2008年08月26日

フェルメール展とELP

上野の東京都美術館でやってるフェルメール展に行ってきた。昔、ヨーロッパを旅行したときに彼の作品を何点か観たことがあって、それ以来好きな画家だったから、今回東京でまとめて観られるというので、小雨の降る中を出かけることにした。

うちから上野までは電車を何本か乗り継いで行くんだけど、今日はそのほとんど全ての路線で人身事故による遅れが出ていて、なんとなく幸先の悪い日だとは思ったけど、平日に休みを取って行ける日もそうそうあるもんじゃないので、気にせず遠回りして決行。

Vermeer.JPG


平日の昼間だというのに、結構な人出。美術館なんてずいぶん久し振りだけど、こんなに人がいるもんだっけ。あんまりよく調べずに行ったんだけど、40点弱の展示のうち、フェルメールの絵は7枚だけ。でも、僕の好きな「小路」という絵も観られて満足。その他30点ほどは、人だかりの少ないものだけを選んで観て廻った。

上野にはいくつも美術館があるようで、道すがら『黄金の国ジパングとエル・ドラード展』というポスターを見てしまった。話せば長いんだけど、たまたま昨日寄ったCD屋でかかっていたBGMが何故かピンクレディーのベスト盤だったもんで、そのポスターを見てから東京都美術館に入館するまで、頭の中でずっと同じ曲がぐるぐる回ってしまっていた(僕の説明にしてはあんまり長くなかったね。でもほら、現在35歳以上の人は、曲名書かなくてももう僕と同じ曲が頭の中に流れ始めてしまったでしょ?)。

せっかくのフェルメール展、ピンクレディーを脳内でぐるぐるさせながら観るのもなんだかなぁと思い、無理矢理違う曲のことを思うことにする。えーと、久し振りの美術館なんで…そうだ、「展覧会の絵」にしよう。

Pictures At An Exhibition.jpg Emerson, Lake & Palmer 『Pictures At An Exhibition』

というわけで、脳内BGMを無事変更し、7枚(+α)の絵を堪能して、人だかりの東京都美術館を後にした。

と、今度は、「展覧会の絵」が頭から離れなくなってしまった。ここはひとつ、最近流行の自分内エコ活動の一環として、今年の頭に安値で買ったはいいけどまだ観ていなかった、ELPの『Pictures At An Exhibition』のCDとDVDの2枚組の、DVDの方を観ることにしよう。久々のこのブログでのプログレネタにもなるし。

そもそもこれを安値で入手できた理由は、DVDがPAL方式だったから。でもこの盤、三方見開きの紙ジャケのどこにもレコード会社名が書いてないぞ。CDの盤面には日本のビクターの名前とVICP-62116って日本盤ぽいナンバーが書いてあるし、DVDの方はマンティコア・レーベルのマークは書いてあるけどナンバーも何もないな。これ、ほんとに正規盤なのかな。

しかも、DVDを観てみると、いきなり日本語字幕付き。PALなのに。プログラムの真ん中あたりで一旦画面が暗くなるところからすると、これはきっと日本のレーザーディスクからのコピーだね。確かこのビデオ、海外では「展覧会の絵」だけしか入ってないけど、日本盤は<完全版>とかいって三曲追加されてたんだよね。このDVDにもその三曲入ってるし。

1時間半に及ぶこのビデオ、いかにも70年代初期らしく、やたらとソラリゼーションとかハレーション満載のサイケデリックな映像があちこちにちりばめられている。というか、画面全体ピンクに空色とか、そういう何が映っているのか判然としない画像が何分にもわたって延々と続く。たまにアクセント程度に使われるだけならともかく、これはちょっときついね。

そうでもしなければ単調で観ていられないような映像じゃないんだよ。キース・エマーソン(Keith Emerson)のステージパフォーマンスは話には聞いていたけど、オルガンをガッタガッタ揺らして、挙句の果てに倒したオルガンの下敷きになりながら弾いたり、そのオルガンにナイフを何本も突き立てたり、シンセサイザーに繋がってて、触ると“うにょーん、びにょーん”って音の鳴る変な板みたいなのを股間でしごいたり、とにかくこれでもかというほどの激しいアクション。スタインウェイのグランドピアノの上から手を突っ込んで、弦を直接弾いてるのを見て、「ああ、ピアノって弦楽器だった」と思ったりも。

