2015年04月25日

Pete Donnelly live in Kamakura

また平日の夜。しかも鎌倉。しかも天気予報を裏切って降り出した雨。だけど二年ぶりにピート・ドネリーが来日して、この日が唯一のライヴだというなら、仕事も早々に切り上げて小雨に濡れながらでも行かなくては。幸い、調べてみたら鎌倉まで乗り換えなしで開場時刻直前にたどり着ける電車もあるようだし。

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ゴーティに着いてみたら、まだお客さんはほとんど誰も並んでいない。ピートは中でまだリハ中。階段を上がってきた僕の方を見て目で挨拶してくれる。入口の横には思ったよりたくさんのCDやらレコードやらTシャツが置いてある。『Face The Bird』のジャケT(色違いが三種類)に惹かれたけど、Sサイズしかなく断念。ここに来る前に買うのを決めていた、出たばかりのフィグスの新譜と去年サイトオンリーで出ていたピートのソロ2枚は在庫が十分あるようなので今すぐに確保しておかなくても大丈夫。

開場時刻間近になるとお客さんがぞろぞろと集まってくる。ほとんど、いつもこの同じ場所で顔を合わせる人たちばかりだ。結局、熱心に練習していたピートが荷物をまとめて楽屋(そんなものはないけど)に下がってゴーティのドアが開いたのは、開場時刻を5分ほど過ぎてからだったかな。赤ワインのグラスとゴーティ名物のカレーを注文し、席を確保。

この規模の会場で開場から開演まで一時間というのは結構時間を持て余す。周りは顔なじみの人たちばかりなのでお互いに近況報告などしていたけど、そのうちトイレに行きがてらセットリストを作っていたピートに声をかけてみる。「This Way The Back Doorはできる?」。セトリから顔を上げてにっこり笑うピート。「リクエストしてくれるなんて嬉しいな。その曲は実はライヴでは演奏したことないんだ。歌詞わかるかな」とか言いながら「ほかにリクエストはある?」と聞いてくる。ええと、咄嗟に曲名が出てこないや。ちょっと待って、ウォークマンで好きな曲のタイトルを確認してくるから。

僕が自分の席で次にリクエストしたい曲をチェックしている傍をピートが通り抜け、ギターを持って会場の外に出て行ってしまった。二つ目は「Hear It From Me First」をリクエストしてみようと思って外の階段のところまで追いかけていくと、そこでハミングしながら「This Way The Back Door」を練習しているピート。うれしいな。

「やっぱり歌詞わからないや」と言うから、携帯でピートのサイトに行って歌詞を検索してあげた。「ああ、そうだった。昨日ホテルで自分の曲をユーチューブとかで探そうと思ったけどうまく見つからなかったんだよ。このサイトでよかったのか」とピート。僕が「Hear It From Me Firstもできる?」と追加すると、「もちろん、でも歌詞を見せて」と。「あと、Low Flying Planesってどんな歌詞だっけ」と、次々に僕の携帯で検索するピート(でも結局この曲は演奏しなかったはず)。そのあともいろいろ話題を振ってくれるからしばらく話してたけど、ちゃんと練習してもらわないといけないので「じゃあまた後で」と自分の席に戻る。

開演。借り物だという赤いギブソン330を持ち、まずは「Got Caught Up」から。前回のボジアとのライヴではピートの演奏したかなりの曲がわからなかったけど、今日はどうだろうな。まあ、あれからフィグスのアルバムを集め始めたわけでもないから、ソロ曲しかわからないという僕側の状況は二年前から何も変わってないけど。

案の定、知らない曲がどんどん出てくる。もちろん、知らないからって楽しめないようなタイプの音楽ではないからそれほど気にはならないけど、つい最近全部の曲を知っててどれも口ずさめるようなライヴに行ったばかりだから、そういう意味ではちょっとアウェイ感。

ちょっと静かめな曲が始まったと思っていたら、あ、これは「Hear It From Me First」だ、と気付いた。これもあんまり演奏したことないって言ってたから、少し慎重に、丁寧に弾いていたね。弾き終えた後、「これは彼がリクエストしてくれたんだ」と僕の方を指す。「歌詞がわからないって言ったら、こんな風にささっと携帯で検索してくれたんだよ。それをこの紙に書き写してたんだ」とか。そして、続いて最初にリクエストした「This Way The Back Door」も続けて演奏してくれた。

この日はゴーティの16周年記念ということで、ハッピーバースデイを歌うピート。常連のお客さんの一人もちょうど誕生日だったらしく、16周年記念ケーキのろうそくをその人が吹き消してた。その方と、あと同じくこの日が誕生日だったジム・ボジアの名前もバースデイソングに歌いこんでいた。仲良しなんだね。次はまたボジアと一緒に来てくれればいいな。

ライヴ中に何度も「音大きすぎない?」とか聞きながらアンプのボリュームを調整したり、前日に到着して買ったという日本語のアンチョコを見ながら「たすけて」とか「火事だ」とか言って笑わせる、ほのぼのとした瞬間が続く。ホテルで自分の曲の歌詞をチェックしようとユーチューブを見たら“お住まいの地域ではこのビデオの閲覧は禁止されています”なんてメッセージが出て、「こういうのは誰に文句を言えばいいんだ。圭司か?」とかも言ってたね。

その松本さんに「あと何分ぐらいある?」と訊いて、「じゃあもう一曲だけ演ろう。僕は普段から二部構成のライヴにしてるんだ。でもアメリカでそうするのは、休憩中にみんな帰っちゃうこともあるから危険なんだ」とか言ってたっけ。第一部最後の曲が何だったか忘れたけど、客席を通り抜けて後ろに行くときに僕の肩をぽんと叩いていってくれた。

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10分ぐらいの休憩って言ってたのに、10分経っても全然始まらない。またピートのところに行って、さっきはリクエスト曲演ってくれてありがとうと伝えると、「こちらこそ、リクエストしてくれてありがとう。他にもある?」とまた訊いてくれるから、「えーと、じゃあOriginal Wonderかな」と言ったら、「ああ、それは普段からセットリストに入れてるから、もちろん演るよ」とピート。

「シャーラのことは紹介したっけ?」と、隣に座っていた奥さんを紹介してくれる。「そういえば君って、たしか前に来たときにドライマンゴ―くれた人だよね?」とピート。なんでそんなことを覚えてるんだ?びっくり。「彼女はカリビアンだから、ああいうトロピカルフルーツが大好きなんだよ」って、なんかこの人って、本当にそうやって話してる相手が嬉しくなるような話題をずっと振ってくれるよね。本当にいい人。

「前に、デス・ヴェッセル(Death Vessel)のアルバムのことメッセンジャーで質問したでしょ?」と言うと、「ああ、あれも君だったのか」とまた喜んでくれる。年末に友達の薦め(音楽通のその友達の2014年ベストだというから)で買ってみたそのアルバムのクレジットを読んでいたら、ベーシストがピート・ドネリーという名前だったので、これってもしかして貴方のことなの?って質問してみたら正解だったという話。

ヨンシーが参加して、アレックスがプロデュースしているその『Island Intervals』というアルバムとピートの音楽性がなんとなく自分の中では繋がらなかったんだけど、ピートによるとデス・ヴェッセルだけでなく、その中心人物のジョエルが前にやっていたストリング・ビルダーというバンドからずっと関わってきているんだって。さすがに某友達のお勧めだけあって、すごくいいアルバムだったよ。ピートも薦めてくれたから、ちょっとこのバンド掘り下げてみようかな。

そんなところからまた奥さんも一緒にどんどん話題が広がっていくんだけど、もうこれ以上休憩時間を僕のせいで延ばさせるわけにもいかないので、またそこで失礼して先に席に戻る(まあ、まだ外で煙草吸ってたりするお客さんも多かったから、誰もそんなに気にしてなかったようだけど)。結局、30分近く休憩して第二部が始まった。

リクエストした「Original Wonder」をはじめ、第二部の方が知ってる曲は多かったかな。「Can't Talk At All」では何人かのお客さんが手で膝を叩きながらリズムを取ってるのを見て、「ちょっとそのまま皆で手拍子してよ」と言って、演奏後に「こういうのがほしかったんだ」とご満悦。

「アメリカには車で売りに来るアイスクリーム屋さんがいてね、日本にもいるかな?(僕は知らない。小さいころロバのパン屋は来てたけど、そんな話をしてもしょうがないし)そのアイスクリーム屋の車から聞こえてくるメロディーがすごく印象的だったから、それをイントロに使った」と説明して始めた曲が「Behind The Train」。彼が1999年にカセットで出したというソロアルバムにボートラを追加して去年再発したCD『Another Day On You』から。

「もう一曲、同じアルバムから演ろう」と言って演奏したのが確か「Shooting Away」だったかな。そんな感じで、何かの曲を演奏したら、続けて同じアルバムから演奏することが多かったね。セットリストの写真撮ってくるの忘れたけど、実はかっちりと曲順を決めてたわけじゃなくて、今日自分が演奏できる曲をリストアップしてただけなのかな。それで、その場の気分で連想する曲を順番に演ってたとか。

第二部の途中で、「圭司がベースを弾けと僕にチャレンジするんだ」と言って、フェンダーのムスタングベースに持ち替える。これも常連のお客さんから借りたって言って、何度もお礼言ってたね。そういえば前回も同じベースを使ってて、そのときはボディの裏側にあるブルース・ヒューズとかいろんな人のサインを見せてたけど、今回それらのサインはもうすっかり全部消えてしまっていて、「ブルース・ヒューズはきっとまた来るから、今度は表にサインをもらえばいいよ」とピート。彼自身はこの日の最後にサインしてあげたのかな?

