2009年09月20日

魔法を信じ続けていくための音楽 − 100s

世界のフラワーロード.jpg 100s 『世界のフラワーロード』

中村一義のアルバムはいつも

  たくさんの「いい曲」と

  いくつかの名曲と

  夢で見た景色をハサミで切り抜いてきたような断片と

が集まってできている。


97年のソロ名義でのデビューアルバムから、100s(ひゃくしき)というバンドの一員になってからもそれはずっと変わらない。毎回、それら成分の含有量が少しずつ違ってるだけ。

98年の『太陽』や02年の『100s』みたいに、それこそ名曲と夢の断片だけを固めて作ったようなアルバムもあれば、大方「いい曲」と断片ばかりだけど、その中にそっと、聴いているだけで胸が詰まってしまうような名曲がぶどうパンみたく埋め込まれていることもある。

そしてそれは、この『All!!!!!!』以来2年ぶりのアルバムでも変わっていない。07年のそのアルバムには「ももとせ」っていうとびっきりのぶどうが埋められていたね。この新作の裏ジャケを見ると16個も曲名が書いてあるけど、それもいつものこと。そのうちいくつかは、夢の断片の名前のはずだ。

あれだけ心待ちにしていたアルバムだったのに、リリースが運悪く(?)本年度第二次グレン症候群にぶち当たってしまったために、入手が遅れてしまった。つい先日届いてまだ何度も聴いていないんだけど、たとえば「セブンス・ワンダー」なんて名曲がちょうどアルバムの真ん中あたりにころんと入っているのに気づく。そう、いつもこの人はこんな素敵な曲をこんなわかりにくいところに埋めるんだよね。

名曲「セブンスター」を髣髴とさせるイントロを伴って始まる「モノアイ」もいいし、いつも入ってるシークレット・トラック扱いに近い16曲目の「空い赤」も今回屈指の名曲だ。彼のパワーポッパー的側面がたっぷり表れた「いぬのきもち」も大好き。

11曲目「ある日、」から次のアルバムタイトルトラック「フラワーロード」につながる部分なんて、最近聴き直している『Abbey Road』のB面に近いものを感じてしまう。無理矢理こじつけるなら、さらに続く13曲目「まごころに」が「Carry That Weight」で、14曲目「最後の信号」が「The End」か。後のはタイトルぐらいしか似てないけど。

いみじくもビートルズのそのアルバムのタイトルにこじつけたように、中村の故郷である小岩のフラワーロードという商店街をテーマにしたこのアルバム、偶然か否か“ロード”つながりで、ビートルズの『Abbey Road』やポール・ウェラーの『Stanley Road』みたいな意気込みで作られたアルバムのようにも思える。



僕の買ったのは、DVD付きのバージョン。このアルバムに収められた「そりゃそうだ」がテーマ曲として採用された『ウルトラミラクルラブストーリー』という映画の監督である横浜聡子が制作したアルバム全曲分のPVが収録されている。

これが、すごくいい。単に16曲分のPVが収められているんじゃなくて、このちょっと組曲風というかトータルアルバム風の曲たちを、不思議なストーリーに乗せて順番に綴っていく、まるでそれ自体が1時間の映画みたいな作りになっている。

まだ一回通して観ただけなんだけど、フラワーロード商店街を舞台にしたシュールなストーリーが、何気ない街の風景とそこで生活する人たちを映した映像と妙にマッチしていて、なぜだか最後まで目が離せない。「ミス・ピーチ!」を歌う町内会のおばさん(や、お婆さんやお姉さん)たちが微笑ましくて、つい画面の中の彼女らにつられて笑ってしまう。

これはDVD付きにして正解だったね。と思ってたら、昨日立ち寄った某町のブックオフでは、初回限定ブックレット付き・スリップケース入りなんてのが売られていた。しまったー。ちゃんとチェックしとけばよかったよ。買いなおそうかな。。

それにしても、中村君、なんか大きくなったね。『太陽』引っ張り出してきて見比べてみたけど、太ったというよりは、なんだか体積が大きくなったっていう感じ。同じ系統の音楽を演っている者として、マシュー・スウィート路線でも狙ってるんだろうか。



