2009年11月04日

開花と貢献 - Montt Mardie

Skaizerkite.jpg Montt Mardie 『Skaizerkite』

4月に北欧特集のyascdを作ったときには、このアルバムは既に発売されていて、僕が行きつけにしているあちこちのブログで結構な話題になっているのは知っていた。でもそのときは、やはり僕が行きつけにしている某ネットCDショップでは、ずっと在庫切れだったんだ。

代わりに、前作にあたる『Clocks/Pretender』から「1969」という曲を入れようとしたんだけど、あいにく激戦区のスウェーデン勢の中では、あのアクの強い曲はどうしても浮いてしまって、やむなく落としてしまった。あの記事でほんの二段落ぐらいの簡単な説明でこの人を紹介して終わりにしたくなかったからという気持ちもあったし。

5月になってようやくこのアルバムを入手し、さあ聴こうと思った矢先に例の09年度第二次グレン・ティルブルック症候群だ。いいアルバムだなと認識はしたものの、それからしばらくの僕がグレン/スクイーズしか聴けなくなってしまったのは、このブログをいつも読んでくださっている方ならご承知のとおり。

タイミングというのは大事だね、まったく。あの5月中旬という特異な時期に手に入れてさえいなければ、僕はもっとこのアルバムをしっかり聴き込み、(つい最近の僕が遅ればせながら気づいたように)これが自分にとって2009年を代表するアルバムの一枚になるともっと早くわかったはずなのに。

というような回り道をしていたお陰で、紹介するのがすっかり遅くなってしまった。モント・マルディエ(という発音でいいのかな。本名はデイヴィッド・パグマー David Pagmarというらしい)のサードアルバム『Skaizerkite』。耳慣れないこのタイトルは別にスウェーデン語というわけではないらしい。三つ折デジパックのジャケット内側にある説明によると、

skaizerkite /sky-zer-kite/ 1. 自信過剰な人 2. 1940年代初期のニューヨークに活動していた組織 3. 凧製造会社

ということだって。自分のことを自信過剰だと自虐的に揶揄してるのかな。まあ、凧製造会社についての歌が入ってるわけじゃないのはわかるけど。

オープニング「Welcome To Stalingrad」を聴けば、彼がこのアルバムで一皮も二皮もむけたというのがすぐにわかる。トランペット、ストリングス、オルガンをフィーチャーしたハイテンションな演奏に乗せて、うきうきするようなメロディーが歌われる。それが典型的なモータウン・ビートに乗っているのに、どこかほんのりと翳りを感じさせるのは、北欧ならではのセンスだろうか。

間髪を入れず、「One Kiss」のイントロの鮮烈なピアノ。もうその時点で、これが凄いアルバムだということがわかる。四半世紀も前なら、スタイル・カウンシルやワム!の最盛期の作品に匹敵していたはず。豪華な女声コーラス、間奏でのふとしたブレイク、どの瞬間を取っても最高。

まだ続くよ。「Click, Click」はその名の通り、カメラのシャッター音がリズム音として効果的に使われたセンチメンタルなポップ・ナンバー。“Click, Click”という歌詞をデュエットする女性が、後半くすっと笑ってしまうところなんて、ぞくっとするほど可愛いよ。

3曲突っ走ってきた後、ここで休憩のようにアコースティック・バラッドが入るんだけど、これがまた全然おまけみたいな出来じゃない。Johan Kronlundという、声質の似た人とのデュエット。いいね、これも。滲みる。

全曲解説する時間も気力もないけど、マジでこのアルバム、こういう感じで最後の12曲目まで捨て曲なし。7曲目のタイトルが「去年マリエンバードで」なんてのを見ると、ちゃんと歌詞読みたくなるね(前作にはちゃんとブックレットが付いてたのに)。8曲目のバラッドでデュエットしているのは、元ポプシクルのアンドレアス・マットソン(Andreas Mattson)。この人、前作にも参加してたね。

Clocks Pretender.jpg Montt Mardie 『Clocks / Pretender』


ちょっとだけその前作の話をしよう。全20曲入り、『Clocks』と『Pretender』の2枚組。どっちも30分ちょっとだから、余裕で一枚のCDに入るのに、コンセプト違うからとちゃんと分けてるのがいいね。パタパタと開いていく感じのデジパックなのもプチ豪華。どっちかというと、『Clocks』の方が本編で、『Pretender』はいろんな人とデュエットした曲が収められたボーナスディスクという趣。

さっきタイトルを書いた「1969」といい、「Set Sail Tomorrow」といい、これにもいい曲が沢山入ってるよ。新作には負けるけどね。新作はまさに才能開花という感じ。あと、この頃は今よりもっとファルセットを多用してて、聴く人によってはちょっと拒絶感あるかもね。

とにかく、まず聴いてみようと思うなら、新作からがおすすめ。こんな優れたアルバムがアマゾンとか街のCD屋で簡単に手に入らないのは残念だけど、そういうときは某アップル・クランブル・レコードを頼りにすればいい。さっき見てみたら今のところ在庫はあるようなので、欲しい人はどうぞ。

別に僕はアップルさんに借りがあるわけでもお金をもらっているわけでもないけど、こういうアーティストをどこからともなく見つけてきてちゃんと日本で流通させてくれているというのは、日本の音楽界にとって凄い貢献だと思うよ。なのでそういう店には音楽ファンとしてちゃんと貢献しようと。


posted by . at 00:27| Comment(2) | TrackBack(0) | アルバム | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
ご無沙汰です。最近忙しくて眠くてあまりゆっくり読む時間がないのですが、今日はちゃんと読むつもりで来ました。が、まだ読んでる途中なんですけど、すごくこのアルバム聞きたくなりました! というわけで、コメントしていきます。続きは明日読みますね。
タコ製造会社の曲ではないんですね。ちゃんと理解したことをアピールしていきます。
Posted by カブ子 at 2009年11月05日 00:29
■カブ子さん
おひさしぶりです。偶然ながら僕も最近忙しくて眠いんですよ。流行っているのでしょうか。

聞きたくなってくれて光栄です。ヘンなもの好きのカブ子さんのお好みに合うかどうかは定かではありませんが、機会があれば是非どうぞ。歌詞も全部を聴き取ったわけではありませんので、もしかしたらどこかでこっそりタコの話が紛れているかもしれません。たとえそうだとしても、理解されたことは合っていますのでご安心を。
Posted by yas at 2009年11月07日 11:07
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