入口のところでLPを売っていた『Badger』というアルバムから二曲(「If I Lose My Heart」と「Smoking A Lot」だったかな。後者は松本さんに捧げるとか言ってた)、そのあともう一曲と言ってイントロを弾きはじめたけど、歌に入るところで歌詞が頭が抜けてしまったようで、咄嗟に奥さんのシャーラが客席から「♪I get the feeling」と歌ってあげて復活。ほほえましい。曲は『Face The Bird』からの「Toodle-oo」。

普段はフィグスで演るときはベースを弾きながら歌ったりしないのかな。確かに単純にリズムをキープするだけというよりは結構テクニカルなフレーズを弾くから、弾き語りをするのは難しいのかもしれないけど、僕は彼のことをベーシストだと思っていたから、ベースをリクエストされてチャレンジングだと言うのにはちょっと驚いてしまった。ギターの弦の押さえ方なんて、かなりベーシストっぽい感じだと思ったんだけどな。

雨が降っていたからか、平日なのに満員を少し欠くぐらいに会場を埋めたお客さんのせいか、もうこの頃になるとかなりの湿気で、窓も真っ白だった。「蒸し暑いね」とピート。「あ、でもここが嫌というわけじゃないんだよ」とまた気を遣う。

「サン・ラーのファンはいる?」と訊いたけど誰も手を上げない。ニューアルバムのタイトル『Other Planes Of Here』は、サン・ラーが自称する宇宙から来たミュージシャンというのに触発されて付けたって言ってたね。そのアルバムからも確か二曲。はっきり覚えてないけど、単独クレジットになっている「Oh My」と「The Cool Down」だと思う。

第二部も後半になってまた「誰かリクエストある?」とピート。間髪入れず「The Trench」と答えるお客さん。調べてみたらフィグスの『Slow Charm』というアルバムからだね。かっこいい曲だった。確かそれで第二部終了。リクエストなんてしなくても演奏するだろうと当然のように思っていたソロアルバムのタイトル曲二曲は結局演奏しなかった。

ステージは降りずに、「まだ時差ボケがひどいんだ」とか言いながら「あと一曲だけでいい?」とアンコールに応えるピート。そこでまたベースをリクエストされ、しばらく迷った後また僕の知らない(たぶんフィグスの)ちょっとスローな曲を演奏して終了。ライヴの最後っぽいムードの曲ではなかったけど、もうあのお疲れピートを見ると誰もそれ以上アンコールしようなんて気にはならなかったようだ。だって、そんなコンディションで、第一部も第二部もびっしり一時間ずつ演ってくれたんだからね。

ステージを降りるときに向こうから握手をしてくれた。たまたま通路のところに座っていたからというのもあるけど、うれしいね。そのまま歩きながら何名かのお客さんとも握手していた(さすがに福岡のグレンのように客席全員と握手するようなことはなかったけど)。

外で煙草を吸ってるピートのところに(吸い終わるのを見計らって)話しかけに行く。「Smoking A Lotを松本さんに捧げるだけじゃなくて、自分でも止めないと」と僕が言うと「もう今じゃほとんど吸ってないんだよ。ライヴの後とセックスの後だけ」とか言って笑うピート。そんな他愛のない冗談も含めて、この日は本当にたくさん彼と話すことができてよかった。別に僕が独占していたわけでなく、他のお客さんともいっぱい話してたから、本当に話好きなんだね、この人は。

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買った三枚のうちから最新のフィグスのアルバムにサインをもらい、一緒に写真を撮らせてもらって会場を後にした。まだほとんどの常連のお客さんは残っていたし、ピートもお疲れモードながら話しかければいつまでも会話を続けてくれたんだけど、平日の鎌倉から終電で帰るというのもちょっとタフなので、名残惜しいけど「今度はフィグスで来てね」と挨拶して、途中まで一緒に帰れる友達と、もうすっかり雨も止んで道も乾いた小町通りに降りて行った。
posted by . at 16:14| Comment(0) | TrackBack(0) | コンサート | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする