2016年12月04日

Tamas Wells live in Shenzhen

中国に住んでてよかったと思えることなんてそう滅多にあるもんじゃないけど、これだけはひそかに期待していた。そして、思ったより早くその期待は実現した。今のところ最後の来日になる2014年6月から約2年半、ここ中国でタマス・ウェルズのライヴを観る機会がまた巡ってきた。

会場は地下鉄の橋城北駅から徒歩すぐのなんだかおしゃれな地域。A1、A2…とブロックごとに名前のついた一角にあるB10 Liveという名前のライヴ会場は、何故かB10ブロックではなくC2ブロック全部を占める、思ったより大きなハコだった。橋城北はうちから電車一本で行けるものの、万が一迷うといけないと思ってかなり早めに家を出ておいてよかった。改装工事中だったB10ブロックにまずたどり着いたときには、一体何がおこっているのかと焦ってしまった。

そうして迷いながらも開場の1時間も前にB10 Liveに来てみてびっくり。もう既に何十人も並んでるよ。整理番号も何もないから、とにかく並んだ順に入場。慌てて近くのバーで重慶の辛い麺と生ビールを腹に入れ、会場に戻って列の最後尾に並ぶ。これじゃ、ちょっと期待していた最前列なんてとんでもないな。

開場時刻の20時になる結構前(10〜15分ぐらい前かな)に、列がどんどん動き出す。きっと、あまりに列が長すぎて、早めに開場することにしたんだね。綺麗な作りのロビーに入っていくと物販エリアがあって、おなじみのタマスのCDと並んで見たことのない安っぽいジャケの09年北京公演のCD/DVDが売っていたから、迷わず購入。見るからに海賊盤ぽいんだけど、ちゃんとポケットレコーズから出てるオフィシャル盤なんだね。おまけにバッヂももらえてうれしい。

DSC03242.JPG


だだっ広い会場に入っていくと、もうステージ前には人がびっしり集まっていて、左右の壁に沿って置いてある椅子もほとんど埋まっていた。まだ開演まで30分以上あるし、中途半端に真ん中あたりで見るよりはいいかと思い、左側の壁沿い中ほどの椅子に腰かけて待つことにした。会場の広さは、そうだな、東京でいつもタマスが使う会場で言うと、O-nestを縦に三つつなげて、天井を体育館並みに高くしたぐらい?

その大きな会場が、開演時刻の20時半近くになるともうほぼ満員。後ろの方に若干の余裕があったとはいえ、あれはたぶん600〜700人ぐらいは入っていたんじゃないかな。もちろん、座ってる僕の目の前にももうたくさん人が来ていたので、とても座ったままじゃ観られない。

ステージを見ると、マイクスタンドが2本、アコギとエレキ、キーボードが左右2台、後ろにはドラムキットもある。事前にどのサイトを見ても参加メンバーがわからなかったから、きっと今回はタマスのソロかと思っていたんだけど、バンドなんだね。ドラムまであるということはネイサンも来ているだろうし。あとは、前回来日時と同じくアンソニーとクリスかな。それともギターはキムかな。

20時30分ちょうどに中国語と英語でアナウンスがあり、会場が暗転。ものすごい大歓声に迎えられて、タマスと2人のメンバーが登場。ネイサンはドラムキットのところでなくステージ右手に行き、置いてあったフェンダージャガーを肩にかける。ドラムの人は誰だろう。新メンバーかな。アンソニーもクリスもキムもいないや。結構長く伸びた髪の毛をきちんとセットし、グレーのジャケットを着たタマスは、いつものマーティンのアクースティックギターを持ってステージ中央に。

DSC03217.JPG


オープニングは「Vendredi」。歌い始めた途端、僕のすぐそばで「キャーッ」と大声を張り上げる女性ファン。すごいな、日本でのタマスのライヴじゃ想像もできないよ。何人かはタマスに合わせて歌ってるし。まあ、ステージで何が起こってようとずっと友達同士でしゃべり続けてるようなのもあちこちにいるんだけどね。まあいいや、中国のライヴがこんなんだってのは前からYouTubeとか見てわかってるから、こっちは集中してステージを観てよう。

「Writers From Nepean News」の後、タマスが中国語で自己紹介。「こっちは友達のネイサン。友達は“朋友”でよかったよね?」って言うだけで大歓声。そして「こっちのクリスは友達じゃない」と笑わせる。あ、この新キャラもクリスって名前なのか。タマスたちよりちょっと若い感じかな。彼はドラムス、キーボード、メロディカ、ウクレレ担当。あと例のチーンって鐘も。

DSC03212.JPG


「真夏のメルボルンから南京に着いたら雪が降ってたんだ。深圳はなんていい気候なんだ」とか言いながら、セカンド以降の4枚のアルバムから満遍なく選曲されたセットが進む(セトリは最後に)。新譜からの「The Treason At Henderson's Pier」の後、「最近覚えた曲があるんだ。うまく歌えるかどうか自信ないけど」と言って、なんと中国語の歌を披露。もちろん大歓声。そして見渡す限りのスマホ動画撮影者。後で調べたら、「宝貝(Baobei)」って曲だった。これがオリジナル。これがタマスのあの声で歌われるのを想像してみて。



「誰か二人、ステージに来て手伝ってくれないか。口笛の吹ける人がいいんだけど」というのはもちろん「A Riddle」の時。うち一人はどうやら曲を知らなかったようで、例の口笛のフレーズをタマスが主旋律を歌ってる横でずっと吹いてるもんだから、歌ってるタマスも聴いてるこちらもちょっと苦笑い。まあでも、よくできました。

