2015年09月27日

Gareth Dickson live in Tokyo

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以前この近くに住んでいたことがあるので懐かしい思いをしながら歩いてたどり着いたんだけど、砧公園というのは本当にどこの駅からもちょっとした距離があるよね。前日までの雨がやっと止んだのは幸いだったけど、会場の世田谷美術館に着くころにはちょっとシャワーでも浴びたいほど汗をかいてしまっていた。

前日にはなかったガレスの『The Dance』という2010年発売のインストアルバムが数枚物販に置いてあったので、なくなってしまう前にゲット。なにしろ前日に、そこそこの枚数があったヴァシュティ・バニヤンのLP数種が開場直後にまたたく間に売り切れてしまったのを目撃しているからね。案の定、この日も開演時刻の14時になる前に『The Dance』はもう売り切れてしまっていた。

リハーサルがちょっと押しているという話だったけど、なんとか定刻の14時にドアが開いた。いい整理番号だったから好きな席を選べたけど、なんだかやけにステージから客席までの距離が遠い会場だな。ゴーティ基準で言うと、ステージからトイレぐらいまでの距離があるんじゃないか(ゴーティに行く人にしかわからない単位)。

オープニングアクトはmoskitooという背の高い日本人女性。「5曲聴いてください」と言って始めたけど、抽象的なインスタレーションに時折ウィスパーヴォイスを乗せながら延々と続く音像は、どこでどう4回途切れたのかよくわからなかった。

ガレスが登場したのは、15時20分ぐらいだったかな。さっきのmoskitooのときもそうだったけど、演奏が始まるときに一瞬会場が完全に真っ暗闇になってしまうのがちょっとびっくりする。そして、前日の品川教会同様に演者のすぐ前にある暖かい色の電球と、前日ほど豪華ではないものの、ステージ上のスポットライトをうまく組み合わせた照明がガレスの演奏に色を添える。

簡単な挨拶の後、何も言わずに弾き始めたのはライヴ盤『Invisible String』のラストを飾っていた(そのアルバムタイトルを歌詞に持つ)「Amber Sky」。続いては、同じアルバムの1曲目だった「This Is The Kiss」と、そこまでは曲順を覚えてるけど、あとはちょっと自信がない。

前日に品川教会で一曲だけ披露されたあの雰囲気をそのまま持ってきた感じ。深いリバーブのかかったギターの音に、クルーナーヴォイスといってもいいぐらいのガレスの声。どちらの手の指もそんなにせわしく動いてるわけではないのに、すごく細かいテクニカルなフレーズが次々に出てくる。最前列(といっても5メートルぐらい距離があるけど)から観ていても、いったいどの弦を弾いてひとつひとつの音を奏でているのかよくわからない。

歌うとき以上にボソボソと、かなりグラスゴー訛りの強い喋り方をするガレスだから、僕も何を言ってるのかわからないことが多々あったし、一体会場にいた人たちはどれだけ内容を理解していたんだろうと思う。ガレスも自分で「僕がなにを言ってるかわからないだろう」とか「曲の合間にもっとストーリーを話せばいいんだろうけど、思いつかないしどうせ理解できないだろうから」とかいやに自虐的に喋ってたね。きっと、英語圏ですらあちこちで何言ってるかわからないって言われるんだろうね。

「カバーを演るよ、ジョイ・ディヴィジョンの」と言ったときにちょっと会場がざわっとなり、「でもLove Will Tear Us Apartじゃないよ」と牽制してから弾き始めたのは「Atmosphere」だった。これはよかった。ニック・ドレイクのカバーもそうだけど、よく似せてあるのにしっかりと自分のバージョンにしているところがすごいよね、この人。

今制作中だというニューアルバム用の新曲を3曲ほど披露。これがまた、どれもいい曲だった。曲名なんて一切紹介しないし、歌詞もよく聞き取れないから、タイトルはどれもわからないけど、2曲目、3曲目などはまるで極限まで手の込んだ硝子細工を音に変換したものを見ているような気持ちで聴いていた。

それにしても、演奏中に写真を撮りたくなる気持ちはわかるけど(僕も撮っていたけど)、こんなに静かな音楽の最中に携帯のシャッター音や電子音をカシャカシャピコピコ鳴らすのは止めてほしいよ。写真撮るならもうちょっと音がならない工夫してくれないかな。会場にはプロのカメラマンが二人入っていたけど、どちらも演奏中はシャッター音を鳴らさないようにしてくれていたよね。素晴らしいライヴだったけど、それだけが気になった。

本編ラストは何だっけな。イントロのメロディーが「さくら」に似た「Technology」だったかな。とにかく「時間を計ってないからわからないけど、たぶんあと1曲で終わりだと思う」と言って演奏し、挨拶をして出て行ったと思ったら、ほぼ間髪入れずに戻って来てアンコール。「拍手が鳴り止むといけないから」と笑わせる。アンコールは、前日にも演ったヴァシュティ・バニヤンもお気に入りの「Two Trains」。

アンコール込みで1時間ちょっとの短いライヴだったけど、しっかり堪能させてもらった。終わって電気が点いて、ドアを開けたらまだ明るい夕方だったのがすごく違和感があったほど、どこか別世界に連れていかれていたかのような1時間だった。

サイン会が始まる前にアルとヴァシュティに挨拶をしていた僕のところ(というかヴァシュティたちのところ)に来たガレスと少し話す。今度はジョイ・ディヴィジョンのカバーアルバム作ってみれば?と言ったら、「他ににあんまり知らないからなあ。次のアルバムには“ジョイ・ディヴィジョンのカバーは入ってません”って書いておかなくちゃ」なんて言ってた。

ライヴ盤にサインをもらい、ガレスに「また次のアルバムのツアーのときに会おう」と言って、昔住んでいた懐かしい界隈を(またも汗だくになりながら)歩いて帰路についた。

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2015年09月26日

Vashti Bunyan live in Tokyo

一応公開されていたメッセージなので書いていいと思うけど、いつもすてきな音楽を奏でるミュージシャンばかりを呼んでくれているプロモーターの友だちがライヴ会場で人手が足りないと困っていたので、ちょうどその日ならお手伝いできますよと声を掛けてみた。たまたま場所も会社から歩いてすぐの場所だったから、少し早めにオフィスを抜け出せば集合時間に十分間に合うし。

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キリスト品川教会グロリアチャペル。ここでマーク・コズレックを観たのは確か2012年だったかな。雨の中を、約束していた開場時刻の30分前に着いてみると、もう入口の前には十人以上ものお客さんが集まっていた。急遽50枚出ることがアナウンスされた当日券狙いの人たちなのかな。それにしても、開演時刻から逆算すると一時間半も前だよ。熱心なお客さんがたくさんいるんだ。

慣れない手つきでチケットのもぎりをひとしきりお手伝いした後、開演前に「もうお客さんはほとんど入られたから、yasさん中で観てきていいですよ」と言ってくれたので、お言葉に甘えて会場最後列に座らせてもらった。

自分の聴いている音楽のジャンルが偏っているのかもしれないけど、まさかマーク・コズレックよりヴァシュティ・バニヤンの方が日本で、こんなにまで圧倒的に、ファンが多いとは思ってなかった。あのときは最前列から演者までがやけに遠いなという印象だったけど、今回は教会据え付けの椅子では足りずに前後にパイプ椅子を並べてあったのが、全部びっしりと埋まっている。確か300枚ソールドアウトの前売り券に加えて50枚の当日券が出たという話だったから、あれで350人だったのか。前日の東京公演初日も同じ規模でソールドアウトだったから、二日続けて観た人が何人いるのか知らないけど、あの雨の中を、決して便利とはいえない場所にあるこんな会場に駆けつけるファンが東京だけで700人もいるんだね。

