2013年09月01日

yascd024 にほんはっけん その後の20年

グレアム・パーカーが来る。78年のルーモアを伴っての初来日はもちろんのこと、93年のソロ公演も観ることのできなかった僕にとっては、30年間彼の音楽を聴き続けてきて初めてのチャンスだ。会場はまあ最高とは言えないけど、文句なんて言ってられない。

日本でこの話題がどれぐらい盛り上がっているのかわからないけど、(日本に限らず)グレアム・パーカーなんてたぶん一般的にはコステロなんかとよく比較されていた初期の数枚のアルバム以降はどんどん忘れ去られてきた存在なんじゃないだろうか。ビルボード4回なんて本当に埋まるのかなとちょっと心配になったりもする(まあ、僕みたいに複数回観るファンもきっと多いんだろうけど)。

93年の来日公演はその年のうちに『Live Alone! Discovering Japan』という、89年の名盤『Live Alone In America』をもじったタイトルのライブアルバムになり、ライヴを観られなかった僕としてはそれは大喜びしたものだ。

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『Live Alone! Discovering Japan』

それからの20年間一度も来日せず、きっと日本のメディアやネットで取り上げられることもほとんどなかったとは思うけど、実際には彼はかなり精力的に活動し続けてきていた。コンスタントに発表されるアルバム以外にも、サイトオンリーの限定ライヴ盤シリーズや何枚も出てくる未発表曲集やベスト盤、クリスマスEPやカバーアルバム、あちこちのレーベルから出てくる発掘ライヴ盤の数々と、全部追っかけるのには相当苦労する量のCDが出ている。今CDラックを見てみたけど、さっきの『Live Alone! Discovering Japan』以前の17年とそれ以降の20年では、最近20年が前半17年の二倍以上の幅になってしまっているよ。

そんなだから、出るCD出るCDほぼきっちり買い続けている僕にとっても、全部をじっくり聴けていないのが実情。初期の発掘ライヴなんて結構どれも同じような選曲で同じような感じだしなーとか贅沢なこと言ったり、最近のアルバムも悪くないんだけどなんか地味、とかろくに聴きもしないで。

こんなことではまずいと、せっかくの来日を機に、前回の来日以降に出たアルバムを集中的に聴きなおしてみることにした。フルアルバムだけでも95年の『12 Haunted Episodes』から去年出た『Three Chords Good』まで8枚。ついでに、それぞれのアルバムから印象的な曲を20ほど集めて、久々のyascdを作ってみることにした。本当は、この8枚以外の未発表曲集とかからも入れたかったんだけど、8枚からだけですでに20曲に絞るのが難しいほどだったからそれは断念。なんだ、最近のアルバムにもしっかりいい曲たくさん入ってるじゃないか。


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『Three Chords Good』

1. She Rocks Me
2. Long Emotional Ride

まずは、去年発表された再結成ルーモアとのこのアルバムからさかのぼっていくことにしよう。ルーモアと袂を分かってからも単体メンバーとはちょくちょく一緒に演ってたから、そんなに仲が悪いという訳じゃないんだろうなとは思ってたけど、やっぱりこうして全員揃うのを見ると感慨もひとしお。ジャケを見ると最初から概ねハゲだったボブ以外もことごとくはげたり白髪だったりするところがもの凄い年月を感じさせるけれど、内容もまたそれなりに円熟味のあるものになっている(グレアムとマーティンの身長差30センチ強というのもこうやって見るとよくわかるね)。

今回の日本公演を終えて帰国したら今度はルーモアとの英国ツアーだというのを聞くと、やっぱりそっちが観たかったと欲が出てしまう。正直言って全12曲中それほどの名曲はなかったと思うけど、今のこのラインアップで初期の曲を演奏するのを聴いてみたい。来年あたり誰かルーモアと一緒に(できればちゃんと立って観られるもう少し安めのハコで)日本に呼んでくれないだろうか。


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『Imaginary Television』

3. Broken Skin
4. Always Greener

10年発表のこのアルバムは、前年の『Carp Fishing On Valium』あたりから色々やりはじめたストーリーテリングの手法を新作アルバムにしてみたという感じだろうか。ブックレットにはそれぞれの曲の歌詞でなく背景のストーリーが書いてあり、それを架空のマスコミが論評しているというような文章がびっしり。まさにアルバムタイトルどおりの『架空のテレビ』。歌詞を全部聴き取れるわけでないこちらとしては、曲とこの文章をそれなりに分離して楽しむしかなく、そういう意味ではちょっと歯痒さの残るアルバムではある。まあ、ちゃんと聴き込めていない自分が悪いんだけれど。


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『Don't Tell Columbus』

5. Love Or Delusion
6. Total Eclipse Of The Moon
7. Somebody Saves Me
8. Bullet Of Redemption

今回の選曲にあたって、07年発表のこのアルバムが一番の難関だった。当初はフルアルバム8枚から2曲ずつ、その他の未発表曲集とか企画盤から4曲ほど選ぼうと思っていたんだけど、全12曲入りのこのアルバムの半分以上が候補に挙がってしまい、ようやくそこから半数に絞ってのこの結果。おかげで、未発表曲とかを入れる案はボツに。間違いなく、この20年間での最高傑作。調べてみたら、このアルバムは日本盤も出たんだね。

