2008年12月14日

搾取 - Jason Mraz

We Sing We Dance We Steal Things Limited Edition.jpg 
Jason Mraz 『We Sing, We Dance, We Steal Things. Limited Edition』

“たいして見所のないようなDVDを付けただけで法外な値段にしたり、アルバムのリリースからわずか数ヵ月後に、そのアルバムにボーナスディスクとかを付けて売り出すようなことをして売り上げを上げようという姑息なレーベルが多い”

11月23日のフリート・フォクセズの記事にこう書いた直後、おあつらえ向きに、うちにこのアルバムが到着した。8月3日の記事で取り上げたジェイソン・ムラーズのニューアルバムにあれやこれやと詰め込んだ3枚組の限定盤。

3枚組のうちディスク1は『We Sing, We Dance, We Steal Things』オリジナルアルバムそのまま。ディスク2は、僕が上記の記事とそのコメント欄に書いた、結構高値で限定数リリースされていた3枚のEP(うち3枚目『We Steal Things』はファンクラブ限定だったそうな。僕がファンクラブに入ったときにはもうそのオファーは終了していたけれど)。そしてディスク3が、ニューヨークのハイライン・ボールルームという会場で収録された1時間半のライヴDVD。

『We Sing, We Dance, We Steal Things』を中古が出回るまで待って安く手に入れた身としては大きな声では言い難いが、そのアルバムよりそれぞれ高い値段を出して『We Sing』、『We Dance』の2枚のEPを買ったときの僕の気持ちを、先の記事から引用してみよう。

“でも、この人のこういう貴重盤、意外と再発も日本盤化もされずに高値で取引されることが多いからね”

見事に裏をかかれたよ。再発されないどころか、そのEPがちょうど店頭から消えた頃を見計らって、こんなにあっさりと新装パッケージでまた出してくるとはね。フルアルバム並みの値段だったあのEPを買い揃えるようなファンは当然こっちも買わずにおれないだろうというのを見越しての、搾取モード炸裂の怒涛のリリース。せめて、自分が『We Steal Things』まで全部揃えていなかったことを不幸中の幸いと思っておくべきなのか…

この手のリリース形態にはいつも本当にうんざりさせられてしまっていて、自分の好きなアーティストがこういうことをするたびに、嬉しさ3割、憤り7割ぐらいの気持ちで渋々買い替えている。そして、同じように「騙されて」リリース直後に買ったであろう人たちが放出した同じオリジナル盤を中古屋で見かけるたびに、悔しい思いをした同士の顔が目に浮かぶ(ほんとは知らない人の顔が目に浮かんだりはしないんだけど)。

例えば、今週出たばかりのフォール・アウト・ボーイの新譜のように、あらかじめ日本盤と本国盤でどういう形態のバージョンが出るのかという情報がわかってさえいれば、それぞれの内容と価格を天秤にかけてどれを買うか決められるし、そして僕のような人間は大抵一番盛り沢山な内容の(一番高い)ものを喜んで買うんだよ。CDの売り上げが落ちていることへの対抗策の一つのつもりなのかもしれないけれど、熱心なファンほど損をするようなこんなやり方は本当にやめてほしい。


さて、ぼやくのはこれぐらいにして、内容について書こう。ディスク1のオリジナルアルバムについては、先の8月3日の記事に書いたとおり。買ってから半年以上経った(そして、その後100枚以上の新しいCDを買った)今でも僕のへヴィーローテーションから外れていない。来月に書くはずの08年ベストアルバム記事にこのへなちょこ顔ジャケが載ることはほぼ間違いないだろう。

ディスク2『The EPs』は全12曲入り。オリジナルアルバムから「Lucky」と「Details In The Fabric」の2曲を除いた全曲のアコースティック・バージョンと、ゴスペル・コレクション・セッションズから「Man Gave Names To All The Animals」、それに「Mudhouse/Gypsy MC」のオランダでのライヴ録音。もともと3枚の4曲入りEPだったからそれぞれのEP内での起伏を考えた曲順になっていたんだけど、それをこうして全部続けて聴くとちょっと散漫な印象。例えば、オリジナルアルバムでは最後のクライマックスにあたる「If It Kills Me」〜「A Beautiful Mess」がいきなり3曲目と4曲目だったりするし。

そういうちょっとした文句を別にすれば(CDなので曲順ぐらい簡単に並べ替えられるし)、このアコースティック・バージョンは相当いいよ。もともとフルアルバム級の値段で買って聴いたときも(まだ言ってる)、4曲ずつしか入ってないけど、これは値段分の価値はあると思ってたからね。なにしろ曲の造りがしっかりしているから、これだけ装飾を取っ払っても(というか、取っ払った方が)きちんと耳と心に響く。「I'm Yours」でも耳をかじったりしないで、ちゃんと耳元で囁いてるし。