定刻の7時を少し回ったところで、ヴァシュティとガレス・ディクソンが並んで現れる。広いステージの真ん中に向い合せるようにぽつんと置いてある二つの椅子に、ヴァシュティが向かって左側、ガレスが右側の位置で座る。二人のちょうど真ん中にセットしてあった暖かい色合いの電球や、真上からのスポットライト、あちこちにちりばめられた小さな豆電球(LEDかな?)など、ライティングのとても素敵なライヴだった。背面の壁の大きな十字架を照らして影を作っていたのも不思議な雰囲気の演出でよかったし。

一曲目は「Here Before」、二曲目は「Just Another Diamond Day」だったと思う。申し訳ないけど、彼女のアルバムをそんなに熱心に聴いてきたわけではないので、その後なんていう曲を何曲演ったかはあまりよく覚えていない。でも、それぞれの曲の演奏を始める前に、たぶん日本人にもわかるようにとてもゆっくりと丁寧に、それらの曲の成り立ちとか作ったときの思い出なんかを説明してくれていたから、ほとんど歌詞はわからなくてもすっと感情移入して聴くことができた。

もう70歳だなんて思えないほど、1970年のアルバムで聴ける声とさほど遜色のない透き通ったヴォーカル。彼女自身はそれほどテクニカルなフレーズを弾いているわけではなさそうだけど、それに絶妙にサポートするガレスの巧妙なギター。この大きな教会の豊かな音響効果もあって、シンプルで親しみやすいのにとてもおごそかな音楽が場を満たしていく。

曲が終わるたびに盛大な拍手。そして、小さな声で「アリガトウ」と、たぶん唯一覚えた日本語でほんとうに嬉しそうにお礼を言うヴァシュティ。隣でにこやかに見守るガレス。ときどきヴァシュティが話しかけて会話になったとき以外は彼はほとんどしゃべることはなかったけど、今回唯一のソロ公演である今日の自分のライヴ会場の場所をヴァシュティに聞かれたときに「世田谷」とちゃんと発音できていたのが印象に残った。

1966年に出したというシングルは、「Train Song」という曲だね。この人がシングルを出していたなんてことも知らなかったけど、本人も「ラジオ局に何枚か配られたけど、ほとんどオンエアされることがなかったので、誰も聴いたことのない曲」なんて自虐的に笑わせてたね。シングル曲といっても別にそんなにキャッチ―な感じというわけでもなく、あくまでもいつもどおりの彼女の優しいメロディの弾き語り曲。

セットリスト的にはこの位置だというのはライヴ後に言われてわかったんだけど、「Train Song」に続いてガレスのソロコーナー。ヴァシュティがガレスのことを紹介し、彼といつどうやって知り合ったかなんて話をしばらくした後、彼女が初めて聴いて気に入ったという「Two Trains」を演奏。ほぼガレスの弾き語りに、ときおりヴァシュティが小さくコーラスを入れていた。

実を言うと僕はどちらかというと今回の来日ではガレスを観るのが目的で、今日のソロ公演もまっ先にチケットを押さえたぐらいだったから、あるとは思っていなかったこの一曲だけのソロコーナーは嬉しいサプライズだった。ニック・ドレイクを例えに出すのはあまりにもベタだとは思いつつも、きっとニックが演奏するのを目の前で見たらこんな感じなんだろうと思わせる、素晴らしいギターと落ち着いた声。

あの満員のお客さんのうち彼のことをちゃんと知っていた人がどれだけいたのかわからないけど、きっとあれを聴いて今日のソロ公演に行ってみようと思った人も多かったんじゃないかな(実際、終演後に物販のところにいたら、ソロ公演を予約したいという人やガレスのソロアルバムをいろいろ質問しながら買っていく人が何人もいた)。

たしか本編ラストは「Heartleap」だったかな。彼女の娘さんが描いたというジャケットの鹿の絵の話から、ずっと頭の中に流れていたというメロディをこの曲に仕立て上げ、鹿の絵のタイトルを少し変えてこの曲につけたというくだりを話してくれた。

