2013年02月20日

2012年個人的ベストアルバム

これを書いてる今はまだかろうじて1月で、ほんとは去年のベストアルバム記事なんて年が明けたらすぐに発表してしまいたかったんだけど、いつもの仲間との年間ベスト10発表会を僕の一時帰国のスケジュールに合わせてもらったもんだから、この記事がオープンになるのは2月中旬のそのイベントが終了してからということになる。まあ、ほとんどの人にとってはどうでもいいことなんだけど、この記事はその発表会で僕があれこれ語るであろう薀蓄の抜粋ということで。

その前に、いつものように去年買ったCD類の集計から。

フォーマット   枚数   対前年
CD          282枚    -4枚
CDシングル     11枚    +2枚
CD+DVD(BD)   6枚     -2枚
DVD Audio      1枚     +1枚
DVD/BD       2枚     +1枚
ダウンロード     1枚     +1枚
LP           23枚    +17枚
シングル       1枚     -4枚
ボックスセット    0箱     -4箱


合計327枚。2010年に300枚を割り込んだのを最後に、また年々買う枚数が増えてきてしまってるな。増えてるのはご覧のとおりほとんどLP。2010年の27枚よりは少ないけど、あのときは大半が100円LPだったからね。去年は殆ど正規の値段で買ってる。やっぱりダウンロードクーポン付きとかがスタンダードになってきているのと、CDというフォーマットがもう凋落の一方で、マニアックな音楽好き向けのLPがどんどん復興しているというのが大きいんだろうね。

枚数は増え続けているけど、一枚あたりの平均単価は過去最低の1,023円。総額も1999年以降の最低額。二十一世紀最安。なかなか財布に優しくてよろしい。箱ものや映像ものをあまり買わなくなってるのも大きな理由のひとつだと思う。そういうのを通して聴いたり観たりする時間がなかなかなくて。もうすでに老後の楽しみにしている箱がうちにいくつも溜まってしまっているからね。もうこれ以上老後の楽しみ溜め込んでもしょうがないし。

では、2012年のベストアルバムについて書こう。正直言って去年は年末近くまでこれぞというアルバムがなかなかなかったのに、12月になってからめぼしいものをまとめて買い込んだら逆に10枚選ぶのにえらい苦労したという、例年のようにその年を代表する超弩級アルバムとそれ以外の9枚という感じではなく、どちらかというと平均的に小粒ながらいいアルバムが10枚というセレクションになった(本当はこの後ろにあと10枚ぐらいあって、2006年以来の20曲入りベストyascdを作ろうかと思ってしまったぐらいなんだけど)。


<第十位>
Craig Finn 『Clear Heart Full Eyes』
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クレイグ・フィンなんて名前を出して一体どれだけの人が反応するのかわからないけど、この人は僕がかつて06年にこのブログで記事にしたホールド・ステディのリードヴォーカリスト。確かそのアルバムはその年のベストアルバムにも選んでるね。二度目の受賞、おめでとうございます。『Boys And Girls In America』以降もずっとこの人たちのアルバムは買い続けていたけど、結局僕にとってはあれがピーク。今回ソロが出たということはもしかしたらもうバンドは解散してしまったのかな。

ソロになってもバンド時代とそう大きく音楽性が変わったわけでもなく、相変わらず70年代前半のスプリングスティーンみたいな歌い方でちょっとやさぐれた感じの曲を歌っている。上にリンクしたアマゾンのレビューでは散々な書かれ方をしているけど、僕はそれとは正反対の印象。地味だけど、ストーリー性満載な歌詞も含めて、聴いていてちょっとしんみりくる大人の味。アルバムタイトルの頭文字は自分の名前と同期させたんだと思うけど、ジャケットにも内ジャケのクレジットにも肝心の自分の名前を全く載せていないというのは、よほど自分が有名だと勘違いしているんだろうか。


<第九位>
The Happy Hippo Family 『Monacoville』
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これがファーストアルバムとなるスウェーデンのバンド。日本盤の紹介のされ方もリードヴォーカリストのちょび髭も今いち僕の好みではないんだけど、その紹介文にもあるように、ペット・ショップ・ボーイズがスカを演奏しているかのようなこのアルバムにはちょっとやられてしまった。このアルバムがどれだけ売れたのかは知らないけど、たぶんこの感じだとこのまま花火みたいに消えてしまうんだろうな。そういう意味ではこれをきちんと発売された年に聴けて、ここに取り上げることができたのはよかった。なんて言って、実はペット・ショップ・ボーイズみたいに何十年も生き残るバンドになったりして。


<第八位>
Bruce Foxton 『Back In The Room』
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少なくともこの名前にはクレイグ・フィンよりも沢山の人が反応するだろう(そうあってほしい)。ブルース・フォクストン、ジャム解散直後の『Touch Sensitive』以来28年振りとなるセカンド・アルバム。当時はジャム関連のものならなんだって集めていた僕だから、12インチシングルも含めてブルースが発表した音源は全て聴いていたんだけど、同時期に秀逸なシングル盤を連発していたスタイル・カウンシルと比較してしまうと、当然のことながらどうにも見劣りしてしまっていた。

今回このアルバムを買ったのも、はっきり言ってしまえば郷愁以外の何ものでもなかったんだけど、そこはもう、フロム・ザ・ジャムなんて開き直ったジャムのコピーバンドまでやってしまっていたブルースのこと、今のポール・ウェラーの音楽に今ひとつ馴染めないでいる僕のようなオールドファンをピンポイントで狙い撃ちしたかのような、あの時代そのままの音。これはちょっと、反則だとはわかっていつつも反応してしまう。ポールもギターとピアノで数曲に参加。大人になったねえ。


<第七位>
The Corner Laughers 『Poppy Seeds』
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全然知らないアーティストだったんだけど、アマゾンでお勧めされたのをきっかけに試聴してみたらよかったので買ってみた。届いたアルバムを開封して内ジャケのクレジットを見てみると、ゲストヴォーカルにマイク・ヴァイオラの名前が。そして、ライナーを書いているのはウェズリー・ステイス。ジョン・ウェズリー・ハーディングじゃないか。そういう系統の人たちだったのか。といっても、マイク・ヴァイオラとジョン・ウェズリー・ハーディングとの共通点が僕には思い浮かばないけど。

どことなくスクールを思い起こさせる、60年代テイスト満載の音。基本女性ヴォーカルに、曲によって男性とのデュエットが絡む。これと一緒に買った、09年のセカンド『Ultraviolet Garden』はポップオーヴァーというレーベルからの発売。先のライナーを読んでみると、ファーストを聴いて気に入ったジョン・ウェズリー・ハーディングがこの人たちのために設立したレーベルだとのこと。彼がそこまでこのバンドを気に入ったというのも驚きだけど、それにもうなずける好盤。


<第六位>
Aimee Mann 『Charmer』
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目立たないけれどいい曲の詰まったいいアルバムをコンスタントにリリースする中堅どころのシンガーソングライターという意味で、僕にとっては去年のベストアルバム第七位に取り上げたロン・セクスミスと似た位置付けの人。せっかくの美人さんなのにジャケットに自分の写真を使うことがほとんどなく、今回もこの、誰の購買意欲をかきたてようとしているのか今いち定かでないイラストジャケ(ひっくり返して見ると別の顔というやつですね)。でもその低いハードルさえ乗り越えれば(笑)、中身はいつものとおり、男前な声でメロディアスな旋律に気の利いた歌詞を乗せて歌っているエイミーがいる。


<第五位>
Green Day 『!Uno!』
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本体のバンドはなんだかどんどん組曲風の大仰な作りのアルバムを発表し続け、ちょっと気軽な曲を演ろうと思ったら変名バンドになりすまさないといけなくなってしまった近頃のグリーン・デイ。いつの間にか4人組になってるな。去年後半は『!Uno!』、『!Dos!』、『!Tre!』と3枚のアルバムを毎月発売するというからまたどんな大仰なことをやってるんだろうと思っていたら、なんとこれがフォックスボロ・ホッタブスのセカンド(とサードとフォース)かと思うような、あるいは昔のグリーン・デイに戻ったかのようなポップなアルバム群。

かつてガンズ&ローゼズが二枚組のアルバムを二つに分けて発売したときに「金のない奴は友達と一枚ずつ買って一緒に聴け」みたいなことを言ってたと思うけど、どうも今回のグリーン・デイの3枚はどちらかというと「おまえら全部聴きたいんだろ?だったら3枚とも全部買え」と言われてるみたいでちょっと金の匂いがしてしまう。とはいえ輸入盤(僕の買ったフィリピン盤も)は行くところに行けばかなりクタクタな値段で手に入るから、3枚全部買ってもさほど懐には響かないはず。

ここでは『!Uno!』だけを取り上げたけど、『!Dos!』にも相当いい曲がいくつか入ってるし、『!Tre!』も(個人的には若干劣るかなとは思うものの)そんなに悪くはない。どちらかというと3枚の合わせ技でのこの順位ということで。もう少し曲を厳選して、普通に二枚組のアルバムにした方がきりっとまとまったとは思うけれど、これはまあ3ヶ月連続発売という話題作りの面が大きかったんだろうね。


<第四位>
Hans Rotenberry & Brad Jones 『Mountain Jack』
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パワーポップファンなら大抵誰でも、ブラッド・ジョーンズの95年作『Gilt-Flake』が家のCDラックに入っているはず。その後もあちこちのアルバムでちらちら名前を見かけてはいたものの、もうリーダーアルバムを作ることはないんだろうなと思っていたら、かつて彼がプロデュースしたことのあるシャザムのフロントマン、ハンス・ロッテンベリーとの共作アルバムを出していた。クレジットを見るとオリジナル盤が出たのは10年のようだけど、ボートラ入り日本盤が出たのが12年の暮れのようなので、入選決定。

パワーポップと呼べばいいのか、一昔前ならオルタナカントリーと呼ばれたような曲もあるし、ちょっとほろ苦いコーラス満載のメロディアスなアルバム。個人的にはツボ突かれまくり。僕も上のような書き方をしたし、日本盤のアーティスト名表記もブラッドが先だけど、ジャケットに書いてあるのはハンスの名前が先。どういう力関係なんだろう。ちなみに日本盤にはエアメールレコーディングス特製のおまけミニシングルが付いていてちょっと嬉しいんだけど、それがアルバム収録曲の同一バージョンだというなんだか喜んでいいのかよくわからない仕様。


<第三位>
Team Me 『To The Treetops!』
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5月の素晴らしかったライヴの余韻もあり、僕の中ではけっこう年末あたりまで去年の年間ベスト1の位置に君臨していたアルバム。このアルバムの前に出たEPに始まり、フロントマンのマリウスがウォンバッツの人と一緒に作ったSin名義のアルバム、それに宮内優里が加わったEPと、去年はとにかくティーム・ミー関連の音源が沢山出たし、どれもこれも質が高かった。創作意欲にかきたてられてしょうがないんだろうね。

もうそのまま1位にしてしまってもよかったんだけど、強いてケチをつけるなら、アルバム中盤ちょっとだれてしまうところがあるのと、大量に追加された日本盤ボートラのせいで聴き通すのがやたら長いことか。決して駄曲が追加されてるわけじゃないからいいがかりも甚だしいんだけど、まとまりという意味ではボートラのない輸入盤の方がいいのかも(なぜかせっかくのキモかわいいコラージュジャケが白黒なんだけど)。


<第二位>
Susanna Hoffs 『Someday』
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1位にしたかったという意味ではこれもそう。ここ数年来の僕の個人的アイドルの彼女が久々にソロアルバムを出したので当然早々に入手したんだけど、これがもう、今までの2枚のソロや再結成バングルスのアルバムを遥かにしのぐ出来。ミッチェル・フルームのプロデュースって言われるほど僕は印象に残っているアルバムはないんだけど、これは音のバランスといい、ストリングスの入れ方といい、かなりいいね。

曲も粒揃いだと思うけれど、やはりなんといってもこの声。前にライヴ評にも書いたけど、なんでこの人はいくつになってもこんな声で(きっと3年前に東京で観たときと変わらない見掛けで)いられるんだろう。いったいどんな魔法を使ってるのかと思う。早々に入手した輸入盤からかなり遅れて、ボートラ2曲入りの日本盤が出たことだけが難点。2200円もするけど、買いなおすしかないだろう。ジャケもいいよね。LPが出たらきっとそれも買ってしまう。来日が決まったら何があっても帰国して観に行く。バージョン違いのシングルとか出たら全部買う。いかん、勝手に自分からアイドル追っかけモードになってしまってる。


<第一位>
中村一義 『対音楽』
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そんな接戦を押さえて昨年度第一位に輝いたのがこれ。ここのところ100s名義のアルバムがずっと続いていたので、随分久しぶりとなる個人名義のアルバム。もちろん初期のアルバム同様、歌も演奏も全部一人で。ベートーベンの九つの交響曲の印象的なメロディーを取り入れた9曲(+アンコール1曲)という企画は、特によく知っている五番や九番なんかを聴くとちょっとあざといかなと感じてしまうこともあり、僕が09年のベストアルバム第二位に選んだ前作『世界のフラワーロード』と比較すると劣ってしまうかなと思ったのも事実。

