2012年03月24日

Radical Face live in Tokyo

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いろんな意味で予想を裏切られたライヴだった。というか、そもそも僕はこのラディカル・フェイスことベン・クーパーという人には予想を裏切られ続けてきている気がする。

僕が彼のファースト・アルバム『Ghost』を買ったのは、08年のことだった。ジャケットとインナーに写る人物の顔の部分はどちらも加工されていて表情すらわからなかったから、よもやあの悲しげな歌声の持ち主があんなにずんぐりとした熊のような体型、ほぼ坊主頭に髭だらけの丸顔だなんて予想もしなかった。そう考えると、あのジャケに写った人物は(少なくとも今の体型の)ベンではないよね。

そして今日、霧雨の中を池袋まで出かけて観てきた動くベン・クーパー(とその仲間たち)が、あの沈鬱な曲を奏でている人たちと同一人物だとは、自分の目の前で本人たちが演奏するのを観ていても、どうにも受け入れがたい気持ちだった。

まるで、肉体を持った幽霊たちが、互いにジョークを飛ばしながら楽しげにじゃれあっているのを見るような、そんなシュールな場面を目撃したかのよう。


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池袋駅からうまく地下道を通れば、ほぼ雨に濡れずにたどり着くことのできる好立地なヴェニュー、ミュージック・オルグ。地下2階にある、かなり小さなハコだ。聞いたところによると、60人だか80人も入れば満員になるらしい。そして今日は、上の小さな写真を見ればわかるように、前売りの段階で既に60人だか80人のお客さんがここに詰めかけることになっているようだ。

開場に入ると、左の壁際にベンチシートと寄せ集めた椅子が一列に。右側には楽器が並んでるけど、ヴォーカルマイクと左側のベンチとの間はたぶん2メートルもない。どこかで見たな、こんな光景。あ、そうか、レジャー・ソサエティを観たロンドンの船だ。あのときは入場したらもうベンチは一杯だったのでほとんどマイクスタンドの隣みたいな場所に立って観たんだったけど、今回は開場一番乗り。まだ開演まで30分もあるから、ゆっくり座って待たせてもらおう。たとえ前に人が入ってきても、せいぜい自分の目の前には2-3人しか立つスペースがないからそんなに見づらいことにもならないだろう。

開演時刻の8時を少し過ぎたあたりで、サポートメンバーのジャックが登場し、置いてあったテレキャスターを抱えて歌い始めた。ベン同様、顔中を覆うような髭が生えているのは来日直後の写真で見ていたけど、なんだか口髭の先がよじったように上を向いてるぞ。ダリかお前は。

30分ほどのジャックの弾き語り(全然期待していなかったわりには結構よかった)の後、そのまま客席(というか、会場中を埋めた60人だか80人の観客)をかき分けて、ベンともう一人のサポーターのジェレマイアが登場。ジャックとジェレマイアはその辺で待機し、まずはベンがテレキャスター(熊のイラストつき)で演奏を始める。

オープニングは『Ghost』から「Along The Road」。アルバムとはずいぶん感じが違うね。ピアノでなくギターだからか。2曲目、「これはまだ録音していない新曲」というのが始まった。そういえばこの人って完璧主義者でボツ曲がやたら多いという話だよな。この時点でセットリストを記憶する努力を放棄。たしかその次が、「シニード・オコーナーのカバー。ほんとはプリンスの曲だけど有名にしたのはシニード。知ってたら一緒に歌ってもいいよ。ただし、オリジナルよりずっとスローで、ずっと憂鬱なバージョンだから」と冗談交じりに紹介した「Nothing Compares 2 U」。

ここでサポートの2名が配置につく。たしか最初はジャックがドラムスで、ジェレマイアがピアノだったかな。この後もこの二人は曲ごとにどんどん楽器を交換しながら演奏する。器用だね。ジャックがドラムス、ピアノ、パーカッション(タンバリンとかマラカスとか)。ジェレマイアがピアノを弾きながらピアニカを吹いたり、ステージ右側に置いてあったストラトを弾いたり(確か1曲ドラムも叩いたっけ?)。

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3人編成になってからは、ほとんどが『Ghost』と『Family Tree: The Roots』からの曲だった。最初が「Wrapped In Piano Strings」だったかな。でも後は曲順覚えてないや。演奏したことを覚えている曲を順不同で書き記すと、

ファーストから、「Welcome Home」、「Glory」、「Wrapped In Piano Strings」、「Along The Road」、「Winter Is Coming」、「Homesick」。

セカンドから、「Names」、「Black Eyes」、「Severus And Stone」、「The Moon Is Down」、「Ghost Town」、「Always Gold」。

セットリストを決めていないようで、ベンは前の曲が終わるたびにポケットから小さなメモ用紙を取り出し、おそらくそこに書いてある演奏候補曲のリストを一回一回結構長い時間をかけて検討し、ときにはメンバーに「次はXXX」と指示し、ときには何も教えずにいきなり演奏を始めたりする。

