2009年08月23日

覚醒 - Mani Neumeier & Peter Hollinger

Meet The Demons Of Bali.jpg
Mani Neumeier & Peter Hollinger 『Meet The Demons Of Bali』

ガムランは結構好きで、昔インドネシアに住んでたこともあって、その頃買ったCDも何枚か持っている。何枚持ってても、どれも同じような感じであんまり曲の区別もつかないんだけど、どれを聴いても気持ちいいのは同じ。

アルファ波が沢山出るのかな。そういう仕組みとかはあまりよくわからないけど、音だけを聴くとガンガンキンキンコンコンとあんなに賑やかなのに、なぜか落ち着く。きっと世界中で一番うるさいヒーリング・ミュージックだろうね。


今日取り上げるこのアルバム、数年前に雑誌か何かで見て、ずっと聴いてみたいなと思っていたんだ。初回1000枚限定プレスということだったので最初は焦りはしたものの、その気になって探せばそれほど入手困難というほどでもなかった。でも、今までどうもそこまでその気にならなかったというか、とにかくまだ買ってなかった。

先週久し振りに中古屋巡りをしたときに、最近全然チェックしていなかったプログレ系の棚にふと目を止めて、そういえばあれあるかなと思った瞬間、目の前にこれがあった。しかも、そこそこくだけた値段で。

と、その程度の運命の出会い、というか、ゆるーい執念で入手したこのアルバム。聴いてみたいと思った僕の最初の直感が間違っていなかったと思える内容だった。

グル・グルのアルバムは一枚だけ持っている。それほど多くもない僕のジャーマン・ロックのコレクションの中でも、お世辞にも一番好きと言える一枚ではない。だから僕は、(グル・グルの中心人物である)マニ・ノイマイヤーというドラマーにそれほど思い入れがあるというわけではない。

でも、先述したとおり、このアルバムのことを知ったときには、かなり興味をそそられた。マニとペーター・ホリンガーという二人のドラマーが、バリでガムラン楽団とセッションしたというもの。

ガムランと一言で括っても実はいろんな種類があって、僕の生半可な知識でもジャワとバリのガムランは違うという程度は知ってるし、バリのガムランの中でも、このアルバムに参加しているスアール・アグンという楽団が演奏するのは、竹でできたジェゴグという楽器のみ。スアール・アグン団長スゥエントラ師の奥さんが日本人だということで、かなり詳しい情報が日本語でウェブサイトに載っているので、興味のある人はそちらをどうぞ。

CDをプレイヤーにかけてみると、耳慣れたジェゴグの音がまず聴こえて来る。金属製ガムランの音も決して耳障りというわけではないが、竹の音だけが幾重にも重なり合って響くこのオーガニックな感触はまた格別。普段でもガムランの演奏って一つの曲の中でもスローペースになったりピッチが上がって高揚したりするんだけど、この1曲目はいきなりハイペースだな、と思っていたところに、マニとペーターのドラムがなだれ込んでくる。

うわぁ、これはすごい。十何人ものジェゴグ奏者が織り成す密度の濃い音に加えて、やたらと手数の多いドラムの音。凄い高揚感。鳴っている楽器はほぼ全て打楽器なのに、超高音から重低音まで様々な音色が交じり合って、とても複雑なメロディーを作り出している。

冒頭にガムランがヒーリング・ミュージックと書いたけど、ことこのアルバムに関しては、ヒーリング度、ゼロ。呪術的な反復メロディーと心地良い一定のリズムが、耳から全身に繋がっている神経を常に刺戟し続ける。

煙草は全く吸わず、もちろん覚醒剤なんてやったこともなく、依存性薬物の摂取は主に高濃度のアルコールに頼っている僕にとっては、この音楽の覚醒効果と中毒性はかなりのものだ。夜中にこれを大音量で聴きながら酒を飲むという機会も環境も最近の僕には残念ながらないけれど、さぞかしトリップできるだろうな。

もともとは97年に発表された作品で、その当時はあまり話題にならなかったのが、リマスターされてこの形で再発されたのが、ちょうど十年後の07年。97年版に1曲ボーナストラックが追加されているが、それは楽器を使わずに全員で手拍子でリズムを合わせているような、どちらかというと練習風景の記録のようなもの。これはまあ、あってもなくてもよかったかな。

