2012年09月30日

ポリ塩化ビニル頭

フィリピンのCD屋さんが意外に充実しているという話は8月8日の記事に書いたけど、ネットで知り合ったとある方のためにフィリピンプレスのアナログ盤を探すことになったときには、はたと困ってしまった。マニラに来てかれこれ2ヶ月、仕事柄あちこちのショッピングモールに出かけるけれど、どこのモールも判で押したように二つのCDチェーン店が出店しているだけで、当然のごとくアナログレコードを置いているような店なんてない。そもそもこの国の人は今でもレコードなんて聴いているんだろうか。

検索してみたら、あった。マニラに一軒、アナログ専門店が。僕の家から車だと30分ぐらいで行ける距離だ。さっそく先週末足を運んでみた。仕事の取引先の人に挨拶に行くたびに「いつ始めるんですか?」と訊かれ続けているゴルフは一向に始める気配もない僕も、こういうことに関してはアクション早いよ。

店の名前はVinylhead Records。二階建ての古びた建物の二階にある、日本で言うと10畳間ぐらいの小さな店。まず、依頼されたフィリピンプレスのシングル盤を探すが、残念ながら見つからなかった。この店のオーナーがアメリカ在住で、そっちから月一で送ってくるのが主な入荷源だそうだ。

続けて自分用に何かあるかなとLP棚をざっと見てみる。ほとんどが80年代にヒットしたアルバムだけど、たまに珍しいものもちらほら混じっている。値札を見ると、だいたいが日本円に換算して1000円前後。東京でレコファンやフラッシュに行けば100円で買えるようなものばかりだけど、もはやそんなところに気軽に足を運べない身には、こういう店の存在はありがたいね。

一時間近くいたけど、最後のほうになって若い客が一人入ってきた以外は、客はずっと僕一人だった。大丈夫なのかこの店。店員は意外にも若い女の子が一人。暇なのか、僕がLP棚をトントンやっているとしきりに話しかけてくる。ジェイムズ・テイラーの『JT』を試聴用プレイヤーに乗せながら「これなんてどう?」。「うん、いいね、それ持ってる」。「じゃあこれは?」「ありがとう、それも持ってる」。という会話がしばらく続く。まあこちらも急いで何か探してるわけじゃないから、しばしお付き合い。

「たくさんレコード持ってるんですね。いつ頃から集め始めたんですか?」「君が生まれる前」。「CDじゃなくてLPを買うのはどうして?」「いやCDもいっぱい買ってるし」。そのうち僕のことを何かの権威だと思い始めたのか、「これはどのジャンルに入れればいいかしら?」とか訊いてくる。

挨拶代わりに2枚ほどお買い上げ。
Gomm With The Wind.jpg The Dream Academy.jpg

イアン・ゴムの『Summer Holiday』、US盤は『Gomm With The Wind』っていうんだね。1979年当時はこの程度のギャグが通用したのか。タイトル見たことなかったからなんか珍しい盤なのかと思って買ったら、ごく普通のUS盤だった。もちろん中身は日本人が『Summer Holiday』と認識しているゴキゲンなアレ。久々に聴いたけどやっぱりいいね。300円弱で買えたし。

右側のドリーム・アカデミーのファーストはフィリピンプレス。ジャケットもいかにも再生ダンボールに印刷しましたといわんばかりのプリミティブな感じだし、裏ジャケとかレーベルとかうっすらカビっぽくなってたけど、記念にフィリピンプレスを買ってみようと思って。聴いてみたら、案の定バチバチとノイズが入るし音はかなり薄っぺらい。まあ記念品だから。

「新入荷があったらテキストするからお得意様名簿に名前と番号を残していって」と言われたのでそのとおりにしたら、一週間しないうちに新入荷のお知らせ。前回からちょうど一週間後の昨日、また行ってきた。「12時開店だから、時間どおりに来たほうがいいですよ」と言うから、日本人らしく11時55分に着いたら、もう既に店の中には客がびっしり。なんだこれは(a.開店時刻前に開けるなよ。b.この店こんなに繁盛してるのか)。

新入荷のお知らせでほしいと思ってたブツを「すみません、取り置きはできないので」と前夜に断られたけれど、僕が入店したらすぐに例の女性店員が「ここにあるから」と棚から探し出して渡してくれた。ありがとう。それをキープしてもらって、後は小一時間かけて満員のお客さんを掻き分けながらLP棚を物色。先週来たばかりだから品揃えはほとんど同じだったけど、今回も2枚お買い上げ。

