2012年04月30日

Ron Sexsmith live in Tokyo

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派手なところは一切ないけれど、いい曲を達者なバンドの演奏に乗せて1時間ちょっと聴かせるだけ、そんな感じの実にシンプルなライヴだった。ロン・セクスミスのビルボードライヴ東京での来日公演。僕が行ったのは2日目のセカンドセット。東京での最終公演だ。

にも書いたことがあるけれど、僕は16年前に彼のデビューアルバムを買ったものの、周囲の高い評判に反してどうも今一つのめり込むことができず、その後に買ったアルバムはなんだかどれ聴いても同じ曲ばかりだなあと、中古屋に売り飛ばしていた程度の、とてもファンとは呼べないような立場だった。

それが、昨年のベストアルバムにも選んだ『Long Player Late Bloomer』を聴いて、あれ?この人ってこんなにいい曲書くんだっけと、昔からのファンにとっては今更何をというような感想を持ち、ちょうどタイミングよく来日公演が発表されたので、足を運んでみることにしたというわけ。

チケットを押さえてから、ちゃんと曲を予習しないとと思って、中古で何枚か買って聴いてみたものの、やっぱりどれ聴いても同じ曲に聴こえる(失礼)。まあ、新譜の曲はかなり聴き込んであるから、それだけでもわかればいいやと六本木に向かった。

そんないい加減なファンである僕が、どういうわけかこういう時に限ってえらくいい整理番号で、正面真ん中、ベストポジションに陣取ることができた。ステージを見渡してみると、中央のロンのマイクのところには楽器は置いてないが、その後ろにはヤマハのドラムキット。その右側に、ダンエレクトロの相変わらずふざけた形のベース(ダンエレクトロってベースなんて出してたんだね。調べたらDano 63って型だった)、更に右にはごっついアームのついたギブソンのセミアコと、これまたふざけた形の、なんだか紫色の虫みたいな12弦のエレクトリック・マンドリン(帰って調べてみたら、たぶんヴォックスのマンドギターってやつ)。そして、ステージ左側にもの凄い存在感ででんと構えているのが、スタインウェイのグランドピアノ。上にノードらしき赤いキーボードが置いてあるね。

ほぼ定刻にロンとメンバー登場。ハンチングをかぶった右端のギタリストがティム・ボヴァコンティ(Tim Bovaconti)、隣のヒゲメガネのベーシストがジェイスン・マーサー(Jason Mercer)、僕の位置からはロンが邪魔で全く見えない長髪ドラマーがドン・カー(Don Kerr)、ピアニストは妖怪人間ベムみたいな黒いハットに黒いスーツのデイヴィッド・マシスン(David Matheson)。と、かつてロンと一緒にアルバムを作ったドン以外は全く知らないメンバー名をビルボードのサイトから(どうでもいい見た目情報と共に)丸写し。ちなみに新作の制作メンバーとは全然違うんだね。

最近のアルバムジャケから推測して、いったいどんなに太ってしまっているんだろうと想像していたロン(なにしろ、この同じビルボードで目撃したマシュー・スウィートは、一連のアー写がいかに細く見せようとうまく撮られていたかを実感させられたほどの凄さだったからね)、意外に超デブというわけではなかった。なんだか一所懸命ダイエットしてるんだろうなと思わせるような涙ぐましい体型を、黒い襟のついたエンジ色の芸人みたいなジャケットと相変わらずヒラヒラしたフリルの沢山ついた水色のシャツに包んで。真上からスポットの当たったカーリーヘアは金髪かと錯覚したけど、上の写真でもわかるとおり普通に黒髪。手にしたアコギは小ぶりなテイラー。ペグからはみ出た弦をカットしてないから、6本の弦がヘッドのところでぐちゃぐちゃに絡まってる。

何も言わずに演奏を始めたオープニングは「Heart's Desire」(僕と違って全アルバムをきちんと聴き込んでいる一緒に観ていた友達が、いくつかの曲名を教えてくれた)。ティムがチロチロと弾く繊細なギターの音が心地良い。

その曲が終わって「じゃ、おやすみ!」と去ろうとするロン。あ、こういうお茶目なキャラだったんだね。「新作から何曲か演るよ」と、『Long Player Late Bloomer』の曲順通り最初の2曲を続けて。

その後も、「これは懐かしいファーストアルバムから」とか「これはセカンド『Other Songs』から」とか、比較的古いアルバムからの曲が多かったように思う。まあ、僕にとってはどれも同じ曲に聴こえるんだけど。

「また新作から何曲か。まずはアルバムのタイトルトラック」と言って「Late Bloomer」。それに続けて何も言わずに演奏したのが、僕が去年のベストアルバム10枚から1曲ずつ集めて作ったCD-Rに収録した、アルバム中一番好きな「Believe It When I See It」。ああこれは嬉しい。

10曲目でジェイスンとデイヴィッドがステージを降り、ロンとドンが並んでアコギを持って並ぶ(ドンのは4弦だったな。ベースでもなくウクレレでもなく、なんだか小ぶりなアコギ。ほんとにこの人たち不思議な楽器ばかり持ってるね)。隣でティムがマンドギターを添える。05年のセクスミス&カー名義のアルバムから「Listen」。これいい曲だね。アルバム買おう。

次の曲でさらにドンとティムがステージを降り、ロンが一人でピアノに座って1曲。ピアノもうまいね。ピアノといえば、ここで書くのが妥当なのかどうかわからないけど、デイヴィッドが弾いてもロンが弾いても、ピアノの音が本当に綺麗に聴こえる。僕にグランドピアノの音の何がわかるのかと言いたい人もいるかもしれないけど、いやほんとに、さすがスタインウェイと思わされたよ。

「次の曲はカバー」と言って始めた、アルバム『Exit Strategy Of The Soul』からの「Brandy Alexander」。誰のカバーと言ったのか聴こえなかったけど、コンサート前半からやたらと騒いでいた最上階にいたカナダ人らしき観客に向かって「君たちなら彼女のことわかるだろう」とロンが話しかけていたので、きっとカナダ人女性アーティストなんだろう。と思って、帰ってから調べてみたら(このアルバムは予習のために買っておいた)、ロンとファイスト(Feist)の共作曲だった。

9時に始まった本編は10時10分にひとまず終了(なんできっちり時刻を覚えてるかというと、この日の夜10時に発売開始となっていたジム・ボジア5月公演のチケットを押さえるべく、本編終了と同時にアンコールの拍手もせずに携帯からメールを送っていたから)。

ちょうどメールを送信したところでメンバーが再登場。「東京で最後の公演だから2曲演るよ」と、「Tell You」と、その曲が終わって間髪入れず歌い始めた、僕みたいなにわかファンにすらよくわかる、デビューアルバム1曲目「Secret Heart」で幕。「Secret Heart」では、自分でギターソロを弾いていたね。


これからまたバックカタログを全部集めなおすかというとちょっと疑問だけど、聴いてきて気に入った曲が入ったアルバムは買ってみようかなと思わされるような、いいライヴだった。アルバムカバーでもライヴ中でもいつも眉間に皺を寄せて人のことを睨んでるような三白眼のロンだけど(ひどい言い方)、アットホームなライヴは安心して聴いていられる気持ちいいものだった。ついでに、終演後に友達と行った飲み屋も、ふらっと入ったにしては中々味もよく料金も良心的だったので、今後ビルボードのときは贔屓にしてあげようかと思う。


Setlist 28 April 2012 (second set) @ Billboard Live Tokyo

1. Heart's Desire
2. Get In Line
3. The Reason Why
4. Wastin' Time
5. Late Bloomer
6. Believe It When I See It
7. Nothing Good
8. Gold In Them Hills
9. Nowadays
10. Listen
11. Fallen
12. Up The Road
13. Imaginary Friends
14. All In Good Time
15. Love Shines
16. Brandy Alexander
17. How On Earth
18. It Never Fails

Encore
1. Tell You
2. Secret Heart
posted by . at 21:16| Comment(2) | TrackBack(0) | コンサート | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
おじゃまします、2度目のメールです。

Ron Sexsmithの大阪公演(1st.set)に行ってきました。set-listは1/4位違っていたような気がしますが、彼の味わい深い歌声とバンドの温かみのある演奏で、とても心地好い時間を過ごすことができました。

Nick Loweファンの私は、彼やCostelloが絶賛していたデビューアルバムから、Ronのレコードをずっと買い続けてきました。管理人さんには「全部同じに聞こえる」であろう1st.〜3rd.が特にお気に入りで、最新作は少々ポップすぎる印象でしたが、You TubeでBBCのSongwriters circleなる番組での演奏を聴いて、「やっぱり良い曲書くわ」と思い直しました。

管理人さんの音楽的嗜好からすると、Martin Terefeプロデュース作品がお好きではないかと思いますが…"Exit Strategy Of The Soul"はお持ちのようですので、"Retriever"が一番のおすすめですかね。で、次が"Cobblestone Runway"?(このアルバム、結構「えーっ」という曲があるので、私的には微妙なのですが…。)

それにしてもRonは飾らないというか素朴な感じの人で、アンコール後の挨拶の際にstanding ovationしていたら(前から2番目の席ということはありましたが)、彼の方から握手を求められてビックリ!
管理人さんのお気に入りの"Believe It When I See It"のMCでも、「初めてイギリスのチャートに入ったんだ」とはにかんだ様子がかわいらしくて、シャツの趣味は今一つの気もしますが、応援したくなってしまいました。

次のアルバムではもっとポップになるか、それとも原点回帰するか、とっても楽しみです。
Posted by Tak. SPIKE at 2012年05月01日 23:53
■Tak. SPIKEさん

お久しぶりです。ニックのベスト盤記事以来ですね。長文コメント嬉しいです。お勧め盤まで教えてくださって、ありがとうございます。

全部同じに聴こえるなんて書いたのは半分誇張もありますけど、もちろん僕の聴き込みが足りないのが原因だというのはわかっています。お勧め盤に基づいて、まず『Cobblestone Runway』をマケプレで注文してみました(『Retriever』は見当たらなかったのです。この人もニック同様に極初期以外の過去盤が既に廃盤になってしまっているのでしょうか)。

ロンの方から握手をしてくれたなんて、いい思い出ですね。ビルボード大阪には行ったことがないのですが、あの会場ではスタンディングオベーションをしてくれるようなお客さんがほとんどいないので、彼もつい嬉しくてそうしてしまったのでは。

「Believe It When I See It」はシングルカット曲だったんですね。といっても最近のことだからシングル盤としては出ていないんでしょうけど。

とりあえず持っている過去盤と今度届く『Cobblestone』をしっかり聴き込みますので、まだ新譜は出さないでいてほしいというのが本音です(苦笑)
Posted by yas at 2012年05月05日 10:28
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