このビデオ収録後10年もしたら、体型的にはウォーリー・ブライソンと同じ運命を辿ることになるグレッグ・レイク(Greg Lake)も、この時点ではかなりスマートで格好いい。しかも、これがもし女の子だったらちょっと僕好みかも、と思うほどの整った顔つきに、否応なしにプログレ界を代表してしまっているあの歌声(『宮殿』と初期ELPには彼の声しか入ってないんだもんね)。このビデオを観て、ギターも結構上手いんだなと再認識。

日本盤ビデオのボートラ三曲のうち最後の一曲「Knife Edge」で、いかにも70年代風の7分強に亘る退屈な(失礼)ドラム・ソロを披露しているカール・パーマー(Carl Palmer)が、そのソロの途中で、いかにも70年代風のぴっちりしたシャツを窮屈そうに脱ぎ捨てているところもまたご愛嬌。でも、このビデオを観て、少なくともライヴに於いては、このバンドの要はこの人だったのかなと思ったりもした。

ライヴ・ヴィデオとしては、今の目から見ると、これはかなりつらい。NTSC⇒PAL変換のせいか、ソラリゼーションの部分では特にMPEG由来のブロックノイズだらけになって見てられないし。今となっては貴重なパフォーマンスなんだから、もしこれのオリジナルのフィルムが残っているんなら、是非この気の遠くなってしまうような特殊効果抜きで観てみたいところ。

というわけで、付属のDVDは多分もう観返すことはないだろうけど、ELPの代表作のひとつであるCDの方は、これからも何回も繰り返して聴くことになると思う。思えば、中学生のときにFMでエアチェックしたこのアルバム、当時はなんだか音楽の授業の延長みたいに思えてしまってあまり聴くことはなかったけど、今の耳で聴いても(冗長な部分があるのは否めないものの)キャッチーなクラシックのフレーズをパクった(とか言っていいのかな)、実によくできた大衆音楽だと思う。

ところで、今日帰ってきてこれを観て気づいた。フェルメール展を観ていたときにずっと僕の脳内を回っていた「展覧会の絵」だと思っていた曲は、CDのラストに入っている「Nutrocker(胡桃割り人形)」だった…


posted by . at 22:38| Comment(12) | TrackBack(2) | ビデオ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
胡桃割り人形はNutcrackerやろって、突っ込みたくなったんだけど…
…シャレなの?
Posted by Luna at 2008年08月27日 08:15
驚きました。
件の記事を書くときに調べ物をしていてこのCDの試聴もしていたんですよ。クラシックのモチーフを使いながらもパクリ臭のしない、別物仕上がりがおもしろいなーと思っていたところでした。記事に「奇抜な曲」と書いたのは「バーバ・ヤーガの小屋」です。この曲もかっこいいですよね。

せんとうさぎくん(兎に角)、知らないうちにプログレに辿り着き試聴していたとは意外でした。音楽の授業よりも勉強になります。
でも残念ながら電気は苦手なのでPALとかNTSCとかはさっぱり分かりませんでした。
Posted by ひより at 2008年08月27日 18:10
■Lunaさん
チャイコフスキーの「胡桃割り人形(Nutcracker)」を元ネタに、キム・フォウリーという人がアレンジしたのがこの「Nutrocker」という曲なんです。

でも、ムソルグスキーの「展覧会の絵」を元ネタにしたこのアルバム自体が、キーボードとベースとドラム(と一部アコギ)だけで演奏されていますから、本来のムソルグスキーの「展覧会の絵」とは、いくらメロディーや展開が同じでも、当然違った曲に聴こえます。

それ故に、アルバムに収録された曲のクレジットは、例えば一曲目の「Promenade」は“ムソルグスキー”、二曲目の「The Gnome」は“ムソルグスキー/パーマー”、三曲目の「Promenade」は“ムソルグスキー/レイク”など、ムソルグスキー原曲であることを尊重したものになっています。

ところが、アルバム12曲目のこの「Nutrocker」だけは、メロディーや展開は「胡桃割り人形」そのものだというのに、クレジットが“キム・フォウリー”。チャイコフスキーのチの字もャの字も出てきません。あまりにもあつかましい態度だとは思いませんか。

