2012年03月26日

Radical Face & Miaou live in Tokyo

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今回のラディカル・フェイスのツアー、僕は東京初日にあたる3月23日(金)の池袋の分しか予約していなくて、最終日の土曜日はぎりぎり直前になるまで行けるかどうか不確かだった。今、日曜日の夜に少し濃い目のハイボールで喉を湿しながら、この週末の記憶を洗いざらいぶちまけるべく準備しているところなんだけど、まず思うのは、最終日も行くことにして本当によかったということ。あやうくとんでもないものを見逃してしまうところだった。

最終日は、というか23日の池袋を除く今回のツアーは、ラディカル・フェイスとミャオウ(miaou)とのジョイントで、前座としてわざわざ大阪からウォーター・ファイ(water fai)という女子バンドが参加。場所は、僕にとってはタマス・ウェルズを最初に観た、懐かしの渋谷O-nest。いつもどおりまず6階に上がり、開場時間まで待機。さすがに3バンド共演だけあって、物販の量が前日とは桁違い。終演後の混雑を予想して、まずラディカル・フェイスの2枚のLPを購入。

時間通りに5階の会場に降り、500円の薄いハイボールで喉を湿しながら開演を待つ。開演時間を10分ほど押して出てきたのは、お揃いの白い衣装を着た5人組。前座のことまであれこれ書いてるときりがないけど、見た目からはちょっと想像つかないような硬派な音。ほとんどインストで、時折変拍子を交えたり、フリーキーなギターソロ(?)が入ったり、なかなか面白い。新作を一週間前に出したばかりで、4月28日にはまたこの同じ会場でレコ発ライヴを演りに来るということだったんだけど、残念ながらさっき調べたら僕その日はもう別件が入ってしまってるよ。次回に期待、ということで。


30分以上のたっぷりとした前座を堪能した後、セットチェンジ。ステージ最前列に左から小さいキーボード、小さい鉄琴、大きい鉄琴、大きいキーボードと、まるでバリケードでも築くように機材を並べるという変わった編成なので、セットチェンジにも結構時間がかかる。ドラムキットや鉄琴のあちこちにチェブラーシカのぬいぐるみが置いてあるぞ。

予習のために、ラディカル・フェイスがミャオウと一緒に録音した「Lost Souls」のビデオはユーチューブで何度も観たけど、このバンド自体にはそれほど興味を持っていなかった。わざわざ事前にCDを買うほどでもないと思っていたし、失礼な言い方をすると、僕にとってはラディカル・フェイスのライヴの2組目の前座みたいなものだと思っていた。

なんていう気持ちも、4人のメンバーが登場して、プログラミングされた不思議なサウンドに鉄琴のキンコンという気持ちいい音がかぶさるオープニングの曲が鳴り響いた瞬間に吹っ飛んでしまった。すごいよ、このバンド。とにかく曲がいいし、音のセンスも特筆もの。ベースの女の子が咄嗟にマレットを持ってキンコンと叩き、ベースの入るパートでそれを床に落としてブンブンとうなるベースに戻るとか、曲の頭でドラマーがステージ前方の鉄琴を叩き、急いでドラムキットに戻るとか、とにかく皆さん忙しそう(笑)。いや、かっこいいよ、マジで。最初見たときはリッケンバッカーのパチもんかと思ったあのベース、ギブソンのリッパーっていうんだね。いい音。覚えとこう。

別に日本のバンドを見下すつもりはないけれど、この音は立派にインターナショナルで通用するよ。前座だなんて思ってごめん。帰りにCD買って帰ろう(ライヴに来て初めて音を聴いて気に入ったからその場でCDを買うなんて、実は僕にとっては結構珍しい話。こう見えて見境なく買ってるわけではないのです)。

ミャオウのパートの最後、さあいよいよ噂に聞いていたラディカル・フェイスとの共演。この瞬間がこの夜の、というよりも今回のツアーのハイライトになるであろうというのは、ツアー中のリリコのブログや一本道さんのツイートで散々喧伝されてきたからね。心して観よう。

結論:涙こそ出なかったものの、こんなに美しい空間が他にあるかと思われるような、至福の10分間だった(本当は何分演ったのか知らないけど)。あのゆったりとした静かなイントロに導かれ、ベンがいつものようにそっと目を閉じてファルセットでハミングを始めた瞬間、二夜連続になってしまったけれど、この日も観に来ることにして本当によかったと思った。これを聴き逃すなんてありえない(とか書いて、昨日の記事に「行きたかった」と早速コメントを入れてくださったxiaoさんの神経を逆撫ですることが本意ではないんだけど)。


この夜のクライマックスは早々に訪れてしまったけれど、もちろんまだ終わりじゃない。ステージから沢山の鉄琴が撤去され、前日のピアノに変わってノードのキーボードがステージ前方に一つと、最初のウォーター・ファイのときからずっとそこにあるドラムキット(タムが一つ取り外されたのはこの時だっけ、それともミャオウの前?)、ずっとシンプルなセッティングになった。あのnestのステージが広く見えるよ。

ラディカル・フェイスの3人がステージに登場したのはもう9時をずいぶん回った頃だったかな。6時半開場なんて、今日はもしかしたら終わったら飲みに行けるぐらい早く終わるかもと思っていたけど、これは長丁場になるぞ。もちろん、前日ほどのフルセットでは演らないだろうことはわかっているけれど。

ベンの前にはヴォーカル・マイクが2本。こちらから見て左側のが通常のヴォーカル用で、右側がコーラスのパートを歌うとき用みたい。前日はTシャツ1枚だったけど、今日はその上にもう1枚チェックのシャツを着てきたね。前の日の方が寒かったのに。

ジャックがドラムス、ジェレマイアがキーボードに着く。ベンが「最初の曲は『A Pound Of Flesh』」と紹介してスタート。実際には、アルバムでその曲につながっている「Names」から始めたから、ここでいきなり『The Roots』オープニングの2曲を演奏。これを聴きながら思ったんだけど、昨日のブログに「Names」を演奏したと書いたのは間違い。演ってないよ、これ。というわけで、あとで消しておきます。

前日よりも若干尺の短かった(かつ、未発表曲とか演らなかった)この日は、ちゃんとセットリストを覚えたはず。2曲目(さっきのを1曲と計算すると)は、前日のバンドセットでのオープニングと同様「Wrapped In Piano Strings」。曲前の説明は前日よりも短めかな。今日は持ち時間が短いから急ぎ気味なのかも(そういえば、メモ用紙を見ながら「えーと、どの曲にしようかな」という時間もずっと短縮されていた気がする)。

前日の“クワイエット・ナイト”はよほど遠慮しながら演奏していたんだろうというのが容易に想像できるほど、この夜の演奏、特にベンのそれは実に活き活きとしていた。あんな陰鬱な曲を書いていながら、ディストーションを効かせて大音量でギターをかき鳴らすのが好きなんだね。

といっても、別にこの日の演奏が雑だったわけじゃない。繊細なアルペジオは冴えわたっていたし、前日ほど頻繁に楽器変更をしなかったせいか、ジャックとジェレマイアの演奏も実に安定していた。そういう意味では、演奏的にも、コンパクトでタイトなセットリストにしても、僕は前日よりもこの日が遥かによかったと思う。もちろん、前日の素晴らしい演奏を貶める気は一切ないけれど、やはりこの長い日本ツアーの最終日ということで3人とも気合が入っていたのかな。

「Winter Is Coming」を演奏する前に、前日にも言っていた「ジャックがこの曲を台無しにしてしまうかも」というのを今日も言ってから演奏したけど、前日にも増して完璧な演奏。少なくとも僕はジャックがこの曲を台無しにしたのを一度も聴いていないよ。曲が始まる前にベンが「うまくいったらあれをやろう」と言ってた“ベリーハイファイブ”を見せてもらったし(見ていない人のために解説:スイーツ好きの二人がシャツをたくし上げて、臨月かと思うような二つの大きなお腹をぶつけ合うという光景は、ジャックが演奏を失敗していたら見られなかったはずの貴重な映像)。

僕の大好きな曲の一つである「Severus And Stone」とか「Always Gold」(もちろんこちらも大好きな曲の一つ)で、ジェレマイアがストラトキャスターのアームを使って幽霊の音を出す。「Always Gold」の間奏のときはジャックもドラムを使ってお化けの音で応答。アルバムのヴァージョンとは全然違うけど、いいね、あれ。

先ほどの「Lost Souls」のお返しのつもりか、本編最後の「Welcome Home」でミャオウのメンバーをステージに呼んでコーラスを任せる(インパートメントのsinさんも呼ばれて引っ張られてたけど、断固として出て行かなかったね・笑)。前日と同様、「曲を知ってたら一緒にコーラスをお願い。知らなくても叫んでいればいいから。もっとアメリカ人みたいに」と言い、曲に入る前に2度ほど観客に練習させる。「声が小さい、もう一度」とか言って。僕はもう二日目だから慣れたけど、これがあの死人の歌ばかり歌ってるラディカル・フェイスのコンサートだとは(笑)

アンコールの「Glory」は素敵だった。前日のこの曲の演奏もよかったけど、これが本当に今回の日本での演奏の最後だとわかっていたからか、実に素晴らしい演奏と歌を聴かせてくれた。そして、アンコールのラストは前日同様、ロビンフッドの曲のメドレーだったんだけど、

ロビンフッドの曲だと、そこまで説明したところでベンがステージ際にいる僕の方に向かって、「ごめん、『Mountains』は練習したんだけど、うまくいかなかったんだ」と、わざわざ断ってくれたんだ。びっくりした。そんな前日のリクエストを覚えていてくれたばかりか、一応は練習していてくれただなんて。そして、そんなことをわざわざ観客席にいる僕に言ってくれるなんて。

ロビンフッドの曲では、前日同様メンバーの2人がマラカスとタンバリンを持ってステージを歩き回る。ジャックに至っては曲が始まる前からステージを降りて観客席でスタンバイ。最前列にいた僕からはよく見えなかったけど、曲の間中、観客席を動き回っていたみたい(ジェレマイアも追って観客席に乱入)。

そういえば、どこで出たジョークだか忘れたけど、前日にジェレマイアの口髭をフレディ・マーキュリー風に整えてあげたらしく、しきりにそのことを言いながら「I Want To Break Free」を歌ったりしてたね。アンコールのときに観客席から「Never Ending Story!」って声が上がったらその曲を歌ったり。この人って、普段もっと暗い曲ばかり聴いてるのかと思いきや、こんなヒット曲ばかりよく知ってるよね。


ライヴ終了が確か10時40分ぐらいだったかな。ウォーター・ファイが始まったのが7時10分過ぎだったから、そこから数えても3時間半。入場した時点からだと実際には4時間ぐらい立ちっぱなしだった。どうりで腰も痛くなるわけだ。ここから、再度6階に戻って物販&サイン会&雑談会タイムの開始。

Signed Ghost.JPG Signed Roots.JPG

まずは、2枚のLPにサインをもらう。『The Family Tree: The Roots』を、僕の去年のベストアルバムだと言ったら、「これを年間ベストアルバムに選んでくれてありがとう」とメッセージを書いてくれた。ちなみに、『Ghost』のジャケットの人物はベン本人だそうで、更に言うと、彼が屋根に座っている建物は、このアルバムが録音された場所だとのこと。

概ねファンに囲まれてサインや写真をせがまれていたベンだけど、暇になる瞬間が時折訪れるようで、そのあたりをうろうろしていた僕と何度も話してくれた。以下、ラディカル・フェイスよもやま話。

『The Roots』に続く『The Family Tree』第二作のレコーディングにはすでに取りかかっていて、おそらく来年のリリースになるとのこと。さらに第三作目はその翌年の2014年になる予定なので、そもそもこのプロジェクトを考え始めた2007年から数えると、7年越しのプロジェクトになるそうだ(もともとは3年ぐらいで終わらせるつもりだったとのこと)。

『The Roots』のリリース直前に『The Bastards: Volume One』がリリースされたように、今後リリースされる2枚のアルバムの前にはそれぞれ未発表曲(というか、その2枚のアルバムからは惜しくも漏れてしまった曲たち)を収録したEPが発表されるそうだ。そして、この壮大なプロジェクトが完成した暁には、3枚のアルバムと3枚のEPをすべて収録した限定生産の本をリリースすることも考えているらしい。

The Bastards Volume One.jpg

前日の池袋ミュージック・オルグでの2曲目、“まだ録音していない新曲”というのは、次作『The Branches』に収録される予定の「Mute」というタイトルだそうだ。もっとも、「僕はとても沢山の曲を書いては録音して、最終的にアルバムに収録されるのはその内のほんの一部だから、最後までわからないけどね」とのこと。

ちなみに、前日アンコールの1曲目で演奏されたのは、もともと『The Roots』のシークレットトラックとして彼のウェブサイトに隠されたヒントを頼りにダウンロードできた(今回会場限定で発売されたCD-Rにも収録されているから、そんな面倒な手段は取らなくて済んだ・笑)曲、「Bishop's Song」。

この日の午前中に渋谷の某巨大中古レコード店でLPを漁っていた彼(「12枚買って7000円!」と自慢する姿が他人とは思えなかった・笑)に、「何を買ったの?」と聞いてみたら、デイヴィッド・ボウイの『Space Oddity』とか、キュアの『Boys Don't Cry』とか、サイモン&ガーファンクルの『Bridge Over Troubled Water』とか、ラディカル・フェイスがそんなの聴くのかというようなものばかり(いや、別にいいんだけど、もっとマイナーなのを想像していたものだから)。しかも、そのほとんどは、エレクトリック・プレジデントの相棒であるアレックスへのお土産だそうだ。帯付きの日本盤が珍しいからだって。

そうそう、ベン・クーパーの実物を最初に見たときから、身長といい髪型といい(ここ数週間僕も伸ばしている)髭といい、きっと傍から見たら僕らそっくりに違いないぞと思っていたんだけど、一緒に写真を撮ってもらったらこのとおり。

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ミャオウのCDもゲット。メンバー4人(サイドギタリストはサポートだそうで、正式メンバーはMCもしていた方のギタリストと、ベースとドラムスの二人の女性の計3人)のサインと、ゲスト参加しているベン・クーパーのサインももらう。この5人が一同に会することなんてこの先あるかどうかわからないからね、貴重なものを手に入れたよ。ライヴがあれだけよかったから、このCDもちゃんと聴き込もう。

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ジェレマイアとジャックにも、チケットの半券にサインをもらう。ラディカル・フェイスはライヴのたびにメンバーを変えるという話を聞いていたから、ジェレマイアとベンに次にもし来日することがあったら別のメンバーなのかな?と聞いてみたら(そんなこと本人の前で訊くなよと今さらながら自分でも思うけど)、ジャクソンヴィルのミュージックシーンはとても小さなもので、その時々で集まれるメンバーが集まるから、次回も彼らかもしれないし、そうでないかもしれない、とのこと。たとえ次回の来日メンバーが彼らでなくても、それは別に彼らがクビになったとかそういう話ではないんだって。なんかちょっと安心。

ジャックにサインをもらいに行ったら、彼も「『Mountains』できなくて悪かったね」と。彼とは前日話してないのに、なんでそんなの知ってるんだろう。ほんとに3人で練習してくれたんだね、とまたちょっと感動。「あの曲はコーラスが必要だから」と言うから、「僕できるよ」と答えると、「じゃあ次回はスレイベル持ってくるよ」とジャック。彼はずっと冗談ばかり言ってたね。面白いやつ。

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ベンとレコード談義していたときに、いいレコ屋を知らないか?という話になって、翌日安レコの買える店に一緒に行くことになった。というわけで、今日(長々と書き続けていたせいでもう昨日になってしまったけど)は楽しい一日を過ごさせてもらった。オフ日のことまで事細かに書くのは気が引けるから詳細は割愛するけど。

別れるときに、「来年にでもまた来てよ。楽しみにしてるから」と言ったら、「うん、新作と一緒にね」と言ってくれたベン。ほんとに楽しみにしてるからね。僕の2013年と2014年の年間ベスト・アルバムの座は空けて待ってるから。

Radical Face n me.jpg


Setlist 24 March 2012 @ Shibuya O-nest

1. Names
2. A Pound Of Flesh
3. Wrapped In Piano Strings
4. Black Eyes
5. The Moon Is Down
6. Doorways
7. Ghost Town
8. Severus And Stone
9. Winter Is Coming
10. Always Gold
11. Welcome Home

[Encore]
1. Glory
2. Love Goes On / Oo-De-Lally (?)
posted by . at 00:50| Comment(3) | TrackBack(0) | コンサート | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
私は逆に、それほど好きではないアーティストでもライヴを見るとテンションが上がってCDを買うことがあります。
うっかり川越シェフのCDも買ってしまうかもしれません。見境の作り方を教えてください。

観客とアーティストの距離が近いライヴって良いですね。年間ベストライヴにも上位に食い込みそうな気がします。年末を楽しみにしています。
Posted by ひより at 2012年03月30日 00:20
さらにうらやましいです。いいな、いいな。
Posted by xiao at 2012年03月31日 17:17
■ひよりさん
好きではないアーティストのCDをテンション上がって買ってしまって、後で後悔することはありませんか?もしや、そういうのが20枚貯まったので先日売りに出かけられたのですね。

川越シェフのCDは、それはそれで10年ぐらい経ったら価値が出ているかもしれません。もしくは10円ぐらいで投げ売られているかもしれませんが。ハイリスク・ハイリターンこそ人生です。見境は無理して作る必要はございません。

僕はこのブログを始めて以来、どの年末にも年間ベストライヴ記事を書いたことはありませんが、確かに年間ベストに数えてもいいぐらいのいいライヴでした。でも、この後にコメレスもせずにアップした二つのライヴも同様に年間ベスト級だったので、やっぱり年末になっても選べずに結局記事にはできないと思います。


■xiaoさん
次回はぜひご一緒に。安い日本盤LPを買える店を教えてあげると喜ばれます。
Posted by yas at 2012年04月03日 23:37
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