2015年09月14日

期待値超え - Squeeze

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Squeeze 『Cradle To The Grave』

もうほとんど休止状態だったこのブログを半年ぶりに更新してみようという気にさせてくれたのは、今年の3月のグレン・ティルブルックの来日公演だった。そして、それ以前もその後も、もはや自分が行ったライヴの記録メモとしてしか機能していないここに、調べてみたら2年8か月ぶりにアルバムについて書いてみたい、いや書かずにおれないと僕を奮い立たせたのも、やっぱり同じ人(たち)だった。

新曲からなるオリジナル・アルバムとしては1998年の『Domino』以来17年ぶりとなるスクイーズの新作。2007年の再結成以来、過去曲の再録やライヴ盤、ライヴ会場での録音即売盤、デモ音源集など、マメに追いかけようと思ってもとても全部は集めきれない(特に膨大な数の即売盤)ほどのアイテムが出ていたし、グレンはその間も何度も来日してくれていたから、17年なんてブランクはもちろん感じなかった。

あのときのメンバーをスクイーズと呼ぶのが適切なのかどうかいまだによくわからない『Domino』は申し訳ないけど中途半端な出来のアルバムだった。そして、今回のアルバムに収められることになるいくつかの曲の原型は、2012年の即売盤やデモ集、そして今年初頭のグレンのソロライヴでも披露されていたから、ある程度の内容は想像がついていた。またしても申し訳ないけど、どの曲の原型を聴いてもまあそこそこの出来だよね、という程度の感想しか持っていなかった。

8月13日にスクイーズのサイトでこのCDが1000枚限定で発売されるとの告知。何が限定なのかさっぱりわからなかったけど、躊躇なく注文。送料も含めるとべらぼうな値段になったけど、しょうがない。これまでも決してセンスのいいジャケばかりじゃなかったスクイーズの歴代のアルバムの中でも群を抜いて酷いジャケだけど、それもしょうがない。なんだかわからないけど限定らしいから、またこれが入手不可能なんてことになったらえらいことになる。

先週末、出張から戻ってきた僕の目の前には、見覚えのあるQuixotic Recordsのロゴの入った封筒が。やった、届いた。8月28日の発送開始から約二週間だから、たぶん日本では一番早く入手できた中の一人なんじゃないかな(ドヤ顔失礼)。

上にもリンクを貼ったアマゾンには10月9日発売と書いてある。しかも予定価格は僕がサイトから買った値段(送料込み)の半値ほどだ。むう、限定じゃなかったのか? じゃあ僕の手にしているこのデジパックが限定? それともこのブックレットとは別に入っている切符のレプリカみたいなのが限定? まあなんだかよくわからないけど、とにかくオフィシャル発売の一か月以上も前に入手できたんだからよしとしよう。

さて、ここからは中身について書くから、オフィシャル発売を待って買おうと思ってる人や、スクイーズのサイトからまだ届いてない人で、もしネタバレが嫌ならここで読むのをやめてもらったほうがいいね。


裏ジャケに書いてある全12曲中、これまでなんらかの形で聴いたことのあるタイトルは「Cradle To The Grave」、「Beautiful Game」、「Top Of The Form」、「Haywire」、「Honeytrap」、そして、アルバム先行シングル(盤は出てないけど)としてPVが出回った「Happy Days」の6曲。今年のグレンのソロライヴで、ニューアルバム用の曲と言って演奏した何曲かのタイトルがないね。

いろんな形でもう何度も聴いてきたオープニングの「Cradle To The Grave」の、これは新録。そこから間髪入れずにどんどん曲が繰り出されてくる。初めて聴く「Nirvana」も悪くない。グレンのライヴで聴いた「Beautiful Game」がこんなにいい出来に仕上がってるなんて。そして、久々にスクイーズらしいシングル曲「Happy Days」。

10月に出るLPは2枚組で、ここに収められた12曲がA〜C面に4曲ずつ収録されるのにリンクして、このCDでもそれぞれ4曲ずつがほとんど曲間なしでつながっている。スクイーズにしては珍しい作りだね、こういうの。でも、そういうつなぎも曲順もよく練られてるよ。プロデューサーがグレンとローリー・レイサムだけど、ローリーのいつもの過剰なまでの装飾音とかはうまく抑えられてる。ちなみにLPのD面はボートラ4曲収録予定。

一昨年に出たグレンの『Happy Ending』がやっぱりグレン本人とローリーの共同プロデュースで、正直言わせてもらうと僕にはあのアルバムはそこそこの出来の曲をローリーならではのオーバープロデュースでなんとかやっつけた、若干いただけないアルバムだった。大好きなグレンのアルバムをけなしたくはないんだけど。すごくよかった来日公演のメモリアル盤でもあるし。

でも、今回のアルバムは曲と音作りのバランスが非常によく取れている。さっき書いた曲間のつなぎはあくまでもさりげなく、余計な音はきっぱりと省かれて、そしてなによりも、やっぱり曲がいいよ、今作は。いや、そりゃ「Another Nail」とか「Up The Junction」みたいなのが入ってるかと言われたら、そんなのは最早ないものねだりに近いから無茶言うなってなもんで。それでも、この12曲中、少なくとも半分は僕はライヴで何度も繰り返して聴いてみたくなる曲ばかりだ。そんなバランスのアルバムをスクイーズが出したのって、一体いつ以来だ?