丁寧なお辞儀をして出て行った二人を、当然の如く大きなアンコールの拍手が呼び戻す。アンコールはなんて曲だったかな(もしかしたらアンコールが「Heartleap」だった?)。一曲だけ演奏して、また楽屋に戻ったところを、さらに大きな拍手。

「もう演奏できる曲がないから」と、「Just Another Diamond Day」をもう一回演奏して、この日のライヴは終了。二回のアンコールを入れても、一時間ちょっとの短いライヴだった。だけど、実感としてはもう一時間も経ったのかと思えるほど充実したライヴだったと思う。

そこから先があんなに長い夜になるとは。終演後に会場の出口のところでサイン会が行われたんだけど、たぶん350人のお客さんのほとんどがそれに参加したんじゃないかと思えるほどの長蛇の列。たぶん時間制限のためか、写真撮影は禁止という話だったんだけど、それでもヴァシュティはひとりひとりと話しながら丁寧にサインをしているから、長蛇の列が一向に減らない。結局、会場の撤収なんかも少し手伝いながら列のほぼ最後尾で僕もガレスとヴァシュティにサインをもらったのは、終演後のほぼ二時間後だった。ライヴ自体もそうだけど、70歳の彼女によくあれだけのサイン会をこなせる体力と気力と笑顔が残っているもんだ。

そこまでダラダラいたおかげで、ヴァシュティとガレス、それに一緒に来ていたヴァシュティのパートナーのアルと少し話をする機会ももらえた。ガレスに「ライヴで一曲だけ演奏できるとしたら、いつもあの曲(「Two Trains」)なの?」と訊くと、ヴァシュティが「あれは私がすきな曲だから。私が親分だから決めていいの」と冗談をいい、アルが「ヴァシュティのTrain Songに続けての演奏だから、Two Trainsがぴったりだろう」とフォロー。なるほど。

もうあと何時間かで支度して家を出ないと。砧公園の世田谷美術館というライヴ会場としては一風変わった場所で、2時開場というこれまたやけに早い時刻のライヴ。なんでも、美術館が5時に閉まってしまうから、それに十分間に合うような時間設定だとのこと。昨日一曲だけ観られたあのガレスの独特の世界を今日はたっぷり堪能してこよう。ヴァシュティとアルも観に来るって言ってたから、どこかでまた会えるかな。

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2015年09月14日

期待値超え - Squeeze

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Squeeze 『Cradle To The Grave』

もうほとんど休止状態だったこのブログを半年ぶりに更新してみようという気にさせてくれたのは、今年の3月のグレン・ティルブルックの来日公演だった。そして、それ以前もその後も、もはや自分が行ったライヴの記録メモとしてしか機能していないここに、調べてみたら2年8か月ぶりにアルバムについて書いてみたい、いや書かずにおれないと僕を奮い立たせたのも、やっぱり同じ人(たち)だった。

新曲からなるオリジナル・アルバムとしては1998年の『Domino』以来17年ぶりとなるスクイーズの新作。2007年の再結成以来、過去曲の再録やライヴ盤、ライヴ会場での録音即売盤、デモ音源集など、マメに追いかけようと思ってもとても全部は集めきれない(特に膨大な数の即売盤)ほどのアイテムが出ていたし、グレンはその間も何度も来日してくれていたから、17年なんてブランクはもちろん感じなかった。

あのときのメンバーをスクイーズと呼ぶのが適切なのかどうかいまだによくわからない『Domino』は申し訳ないけど中途半端な出来のアルバムだった。そして、今回のアルバムに収められることになるいくつかの曲の原型は、2012年の即売盤やデモ集、そして今年初頭のグレンのソロライヴでも披露されていたから、ある程度の内容は想像がついていた。またしても申し訳ないけど、どの曲の原型を聴いてもまあそこそこの出来だよね、という程度の感想しか持っていなかった。

8月13日にスクイーズのサイトでこのCDが1000枚限定で発売されるとの告知。何が限定なのかさっぱりわからなかったけど、躊躇なく注文。送料も含めるとべらぼうな値段になったけど、しょうがない。これまでも決してセンスのいいジャケばかりじゃなかったスクイーズの歴代のアルバムの中でも群を抜いて酷いジャケだけど、それもしょうがない。なんだかわからないけど限定らしいから、またこれが入手不可能なんてことになったらえらいことになる。

先週末、出張から戻ってきた僕の目の前には、見覚えのあるQuixotic Recordsのロゴの入った封筒が。やった、届いた。8月28日の発送開始から約二週間だから、たぶん日本では一番早く入手できた中の一人なんじゃないかな(ドヤ顔失礼)。

上にもリンクを貼ったアマゾンには10月9日発売と書いてある。しかも予定価格は僕がサイトから買った値段(送料込み)の半値ほどだ。むう、限定じゃなかったのか? じゃあ僕の手にしているこのデジパックが限定? それともこのブックレットとは別に入っている切符のレプリカみたいなのが限定? まあなんだかよくわからないけど、とにかくオフィシャル発売の一か月以上も前に入手できたんだからよしとしよう。

さて、ここからは中身について書くから、オフィシャル発売を待って買おうと思ってる人や、スクイーズのサイトからまだ届いてない人で、もしネタバレが嫌ならここで読むのをやめてもらったほうがいいね。


裏ジャケに書いてある全12曲中、これまでなんらかの形で聴いたことのあるタイトルは「Cradle To The Grave」、「Beautiful Game」、「Top Of The Form」、「Haywire」、「Honeytrap」、そして、アルバム先行シングル(盤は出てないけど)としてPVが出回った「Happy Days」の6曲。今年のグレンのソロライヴで、ニューアルバム用の曲と言って演奏した何曲かのタイトルがないね。

いろんな形でもう何度も聴いてきたオープニングの「Cradle To The Grave」の、これは新録。そこから間髪入れずにどんどん曲が繰り出されてくる。初めて聴く「Nirvana」も悪くない。グレンのライヴで聴いた「Beautiful Game」がこんなにいい出来に仕上がってるなんて。そして、久々にスクイーズらしいシングル曲「Happy Days」。

10月に出るLPは2枚組で、ここに収められた12曲がA〜C面に4曲ずつ収録されるのにリンクして、このCDでもそれぞれ4曲ずつがほとんど曲間なしでつながっている。スクイーズにしては珍しい作りだね、こういうの。でも、そういうつなぎも曲順もよく練られてるよ。プロデューサーがグレンとローリー・レイサムだけど、ローリーのいつもの過剰なまでの装飾音とかはうまく抑えられてる。ちなみにLPのD面はボートラ4曲収録予定。

一昨年に出たグレンの『Happy Ending』がやっぱりグレン本人とローリーの共同プロデュースで、正直言わせてもらうと僕にはあのアルバムはそこそこの出来の曲をローリーならではのオーバープロデュースでなんとかやっつけた、若干いただけないアルバムだった。大好きなグレンのアルバムをけなしたくはないんだけど。すごくよかった来日公演のメモリアル盤でもあるし。

でも、今回のアルバムは曲と音作りのバランスが非常によく取れている。さっき書いた曲間のつなぎはあくまでもさりげなく、余計な音はきっぱりと省かれて、そしてなによりも、やっぱり曲がいいよ、今作は。いや、そりゃ「Another Nail」とか「Up The Junction」みたいなのが入ってるかと言われたら、そんなのは最早ないものねだりに近いから無茶言うなってなもんで。それでも、この12曲中、少なくとも半分は僕はライヴで何度も繰り返して聴いてみたくなる曲ばかりだ。そんなバランスのアルバムをスクイーズが出したのって、一体いつ以来だ?

