2009年11月01日

Vol.2.5 - Matthew Sweet & Susanna Hoffs

Under The Covers Vol. 2.5.jpg
『Under The Covers Vol.2.5』 Matthew Sweet And Susanna Hoffs

「こういう誠意のある日本のインディーズは是非応援してあげたい」

8月16日の記事のコメント欄に書いたのは、誓って嘘じゃない。だけど、そのコメントを書いてまもなく、こんなものの存在を知ってしまったのが運の尽き。せめて、日本盤が発売されて初動が収まるぐらいの期間はそっとしておくのがこちらから示せる精一杯の誠意かと、しばらくの間この記事を脳内で寝かせておいた。

マシュー・スウィート&スザンナ・ホフスの70年代カバー集『Under The Covers Vol.2』の日本盤には、僕がレビューした輸入盤には入っていないボーナストラックが5曲も含まれているのは、8月のその記事のコメント欄にあるとおり。

ところが、あれこれ調べているうちに、どうやらその5曲のボートラ以外にもまだボツになったテイクがあるらしいことを知った。そして、とあるサイトで、10曲入りのボーナスディスクが付属した『Vol.2』を発見。誠意のある日本のインディーズには大変申し訳ないが、そっちをオーダーしてしまった。

届いてみたら、それは別に2枚組というわけではなく、通常のデジパックの『Vol.2』に、カラーコピーのジャケ(上の写真)がついたプラケース入りの、何の記載もないCD-Rがおまけとしてついているという形態だった。ハサミで切ったような歪んだ正方形のジャケは、こんなの一枚一枚手で切ってたら余計に手間がかかるだろうと思わせるような手作り感満載の出来。権利関係はどうなってるんだろうか。

日本盤ボートラの5曲は全て含まれているが、順番は日本盤とは全然違う。本編の「Beware Of Darkness」で一旦しんみりと終わった後に威勢よく始まる「(What's So Funny 'bout) Peace, Love And Understanding」を持って来て、最後は再びしんみりと「You Can Close Your Eyes」で締めるという日本盤の曲順は実によく考えられたものだと思うけれど、この『Vol.2.5』と名付けられた10曲入りのCD-Rの曲順もなかなかのものだ(太字は日本盤に収録)。

1. Dreaming
2. Marquee Moon
3. I Wanna Be Sedated
4. Baby Blue
5. You Say You Don't Love Me
6. (What's So Funny 'bout) Peace, Love And Understanding
7. You Can Close Your Eyes
8. Melissa
9. Killer Queen
10. A Song For You

ブロンディの「Dreaming」はきっと泣く泣く本編から落としたんだろうね。それぐらい上出来。スザンナの声って、こういう曲にほんとによく合うね。

僕にとって、このCD-Rで一二を争うハイライトが早速2曲目に。オリジナルよりもわずかにスピードを上げて、より芯の太いギターの音で幕を開ける“あの”イントロ。マシュー・スウィートが演奏する「Marquee Moon」なんて、これこそ想像するだけで鳥肌ものだろう。贅沢を言うなら、隣でギターを弾いているのがリチャード・ロイドだったら最高なんだけど、あいにく今回のレコーディングには彼は不参加。

スザンナも当然参加しているけど、もうほとんどマシューのソロ作品と言ってもいいようなアレンジ。それでも、オリジナルのヘロヘロ感と比べると、バックにしっかりと入っているスザンナのコーラスの分、音に厚みと甘味がある。マシューのギターソロが散々堪能できる、オリジナルに匹敵する11分弱の大作。

続いては、日本盤にも収録のラモーンズ。いいね、これ。この二人で一緒に歌ってる意味が一番感じられる、気持ちのいいデュエット曲(もちろん、本編の「Go All The Way」とかは除いての話)。

バッドフィンガーの「Baby Blue」は、本当は好きな曲なんだけど、ここでの出来はあと一歩というところかな。本編での「Maggie May」にも感じたんだけど、どうもスザンナちょっと気張りすぎというか。

バズコックスって、パンクという枠で括られて入るけど、ほんとにポップでいい曲書くよね、というのがよくわかる「You Say You Don't Love Me」。それは2曲前のラモーンズにも言えることだけどね。こういう曲を書けるから、単なるブームに乗って出てきては消えた有象無象とは一線を画してるんだよね。

僕にとっては今回の最大のお目当て。ニック・ロウの「(What's So Funny 'bout) Peace, Love And Understanding」。誠意のある日本のインディーズがこの曲をボートラの1曲目に持ってきたことは評価に値するけれど、これがあたかもエルヴィス・コステロの曲だと誤解されるような表記の仕方はやめてほしい。元はと言えばニック・ロウが在籍したブリンズリー・シュウォーツ最後のアルバムに収録されていた曲で、今でもニックの代表曲。

とは言え、やはり一般的には『Armed Forces』の米盤に収録されていたコステロのヴァージョンが有名なのかも。ここでの演奏は、派手なドラムで始まるイントロがアトラクションズ版、そしてこの曲を印象付ける綺麗なハーモニーがブリンズリー版、といった合わせ技。いや、これは満足。再来週のニックとライ・クーダーのライヴ、多分この曲演るだろうけど、このアレンジで演ってくれないかなあ。それでライのスライドギターのソロなんてやられたら、もう失神ものだよ。

気を落ち着けて、次はジェームス・テイラーの「You Can Close Your Eyes」。僕はこの曲が最初に収録された『Mud Slide Slim And The Blue Horizon』をはじめ、何枚かのライヴ盤でこの曲を持っているんだけど、タイトルを聞いただけでは即座に曲が思い浮かばなかった。でも、たとえこれがジェームスの曲だと知らなかったとしても、スザンナが歌うこのメロディーを聴けば、一発で彼の曲だとわかるはず。名曲。

オールマン・ブラザース・バンドは初期のライヴ盤を何種類か持っているだけなので、この「Melissa」という曲は知らなかった。悪くはないけど、特筆すべきこともないかな。

多分一般的にはこの中で一番有名なクイーンの「Killer Queen」。僕は8月の記事のコメント欄で「これもまたヴァースの部分をマシューが歌い始め、コーラスでスザンナに交代(マシューはそのままバックコーラスに移動)という感じでしょうか」などと妄想を炸裂させているが、実際はその逆だった。

うーん、どうだろう。僕はやっぱり自分が想像したように、マシューが最初でサビの部分でスザンナという役割の方がよかったかもしれない。さっき「Baby Blue」のところで書いたように、スザンナの声ってあまり低音に向いてないと思うんだけどな。マシューの裏声もいまいちだし。

まあ、それでも、ブライアン・メイ風のマシューのギター(もしかするとグレッグ・リーズ?)はよくできているし、それなりに聴き応えのある出来だろう。

最後は、70年代でこのタイトルならてっきりカーペンターズだろうと思っていたら、グラム・パーソンズの方だった。マシューの別プロジェクト、ソーンズ(The Thorns)のアルバムに入っててもおかしくない、全編に響き渡るグレッグ・リーズのペダル・スティールが泣かせる佳曲。


という全10曲。必ずしも僕のコメントの長さがそれぞれの曲の出来を示しているというわけではないが、この10曲中、日本盤のボートラに選ばれた5曲は、やはりそれなりの出来だったからというのがわかる。テレヴィジョンの「Marquee Moon」にそれほど思い入れのない人であれば、日本盤の5曲で充分満足なんじゃないかな。

というわけで、罪滅ぼしにもう一回日本盤のリンク貼っておくよ。みんなで日本盤買って日本のレコード会社を応援して、次に『Vol.3』が出るときには、日本盤だけ2枚組になっていることを期待しよう。


posted by . at 01:53| Comment(12) | TrackBack(0) | アルバム | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
はじめまして。
ボートラ5曲追加の日本盤の存在は知っていましたが、まさかその上を行くDeluxe Editionがあるとは驚きです;
さっそく調べてみたところ、海外の音楽配信サイト(Play.com、Amazon.co.uk)だけでなく、日本のiTunes Storeでも購入可能ということがわかりました。(¥1,800)
元々は日本盤CDを買うつもりでしたが、さらに5曲多く聴けるということであれば、やはりiTunes Storeを選ばずにいられません。日本のメーカさんには申し訳ありませんが・・・。
貴重な情報をどうもありがとうございました m(_ _)m
Posted by you141 at 2009年11月01日 07:23
え〜っ!!!!!
何だって〜!!!!!
ハッキリ言って本編以上にツボです、選曲。
ラモーンもバズもブロンディーもニック・ロウもクィーンも聴いてみたいけど、何と言っても「マーキー・ムーン」!
俺、iTunes Storeで購入したことないし、PC関係疎いんですが俺でもDL出きるでしょうか・・・。
Posted by LA MOSCA at 2009年11月01日 21:29
■you141さん
はじめまして。ようこそいらっしゃいました。

あ、僕が一応気を使ってぼかして書いた情報を全部バラしてしまいましたね(笑)。というか、僕は配信サイトで買えるというのは知りませんでした。きっと、僕が買ったサイトは、そういうところからダウンロードしたのをCD-Rに焼いて売っていたのでしょうか。わざわざジャケットまで作って。でも、見たところそれほど胡散臭そうなところでもなかったのですが。


■LA MOSCAさん
実は、昨日この記事を書いていたとき、「僕にとって、このCD-Rで一二を争うハイライトが早速2曲目に」という一文の後にカッコ付きで「きっとLA MOSCAさんも同じように思われるはず」と書いていたんですが、その段落があまりにも長すぎるのでその文言は削除したんですよ。やっぱり同じように思われましたか(笑)

ダウンロードはさほど難しくはないと思いますよ。でも、もし何か問題があってできなかった場合は言ってください。なんとかお役に立てるようにしますので。
Posted by yas at 2009年11月01日 23:08
こんなのがあったなんて!最初に輸入盤を買って、国内盤を買い直した人には酷な話です(私は違いますが)。 やはり候補曲は沢山ありますよね〜。いっそ2枚組で出してもよかったのにとも思いますが。 ニック・ロウの曲はやっぱり誰が歌っても良い曲ですね。来日公演まで1週間を切りましたね!
Posted by うささこ at 2009年11月02日 01:37
■うささこさん
もうそろそろほとぼりが冷めたかと思いきや、結構皆さんまだ国内盤買ってませんね(汗)。あまり人の商売の邪魔をしないうちにさっさと次の記事でも上げますかね。

>いっそ2枚組で
まったくその通りですよね。どうせ一般受けするようなアルバムじゃないんだから(失礼)、コアなファン向けに2枚組にしても、同じだけの売り上げが期待できたと思いますよ。

うささこさんはニック&ライ、何日目に行かれるのでしょうか?
Posted by yas at 2009年11月02日 23:48
聴いていないCDなので内容についてはコメントできませんが、良心的な日本のレーベルに対する心遣いが随所に感じられ、yasさんは改めて紳士だよなぁ〜と感動しましたぁ〜!
やっぱり1曲でも多い方がお得だと思うのが、人間のサガですものね。しかも、ネットを通じて音も情報も簡単にゲットできる昨今、あえて日本盤を買う人ってのは極端に減ってしまったのではないかと心配です。とは言ってみたものの、全く日本盤を買ってない私が心配しても仕方ないんですけどね(苦笑)。
これからの音楽業界、本当に良いものを日本に紹介していこうと思ったら、お米屋さんのかたわら、ロシアの輸入CDを販売する某ショップのように、儲けを度外視して副業としてやっていくしか残された道はないのかもしれませんね。
いつもながらの主旨のズレたコメですが、どうぞお許しを・・・。
Posted by クロム at 2009年11月03日 13:24
記事が上がっているのは知っていたんですが、じっくり読む時間がなくて。

…えーっと、vol2のボートラ入りの日本盤を買い直していなくて、よかったんですよね。
Posted by Luna at 2009年11月04日 15:54
■クロムさん
お久しぶりです。忙しい時期は峠を越したでしょうか。新しい生活環境はいかがですか。少しはネット徘徊できる余裕ができればいいのですが。

クロムさん名物褒め殺し、相変わらず炸裂していますね(笑)。あとお得意の重箱の隅を突いて穴を開けるような鋭いコメント。お米とロシアの輸入CDという、形も味も異なる商品を扱うような奇特なお店をご存知とは。主旨のずれたコメント返しをすると、「ロシアのパン」というたまの曲がありました。せっかくそんなお店があっても、ロシア人は米を食べないんですね。


■Lunaさん
えーと、情報としては合ってますが、コメントの方向としてはあまり適切ではありません(笑)
Posted by yas at 2009年11月07日 11:03
無事、聴くことが出来ました。
ご紹介&ご心配ありがとうございました。
近日、記事にする予定です。
「Marquee Moon」も良かったけど、「(What's So Funny 'bout) Peace, Love And Understanding」
コレが一番良かったです!
Posted by LA MOSCA at 2009年11月08日 21:18
「ロシアのパン」って、何だかおいしそうな響きがありますね。どんな曲かと画像を探してみたら、結構シュールな感じでした。ついでに分かったのですが、正しくは「ロシヤのパン」でした。ますますおいしそうです。いつもながら趣旨のずれたコメントで(以下略)。
Posted by にんじん at 2009年11月08日 21:55
通天閣の麓には履き物屋さんの傍らジャズレーベルを持っているお店があります。

ロシアの昔話に『おだんごパン』というのがありますが、おだんごなのかパンなのかどっちやねんと常々思っていました。ロシア人はおだんご食べないですよねー、多分。
ロシヤのパンてピアノジャックをピヤノジャックと呼ぶようなものですね(マイフィールドですみません、ブームなもので)。たまの動画見てみましたが思っていたよりパルナス的ではありませんでした。でもロシヤのパンはハイジの白パンと同じくらいおいしそうです。にんじんさん、あくしゅあくしゅ。

いつもながら趣旨のずれたコメントで(以下略)。
Sweetといえば的場浩司か大乃国しか思い浮かばないのです。
Posted by ひより at 2009年11月09日 00:23
■LA MOSCAさん
今週はちょっとバタバタしていて、返事が遅れてすみませんでした。無事入手されたようでなによりです。記事も読ませて頂きましたので、またコメントしに行きますね。

「(What's So Funny 'bout)Peace, Love & Understanding」、良かったですよね。新しい記事に書きましたが、つい先日ニック・ロウがこれを歌うのを聴いてきましたよ。このバージョンとは全然違いましたが、ライ・クーダーがスライドギターで伴奏をつけていて、それはそれでとてもよかったです。


■にんじんさん
そうでした。ロシヤのパン。僕としたことが。お陰で僕も久しぶりにあの映像を観ました。イカ天キングのときのやつです。いつも趣旨をずらしながら美味しいところに話を持って行っていただいて、感謝しております。


■ひよりさん
何故そんなジャズレーベルのことをご存知なのでしょう。さすがは自称音楽ブログ主。

「おだんごパン」が一体どういうお話なのか気になります。

的場浩司と大乃国が何故Sweetに関連しているのか、僕には皆目見当が付きません。だいたい的場浩二が誰かすら知りません。大乃国はおすもうさんですよね。
Posted by yas at 2009年11月15日 00:59
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