とはいえ、クラシック音痴の僕は、本物の「展覧会の絵」も「胡桃割り人形」も、さわりぐらいしか聴いたことがないので、さっきからメロディーだの展開だの書いてるのはもちろん口から出まかせです。

…というようなことを書こうと思っていたんですが、また記事が長くなって文句が出るといけないので、遠慮していたのです。呼び水コメント、ありがとうございました。すっきりしました。

ジパング、ご存じないですか?記事の文言を「35歳以上○○歳以下の人」にしておくべきでした。


■ひよりさん
おや、既に試聴済みですか。クラシックファンのひよりさんなら、お気に召すかもしれませんね。機会があれば是非通して聴いてみてくださいね。これはプログレですが、初心者向けです。

「バーバ・ヤーガの小屋」、8曲目と10曲目ですね。それぞれ1分12秒と1分6秒しかありませんね。この曲のクレジットは“ムソルグスキー”単独になっています。それほどアレンジされていないということなんでしょうか。もしじっくり聴かれる機会があれば、教えてください。

せんとうさぎはとにかくでしたか。開眼しました。

何故僕が『宮殿』ジャケ顔の女の子が好みだと思うのですか?
Posted by yas at 2008年08月27日 21:59
ジパングの文字をみても何のメロディも思い出しませんでしたΣ( ̄□ ̄;)!!
実家の両親の入ってる「ジパング倶楽部」は思い出しました。
あー、「ピンクレディ」と言われて、「モンスター」の節は出てくるんですが。

とりとめないので帰りますm(_ _)m

参考:「世界のテレビ放送方式」↓
http://www.eizokiroku.com/pal_secam_ntsc.htm
Posted by あんぐれっちーに at 2008年08月28日 00:07
ジパングは知らないけど、ピンク・タイフーンのメロディは知っています。
Posted by Luna at 2008年08月28日 18:02
フェルメール展行かれたんですか〜!うらやましいです。絵画の世界はCDのように気軽に体験できないのが残念です。画集で見るのと実物じゃ、化粧前後の女性くらいの違いがありますものね〜。

ところで、コメ欄で出てくるキム・フォウリーって、あのキム・フォウリーですか?!(←質問になってない?)EL&Pとあんまり結びつかないような・・・。

ジパングといえば、当然ピンク・レディー世代!ついでに「くるみ割り人形」といえば、石川ひとみです(笑)。
Posted by クロム at 2008年08月28日 22:49
つい一年前に「『牛乳を注ぐ女』日本初公開!」と鳴り物入りで話題になったフェルメール、またも国内で展覧会とは人気の高さが窺い知れますね。今回は「今世紀最多の来日!」を謳っていますが、本当に今後90年以上にわたって7点以上の来日はないのか気になるところです。いや、東京都美術館ってばチャレンジャー♪
「7点しかない」とご不満そうなyas兄ィですが、来世紀まで待てばもっと観られるかもしれません。

キース・エマーソンのパフォーマンス、ちょっと見てみたい気がします。80年代はクラシック界(現代音楽界?)でも似たようなステージをしばしば見かけました。もうちょっと上品だったけど。(笑)
Posted by ひそそか at 2008年09月02日 12:55
こんにちわ。
深夜に2つ目の書き込みです(^^)。

でも、まっすぐにはこのELPのアルバムを褒めない(笑)。
yasさんと同じなのかもしれませんが、冷静に聴いてしまうと全体的に安っぽくて、結局はストレートにポップなNutrockerに印象が集まってしまうと思います。
でね、Nutrockerは好き(笑)。
Posted by falso at 2008年09月04日 01:34
私はピンクレディーを踊らない少数派だったので、ジパングのメロディーが浮かびません。
実家の両親もあんぐれさんのところと同じく「ジパング倶楽部」に入っていますが、どうしても「ジバング」とすべての音が濁ってしまいます。もはや書き換え不可能です。

ところで
>倒したオルガンの下敷きになりながら弾いたり、そのオルガンにナイフを何本も突き立てたり
さらっと書かれてますが、爆笑してしまいました。どんなライブなんだよー。
Posted by にんじん at 2008年09月04日 16:23
にんじんさん、これこれ〜 ↓
http://jp.youtube.com/watch?v=xggFzkyd288&feature=related