音の感触が何かに似ていると思ったら、『Pandemonium Ensues』だ。ああ、それで僕はこのアルバムを一回目からこんなに好きになってしまったんだな。なんでそんなに似てるんだろうと思ったら、あ、そうか。演奏メンバーがほぼ同じなんだよね。ベントレーが辞めて代わりのベーシストがルーシーになったと聞いたときにはあまりにも予定調和というか、またクリスが拗ねて辞めてしまうんじゃないかと危惧してしまったもんだけど、たぶんサイモンとスティーヴンにとっては、ルーシーのベースの方がしっくりくるんじゃないだろうか。きっと、グレンも。

演奏メンバーが「ほぼ」同じと書いたのも、ブックレットに書いてあるクリスの担当楽器がアコギだけなのに対して、グレンはリードギター、ムーグ、アイパッド、ムーグベース、チェレステ、ティンパニ、ウクレレ、オルガン、パーカッション、ベース、ミニムーグ、シタール、エレクトーン、ストリングス。ついでにスティーヴンはウーリッツァー、ピアノ、オルガン、チェレステ、シンセ、メロディカ。リズム隊の2名は省略するけど、このバンドの音ほぼグレンとスティーヴンで作ってるようなもんだよね。

演奏面でクリスの影が薄いのは今に始まったことじゃないけど、今回ちょっとあれ?と思ったのは、歌詞があまりにもストレートなこと。「Happy Days」なんてPVで観たときにクリス作だなんて信じられなかったほどのあっけらかんとした能天気な歌詞。きっとどこかに僕が聴きとれなかったオチがあるに違いないとブックレットを追ってみたけど、肩すかし。変化球を待って打席に立っていたら、予想外のストレートで見逃し三振。みたいな感じ。

強いて言えば、若者のリビドーを描いた「Haywire」なんかはいかにもクリスが書きそうなタイプの曲かもしれないけど、それにしても彼がこれまでに書いてきた数々のDVや離婚やアル中や猟奇殺人についての曲に比べると、おとなしいよね。まあ、まだ歌詞までじっくり読みながら聴いたのは数回だけだから、これからちょっと深読みしつつ繰り返して聴いていこう。

2012年以降にいろんな形で聴いてきた曲が沢山と書いたけど、曲がりなりにもシングル扱いだった「Tommy」がないなとは思ってたんだ。だから、LPで言うところのB面ラスト、これも新録の「Top Of The Form」の次にあのお馴染みのストリングスが聴こえてきたときにはびっくりした。「Sunny」って、タイトル変えたのか。このアルバムはBBCの同名ドラマのサントラということだから、その登場人物か何かにちなんで変えたんだろうか。これからライヴでこの曲を歌うときは、どっちの歌詞で歌うんだろう。

すっかりかっこよくなって出直してきた「Honeytrap」(デモ集のときは二単語だったのに、微妙にタイトル変更)に続いての「Everything」ってなんか聴いたことある。と思ったら、これグレンがライヴで演ってた「You」じゃないか。歌詞も替わって、タイトルも変更したんだね。

なので、グレンが年初にライヴで披露したにもかかわらず結局ボツになったのは、「Wait」だか「Weight」だかタイトルがわからなかった、ピアノで弾き語りをした曲だけ。結局あの曲名の謎は解けないままか。このアルバムのアウトテイク集が出るのは何十年後のことだろう。

ふう、もうだいたい書きたいことは書いたかな。まだ届いて二日で10回も聴いてないから、これから聴き込んでいったらまた新たな発見とかあるかも。感想も変わるかもしれないし。そのときは追記しよう。

そうそう、ひとつ嬉しく思った発見があった。ブックレットの最後、山ほど書いてあるサンクスクレジットの中に、ジュールズ・ホランドの名前が。しかも、クリス単独のところじゃなくてグレンとクリス連名のところに。なんかちょっと歩み寄りがあったのかな。聞くところによるとジュールズのレイターにスクイーズが出演するらしいから、激久し振りにジュールズ入りスクイーズの演奏が観られるんだね。はやくネットに上がらないかな。


posted by . at 23:29| Comment(0) | TrackBack(0) | アルバム | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする