2008年12月20日

さよならアップルさん

海外に住んでいた頃は、帰省や出張で東京に来るたびによく渋谷に出かけていた。定宿からもそう遠くなかったし、なにしろCD屋やレコード屋の数が他の街とは違ったから。

去年東京に帰ってきてからは、自分の通勤経路ではあるものの途中下車になってしまう渋谷に足を運ぶことがめっきり減ってしまった。乗換駅である新宿でだいたいの用は足せるし、もちろん新宿にだって星の数ほどの(やや誇張中)CD屋やレコード屋があるからね。

新宿にも渋谷にもそれぞれ大きなチェーン店があって、毎週どんどん新入荷する大量の中古盤としょっちゅうやってるセールに釣られて、大抵はそういう店に行ってるんだけど、一方で、そこに行かないと見つけられないようなマニアックなものを扱っているような店を時々覗くのもちょっとした楽しみ。

3月20日の記事の最後にちらっと名前を出した、アップル・クランブル・レコードも、僕にはそういう店のひとつ。渋谷に行く回数自体が減ってしまったから、そんなにちょくちょく顔を出しているわけではないけれど、ちょっと時間に余裕のあるときには、見ているだけでウキウキしてくるような壁面のディスプレイを眺めたり、奥のセールコーナーを物色したりしている。

そのアップルさんが、明日12月21日をもって、店舗での営業を終了してしまうとのこと。本当に残念な話だ。かつては世界一レコ屋密度の高い街と言われた渋谷からどんどん店が減っていってる話は前に何度か書いたし、実際東京に来るたびに行きつけのチェーン店が閉まってたり縮小してしまっていたなんてことは頻繁にあったけど、こういう店がなくなってしまうというのは、それとはちょっと違うよね。感傷的になってしまうよ。

CD1枚買っただけで、袋の中にお菓子をひとつ入れてくれる気配りや、お店の規模のわりにはかなり充実していたセールコーナーが僕のお気に入りだった。わりと新しめの、それも決して売れていないわけでもないようなCDが500円とか300円とかで紛れ込んだりしていたもんだから、僕はあそこに行ったときには大抵お目当てのCDを正価で1枚買ったあと、そういうセールCDを2-3枚一緒に買ったものだった。

ブー・ヒュワディーンの新譜とジャック・ぺニャーテをそれぞれ500円で買ったのは今年の僕の誕生日だから、あれはタワーでマーク・コズレックを観た帰りか。こないだモア・カプリスの新譜を買いに行ったときに、モアのヴォーカリスト、マイケル・モラーのソロアルバムが300円で出ていたのを見つけたときは、僕がNZから連れてきた偶然の神様はこの店に居座ってたのかと思ったものだ。

閉まってしまう前にともう一度出かけて、名前もよく知らないバンドだったけど、半分はジャケットに惹かれて、半分は店長の松本さんの手になる推薦文に押されて(ハウスマーティンズの名前を出されたら、僕はどうにも抗えないんだよ)、1枚だけ買ってきたのがこれ。

Grown-Ups.jpg The Lodger 『Grown-Ups』

お薦めどおりのいかしたアルバムだった。英国リーズ出身のスリーピース。ギター、ベース、ドラムスの音がそれぞれ粒だっているし、なにより曲がよく書けている。1曲だけ、トロンボーンとトランペットが使われている曲も違和感なくいいアクセントになってるね。ヴォーカルにアクというかクセが無さ過ぎて優しすぎるのがちょっとこの手の一連のバンドから一段抜け出すのに苦労するかな、という感じ。ジャケもクールだけど、ブックレットに使われている写真も格好いいのが多い。

The Lodger BW.jpg

この写真のトリミング違いがブックレットに載っているんだけど、見てのとおり3人組のうち一人は女性。メンバー構成を見てびっくりしたのが、この人がドラムス担当。こういう構成は珍しいんじゃないか。ベースだけ女性とかは多いような気がするけど、他にそんなバンドあったっけ。

僕よりこの手の音楽に詳しくて、僕より何度もアップルさんに入り浸っている様子(笑)のxiaoさんのブログによると、今年出たセカンドアルバムではこの女性が抜けて、別の男性メンバーがドラムスを担当しているようだ。「ちょっとムサい」というxiaoさんのコメントは、この新ドラマーの頭髪の量に起因するものと思われる(笑)

