2012年03月26日

Radical Face & Miaou live in Tokyo

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今回のラディカル・フェイスのツアー、僕は東京初日にあたる3月23日(金)の池袋の分しか予約していなくて、最終日の土曜日はぎりぎり直前になるまで行けるかどうか不確かだった。今、日曜日の夜に少し濃い目のハイボールで喉を湿しながら、この週末の記憶を洗いざらいぶちまけるべく準備しているところなんだけど、まず思うのは、最終日も行くことにして本当によかったということ。あやうくとんでもないものを見逃してしまうところだった。

最終日は、というか23日の池袋を除く今回のツアーは、ラディカル・フェイスとミャオウ(miaou)とのジョイントで、前座としてわざわざ大阪からウォーター・ファイ(water fai)という女子バンドが参加。場所は、僕にとってはタマス・ウェルズを最初に観た、懐かしの渋谷O-nest。いつもどおりまず6階に上がり、開場時間まで待機。さすがに3バンド共演だけあって、物販の量が前日とは桁違い。終演後の混雑を予想して、まずラディカル・フェイスの2枚のLPを購入。

時間通りに5階の会場に降り、500円の薄いハイボールで喉を湿しながら開演を待つ。開演時間を10分ほど押して出てきたのは、お揃いの白い衣装を着た5人組。前座のことまであれこれ書いてるときりがないけど、見た目からはちょっと想像つかないような硬派な音。ほとんどインストで、時折変拍子を交えたり、フリーキーなギターソロ(?)が入ったり、なかなか面白い。新作を一週間前に出したばかりで、4月28日にはまたこの同じ会場でレコ発ライヴを演りに来るということだったんだけど、残念ながらさっき調べたら僕その日はもう別件が入ってしまってるよ。次回に期待、ということで。


30分以上のたっぷりとした前座を堪能した後、セットチェンジ。ステージ最前列に左から小さいキーボード、小さい鉄琴、大きい鉄琴、大きいキーボードと、まるでバリケードでも築くように機材を並べるという変わった編成なので、セットチェンジにも結構時間がかかる。ドラムキットや鉄琴のあちこちにチェブラーシカのぬいぐるみが置いてあるぞ。

予習のために、ラディカル・フェイスがミャオウと一緒に録音した「Lost Souls」のビデオはユーチューブで何度も観たけど、このバンド自体にはそれほど興味を持っていなかった。わざわざ事前にCDを買うほどでもないと思っていたし、失礼な言い方をすると、僕にとってはラディカル・フェイスのライヴの2組目の前座みたいなものだと思っていた。

なんていう気持ちも、4人のメンバーが登場して、プログラミングされた不思議なサウンドに鉄琴のキンコンという気持ちいい音がかぶさるオープニングの曲が鳴り響いた瞬間に吹っ飛んでしまった。すごいよ、このバンド。とにかく曲がいいし、音のセンスも特筆もの。ベースの女の子が咄嗟にマレットを持ってキンコンと叩き、ベースの入るパートでそれを床に落としてブンブンとうなるベースに戻るとか、曲の頭でドラマーがステージ前方の鉄琴を叩き、急いでドラムキットに戻るとか、とにかく皆さん忙しそう(笑)。いや、かっこいいよ、マジで。最初見たときはリッケンバッカーのパチもんかと思ったあのベース、ギブソンのリッパーっていうんだね。いい音。覚えとこう。

別に日本のバンドを見下すつもりはないけれど、この音は立派にインターナショナルで通用するよ。前座だなんて思ってごめん。帰りにCD買って帰ろう(ライヴに来て初めて音を聴いて気に入ったからその場でCDを買うなんて、実は僕にとっては結構珍しい話。こう見えて見境なく買ってるわけではないのです)。

ミャオウのパートの最後、さあいよいよ噂に聞いていたラディカル・フェイスとの共演。この瞬間がこの夜の、というよりも今回のツアーのハイライトになるであろうというのは、ツアー中のリリコのブログや一本道さんのツイートで散々喧伝されてきたからね。心して観よう。

結論:涙こそ出なかったものの、こんなに美しい空間が他にあるかと思われるような、至福の10分間だった(本当は何分演ったのか知らないけど)。あのゆったりとした静かなイントロに導かれ、ベンがいつものようにそっと目を閉じてファルセットでハミングを始めた瞬間、二夜連続になってしまったけれど、この日も観に来ることにして本当によかったと思った。これを聴き逃すなんてありえない(とか書いて、昨日の記事に「行きたかった」と早速コメントを入れてくださったxiaoさんの神経を逆撫ですることが本意ではないんだけど)。


この夜のクライマックスは早々に訪れてしまったけれど、もちろんまだ終わりじゃない。ステージから沢山の鉄琴が撤去され、前日のピアノに変わってノードのキーボードがステージ前方に一つと、最初のウォーター・ファイのときからずっとそこにあるドラムキット(タムが一つ取り外されたのはこの時だっけ、それともミャオウの前?)、ずっとシンプルなセッティングになった。あのnestのステージが広く見えるよ。

ラディカル・フェイスの3人がステージに登場したのはもう9時をずいぶん回った頃だったかな。6時半開場なんて、今日はもしかしたら終わったら飲みに行けるぐらい早く終わるかもと思っていたけど、これは長丁場になるぞ。もちろん、前日ほどのフルセットでは演らないだろうことはわかっているけれど。

ベンの前にはヴォーカル・マイクが2本。こちらから見て左側のが通常のヴォーカル用で、右側がコーラスのパートを歌うとき用みたい。前日はTシャツ1枚だったけど、今日はその上にもう1枚チェックのシャツを着てきたね。前の日の方が寒かったのに。

ジャックがドラムス、ジェレマイアがキーボードに着く。ベンが「最初の曲は『A Pound Of Flesh』」と紹介してスタート。実際には、アルバムでその曲につながっている「Names」から始めたから、ここでいきなり『The Roots』オープニングの2曲を演奏。これを聴きながら思ったんだけど、昨日のブログに「Names」を演奏したと書いたのは間違い。演ってないよ、これ。というわけで、あとで消しておきます。

前日よりも若干尺の短かった(かつ、未発表曲とか演らなかった)この日は、ちゃんとセットリストを覚えたはず。2曲目(さっきのを1曲と計算すると)は、前日のバンドセットでのオープニングと同様「Wrapped In Piano Strings」。曲前の説明は前日よりも短めかな。今日は持ち時間が短いから急ぎ気味なのかも(そういえば、メモ用紙を見ながら「えーと、どの曲にしようかな」という時間もずっと短縮されていた気がする)。

前日の“クワイエット・ナイト”はよほど遠慮しながら演奏していたんだろうというのが容易に想像できるほど、この夜の演奏、特にベンのそれは実に活き活きとしていた。あんな陰鬱な曲を書いていながら、ディストーションを効かせて大音量でギターをかき鳴らすのが好きなんだね。

といっても、別にこの日の演奏が雑だったわけじゃない。繊細なアルペジオは冴えわたっていたし、前日ほど頻繁に楽器変更をしなかったせいか、ジャックとジェレマイアの演奏も実に安定していた。そういう意味では、演奏的にも、コンパクトでタイトなセットリストにしても、僕は前日よりもこの日が遥かによかったと思う。もちろん、前日の素晴らしい演奏を貶める気は一切ないけれど、やはりこの長い日本ツアーの最終日ということで3人とも気合が入っていたのかな。

「Winter Is Coming」を演奏する前に、前日にも言っていた「ジャックがこの曲を台無しにしてしまうかも」というのを今日も言ってから演奏したけど、前日にも増して完璧な演奏。少なくとも僕はジャックがこの曲を台無しにしたのを一度も聴いていないよ。曲が始まる前にベンが「うまくいったらあれをやろう」と言ってた“ベリーハイファイブ”を見せてもらったし(見ていない人のために解説:スイーツ好きの二人がシャツをたくし上げて、臨月かと思うような二つの大きなお腹をぶつけ合うという光景は、ジャックが演奏を失敗していたら見られなかったはずの貴重な映像)。