話は飛ぶけど、僕は自分の人生これまでのところ、やり直したいと思うほど悪かったわけではないと思ってるし、音楽関係について言えば、(激動の60年代とかは経験していないものの)それなりにいい時代に生まれたと思ってる。でも、中村一義の音楽を聴くといつも、彼と同じ時期に生まれて、彼の曲を自分と同世代のものとして経験したかったという気持ちになってしまう。

僕は自分の歳にしては、自分よりずっと年下の新しいアーティストの音楽を聴いてきているつもりだけど、日本人であれなに人であれ、僕をそんな気持ちにさせるのはこの人だけだ。なんでかはよくわからないけど。こんな、じっくり聴いても何のこと歌ってるのかさっぱりわからないような歌なのに。

3曲目のタイトル「魔法を信じ続けているかい?」を見て思わずにやっとする。これはもちろん、97年のデビューアルバム『金字塔』に収められた「魔法を信じ続けるかい?」を受けたものだ(そのタイトル自体がラヴィン・スプーンフルの「魔法を信じるかい?」をもじっているのに)。

うん、そうだね。君がいつになってもこんな素敵なアルバムを届け続けてくれている限りは、魔法だって何だって信じ続けていられるよ。次はまた2年後かな。


posted by . at 22:08| Comment(7) | TrackBack(0) | アルバム | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
こんばんは。お久しぶりです。ちょっと一息ついてます。

yasさんは中村一義も聴かれるのですね。昔、デビュー曲「犬と猫」?でしたっけ?がラジオのヘヴィーローテーションになっていて、彼を知ったのですが、興味を持ちつつ未だに彼の作品をきちんと聴いたことがありません…。「ハレルヤ」とかすごく良いなぁと思うんですけれど、一聴しただけでは歌詞が聴き取れなくて、後で歌詞を見てこんな歌詞だったのかと驚いたことがあります。
Posted by マサ at 2009年09月23日 19:36
過去のアルバムがずっと良かったので、今回も期待していいのか、あんまり期待しない方がいいのかなぜか不安だったのですけど、このアルバムも良かったですね。
中村くん、相変わらず何て歌ってるのかよくわかりませんが(笑)。
DVDに出演している人たちも、いい味だしてますね。
「そりゃそうだ」で犬を引っ張りながら通りで踊る外国人は、お笑いの芸人さんですね。
「モノアイ」「いぬのきもち」の麻生久美子さん、ノゾエ征爾さんは、映画から引き続きの出演です。

初回限定ブックレットは、フラワーロードをテーマに撮った、佐内正史さんのミニ写真集という感じです。
街の何気ない風景なのですが、なぜか懐かしい感じがする写真で、こちらもアルバムの曲にそってつづられています。
てっきり初回限定を買われているだろうと思っていました・・・。
Posted by Nao at 2009年09月24日 15:06
■マサさん
こんにちは。最近は長文記事をまとめてアップされたりして、少しは余裕が出てきたのでしょうか。

僕は中村一義がデビューした頃はちょうどインドネシアに住んでいたので、取り寄せていた音楽雑誌でしか最初は情報を得ることができず、一体日本ではどれぐらい盛り上がっているのかわからなかったのですが、ラジオでそんなに「犬と猫」がかかっていたんですね。ちなみにその曲のシングルは、紙ジャケ版を持っています。マサさんのために一応サイズを測ってみたところ、135mm x 135mmでした。

マサさんのご趣味に合うかどうかはわかりませんが、機会があれば是非どうぞ。僕は今の日本のアーティストでは一・二を争うぐらい好んでいます。

確かに、歌詞がさっぱり聴き取れないのが難ですが、それはそれで、歌詞カードを見て違和感を感じるという遊びもできますので、大きな問題ではないかと。


■Naoさん
バンド編成になってからは特にアルバム毎のクオリティが一定して高いですね。今回もまったく期待を裏切られませんでした。

「そりゃそうだ」の外人はどこかで見た憶えがあったんですが、お笑い芸人でしたか。実際は撮影クルーも周りにいて、通行人も何かの撮影だということはわかっていたでしょうけど、あんなのが実際街を歩いていたら、僕なら100メートルは避けて通ります。

あの女性は麻生久美子さんというんですね。なんだかすごい美人というわけではないですが、味のある見かけの人ですね。映画も観てみたくなりました。もうロードショーは終わっているでしょうから、DVDが出たら是非に。

>てっきり初回限定を買われているだろうと思っていました
僕もそう思っていました。くやしいので買いなおしてきます。今日はちょっと風邪気味なのでまた日を改めて。
Posted by yas at 2009年09月27日 17:22
中村一義さんて知りませんでした。97年デビューということは、ちょうどわたくし出産の年。自分史上もっとも音楽からもラジオからも離れていたころでした。
視聴してみましたら、いい感じでした。

>夢で見た景色をハサミで切り抜いてきたような断片
この表現いいですね。
関係ありませんが、ときどき夢で見た景色が後々まで心に残って、あとになって思い出したとき、それが現実だったのか夢だったのか(一瞬)分からなくなることがあります。よく考えれば夢だったと思い出すんですけどね。

>彼の曲を自分と同世代のものとして経験したかった
その感覚分かります分かります。音楽に限らず、心が一番柔らかいときにしか聞けない聞き方ってありますよね。
Posted by にんじん at 2009年09月28日 21:49
■にんじんさん
試聴していただけましたか。気に入ってもらったようでなによりです。僕はもう最近こればかり聴いている感じです。エコ月間のつもりなのにそこそこの数のCDを買ってしまってはいるのですが、何かを聴いた次にはもうこのアルバムを聴きたくなってしまうという、僕の中では一時の『Pandemonium Ensues』みたいな位置付けになってしまっています。今ならこの10倍の長さの記事が書けると思います。要りませんか。そうですか。

グレンのそのアルバムのときは、身近なグレンのファンの皆さんが同じ感想を述べておられたのですが、果たして100sのこのアルバムを聴いてこんなにリピートしてしまうのが僕だけなのかどうか、にんじんさんも是非レポートください。はい、本日無事初回盤を手に入れてきましたので、僕の持っている通常盤は適価でにんじん家にもらわれていくことになりました。毎度ありがとうございます。

夢で見た景色が現実とわからなくなること、僕もあります。ずっと小さい頃に見た夢の景色のいくつかは、今でも憶えています。もしかしたらその中のいくつかは現実だったかもしれませんが。

たまたま今日100sの初回盤と一緒に買ってきたアルバムのライナーで、ピーター・バラカンさんがこんなことを書いておられます。

「もし今20代だったら、仕事を全て投げ出して、このバンドのローディにでもなりたい…」

にんじんさんが仰るとおり、心が柔らかいときに聴きたかった・経験したかった音楽というものが誰にでもあるということですね。

まあ、今さら20代には戻れないので、代わりに何十年も音楽を聴いてきたオッサンにしかできない聴き方をしていますよ。ふとしたところに紛れ込んでいるビートルズのある曲のフレーズを見つけたりとか。そういう風にも楽しめる、実に奥の深いアルバムです。乞うご期待。
Posted by yas at 2009年10月04日 00:13
某ブックオフで初回限定ブックレット付き・スリップケース入りを見つけたので思い切って買ってみました。
けっこう歌詞が聴き取れてしまったのは耳がおかしいからでしょうか。それとも耳をパタパタ動かして手を使わずにヘッドセットを外すという一発芸を持っているからでしょうか。

ブックレットDVD併せてひとつの世界のような素敵な作品ですね。ノスタルジックなのに暗くないところも好き。好きな曲がたくさんあるのでついリピートしてしまいます(レポート)。

エコVSエゴに入っているヤギの鳴き声みたいなのが気になります。「Special Thanks to中川家剛」と書いてあるかどうか探してしまいました。
Posted by ひより at 2010年03月07日 21:23
■ひよりさん
初回盤を見つけましたか。こんな古い記事のことを覚えていてくださって、ありがとうございます。いかがでしたか、僕の昨年度第二位作品は。ブックレットは読むところが少なかったですが、損した気分にはなりませんでしたか?

リピートのレポートありがとうございます。僕にとっても、容量の限られている自分のウォークマンの中からなかなか出て行かない、今でもたまに思い出したように聴くアルバムです。お好きな曲はどれでしょう。「エコVSエゴ」でしょうか。

僕は中川家剛さんのことはあまり存じ上げないのですが、察するにヤギなのですね。

次回お会いする際には、ヘッドセットをお持ちしますので、ぜひよろしくお願いします。ビデオカメラも持っていって、YouTubeにアップします。
Posted by yas at 2010年03月13日 11:15
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