でも、やはりこの人の書く、初めて聴くのにどうしてなのかいつもほろ苦い懐かしさを感じてしまうメロディーにはどうしても抗うことができない。いつも何を歌っているのか聞き取れない歌詞のことばかり書いているけど、ちょうどウィルコ・ジョンソンの来日時の話を知ったときに聴いていた9曲目「歓喜のうた」の「ちゃんと生きたものに、で、ちゃんと死んだものに、ありがとうって、僕はなんで想うんだろう」という歌詞を聞いて、まだ存命中の彼には大変失礼ながら、泣きそうになってしまった。

ちなみに僕の買ったCD+DVDの映像パートは、1時間にわたるインタビュー(演奏風景あり)。ちょっと何度も観ようと思うようなものでもないかな。よほどコアなファンでなければ、今回のはCD版だけでも十分かも。あと、僕はクラシックはあまり詳しくないんだけど、ベートーベンの曲をよく知ってる人ならもっと楽しめるのかもしれないね。


以上10枚。1月に書き始めたのに書き終えたらもう2月になってしまった。去年は、最初のほうに書いたとおり飛び抜けてすごいアルバムがあったという感じではないから、順位に関しては多分に今現在の気持ちを反映していると思う。少し経ったら順番を並べ替えたくなってるかも。さて、13年に入ってもう何枚かのCDを買い始めているけど(まだ13年発表のものは買ってないけど)、今年はダントツに凄いアルバムは出るかな。噂によるとメルボルンに戻った例の彼が新作を出すとのことだから、とりあえずそれには大いに期待。
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2013年02月18日

Jim Boggia & Pete Donnelly live in Kamakura Pt. 2

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ジム・ボジア&ピート・ドネリー日本公演の最終日。朝っぱらから大船のカラオケボックスに集合し、約半日かけて2012年ベストアルバム発表会を終えたいつもの仲間たちと鎌倉に向かう。駅前で軽く蕎麦など食しつつ、寒風吹きすさむ中をゴーティへ。

日曜の夜だというのに、観客の入りは前日より数割増しといった感じ。店中のベンチや椅子を総動員した上で、最後部は立ち見のお客さんがずらりと並び、身動きも取れないほど。前の方に陣取っているのはいつも見る顔ぶれだけど、あまり見かけないお客さんもちらほらと見かける。きっと、初日の東京公演を観て、もう一度観てみたいと思った人たちかな。なんにせよ、客層が広がるのはいいことだ。

開場から開演まで、またできればジムやピートと話そうかなと思っていたけれど、二人がおそらく腹ごしらえに出掛けてしまったのと、びっしり詰まった座席から身動きするのが大変だったのとで、結局ずっと椅子に腰掛けたまま半時間ほどを過ごす。

腹ごしらえに出かけるときに、ピートがすれ違いざまに「ああ、昨日訊かれた(金曜日の3曲目に演奏した、僕の友達が曲名がわからなくて前日にピートに教えてもらった)カバー曲、昨日教えたルー・リードの曲じゃなかったよ。あれはNRBQの『Kick Me Hard』のCDのボートラ曲だった」と、わざわざ正解を教えてくれる。なんと律儀な。

開演予定の19時を何分ぐらい回った頃だろう、半袖Tシャツ姿のジムと、昨日のスーツとはうって変わってラフなネルシャツ姿のピートが登場。「今日は最終日だし日曜の夜だから長く演るよ」と言いながら、前日と同様にピートのヴォーカル、ジムのベースで開幕。

基本的な進行は前日と同様、二人でベースとエレキとアコギ(これはジムのみ)をとっかえひっかえしながら、お互いの持ち歌を数曲ずつ交互に歌う。演奏している曲自体は前日とそう大きく変わらないけど、曲順を大きく変えてきているね。ジムは前日の後半1曲目だった「Made Me So Happy」を自分のパートの最初に持ってきたのに続き、エンディングの定番曲「Several Thousand」をここで早くも披露。

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前日にはなかった組み合わせが、ジムにアコギを任せたまま、ピートが1曲でピアノを弾いたこと。最後ちょっととちったりしてたけど、随分上手に弾くね。この曲のとき、ジムがギターをマイクスタンドにぶつけてしまい、ピートがびっくりして振り向いたり、ジムのエフェクターの具合がおかしくなったりといったハプニングも。

ジムは前日断念した「Once」を歌ったり、「Three Steps At A Time」を入れたり、常連のファンのリクエストに応えて「O/P」を歌ったりと、前日とは微妙に曲を変えてきている。「次の曲は『I Can Barely Wait』」と言ったときに咄嗟に反応した僕と隣のNさんのことを指差してうなずいたり。それにしても、何故未発表のままなのかわからないほどのいい曲。前日終演後にジムと「次のスタジオアルバムはいつ作るの?」という話をしていて「まだアルバムを作れるほどの曲が書けていなくてね」とやけに消極的だったけど、こんなレベルの曲ばかりが入ったアルバムなら、あと何年でも待つよ。

ピートもフィグスのファンのリクエストに応えて、これまで演奏したことのないというフィグス時代の曲を何曲か披露。でもこの日の(僕にとっての)ピートのベストは、アンコールの最後で手書きの歌詞カードを見ながら歌ったクラッシュの「Train In Vain」だろう。「僕は他人の曲の歌詞を覚えるのがとんでもなく苦手なんだ」と、前日に僕があれこれとリクエストした曲を却下したときと同じく、「僕には脳みそというものがないんだ」なんて冗談めかしながら譜面台を持ってきて歌い始めたけれど、やっぱりかっこいいよな。無理やりな見方をすれば、(若い頃の)ミック・ジョーンズに似ていなくもない。

ジムのパートは、どちらかといえば前日の後半に演奏した曲を前半に持ってきて、前日の前半の曲を最後の方に演ったりしていたけど、ラスト前のこの曲の位置だけは変わらない。すでにライヴのクライマックスの定位置を確保した感のある「Listening To NRBQ」。4フレットにカポをつけて、実に静かに弾き始めるけれど、最初の一音でこの曲とわかり、いつも息を呑んでしまう。本日はラストのNRBQ曲の挿入曲も含め、かなりオリジナルに忠実な仕上がり。

続く「To And Fro」で本編は終了。「最後はロックするぜ!」とか「盛り上がってるか!」とか、散々ロックンローラーぽく叫び、「これで一旦終わった振りをするぜ!」とやはり最後は笑わせる。

その言葉通り、一旦後ろに引っ込んだ後、すぐにジムが再登場。ウクレレを抱え、日本に来てから書いたというヴァレンタインの曲(帰りにタイトル訊いてくるの忘れた!)と、最近彼の別ユニット、マッド・ドッグス&ドミノスで演奏しているレオン・ラッセルの「A Song For You」を。その後、ピートをステージに呼んで、先述のクラッシュのカバーともう1曲を演奏したところで幕。

<追記>
ジムにツィッターでヴァレンタインの曲名を訊いたら教えてくれた。「Candy Heart」。いい曲。

3枚にも亘る手書きのセトリの写真を撮らせてもらってきたけど、またしてもジムが即興で歌った変な歌や、ピートが突然弾き始めたベースラインに合わせてジムも乗ってきた「Tighten Up」なども含めて、どこまでが本日の実際の演奏曲に忠実なのかはもうよく覚えていない。一応参考までに写真を載せておこう。

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アンコールが終わったのはもう22時を大きく回っていただろうか。またしても二人と談笑したりサインをもらったりするお客さんも多かったけど、そろそろ終電に間に合わなくなりそうな人たちがバタバタと帰りを急いでいくのも見える。

そんな感じだから、僕ももうジムにあれこれ話しかけるのをやめておいて、「今度はいつ来るの?クリスマスぐらいかな」みたいに軽くジャブを振ってみたら、「ゴールデンウィークに来るよ」だって。ははは、いいね。「ジムが来るときには僕も必ず飛んでくるから」と、サインと一緒にジャケに書かれても差し支えのない話題に誘導しながらサインをもらう。

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外でタバコを吸いながら他のお客さんと歓談していたピートのところにも(タバコを吸い終わるのを見計らって)行き、サインと写真をもらう。前日に僕がお土産として渡したフィリピン産のドライマンゴのことを「あれすごくおいしかったよ。あっという間に全部食べてしまった」とかわざわざ感想を言ってくれる。写真を撮るときにも、何度も「Nice to meet you」と言ってくれる。もちろんそんなのお世辞にすらならない単なる挨拶だけど、(こんなかっこいい奴に)こんなに嬉しそうに言われると、こっちも心底嬉しくなってしまう。

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あっという間の二日間だった。二人だからその場での咄嗟なリクエストができないとか、ジムの曲がどうしても定番に固まってしまうとか、ジムがちっとも新曲を披露しないとか、リラックスし過ぎたせいか歌詞忘れなどのチョンボが多かったりとか、小さな不満がないわけではないけれど、こんなに楽しいライヴを観られるなら、そんな不満なんて全然たいした問題ではない。ゴールデンウィークなんてとても無理だろうけど、また近いうちに来てほしいな。まあ、僕がマイレージを使い果たしてしまわない程度の頻度でね。
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2013年02月17日

Jim Boggia & Pete Donnelly live in Kamakura Pt. 1

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2013年海外追っかけ企画第一弾。下手な日本人アーティストよりも日本ツアーの回数が多いことで知られるジム・ボジアが、去年の6月以来となる来日公演を行うのに合わせ、マニラから片道4時間(プラス成田〜鎌倉約2時間)の道のりを駆けつけた。今回のツアーは、フィグスのベーシスト、ピート・ドネリーとのジョイント公演。

「フィグスの」とは書いたものの、僕はフィグスのことなんて90年代の一時期にグレアム・パーカーのバックを勤めていたことぐらいしか知らないし、彼が一時的に在籍していたNRBQもろくに聴いていないから、去年出たソロアルバムがほぼ僕の持っている彼の全音源。それなりに予習してきたけど、果たしてどれだけわかるものか。

一週間前の東京に始まり、日本各地でほぼ毎日のように公演をこなしてきた二人の、この週末の鎌倉3Daysが最終公演となる。3Daysとは書いたものの、金曜日の公演はわりと最近になってから急遽発表になった追加公演。二人で(事前リクエストに答える形での)カバー曲だけを演奏するという興味深い催し。くーっ、それを先に知っていたら、マニラからのフライトをあと半日早めたのに。残念ながら僕が成田空港に降り立ったのは、ちょうどそのカバー曲大会が始まったのと同日同時刻だった。

いつものように開場時刻より少し前に鎌倉に集合し、初日の東京公演・前日のカバー曲大会に参加した友達からそのときの様子を聞かされつつ(あの曲もあんな曲も演ったなんて)、事前の腹ごしらえ&アルコール摂取。

ボジアのライヴでよく見る面々と一緒に入場し、カウンター近くでセットリストを作成しながら話しているジムとピートに挨拶。嬉しいことにジムは僕の顔を覚えていてくれたようで、「やあ、来てくれたの」と向こうから声をかけてくれる。「今マニラに住んでいるんだ。このライヴのために飛んできたんだよ」と言うと、サービス精神旺盛なジムらしく、大げさに喜んでくれた。

ピートもセットリストを書く手を休めて向こうから握手をしてくれ、「名前はなんていうの?」と聞いてくれる。「yas」と答えると、ジムが「ああそうだった、Y-A-S-Sだよね?」と言うから、「いや、それは別のYassさん。僕はSが一つ。ややこしいよね」と、その後しばし談笑。

セットリストを指差しながら「今日はリスト決まってるなら、リクエストなんて駄目だよね?」と聞いてみると、ジムが「いや、そんなことはないよ。言ってみて」と言うから、「じゃあ、NRBQの『Me And The Boys』できる?」と聞くと、ジムは「それはお前の担当」と言わんばかりにピートの方を見る。ピートは「うーん、あの曲は歌ったことがないんだ。それにあれほとんどドラムがメインだから」と。「じゃあ、デイヴ・エドモンズのカバー・バージョンがあるよね。あれならギターメインだし」としつこく振ってみるけど、今度までに練習しとくよ、とかわされた。

「それなら、『Chalk One Up For Albert's Side』は?」と聞いてみたら、ジムがその曲がどんな風に二つのコードを同時に重ね合わせて(?)複雑に演奏されているかを説明してくれた。あんまり難しくてここに正確に書けるほど覚えていないけど、「(その曲でメインに使われている)ピアノで演奏するのは無理だけど、明日の昼にギターで練習してみて、できそうなら明日演ってあげるよ」とのこと。「じゃあ、あの印象的なベースはピートに弾いてもらってよ」とさらに無理強い。ピートも「うーん、曲は知ってるけど」とちょっと自信なさげ。果たして、最終日にこの曲を演ってくれるだろうか。

「今回ってほんとに僕らのライヴのためだけに来たの?」と聞いてくれるから、「いや、たまたま翌日にベン・フォールズ・ファイヴのライヴがあるから、それも観てから帰る」と言うと、ジムはBFFがいかにロバート・スレッジがメインのバンドであるかを切々と語りだす。「それに、あのドラマーも凄いよね。名前何てったっけ(ダレンです)ああそうそう、ダレン、あんな凄いビートを叩き出す奴もなかなかいないよ」みたいな。ベンは?「BFF好きなんだ。じゃあ、何かカバー演ってよ」と振ると、0.1秒で「無理。あんなピアノできない」と却下。

