2008年10月13日

遺産 - UB40

The Lost Tapes.jpg UB40 『The Lost Tapes』

無意味に長すぎる文章でお馴染みの僕のブログで、たまに短い記事を書いてみたら「短すぎる」とのコメントを頂いてしまったので、ご好評にお応えして、更に短い記事を書いてみるよ。某通販サイトではもう半年以上前から“近日発売”扱いされていたのに、延期に次ぐ延期の末、ようやく先月になって発売され、他のCDと一緒にオーダーしていたのがつい今朝になって届いたこのアルバム。

UB40のデビュー時期の、ロンドンでのライヴを収録したもの。80年の3月7日というから、その年の9月に出たファーストアルバム『Signing Off』よりも半年前ということになる。1曲目が終わったときの「僕達のことを知らない人達へ、僕達はUB40というバンドです」というMCが初々しい。

ライナーノーツによると、UB40をメジャー・デビューさせたデイヴィッド・ヴァー(David Virr)という人が、26年間自宅に眠っていたテープを発掘し、そのテープがリストアされてデジタル・リマスターされ、このCDになったとのこと。デイヴィッド自身は残念ながら、このCDを手にすることなく、一昨年のボクシング・デイに亡くなってしまったらしい。そう、このCDは、おそらく今や世界で最も有名なレゲエ・バンドになったUB40の、ある意味生みの親に捧げられた、彼自身による遺産のようなアルバムだ。

『Signing Off』でもオープニングを飾っている「Tyler」の、あのヒョーーーーンというフィードバック風の音でこのライヴも幕を開ける。だが、いざ演奏に入ると、どんよりしたロンドンの曇り空を連想させたあの物憂げなオリジナルとはうって変わった緊迫感のある性急なアレンジ。このヴァージョンも凄いが、元々はこうだったはずの曲をあえてあの弛緩したアレンジに変えたうえで、デビューアルバムのオープニングに据えた彼らのセンスも凄いと思う。

まだこの時点ではオリジナル曲が少なかったせいか、全9曲のうち3曲がカヴァー。それも、単にレゲエの曲をカヴァーするのでなく、ビリー・ホリデイの「Strange Fruit」、ランディ・ニューマンの「I Think Its' Going To Rain Today」、ガーシュインの「Summertime」という、ある意味王道、ある意味(80年代のUKアンダーグラウンドという舞台を考えると)奇をてらった選曲。最初の2曲はそのまま『Signing Off』にも収録されることになる。

さっきも書いたけど、きっと一般的には今や世界で一番ポピュラーなレゲエ・バンドに成長した彼らだけど、80年代前半にまさか彼らがこんな風になってしまうとは想像もつかなかった。ここで初期の彼らがどんな風だったかを延々語ってもいいんだけど、そうすると冒頭の宣言に反してしまうので、一言だけ言っておこう。

上にリンクしたアマゾンのページを見て。この発掘ライヴアルバムとあわせて買うことをアマゾン君が薦めているのが、こちらも最近発掘されたばかりのクラッシュのライヴアルバム。そう、少なくとも80年代初期におけるUB40は、奏でている音楽自体はレゲエだったかもしれないが、れっきとしたパンクだった。

だからこそ当時パンクを聴いていた僕が何の躊躇もなくあのアルバムに没頭できたんだけど、未熟なガキだった僕には、当時好きだったクラスの女の子に自分のお気に入りのレゲエのLPをプレゼントしたのに、どうして全然喜んでもらえなかったのかは理解できなかった。UB40やリントン・クゥエシ・ジョンソンなんかの、精神的にはパンクと同等のレゲエから逆行して、お洒落でリゾートなレゲエにたどり着くには、僕にはあと数年必要だったというわけだ。

閑話休題。今回のこのライヴアルバム、自分の死期を悟ってこのテープを世に出したデイヴィッド・ヴァーだけでなく、今やメンバーは同じでも中身は全く別のバンドになってしまったUB40の、かつての偉業を記録した遺産のようなアルバムだ。嬉しいことに、発売元のEMIはこれを廉価レーベルであるEMIゴールドから出すことにしてくれたらしい。リンクしたアマゾンだと1200円弱で買えるし、きっと然るべき場所でその気になればもっと安く手に入るかもしれない。

