights
15. England Had A Queen
16. A Riddle
17. Writers From Nepean News
18. 那些花儿

[Encore]
1. The Crime At Edmond Lake
2. Prone To Losing
posted by . at 19:50| Comment(2) | コンサート | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
遠征(ってほどでもないんでしょうが、yasさんには)お疲れ様でした。
何度も様子を見に行っちゃうところ、こないだのガーランドの時みたいで笑っちゃいましたよ。

私にもようやく時間ができたので、タマスのライヴはぜひ見たいところですが…いつ来てくれるんでしょうか。それまでは、アルバム聴いて待ってますよ。落ち着いていて素敵なアルバムですね。
Posted by xiao at 2017年12月05日 15:10
■xiaoさん
ひさしぶりにログインしましたが、よく見ると僕は頂いたこのコメントを半年以上も放置していましたね? もうすっかりお忘れでしょうが、タマスのライブはよかったですよ。その後タマスがアップしたビデオにちらっと映りこんでたりしました。

結局このアルバムのときに来日しなかったですね。せっかくリリコさんが頑張って世界最速でリリースしてくれたのに。まあ、気長に待ちましょう。
Posted by yas at 2018年07月22日 18:50
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