2010年10月09日

前の季節の終わりに - Ray LaMontagne and The Pariah Dogs

God Willin' & The Creek Don't Rise.jpg
レイ・ラモンターニュ 『God Willin' & The Creek Don't Rise』

あんなに暑かった夏。誰もが口を揃えて異常気象だと言っていた季節。あまりにずっと続いてたから、いつのまにか、なんとなく、あのままずっと終わることなんてないような気がしていた。そんなことあるはずないのに。でも、なんだかんだ言っても、居心地よかったんだよ、僕は。不快なほど暑くても、やっぱり夏だからね。

オフィスの中ではまだ腕まくりをするぐらいだったそんな一日。なんの変哲もない木曜日。駅からの帰りみち、吹き付ける夜風はもう冷たかった。まくった袖を戻しながら、もうすっかり体に馴染んでいたあの季節は終わってしまっていたんだと気づく。

いつもよりちょっとたくさんため息をつきながら帰宅すると、シカゴから届いていた小さな茶色い箱がそこに。ああ、そうか、しばらく前に買い損ねていたCDを何枚かまとめて注文したんだった。

派手なジャケットのCDにまじって、ひときわ地味な文字だけのジャケのこのアルバムから聴くことにした。2年ぶりのレイ・ラモンターニュ。ライヴ盤を除けばきっちり2年毎にアルバムを出している彼。そう思うと、あの大好きだった『Till The Sun Turns Black』からもう4年になるんだな。あの記事を書いたのも、4年前のちょうど今頃だった。それを書いた僕のまわりの季節は今とは正反対だったけれど。

地味なジャケとは裏腹に、たくさんの素晴らしく美しい写真と一緒に収められた内ジャケの写真には、レイを含めた5人のメンバーが仲睦まじく収まっている。

これまでのすべてのアルバムをプロデュースしていたイーサン・ジョンズ(Ethan Johns)とは別れ、今回は初のセルフ・プロデュース。それに、上のジャケをちゃんと読めばわかるとおり、今回からはレイ・ラモンターニュ&ザ・パライア・ドッグス(Ray LaMontagne & The Pariah Dogs)というバンド名義。とはいえ、メンバーは、前作『Gossip In The Grain』でもバックを務めていたギターのエリック・ヘイウッド(Eric Heywood)、ベースのジェニファー・コンドウズ(Jennifer Condos)など、大きな変化はない。

一番の変化はきっと、今回のアルバムの音をまるっきり彼の色に染めている、グレッグ・リーズ(Greg Leisz)の存在だろう。このブログにも何度か名前は登場している(主にマシュー・スウィート関連で)、敏腕ペダル・スティール奏者。

彼の貢献は大きいと思う。ちょっとファンキーなオープニング「Repo Man」とブルーズがかったエンディング「Devil's In The Jukebox」を除けば、あとはいつもながらのレイ・ラモンターニュ色が8曲。そのほとんどで(もちろん前出の2曲にも)ペダル・スティールはもちろん、ラップ・スティール、リゾネイター、バリトン・ギター、アクースティック・ギターなど様々な種類の弦楽器で彩りを添えている。

ちょうど帰りみちに聴いていたマナサスの72年の未発表曲集と同じ匂いがしたと思った。スティーヴン・スティルスの、せつなさという概念をかためたような声とはちょっと違うけれど、6年前のデビューから全然変わらないレイの声もまた、ささくれだった気持ちをなだめてくれるようだ。いつものように、無骨に。

そういえば、偶然だね。さっきリンクした4年前の記事に書いたけれど、この人が曲を作って歌っていくことを決意したのは、スティーヴン・スティルスの「Treetop Flyer」を聴いたことがきっかけなんだった。音的にはそれほど酷似しているというわけではないけれど、そうだな、同じ匂いという言い方がいちばんしっくりくる。

  何が起こってるんか、わかってへん振りできたらええのに
  耐えてみるつもりや、もうちょっとだけな
  でも、俺が倒れそうになったら、誰か支えてくれるかな
  なあ、俺ら、ほんまにもう終わってしもたんかな

アルバム中もっとも静かな一曲「Are We Really Through」が何故か気持ちに沁みる。聴くだけで自分も失恋したような気分になれる曲(笑)。急に寒くなったこんな季節のせいかな。

とても暑かったこの前の季節は、ジェブ・ロイ・ニコルズの『Long Time Traveller』がヘヴィ・ローテーションだった(少なくとも、アラーム祭り開催前まではね)。暑かったけど楽しかった季節の終わりを告げた日に届いたこのCDが、僕のこれからの季節を代表するアルバムになるんだろうな。


posted by . at 02:40| Comment(4) | TrackBack(0) | アルバム | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
こんばんは。先程はコメントありがとうございました〜。

もうすでに入手されているのかと思っておりました。いやぁ、セカンドがあまりに素晴らしい内容だけになかなか簡単に良い作品だと言えない自分がいますけれども、今作に関しても楽曲一曲一曲捨て曲なしなんですよね。

確かにこれからの季節にしっくりくる作品ですが、いつもよりたくさんのため息がちょっと気になりまする…。

ところで、話題は変わるのですが、サン・キル・ムーンの新作のアナログいつの間にか発売されていたのですね。それなりにチェックしていたつもりが昨夜見てびっくりで。さらにはオフィシャルではホワイト・ヴィニールは完売でさらにびっくり。こちらでも扱ってますよ〜のAural Exploitsでも在庫なし表記で落ち込んでおりました。今朝だめもとでもう一度Aural Exploitsをチェックしたら購入可能になっていたので慌ててポチッったらその後また在庫なしになったので本当、ぎりぎり滑り込みセーフだったのですが、yasさんはもう無事にポチられたでしょうか?
Posted by マサ at 2010年10月09日 22:52
遅ればせながら、今年になって初めてRay Lamontagneの前作を聴いてはまり、遡って旧作を聴いているうちに、新作も出て、と春から夏にかけてけっこう集中的に聴いていました。声をふくめて演奏の音の質感がなんともいいですよね。
Posted by タイコウチ at 2010年10月11日 15:32
>なんだかんだ言っても、居心地よかったんだよ

おお! 実は実は私もそうだったんです!「いつまでも暑いよねーもうやんなっちゃうよねー」と口では言いながら、ひそかに嫌じゃなかったんですよね。なんといっても夏は夏ですから。

「もう夏が終わっちゃうんだな」と感じる瞬間は、毎年なんとも言えず寂しいです。子どもかよと思いつつ。
というわけで、これからの季節に浸るべく、これ聞いてみようかな。
Posted by にんじん at 2010年10月13日 00:49
■マサさん
夏場からしばらく、新譜を買うのがどうも億劫になっていたんですよ。それで、先月あたりにいくつかのサイトでまとめて通販でドカ買いした中の一枚がこれだったというわけです。

お気遣いいただいたサン・キル・ムーンの白盤もちゃんとオーダーしております。いつまで経っても届かないのがちょっと不安ではありますが。当初Aural Exploitsは黒盤だけという話だったのですが、白盤もあったのですね。スカンジナビア・ツアー限定のマーブル盤もマサさんならなんとかして手に入れられるのではないでしょうか。


■タイコウチさん
今年になってから今作も含めて4枚まとめ聴きされたのですね。セカンドがよかったとかサードがいまいちとか書いてますが、基本的にそう大きくぶれることのない人なので、ハズレはないですよね。ファーストとセカンドの間にボナルー・フェス音源のミニ・ライヴ・アルバムが出ていますが、それも買われましたか?


■にんじんさん
長い間四季のない国に住んでいたせいか、やっぱり夏や冬はそれらしくあってほしいと思う気持ちが強いです。夏は思いっきり暑く、冬は凍えるほど寒い方が、その後に来る秋や春のありがたみがわかるというものです。

にんじんさんこの人の以前のアルバムは結構気に入って聴いてくださってましたよね。今回のもきっと気に入っていただけると思いますよ。秋の夜長にどうぞ。
Posted by yas at 2010年10月17日 12:56
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