Certifiable.jpg Big World.jpg

NZから帰国する直前に東京ドームのチケットを押さえたのに会議で行けなかったという悔しい思い出の08年再結成ポリースのライヴアルバム。出た当時はその悔しさのために無視していたけど、米ベストバイ限定発売という3枚組重量盤LPがシールドで入荷したというから、これは迷わずゲット。さっき書いた、店員とやりとりしたのはこれ。日本円にして4000円ちょっとはリーズナブルだと思うんだけど。さっき通して聴いてみたら、なんだかやたらごつい音を出すバンドになってしまったねというのが印象。特に初期の、アンディ・サマーズのスペイシーなギターが広い空間を感じさせていた曲ほど、なんだかべったり音を塗り込められたように思えて、ちょっと違和感。

CDは出た当時に買ったけど、2枚組3面(D面には音は入っていない)のこの『Big World』のLPもずっと欲しかったんだ。LPだけについている6ヶ国語の歌詞カード(英独仏伊西日)も26年越しでようやく見ることができた。そして、2トラック・デジタル・ライヴ・レコーディングだったこのアルバム、もちろんCDでもいい音だったけど、こうしてアナログで聴くとまた抜群に音がいい。盤もジャケも歌詞カードも状態いいし、こんなのを850円程度で買えるなんてラッキー。

狭い店内でわいわいと試聴したり歓談したりしているアナログファンのフィリピン人たちを後に、いい買い物したとニコニコしながら店を出て、帰りに立ち寄ったショッピングモールの閉店セール中のゴルフ用品店で(観念して)ゴルフシューズと手袋と(安いからこれも買ってけと押し付けられた)ボールを買って帰った。来週からちゃんと練習しないとな。


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2012年09月29日

復活の挨拶 - Squeeze

Live at The Fillmore.jpg
Squeeze 『Live At Th Fillmore』

前の記事から7週間以上もブランクを空けてしまったのはこのブログを始めて以来初めてのことかも。今朝久しぶりにアクセス記録を見てみたら、全然更新していなかったこの7週間の間にも結構なアクセスがあったようで、ありがたいやら申し訳ないやら。きっと皆さん、もうここは更新されないかと思い始めた頃かもしれないね。

僕がこのブログを始めて、グレン・ティルブルックやスクイーズについてあれこれ書き始めた頃には、よもや後にグレンとクリスが仲直りしてスクイーズが再結成するなんて、ファンの誰もが(期待こそはすれ)本当に起こるとは思いもよらなかったはず。10年近くのブランクを置いて見事に復活したスクイーズにちなんで、僕の52日振りの記事は、ちょっと時期を逸してしまったけれど、彼らの最新アルバム、『Live At The Fillmore』について書くことにしよう。

07年に、元々バック・カタログと新しいベスト・アルバムをプロモートするために(当時は一時的なはずだった)スクイーズは再結成を果たし、そのときのツアーを記録した『Five Live』をリリース。その後、グレンとクリスが久々に一緒に新曲を書いているという噂に反してリリースされたセルフ・カバー集『Spot The Difference』が出たのが10年の夏。その直後に、サンフランシスコはフィルモアでのライヴ録音を収録したボーナスディスク付きのバージョンも出て、新しいのが出たらすぐ買う熱心なファンほど馬鹿を見るという経験も味わわされた。

そして、今年の4月になってオフィシャルサイト+アイチューンズ限定でリリースされたのが、今回取り上げるこのライヴ・アルバム。なんだか、再結成してもう5年も経つというのに、ライヴ盤とセルフ・カバー集しか出してないなんて、傍から見たらもう立派な金目当ての再結成レトロバンドだと思われても仕方ないよね。しかも、LP2枚組の今回のアルバムの1枚目は『Spot The Difference』の再発盤と同じ内容ときた。

3000枚限定ということだったので、アナウンスされた直後にオーダー。うちに届いたのが6月16日で、それからすぐにブログに何か書こうと思ってたのに、こんなに遅くなってしまった。ちなみに、さっきオフィシャルサイトを見てみたら、まだ入手可能みたいだね。たった3千枚が半年近くも売り切れずに残ってるなんて、全世界のスクイーズファンはもうレコードプレイヤーを売っ払ってしまったか、もしくはスクイーズオフィシャルが3千枚と煽っておいて実は3万枚ぐらいプレスしているかのどちらかだな。