いみじくも、アルバム1曲目「Many Thanks For Your Honest Opinion」のサビの出だしはこんなだった(意訳付き)。

Many thanks you are one in a million
ほんまに、ありがとう かけがえのない店やったよ


店舗での営業は終了だけど、ウェブショップは引き続き営業中とのこと。そのうえ、Apple Crumble Recordとしてレコードレーベルも立ち上げるんだって。CDを手にとって裏ジャケを眺め回したり、セールコーナーから掘り出し物を発掘したりする楽しみはなくなってしまうけど、またちょくちょくサイトを覗いて、松本さんの推薦文に引き寄せられて散財することにしよう(“今後、ハウスマーティンズを引き合いに出した推薦文が増える”に1000アイスランドクローナ!)。
posted by . at 22:23| Comment(8) | TrackBack(0) | 雑記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
閉店記念購入がたったの一枚?と思ったけど、いい一枚を買ったんですね。聴くたびにアップルさんを思い出しそう。松本さんもちょっと狙って薦めたかな?(笑)

レコードレーベルを立ち上げるということは発展的解消と言えなくもなさそうだけど、ウェブショップは継続されるということだけど、やっぱりこういう「特別な店」は顔と顔を突き合わせて買い物するために残ってほしかったような。体温とともにするような買い物ってあるもの。
まあ、経営努力ってことで仕方がないのでしょうね。(家賃高いもんねー)

>他にそんなバンドあったっけ
ではもう一人ドラムス担当の女性をご紹介しますね。梅子です。器楽クラブでずっと鍵盤楽器をやらされ続けて嫌がっていましたが、3学期からドラムスをすることになった!と昨日嬉しそうに報告していました。
Posted by ひそそか at 2008年12月21日 02:35
気に入りのお店に足を運べなくなるのはさみしいものですね。
好きなものを扱う仕事は楽しいでしょうね、私は人形が好きですが、店と客の、好き心が分かる同士でする買い物は気持ちいいものです。いい買い物した思い出あります。
アップルさん、ウェブショップで頑張るといいですね。ジミオンで書くと、音楽好きがもろびとこぞりて買いに行くかも!
私もお菓子つきCD買いたかったです。
Posted by 青グリン at 2008年12月21日 07:21
先日はお世話になりました。
Lodger気に入っていただけたみたいで良かったです。そうです、ムサいのはそのあのその…私はヒョロ系メガネ男子派ですから!

アップルさんがあの場所からなくなってしまうのは、私の生活の一部が抜け落ちるのと同じことですから、いまだにウジウジ落ち込んでいるのですが…。今までよりいっそう血眼になって通販しそうですけれど(笑
Posted by xiao61 at 2008年12月21日 23:45
私はポチャ系ヒゲ派です!って訊かれてませんね。しつれいしました。

アップルさん残念ですね。最終日の今日(昨日)行ってきましたよー。お客さんからの花束がたくさんありました。大勢の方に愛されていたお店なんでしょうね。

『Grown-Ups』、奇をてらわずにさりげなくいいなと感じるジャケですね。非常に惹かれます。左右対称だけれども完全な対称ではないところがいいのかも。人間みたいに。
Posted by カブ子 at 2008年12月22日 00:44
one in a millionと言われたら百万のうちの一つやろーと答える直訳人間のひよりです。

アップルさんのご挨拶文を読んでちょっと泣きそうになりました。音楽好きの人たちから愛されて、幸せなお店だと思います。
Posted by ひより at 2008年12月23日 00:03
■ひそそかさん
松本さんはおそらく僕がハウスマーティンズのファンだということは知らなかったと思います。今回も、個人的に薦められたというよりは、CDに付いていた手書きの推薦文を読んでのことだったんですよ。

でも、僕がファンであることをブログで公言している、この手のバンドだと例えばジャムなんかだと、仮に推薦文で言及されていたとしても、もうメジャー過ぎて、きっと僕も素通りしていたと思うんですよね。それが、ハウスマーティンズなんていう微妙に僕のツボを突いたバンドを引き合いに出されたものだから、ちょっとこれはひとたまりもなかったですね。

>体温とともにするような買い物
そうですよね、メジャーなチェーン店だとまずそんなのは期待できないです。バイト店員のマニュアル対応にイライラさせられるぐらいなら、もう通販でいいやって気にさせられたことは何度もありますから。これからアップルさんには、体温の通った通販を期待することにします。

梅子さんはドラムス担当ですか。大太鼓とかじゃなくて、ドラムキットに座って演奏するんですか?それはなかなか楽しそうですね。上手くなったら、来年のクリスマスプレゼントはドラムキットが欲しいって言い出すんじゃないでしょうか。買ってあげてくださいね。それまでに僕はベースを練習しておきます。