ハゲしい・・・
Posted by ひそそか at 2008年09月05日 00:27

わははは。すごい〜! 完全にイっちゃってますね〜。

こうなると“うにょーんびにょーん”と鳴る変な板とか、弦楽器的ピアノとかも見てみたくなります。
Posted by にんじん at 2008年09月05日 16:18
■あんぐれっちーにさん
久々に書き込んで頂いたのに、長らくお待たせしてしまいました。すみません。

おや、あんぐれさんのお年でもジパングわかりませんか。困ったな。これはどうも世代的なものではないのかも知れませんね。

フレンチSECAMを“忘れてました”って、鉄道だけでなくテレビの放送方式にもお詳しいんですね(笑)


■Lunaさん
>ピンクレディは子供が見るもん
一瞬、イナモト君はピンクレディー世代かと思ってしまいましたよ。僕はもしかしてルナさんよりイナモト君に年が近いのかと…

それにしても、ピンク・タイフーンって、ジパングよりもっとマイナーじゃありませんか?


■クロムさん
いいでしょう。このフェルメール展、まだしばらくやってますから、是非またそのうち東京旅行を企画されてはいかがでしょうか。

キム・フォウリーは、ご存知のあのキム・フォウリーですよ。もともとこの「Nutrocker」は、62年にB.Bumble & The Stingersというバンドがヒットさせたらしく(なんとUK第一位)、ELPのはそれのカバーということのようですね。

それにしても、ウィキのキム・フォウリーのページを見てみたら、もの凄く幅広いジャンルの人たちの名前が載ってますよ。僕の範疇だと、ソフト・マシーンだとか(最初のシングルのプロデューサーだったとか)、リッチー・ブラックモアがパープル以前に組んでいたインスト・バンドだとか、フランク・ザッパだとか、ウォーレン・ジヴォンだとか、スキップ・バッティンだとか、バーズだとか、ジョナサン・リッチマンだとか、ジョン・ケイルだとか。そういう方面の人でもあったんですね。勉強になりました。

おお、ようやくピンクレディーのジパングを知っている人が現れた。あくしゅあくしゅ。ついでの石川ひとみには脱帽です(笑)


■ひそそかさん
牛乳は観に行かれたのですか?うらやましいです。もし今世紀中に日本のどこかの美術館がフェルメールを7点以上展示することがあれば、東京都美術館にどなりこんでやってください。それを確かめるために、少なくとも西暦3000年までは生きていてくださいね。僕はそのあと一年長生きして、フェルメールを8点観てから死にます。

コンサートのたびにスタインウェイにナイフを刺せるぐらいなら、しがない音楽業などやっていないかもしれません。


■falsoさん
夜更かしですね(笑)。もともと彼らもこのアルバムを正式に発表するつもりはなかったといいますね。コンサートでは話題になっていたものの、この組曲自体、ナイス時代から演奏されていたものなので、レイクとパーマーがレコード化するのを嫌がっていたとのこと。最終的にレコードにしたのは、海賊盤対策ということらしいですね。それでやむなく、アイランドレーベルの廉価盤ナンバーHELPの1番がこのアルバムになったというのを読みました。

「Nutrocker」に印象が集まるというのはよくわかります。もともとのメロディーがポップな上に、アレンジとしてもよくできていますからね。上の方のコメントではキム・フォウリーの悪口ぽいことを書いていますが、アレンジャーとしての腕前は大したものだと思います。


■にんじんさん
なんと、ほぼ同い年のにんじんさんまでジパングを知らないとは。もういいです、皆さんSOSでも波乗りパイレーツでもお好きな曲を脳内でぐるぐるさせていてください。

僕の祖母は昔バスのことをパスと呼んでいました。濁点と半濁点を逆に憶えるというのは、どういうきっかけで起こるんでしょうね。まさかパソコン画面で見たから区別がつかなかったなんて、そんなどこかのおかんみたいな(後略)。

>爆笑してしまいました
あ、そうか、あれは爆笑しながら観るものだったんですね。そのDVD、たまに観客席が映るんですが、爆笑している客はいなかったように思ったんですけど、70年代にはそれが許されていなかったんでしょうか。


■ひそそかさん
発掘ありがとうございます。これは僕の持っているDVDと違って、変な特殊効果がなくて見やすいですね。ところで、オルガンってこうやって使うと一回でダメになってしまうものですか?


■にんじんさん
>見てみたくなります
うちにDVDありますよ。観に来ますか?
Posted by yas at 2008年09月06日 14:27
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