逆に言うと、過去5年間に出たアルバムやシングル(と呼べばいいのか、サイトオンリーで発表され続けている単発曲)が、このアルバムのレベルを超えられないでいるという事実がちょっと淋しくもある。まあ、別に才能が枯渇してしまったとか本人にやる気が見られないとかいう話ではないので、またすぐに出るであろう次のアルバム(またルーモアと演るのかな?)を待っていよう。


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『Songs Of No Consequence』

9. Vanity Press
10. Bad Chardonnay
11. She Swallows It
12. Go Little Jimmy

このアルバムのことはかつて少しだけ書いたことがある。主に、このアルバムの後に出たライヴ盤についてだけど。これもまた、2曲には到底絞りきれなかったほどのいいアルバム。ベースを弾いてプロデュースも務めているのが、今年ジム・ボジアと一緒に来日したピート・ドネリー。彼を含めたフィグズのギターのマイク・ジェントとドラムスのピート・ヘイズはこの後もしばらくグレアムと一緒に活動することになる(上に書いた何枚かのアルバム)。

12曲目で全編にわたってハーモニカを吹いているのがG.ラヴだというのが、きっとここ最近で曲がりなりにもメジャーアーティストがこの人のアルバムにゲスト参加した唯一の例じゃないだろうか(昔はスプリングスティーンとか参加してくれてたのにね)。それはさておき、収録曲の歌詞をランダムに並べたこのジャケに惹かれる人はそういないとは思うけど、これはさっきの『Don't Tell Columbus』と並んで、最近のグレアムのアルバムを何か聴いてみようと思う人がまず入るところとして間違いのない盤。


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『Your Country』

13. Queen Of Compromise
14. Crawling From The Wreckage (Revisited)

ブラッドショットレーベル移籍第一弾、04年発表のこのアルバムが、彼の正規盤の中では最も異色作かも。タイトルに掛けているのか、内容はほぼカントリー。正直、僕にとっても一番馴染みの薄いアルバムではある。前作、次作でのピート・ドネリーの替わりにこのアルバムでベースを弾いているのはトム・フロインド。カフェゴーティ絡みのアーティストが多いな。どうせなら、今回グレアムもゴーティで呼んでくれればよかったのに。

このセレクションには入れなかったけど、アルバム中一曲でルシンダ・ウィリアムズがデュエットしてるね。ここにもメジャー級が。14は、言わずと知れたデイヴ・エドモンズに提供したあの曲。ただ、これもまたカントリー調にリメイクしてあるので、あの疾走感を期待するとちょっと拍子抜け。


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『Deepcut To Nowhere』

15. I'll Never Play Jacksonville Again
16. Syphilis & Religion

前作から5年ぶりとなる01年発表、レイザー&タイレーベルからの最後の作品。さっきの『Don't Tell Columbus』もそうだけど、こういうちょっとシリアス系のジャケで来たときの彼の作品にあまり外れはない。きっと5年間じっくり曲を書き貯めていたんだろうなと思える好盤。このアルバムからも、本当は名曲「Blue Horizon」も入れたかったんだけど、それを含んだ最初の選曲だと20曲で80分10秒というCD-Rに入りきらない微妙な感じになってしまったので断念。時間合わせに代わりに入れた16が決して駄曲というわけではないのがこのアルバムの奥の深さを物語っていると思う。


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『Acid Bubblegum』

17. Get Over It And Move On
18. They Got It Wrong (As Usual)

ではこのパーカー史上最もやる気のなさそうなジャケの96年盤はどうかというと、これがそんなに悪いわけではない。ここに入れた2曲をはじめとして、結構初期の名曲を髣髴とさせる激しい曲がいくつもあるし。ベースはルーモアのアンドリュー・ボードナー、ドラムスのゲイリー・バークって誰だっけと思ったら、ジョー・ジャクソンとかと一緒に演ってた人だ。


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『12 Haunted Episodes』

19. Force Of Nature
20. Disney's America

そしてこれが、前回の来日以降最初に発売されたフルアルバム。それまでのデーモンレーベルを離れ、ここからインディーレーベルを転々とすることになる(デーモンをインディーと呼ばなければの話)。スタジオアルバムとしてはこの前作となる92年の『Burning Questions』以来3年ぶり。

『Live Alone In America』以降の名作2枚や、ボートラ(「Substitute」のカバー)入りの日本盤も出た『Burning Questions』とその次の『Live Alone! Discovering Japan』までの快進撃(?)を見ていた身としては、こんなに枯れてどうしちゃったの?というのが当時の正直な感想。でも、今こうして聴き返してみると、しみじみとしたメロディーを持った佳曲が結構揃っている。リンクしたアマゾンでもほぼ捨て値だし、もし買い逃している人がいたら是非にとおすすめしたい。12曲それぞれをイメージしたレトロな写真で構成されたジャケも僕は大好き。


「Don't Ask Me Questions」や「Discovering Japan」が入った初期〜中期のベストアルバムはそれこそ星の数ほどもある人だけど、ちょうどデーモンを離れた時期であるここからの曲はたぶん今までどんな編集盤にも含まれていないはず。それだけに、最近のグレアム・パーカーを俯瞰してみることのできる適当なベスト盤ができたなと自負しているところ。さて、もう2週間後に迫った来日公演では、この時期からの曲もちゃんと演ってくれるかな。
posted by . at 18:38| Comment(7) | TrackBack(0) | yascd | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする