2012年01月20日

Beirut live in Tokyo

DSC02771.JPG

何故あんなに人気があるのかわからない。

いや、自分が好きで行ったコンサートの感想がいきなりそれじゃ身も蓋もないけど、この「何故」はもちろん「人気がある」ではなく「あんなに」にかけたつもりだ。

最初のCD『Gulag Orkestar』が確か06年発売だから、もうキャリアは足かけ6年にもなるし、オリジナル・アルバム3枚以外にも結構内容の濃そうな(僕は持ってないので)EPも何枚か出ているようだから、今回の初来日は昔からのファンにとってはそりゃ“待望の”という感じなのかもしれない。

でも、07年の『The Flying Club Cup』を、NZから日本に引っ越してくる前日に買って、そのいにしえの東欧風味みたいなエキゾチックな音を気に入って以来、さかのぼってファースト、去年のサードと、アルバムはきちんと買ってはいるものの、どうも一曲一曲をよく覚えられないという程度のにわかファンである僕にとっては、今回のこの来日フィーバー(死語)には違和感を覚えてならなかった。

Gulag Orkestar.jpg Beirut 『Gulag Orkestar』
The Flying Club Cup.jpg Beirut 『The Flying Club Cup』
The Rip Tide.jpg Beirut 『The Rip Tide』


あの音のどこにそれだけのファンを惹きつけるだけの要素があるんだろう。アルバムごとに少しずつ違う、どこか訪れたこともない異国の楽団が奏でているような不思議な音楽はすごく魅力的ではあるし、フロントマンのザック・コンドン(Zach Condon)の粋なクルーナー・ヴォイスとちょっとぽっちゃり可愛いその見かけは女性ファンが多いのもうなずけはする。

だけど、一般的な意味では全然ポップではないよね、あの音は。あれなら、同傾向(だと僕は思う)ファンファーロとかレジャー・ソサエティとかの方がよほど一般受けするような気がするんだけど。僕の耳がもう「一般的」というようなところから遠く離れてしまっているんだろうか。

東京公演のチケットは発売後すぐに完売。確か追加公演もとっくに売り切れてたはず。最初はオープニング・アクトのトクマルシューゴ人気なのかと思ったけど、トクマルが出番を終えたときにどっと前に押し掛けたファンの数をみるとどうやらそれだけでもなさそうだ。

チケットに載っていた番号自体は若かったんだけど、招聘元から直接チケットを買ったファンが数百人いたおかげで、手を抜いてイープラスで入手した僕が場内に入れたときにはもうろくなスペースは残っていなかった。しかたがないので一段高くなった壁際に友達と一緒に陣取る。テーブルがあるからカバンや飲み物も置けるので便利。ステージの半分は死角になって見えないけど。


開演時間を少し回ったところでトクマルシューゴがバンドと共に登場。僕は今のところの最新アルバム『Port Entropy』しか持ってないけど、半分ジャケにつられて買ったそのアルバムは結構気に入ってたから、実は今回かなり楽しみにしていた。いったいどんなライヴになるんだろう。

もっと箱庭ポップみたいな感じの音かと思っていたら、予想以上にしっかりしたバンドの音。曲によってはなんだか“ロック”って感じ。なんだかよくわからない例えかもしれないけど。たくさんいたバンドメンバーのうち、僕の位置からは半数ぐらいしか見えなかったけど、女性メンバーがおもちゃの笛みたいなのやらグルグル回して音を鳴らす楽器やらをとっかえひっかえしながら演奏していたのが観てて微笑ましかった。最後のメンバー紹介のときも、ドラマー以外全員を「いろんな楽器、誰々(メンバー名)」って紹介してたね。

知らない曲が多かったのでセットリストは書けないけど、途中で一曲ベイルートのアコーディオン奏者を呼び出して共演したり(トクマルのアメリカツアーのときに一緒に回ってたらしい)、バグルスの「Video Killed The Radio Star」のカバーをウクレレで演ったり、今制作中だというニューアルバムからの曲を披露したりと、全10曲40分程度の充実した内容だった。一番最後に僕の好きな「Rum Hee」を演ったのが嬉しかったな。

Port Entropy.jpg Shugo Tokumaru 『Port Entropy』


大所帯のトクマルシューゴバンドの機材を全部入れ替え(僕から見えなかったドラムキットだけはそのままだったのかな)、マイクやら楽器やらを並べるのに相当な時間をかけて、ベイルートがステージに登場したのはそれから40分後ぐらいだったろうか。大歓声。すごいや。

さっき書いたとおり、トクマルシューゴが終わった時点で後ろの方から客がどんどん前に押し寄せ、一段高い壁際にいた僕の前方にも次々に人が入ってくる。そんなに背の高い人はいなかったけど、もうすでに僕の位置からはステージなどほとんど見えない。しょうがないので観るのは半分諦め、音を聴くことに集中しよう。

最初の一音が鳴った瞬間にまたウォーッと大歓声(女性ファンが多かったはずなのに、何故か野太い声がよく響いた)。ザックが歌い始めてまたウォーッ。すごいねえ。ステージが見えなくてふてくされ気味の僕は逆にちょっと醒めてしまう。アイドルかよ。

でも、そんな状態の僕でも、あっという間に引き込まれてしまう。音すごいよ、これ。ザックと隣の背の低いメンバー(さっきからメンバー名調べるのが面倒で横着してます)のトランペットのアンサンブルがど迫力。反対側(僕からよく見えるステージ左側)のアコーディオン、さらにオルガンがかぶさり、そこにザックのゴージャスなクルーナー・ヴォイスが入ると、化学反応を起こしたようにオーガニックな音になる。

ベースはアップライト(曲によってはエレキベースのときも)。僕の位置からは見えないドラムと一緒に、ずいぶんしっかりした、ときにはかなり複雑なリズムを刻む。このリズム隊のおかげで、ファーストやセカンドのエキゾチックな曲の数々が、それらのイメージはそのままに、洗練された最新アルバムをさらに力強くしたようなアレンジで演奏されていたのがずいぶんと印象的だった。

それにしても演奏うまかったよなあ。特に凄技を見せるわけじゃないけど、安心して聴いていられる手慣れた音。まるで、ほんとうにジプシーの楽団が演奏するのを聴いているみたいな錯覚に陥ることも数度。ステージがよく見えないことが逆に音を聴いていろんなイメージを膨らませるのに一役買ったのかも。

ときどき人の頭と頭の間から見えたザックは、くしゃくしゃの髪の毛にぽっちゃり色白の愛嬌のある感じのお兄ちゃん。ちょっと雰囲気グレン・ティルブルックに似てる? 高揚して鼻の頭あたりが赤くなってるのがかわいいね。腕まくりしたシャツがずり落ちてくるのか、しきりに右手を高くあげて、まるでニール・ダイアモンドのジャズ・シンガーみたいなポーズを何度も取る(そんなこと言っても今の人はわからないか)。

途中でトランペットの兄ちゃんに「ザックは日本語でジョークが言えるんだよ」とか無茶振りされて、カンペを取り出して「日本に来て、みなさんの前で演奏できて、夢のようです」と普通に挨拶するザック。そういえばトクマルパートに出てきたアコーディオンの兄ちゃんもカンペ出して「シューゴのバンドと一緒に演奏できてうれしいです」って言ってたね。ほほえましいぞ。

聴いたことはあるけれど曲名がわからないのが次から次へと。ときどき知らない曲が出てきたから、きっと僕の持ってないEPからの曲かなと思ってたら、ネットで見つけたセットリストによると確かにそうだった。3枚のアルバムからも、オープニングとか印象的な曲ばかりでなく、アルバム中盤とか後ろの方の地味な曲ばかり演るから、余計にわからない。まあ、曲順覚えるのなんてはなから諦めてるから別にいいんだけどね。どの曲も聴いててすごく気持ちいいし。

最新アルバムから、これだけはリアルタイムで曲名がわかった「Santa Fe」で幕。早っ。まだ1時間も経ってないよ。さっきのトクマルシューゴと同じぐらいの尺かも。

壮絶な勢いのアンコールの拍手に迎えられてまずザックが一人で出てきて、ウクレレで一曲弾き語り。続いてバンドメンバーが登場し、アンコールを続ける。「もう一曲?」とザックが言って最後のインスト曲で終了。そこまで入れても1時間ちょっとだったかな。まあ確かに、あれだけの勢いでトランペット吹きまくって、ウクレレも弾いて歌ってたら、これ以上続けたらぶっ倒れてたかも。というぐらい全力投球のステージだった。うん、満足。

これだけべた褒めした後でも、やっぱりどうしてあの音があれだけのポピュラリティを得られるのかはちょっと不思議。僕の聴き込みが足りないのかな。よし、ちゃんと曲名と歌詞覚えるまで何度も聴き込もう。それからEPも入手して、何年後かにもう少し人気が衰えた頃にまた来日してもらって、もっと小さいハコで少ない人数で、かぶりつきで観たいものだ。


Setlist 18 January 2012 @ Shibuya Quattro

1. Scenic World
2. The Shrew
3. Elephant Gun
4. Vagabond
5. Postcards From Italy
6. East Harlem
7. A Sunday Smile
8. Mount Wroclai (Idle Days)
9. Nantes
10. The Akara
11. Cherbourg
12. After The Curtain
13. Santa Fe

[Encore]
1. The Penalty
2. My Night With The Prostitute From Marseille
3. The Gulag Orkestar
4. Cozak


posted by . at 01:09| Comment(5) | TrackBack(0) | コンサート | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
良いライヴでしたね。
私もあのトランペット×2のド迫力に驚いていました。トロンボーンも居たようなので、その様子も見たかったなあと。
私も、もうちょっとだけ静かな雰囲気でもう一度見たいなと思いました。
Posted by xiao at 2012年01月20日 16:07
今晩は。
お疲れ様でした。

>招聘元から直接チケットを買ったファンが数百人いたおかげで

その憎いヤツらのうちの一人です、大変申し訳ありませんでしたー。

ワタシはザックくんの顔とアコーディオンの人しか見えませんでしたが
大好きなElephant gunが聞けて大満足でした。

yasさんがどんな理由でこの人気を訝しく思ってるのか、
ワタシ、頭悪いんで読解力無しだから、わかりませんが、
Elephant gunが入ってるEPは4ADから出てるし、
それがきっかけでワタシも知ったんです。
あとはコーチェラとかにも出てたし。
Takeawayshowにも出てるし。日本でも人気は十分あると思います。

うーん。。。後は。
こういう民俗音楽っぽいのをベースにしてる
バンドって結構、日本では人気ですよ。
ポップだ、ポップじゃないとかはあまり関係なく人気があるのですが、
フジとか朝霧とか行けば、その雰囲気わかると思います。
ソウルフラワーユニオンとか凄い人気だし。
マヌチャオ、フロッギングモリーとか。レーベンとか。
うーん・・・、どっちも違うようだったら、ごめんなさい。

またすぐに日本に来てもらえるといいですね。
Posted by riri-inu at 2012年01月20日 22:34
■xiaoさん
はい、とてもいいライヴでした。せっかく比較的早く入れたのに、あの場所を選んだ保守的な自分を責めたい気分でいっぱいです。まあ、僕もあの後かなり腰が痛くなったので、あの長時間壁にもたれてなかったらえらい目にあってたというのは事実ですが。

トロンボーンもいたみたいですね。言われてみれば確かに音が聞こえていたような気がします。管楽器3本というのは珍しくないですが、そのうち1本をボーカリストが吹くバンドというのは結構稀なのではないでしょうか。

僕は、たとえモッシュしててもいいから(笑)、自分が身軽になってもっと前の方でもう一度観たいと思いました。変な書き方をしてしまいましたが、盛り上がっていたことに水を差すつもりはないんですよ。


■riri-inuさん
おはようございます。久しぶりにあれだけ長時間(でもなかったはずなのに)立ちっぱなしで、僕は翌日まで腰に響きました。りりさんは大丈夫でしたか?

