2008年09月08日

Faust live in Tokyo

ファウストが11年ぶりに日本に来るというので、それは観ておかなければと思って急いでチケットを押さえたのに、なんだか信じられないような大きな数字の整理番号。いくつかのルートで売り出されてるチケットは、それぞれ割り当て番号というのがあるんだね。どこで買わなければいけないかを知っておくのも重要、ということを覚えた日本のコンサート事情。

僕とドイツ音楽の最初の邂逅。ホルガー・シューカイ「Persian Love」 in スネークマンショー。時期的にそれは即座にジャー・ウォブル from パブリック・イメージ・リミテッドとくっついたり。それよりも少し前に、プログレッシヴ・ロック界隈をいびつに進んでいった挙句、出てくる名前のドイツ人濃度が徐々に高まっていったり。ひねくれポップ職人としてのデイヴ・スチュアート⇒所謂カンタベリー・ミュージック⇒スラップ・ハッピー⇒ファウスト。とか。

そういう、(結構な量のレコードやCDは持ってはいるものの)決して硬派のジャーマン・ロック・ファンというわけではない僕のブログだということをわかったうえで読んでもらえれば(と、ワード検索でこの記事のタイトルが引っ掛かった人に向けての前置きを少々)。

リキッドルームがまだ新宿にあった97年の初来日の模様をあちこちのサイトで読んだ。ステージ上でガラス板を叩き割って破片が客席まで飛び散っただとか、ハンマーでテレビを叩き壊したとか、バルサン状の煙が焚かれて目も開けられず呼吸困難に陥り、そのまま終演、とか。

なので、大きな数字の整理番号でもいいか。と、僕にしては腰の引けた客席(席はないけど)のほぼ中央に落ち着き、開場から開演までの1時間、同じ音がループで延々かかっているとしか思えないアンビエント風の音楽を聞きながら待つ。ステージ上、ドラムキットの周りには鉄パイプで組んだ囲いとそこにぶらさげられた鉄板2枚。コンクリートミキサー。右側にはなにやら白い壁。

1曲目、一瞬「It's A Rainy Day, Sunshine Girl」なのかな?と思った延々と続く反復系のインスト曲。それが終わったときに、ベース&ヴォーカルのジャン=エルヴェ・プロン(Jean-Herv Peron)が「今のは新曲」と紹介。その時点で今日は曲目を憶えるのを諦める。

会場入り口に貼ってあった「本日のコンサート冒頭は録音され、ステージ上でメンバーが即興で描いたジャケットを添えて、150枚限定のCD-Rとして終演後に販売されます」とのお知らせのとおり、続く2曲目で、唯一の女性メンバー、ジェラルディン・スウェイン(Geraldine Swayne)が右側の白い壁に絵を描き始める。BGMとして残りのメンバーが奏でるのは、ぼよーんうよーん、どたどたどた、といった超アブストラクトな曲。まあ、こちらはその場で絵がどんどん完成していくのを観ているから、別に退屈はしないけどね。

完成した絵(白いCDジャケが150枚分)を業務用みたいな馬鹿でかいドライヤーで乾かしながら下げると、その下にもまた白っぽい壁が。あれは木かな?発泡スチロールかな?

ドラムのザッピ・ディアマイアー(Zappi Diermaier)がサンダー(丸いヤスリのついた機械ね)でドラムキットの上にぶらさがってる鉄板から火花をバチバチ飛ばしたり。僕のすぐ近くにいた二人組の男の子がしきりに「すげー! すげー! こいつらやべーよ!」とかうるさい。いや別に鉄板から火花出すぐらいでそんなやべくないから。

今度はプロンがチェーンソーを持ち出してきて、木だか発泡スチロールだかでできた白い壁に切り込みを入れ始める。どうやら「混沌」と書きたかったみたいだけど、いきなり「混」の字の右側の縦棒を下まで切り込んだもんだから、なんだかよくわからない字に。でも、暗いステージの上、ニセ混沌から漏れ出てくる光の筋がとてもきれい。

冒頭の曲みたいな反復系のズンズン乗れる曲と、「あれは一体何をやっているんだろう」的なシアトリカルな曲が順不同に演奏され、うーん、ちょっとこれはツライなと思い始めた矢先、日本語を話す外国人客が「みんなもっと盛り上がろうよ!7000円も払ってるんだから!」と煽りはじめる。最初は笑いながら聞いてたんだけど、曲が終わるたびにそいつが大声でしゃべってるもんだから、たいがいうんざりしてきたところに、プロンが「ちょっと黙れ」と。

で、そいつを黙らせて始めた曲が、セカンドアルバム『So Far』からの「I've Got My Car And My TV」。おぉ、やっと認識できる曲がでてきたぞ。このあたりから客席も徐々に盛り上がり始める。別に7000円の元を取ろうと思ってのことじゃないだろうけど。セカンドからは「Mamie Is Blue」も演ったね。本編ラストだったかな?その前ぐらいだったかな。

一旦引っ込んで、アンコールでまず出てきたのはプロンとザッピの二人。アコースティック曲を一曲演奏したところで、他のメンバーも登場。最後は楽しい「Krautrock」。ここでようやくコンクリートミキサーを使う。ビールの缶をいくつか投げ込んで、ほんとはもっとガラガラと音を立てたかったんだろうけど、あいにく会場で販売されていたビールはプラスチックのコップ入り。観客からはちっとも空き缶が集まらず、投げ入れられたのはメンバーがステージで飲んでいた数個のみ。…ミキサーが回る音しか聴こえないよ。

プロンを筆頭に、終始メンバーがなごやかな表情だったのが印象的だった。ガラスの破片だのバルサンだのと身構えていたことを、終わった頃にはすっかり忘れていたよ。中盤まで「ちょっとこれはどうなのかな。やっぱりこの人たちレコードの方がいいかも」なんて思っていたこともすっかり忘れて。強いて言えば、僕の目前に入れ替わり立ち代り来て気持ちよさそうに踊っていたお兄ちゃん達が、よりによってどいつもこいつも臭かったのがちょっとキツかった。7000円も払ったのに(笑)

さて終演後、階上のCD-R売り場に並ぶ長蛇の列。「世界中でここでしか販売していない超レアCD!」とかいって煽られてはいるものの、あの抽象画の1/150の部分をもらってもなあ、とちょっと引き気味の気分で並んでいたものの、レジ前まで来たら当然のごとく財布から3000円を出して購入。僕のは48番。大きな絵のどこの部分だかよくわからないけど。

cd-r front.GIF cd-r back.GIF

そしてここでも終始ニコニコとなごやかなメンバー全員にサインをもらった。そのうえザッピからは、頼んでもいないのに(笑)マジックの試し書きみたいなサインも追加でもらった。

Zappi.gif

家に帰って、コンサート冒頭ってどの曲まで入ってるんだろうとわくわくしながらそのCD-Rをプレイヤーに入れてみた。14分で5トラック?だって1曲目だけでも10分近く演ってたのに?と思いながら聴いてみたら、トラック分けなど完全に無視で、2曲目の「ぼよーんうよーん、どたどたどた」だけが14分間…

まあでも、よくある(どこか別の会場で撮った)写真しか載ってないようなペラペラのコンサートプログラムに何千円も払うことに比べたら、まがりなりにもその日の音が入ってるんだし、サインももらったし、今日の記念品だと思えばいいか。


“記念品”というキーワードで連想するのも気が引けるけれど、03年に紙ジャケCDで復刻された、彼らの最初の2枚のアルバムは、まさにそのフォーマットで持っていることに価値がある、超優れモノだった。どちらも相当風変わりな風体でリリースされたオリジナルLPを、素材も含めてミニチュアサイズで忠実に再現。こういうことができるのが、日本のレコード会社のすごいところ。

今回のライヴではここからは一曲も演らなかった、ファーストアルバム(の、LPとCDの親子写真)がこれ。無色透明ビニール製のジャケットに直接印刷された握り拳(Faust)のレントゲン写真と、同じく無色透明レコード盤。CD盤だけは残念ながら透明というわけにはいかないけど(音出なくなるからね)、それ以外はそっくり同じ。となりに並んでるのに遠近感を感じる、持っていること自体が嬉しくなる仕様のアルバム。

Faust L & S.JPG

ジャケットの外側も内側も、CD盤も全部真っ黒(CDの盤面には黒地にトーン違いの黒字でタイトルが印刷されている)、オリジナルのLPにも付いていた曲ごとのイメージ画が一枚一枚付属しているセカンドアルバムも、紙ジャケCDは持ってるけど、こうして並んだファーストアルバムを見ていると、LPも欲しくなってしまうよね(エコ月間は何処へ?)。


posted by . at 23:25| Comment(5) | TrackBack(0) | コンサート | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
今回、他のライブと被ってたので、六本木のスーパーデラックスの方へ行こうかと考えました。
でも、そっちで共演する日本のバンドがゴニョゴニョゴニョ...(想像にお任せします笑)なので、見る気なくして結局やめました。
yasさんの記事を読んで、行かなくても良かったな、と素直に思いました。(笑)
Posted by piouhgd at 2008年09月09日 00:08
最年長だった?
Posted by Luna at 2008年09月09日 09:53
楽しいライヴレポ、どうもありがとうございま〜す♪ 待ってましたよぉ〜!
今まで読んだyasさんのレポの中で、一番思い入れ度が少ないような感じがするのは気のせい(笑)?かくいう私も、一昔前だったら興味深々だったんだけど、最近はもっぱら非クラウト系のドイツロックばっかり聴いているからなぁ・・・。

私の中ではファウストって、どんな革新的なことや過激なことをやっても、どこかヤンチャ坊主的なイメージがあるんですけど、実際の雰囲気ってどうでしたか?
それにしても、その場でCD-Rとはディズニーのその場で写真撮影みたいな新手商法ですね(笑)。

>日本語を話す外国人客
う〜ん、気になる存在・・・その人の素性が知りたいかも(笑)。

将来もしも、やっぱりライヴに行っとけば良かったと後悔したときは、とりあえず東京タワーに会いに行きます。


Posted by クロム at 2008年09月09日 20:47
過激なことをする割には、ニコニコと和やかな人たちなんですね。大まじめにやられるよりもお茶目で好きです。
反復系の曲は好きなので、CD買ってみようかな〜。

チケット7000円って結構高いと思いますけどドイツからわざわざ来てるんですもんね。超アブストラクトCD代3000円も、旅費の足しにしてもらえると思えば・・。
Posted by カブ子 at 2008年09月11日 19:01
■piouhgdさん
おや、もしかするとニアミスしていたかもしれなかったんですね。それは残念でした。でもまあ、あの広い会場では、来られていたとしてもわからなかったですけどね。お互い顔も知らないし(僕はpioさんの後ろ姿しか見たことありません 笑)

僕はあの共演バンドのことは知らなかったんですけど、ゴニョゴニョなんですね(笑)。チラシ裏に載っているメンバー表を見ると、ドラムスが二人もいますね。

大絶賛といったトーンの記事になっていないのは、きっと彼らの音楽とは関係ない部分も多々影響していると思います。すぐ近くの客が結構な大声で延々喋ってるとか、自分の目の前にいる奴がやたら臭いとか、少し前方に背の高いニット帽をかぶった奴が来てステージが見えないとか(「部屋の中では帽子を脱げ!」と言いたくなります)。そういう意味では、ちょっと僕にとっては残念なライヴではありました。「あれは一体何をやっているんだろう」的な曲も、もっと近くでステージ全体が見えていたら、もっと楽しめたはずなのに。


■Lunaさん
いえ、この人たちはもともと70年代初期のグループなので、きっとその頃から聴いているであろう人たちが沢山いましたよ。だいたい、この手のちょっと難解なドイツ音楽を聴くのなんて、マニアックなオッサンばかりでしょうから。そういえば、予想の範疇とはいえ、女性比率の非常に少ないライヴではありました。


■クロムさん
>一番思い入れ度が少ないような
確かにそうかもしれませんが、行ってはみたもののあまりにつまらなくてブログには書かなかったようなライヴもありましたから、それよりは遥かに上です。pioさん宛てのコメントにも書きましたが、ライヴ自体が面白くなかったというよりも、自分の周囲の環境がちょっと…という感じでしたので。

ヤンチャ坊主的という言い方はぴったりかもしれませんね。特にジャン=エルヴェ・プロンが、なんだかいたずらっ子がそのまま歳を取ったみたいな感じで、終始ニコニコと、とても楽しそうにしていました。

傾けると「メェ〜」と羊のように鳴く楽器(?)を皆で持って、全員で順不同に「メェ〜 メェ〜」とやったりとか、ザッピが長い鉄の棒を杖みたいに持ってステージの床をドン!ドン!って叩いたりとか、“難解”というイメージより、なんだかお遊戯的な楽しさがありましたね。

日本語を話す外国人客は、最初の「盛り上がろうよ!」とかその次ぐらいでやめておけばよかったんですけどね。そしたら、お茶目な外人のお陰でちょっと盛り上がったと思われたのに。でも、一人7000円も取っておいて全員が盛り上がれないようなステージを見せるのはアーティストのせいだし、そもそもファウストって、そんな盛り上がったり踊ったりするためだけのグループだっけ?てのもあるし、それぞれがどう楽しもうが勝手なんですよね。それを、曲が終わるたびに大声であーだこーだ強制するようなことを言うもんだから、ちょっとうんざりでした。きっとそういう仕事とか布教をやっている素性の人なんでしょう。

東京タワーのザッピ人形の写真が今回のライヴのチラシの裏に載っているんですが、現在の本人はこの3倍ぐらいの横幅がありました(笑)


■カブ子さん
そうですね、確かに大まじめに鉄板から火花を飛ばされたりしても、あれはそういう仕事なのかと思ってしまうところでした。ちょっと冷めた書き方の記事になってしまったかもしれませんが、実はとても満足して帰ってきたんですよ。

CD、記事の下の方に書いたファーストとかセカンドの日本盤紙ジャケ、素材とかも含めて、きっとカブ子さんに気に入ってもらえることだと思います。是非そちらを探してみてください。もちろん、LPも特別仕様です。

7000円+3000円、おっしゃる通りです。普段なら1曲入り3000円のCD(シングル盤ですよね、これって)なんて買わないと思いますけど、今冷静になってみても、全然損した気分になりません。

僕は工具には詳しくないので、是非カブ子さんに一緒に来てもらって、ドイツ製かどうか確かめてもらうべきでした。次回お願いします。
Posted by yas at 2008年09月13日 14:05
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