2010年01月19日

Chris Garneau live in Tokyo

garneau_flyer.jpg


「8時には間に合わないと」

机の上に残った仕事はとりあえずなかったことにして、一路渋谷に向かった。今日行けるとは思ってなかったけど、やっぱり行っとかなくちゃ。下手するともう一生観る機会ないかもしれないし。

2年半前にタマス・ウェルズを観たのと同じ会場、渋谷O-nest。6階の受付にたどり着いたのは、開演時間8時の15分ほど前。なんとか間に合った。

Garneau at O-nest.jpg


5階の会場に降りていくと、なんだかがらんとしている。一番前でもテーブルのところでも、好きな場所に陣取れるよ。うわ、あまりチケット出てないとは聞いてたけど、大丈夫かな。とりあえず前回タマスを観たのと同じあたりで観よう。

8時を10分ぐらい回ったところで、前座のおおはた雄一が登場。夢の中で組み立てたみたいな不思議な形をしたギターを抱えて、優しい声で優しい歌を歌う人。曲ごとにカポをあっちにつけたりこっちにつけたり。スライドバーをはめてかなりヘヴィな演奏も披露したり。糸井重里と共作したという「キリン」という曲とか。そのときについでに作ってもらった歌詞を適当な曲にあてはめた「ロバ」という曲とか。ギター上手いなあ。なんだかんだで、結構気に入ったよ。前座をこんなにちゃんと身を入れて聴いたのも久し振りかも。

彼が退場し、後方に置いてあったキーボードを前に動かしたりしている人たちに混じって、今日の主役のクリス・ガノとチェリストのアナ・コールナー(Anna Callner)が出てきたのは9時ちょうどぐらいだったかな。おもむろに椅子に腰掛け、ホタルの光みたいなかぼそい声でひそひそと挨拶を始めたもんだから、後ろの方でそれが聴こえない観客はまだガヤガヤと喋ってる。

ライヴがもう始まってるんだと皆が気づいて一瞬しんとなって、弾き始めた1曲目は確か新作からの「Hands On The Radio」だったと思う。残念ながら、セットリストをきちんと覚えるほど彼の曲を把握しているわけじゃないので、今日は曲目も順番も全然当てにならないよ。

ファーストアルバム『Music For Tourists』と昨年出た新作『El Radio』からの曲をほぼ交互ぐらいに演奏してたように思う。3曲目が新曲だという「October, October, October…」と何度も繰り返した題名の曲だったな。

両脚をぴったりと揃えてキーボードの前に座り、ちょっとこの世のものでないような光を目に湛えて歌うクリス。おそらく僕よりも背が低いこの人は、今までずいぶん生き難い人生を送ってきたんだろうなと想像してしまう。

いや、背が低いからとかいうんじゃなくてね。なんて言うんだろう。美しい音色のピアノを弾きながら、震えるような悲しい声で歌う、それだけを目的として生まれてきた生き物、みたいな。この人、普段人並みの生活を送るなんてことができるんだろうか、なんて思える。肉食系とか草食系とか言うけど、あえて言うなら草食系にすら食べられてしまいそうな植物系というか。

タマス・ウェルズが、あの天使の歌声に反して地声がごく普通の低めの声なのに比べて、クリスの声は、ボソボソと曲間にしゃべるときですら、まるでタマスの歌声のようなか弱さ。と思えば、歌うときには決して声を高めることのないタマスとは逆に、クリスの歌声は時折りまるで悪魔かなにかが乗り移ったかのように激昂する。きっとこの人は、普段は何か薄い膜のようなものに包まれていて、歌を歌っているときにだけ本当の人生を送っているんじゃないか。

なんてことを考えながら。最近始めて耳にしたセカンドよりも個人的にはもう2年ぐらい聴いて耳に馴染んでいるファーストからの曲が多かったのが嬉しかった。大好きな「Baby's Romance」も、キュートな「Blue Suede Shoes」も演ってくれたし。

「あと2曲」と前置きして歌い始めたのが、エリオット・スミスのカバー「Between The Bars」。Liricoのブログに、つい最近の台湾でのこの曲のライヴ映像が載ってたね。目の前であの声で歌われるとやっぱり全然違うけど。

アンコールは2回。2回目に出てきたときに「もうこれが最後だからね。これ以上呼ばれるとビートルズの曲でも演るしかなくなるよ」なんて冗談言ってたね。ちょうど2年半前にこの場所でそれをやった人がいることを知ってて言ったのかな(笑)


2度目のアンコールが終わったのが、10時をちょっと回った頃だったかな。ちょうど1時間ぐらいか。でも、濃密だったよ。ほんとうに、無理して来てよかった。危うくこれを見逃すところだったかと思うと。東京在住じゃなくて観られなかった人、残念でした。今日来ようと思えば来られたのに、月曜だからとか最近来日ラッシュだからとかいう理由でスルーした人、とんでもなくもったいないことをしたよ。


終演後は6階に戻って、今日は来るつもりじゃなかったからサイン用のCDも何も持ってきてなかったからセカンドアルバムを買おうと思ったら、なんと中国プレスのファーストも売ってるよ。ボートラ3曲入りで、なんだか不思議な作りのケース。スリップケースに入ったボール紙の内側に蛇腹状の歌詞カード。当然これも買いでしょう。2枚まとめて大人買い。つい2日前のコメント欄で「しばらくCDは買わないことにした」なんて書いてたのはどこの誰なのか。

Chinese Music For Tourists.JPG


あ、このボートラの曲(「Blackout」)、さっきアンコールで演った曲だね、きっと。何年か前にニューヨークが2日間停電になったときの曲とか言ってたから。

サイン会が始まったので、列に並んでクリスとアナのサインをもらう。しゃべってみたら、あれ?全然普通の気のいいお兄ちゃんだね。さっきの何かが乗り移ったみたいな雰囲気はどこへやら。でも、サインの字はやっぱりひそひそとかぼそいね。アナの方がよっぽど豪快なサインだよ。ハートマークの中にスマイル描いてくれるし、チェロの絵も描いてくれるし、サービス精神旺盛。

「もう明日NYに帰るの?」と訊いたら、アナのいとこが長野に住んでいるとかで、あと一週間日本に滞在するとのこと。さっきライヴの途中に寒い季節が好きだと言ってたクリス、寒い日本を満喫して帰ってね。

Signed Tourists and Radio.JPG

posted by . at 01:52| Comment(6) | TrackBack(0) | コンサート | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
きのうはありがとうございました。
そして、すばらしいレポートも。

ほんとうにとても不思議な男の子です。
普段はそうでもないのに、ステージ上では
極端にシャイ、だけど、歌声はCDと違って
エモーショナル。

とりあえず、一日経ったいま、
やってよかったな、と。
それだけは強く思っています。

ちなみにきのう初めて知ったんですが、
クリスの中国のレーベルはタマスとおなじ。
中国でもレーベルメイトです。
Posted by sin (lirico) at 2010年01月19日 23:02
■sinさん
こちらこそ、こんな素敵な音楽を苦労してCDという形で日本で流通させてくれたり、本人を連れてきてくれたりするような誠実なレーベルさんには、日頃から本当に感謝していますよ。

「男の子」という形容がぴったりくる人でしたね。きっと、最初に普段着の彼と出会って、それからライヴを観たとしたら(きっとsinさんがそうであったように)、随分印象が違ったんだろうなと想像します。

ちなみに例の中国盤ファースト、中のCDがケースから異常に取り出し難いです。紙のホルダーの部分を破らずにCDを取り出すのは、神業級の腕が要りますよ。僕は買った日から二度断念し、今日ようやく聴くことができました。同じセンスを持つレーベル同士として、ポケットさんによく言っておいてください(笑)
Posted by yas at 2010年01月21日 01:28
コンニチワ。

先日はコメント頂きありがとうございました。

ちょっとした偶然が重なってるようで、
ネットの世間も少しせまいのかな?と
思ってしまいました。

サイン会あったんですね〜。yasさまの記事を読んでて
帰らずにギリギリまで粘っておけば良かったかなーと
思ってしまいました。

まだクリスは日本にいるのでしょうか?
もうそろそろ帰るのかな???
長野はかなり寒いけど、楽しんでくれてるといいですね〜
Posted by riri-inu at 2010年01月23日 14:37
■riri-inuさん
いらっしゃいませ。こういう音楽を聴いてる人同士なのでどこかで繋がっててもおかしくはないと思うのですが、やっぱりこういうことがあるとちょっと面白いですね。そのうちどこか現実世界で出くわした際にはよろしくお願いします。

サイン会、そんなに遅くない時間だったのですが、やっぱり平日(しかも月曜)なのでちょっと難しかったですよね。まあ、そのうちまた機会があるでしょう。

クリス達は一週間居ると言ってましたから、そろそろ帰るころではないでしょうか。長野気に入ってくれて、次のアルバムに長野の曲とか入れてくれたら嬉しいですね。
Posted by yas at 2010年01月27日 00:48
こんにちは。この釣り針は怪しい…と思いながら、まんまと喰いついてしまいましたよ(笑)。

色々調べてみたらフランスのFargo盤はデビューアルバムのジャケットが随分と違うんですね。とりあえずデビューアルバムに未収録の楽曲を6曲集めたC-SIDESも出ているので、Fargo盤で集めてみることにしました。セカンドアルバムもサイトを観ていると2種類あって、スタンダードバージョンと2枚組バージョンがあったので5曲のディスク2が付いた2枚組の方を購入しました。と、そこまでは良かったのですが…届いたセカンドアルバムは、サイトではヴィニール・レプリカとなっていたのにデジパックで、しかもディスク2は別梱包で透明ヴィニールの袋に入っていました。しかもC-SIDESもセカンドのディスク2共にプレスCDではなく、どうやらCD-R…。おそらくセカンドも2枚組バージョンの在庫がなくなったのでスタンダードバージョンと、別梱包でディスク2を抱き合わせで送ってきたような気が…。まぁ、あくまで私の憶測ですが…。

ただ、中身の音楽は素晴らしいですね。今のところ届いてからセカンドの方をひたすら聴いています。癖になりますね。
Posted by マサ at 2010年02月06日 12:09
■マサさん
お久しぶりです。てっきりマサさんならご存知かと思っていましたが、初聴きでしたか。なのにもう僕の持ってないようなのまで全部集め終わったとは、さすがです。

Fargo盤のジャケが違うのは知ってましたが、そんな別バージョンがあったんですね。セカンドは日本盤もデジパックです。僕が買った中国盤のファーストに入っているボートラは、きっとその『C-Sides』にも収録されているんでしょうね。他の曲がどんなのか知りたいです。ぜひ貴ブログに取り上げてください。
Posted by yas at 2010年02月07日 00:11
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