2012年01月26日

Suzanne Vega live in Tokyo

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またこの日も雪。今月早くも5度目となるライヴは、今月2度目のビルボードライブ東京でのスザンヌ・ヴェガ。今回も比較的いい整理番号だったので、懲りもせずまたしても一番前の席に。一緒に行った友達から聞いてはいたけれど、マイクが2本立ててあって、サポート・ギタリストと二人で演るというのがわかる。スザンヌ前の席はもう埋まっているので、もう1本のマイク・スタンドの前に陣取る。スタンドの下にはエフェクターがずらりと並んでいる。

スザンヌ・ヴェガのCDを最初に買ったのは、セカンド『Solitude Standing』が出た87年。CDケースの裏面の表記によると5月21日に発売されたものを、記録によると僕はその約5か月後に買っている。その後のアルバムは、ベスト盤やライヴ盤も含めて全部持っているけど、ファーストだけは今に至るまで買っていないから、確か僕が彼女のことを知ったのはこのセカンドアルバムが出て、シングル「Luka」が話題になっていたからだったと思う。

以来25年にわたって、ほどほどにつかず離れずといった感じで聴いてきたアーティストだけど、ライヴを観るのは今回が初めて。なんだか、ずっとメールとか手紙だけで連絡していた旧友と初めて顔を合わせるような不思議な気分だ。

僕が観たのは21時半開始のセカンドセットだったんだけど、ほぼ定刻通りに終わったファーストセットのお客さんが全員退出するまでえらく時間がかかり、僕らが入場できたのがそもそも予定時刻の20時45分を10分ほど回ってからだった。その流れで、開演時刻も若干押していたように記憶している。

黒いスーツに派手な装飾のついた黒いインナーを着たスザンヌが、ギタリストのジェリー・レオナード(Gerry Leonard)を伴って登場。マイクスタンドの高さから想像はついていたけど、スザンヌって背低いね。160センチぐらいしかないんじゃないかな。25年の間、CDのジャケとかで見慣れた顔はもちろん年齢相応に貫録がついていたけど、なんだかものすごく懐かしい。

「ファーストセットに来ていた人はいる?」というのが最初のことば。「誰もいないの? ひとり?ふたり?」と、パラパラと手を挙げた観客席を見渡しながら喋る。ジェリーが「僕はいたよ」と言うと、「ああ、そうね、あなたのことは見たと思う」と、ちょっとくすっとさせる。

1曲目は、デビューアルバムから「Marlene On The Wall」。僕が今に至るまでファーストを持っていないのは、持っている2種のベストアルバムにそこからほとんどの代表曲が収録されているから。もちろん、彼女の代表曲のひとつと言えるこの曲も。それにしても、デビューの頃から声ほとんど変わらないね。

「When Heroes Go Down」に続けて、最近のセルフ・カバー集『Close-Up』シリーズの紹介をしながら次の曲へ。「Vol 1はラヴソングばかりが入っていて、Vol 2はピープル&プレイセズというタイトル。「Luka」とか「Tom's Diner」はこれに入ってるの。最近出たVol 3には変な曲ばかりが入ってるから、もし変な曲が聴きたかったらそれを買えばいいし、そもそも変な曲なんて聴きたくなければ私のCDなんて買わなければいい」みたいなこと言ってたっけ。「次はラヴソングを演るね」と始めたのが「Small Blue Thing」。

そんな風に、各曲の頭でかなり詳しく曲の説明をしてくれる。あんなに早口で沢山しゃべって、日本のお客さんが全部理解しているかどうか心配じゃないんだろうかと思うけど、時折交えるジョークがそれほど笑いを誘わなくても気にしていない風だったね。わかってくれる人だけわかればいいみたいな感じで。

次の「Caramel」を演奏するのを聴いて、きっと今日のライヴはベストアルバム風に昔の代表曲ばかり演るんだろうなと思ったけど、それに続けて演奏したのは、07年の(オリジナルとしては今のところ最新となる)『Beauty & Crime』からの「Frank & Ava」。「フランク・シナトラの結婚と離婚という壮大なテーマを3分間にまとめた曲」と紹介してたね。

「次の曲は、私が初めて書いたラヴソング。17か18歳のときに山にキャンプに行って、子供たちにフォークソングを教えていたときに、リヴァプールから来て一緒に子供たちを教えていた男の人のこと。キャンプが終わって彼がイングランドに戻り、私がニューヨークに戻らないといけなかったときにこの曲を書いて彼に贈ったの」と説明(最後のオチがちゃんと聞き取れなかった。ふられたみたいなこと言ってたかな)。

というイントロに続けて、この夜初めてジェリーのエレキギター抜きで演奏されたのが、「Gypsy」。僕にとっては、「Luka」よりも「Tom's Diner」よりも、彼女の曲の中でいちばん好きな曲だ。まるで夕日が当たっているようなオレンジ色のスポットライトを受けて一人で歌うスザンヌの姿は感動的ですらあった。この曲が聴けてよかった。この夜の僕のハイライトがこの瞬間。

ここから3曲が、彼女が最近なにかの劇のために書いたという新曲のコーナー。ジェリーの演奏に合わせて、自分はギターを弾かずに、身振り手振りを交えながら歌ってたね。始まって数曲の間は昔からのファン向けの懐古趣味全開なお決まりのセットリストなのかなと思っていたけど(最近出しているのも『Close-Up』シリーズなんてセルフカバー集だし)、でもこのあたりまで来てこういうのを聴くと、彼女は今でもかなり意欲的に現役意識を持って曲を作り、歌っているんだなとよくわかる。