音の感触が何かに似ていると思ったら、『Pandemonium Ensues』だ。ああ、それで僕はこのアルバムを一回目からこんなに好きになってしまったんだな。なんでそんなに似てるんだろうと思ったら、あ、そうか。演奏メンバーがほぼ同じなんだよね。ベントレーが辞めて代わりのベーシストがルーシーになったと聞いたときにはあまりにも予定調和というか、またクリスが拗ねて辞めてしまうんじゃないかと危惧してしまったもんだけど、たぶんサイモンとスティーヴンにとっては、ルーシーのベースの方がしっくりくるんじゃないだろうか。きっと、グレンも。

演奏メンバーが「ほぼ」同じと書いたのも、ブックレットに書いてあるクリスの担当楽器がアコギだけなのに対して、グレンはリードギター、ムーグ、アイパッド、ムーグベース、チェレステ、ティンパニ、ウクレレ、オルガン、パーカッション、ベース、ミニムーグ、シタール、エレクトーン、ストリングス。ついでにスティーヴンはウーリッツァー、ピアノ、オルガン、チェレステ、シンセ、メロディカ。リズム隊の2名は省略するけど、このバンドの音ほぼグレンとスティーヴンで作ってるようなもんだよね。

演奏面でクリスの影が薄いのは今に始まったことじゃないけど、今回ちょっとあれ?と思ったのは、歌詞があまりにもストレートなこと。「Happy Days」なんてPVで観たときにクリス作だなんて信じられなかったほどのあっけらかんとした能天気な歌詞。きっとどこかに僕が聴きとれなかったオチがあるに違いないとブックレットを追ってみたけど、肩すかし。変化球を待って打席に立っていたら、予想外のストレートで見逃し三振。みたいな感じ。

強いて言えば、若者のリビドーを描いた「Haywire」なんかはいかにもクリスが書きそうなタイプの曲かもしれないけど、それにしても彼がこれまでに書いてきた数々のDVや離婚やアル中や猟奇殺人についての曲に比べると、おとなしいよね。まあ、まだ歌詞までじっくり読みながら聴いたのは数回だけだから、これからちょっと深読みしつつ繰り返して聴いていこう。

2012年以降にいろんな形で聴いてきた曲が沢山と書いたけど、曲がりなりにもシングル扱いだった「Tommy」がないなとは思ってたんだ。だから、LPで言うところのB面ラスト、これも新録の「Top Of The Form」の次にあのお馴染みのストリングスが聴こえてきたときにはびっくりした。「Sunny」って、タイトル変えたのか。このアルバムはBBCの同名ドラマのサントラということだから、その登場人物か何かにちなんで変えたんだろうか。これからライヴでこの曲を歌うときは、どっちの歌詞で歌うんだろう。

すっかりかっこよくなって出直してきた「Honeytrap」(デモ集のときは二単語だったのに、微妙にタイトル変更)に続いての「Everything」ってなんか聴いたことある。と思ったら、これグレンがライヴで演ってた「You」じゃないか。歌詞も替わって、タイトルも変更したんだね。

なので、グレンが年初にライヴで披露したにもかかわらず結局ボツになったのは、「Wait」だか「Weight」だかタイトルがわからなかった、ピアノで弾き語りをした曲だけ。結局あの曲名の謎は解けないままか。このアルバムのアウトテイク集が出るのは何十年後のことだろう。

ふう、もうだいたい書きたいことは書いたかな。まだ届いて二日で10回も聴いてないから、これから聴き込んでいったらまた新たな発見とかあるかも。感想も変わるかもしれないし。そのときは追記しよう。

そうそう、ひとつ嬉しく思った発見があった。ブックレットの最後、山ほど書いてあるサンクスクレジットの中に、ジュールズ・ホランドの名前が。しかも、クリス単独のところじゃなくてグレンとクリス連名のところに。なんかちょっと歩み寄りがあったのかな。聞くところによるとジュールズのレイターにスクイーズが出演するらしいから、激久し振りにジュールズ入りスクイーズの演奏が観られるんだね。はやくネットに上がらないかな。


posted by . at 23:29| Comment(0) | TrackBack(0) | アルバム | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする