2012年01月22日

Fleet Foxes live in Tokyo

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この冬初めて東京に雪が降った日。木枯らしの中を新木場駅からスタジオコーストに向かう。雪のせいか何かのトラブルのせいか電車が遅れてしまったんだけど、どっちみちそんなにいい整理番号じゃないから、ちょっと遅れて会場に着いたらちょうど入場するぐらいの時間にあたるだろうと思っていたら、橋の上あたりから見えてきたコーストの入口付近にはほとんど人がいない。いったいどういうことだ。

急ぎ足で入口にたどり着いたら、そのまま待たずに入場。開場からわずか30分ほどで(僕の整理番号だった)500人以上がもう入場済みということ? 不審に思いながら場内へ。先日のベイルート公演で数時間立ちっぱなしでかなり腰にきていた僕は二階の座席に直行しようと思っていたら、なんと二階席は締め切り。

一階の階段部分やもたれられる壁はもう人で埋まっているから、そのまま前の方へ。ステージ左側、前から数人目という、かなりかぶりつきに近い場所で観ることにした。こんなに大きな会場でこんなに前で観るライヴも久しぶりだ。もともと二階席でまったり観るつもりでいたから、予想しなかった臨場感に期待が高まる。この際、腰のことは一旦忘れて楽しもう。

友達に場所を確保してもらってドリンクを取りにいくと、なんと並ばずにゲット。僕はこの会場で飲み物を無事に手に入れられたのは初めてだよ。いつも(開演前も終演後も)長蛇の列で諦めざるを得ないからね。もしかしたら主催者が想定したほどチケットが売れてないのかもしれないけど、いつもこの会場に文句ばっかり言ってる僕にとっては嬉しい展開が続く。

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ステージの背景にはボスポラス海峡に浮かぶ舟の絵。開演前に流れていた音楽は民族音楽風で、どこか2日前のベイルートと東欧趣味が重なる。と思いきや、突然ヴェルヴェット・アンダーグラウンドがかかったりもする。一筋縄ではいかないね。

開演時間を10分ほど過ぎた頃、メンバーがぞろぞろと登場。背景の絵が消え、降りしきる雪の画像に変わる。この日の天気に合わせたわけではないだろうけど、彼らの音楽によく合ってるね。ライティングが暗いので誰の表情もよく見えない。僕の観ている左側から、キーボードのケイシー・ウェスコット、ベースのクリスティアン・ワーゴ、ヴォーカルとギターのロビン・ペックノルド、ドラムスのジョシュ・ティルマン、ギターのスカイラー・シェルセット、アップライト・ベースのモーガン・アンダーソンの6人。

最初の曲はその楽器編成で始めたものの、みんな相当なマルチ・プレイヤーだ(特にモーガン)。上に書いた楽器以外に、ケイシーはキーボード/マンドリン/テルミン、クリスティアンはエレキギター、ジョシュはタンバリン、スカイラーもマンドリン、モーガンに至ってはギター/フルート/サックス/タンバリンと、弦楽器/管楽器/打楽器全部こなしていた。この人僕の位置からはいちばん遠かったのでちょっと表情までは見えづらかったんだけど、びっしり生えた髭がマット・ジ・エレクトリシャンみたい。ああいう髭を生やすとマルチ奏者になれるのか?

アルバムで聴いていたとおり、やはりコーラスが素晴らしい。リード・ヴォーカルのロビンに合わせて常にコーラスをつけるのはベースのクリスティアンとドラムスのジョシュ(最初、ドラマーが彼だということを忘れていて「へぇ、ドラマーがコーラス入れるんだ」なんて思ったけど、よく考えたら彼はもう何枚も自分のヴォーカル入りのアルバムを作ってるんだもんね)。たまにケイシーも入って四声のコーラス、モーガンがコーラスを入れる曲もあったけど、スカイラーの前にだけはヴォーカルマイクが立ててなかったね。歌下手なのかな。クイーンでいうジョン・ディーコンの立場か?

何曲かはメドレーのように曲間なく演奏したりしていたが、それ以外は1曲1曲終えるたびに実にゆっくりと時間を取って調弦したり喉を潤したりしていた。ロビンはほとんどMCらしいこともせず、もうほぼ「サンキュー」ぐらいしか喋らないので、あの曲間の間(ま)がやたらと長かった気がする。どんなに盛り上がった曲でも、演奏後にそうやって1分ぐらいの間があるんで、ライヴの流れがそのたびに断絶されてしまったのがちょっと残念。

ちょっとした不満があったとすると、それだけ。あとは、さっきも書いた極上のハーモニーと常に安心して聴いていられる盤石の演奏。背景の雪の画像に重なる雪山やレトロな味わいの幾何学模様も彼らの音の世界にすっと入り込む手助けをしていた。比較的ステージ近くで観られたということもあり、どっぷりと至福の時間に浸れる。

僕の位置からよく見えた長髪のクリスティアンの容姿のせいか、途中何度か(70年代の)ピンク・フロイドを観ているような錯覚に陥った。そういえば、フリート・フォクシーズの曲のメロディーって、神秘以降狂気以前のピンク・フロイドっぽかったり、ときにはアメリカ(バンド名)っぽかったりするね。いずれにせよ70年代前半の匂いがぷんぷんする(以前書いた記事では、ファーストのジャケにひっかけて、1550年代っぽいなんて書いたけど)。

