2008年09月13日

鉄壁PowerPop - Matthew Sweet

Sunshine Lies.jpg Matthew Sweet 『Sunshine Lies』

およそアーティストとかクリエイターとか呼ばれる人たちにとって、ワンパターンとかマンネリとかいう言葉は、疫病のように遠ざけておきたいものだろう。夢のようなメロディーを次から次へと紡ぎだしていたトッド・ラングレンが、「僕のインスピレーションが逃げて行ってしまう」と自虐的に(でもそれは綺麗なメロディーに乗せて)歌い、そしてやがてかつてのような曲が書けなくなってしまったことを思うにつけ、あの人はどんな気持ちであの曲を書いたんだろうと、ファンとしてはどうしようもなく切ない気持ちになってしまったものだ。

その一方で、ワンパターンであることが負の要素になっていないアーティストがいることもまた事実。しばらく前のニルス・ロフグレンの記事とそのコメント欄に書いたように(別にニルスがそうだというのでなく)、定型パターンみたいな曲を作り続けることが何ら問題になっていないある種のアーティストたちがいる。

その記事に出てきたニール・ヤングや、コメント欄で名前を挙げたサザンオールスターズとか、あとはスピッツなんかもそうだろう。別に吉本新喜劇みたいに、彼らの書く似た曲が伝統芸能的に受け入れられているというわけではない。単に、どうやってもこんな風に書けてしまうというその人たちのクセみたいなものが、彼らのファンの心の琴線みたいなところに、半自動的に触れるようになっているんだろう。

マシュー・スウィートの、このソロ名義としては4年ぶりとなるニュー・アルバム『Sunshine Lies』に針を落とした瞬間、僕の頭に浮かんだ考えはそういうものだった。何年ぶりであろうと、間にソーンズ(The Thorns)やスザンナ・ホフス(Suzanna Hoffs)とのデュエット・アルバムを何枚挟んでいようと、この人の作りだす曲は、何も変わらない。そして、アルバム最初の一音にスイッチを入れられた僕の心の琴線は、最終曲がフェードアウトするまで、わくわくと震え続けたままでいる。

なにしろ、アルバム冒頭の曲からして「Time Machine」という、93年のアルバム『Altered Beast』収録の「Time Capsule」を髣髴とさせるタイトルだし。のたうち回る大蛇みたいに絡み合う二本の野太いギターとタイトなドラム、胸の奥をキリキリと締め付けるようなスティール・ギターに、マシュー本人のあの声による多重録音コーラス。鉄壁のパワーポップ。いつものマシュー・スウィートのアルバムだ。

バックを支えているのも、もう20年も前から彼とつかず離れず行動を共にしているいつもの面々。元テレヴィジョンのギタリスト、リチャード・ロイド(Richard Lloyd)。元リチャード・ヘル&ヴォイドイズのギタリスト、アイヴァン・ジュリアン(Ivan Julian)。ヴェルヴェット・クラッシュのドラマー、リック・メンク(Rick Menck)。名スティール・ギタリスト、グレッグ・リーズ(Greg Leisz)。そして前作からスウィート・ファミリーに加わった、スザンナ・ホフスがアルバムのタイトル曲でマシューとデュエットしている。

さっき“針を落とした”って書いたところで気づいたと思うけど、僕が買ったのはアナログ盤。CDに収録されている13曲がA面〜C面に、そしてアナログ盤のみのボーナス・トラック4曲がD面に収められている。最近流行のMP3ダウンロード用のクーポンでなく、13曲入りのCDがジャケット内に封入されているというお得版。

これは嬉しいよね。ボートラがレコード・プレイヤーでしか聴けないという欠点はあるものの、オリジナルCDが付いてくるってのは、やっぱりダウンロード音源とは違った実感がある。綺麗なマクロ写真のジャケにはアルバムタイトルと曲名以外の文字はほとんどなく、レコードが収められた内袋に全曲の歌詞とクレジットが載っている。見開きジャケの内側の、30cm x 60cmのトンボの顔のクローズアップは、見る人によってはちょっと不気味かも。

こんな豪華な仕様があるのに、わざわざCDだけのヴァージョンを買う人がいるのか?上にリンクを張ったアマゾンだとこのアナログ盤(LP+CD)はCDだけのヴァージョンよりも1000円も高いけど、他のサイトに行けば、ほんの数百円の差だよ。なので、アナログ盤を聴ける環境にある人(及びマサさん)には、アナログ盤を入手することをお薦めする。

昔から何も変わらない彼のアルバムだけど、ひとつ変わったことがある。99年の名作『In Reverse』の裏ジャケでちらっと上半分だけ素顔を見せて以来、アルバムジャケットの表にも裏にも彼のポートレイトが載ることがなくなってしまったことだ。マシューのことを知っている人なら想像はつくだろうけど、彼の風貌の変化がその理由だろう。なにしろ、86年のソロ・デビューアルバム『Inside』でのこの好青年が、
Inside.jpg

06年の前作『Under The Covers Vol.1』でのスザンナと一緒のプロモ写真ではこうだからね…
Sweet Hoffs.jpg

書く曲が変わらないとかよりも、これだけ太っても声が全然変わらないってのが、ある意味凄いと思う。


posted by . at 19:35| Comment(8) | TrackBack(0) | アルバム | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
愛すべきワンパターンといえば、私はやっぱり故ラモーンズですね〜。

>わざわざCDだけのヴァージョンを買う人
私だったら、そっちになりそう(笑)。サイズの違うモノが増えるのは、収納になかなか厄介なもので・・・。一部の台湾盤CDのサイズがデカイのでさえ、ちょっと腹が立つ。

あらら〜ん、今はこんな体型でしたか・・・。でもこうなってもまだパワポをやり続けるのは、ある意味、男気を感じます。
Posted by クロム at 2008年09月13日 23:58
■クロムさん
記事中に書いた、ワンパターンであることが伝統芸能的に受け入れられてる人たちの代表格が、ラモーンズでしょうね。あと、ディスチャージとかも。あえて同じような曲しか作らないという、ね。それにしても、どうしてラモーンズのメンバーは揃いも揃って若死にするんでしょうね。体内におやすみタイマーでも付いているのでしょうか。

クロムさんはCDのみヴァージョンですか。僕がLP+CDヴァージョンがいいと思ったのは、LPサイズが収納できるラックもあるからですね。最近そっちのラックも足りなくなってきて困ってはいるんですが。

そうですよね、台湾盤や香港盤、あと日本盤もそうですけど、勝手に独自サイズのケースで出すのをやめてほしいもんです。ラックに入らなくて困ります。

>今はこんな体型
これは2年前ですね。彼のサイトに行くと、これより若干痩せて見える写真が載っていますが、それがダイエットの効果なのか特殊効果なのかは定かではありません。
Posted by yas at 2008年09月14日 17:09
『Inside』の美少年、ディカプリオかと思いました。20年の歳月は恐ろしいですねー。
食欲の秋(もう秋?)で最近ぽにょぽにょしている身にとってはラズベリーズの記事といい、ここに来るとドキドキします。

>30cmx60cmのトンボの顔のクローズアップ
これが見てみたいです。

吉本新喜劇が伝統芸能であることに初めて気づきました。
Posted by ひより at 2008年09月14日 23:08
■ひよりさん
20年でこれだけ変わる人も珍しいと思います。ディカプリオ君はこれだけ変わってしまうと多分仕事がなくなるので、節制しているのでしょう。

かつてうちのブログには年とともに禿げてしまった人ばかりが載っていたものですが、最近はウォーリー・ブライソンといい、グレッグ・レイクといい、マシュー・スウィートといい、年齢とともに体重が倍増する人たちばかりを取り上げている気がします。今その3人を同時に秤に乗せると、0.3トンとかありそうです。あと何人か探してきますから、1トンめざして一緒に秤に乗りますか?

>これが見てみたいです
是非買ってみてください。CD版は持っていないので僕にはわかりませんが、きっと同じ写真だとしても最大で12cmx24cm程度にしか載っていないはずです。それはせいぜい実物の虫程度なので、ひよりさんには物足りないはずです。

>伝統芸能
観客の誰もが次はこうなるという展開を全て知っていて、何十年も前から連綿と連なる同じギャグで笑うというのは、伝統芸能以外の何物でもあり得ません。
Posted by yas at 2008年09月15日 18:50
yasさん、はじめまして!
ラ・モスカと申します。

俺もマシューが大好きでずっと聴き続けてます。
しかし、紹介されてるCD付きアナログ。
こんなのあるの知りませんでした!
俺もアマゾンで買ったんだけど、よく調べませんでした・・・。D面に入ったボートラ、国内盤出たら収録されるかなぁ?

>これだけ太っても声が全然変わらないってのが、ある意味凄いと思う。

あっ、コレ、俺もスゴイ思ってました(笑)
不思議ですよね、ある意味。
Posted by LA MOSCA at 2008年09月16日 21:17
マシュー・スウィートは『Girlfriend』と『Goodfriend』しか聴いた事ありません。なのでイメージは毛皮の女の子なんですけど、こんなオッサンだったんですねー。
Posted by カブ子 at 2008年09月18日 12:23
初来日した頃、この人の見た目に関して、ジャケット写真とは違い、あまりにもオタクっぽい感じでショックを受けた、という雑誌の記事を読んだ気がします。
最近では、すっかり変貌してしまいましたが、ある意味では健全な歳のとり方をしているかもしれません。(笑)
Posted by piouhgd at 2008年09月18日 12:44
■LA MOSCAさん
はじめまして。わざわざ書き込んで頂いたのに、こんなに返事が遅れてすみませんでした。

国内盤、いつ出るんでしょうかね。Shout! Factoryなんていうマイナーレーベル、日本ではどこが配給してるのかな。と思って調べたら、前作『Under The Covers Vol.1』はトレジャー・ミュージックってところが出してましたね(しかもボートラ入りで!…知らなかった)。

身近にここまで太ったり痩せたり激変した人がいないので比較対象がないのですが、普通楽器とかでこれだけ入れ物の大きさが変わると音変わりますよね。


■カブ子さん
『Goodfriend』とはまたマニアックなものを持っていますね。『Girlfriend』のデラックス・エディションのことではないんでしょう?

あの毛皮の女の子は、チューズデイ・ウェルドという女優らしいですね。かわいいジャケです。一般的にはマシューの代表作とされるあのアルバムですが、もしもジャケ写が彼自身のポートレイトだったりしたら、売り上げも半減していたかもしれませんね(当時の体型についてはpiouhgdさんのコメント参照)。


■piouhgdさん
たしかに、僕と殆ど歳の変わらない彼、しかもアメリカ人ですから、これだけ太っているのが普通というものかもしれませんね。

早くまた来日してほしいものです。
Posted by yas at 2008年09月21日 11:56
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