メンバーの2人もそれを楽しんでいるようで、ベンが演奏しようとしている曲を想像してそれぞれの楽器について演奏を始める。一度、ジェレマイアが「てっきりあの曲かと思ったからギターを持ったのに、そっちの曲だったか。じゃあドラムだ」とか言ってたのを覚えてる(だから彼がドラムスも担当したと思ったんだけど、でも彼がドラムを叩いてるところを見た記憶がないな。というか、僕の位置からはベン以外はほとんど見えなかったんだけどね)。

そう、最初に書いたとおり、彼らが曲間であんなに冗談を飛ばしながら笑い転げる姿を見て、僕はなんだかとてつもない違和感を抱いてしまった。決して悪い意味でなく、ああそうか、この人たちはこういう普通の陽気なアメリカンなんだなと。

それが、ひとたび曲に入ると、あたり一面ラディカル・フェイス色に染まってしまう。おぼえたての日本語で「イチ、ニ、サン、イチ、ニ、サン」とお得意の三拍子のカウントで始めるんだけど、最初のギターの一音、そこにピアノがかぶさり、ブラシで叩くドラムのフィルインが入り、ベンが目を閉じて歌うと、もうそこは違う世界。

そう、ベンは終始目を閉じて歌っていた。まるで、自分が書いた曲の中の死者たちと交信するためにはそうするしかないとでもいうように。

そういえば、どの曲の紹介だったか、「次の曲では誰も死なない」と冗談めかして言ってたね。どの曲もしっかりと内容を説明してから演奏を始めていたのも印象的。たとえ目の前の60人だか80人の日本人のほとんどが歌詞の意味をろくに理解していないかもしれなかったとしても。「次の曲は『Homesick』っていって、えーと、ホームシックになることについての曲」とか適当なのもあったけど(笑)

「次の曲は『Always Gold』」って言ったときに僕が小さな声で「やった」みたいなことを言ったら、ベンが目ざとくこっちを指さして「彼は知ってるね」とか言ってくれた。それほど、それまでどれだけ曲紹介してもほとんど反応がなかったのを気にしていたのかな。もっとイエーとかヒューとか言ってあげればよかったかな。

この日は“クワイエット・ナイト”だったそうで、できるだけギターにディストーションもかけずに静かに演奏していたようだ(それでも、時おり盛り上がることはあったけど)。それが、終盤の「Winter Is Coming」で「ちょっとだけでかい音でやろう。sin、今日は怒られないよね?」とベン(数日前にカフェで大音量で演奏して怒られたらしい)。「この曲は後半にいくにしたがってスピードが速くなるんだ。それを(ドラムスの)ジャックがいつもダメにするんだよ」なんて言いながら演奏開始。いやいや、全然ダメになんてなってなかったよ。かっこよかった。

「Welcome Home」が本編最終曲。「次の曲をもし知っていたらコーラスのところを皆で歌って。アルバムでは沢山の声が入ってるからそういう風にしたいんだ。曲を知らなくても歌詞なんてない部分だから、隣の人が歌うのを聞いて同じように叫べばいいんだよ」と言ってスタート。結果は、60人だか80人の大合唱。ああ気持ちよかった。

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ベンがギターのストラップを外し、ステージを降りようとする間にもアンコールの拍手がすでに始まっている。そのまま再度3人で楽器を持ってアンコールへ。いちばん最後の曲はディズニーのロビンフッドからの曲のメドレー(って言ってたよね?僕は知らない曲だった)。ジャックとジェレマイアがマラカスとタンバリンを持ってベンの周りを踊りまわるという、よもやこれがラディカル・フェイスのライヴだとは思えないような陽気なエンディング。


終演後は、会場奥の物販とベンの前に長蛇の列。なにしろ今回は日本ツアー限定の7曲入りCD-R『Japan 2012』をはじめ、結構貴重なブツが売り出されてたからね。僕はとりあえずそのCD-Rを買い、ベンにサインをもらう。LPも欲しかったんだけど、わざわざ雨の日に持って帰ることはないかとひとまず放流(僕のことを少しでも知っている人は、このあと放流した物を二度手間かけて買いに行くというのを既に予測しているはず)。

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Radical Face 『Japan 2012』

サインをもらいながら少しだけベンと話す。「明日はもっと騒々しくなるよ」とのこと。「『Mountains』演ってくれなかったね、あの曲好きなのに」と言うと、「あれは3人で演奏するのに向いてないんだ。もっと大人数で演るか、もしくは一人のときかな」と言うから、「じゃあ明日オープニングのソロのところで演ってよ」とリクエスト。「うーん、まず練習してみるね」と言ってくれたけど、果たしてどうなることやら。

ということで、“明日”である今日(もう日付が変わった)、今から約16時間後には僕はまた一番乗りを目指して渋谷O-nestに向かっているはず。ベンは「Mountains」を歌ってくれるだろうか。僕が放流したLP(とその他のシングルやらTシャツやら)はちゃんと売れ残っているだろうか。

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posted by . at 02:22| Comment(9) | TrackBack(0) | コンサート | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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