■青グリンさん
人形好きのグリンさんにもきっとお気に入りのお店があるんですね。きっとレジのところであの人形には魂がこもっていないとかこの人形は顔が変とかそういう会話をされているんでしょう。

あい、もろびとこぞりて買いに行くような記事を書くように心がけます。ほんとにもろびとこぞりたら、手数料を徴収することにします。

>お菓子つきCD
通販でもお菓子入れてくれるらしいですよ。

>在庫ゼンブ
それをするには僕はちょっと富豪度合いが足りません。今住んでいる家の床を掘って、原油が沸き出て来たら考えます。あ、借家でした。


■xiao61さん
気に入りましたとも。あんなに昔に既にブログに取り上げていたなんて、さすがxiaoさんはいつも早耳ですね。それにしても、あの音でハウスマーティンズを引き合いに出すなんて、松本さんの推薦文もなんて的確なことかと感心しました。

>ヒョロ系メガネ男子派
とりあえず僕は痩せてもいなければ、今はメガネもかけていないので、来世でお会いしましょう。

僕も偉そうなことを書いていますが、実はアップルさんでは通算10枚程度しか買っていなかったのでした。今後は通販で応援することにしましたので、またお薦めのやつを教えてくださいね。


■カブ子さん
>ポチャ系ヒゲ派
とりあえず僕はOGS以降痩せましたし、ヒゲもマメに剃るようにしていますので、再来世でお会いしましょう。

最終日に行かれたのですね。花束以外には何か目ぼしいものはありましたか。実は先日検索してみたら、とても沢山のブログでアップルさんに別れを惜しむ文章を見つけました。僕はまだまだあの店では新参者だったのですが、皆さんどんなにあの店が好きかひしひしとわかりましたよ。

『Grown-Ups』のジャケ、いいでしょう。実はこれのLPも置いてあったのですが、僕としてはこれは珍しくLPよりもCDの方がすっきりして良いトリミングのジャケだと思いましたね。


■ひよりさん
>百万のうちの一つ
おっしゃるとおりです。ただ、残念ながら僕はCD屋を百万軒も知らないのです。なので意訳。

ご挨拶文、いいですね。きっとひよりさん好みのCD(それも普通の店では売ってないようなやつ)がいっぱい取り揃えてあると思いますので、そのうち通販で何か買ってあげてください。きっとお菓子が一個入っているはずです。
Posted by yas at 2008年12月23日 17:18
地方都市に住んでるもんで、ネット時代以前からどうしても通販派になってしまいがちだったんですよね〜。昔は中古盤に関しては、よく店頭で漁ってはいたものの、CDを実際に手にとってウンヌンってこだわりは極めて薄い私です。しかも、小型専門ショップから、こっそり情報を得て、より安い海外から購入するとか、あるまじき行為の常習犯でもあります。きっと私のような非人情派の音楽ファンが店舗を崩壊させていってるんでしょうね・・・。暗殺されないよう気をつけます。

余談ですが、音楽専門ではないショップでインドネシアのCDをたった1枚通販したら、自家製のスコーンが1つ同封されていました。お菓子って、何であんなにも人間の好感度をアップさせるものなのでしょうか?
さらに余談ですが、私はヒョロでもポチャでもメガネでもヒゲでも・・・その他何でも幅広くイケますよ〜(笑)!
Posted by クロム at 2008年12月23日 18:49
■クロムさん
僕は確か小学生の頃に少年雑誌の小さな広告に言われるまま500円分の切手を送ったら何も送られてこなかったというトラウマがあったので、かなり大人になるまでは通販には手を出さなかったんですよ。それが今ではほぼ毎週のように○MVとか亜魔損とかから大小様々な箱が送られてくるようになってしまいました。

>常習犯
僕も多かれ少なかれそういうことはしてしまいますね。ただ、そういうときにネット通販店でなくて今回記事に取り上げたアップルさんのような対面型の店舗だと、多少高くてもここで買ってあげようかという気持ちにさせられます。

>自家製のスコーン
割れてなかったですか?

>その他何でも幅広くイケますよ〜
あの、これは別に僕のことを誘っているわけではないですよね。単なる余談的一般論ですよね…(笑)
Posted by yas at 2008年12月24日 23:33
コメントを書く
お名前: [必須入力]

メールアドレス:

ホームページアドレス:

コメント: [必須入力]


この記事へのトラックバック