さっきクリスがいろんな楽器を担当してると書いたけど、もちろん彼が動くときはネイサンも別の楽器を担当する。器用な彼のことだから、ギター、キーボード、ドラムスそれぞれそつなくこなし、タマスの声に合わせてハーモニーを入れる。タマスは基本的にギターで、「Melon Street Book Club」をはじめ数曲でキーボードも弾いてたな。

久しぶりに聴く曲はいくつかあったけど(基本的に彼のライヴを観ること自体が2年半ぶりなので何でも久しぶりなんだけど)、新曲はないし、こんなの聴いたことなかったってのはさっきの中国語の曲だけ。曲の紹介にしても、タマスがまたこの話をし始めたなと思った時点でもう次が何の曲かわかってしまうから、「人間には理性に支配されている面ともっと内面から出てくるところがあって」という話をしたときに、あ、次は「Valder Fields」だと先に読めたんだけど、いざタマスがその曲目を口にすると、それはもうものすごい大歓声。そして、大合唱。うわ、こんなタマスのライヴ初めて。

「Valder Fields」の次に「The Northern Lights」と、僕内タマスソングベスト3のうち2曲みたいなのが続く。残る1曲も今回のツアーで演奏していることは知っていたから、もしかしたら本編終盤のここで3曲続けて演るのかなとも思ったけど、本編ラストはまた「何人かステージに来てくれないか。今度はコーラスが要るんだ」と、「I'm Sorry That The Kitchen Is On Fire」。タマスはもう「次の曲はThe Kitchen Is On Fire」としか言わないね。実話だかどうだか結局よくわからない例の逸話ももう紹介しないし。

男女2人ずつ、それぞれみんな背の高さの違う子たちがステージ左手のマイクのところでスマホに歌詞を映しながらコーラス。違うところから上がってきてたから友達同士じゃなかったんだろうけど、なんだか絵になるね。僕ももっと前にいたら手を挙げてステージに上がりたかったんだけど、残念ながら十数メートル離れたこの壁際から中国人をかき分けて前進する勇気はなかった。いきなり(おそらく)会場内最年長みたいな日本人が出て行ってもみんなびっくりしただろうし。

DSC03205.JPG


それが本編ラスト。3人がステージ脇に消えると、すぐさまアンコールを求める歓声。でもこっちの人は「アンコール!」って言うだけで拍手とかしないんだね。そして、すぐに再登場。タマスはキーボードのところに行き、ネイサンがエレキ、クリスがドラムで始まったのは「Fire Balloons」。僕にとってのタマスソングベスト3の三つ目。これ確か前のツアーじゃ演ってないから、ずいぶん久しぶりに聴くことになる。

そしてこれが、ものすごいバージョンに化けていた。タマスが歌い終えた後、キーボード、ギター、ドラムの三つの楽器がそれぞれ同じフレーズを延々と繰り返しながら、どんどん高揚していく。クリスのドラムなんて、決して上手くはないんだけど、どこのハードロックバンドかというぐらいの激しさ。右腕をぶんぶん振り回して憑りつかれたように叩き続けている。

確か前回のツアーでは、エフェクターを通したクリス・リンチのギターの音と、ネイサンがiPadやらなんやらで出す効果音が不思議な空間を作っていたんだけど、今回はまた違った意味で、聴いているこちらの神経が麻痺してしまうようなドローン効果を生み出していた。まさかタマス・ウェルズのライヴでこんな爆音を聴くことになろうとは。

果てしないと思われた「Fire Balloons」でもう終わりだろうと思っていたら、最後は3人が真ん中のマイクに集まって、タマスのギター、クリスのウクレレ、3人の声だけで「Grace And Seraphim」でエンディング。ああ、これは美しいラストだな。

1時間半があっという間だった。しばらく会場にたむろしていたら、楽器を片付けに来るタマス達に会えるかなと思ってたけど、警備員に追い立てられてしまった。しょうがないので会場の外へ。物販には長蛇の列が。開演前に買っといてよかったよ。

外にもしばらくいたんだけど、たぶんまだ数百名残ってるこの場所でたとえタマス達に会えたとしても、とても話なんてできないだろうから、楽しかった余韻を味わいながら地下鉄の駅に向かった。

DSC03229.JPG


後日談:タマスとネイサンにライヴの感想と撮った写真をメールしたら、2人から「会えると思って終演後に外を探したのに」って言われてしまった。ああ、そうだったんだ、もったいないことをした。新メンバーの名前はクリス・ヘルム(Chris Helm)といって、子供が生まれたばかりのクリス・リンチの代わりの参加だそうだ。でも、クリス・リンチが戻ってきたとしても、もう一人のメンバーよりはキーボードも上手く、ドラムも叩けるクリス・ヘルムが外れることはないんじゃないかな。この先、あの人懐っこいアンソニーに会えることはもうないのかなと、ちょっと淋しくなってしまった。


Setlist 27 November 2016 @ B10 Live Shenzhen, China

1. Vendredi
2. Writers From Nepean News
3. Thirty People Away
4. Lichen And Bees
5. Melon Street Book Club
6. The Crime At Edmond Lake
7. The Treason At Henderson's Pier
8. 宝贝
9. A Riddle
10. Signs I Can't Read
11. England Had A Queen
12. Never Going To Read Your Mind
13. Bandages On The Lawn
14. Moonlight Shadow
15. I Left that Ring On Draper Street
16. The Opportunity Fair
17. For The Aperture
18. Valder Fields
19. The Northern Lights
20. I'm Sorry That The Kitchen Is On Fire

[Encore]
1. Fire Balloons
2. Grace And Seraphim
posted by . at 15:07| Comment(3) | TrackBack(0) | アルバム | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする