2007年03月13日

懐かしい不安感 Shearwater 「Palo Santo」

覚えている限りで一番古い幾つかの記憶。多分僕が5歳か、もしかするともっと幼い頃だったのかもしれない。人ごみで、一緒にいたはずの親とはぐれてしまって、ひどく不安な気持ちになったことが2回ほどある。一度は(確か梅田の)繁華街、もう一度はどこかのお祭りのような場面。どちらも夜だったので、普段は見慣れないネオンや提灯など、様々な明かりが頭の周りに灯っていた。(子供なので)断片的にしか読めない奇妙なポスターなんかのこともやけに覚えている。まるで異空間に紛れ込んでしまったような感覚。

迷子になったとか、そんな大きな事件ではなかったんだと思う。きっとほんの少しの間、親の姿が見えなくなってしまったぐらいのことだったんだろう。そのとき怒られた記憶も、大騒ぎされた記憶も残っていないから。だから、そんな些細な出来事をいまだに覚えているのが不思議なくらいなんだけど、後にその時の光景と共に度々よみがえってくるあの“懐かしい不安感”は、今でも僕の趣味・嗜好に影響を与えている気がする。


ジョナサン・メイバーグが書くメロディーと彼のか細い声を聴くと、何故だかわからないけれど僕はいつも“懐かしい不安感”とともに、あの光景を思い出してしまう。

僕のブログに何度か登場しているオカヴィル・リヴァーで鍵盤類から弦楽器までありとあらゆる楽器を演奏するジョナサンと、中心人物であるウィル・シェフのサイド・プロジェクト、シアウォーター。先日近所のCD屋で彼らの見慣れないジャケットを見かけて、新譜が出たんだと思って調べてみたら、なんと発売は去年の5月。ちょっと注意を怠ってたね。

Palo Santo シアウォーター 「Palo Santo」

ファルセットも交えたか細い、しかし時には激昂するボーカル。基本的には繊細なアコースティックで、でもあちこちに不思議な音が紛れ込んでいる演奏。少し霞がかかったような、エコーの効いた音作り(そう、ちょうどこのジャケットのイメージのような)。そして何よりこの、人を心細い気持ちにさせる、でも心地よいメロディー。

2曲目「Red Sea, Black Sea」のイントロなんて、本当にどこか不思議な異国で奏でられている音楽みたいだ。冒頭の説明が僕の独りよがりな思い出でよくイメージが涌かないなら、映画「千と千尋の神隠し」で主人公が迷い込む不思議な街で流れているような音楽(実際にあの映画でかかっていた曲とは全然違うけど、あくまでも僕のイメージで)といえば少しは感触がわかってもらえるだろうか。


地味だけど、聴くほどに味が出てくるアルバム。発売から殆ど1年遅れたけど、買ってよかった。でも、もしこれからこのグループを聴いてみようという人には、この一つ前に出た(間にミニアルバムを挟むけれど)こちらの方をお勧めする。

Winged Life シアウォーター 「Winged Life」

04年に出たサードアルバム。幻想的なジャケットに写るのはShearwater(日本名ミズナギドリ)だろうか。これは新作以上にさっき僕が書いた彼らの特徴がよく出た好盤。「My Good Deed」や「The World in 1984」なんて、どうしてこんなメロディーが書けるんだろうと思ってしまう。新作には歌詞どころかメンバー名もろくに書いていないけれど、このアルバムにはちゃんと(ちょっと難解な)歌詞が載っているし。メンバー名も載っているが、誰がどの楽器を担当して、どの曲で歌っているかということはきちんと書かれていない。メンバー名と全ての楽器の名前がずらっと書いてあるだけ。その辺の情報を詳しく知りたければ、彼らのオフィシャルサイトに行けということなんだろうけど。ちなみにこのサイトの扉ページの写真、僕は好きだな。


この記事を書こうとしてあれこれ調べていたら、なんと彼らがマタドールレコードと契約して、4月10日に「Palo Santo」が2枚組で再発されるという情報を見つけた。くそぅ、買ったばかりなのに(笑)。でもそれは、全11曲中5曲を新たに録音しなおし、8曲の新曲を2枚目に収めるというもの。ジャケットも変わるし、これはもう買い直しじゃなくて買い増し決定だね。そのうち僕がこないだ買ったオリジナル盤の方が希少になるかもしれないし(笑)

しかも、再発盤のLPには、2枚組CDにも入っていない2曲が追加されるという話だ。これはもうLP買うしかないだろう。アマゾン見てたらもう早速再発盤が「近日発売」扱いで載ってるね。しかも現行の1枚ものと同じ値段。これは今から買う人は迷うね。曲数の多い再発盤か、そのうち希少になって高く売れる現行盤か(笑)


posted by . at 20:16| Comment(19) | TrackBack(0) | アルバム | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
冒頭の微笑ましいエピソードにつられ、珍しく一言一句洩らさず最後まで読みました。わたしもよく迷子になったなーとか。
で、シアウォーターですが、かなり興味をそそられました。メロディーラインの美しい曲が好みなのです。でも、サードアルバムのジャケットは巨大イカのように見えました。
Posted by 麒麟 at 2007年03月13日 20:53
「懐かしい不安感」、素敵なタイトルですね。かえでさんに頼んだら、短編小説の1本ぐらいすらすらっと書いてくれそうな気がします。

幼いときの感覚的な記憶が、その後の自分の趣味・嗜好に影響を与えているという感じ、何となく分かります。
「シアウォーター」私も興味をそそられました。サイトの扉の人形はゴブリン?お昼寝から起きてこんなん窓辺にいたら嫌ですね。
Posted by にんじん at 2007年03月14日 15:17
>中心人物であるウィル・シェフ
この人がオカヴィル・リバーのボーカルなんですよね? この人の声、好きです。
ちょろっと試聴してみましたが「Winged Life」の方では他の人も歌ってますか? ジョナサン?

ウィルくんの声と美しいメロディのバランスが好きです。透き通るような声だったら全然違う印象でしょうね。また気になるアルバムが増えてしまいました。
Posted by カブ子 at 2007年03月14日 16:14
オカヴィル・リヴァーは注文したんですけど、まだ届いてないんですよ。というのも、その後HMVがさらにお徳なセールをやっていたので、一度キャンセルしてオーダーし直しちゃったものですから・・・。しかも入荷の遅そうなものと一緒に(笑)。まあ、楽しみはとっておくということで。
シアウォーターも聴きたいなあ。アマゾンは個人的にあんまり好きじゃないので、せっかくのアフィリエイト利用できないと思いますので、先に謝っておきます。ごめんなさい!
Posted by クロム at 2007年03月14日 20:58
どうしたのっ?記事が短いですよ。
短いけどすごく魅力的で惹かれました。
yasさん、冒頭部分みたいな文章、もっと書いてよ。もっと読みたい。

デートのドライブでよく聴いた音楽は、後々当時の恋人を思い出すよすがになったりします。でも、迷子の記憶とSearwaterは直接的関係はない。こんなふうに純粋に記憶を喚起する音っていいですね。電話帳を見ると高熱にうなされたときの前頭葉の感じがよみがえる程度の喚起力しかない私からすれば、yasさんが羨ましいかぎりです。

Searwaterはものすごく聴きたい欲を刺激しました。試聴してみようとしたら、何故か「できましぇ〜ん」と断られました。くっそー!なんでよ?聴いてみたいよ!聴きたいよ!!聴かせて〜!!
これくらい言っておけば大丈夫でしょうか?

因みに私なら迷わず再発盤と現行盤両方買います。そして高値になった頃を見計らってオークションに出品し、利益をあげます。
Posted by ひそそか at 2007年03月15日 09:49
私も視聴してみましたよ。いいですね。アーティスト名のイメージに引きずられたのか、水の中で聞いてるような感じがしました。(まんまや)

音楽なんてすっかりご無沙汰…というか、毎日子供がお遊戯会で使った音楽を聞かされていたので、すごく新鮮。。。

そうそう、私の一番古い記憶は、たぶん1歳代後半くらいの、歩行器で移動していたときのものです。詳細は、長くなるので割愛させていただきます(笑)
Posted by ぴぐみん at 2007年03月15日 16:09
●麒麟さん
記事校了後わずか半時間での1ゲット、ありがとうございます。しかも、ちゃんと読んでくれたなんて(笑)

興味をそそられましたか。それは嬉しいです。聴く機会があればいいですね。

ジャケット、僕はてっきりぺんぎんだと思っていたのです。他に水の中を泳ぐ鳥がいたなんて。


●にんじんさん
あ、逃避行中にお立ち寄りいただき、ありがとうございます(笑)

タイトルを褒めていただいて、嬉しいです。かえでさんの気分次第では「恥ずかしい保安官」とかに勝手に改題されて、官能西部劇にされてしまうかもしれません。それはそれで読んでみたいですが。

興味をそそられましたか。それは嬉しいです。聴く機会があればいいですね。

ゴブリン、お嫌いですか?僕は目覚めたときにこんな可愛いのが窓辺にいたら、その日なにかラッキーなことがありそうな気がしますけど。


●カブ子さん
シアウォーターの方でメインで歌ってるのは、多分ジョナサンだと思います。曲によっては(ファルセットじゃなくて地声で歌ってるものは)もしかしたらウィル?というのもあるんですが、よくわかりません。

オカヴィル・リヴァーの方はどれもこれも結構どぎついジャケットのデザインなんですけど、こちらは皆神秘的というか綺麗なデザインばかりですよね。僕はどちらも好きです。ジャケ写評論家としてはどうでしょうか?

>気になるアルバム
例のレンタル屋さんに置いてあるでしょうか。


●クロムさん
HMVのその後のお得なセールって何でしたっけ?今やってるのは、厳選輸入盤2枚で25%オフってやつですよね。こないだクロムさんが買われた輸入盤なんでも3枚で25%オフの方がお得じゃないですか?

>アマゾンは個人的にあんまり好きじゃない
これは結構わかります。HMVのサイトも、重くて遅いとか検索がヘタクソとかいろいろ文句もありますけど、文句を言いたいという意味ではアマゾンジャパンの比ではないですね。


●ひそそかさん
もっと読みたいなんて言っていただけると、すごく嬉しいです。ときどき書くように心がけますね。

>電話帳
読みすぎて高熱が出たんですか?

>これくらい言っておけば大丈夫でしょうか?
知りません。

>私なら迷わず再発盤と現行盤両方買います
もちろん僕もそうです。強いて言えば、現行盤はもう持っているので、再発盤の曲目が違うCDとLPをそれぞれ一枚、それから将来売る用に現行盤をもう一枚ってところでしょうか。

●ぴぐみんんさん
あ、試聴できたんですね。やっぱりひそそかさんは普段の行いが悪いんでしょうか(笑)

>長くなるので割愛
そういう時のための「ひそ一」です。記事、お待ちしていますよ(笑)

Posted by yas at 2007年03月15日 18:38
>HMVのその後のお得なセール
実は数日間だけダブルポイントセールやってたんですよ。ウフフ、これを待ってたのよ〜!しかも厳選輸入盤とか書いてますけど、実際は売れ筋のみ外しただけで、私が買おうとしているCDは全部「厳選」でした(笑)。
Posted by クロム at 2007年03月15日 21:19
官能西部劇「恥ずかしい保安官」、私も読んでみたいです。いつか読む機会があるといいですね。

ところで清の国に愛の逃避行にイってしまった方はわたくしではありません。うーん、一体どなたでしょう?

ところでyasさんがゴブリン好きとは知りませんでした。
彼、結構悪いこともいっぱいしてきたらしいですよ。一筋縄ではいきませんよ。
でも好きならしょうがないですね…。
Posted by にんじん at 2007年03月15日 23:25
気分がそんなに悪くなかったので「懐かしい不安感」書いてみました。
「恥ずかしい保安官」のほうは、バニーガール姿で網タイツから毛がはみ出ていて、もっこりした部分を両手で恥ずかしそうに隠している、顔がガキデカな人しか思いつきません。
これはみかちゃんの気分がいいときにペイントで描いてもらってください。
Posted by かえで at 2007年03月16日 09:52
ちょっと書いてみたことがあっさり実現する…ここはひょっとしてそういう空間だったんですか? おねだりブログ? 
じゃあ近々みかちゃんがバニーガールなガキデカのイラストをペイントで描いてくれて、miniraちゃんがゴブリンをお土産に持ってきてくれるのでしょうか?
Posted by にんじん at 2007年03月17日 00:03
●クロムさん
あ、そういえばダブルポイントのお知らせ、来てましたね。僕、CDの値段には異常に厳しいくせに、ポイントには結構無頓着なんですよ。駄目ですね、徹底してなくって。これを読んで調べてみたら、今HMVに3500円分のポイントが貯まってました。また買わないと… 今日も近所の安売りスーパーで2枚以上買えば2割引というのにつられて9枚も買ってきたばかりだというのに。


●にんじんさん
>恥ずかしい保安官、読んでみたいですか?僕は語呂合わせだけで書いてみたものの、こんな官能小説じゃちょっとなぁって思ってたところなのに(笑)

とりたててゴブリンが好きという訳でもないんですが、あの写真のゴブリン、なんか恵比寿様みたいにニコニコしてて可愛いくないですか?


●かえでさん
手際の早いお仕事、ありがとうございました。自分で言い出しておきながら、「保安官」の方だったらどうしようかと思っていたので、安堵しました。相変わらず、見事な腕前ですね。


●にんじんさん再び
>おねだりブログ
ジェブ・ロイの記事に至っては、ちゃんとおねだりする前に出てきましたからね。

みかちゃんとminiraさんがこのコメント欄を読まれていることを期待します。
Posted by yas at 2007年03月17日 19:32
こんにちはー。最近、ゆっくり巡回しているminiraです。出遅れてすんまそん。
ゴブリン...の捕獲ですか。
あのThe Lord of The Ringsに出きたひょろひょろっていうやつですね。
ちょっと夏にアイルランドでも行って探してきます。(笑)あ、それよか、あの映画のロケ地はNZだったはず。きっとNZの山の合間に彼らはいるはずですよー。(と責任回避してみる:笑)

ところで、
私、シアウォーターのCD、絶対買います。
この記事読んで、イメージ膨らませてたら、かえでさんの作品に行き着いて...絶対シアウォーター聴きながらかえでさんの作品を読みたい!と思った。絶対そうするっ。

いいコラボでしたね。これからもちょくちょくお願いいたします。
Posted by minira at 2007年03月18日 18:17
ゴブリンは、ハリー・ポッターに出てくる銀行で働いてるよね(笑)

ゴブリンの人形みたいの、家にあったような気がして捜したら、トロル(ノルウェーの妖怪)でした。こっちは、ハリー・ポッター1でハリーとロンとハーマイオニーが戦ってましたね。

私は絶対迷子にならない子だったから、3回迷子になっても無事帰って来た(もちろんうれしかったですよ)弟が、不思議でした。
Posted by LoonyLuna at 2007年03月19日 08:15
●miniraさん
ロード・オブ・ザ・リングスにゴブリン出てきましたっけ。ひょろひょろっとしたのは、もしかしてゴラムですか?でも一応今度山に行くときには気をつけて見ておきます。

ところで、ここまで気合入れて買う宣言をしていただいて、ありがとうございます。実はですね、長くなるので記事からは削除したんですが、僕のお勧めの「Winged Life」、イギリス盤は別ジャケなんですよ。これもまた雰囲気のあるいいジャケなんで、内容は同じなのに僕はイギリス盤も欲しくなってしまっています。

これ↓
http://www.amazon.co.uk/Winged-Life-Shearwater/dp/B000295TYQ/ref=pd_ka_4/202-7303533-1797453?ie=UTF8&s=music&qid=1174298494&sr=8-4

このジャケでLP出てたら絶対買うのになあ。

>いいコラボ
コラボのつもりはなかったんですが(笑)
にんじんさんという触媒あっての賜物でした。


●LoonyLunaさん
あ、ハリー・ポッターでしたか。僕最初のは観てるはずなんですけど、よく覚えてないですよ。

トロル(トロール?)、ウィキで調べました。不細工ですね(笑)

>絶対迷子にならない子
方向感覚が鋭いんでしょうか。
Posted by yas at 2007年03月19日 19:08
おっと、ゴラムとゴブリンは違うのですね。これは失敬!
Posted by minira at 2007年03月24日 04:35
●miniraさん
僕も詳しく知っているわけではありませんが、違うようですね。まあ、とにかくminiraさんにゴブリン捕獲をお願いするのは無理だということはわかりました(笑)。また今度なにか別のことを頼むことにしますね。
Posted by yas at 2007年03月24日 18:43
らじゃーです。
いつでもどうぞー。
Posted by minira at 2007年03月25日 01:11
●miniraさん
ははは。じゃあお言葉に甘えて何か考えておきますね。
Posted by yas at 2007年03月25日 05:41
コメントを書く
お名前: [必須入力]

メールアドレス:

ホームページアドレス:

コメント: [必須入力]


この記事へのトラックバック
×

この広告は180日以上新しい記事の投稿がないブログに表示されております。