2010年08月02日

暑中見舞い - Squeeze

Spot The Difference.jpg
スクイーズ 『Spot The Difference』

グレン・ティルブルックとクリス・ディフォードが、約10年のブランクを置いて、スクイーズ名義で英国ツアーに出るためにまた一緒に活動を開始したのが07年の7月。

当初は、当時再発されたバック・カタログとベスト・アルバムをプロモートするためだけだったはずのその再結成が、北米ツアーを経て、さらにはスクイーズのニューアルバムのための新曲を二人で書き始めているというニュースに繋がり、古くからのファンを大いに期待させた。

ところが、スクイーズの新アルバムの話はそれ以降あまり聞かれなくなり、そうこうしている間にクリスは『The Last Temptation Of Chris』、グレンは『Pandemonium Ensues』というそれぞれのアルバムを発表。どちらのアルバムも凄くよかったから文句はないんだけど、やっぱりスクイーズ名義だともうそんな簡単には作れないのかな、また『Domino』みたいな中途半端なのじゃプライドが許さないんだろうな、なんて半分諦めかけていたところ。

今年に入ってしばらくした頃かな、スクイーズのアルバムがとうとう出るというニュースがまた聞こえてきた。ところが、当初噂されていたようなニューマテリアルではなく、自分たちの過去の曲を焼き直したアルバムだという。その名も『Spot The Difference』。「どこが違うでしょう?」ということだ。

どういうつもりなんだろう。結局ろくな新曲が書けなかったのかな。それとも、オリジナルとちょっとずつ違ったアレンジや歌詞で再録して、言葉どおりその違いを探して楽しむようなアルバムなんだろうか。それにしても、全14曲、どれもこれもスクイーズのベストアルバムには必ず入っているような代表曲ばかりだね。グレンのライヴのようにもう少し凝った曲をちょっとぐらい入れてくれてもよかったのに。

なんてことを考えながら、正直言って個人的にはいまいち盛り上がっていなかったのは事実。早々に公開されていたジャケット(上に乗せた写真)も、なんだか地味な感じだし。いろんな色の点々を「Spot」という単語にひっかけてるのはわかるけど、特に面白いというわけでもないし。ちなみにバンドのロゴは『Babylon And On』期のものだね。文字の色合いが微妙に違うけど。

8月3日発売のはずだったのが、何故か先週の金曜(7月30日)にはもう店頭に並んでいた。いまいち盛り上がっていなかったはずだけど、自分の持っていないスクイーズのCDが目の前にあって買わないわけにはいかない。早速購入。

さっきも書いたとおり、収録された14曲全部が、まともなスクイーズのベスト盤なら必ず入っているだろうという超有名曲。ほとんどが最初の解散(83年)以前の曲で、それ以降のは「Hourglass」、「Some Fantastic Place」、「Loving You Tonight」の3曲のみ。それらが、どちらかというととりとめのない曲順で並んでいる。1曲目が「Another Nail In My Heart」なのは嬉しいけど。

一回聴いて、ようやく彼らの、というかグレンのやりたかったことがわかったよ。これは、単に昔のヒット曲を再録するというだけでなく、それぞれの曲の細かな音まで全て、完璧にコピーするというのが目的だったんだ。初期の曲が多いとはいえ、オリジナルはそれぞれ違う人がプロデュースしていた曲の、その一つ一つの音のニュアンスまで全てを似せて。

近年のライヴでは昔と違う節回しで歌っていることも多いグレンだけど、そういう曲も全部昔通りの歌い方で歌ってるね。セカンドアルバムの頃のチープなシンセの音をあえて再現したり。「Black Coffee In Bed」のコーラスはさすがにコステロとポール・ヤングではないけれど、「Tempted」のヴォーカルのためにわざわざポール・キャラックを呼んでいるよ。

今のメンバーに昔のアルバムそのままのフレーズを弾かせて、それを偏執的なまでにオリジナル通りのアレンジに仕上げるというマニアックさ。これはどう考えても、聴いてるこちらより作っている方が楽しんでるよね。トッド・ラングレンの『Faithful』のA面と同じパターンだ。グレンがニヤニヤしながら音作りをしているところが目に浮かぶよ。

そう考えると、聴いているこちらがオリジナルと全く同じだと「正確に」わかるためには、誰も知らないようなレアな曲を入れても意味がなかったというのもわかるし、さすがに今さらあの音作りはしたくないだろうしできないだろうというローリー・レイサムのプロデュースした曲が一曲も入っていないことも理解できる。

僕はオリジナルはもう何百回と聴いてきたから、それぞれの曲の微妙な違いは聴き分けられるけど、そのためにこのアルバムを何度も聴き返すかというとちょっと疑問。今さら『Singles 45's And Under』を何度も聴き返さないのと同じ理由でね。まあ、一回聴いてあとは棚にしまっておくようなことはしないけれど。

次に出るであろう新曲が詰まった本当のニューアルバムまでの、彼らからのちょっとした挨拶代わりに受け取っておくとしよう。ちょうどいい季節だから、彼らからの暑中見舞いということで。


<8月3日追記>
とりとめのない曲順って書いたけど、さっき聴いててふと気付いた。これ、アルファベット順に並んでるんだね。それにしても、ここまでオリジナルを完璧に再現することに凝ったグレンが、どうして「Loving You Tonight」を自分で歌うことにしたのかは不思議。


posted by . at 00:30| Comment(5) | TrackBack(0) | アルバム | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
>自分の持っていない○○○○○のCDが目の前にあって買わないわけにはいかない
当然です。

買ってよかったですね。
ちゃんと意図がわかってよかった。
Posted by Luna at 2010年08月05日 08:08
ご無沙汰してマス。

貴記事を読んで、CD屋4件回って買ってきました(笑)。

最初はあまりのあんまりぶりに開いた口が塞がらなかったけど、だんだん楽しめるようになりましたね。健在ぶりを示す・・・というか・・・やはりおっしゃる通り暑中見舞いですねv。個人的にはジョン・ベントレーさんのベースに何故か耳いっちゃいました。

後気になるのは、何故か配信のみについているというボートラと、今月末のグレンの動向ですね。富士山登るだけで終わるのか?、ドキドキです(笑)。
Posted by YUNKO at 2010年08月06日 23:54
もう売っているのですね。私はアマゾンで予約しているので
出遅れております。
キャラックさんを呼んでるのですね。皆さんの意見を読んで
楽しめるのか正直不安でもありますが...。
Posted by うささこ at 2010年08月07日 08:25
yasさん、またまたごぶさたです。

yasさんの書かれているとおり、まさにこれはToddの「Faithful」のコンセプトですね。でも、自分たちの曲をやっているところが、さらにひとひねりあって面白い(と感じるのはマニアだけ?・笑)。

グレンって、いい曲を書いて、歌がうまいだけじゃなくて、端から見ると意味不明なこういう純粋な音楽的探究心を持ってるところがいいんだよな、とあらためて思いました。

演奏している本人たち(グレンだけか・笑)がいちばん楽しんでいるはずのこのアルバム、私はけっこう愛聴しそうです。
Posted by タイコウチ at 2010年08月07日 10:25
■Lunaさん
○の数がおあつらえ向きに5つですね。はい、買ってよかったですよ。なんとなく文句を言いたげな記事になってしまいましたが、もちろん文句などあるはずもございません。意図が本当かどうかはきっと本人に聞いてみないことにはわかりませんが、とりあえずこう思っておきます。


■YUNKOさん
4件も回らせてしまいましたか。すみません。今度からはもう少し場所が特定できるように書きます。僕も新しめの曲をジョン・ベントレーが弾くのを興味を持って聴きましたよ。あとは、ドラムスがやっぱり違うな、と。

ボートラの件、随分前から噂されていましたが、iTunesを見ても14曲分しか載ってないですよね。どこかで入手できるのでしょうか。

月末情報も、逐一チェックしているわけではありませんが、まだサプライズはないようですね。グレンもさることながら、僕は四半世紀ぶりにマイク・ピーターズを観たいのですが、無理でしょうかね。彼の予定表を見ると、オフィシャルのHLS日程よりも少し早く切り上げるようなのですが、もしやその週末に。。


■うささこさん
もう入手されたでしょうか。いかがでしたか?不安に思われるようなものではなかったですよね。是非貴ブログでも取り上げてください。


■タイコウチさん
お久しぶりです。自分たちの曲だからそっくりに作るのは簡単と思いきや、結構苦労したんだろうなと思わせるところがそこかしこに見受けられますね。こうして聴いてみるとびっくりするぐらい声の変わっていないグレンでも、やはり今の声だなと思ってしまいますし。

>端から見ると意味不明な
あのビデオは一体どうなってしまったのでしょうか…(苦笑)

はい、僕もなにやら文句めいたことを書きましたが、十分楽しんで聴いています。
Posted by yas at 2010年08月12日 19:44
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