僕の大好きな曲の一つである「Severus And Stone」とか「Always Gold」(もちろんこちらも大好きな曲の一つ)で、ジェレマイアがストラトキャスターのアームを使って幽霊の音を出す。「Always Gold」の間奏のときはジャックもドラムを使ってお化けの音で応答。アルバムのヴァージョンとは全然違うけど、いいね、あれ。

先ほどの「Lost Souls」のお返しのつもりか、本編最後の「Welcome Home」でミャオウのメンバーをステージに呼んでコーラスを任せる(インパートメントのsinさんも呼ばれて引っ張られてたけど、断固として出て行かなかったね・笑)。前日と同様、「曲を知ってたら一緒にコーラスをお願い。知らなくても叫んでいればいいから。もっとアメリカ人みたいに」と言い、曲に入る前に2度ほど観客に練習させる。「声が小さい、もう一度」とか言って。僕はもう二日目だから慣れたけど、これがあの死人の歌ばかり歌ってるラディカル・フェイスのコンサートだとは(笑)

アンコールの「Glory」は素敵だった。前日のこの曲の演奏もよかったけど、これが本当に今回の日本での演奏の最後だとわかっていたからか、実に素晴らしい演奏と歌を聴かせてくれた。そして、アンコールのラストは前日同様、ロビンフッドの曲のメドレーだったんだけど、

ロビンフッドの曲だと、そこまで説明したところでベンがステージ際にいる僕の方に向かって、「ごめん、『Mountains』は練習したんだけど、うまくいかなかったんだ」と、わざわざ断ってくれたんだ。びっくりした。そんな前日のリクエストを覚えていてくれたばかりか、一応は練習していてくれただなんて。そして、そんなことをわざわざ観客席にいる僕に言ってくれるなんて。

ロビンフッドの曲では、前日同様メンバーの2人がマラカスとタンバリンを持ってステージを歩き回る。ジャックに至っては曲が始まる前からステージを降りて観客席でスタンバイ。最前列にいた僕からはよく見えなかったけど、曲の間中、観客席を動き回っていたみたい(ジェレマイアも追って観客席に乱入)。

そういえば、どこで出たジョークだか忘れたけど、前日にジェレマイアの口髭をフレディ・マーキュリー風に整えてあげたらしく、しきりにそのことを言いながら「I Want To Break Free」を歌ったりしてたね。アンコールのときに観客席から「Never Ending Story!」って声が上がったらその曲を歌ったり。この人って、普段もっと暗い曲ばかり聴いてるのかと思いきや、こんなヒット曲ばかりよく知ってるよね。


ライヴ終了が確か10時40分ぐらいだったかな。ウォーター・ファイが始まったのが7時10分過ぎだったから、そこから数えても3時間半。入場した時点からだと実際には4時間ぐらい立ちっぱなしだった。どうりで腰も痛くなるわけだ。ここから、再度6階に戻って物販&サイン会&雑談会タイムの開始。

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まずは、2枚のLPにサインをもらう。『The Family Tree: The Roots』を、僕の去年のベストアルバムだと言ったら、「これを年間ベストアルバムに選んでくれてありがとう」とメッセージを書いてくれた。ちなみに、『Ghost』のジャケットの人物はベン本人だそうで、更に言うと、彼が屋根に座っている建物は、このアルバムが録音された場所だとのこと。

概ねファンに囲まれてサインや写真をせがまれていたベンだけど、暇になる瞬間が時折訪れるようで、そのあたりをうろうろしていた僕と何度も話してくれた。以下、ラディカル・フェイスよもやま話。

『The Roots』に続く『The Family Tree』第二作のレコーディングにはすでに取りかかっていて、おそらく来年のリリースになるとのこと。さらに第三作目はその翌年の2014年になる予定なので、そもそもこのプロジェクトを考え始めた2007年から数えると、7年越しのプロジェクトになるそうだ(もともとは3年ぐらいで終わらせるつもりだったとのこと)。

『The Roots』のリリース直前に『The Bastards: Volume One』がリリースされたように、今後リリースされる2枚のアルバムの前にはそれぞれ未発表曲(というか、その2枚のアルバムからは惜しくも漏れてしまった曲たち)を収録したEPが発表されるそうだ。そして、この壮大なプロジェクトが完成した暁には、3枚のアルバムと3枚のEPをすべて収録した限定生産の本をリリースすることも考えているらしい。

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前日の池袋ミュージック・オルグでの2曲目、“まだ録音していない新曲”というのは、次作『The Branches』に収録される予定の「Mute」というタイトルだそうだ。もっとも、「僕はとても沢山の曲を書いては録音して、最終的にアルバムに収録されるのはその内のほんの一部だから、最後までわからないけどね」とのこと。

ちなみに、前日アンコールの1曲目で演奏されたのは、もともと『The Roots』のシークレットトラックとして彼のウェブサイトに隠されたヒントを頼りにダウンロードできた(今回会場限定で発売されたCD-Rにも収録されているから、そんな面倒な手段は取らなくて済んだ・笑)曲、「Bishop's Song」。

この日の午前中に渋谷の某巨大中古レコード店でLPを漁っていた彼(「12枚買って7000円!」と自慢する姿が他人とは思えなかった・笑)に、「何を買ったの?」と聞いてみたら、デイヴィッド・ボウイの『Space Oddity』とか、キュアの『Boys Don't Cry』とか、サイモン&ガーファンクルの『Bridge Over Troubled Water』とか、ラディカル・フェイスがそんなの聴くのかというようなものばかり(いや、別にいいんだけど、もっとマイナーなのを想像していたものだから)。しかも、そのほとんどは、エレクトリック・プレジデントの相棒であるアレックスへのお土産だそうだ。帯付きの日本盤が珍しいからだって。

そうそう、ベン・クーパーの実物を最初に見たときから、身長といい髪型といい(ここ数週間僕も伸ばしている)髭といい、きっと傍から見たら僕らそっくりに違いないぞと思っていたんだけど、一緒に写真を撮ってもらったらこのとおり。

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ミャオウのCDもゲット。メンバー4人(サイドギタリストはサポートだそうで、正式メンバーはMCもしていた方のギタリストと、ベースとドラムスの二人の女性の計3人)のサインと、ゲスト参加しているベン・クーパーのサインももらう。この5人が一同に会することなんてこの先あるかどうかわからないからね、貴重なものを手に入れたよ。ライヴがあれだけよかったから、このCDもちゃんと聴き込もう。

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ジェレマイアとジャックにも、チケットの半券にサインをもらう。ラディカル・フェイスはライヴのたびにメンバーを変えるという話を聞いていたから、ジェレマイアとベンに次にもし来日することがあったら別のメンバーなのかな?と聞いてみたら(そんなこと本人の前で訊くなよと今さらながら自分でも思うけど)、ジャクソンヴィルのミュージックシーンはとても小さなもので、その時々で集まれるメンバーが集まるから、次回も彼らかもしれないし、そうでないかもしれない、とのこと。たとえ次回の来日メンバーが彼らでなくても、それは別に彼らがクビになったとかそういう話ではないんだって。なんかちょっと安心。

ジャックにサインをもらいに行ったら、彼も「『Mountains』できなくて悪かったね」と。彼とは前日話してないのに、なんでそんなの知ってるんだろう。ほんとに3人で練習してくれたんだね、とまたちょっと感動。「あの曲はコーラスが必要だから」と言うから、「僕できるよ」と答えると、「じゃあ次回はスレイベル持ってくるよ」とジャック。彼はずっと冗談ばかり言ってたね。面白いやつ。

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ベンとレコード談義していたときに、いいレコ屋を知らないか?という話になって、翌日安レコの買える店に一緒に行くことになった。というわけで、今日(長々と書き続けていたせいでもう昨日になってしまったけど)は楽しい一日を過ごさせてもらった。オフ日のことまで事細かに書くのは気が引けるから詳細は割愛するけど。

別れるときに、「来年にでもまた来てよ。楽しみにしてるから」と言ったら、「うん、新作と一緒にね」と言ってくれたベン。ほんとに楽しみにしてるからね。僕の2013年と2014年の年間ベスト・アルバムの座は空けて待ってるから。

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Setlist 24 March 2012 @ Shibuya O-nest

1. Names
2. A Pound Of Flesh
3. Wrapped In Piano Strings
4. Black Eyes
5. The Moon Is Down
6. Doorways
7. Ghost Town
8. Severus And Stone
9. Winter Is Coming
10. Always Gold
11. Welcome Home

[Encore]
1. Glory
2. Love Goes On / Oo-De-Lally (?)


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2012年03月24日

Radical Face live in Tokyo

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いろんな意味で予想を裏切られたライヴだった。というか、そもそも僕はこのラディカル・フェイスことベン・クーパーという人には予想を裏切られ続けてきている気がする。

僕が彼のファースト・アルバム『Ghost』を買ったのは、08年のことだった。ジャケットとインナーに写る人物の顔の部分はどちらも加工されていて表情すらわからなかったから、よもやあの悲しげな歌声の持ち主があんなにずんぐりとした熊のような体型、ほぼ坊主頭に髭だらけの丸顔だなんて予想もしなかった。そう考えると、あのジャケに写った人物は(少なくとも今の体型の)ベンではないよね。

そして今日、霧雨の中を池袋まで出かけて観てきた動くベン・クーパー(とその仲間たち)が、あの沈鬱な曲を奏でている人たちと同一人物だとは、自分の目の前で本人たちが演奏するのを観ていても、どうにも受け入れがたい気持ちだった。

まるで、肉体を持った幽霊たちが、互いにジョークを飛ばしながら楽しげにじゃれあっているのを見るような、そんなシュールな場面を目撃したかのよう。


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池袋駅からうまく地下道を通れば、ほぼ雨に濡れずにたどり着くことのできる好立地なヴェニュー、ミュージック・オルグ。地下2階にある、かなり小さなハコだ。聞いたところによると、60人だか80人も入れば満員になるらしい。そして今日は、上の小さな写真を見ればわかるように、前売りの段階で既に60人だか80人のお客さんがここに詰めかけることになっているようだ。

開場に入ると、左の壁際にベンチシートと寄せ集めた椅子が一列に。右側には楽器が並んでるけど、ヴォーカルマイクと左側のベンチとの間はたぶん2メートルもない。どこかで見たな、こんな光景。あ、そうか、レジャー・ソサエティを観たロンドンの船だ。あのときは入場したらもうベンチは一杯だったのでほとんどマイクスタンドの隣みたいな場所に立って観たんだったけど、今回は開場一番乗り。まだ開演まで30分もあるから、ゆっくり座って待たせてもらおう。たとえ前に人が入ってきても、せいぜい自分の目の前には2-3人しか立つスペースがないからそんなに見づらいことにもならないだろう。

開演時刻の8時を少し過ぎたあたりで、サポートメンバーのジャックが登場し、置いてあったテレキャスターを抱えて歌い始めた。ベン同様、顔中を覆うような髭が生えているのは来日直後の写真で見ていたけど、なんだか口髭の先がよじったように上を向いてるぞ。ダリかお前は。

30分ほどのジャックの弾き語り(全然期待していなかったわりには結構よかった)の後、そのまま客席(というか、会場中を埋めた60人だか80人の観客)をかき分けて、ベンともう一人のサポーターのジェレマイアが登場。ジャックとジェレマイアはその辺で待機し、まずはベンがテレキャスター(熊のイラストつき)で演奏を始める。

オープニングは『Ghost』から「Along The Road」。アルバムとはずいぶん感じが違うね。ピアノでなくギターだからか。2曲目、「これはまだ録音していない新曲」というのが始まった。そういえばこの人って完璧主義者でボツ曲がやたら多いという話だよな。この時点でセットリストを記憶する努力を放棄。たしかその次が、「シニード・オコーナーのカバー。ほんとはプリンスの曲だけど有名にしたのはシニード。知ってたら一緒に歌ってもいいよ。ただし、オリジナルよりずっとスローで、ずっと憂鬱なバージョンだから」と冗談交じりに紹介した「Nothing Compares 2 U」。

ここでサポートの2名が配置につく。たしか最初はジャックがドラムスで、ジェレマイアがピアノだったかな。この後もこの二人は曲ごとにどんどん楽器を交換しながら演奏する。器用だね。ジャックがドラムス、ピアノ、パーカッション(タンバリンとかマラカスとか)。ジェレマイアがピアノを弾きながらピアニカを吹いたり、ステージ右側に置いてあったストラトを弾いたり(確か1曲ドラムも叩いたっけ?)。

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3人編成になってからは、ほとんどが『Ghost』と『Family Tree: The Roots』からの曲だった。最初が「Wrapped In Piano Strings」だったかな。でも後は曲順覚えてないや。演奏したことを覚えている曲を順不同で書き記すと、

ファーストから、「Welcome Home」、「Glory」、「Wrapped In Piano Strings」、「Along The Road」、「Winter Is Coming」、「Homesick」。

セカンドから、「Names」、「Black Eyes」、「Severus And Stone」、「The Moon Is Down」、「Ghost Town」、「Always Gold」。

セットリストを決めていないようで、ベンは前の曲が終わるたびにポケットから小さなメモ用紙を取り出し、おそらくそこに書いてある演奏候補曲のリストを一回一回結構長い時間をかけて検討し、ときにはメンバーに「次はXXX」と指示し、ときには何も教えずにいきなり演奏を始めたりする。

メンバーの2人もそれを楽しんでいるようで、ベンが演奏しようとしている曲を想像してそれぞれの楽器について演奏を始める。一度、ジェレマイアが「てっきりあの曲かと思ったからギターを持ったのに、そっちの曲だったか。じゃあドラムだ」とか言ってたのを覚えてる(だから彼がドラムスも担当したと思ったんだけど、でも彼がドラムを叩いてるところを見た記憶がないな。というか、僕の位置からはベン以外はほとんど見えなかったんだけどね)。

そう、最初に書いたとおり、彼らが曲間であんなに冗談を飛ばしながら笑い転げる姿を見て、僕はなんだかとてつもない違和感を抱いてしまった。決して悪い意味でなく、ああそうか、この人たちはこういう普通の陽気なアメリカンなんだなと。

それが、ひとたび曲に入ると、あたり一面ラディカル・フェイス色に染まってしまう。おぼえたての日本語で「イチ、ニ、サン、イチ、ニ、サン」とお得意の三拍子のカウントで始めるんだけど、最初のギターの一音、そこにピアノがかぶさり、ブラシで叩くドラムのフィルインが入り、ベンが目を閉じて歌うと、もうそこは違う世界。

そう、ベンは終始目を閉じて歌っていた。まるで、自分が書いた曲の中の死者たちと交信するためにはそうするしかないとでもいうように。

そういえば、どの曲の紹介だったか、「次の曲では誰も死なない」と冗談めかして言ってたね。どの曲もしっかりと内容を説明してから演奏を始めていたのも印象的。たとえ目の前の60人だか80人の日本人のほとんどが歌詞の意味をろくに理解していないかもしれなかったとしても。「次の曲は『Homesick』っていって、えーと、ホームシックになることについての曲」とか適当なのもあったけど(笑)

「次の曲は『Always Gold』」って言ったときに僕が小さな声で「やった」みたいなことを言ったら、ベンが目ざとくこっちを指さして「彼は知ってるね」とか言ってくれた。それほど、それまでどれだけ曲紹介してもほとんど反応がなかったのを気にしていたのかな。もっとイエーとかヒューとか言ってあげればよかったかな。

この日は“クワイエット・ナイト”だったそうで、できるだけギターにディストーションもかけずに静かに演奏していたようだ(それでも、時おり盛り上がることはあったけど)。それが、終盤の「Winter Is Coming」で「ちょっとだけでかい音でやろう。sin、今日は怒られないよね?」とベン(数日前にカフェで大音量で演奏して怒られたらしい)。「この曲は後半にいくにしたがってスピードが速くなるんだ。それを(ドラムスの)ジャックがいつもダメにするんだよ」なんて言いながら演奏開始。いやいや、全然ダメになんてなってなかったよ。かっこよかった。

「Welcome Home」が本編最終曲。「次の曲をもし知っていたらコーラスのところを皆で歌って。アルバムでは沢山の声が入ってるからそういう風にしたいんだ。曲を知らなくても歌詞なんてない部分だから、隣の人が歌うのを聞いて同じように叫べばいいんだよ」と言ってスタート。結果は、60人だか80人の大合唱。ああ気持ちよかった。

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ベンがギターのストラップを外し、ステージを降りようとする間にもアンコールの拍手がすでに始まっている。そのまま再度3人で楽器を持ってアンコールへ。いちばん最後の曲はディズニーのロビンフッドからの曲のメドレー(って言ってたよね?僕は知らない曲だった)。ジャックとジェレマイアがマラカスとタンバリンを持ってベンの周りを踊りまわるという、よもやこれがラディカル・フェイスのライヴだとは思えないような陽気なエンディング。


終演後は、会場奥の物販とベンの前に長蛇の列。なにしろ今回は日本ツアー限定の7曲入りCD-R『Japan 2012』をはじめ、結構貴重なブツが売り出されてたからね。僕はとりあえずそのCD-Rを買い、ベンにサインをもらう。LPも欲しかったんだけど、わざわざ雨の日に持って帰ることはないかとひとまず放流(僕のことを少しでも知っている人は、このあと放流した物を二度手間かけて買いに行くというのを既に予測しているはず)。

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Radical Face 『Japan 2012』

サインをもらいながら少しだけベンと話す。「明日はもっと騒々しくなるよ」とのこと。「『Mountains』演ってくれなかったね、あの曲好きなのに」と言うと、「あれは3人で演奏するのに向いてないんだ。もっと大人数で演るか、もしくは一人のときかな」と言うから、「じゃあ明日オープニングのソロのところで演ってよ」とリクエスト。「うーん、まず練習してみるね」と言ってくれたけど、果たしてどうなることやら。

ということで、“明日”である今日(もう日付が変わった)、今から約16時間後には僕はまた一番乗りを目指して渋谷O-nestに向かっているはず。ベンは「Mountains」を歌ってくれるだろうか。僕が放流したLP(とその他のシングルやらTシャツやら)はちゃんと売れ残っているだろうか。

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2012年03月11日

500円CDと体脂肪

なんだかバタバタと慌ただしく過ごしているうちに、このブログももう3週間ほったらかしになってしまっているな。ほんとは先週フー・ファイターズのライヴに行ってそのレポートを書く予定にしてたんだけど、先月のメタル・ボックス・イン・ダブに引き続いてまたしても公演キャンセル。ほんとに最近そういうのが多いよ。僕は行く予定にはしてなかったけど、ルー・ルイスも入国できなかったらしいし(西新宿の某レコ屋兼呼び屋さんは一度お祓いに行くといいと思う)。

相変わらずCDは沢山買っているし、その中にもこれはと思うものがいくつもあるので、そういうアルバムについて書けばいいんだろうけど、なんだか公私ともに余裕のない忙しい日々を送っていて、どうもそういう気分にもならない。このままじゃ休眠ブログ化してしまうから、今日はちょっと気楽にどうでもいいことを書こう。

先月中旬の日曜日、ふと思い立って、うちから歩いて30分ほどの、いつもは行かないちょっと大型店のブックオフまで歩いて行った。暇だったものでね(すぐ上に「公私ともに余裕のない忙しい日々を送っていて」と書いていたのは誰?)。

その店に行くのはもう1年振りぐらいだったかな。前に行ったときに目ぼしいものは洗いざらい収穫したけど、さすがに1年も熟成させておくと500円以下コーナーもかなり入れ替わっているよ。500円コーナーから4枚拾い上げてレジに行こうと思ったら、ふと通りがかった100円のCDシングルコーナーになんとカーボン/シリコンのシングルが3枚も並んでる。あ、アラームのシングルなんてのもある。

The News.jpg The Magic Suitcase.jpg
Why Do Men Fight.jpg Superchannel.jpg

ちょっと大漁気味なので、当日限り有効の10%オフクーポン発動させて、計8枚で2180円。その後、当日限りのクーポンを有効活用するために、いつも行きつけの駅前ブックオフまで歩いて戻り、そこでも500円盤を2枚、計900円。オータム・ディフェンスのファーストなんてのがあったよ。

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最初の店からの帰り道、上り坂ですれ違った人が写真を撮ってるからなんだろうと思って振り返ってみると、遠くの富士山に沈む夕陽。ちょっと感動的な風景だったね。まさにこのジャケみたいな感じ。


それをきっかけに、週末ごとにうちから徒歩1時間圏内にある区内のブックオフの500円以下コーナーを制覇してみようということを思いついた。調べてみたら、うちの区内にはブックオフが11店もある。中にはとても1時間じゃ歩いて行けないようなところにもあるけど、とりあえず数週間分は大丈夫そう。で、先週の土日にそれぞれ別の店舗まで歩いて行った。たまたま最近会社から支給された万歩計をつけて歩いたら、土日それぞれ1万3千歩ぐらいの距離だった。

土曜日の収穫はちょっとイマイチかな。この店は確か半年ぐらい前に来たからまだ安物コーナーが完全に入れ替わってないね。一昨年あたりに世界各地のCD屋でやたらと見かけたブルーノ・マーズ(昔僕がこのブログに書いたNZのSSWと名前が紛らわしいけど音楽性は全然違う)500円也と、今になってマイブームのホワイト・ストライプス250円也。

Doo-Wops.jpg Get Behind Me Satan.jpg


日曜日は初めて訪れた店。住宅地に突如としてそびえ立つ煙突とかに気を取られて適度に道に迷いながらたどり着いた。小さな店だったけど結構充実。来日が流れたフー・ファイターズの初期EPと、来日に備えて予習中のロン・セクスミスの旧譜がそれぞれ250円。スフィアン・スティーヴンスのロボットジャケが500円など、また10%オフクーポン使用で計4枚2025円。

Big Me.jpg Whereabouts.jpg
The Age Of Adz.jpg


そして今週。昨日の土曜日はちょっと用事があって歩けなかったので、今日はちょっと多めに歩こう。もう1年ぐらい行ってないまた別の店まで歩いて40分程度。書き忘れたけど、先週から歩くときには片足1キロのウェイトを着けてるので、ちょっとした運動になるよ。

店に入っていきなり目についたのが、ちょうど買おうと思ってたスピッツの『おるたな』。500円コーナーじゃないけど、まあいいや、買おう。あとは、500円コーナーからオレンジ・ピールズの旧譜と、来日公演行こうかどうか迷い中のウィリー・ワイズリーの旧譜。それから、ビースティ・ボーイズの昔のベスト盤2枚組が250円。おるたなのせいで合計価格は跳ね上がったけど、中々の収穫。

おるたな.jpg Circling The Sun.jpg
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実はCDと一緒に、先月1〜5巻が安かったのでつい手を出してしまった某長編漫画の続きを各ブックオフの105円コーナーでコツコツと買い足してて、先週22巻まで入手済みだったのが、今日の店では24〜28巻しか置いてなかった。とりあえずそれを確保したうえで、そこから先週土曜に行った店に移動。23巻なしでこの5冊を来週までお預け状態になるのはちょっと耐えられない。

残念ながら次の店にも23巻は置いてない。しょうがないのでとぼとぼと家まで歩いて帰る。区内3か所を巡る冬の大三角形みたいな移動。

てくてく歩いたこの道は、ちょうど今日から1年前の同じ日に凍えながら歩いたのと同じ道。2時46分には立ち止まって黙祷しようと思ってたのに、ついうっかり忘れてしまって、家に辿り着いてからあらためて黙祷。

近所の商店街で早めの夕食を済ませ、家に帰る途中でいつもの駅前ブックオフに立ち寄ってみたら、105円コーナーには某漫画の23巻が。なんか今日はついてるな。冬の大三角形のおかげで今日は歩数も1万6千歩を超えたし、これで年明けのアメリカ出張で毎晩ハンバーガー食べ続けて増えた体脂肪も少しは減ったはず。
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