『Spot The Difference』に付属していた方の10曲入りライヴ盤、あれはあれでベストヒット的内容でまあそれなりに納得はしてたんだけど、それにしても変な曲順だとは思ってたんだよね。本編の『Spot The Difference』が一見とりとめないように見える曲順でいて実はアルファベット順だったという謎解き(というほどのものでもないけど)があったから、前半に大ヒット曲ばかりを詰め込んで後半どんどん地味な曲が増え、(いくらアメリカでのシングルヒット曲だとはいえ)『If I Didnt't Love You』なんて歯切れの悪い曲で終わるなんて、いくらおまけ盤だとはいえ、なんて中途半端な選曲かと。

その謎解きは2年後にやってきたというわけ。まあ、熱心なファンはきっと当日のセットリストを調べて、先のおまけ盤は当日のライヴ前半しか収録していないということぐらいはとっくにわかっていたのかもしれないけど。というわけで、『Cool For Cats』から始まるLPの2枚目まで全部通して聴くと、この日のセットがいかに楽しいものだったかがよくわかるという仕組みになっている。

このブログで何度も書いてきたグレンのソロ・ライヴ同様、ファンなら誰でも一緒に歌えるヒット曲と、全アルバムをしっかり聴き込んだコアなファンが聴いてみたいと思うような隠れた名曲が絶妙なバランスで混ざり合っている。もちろん、一人で2時間以上にわたって30曲以上も演奏するグレンのソロに慣れてしまった身としては、あの曲もないこれも無いという気にはなってしまうけれど、それは贅沢というもの。

さっきも書いたとおり、A面トップから3曲、通常のグレンのライヴなら本編最後からアンコールにかけて演るのが定番な大ヒット曲が続く。B面での意外な聴きものは「It's So Dirty」のグレンのギターソロかな。若干荒くはあるけど抜群のタイム感で弾き倒す感じが最高にかっこいい。あとB面では『Difford & Tilbrook』アルバムから「Hope Fell Down」を演ってるのも個人的には満足。どの曲のときだったか、「小さなステージは楽しいね」とグレンが言ってるけど、フィルモアってそんな小さな会場なのかな。

LPを買ったらMP3がダウンロードできるコードが付いてくる。基本的にLPとMP3の内容は(後述する大きな違いを除けば)同じなんだけど、一点違うところに気がついた。LPはB面の最後「If I Didn't Love You」が終わったところでフェードアウト。それは『Spot The Difference』のボーナス盤と同じなんだけど、MP3バージョンだとその曲が終わって歓声がフェードアウトせずに突然次の「Cool For Cats」のイントロが入ってくるところがものすごく快感。

その曲に加え、珍しい「Someone Else's Heart」でもクリスはソロで歌う。僕は特に好きな曲でもないけど、グレンのソロ・ライヴでは当然聴くことはなかったから、この曲をライヴヴァージョンで聴くのは初めてかも。ちょっとマイナー調なその曲に続けて明るい「Mumbo Jumbo」を今度はグレンが歌うところも、スクイーズというグループの特徴をよく表しているね。

その曲から間髪入れず出てくるC面5曲目の「Up The Junction」からD面全部まで通して、再び大ヒット曲集。鉄壁。さっきの「It's So Dirty」もそうだったけど、いろんな曲でグレンが追加でギターソロを長めに入れる。調子いいときのグレンってこうだよね。

最後の「Pulling Mussels (From The Shell)」であー終わったと思っていたら、LP版は最後にシークレットトラックが。おそらく『Spot The Difference』のときのアウトテイクだと思われる、とある名曲の「Differenceだらけの」セルフ・カバー。グレンがこれぐらいのテンポで歌うのを彼のライヴで見たことはあるけど、バンド・バージョンでこうして聴くのは初めて。アイチューンズのダウンロードもいいけど、LPを買うファンのためにこういうのをちゃんと隠しておいてくれるところが嬉しいね。

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LPは4面とも違った色合いのレーベルが付いたホワイトヴァイナル。こういうのは持ってるだけで楽しくなるね。本当は色とかついてない方が音はいいのかもしれないけど、そこまで聴き分けられる耳があるわけでもなし。

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そして、LPにはおまけのポスターとかステッカーとかいろんなおまけがついてるのがまた嬉しい。CDが出ないからと躊躇しているスクイーズファンの皆さん、3000枚だか30000枚だかがなくなってしまう前にこれ買っといた方がいいよ。まあ、もうしばらく躊躇し続けてても当分なくなりそうにないけどね。
posted by . at 23:59| Comment(0) | TrackBack(0) | アルバム | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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