初期のUB40のファンなんて、最早この世にどれだけいるのか知らないけど、今でも『Signing Off』が彼らの最高傑作だと思っている人には是非聴いてみてほしい作品。もし僕が(結局そんなに短くもならなかったこの記事で)何を言っているのかいまいちよくわからない人は、とりあえずこれを聴いてみればいい。お洒落でもリゾートでもないレゲエの最高峰の一枚だ。

Signing Off.jpg UB40 『Signing Off』


posted by . at 23:11| Comment(10) | TrackBack(0) | アルバム | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
こんにちわ。
実を言うとUB40って、あまり好きではありませんでした。ちょっと新しいし、どうもMTVのイメージが強いんですよねぇ。
彼らみたいなタイプは、はじめにLiveで出会いたいです。Liveで出会っていれば、多分今のイメージと随分違っていると思います。
聴いていないからわからないけど、このアルバムで出会っていたら、好きになっていたかも(笑)。
Posted by falso at 2008年10月14日 22:25
今回は非常に難解でした。きっとまだ記事が短すぎるのです。もっと長くしてもらわないとっ。

レゲエって、いかにもそれっぽい店のBGMというイメージがつきまとってちょっと苦手です。(それが“お洒落でリゾートなレゲエ”なのかな)

>何を言っているのかいまいちよくわからない人
ハイ、すみません・・。なので『Signing Off』を試聴してみました。そんなにイヤじゃなかったです。でも断然『The Lost Tapes』の方を聴いてみたいです。

>ガーシュインの「Summertime」
私は長年ジャニス・ジョプリンの持ち歌だと思ってました・・。ひゃははー。
Posted by カブ子 at 2008年10月14日 22:38
読みました。なんだかヨロヨロしないと物足りません。
UB40、まだ活動してるのですね。生みの親が26年もあたためていたものがデジタル・リマスターされたのですか、生まれた子供が所帯をもって孫でも出来そうな歳月ですね。
>ガーシュインの「Summertime」
私は長年ジャニス・ジョプリンの持ち歌だと思ってました・・。ひゃははー。
私もそうです。
Posted by 青グリン at 2008年10月15日 05:58
何を言っているのかいまいちよく分からない人なので『Signing Off』から入門したいと想います。
ちょうどお洒落でもリゾートでもない(らしい)所でお昼ご飯食べましたし。
Posted by ひより at 2008年10月18日 00:34
>当時好きだったクラスの女の子に自分のお気に入りのレゲエのLPをプレゼント
高校時代に3番目に好意を抱いていた男の子に、「要らない!」と断ったのに無理矢理ツェッペリンのLPを貸されて、「『天国への階段』を部屋を暗くしてロウソクつけて聴いたら、すごくイイ」みたいなことを言われましたが、ろくすぽ聴かずに返した甘酸っぱい想い出が蘇りました。当時は相手に迎合して接近するというテクニックをまだ知らなかったウブな少女だったのです・・・。
UB40は聴いたことがないので、ピンボケコメで失礼致しました。
Posted by クロム at 2008年10月19日 22:27
■falsoさん
1983年に『Labour Of Love』というカヴァー・アルバムを発表し、「Red Red Wine」他のヒット曲を放ち始めたUB40というバンドは、1980年にデビューして以来、ストイック極まりない歌詞をクールなサウンドに乗せていたUB40とは別バンドだと認識しておくのが精神衛生上正しい行いです。

かのヒット・アルバム『Labour Of Love』は、例えばロバート・プラントの『The Honeydrippers Vol.1』や、桑田圭祐の嘉門雄三名義のアルバムのように、ほんのワンショットのお遊びだと僕は思っていました。でも、どんなに左翼的なラディカルな歌詞を歌っていても、ヒット曲とそれに伴う印税の魔力には勝てないものなんですね。

こんな記事を書いておいてなんですが、正直言ってこのアルバム、コマーシャル・リリースを前提に録音されたものではないので、音的にケチをつけようと思えばいくらでもできます(それもあってのEMIゴールドからのリリースなんでしょうけど)。もし、MTV時代以前のUB40を聴いてみたいと思われるなら、ここに載せたファーストか、セカンド『Present Arms』あたりが最適かと思われます。


■カブ子さん
難解でしたか。それは失礼しました。次回からは更に短めの記事を目指しますので、ますます適当なコメントをお願いします。

『Signing Off』はそんなにイヤじゃなかったですか。こんな記事を書いておいてなんですが、普段からレゲエを聴かない人や、ブリティッシュ・ロックを聴かない人があのアルバムを聴いてどう思われるかが、僕にはさっぱり見当がつかないのです。是非アルバムを入手して、一通り聴いて時間を無駄にしてください。

「25%」ですか。よりによってアルバム中で一番存在感の薄い曲を気に入ってくれましたね。


■青グリンさん
>物足りません
なんと、グリンさんまで! では次回は短歌並みに短くしますので、ヨロヨロせずにモンモンとしてください。

生まれた子供が所帯を持って孫を作るのに、26年で事足りますか?それはなかなかネズミ算式なご家庭ですね。

みなさんジャニス・ジョプリンのファンなのですね。僕はそのCDが家にあるというのに、さっぱり思い浮かびもしませんでした。もうちょっとエコに励むことにします。


■ひよりさん
>『Signing Off』から入門したいと想います。
上の方でも延べましたが、お薦めしてはみたものの、果たしてこのアルバムがひよりさんの琴線に触れるかどうかは定かではありません。もしも入手してみて気に入らなければ、僕に突き返して下さい。いえ、僕から入手するわけではないので、突き返すは正しい言い回しではありませんね。

一体どこでお昼ご飯を食べられたのでしょうか。BGMにレゲエがかかっていなかったのは間違いないようですね。

ボクシング・デイの意味はわかりましたか。いきなり殴りあったりするわけではありません。


■クロムさん
久々に頂くコメントがこの高濃度!ちょっともうどこから手をつけていいのかわからないほどの手強さです。とりあえず、その男子にとってクロムさんが一番目に好意を抱いていた相手でなかったことを祈っておきます。
Posted by yas at 2008年10月19日 22:47
うぅぅー、別記事で体力を使い果たしてしまったので、最初っからヨロヨロです。んで、一言だけ。。。
か、買いますー!! こんなアルバムが出てたなんて知りませんでした。
このブログはいいブログです! (^o^)

あ、あと、リントン・クゥエシ・ジョンソン!
懐かしい。。。
彼についても そのうち語って欲しいです。
Posted by アキラ at 2008年10月24日 01:48
■アキラさん
ヨロヨロのままこちらにも来て戴いたんですね。ありがとうございます。おまけにこんなに褒めていただいて。

リントンもご存知でしたか。実は彼絡みでいつか書こうと思っていた記事が一つあるので、近日公開できるよう鋭意努力します。今書こうかなと思っている記事が二つ三つあるので、多分次の次の次ぐらいになると思います。そのときまでに書こうと思う記事が増えなければ、ですが。
Posted by yas at 2008年10月26日 14:19
聴きましたよ〜♪
『Signing Off』もテープでしか持っていなかったので、ついでに購入。
『The Lost Tapes』『Signing Off』と聴いて、手元にある『Present Arms』まで、久しぶりにジックリと聴きました。 (^o^)

いやぁ、この時期のUB40はいいですねぇ。
僕は『Labour Of Love』以降のラヴァーズ系もUB40に関しては好きなのですが、初期のパンク≒レゲエスピリットの彼らはやはり秀逸です。
特にこの『The Lost Tapes』には、そういう「空気」を強く感じました。

しかし、レゲエってあんまり音がよくない方が「っぽく」聞こえるのは、僕だけでしょうか? (^_^;)
Posted by アキラ at 2008年10月27日 11:02
■アキラさん
あっという間に入手して聴いて戴いたのに、いつもどおりもたもたした返事で申し訳ありません。気に入っていただけたようで何よりです。83年発表の、彼らの最初のオフィシャルライヴアルバム『Live』はお持ちですか?フランケンシュタインのジャケのやつです。時期的には『Labour Of Love』期ですけど、確か収録されたのは『UB44』の時期なので、まだ初期の香りがぷんぷんしています。実は僕は『UB44』はそれほど好きなアルバムではないのですが、あのライヴアルバムはお気に入りです。

ところでこの記事に“メンバーは同じでも中身は全く別のバンド”と書きましたが、どうやら結成以来のリードヴォーカル、アリ・キャンベルが今年になって脱退してしまったようですね。代わりに参加した新ヴォーカリストがなんとマキシ・プリースト。昔レインボーやブラック・サバス等がメンバーをとっかえひっかえして延命していたのを思い出しました。
Posted by yas at 2008年11月01日 01:38
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