1000枚限定の紙ジャケ仕様なんだけど、実はジャケットの黄色い文字とランダの周囲の黄色い縁取りが、透明プラスチックのシートに印刷されている。こんな感じ。

DSC00371.JPG DSC00370.JPG


アマゾンの商品紹介を見てみると、「特製紙ジャケット+幸せで楽しい人生を送れる(かもしれない?)黄色いオーラ・フィルム付き。 ※購入された方の幸福を保証するものではありません」だって。あはは。


例によって、知ってる人には言わずもがな、知らない人にはちんぷんかんぷんな、毒にも薬にもならないような解説を長々と書いてきたわけだけど、このアルバムを、ガムラン側からでなくジャーマン・ロック側から興味を持って聴いてみようと思う人に向けたとてもわかりやすい表現がライナーに載っていたので、勝手に引用させてもらおう。曰く、「人力ゼロ・セット」。

Zero Set.png
Moebius - Plank - Neumeier 『Zero Set』

上に、グル・グルにもマニ・ノイマイヤーにもそれほど思い入れがないと書いた僕にとっても、自分のジャーマン・ロック・コレクションの中でも最も重要なアルバムの一枚。ジャーマン・ロックなんて書いたけど、ロックではないね。テクノとかエレクトロニカと言えばいいのかな。

一応このブログでは過去の名盤的なアルバムについてはあまり書かないことにしているし、説明するとまた延々と語りだしてしまいそうなので、今日のところはこの超有名盤については書かないけど、『Meet The Demons Of Bali』が「人力ゼロ・セット」だということで、上に延々と書いた説明のうち、人力で行われていた演奏(ドラム以外)を機械に置き換えたものがこの『Zero Set』だと、思いっきり乱暴に言ってしまおう。

この“近未来的な光の地下道を逃げるように走っている、半透明の黒人女性”という、ほとんど意味不明ながらこれほどアルバムの内容を的確に表しているものも少ないと思える秀逸なジャケットに惹かれる人は、一度聴いてみればいい。


さてと、外は相変わらず蒸し暑いようだけど、ちょっとこの2枚をヘッドフォンで大音量で聴きながら、選挙の期日前投票にでも行ってくるとするか。トリップしてヘンなのに投票しないようにしないとね。


posted by . at 12:29| Comment(7) | TrackBack(0) | アルバム | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
本当に多岐にわたる音楽を聴かれてますね。スアール・アグンは知っていましたが、団長(安田大サーカスではありません)の奥さんが日本人とは知りませんでした。コンサートに行っておけばよかったです。
この記事を読んだら民博の世界の楽器コーナーに無性に行きたくなりました。ガムランを叩きまくり、ピーコ師匠のような黄色メガネをかけ、この「グワシ」を思わせる指ポーズで写真を撮れば幸福にラリることができるでしょうか。
ちょっと調べてみたら、マニ・ノイマイヤーさんは「ドイツの偉大な音楽家」として東京タワーの蝋人形館にいらっしゃるそうです。民博は私が担当しますのでyasさんは蝋人形館でラリってきてください。
余談ですがグルグルって漫才コンビの略称みたいですね。
Posted by ひより at 2009年08月23日 18:19
民族音楽が好きなので、ガムランも好きなのですが、あんまり詳しくありません。民族音楽は古典的なもののほうが好みなのですが、このゼロセットってどんなものだろうかと、動画で探してみました。
おー、おっしゃる通りヒーリング度ゼロですね。ピコピコしてます。サイバー青グリンになってDJしそうですたが、私ももうトシ、普通のガムランでまったりしてるほうが合うようです。

>夜中にこれを大音量で聴きながら酒を飲むという機会も環境も最近の僕には残念ながらないけれど、さぞかしトリップできるだろうな。

忙しくしておられるのと、日本の住宅が密集してるせいでしょうか?
書斎でヘッドフォン大音量にして、高濃度アルコールをストローで鼻から吸って飲むなどして気分を出すくらいはどうでしょうか。鼻ツンツンしそうですけど。
Posted by 青グリン at 2009年08月25日 18:25
ガムランは、ちゃんと聴いたことがありませんが、ご紹介のアルバムはどちらも面白そうですね。
マニさんもいろんなことをしてますねー。
あ、奥さんが日本人ということなら、マニさんもそうですね。
Posted by piouhgd at 2009年08月26日 15:44
■ひよりさん
なんと、スアール・アグンをご存知でしたか。さては物知りさんですね。