謝られる筋合いはまったくないですよ。熱心なファンは少しでも早い整理番号が取れる経路でチケットを買うのが当然ですから。僕もたとえばタマス・ウェルズのチケットは(入場が整理番号順でないと知っているのに)いつも1番目指して取っていますし。むしろ、せっかくそうして一所懸命取ったのにお仕事の都合で後ろで観る羽目になったりりさんがお気の毒でした。

りりさんの読解力の問題ではなく文章力の問題です(笑)。普段自分の大好きなアーティストをここでどんなに力説しても友達にミックスCD配ってもだいたい何の反応もないという経験を積み重ねているので、あれだけ熱心なファンが数多くいるライヴに遭遇するとやにわに信じられなくなるのです。

昨日別の友達と話していて、きっと(僕がこの記事に名前を挙げた他のバンドに比べて)入口が多いからいろんな種類のファンが入ってきやすいいんだろうなと言われて納得しました。

ポップかどうかという箇所は、実はこれを書いた後に推敲して、こういうことが書きたかったんじゃなかったんだよなあと一番後悔していた部分だったんです。でももう夜中1時過ぎだし翌日会社あるしということでそのままにして寝てしまったんですよね。ポピュラリティ云々ということに結び付けてなにか書きたかった気がしましたが、今となっては忘れてしまいました。あまり夜中に書き物をするものではありません。

ソウルフラワーユニオンもきっとライヴで聴いた方が断然いいバンドなんでしょうね。CD沢山持ってるわりには一度も観たことがありません。ソウルフラワーと聞いていつも思い出すのが、僕がまだ関西の学生だった頃、難波のとあるレコ屋でオモチャの兵隊のソノシートを配っていたのをスルーしてしまったということです。自分の先見性のなさに、思い出すたびいつも悔しい気持ちになります。

あの人気で気を良くしてまた来てくれるでしょうか。僕はまず手持ちのCDをしっかり聴き込んで、りりさんおすすめのEPを入手するところから始めます。
Posted by yas at 2012年01月21日 10:26
ようやく自分の感想を書いたので、yasさんのも読めます。
わたしが行った追加公演は、売り切れとはいえ、見えないくらいぎゅうぎゅうではなかったです。会場の違いですかね。

あまりCDを聴き込まずに見たのですが、すごい素敵なライブだったなあと思いました。やっぱり楽器が良かったです。トランペットにトロンボーン&スーザフォン、ホルン・・・金管楽器がいっぱいで、マーチングバンドっぽいですね。みんな楽器を持ち替えるし、アコーディオンもボタンのたくさんあるタイプで指もとを見るのも楽しかったし、あとザックがピアノを弾きながら歌ったり、演奏する姿を見るのもわくわくしたので、yasさんも次はぜひ前の方で。

蛇足。ソウルフラワーユニオンは、我が姉がニューエストモデル時代におっかけ(?)をしていたので、気になる存在ではあります(笑
Posted by desktop at 2012年01月28日 18:32
■desktopさん
先週はニアミスが多かったみたいですね(ベイルートは別の日でしたが)。Eastにはあまり行ったことがないのでどういう造りだか忘れてしまいましたが、満員でも見やすいというのはいいですね。なにしろクアトロは満員でなくても邪魔な柱があることで有名ですからね。

音だけ聴いていてもいいぐらい素敵なライヴでしたが、やっぱり観てなんぼですよね。特にあんなに普段見ることのないような楽器をとっかえひっかえ。スーザフォンってなんだろうと思って調べてみて、初めてあの形の楽器がそういう名前だと知りました。

ひとつ上のコメントに書いた「オモチャの兵隊」は、ニューエストモデルのデビュー前のソノシートなんですよ。お姉さんならご存知かもしれませんね(もしかしてお持ちかも)。
Posted by yas at 2012年01月28日 23:54
コメントを書く
お名前: [必須入力]

メールアドレス:

ホームページアドレス:

コメント: [必須入力]


この記事へのトラックバック
×

この広告は180日以上新しい記事の投稿がないブログに表示されております。