おそらく今回の限定盤を買った人が、それまでに持っていたEPを手放し始めるはずなので、後で述べるDVDは要らないという人は、このアコースティック・バージョンを聴くために中古盤屋をチェックした方がいい。ただ、名曲「Love For A Child」が3枚目の『We Steal Things』収録なので、それを聴きたい人は、あまり出回らないだろうと思われるそのEPを探すぐらいなら、この限定盤を買った方が早いかもしれないけどね。

そして、今回の目玉といえるディスク3。僕は『Tonight, Not Again』のライヴDVDを持っているんだけど、諸般の事情でそれはまだ観ていないので、彼のライヴ画像をまとめて観るのはこれが初めて。彼のコンサートがどんなに楽しいものかは、去年の8月3日の記事に書いたライヴアルバムを聴いて想像がついていたけど、それに映像がつくと当然よりよくわかるね。奇をてらったところのない画像は見てて飽きないし。1時間半と決して短いプログラムじゃないけど、普段あんまりDVDを観ることのない僕がもう2回も観てしまったぐらい。

ジェイソンの弾き語りによるしっとりとした「Plane」で始まる。こんな静かなオープニングだなんて、ちょっと意表を突かれた。いいね、この曲。そして、『We Sing〜』のお披露目ライヴらしく、バンド編成で「Make It Mine」に突入。ところどころに古い曲を挟みつつ、新作からほとんどの曲を披露。中盤で演奏するデビュー曲「The Remedy (I Won't Worry)」では、途中でオエイシスの「Wonderwall」の歌詞に変えて歌ったりする(バンドメンバーのちょっとびっくりしたにやけ顔を見ると、あれはジェイソンが急にアドリブで歌ったんだろうね)。

3人のホーンセクションを含んだフルバンド編成。なんだか音が柔らかいなと思っていたら、よく見たら誰もエレキギターを弾いてないんだね。ギターはジェイソン自身が弾くアコースティック(たまにウクレレ)のみ。ギターが出しゃばらないので、サックス、トランペット、トロンボーンとパーカッションの音が全体の要になって、とても味わいのある音に聴こえる。ときどきチョッパーを交えたりするベースも格好いいし。

コンサート終盤、いきなり出てくるアフロヘアーの演歌歌手みたいないでたちの男が歌いだし、ジェイソンはタンバリンを持ってステージを動き回る。「Fall Through Glass」というその持ち歌を歌っているのはブッシュワラ(Bushwalla)という男。ジェイソンとはお互いのコンサートに出演し合う仲らしい。盛り上がる曲ではあるけれど、なんとそれでコンサートは終了。最後を締めるのが他人かよ、と思っていたら、裏ジャケには「Outro」としか載っていないある曲をジェイソン一人で弾き語るアンコールがちゃんと収録されていた。曲名リストだけを見て未収録だと思っていた、実は僕が一番好きな彼のその曲をそんな風に聴いて、ちょっとじわっときてしまった。

このDVDには他に「"Here We Are" A Mraz Documentary」という30分の映像と、「"A Thousand Things" Book Preview」という静止画が収められている。前者は8月3日の記事にも書いた、オリジナルUS盤『We Sing, We Dance, We Steal Things』にエンハンスドCDとして収められていたのと同じもの。後者はジェイソンがポラロイドカメラで撮った写真を何枚か(これは本になって出ていて、アマゾンでジェイソンのCDを買ったことのある僕はこれまで何度もアマゾン君にお薦めされている)。


上に「この人のこういう貴重盤、意外と再発も日本盤化もされずに高値で取引されることが多いからね」と書いたのには訳があった。以前CD屋で見かけたことがあった、彼のメジャーデビュー前のライヴアルバムが、ちょっと見ないうちにあっという間に廃盤になっていて、オークションサイトやアマゾンのマーケットプレイスなんかでたまに見かけてもとんでもない値段がついていることが多かったから。

Live At Java Joe's.jpg Jason Mraz 『Live & Acoustic 2001』

そのアルバムを先日、新品で見つけた。一足早く年末セールを始めていたその店では残念ながらセール対象外商品だったので、決して安くはなかったんだけど、上にアフィリエイトを貼ったアマゾンのマーケットプレイスに出ているような法外な値段ではなかったので、こういうのは見つけたときに買っておかなければと入手。実はiTunesとかだとほんの数ドルでダウンロードできるんだけど、当然僕は安いダウンロードよりも高くてもCD、ということで、こういう機会を待っていたからね。

メジャーレーベルからのデビューアルバム『Waiting For My Rocket To Come』が02年の発売なので、これはそれより1年前に録音されたことになる。上の写真を見てわかるように、表ジャケには彼の名前しか書いてなくて、サイドには『Live & Acoustic 2001』というそっけない文字のみ。通称『Live At Java Joe's』と呼ばれているアルバムだ。調べてみたら、このライヴ盤を含めて、『Waiting〜』以前に彼はインディーズから4枚ものCDを出していたようだが、それらに入っていた曲はほとんど『Waiting〜』に使われることもなく、しかもこのライヴ盤との重複もあまりない。デビュー前からとんでもない数の曲を書いていたんだということがわかるね。

1曲目「Running」は、『Selections For Friends』収録の(『The E Minor EP In F』全収録曲を一気にメドレーで歌った)「Welcome To Schubas」でも最初に歌われていた曲。でも、『The E Minor EP In F』の曲目表を見てもそんなタイトルの曲はないね。「You Make Me High (Spinning)」というのが改題されたのかな(というか、このEPの方が後に出たはずなので、「Running」がこのタイトルに改題されたというのが正しいんだろうね)。

99年に出たという最初のEP『A Jason Mraz Demonstration』に収められていた「Little You & I」に続いて「この曲はさっきのやつの続き」と歌いだされるのが、後にメジャーデビューアルバムの冒頭を飾ることになる「You & I Both」。この曲、この時期からこんなスローな感じで演奏されてたんだね。

「Dream Life Of Randy McNally」という曲の合間に(プレスリーの)「Viva Las Vegas」の一節を挟み、さらにはこの当時まだ世に出ていなかったはずの「The Remedy (I Won't Worry)」の一部もメドレーで歌っている。後半、「At Last」という曲には(マッドネスの)「Our House」を挟み、観客にコーラスさせたり、「次はスペイン語で!」とか言ってアドリブで楽しんでいる。ラストはこれもメジャーデビュー作に収録されることになる「Sleep All Day」で締め。その後スタジオ録音の「Hey Love」というのが(ボートラとして?)入っている。


というわけで、なにかと散財させられることの多いジェイソン君だけど、内容の質の高さは昔も今も折り紙つき。きちんと作りこまれたスタジオ盤も、それを骨組みだけにしたようなアコースティック録音も、ライヴ録音もライヴ映像も、どれもみんな楽しめる。あと僕が自分で体験してないのは生で観ることだけだな、と思っていたら、来年2月に再来日決定ときた。つい数ヶ月前に来たばかりなのにね。

さっそくプレオーダーに登録してみた。明日になれば当落がわかるけど、まあ、プレオーダーに落ちたところでまだチケットを取る方法なんていくらでもあるし、大丈夫だろう。CCレモンホールって、渋谷公会堂のことか。昔誰かのコンサートで行ったことがあるはずだけど、どんなところかよく憶えてないな。指定席のライヴって久し振りだな。目の前にアフロヘアーが座らなければいいな。


posted by . at 00:45| Comment(4) | TrackBack(0) | アルバム | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
悔しいけど、買ってしまうかもしれません。
この記事を読み返して、1日だけ悩んでみることにします。

>CCレモンホール
この名称は好きではありません。
Posted by Luna at 2008年12月14日 11:46
■Lunaさん
あ、ルナさんは当然“買い”組ですよ。当たり前じゃないですか。コメントを頂いてからあと10分ぐらいでちょうど半日経ちますが、まだあと半日も悩む必要ありますか?(笑)

CCレモンには何の恨みもありませんが、きっとここでコンサートをする外人は皆いったいこの名前は何かと怪訝に思っていることでしょう。
Posted by yas at 2008年12月14日 23:36
施設のネーミングライツ販売ってここ数年で急激に増えてますけど、所在地が分からないししかも数年で変化したりするし困りますよね。余計な手間が増えるので私も日々悩まされています。

さて、ぼやくのはこれぐらいにして、私も冬になってなおこのアルバムがヘヴィーローテーションです。たまにお店とかでかかっていると(服屋さんとか、音楽関係でないお店ね)嬉しくなります。ライヴDVDもいつかは観てみたいです。

でもやっぱり生が一番! コンサート当たってよかったですね。当日までにうっかりアフロヘアーにして後ろの人にぼやかれないように気をつけてください。
Posted by ひより at 2008年12月16日 22:51
■ひよりさん
施設のネーミングライツ販売って、そんなに沢山あるんですね。是非それでひとネタ記事を書いてみてください。

ヒットしたアルバムで、飽きずに聴き続けられるものって思いのほか多くないのですが、これはそういうものの代表ですね。ライヴDVD、ご覧になる機会があればいいですね。

ついさっき、テレビで去年のM-1グランプリの決勝戦の再放送をやっていたので見ていたのですが、うっかりアフロヘアーにしてしまった人が出ていました。面白かったです。

そういえば、フォール・アウト・ボーイにもアフロヘアーが一人います。流行っているのでしょうか。
Posted by yas at 2008年12月20日 14:34
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