「スザンヌ・ヴェガの世界に戻るよ」と、『Nine Objects Of Desire』から「Tombstone」。昔買っていた猫が死んだときに、小さな船に乗せて川に流し、火をつけて火葬にしたという思い出話につづけて、自分はちゃんと立派な墓石を立ててほしいな、そしたら皆たずねてきてくれるし、ベンチも置いて、なんて話してたね。

ジェリーのギターワークについて。ずらりと並んだエフェクターは伊達じゃなかった。「Tombstone」では最初に弾いた自分のフレーズをループさせて別のフレーズをかぶせたり、次の「Blood Makes Noise」ではピックを弦をこれでもかというほどこすりつけ、あの曲のガリゴリとした音をきちんと再現していた。残念ながら僕の座った位置のせいで彼のギターの音がアンプから直接耳に届いてしまい、時々スザンヌのヴォーカルが聞こえないなんてこともあったけど、曲によってはそれでもいいと思えるほど器用にテクニカルなプレイをするギタリストだった。近くで観られてよかった。

『Close-Up Vol 2』に収録された当時の新曲「The Man Who Played God」の紹介、「この曲はデンジャーマウスと一緒に作ったの。マーク・リンカスに捧げます」と言って演奏を始めた。『Vol 2』のライナーによると、デンジャーマウスとマーク・リンカスのプロジェクトにスザンヌが呼ばれて作った曲なんだね。

「The Queen & The Soldier」(これも個人的には待望だったので嬉しかった)、「Some Journey」と、またファーストアルバムからの曲を続けた後、いよいよフィナーレへ。「フェイスブックで友達申請してね。そしたら5月に出る『Close-Up』の4枚目のこととかすぐわかるし」とか話して、そろそろこれが出るだろうと思っていた「Luka」が登場。さらに贅沢にも「Tom's Diner」に続ける。オリジナルでなく、もはやこっちの方が有名な『Tom's Album』ヴァージョン。ここでもジェリーのループを交えたテクニカルなプレイが炸裂。

一旦ステージを降り、アンコールに応えて二人で再登場。このときステージ後ろのカーテンが開き、降りしきる雪景色が見えてびっくり。もう結構積もってるよ。スザンヌは「Rosemary」を歌って、「サンキュー」と言ってまた引っ込んでしまった。あれ?僕の位置から見えるジェリーのセットリストにはアンコール3曲載ってるのに(曲名までは見ないようにしていたけど、何行書いてあるかぐらいはわかる)。開始から押してたからかな。

と思いきや、これからサイン会があるという。僕はそんなの予測もしてなかったので、CDも何も持ってこなかったよ。しょうがないので売店に行って唯一僕の持っていない『Close-Up Vol 3』を買ってくる(これをまだ買っていなかったのは、どうせ『Vol 1 & 2』みたいに日本盤が『Vol 4』とセットにして発売されるだろうと思ってたから)。

長蛇の列に並んで売店でようやくCDを入手し、また下の階に降りてサイン会の列に並ぶ。いったい何十人並んでるんだろうと思うほどの長い列。観客席の端から端まで、更に階段を上がったところまで続いてるよ。

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30分ほど並んでようやく自分の順が回ってきた。ちょっと話しかけたけど、もうあからさまに疲れの見えるスザンヌ。そりゃそうだよね。1時間以上ライヴ演って、その後すぐに30分以上もサインし続けてるんだから。なんか、サインと一緒に自分の名前も書いてとか言うのも気の毒になり、すぐその場を離れた。

これってどうなんだろうね。そりゃサイン会はそれなりに嬉しいけど、僕としてはサイン会なんてやめにして、セットリストに載っていた残り2曲を演奏してくれた方がよっぽど嬉しかった。少なくとも、あんなに疲れた顔をして、それでも健気にファンに微笑みながら受け答えをするスザンヌを見てるのがちょっと辛かった(ならサインもらわずに帰れよと、今となっては自分でも少し思う)。

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ステージに置いてあったセットリストの写真。終演後、一緒に観ていた友達がこれをもらって、スザンヌにサインしてもらってた。うらやましいけど、僕はとにかくCDの形をしたもの以外の整理能力がないので、こういう紙っぺらは確実にどこかに紛れ込んでしまうんだよね。なので上のCDで十分。

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長かったサイン会のおかげで、晩ごはんをちゃんと食べて帰る時間がなくなってしまった。なのでこの日の晩ごはんは開演前につまんでいたフライドポテトだけ。ほとんど終電間際の電車でたどり着いた駅からの帰り道、つるつる滑る雪道が楽しかったのが、この日最後のハイライトだった。


Setlist 23 January 2012 @ Billboard Live Tokyo

1. Marlene On The Wall
2. When Heroes Go Down
3. Small Blue Thing
4. Caramel
5. Frank & Ava
6. Gypsy
7. New York Is My Destination
8. Anne Marie
9. Harper Lee
10. Tombstone
11. Blood Makes Noise
12. The Man Who Played God
13. The Queen & The Soldier
14. Some Journey
15. Luka
16. Tom's Diner

[Encore]
1. Rosemary


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