2006年09月10日

Okkervil River 「Black Sheep Boy Appendix」

最近の記事が長くて不評なので(笑)、ちょっと短めのCD評を書いてみることにしよう。一枚のCDについて長々と書くより、少しずつ書いてたくさんのCDを紹介できるほうがいいもんね。目標はうちの15インチの画面でスクロールなしで読める分量。またこんな言い訳で数行損してしまった訳だけど。

Appendix.jpg今日は、こないだ行ったコンサート以来病みつきになってるオカヴィル・リヴァーにしよう。このCDは、タイトル通り去年出た「Black Sheep Boy」(以下「BSB」と略)の付録、というか続編のような性格になっている。まず簡単に「BSB」の話をすると、その冒頭に収められたタイトル曲(ティム・ハーディンのカバー。だけど僕はポール・ウェラーのカバーで知った)をモチーフに、黒い羊の少年をめぐる夢のような、でも血なまぐさい(「血」「ナイフ」「夜」「闇」という言葉がキーワードのようにアルバムのあちこちにちりばめられている)、かなりシュールな歌詞の曲が収められている。僕は歌詞を読んでみて、村上春樹のちょっとヘビーな方面の小説(「世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド」とか)を連想した。

この「Appendix」は、同じ物語を継承した7曲入り24分のミニ・アルバム。冒頭の「消えた子供たち」の話から、黒い羊の少年を絡めた、またしても難解な歌詞の曲が続いていく。とはいえ、これは歌詞を理解しなければ聴いてもわからないタイプの音楽ではない。今回僕が「BSB」じゃなくてこちらを採り上げたのは、そのコンパクトにまとまったシアトリカルな音のつながりがすごく興味深いと思えたから。

7曲のうち「庭」「森」の2曲がインスト。ただ、その2曲も含めて全7曲が殆ど全部メドレーっぽくつながっていて、ラジオの音やオルゴールなどのSE(サウンド・エフェクト)が随所に入ってくるところや、同じテーマが繰り返されたり、最終曲に冒頭の曲が別のテンポで再演されるところなど、まるで往年のプログレッシブ・ロックのような展開が僕にはとても面白い。

短いだけあって、歌詞的にも音的にも起承転結のようなものがあり、「転」にあたる「もうひとつのラジオの歌」(これは「BSB」に入っていた「ラジオの歌に」を再展開したもの)の、歌詞カードでは26行にも亘る句点なしの歌詞を一気に歌い上げる箇所は圧巻。起承転結といえば、あんまり曲順に脈略のなかったような今回のオークランド公演でも、このアルバムの「承」にあたる「鍵も計画もない」と「結」にあたる「今のところ最後のラヴソング」がコンサート全体のその位置に演奏されていたのが興味深い。

誰にでもお勧めできるようなCDじゃない。でもこのバンドのことを何かで知って、これから聴き始めてみようと思っている人には、まずこれから入ってみることを薦める。日本盤は出てないけど、アマゾンで1500円弱で手に入るから(なので上に挙げた邦題っぽいタイトルは全て僕の直訳。以前書いた反・邦題の記事に反してまでこういう書き方をしたのは、歌詞のイメージが少しでも沸くかと期待してのこと)。

アメリカでは未だにインディーレーベルに属してるけど、欧州での配給がEMI・ヴァージンに決まったという話を聞いた。新譜もそろそろのようだ。これまで、この短編も含めて一作ずつ確実に成長してきているこのグループの次回作をとても楽しみにしている。
posted by . at 08:13| Comment(7) | TrackBack(0) | アルバム | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
写真の横にテキストを回り込ませて短く見せようとの妙策に出られましたね?
>ちょっと短めのCD評
24分のミニ・アルバムだからこの長さで収まっているような気がします。
フル・アルバムだったらこの3倍、やはりいつもの長さになるのですね。
Posted by カブ子 at 2006年09月11日 10:31
お、短い!
週末のトリエンナーレ報告記事、兄ィの真似して私も一作品ずつ紹介しようかな。
今月いっぱい越後妻有シリーズで終っちゃいそう。

ところでこのアルバム、すっごく面白そうなんですけど

>コンパクトにまとまったシアトリカルな音のつながり

妙に惹かれるフレーズながら、どういうことなのかイマイチ理解できない私。実際に聴いてみろってこと?そうなのね?
兄ィの誘導作戦にハマったということなのか。

>ラジオの音やオルゴールなどのSE(サウンド・エフェクト)が随所に入ってくるところや、同じテーマが繰り返されたり、最終曲に冒頭の曲が別のテンポで再演される

>26行にも亘る句点なしの歌詞を一気に歌い上げる

小技と力技が共存しているやに思われまする。
うーん、俄然聴いてみたくなってきた!
Posted by ひそそか at 2006年09月11日 13:00
●カブ子さん
書き手の心理をことごとく突いてくるような見事な分析ですね。しかし、大丈夫です。もう短く書くコツをつかみましたから。これからは短くても好評を得るような記事を目指します。そのうち短歌並みになります。


●ひそそかさん
まさかこの記事でひそそかさんが釣れるとは。うーん、どうですかね。あまり誰にでも喜ばれるタイプの音楽ではないですけどね。ちなみに裏情報によるとKさんは試聴してみたらお気に召さなかったらしいです(笑)。あ、でもひそそかさん現代音楽とか一般受けしないのもお好きなんですよね。それなら大丈夫かも。いや別に現代音楽風なわけじゃないんですけど。

トリエンナーレ続報、楽しみにしてますね。
Posted by yas at 2006年09月11日 15:13
試聴してみた地味音優等生のKです。こんにちは。

>お気に召さなかったらしいです(笑)
何をおっしゃいます! 30秒では雰囲気しかわからなかったので気に入ったかどうかなんとも申し上げられなかったのですよ。よよよ。
>プログレッシブ・ロックのような展開
これはわかりましたよ。音が多彩ですね。ワンパターンじゃない感じ。
>歌詞カードでは26行にも亘る句点なしの歌詞を一気に歌い上げる箇所
これは、聴いてみたいです。思わずiTunesでこれだけ買ってしまおうかと思ってしまったほどです。
ついつい隣にあった「Appendix」がついてない方も聴いてしまった。こっちのほうが聴きやすかったと思いましたが、どおでしょう?
Posted by カブ子 at 2006年09月11日 20:55
●カブ子さん
「Appendix」なしの1曲目は、他人の曲のカバーなんですよ。あれだけ牧歌的な感じで、その次からどんどん暗雲立ち込める、という雰囲気になってきます。あれ、僕これ書いたのになあと思って記事を見直してみたら、なかったですね。実はこの記事、最初はこの倍ぐらいの長さだったのを、どんどん削ってこの長さに落ち着いたのです。氷山の一角記事と呼んでください。

あ、ちなみに、
>歌詞カードでは26行にも亘る句点なしの歌詞を一気に歌い上げる箇所
は別に息継ぎなしで歌うとかそういう意味じゃないですからね。そんなかくし芸みたいなことはしていません(笑)。

Posted by yas at 2006年09月11日 21:18
>最初だけ牧歌的な感じで
というのは、もしやモグラと同じ手口?
>どんどん暗雲立ち込める
そうなってくれないとジャケ買いした人びっくりしちゃうかもしれませんね(笑)。

なんでしょう、こういう風に音楽を紹介されるとどうしても聴いてみたくなっちゃいますよ。夜中に料理番組見てるみたいです。お財布持ってスーパーに走るかわりに、ほら、もうクリックしちゃった。150円也。今、かくし芸の歌聴いてます。おっ、ここかここか!
Posted by カブ子 at 2006年09月12日 00:31
●カブ子さーん
えーっ、買っちゃったんですか!?なんという行動力。素晴らしいです。しかしながら、各曲がメドレーっぽくつながっていて面白いですよ、とわざわざ説明しているのにあえて1曲だけダウンロードするなんて… いつもながらのへそ曲がり根性、ご立派です(笑)
Posted by yas at 2006年09月12日 18:24
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