>団長(安田大サーカスではありません)の奥さんが日本人とは知りませんでした。コンサートに行っておけばよかったです。
行かなかったのですね。断腸の思いというわけですか。

実は一足先に先日こっそりと民博に行ってきたのです。ガムランを叩きまくりはしませんでしたが、いくつかゴンゴンと叩いてみて、ちゃんとガムランの音が出るのに感動していたところでした。ちなみに黄色メガネもかけませんでしたし、グワシもしませんでした。だから幸福ではないのですね。

マニの蝋人形が東京タワーにいることは、クロムさんのレポートでチェック済みです。東京に住んでいながら民博ばかり行って(やや誇張気味)、東京タワーにはもうかれこれ20年ほど登っていませんが、ヒマができたらちょっと足を運んでみます。

>漫才コンビの略称
グルタミン酸グループとかですか。


■青グリンさん
ちょっと読み違えていますよ。ゼロセットはピコピコで全然ガムランではありません。ゼロセットでドラムを叩いていたおっさんがガムランの楽団と一緒に演奏したのが今回の主役CDだったのです。いつもながらわかりにくい文章ですみまそん。でもサイバー青グリンは見てみたいと思います。

>飲むなどして気分を出すくらいはどうでしょうか
いやでし。


■piouhgdさん
お久しぶりです。近頃call it anythingの方では僕の得意系がなかなか登場しないので、コメントできずにじたばたしておりました。

ゼロ・セットはご存知なかったですか。その筋では有名盤で、何度も再発されて、最新版は紙ジャケのようですよ。さすがに今聴くと若干間延びする瞬間もありますが、それでも充分刺激的です。

マニさんも奥さんが日本人でしたか。ジム・オルークもそうでしたっけ。彼は単に日本に住んでるだけでしたっけ。
Posted by yas at 2009年08月27日 00:55
あ。ほんとですね。すみません。
いそいで読んだのバレました。ごめんなさい、ごめんなさい。もうしません、もうしません。
Posted by 青グリン at 2009年08月27日 20:41
竹のガムラン(ジェゴグっていうのかー)は私も好きです。というか竹の音全般好きですね。
松本秋則さんというサウンドアーティストをご存知ですか?越後の「大地の芸術祭」と同時開催されている「水と土の芸術祭」でもサウンドオブジェのインスタレーションを出品中です。(以上マイフィールド終わり)

そうそう、民博まで行かなくても都内で手近にガムラン(金属の)をぶっ叩けるスポットがありますよ。青山のこどもの城がオススメです。梅子の太鼓熱の根源は、幼少時のガムラン体験@こどもの城かもしれません。

それにしても幸福の黄色いフィルム付きCD、私のツボをジャストミートな予感。中古屋さんによくあるシロモノですか?あまりなければ海女損に行きます。
Posted by ひそそか at 2009年08月31日 11:32
■青グリンさん
いえいえ、そんなに謝ってもらわなくてもいいですよ。これからも一層読み間違いに励んでください。


■ひそそかさん
リンクしていただいた松本秋則さんのサイト、面白そうですね。写真見ただけで欲しくなってくるような楽器ばっかりです。残念ながら今使ってるこのPCでは音が出ないのですが、帰ったら試聴してみます。

青山のこどもの城にはガムランがありますか。では次回のオフ会に14名ぐらい集まれば、まず夕食前に皆でそこで楽団になりましょう。団長は任せました。

>中古屋さんによくあるシロモノですか?
最近あまりプログレ系のコーナーを見ることがないので、どれだけ頻繁に出ているものかちょっと見当つかないのですが、もともとが1000枚しか作られていないCDですから、そんなに沢山あるというわけではないと思いますよ。亜麻存でそれほど高くないようであれば、手に入るうちに買っておいた方が懸命かと思います。これはきっとひそそかさんに気に入ってもらえると思いながらこの記事を書きましたので、気に入らなければその旨ご連絡ください。特に返金は致しません。
Posted by yas at 2009年09月03日 17:38
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