明らかにセットリスト作成の邪魔をしているので、「じゃあ、続きはライヴの後で」と、自分の席に戻る。ライヴは、定刻の19時をちょっと回った頃に始まったかな。ちょっと遅れたのは僕のせいでなく、その後もいろんなお客さんと話していたジムのせいだと思う(ことにしよう)。

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まずは、ピートがフェンダーのテレキャスター、ジムが同じくフェンダーのマスタングベースを抱え、ピートのリードヴォーカル曲から開始。予想通り、付け焼刃の知識だとピートの曲名はほとんどわからない。噂通りの阿部寛似。背丈はジムよりちょっと高い程度だから180もないと思うけど、顔が小さい。というか、顔の面積に対してやたら目鼻がくっきりしてるから余計に小さく見えるんだな。ジムのベースは、コードに沿って基本的な音を押さえているだけのようだけど、まあこの人は何をやらせてもサマになるよね。

ピートが2曲歌った後、お互いの楽器を交換して、ジムの「Bubblegum 45s」、さらにジムがピアノに移って「Let Me Believe」、またギターで「Annie Also Run」と定番曲が続く。今回の来日前に、僕がこれまでに見た5回のジムのライヴ(4人編成の1回を含む)で、どの曲を何回演奏したかをリストにしてみたら、「Bubblegum」はソロ公演の4回、「Let Me Believe」と「Annie」は全5回で演奏しているほどの超定番。なんでそんな暇なことをしたかというと、今回はこれまでライヴで聴いたことのない曲をリクエストしてみようと思って(それがあっての「Albert's Side」話)。

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ピートはさすが本職のベーシスト、しかも色んなアーティストのバックを勤めてきた経歴の持ち主だけあって、ジムの曲に合わせて実に綺麗なベースラインを入れる。時折ベースギターを持ち上げるようにして弾くのがまたかっこいいね。まあ、かっこいい人は何やらせてもかっこいいと。

その後もジムがギブソンのアコギにピートがベース(あるいはテレキャスター)など、様々な組み合わせで楽器をとっかえひっかえしてセットが進行する。ジムがアコギのソロで演った曲(確か「Annie」?)のときには、ピートはたまたま空いていた客席に座ってご観覧モード。ゴーティならではの風景だよね。ピートの曲名はなかなかわからないけど、彼のソロ『When You Come Home』で僕が今のところ一番気に入っている「Can't Talk At All」はピート2度目のリードパートで演ったかな。

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お互い(確か)6曲ずつの持ち歌を演奏したところで前半終了。1時間弱といったところか。休憩時間も沢山のお客さんと延々と話しこんでいたジムとピートのせいで、ほとんど30分ぐらいあった途中休憩を挟んで、後半はジムの「Made Me So Happy」からスタート。

アンプの上に無造作に置いてあったセトリのせいで、後半1曲目がこの曲だというのはわかってしまっていたんだけど、次に書いてあった曲名「Once」をちらっと見たジムは、なにやらあやしげな即興曲を歌いだす。「♪このカポをどこにつけよう」「♪この曲にカポはいらないんだった。ピートにあげよう。ピートはカポを使うかな」みたいな可笑しな歌詞を次々に繰り出し、ピートもつられてベースの(結構上の方、11フレットあたり?)にカポをつけて伴奏。ああおかしい。

引き続き、グローヴァー・ワシントン・ジュニアの「Just The Two Of Us」を突然歌いだすジム。ピートも慌ててベースで合わせたりしてたけど、完奏せずに終了。ジムはそのまま(セトリにはなかった)「To And Fro」へ。なんだ、「Once」やらないのか。終了後に訊いてみたら、「あー、今日の喉の調子だと『Once』は無理。最後絶対に声出ないし」だって。「明日演るよ」という言葉に期待。

第二部はピートもフィグスの曲(「Some Desperate Measure」って言った?)などを交えつつ、前半よりもかなりいいペースで進む。僕にとっての後半最初のピークは(さっきのカポの即興曲を別にすれば)、ジムが「昨日のカバーソングナイトではこの曲を演奏しようと思っていたけど演らなかったんだ」と言いながらアコギで弾き始めたポール・マカートニーの「Junk」。ああこれ、いつか機会があればジムに歌って欲しいと思ってたんだ。よくぞ昨日演らないでおいてくれたものだ。大好き、この曲。

そして、後半最大のピークは、ピートが「これは僕が少しの間在籍したバンドについてジムが書いた曲。あのバンドにいられたことはとても光栄だ」みたいなことを話し始めた時に訪れた。もちろん、「Listening To NRBQ」だ。ライヴ前の飲み会で、「前にやった人生の20曲、今の僕ならこれを入れるね」と言ったほどに、僕にとっての存在が大きくなってしまった一曲。いつものジムの弾き語りもいいけど、ピートの雄弁なベースに支えられての演奏は最高だった。

「ああもう、これで終わってもいい」と思ったけど、最後に続けてこれも定番の「Several Thousand」。ちなみにこの最後の2曲も、僕が観た過去のライヴで必ず演奏している超定番曲だ。演奏終了後、「アシタノバン」とか流暢なジムの日本語を交えて一旦ステージ(?)を下りたものの、ほとんど間髪入れずに戻ってくるジム。

この日初めてウクレレを持ち(プラグを挿してアンプにつないだのは今回が初めて?)、これも定番のブルース・スプリングスティーン「Thunder Road」〜「Over The Rainbow」のメドレー。いつ聴いてもいいよね、これ。実はマニラで現地製のウクレレをもらってポロポロ弾いているんだけど、目の前で見ているこの楽器がとても同じものだとは到底思えない。

「すごいね、それ」とか言いながらピートもステージに戻ってくる。「なんて素晴らしい観客なんだ。ここに住みたいよ。あ、それより君たちアメリカに来なよ」みたいなこと言ってる。ジムもいつも言う台詞だね。そりゃ、これだけ密接なライヴができたら、ずっとこれを続けたいと思うよね。僕もそう思うよ。アメリカには住まないと思うけどね。

ピートのソロ『When You Come Home』からタイトル曲を演奏し、一旦下がってまた出てきた二人は、最後にキンクスの「Waterloo Sunset」を。ジムの最新ライヴ盤『Ample Seating Available』とゴーティでのライヴ盤を彼のサイトから買ったらおまけで付いてくるCD-R『Handmade Live Rarities』の最後を飾るカバーだ。そのライヴ盤同様、観客にコーラスを求めるジム。例によってそんな高い声は出ない僕。隣に座っていたNさんは最初からしっかりコーラスを入れて、ジムに指差されてたね。

アンコールも含めた第二部はしっかり1時間以上演ったかな。最後の曲が終わってBGMのCD(最初はブルース・ヒューズの「Several Thousand」だ)が流れ始めてもほとんど誰も席を立たない。やがて、二人にサインを求めに行ったり話しかけたりする人がちらほらと。僕も頃合いを見計らって、持参したCDを持って行く。まずは、友人のRさんが持ってきた『Songs Of No Consequence』(ピートがプロデューサー)をきっかけにグレアム・パーカー話でひとしきり盛り上がる。ピートは「新しいアルバム聴いた?『Three Chords Good』」と熱心に話し出す。確か「Live In Shadows」が一番好きって言ってたかな。「もうグレアムとは一緒に演らないの?」なんて訊いてしまったけど、それは愚問というもの。なんといってもピート自身が「ルーモア再結成だよ。最高だね」なんて言ってたのにね。

僕は、グレアム&フィグスの97年のライヴアルバム『The Last Rock 'n' Roll Tour』のジャケにサインをもらう。裏ジャケの写真を見て、「これは確か20代前半ぐらいの写真だよ。この当時にしてもずっと若い。グレアムがどっかから探してきて載せたんだ」だって。

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その後、ジムのところに行って『4 Way Street』のジャケにサインをもらう。「これって何年のアルバムだっけ、結構古いよね」という話をしていたら、案の定脳内ダダ漏れジムにそのときの会話をそのままサインと一緒に書かれた。ちなみに、開演前にジムが僕と間違えていたYassさんへのサインは「君の名前は少し長いからインクを沢山消費するよ」というものだった。僕とジムがその会話をしていたときにはYassさんはいなかったから、彼にとっては完全に意味不明のメッセージだよね。たまたま帰り道が一緒になったので、説明させてもらった。(僕のせいでは全くないはずなんだけど)なんだか申し訳ないよ。

別れ際に「また明日」と言ってジムと握手をしてゴーティを後にする。実は今回は鎌倉2Daysだったので大船に宿を取ってあるから、もっと終電ぎりぎりまでいてもよかったんだけど、まだ先は長いからというのと、このブログを今晩中に上げてしまいたかったからというので(もう4時過ぎてしまった!)、早々に切り上げることにした。というわけで、明日の最終日につづく。

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