コンサート前半は昨年出たセカンドアルバム『Helplessness Blues』からの曲を続け(2曲目でいきなりEP『Sun Giant』から僕の好きな「Mykonos」を演ってくれたのが嬉しかった)、中盤でファーストからの数曲を挟み、後半はまた『Helplessness Blues』の後半をそのままの曲順で、という構成。彼らの代表曲の一つである「White Winter Hymnal」はいきなりアカペラで始まるアルバム・ヴァージョンにギターのイントロが付け加えられていたけど、その他の曲はほとんどスタジオ・ヴァージョン通りのアレンジだったと思う。

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Fleet Foxes 『Helplessness Blues』

本編終了まで1時間15分程度。その後アンコールに応えてロビンが一人で出てきて、「この曲はリクエストされたんだ」と僕の知らない曲を弾き語り(あとで調べてみたら、新曲らしい さらに調べてみたら「Katie Cruel」というトラッドなフォークソングらしい)。さらに弾き語りで「Oliver James」を歌った後、バンドメンバーが全員登場して数曲。けっこう長いアンコールだった。本編〜アンコールで全部で2時間近く演っていたと思う(ただし、曲間の沈黙を全部寄せ集めると10分以上にはなったかも)。

ロビンの数少ないMC(そのほとんどは感謝の言葉だった)のうち、「今日の東京でのライヴが今回のツアーの最終日なんだ」というのがあったけど、アンコールの最後はそれを証明するかのように全員で体力と気力を振り絞った演奏。終了後、ジョシュが自分のドラムキットからシンバルを外し、お客さんにあげていた。なんでそんなことまでするんだろう。お客さんも、あんなのどうやって持って帰るんだ?

僕は帰り道に友達に聞いたんだけど、この日のライヴの数日前にジョシュがフリート・フォクシーズ脱退を表明していたらしい。ソロに専念するんだって。なんてこった。それがあってのあの最後の力ずくの演奏とシンバル進呈だったのか。そのうえ、調べてみたら、ベースのクリスティアンとキーボードのケイシーがプア・ムーン(Poor Moon)という別バンドを作ってサブポップと契約、フリート・フォクシーズ自身はサブポップとの契約は切れてしまったそうだ。なんてこった。このまま解散とかいうんじゃないだろうな。

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そう思うと、終演後に降りしきる雪の画像の上に投影されたこの謝辞が、彼らからのお別れの言葉みたいに見えてくるよ。おい頼むよ、解散なんてしないでくれよ。こんなにいいライヴを見せる息の合ったバンド、あまりにももったいないよ。


Setlist 20 January 2012 @ Studio Coast

1. The Plains / Bitter Dancer
2. Mykonos
3. Battery Kinzie
4. Bedouin Dress
5. Sim Sala Bim
6. Your Protector
7. White Winter Hymnal
8. Ragged Wood
9. Montezuma
10. He Doesn't Know Why
11. English House
12. The Shrine / An Argument
13. Blue Spotted Tail
14. Grown Ocean

[Encore]
1. Katie Cruel
2. Oliver James
3. Sun It Rises
4. Blue Ridge Mountains
5.Helplessness Blues

(曲目訂正しました)
posted by . at 01:33| Comment(4) | TrackBack(0) | コンサート | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
至福の時間でしたねえ。
ライブのあのダイナミズムをアルバムでも聴けたらなあ、
なんてあの後CDを聴くと思わずにはいられません。
アルバムも好きなんですけど、あのステージでの世界観はまた違いましたから!

2Fでまったりもよさそうですけど、今回は1Fで正解でしたよ、きっと。
あれくらいの混み具合だったら、あの会場でも楽しめるのに(ヨンシーの苦い思い出)。

あ、解散なんて書いちゃダメです!
Posted by deskop at 2012年01月28日 18:14
■desktopさん
そうですね、あれだけ忠実にアルバムの音を再現していたというのに、家でアルバムを聴くのとは全然違うという、不思議に逆説的な感じがありました。

1階で正解というのに同感です。まあ、あの人口密度ならではというのもありますが。ついでに言うと、自分よりも前にそれほど背の高い人がいなかったという運の良さもありました。

解散、しないですよね。言霊というのもあるので、ヘンなことは書かないようにします。では代わりに、ジョシュがそのうち戻ってくるのを期待しましょう、と書いておきます。
Posted by yas at 2012年01月29日 00:48
こんばんは。相変わらず自分のブログはほったらかしの毎日です。

いやぁ…やっぱり行けば良かったです。ちょうどチケット発売の頃に物入りだったのと春に出たセカンドがどこか少ししっくりこないかなぁと言うのもあって…。ついついジョシュアがこのバンドにいることを忘れておりました。しかも今回がこのバンドでの最後の演奏だったなんて…しかも最近聴きなおしたらセカンドも良いなぁ…なんて。

ジョシュアのソロ専念は嬉しいですが、うーん、日本に来てくれれば良いけどなぁ…。
Posted by マサ at 2012年01月29日 22:08
■マサさん
お忙しくされているようですね。僕も先週はちょっとアップアップでようやくコメントに返事しに来れました。このライヴの話なんてもう遠い過去のような気がします。

いいライヴでしたよ。来られなくて残念でした。どうせそんなに活発に活動しているバンドじゃないんだから、いくら腰を据えてソロ活動したいといってもなにも脱退しなくてもとは思うんですが、まあ人それぞれに思うところがあるんでしょう。ソロでの来日はちょっと難しいでしょうね。またそのうちさっさと再加入してもらいたいものです。

セカンド、僕も同じような感想でした。最初に聴いたときはなにやら印象が薄くてほったらかしていたのですが、今回のライヴを機に聴き返してみたら、かなり良いということに気づきました。
Posted by yas at 2012年02月04日 17:35
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