2008年12月25日

心機一転 - Paul Heaton

The Cross Eyed Rambler.jpg Paul Heaton 『The Cross Eyed Rambler』

再生ボタンを押すと聞こえてくる古いレコードの音。パチパチと入るノイズ。1分ほどの歌が終わろうというところで針が飛んで同じフレーズが繰り返されてしまう。

そこに切り込んでくる、まるで桑田圭祐がわざとグループサウンズっぽく書いた曲を演奏するサザンオールスターズみたいなギター。とてもキャッチーで、ぐいぐい引き込まれるオープニングだ。

続く、シングルカット曲でもある「Mermaids And Slaves」のイントロのハーモニカは、20日の記事でやたらと名前を出したハウスマーティンズ時代を思い起こさせる。ウキウキするような明るい調子で歌いだされる最初の歌詞は「酒飲んで運転しようぜ、ベイビー」だ。ははは、さすがポール・ヒートン。そういう毒は全く衰えてないね。CDケースに貼ってあるステッカーにはもちろんトレードマークのようにペアレンタル・アドヴァイザリーの印刷。

06年8月5日に記事にした『Superbi』の後、メンバー間の“音楽性の相似”(注1)を理由に突然の解散を発表したビューティフル・サウスのリーダー兼ボーカリスト(注2)、ポール・ヒートンの2枚目となるソロ・アルバム(注3)。

注1:普通は“音楽性の相違”という言い方をするね。10年に亘って同じバンドで似たような音楽を作ってきて、マンネリに陥ってしまったと感じていたことをこう表現するところが、いかにもポールらしい。

注2:ビューティフル・サウス時代はギャラをメンバー全員平等に分配していたというほどの社会主義者であるポールは、自分が“リーダー”と呼ばれることには抵抗があるのかもしれないけど、10年の歴史を通して常にバンドの顔でスポークスマンだった彼のことをこう呼ぶことに文句のある人は彼以外にはあまりいないだろう。

注3:ビューティフル・サウス在籍中の01年に、ビスケット・ボーイ(またの名をクラッカーマン)というよくわからない名義で最初のソロ・アルバム『Fat Chance』を発表している。決して悪い内容ではなかったけれど、ほとんど売れなかったようだ。

Fat Chance.jpg Biscuit Boy (a.k.a. Crackerman) 『Fat Chance』

↑この意味不明のジャケが問題だったのかも(最近はポールの写真を使った別ジャケで、名義もポール・ヒートンに戻して再発されているようだけど)。


ニューアルバムに話を戻そう。アルバムのタイトル『The Cross Eyed Rambler』というのは、1703年から続いている実在のパブの名前らしい。その由来について、ブックレットの最初のページにびっしりと解説がある(まだ全部読んでないんだけど)。こういうタイトルのつけ方もまた、アル中のポールらしいね。ついでに、ブックレットの最後のページのクレジットで、メンバー名の次に、何よりも先に書いてあるのが、このアルバムをレコーディングしていた間どこのパブで飲んでいたかというリスト(笑)

冒頭の古いレコード風の曲(実はポールが歌っていた)も含めて、全12曲。アップテンポな曲は歌謡曲っぽいキャッチーなメロディーで。6曲目「The Ring From Your Hand」と12曲目「Everything Is Everything」の二つのワルツは、これでもかというほどしんみりと。うん、いい曲が多いね、今回は。

毒を含んだ歌詞は自分で書き、いつも作曲は相棒に任せているポールが今回タッグを組んでいるのは、スティーヴ・トラフォード(Steve Trafford)というギタリスト。調べてみたら、05年頃フォールに在籍していたことがあるようだ。

ビューティフル・サウス時代の作曲者、デイヴィッド・ロザレイ(David Rotheray)も、もちろんいい曲を書いていたんだけど(だからあのバンドはあれだけヒットしたんだけど)、ビューティフル・サウスが解散したと聞いたときに僕が最初に思ったのは、ハウスマーティンズのほとんど全ての曲を書いていたスタン・カリモア(Stan Cullimore)とまた復縁してくれないかなってことだった。もう音楽業界から身を引いたらしい彼にそんなことを望むのは無理だとわかってはいたけど。

でも、このスティーヴ君も悪くない。いい曲を書ける新しい相棒と、心機一転、いいスタートを切れたと思うよ。これからも今回のメンバーと一緒にやっていくのかな。たしかハウスマーティンズ時代もビューティフル・サウス時代も一度も来日したことのない彼だけど、一度はライヴを観てみたいな。

ペアレンタル・アドヴァイザリーの印と一緒にCDケースのステッカーに書いてあるのは、このCDをパソコンのCDドライブに入れて、あるサイトにアクセスすると、ボーナス・マテリアルをゲットできるということ。早速やってみたら、アルバム中3曲の別バージョンをストリーミングで聴け、そのうち1曲はダウンロード可能。ポールの写真もダウンロード可能。と、最近はあまりパソコンでストリーミングで音楽を聴くことの少ない僕にとってはいまいち有難味の薄いボーナスだった。

上にアフィリエイトのリンクを貼ったときに気づいたけど、このアルバム、2曲のボートラ入りのデジパック版も存在するんだね。しかもその2曲はシングル「Mermaid And Slaves」のカップリング曲とは違うようだから、そのシングル盤を買えば片付く問題でもないし。とほほ、また買い直しか…でもたった2曲のためになぁと思ったら、何この値段。3733円?それはないだろう。アマゾンUKだと13.98ポンドだよ。そっちで買おうっと(やっぱり買うのか)。


それではみなさん、よいクリスマスを。
posted by . at 17:43| Comment(5) | TrackBack(0) | アルバム | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
>酒飲んで運転しようぜ、ベイビー
聴いてみたいですね。

そのパブの看板の絵を見てみたいです。

Posted by Luna at 2008年12月26日 14:24
この記事は注釈が多いですね。新しいスタイルでしょうか。M1の優勝者はノン・スタイルです。
Posted by ひより at 2008年12月26日 20:18
ポールさんはアル中だけど、気のいい人なんですね。これを読んだら、なんかこの人好感もてます。本当にアル中なら治療したほうがいと思うけど、アーチストならそうゆうとこも魅力に出来るんでしょうね。新しく組む人もいい曲を書くなら良かったですね、ファンはそうゆうのでがっかりさせられると淋しいでしょうからね。
ポールさんのキャクターに興味わきました。
Posted by 青グリン at 2008年12月26日 23:55
あ、キャラクターって書こうと思ったの。
Posted by 青グリン at 2008年12月27日 01:31
■Lunaさん
もうここまでくると予定調和というか、ベイビーというだけで下の句のようにひっかかりますね。はい、前回ビューティフル・サウスの記事を書いたときにもルナさんは興味を示して頂きました。これもきっとお好みだと思います。是非ボートラ入りデジパックのUK限定盤を買って僕のことを悔しがらせてください。と書きましたが、やっぱり悔しいので普通盤を買ってください。

パブの看板の絵は自力で探してみてください。というか、パブの看板にご興味があるのですか?では探してみます(今日はヒレ酒で酔っ払い気味なのでさっきから優柔不断なのです)。


■ひよりさん
はい、通常はカッコ付きで延々書くことが多いのですが、さすがに一段落の中に三つもカッコがあると自分でも読みづらかったので、新しいスタイルをためしてみました。どれくらい読みづらかったか今度教えてください。

M-1はもちろん見ました。僕はどっちかというと去年の決勝戦の方が好きでした。ノンスタイルの左側の人はあまりに早口でしゃべるので何を言っているのかわからないことがあるのです。

サンタですか。僕の家には煙突がないので入ってこられなかったようです。そちらはどうでしたか。


■青グリンさん
そうですね。アル中でもあまり他人に迷惑をかけない程度ならおっけいです。グリンさんがこういうのをお好きかどうかわかりませんが、機会があれば聴いてみてください。ルナさんが買うので貸してもらうというのもありです。


■再び青グリンさん
はい、この追記がなければ僕はキャラクターと読んでいました。ご心配なく。
Posted by yas at 2008年12月30日 23:43
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