2011年08月11日

Nick Lowe live in Tokyo Pt. 1

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「死ぬ前にまた観られたらいいな。できたら今度はもっと小さい会場でね」と記事を締めくくったのは、もう2年近くも前になるのか。あのときはライ・クーダーとのジョイント・ツアーで、しかもやたら馬鹿でかい会場の端の方で観たために、それなりに満足したもののなんとなく個人的には欲求不満気味だったニック・ロウのライヴ。2年振りの来日は本当に“もっと小さい会場”が実現してしまった。ただ、純粋にライヴを観るという意味ではちょっと有難味に欠けるビルボードなんだけど。

二日連続の計4公演。発表されたときは全公演制覇しようかなとも思っていたけど、今回はバンドで来ると知って、多分アドリブ効かないな、ヘタすると4公演ともセットリスト同じかも、と思い、中途半端に一日一回ずつの2公演だけにしておいた。どちらも9時半からのセカンドセット。今日はまず、初日分を書こう。セットリストとか出てくるので、今日これから観に行く予定の人や、明日の大阪公演を楽しみにしている人はネタバレ注意。

最前列ではないけどそれなりに見やすい、ほぼ中央の席を確保し、多分ビルボードでは誰も注文することのないであろう日本酒を(ワイングラスで)ちびちびやりながら待つことしばし、定刻の9時半を少し回ったところでニックが一人で登場。

2年前の来日時、ステージからかなり離れた席から見ててもずいぶん歳食ったなと思っていたけど、今回もその印象は変わらず。というか逆に、あれから2年経ったけど老化は2年分も進んだように見えない。かなり痩せて顔も首もシワシワだけど、おじいちゃんお元気そうでなにより、といった風貌。上の写真でかけている、往年のエルヴィス・コステロ風の黒縁メガネのせいもあってやけに落ち着いて見えるね。

いつものようにサンバーストのギブソンを右脇きっちりに抱え、大きな左手で包み込むようにネックを押さえるスタイル。ピックは使わずに指で弾いてるんだね。といっても、細かなフィンガー・ピッキングをするというわけでもなく、手首から先だけを動かしてなんとなく手癖で弾いているような。

曲紹介もなく歌い始めた1曲目は、歌詞から判断して、来月発売予定の(とんでもないジャケットデザインの)ニューアルバム『The Old Magic』のオープニング曲「Stoplight Roses」だろう。いい曲だなあ。またこんな地味な曲が幕開けなのかとも思うけれど、今回のアルバム結構期待できるかも。あのジャケだけはなんとかしてほしいものだけど。

続く懐かしの「Heart」までは一人で弾き語り、3曲目に移る前にメンバーが登場。ステージ右手でアップライト・ベースを弾くのはマシュー・ラドフォード(Matthew Radford)。その左に、ちょっと斜めにセットしてあるドラムスに座るのは、ロバート・トレハーン(Robert Trehern)。中央のニックの左後方でエレキギターを弾くジョニー・スコット(Johnny Scott)。ステージ左端に2台置いてあるキーボードを弾くのがゲライント・ワトキンス(Geraint Watkins)。07年の前作『At My Age』ライヴDVDのときと同じ布陣。ライヴDVDのときはゴールド・トップと名付けられていたバンドだね。

まだメンバーがストラップを肩にかけたりプラグを挿したりしているのに、ニックがさっさとイントロを弾きはじめる。3曲目は『Dig My Mood』からの「What Lack Of Love Has Done」。最初のヴァースを歌い終える頃に、準備のできた楽器からバラバラと加わり始める。なんか、こういうのいいね。この後にも、最初ニックが一人で弾き歌い始めて、他の楽器が順々に入ってくるというアレンジの曲がいくつかあったな。骨組みだけだった曲が徐々に組み立てられていくのを目前に見ているような感触。

「今日は、とても古い曲や、そこそこ新しめの曲、それからできたばかりのとても新しい曲も演るよ」とニックが話したのはこのあたりかな。4曲目は“とても古い曲”の一つ、「Ragin' Eyes」。どうもあのPVを観て以来、“女の子の目からビームが出る曲”と認識してしまうよ。PVのイメージって重要だね。

その後は、“そこそこ新しめの曲”がしばらく続く。告白してしまうと、僕はいわゆる“ブレントフォード三部作”以降のアルバムって、凄く良いとというのは頭ではわかっていつつも、僕が一番彼の音楽にはまっていた80〜90年代前半のアルバムほど聴き込んでこなかったのは事実。ところが、こうして目の前でライヴで演奏されるのを聴くと、一連のジャジーな雰囲気のアルバムから受ける印象と全く違うのに驚かされる。

はっきり言って、ゲライント以外は取り立ててテクニシャンと呼べるようなメンバーがいるわけでもないし(ゲライントにしても、特に凄いフレーズを弾いたりするわけじゃなく、雰囲気勝負みたいなプレイヤーだしね)、演奏自体もいたってシンプルなものなんだけど、最近のアルバムからの曲がすごく際立って聴こえる。ああ、これってこんなにいい曲だったんだ、と思わされるのがいくつもあった。さっきの「What Lack Of Love Has Done」もそうだし、5曲目に演奏した「Lately I've Let Things Slide」もそう(まあこちらは元々かなりいい曲だというのは認識していたけど)。

インディアン・クイーンズが地名だというのは今回ニックが説明するのを聞いて初めて知った(歌詞をちゃんと読みなさい)。「Indian Queens」、実に目立たない地味な曲だけど、いいよね。今回これを演ってくれたのが個人的には小ヒット。

中盤、ニックがゲライントのことを指さし、ゲライントが真っ赤なノード・エレクトロ3で耳慣れないイントロを弾き始めた。初めて聴くイントロのフレーズだけど、このコードでわかるよ!もうその瞬間、その場で悶絶しそうになった「Cruel To Be Kind」。例のライヴDVDでも、ロバートが自分の膝をスティックで叩いてカウントをとるイントロが最高にかっこよかったしな。

そういえば、そのライヴDVDのその曲でせっかくのギターソロをとちっていたジョニー、今回もなんだかあちらこちらで危なっかしいプレイを見せてくれてたよな。あからさまに間違ったりはしてないんだけど、どうも見ていて不安をぬぐえないというか、おいおい頼むから正しい弦を弾いてくれよ、という気持ちになってしまう。「Cruel To Be Kind」も、オリジナルともライヴDVDの時とも違ったソロを弾いてくれたんだけど、そんな余計なことしないでいいから落ち着いてオリジナル通り弾いてくれと思ってしまう。今朝読んだ五十嵐さんのツイートによると、この人ってゲライント、ロバートと3人でヴァン・モリソンのバックバンドに居たことがあるらしいんだけど、あれで本当に?って感じ。

さっきからロバートロバート書いてるけど、メンバー紹介のときにニックは「ロバート・トレハーン、またの名をボビー・アーウィン」って紹介してたね。あーすっきりした。ボビーでもロバートでもいいんだけど、なんで苗字変わったんだっけ、この人?

ライヴDVDのときはクライマックスの「Cruel To Be Kind」に続けてスローな「You Inspired Me」、そして「Long Limbed Girl」を続けて、あたかも「Cruel To Be Kind」なんてクライマックスでもなんでもない単なる1曲なんだよとでも言いたげな流れだったけど、今回もその曲に続けてスローな「Raining Raining」、そして「Long Limbed Girl」という流れ。この「Long Limbed Girl」という曲は「Cruel To Be Kind」の次の次というポジションに決まっているのかな。

「次は来月出るニューアルバムからの曲」と前置きして(その後「iPodで買って」とかなんとかジョークを言ってたけどよく聞き取れなかった)、「Somebody Cares For Me」。これもなかなかいい曲だったね。そこから先は、本編ラストに向けての怒涛の曲順(セットリスト参照)。

ラストの「I Knew The Bride」を終えたところでステージを離れようとした瞬間、腕時計を見て「あ、やばい、ゲライントそこに居て」とばかりにキーボードを指さして指示するニック。「アンコールで行ったり来たりする時間を省くよ。もう時間ないからね」と説明していたのは終演予定時刻を少し回った10時35分あたり。

「ゲライントはキーボードだけじゃなく歌もうまいんだ」と紹介し、アンコール(?)1曲目はゲライントの「Only A Rose」でスタート。知らない曲だなんて思ってたけど、調べてみたら僕も持ってる『Dial 'W' For Watkins」に入ってる曲じゃないか。買ったCDはちゃんと覚えるまで聴き込みなさい。最初はコーラスをつけていたニックがセカンド・ヴァースはメインで歌い、ゲライントがコーラスに廻る。いいね。

残りの3人がまたステージに戻ってくると同時にステージ背後のカーテンが開き、六本木の夜景と大きな窓ガラスに映るニックの後姿がくっきり見える。例によってニックがソロで歌い始め、他の楽器が追いついてくる感じで「When I Write The Book」。思い起こせばもう30年以上も前、僕が初めてニックのライヴを観たコステロの前座のときのオープニングがこの曲だったな。すっかりアンコールのクローザー的な貫禄あるアレンジに改良されたこの曲を聴くと、立派な社会人に成長した近所の子供を見ているような気になるよ。偉くなったものだね。

もう予定終了時刻を15分以上廻ってるし、それで終わりかなと思っていたら、ロカビリー調のやたら格好いい曲をもうひとつ。調べてみたら、クリフ・ジョンソンという人の「Go Away Hound Dog」という曲のようだ。このバンド、こういう曲を演らせたら鉄壁だね。何度も書いて申し訳ないけど、別にどこが上手いというわけでもないけど、必要最小限の音は全て鳴るべき個所で鳴っているという感じ。ニックがここ数年このバンドにこだわっている理由がよくわかる気がする。

演奏終了後、メンバーが楽屋に下がる。いつもこの瞬間に気付くんだけど、この会場、あの一番左手の席に座っていると、楽屋に戻るメンバーに握手してもらったりできるんだよね。まあ、あえてそれを理由にあんな端っこで観たいとは思わないけど。

鳴りやまないアンコールの拍手。ビルボードルールでもう客電点けられてしまうかな、と思っていたけど、すぐニック一人で戻ってきてくれて、最後はしっとりと「The Beast In Me」で幕。開いていたカーテンもニックが歌うにつれて徐々に閉じていき、この静かなエンディングにぽつんと小さな色を添える。

ああ、いいライヴだった。スルーするつもりだった二日目のファーストセット、やっぱり行こうかな。実は、ネットで調べてみた数カ月前のライヴのセットリストが今回のとほぼ同一だったのを知っていたから、やっぱり今回の4公演、セットリスト変わらないんだろうなと思ったのと、受付で調べてもらったらもうあまりいい席が残っていなかったのと(なんでビルボードって、追加料金を払う指定席の方が後ろなんだ?)、会社サボってテレビに写るのもなんだかなと思ったのが重なり、やはり断念。

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そう、今日のファーストセットは、フジテレビのCSチャンネルで完全生中継なんだって。あと30分ほどで始まるから、この記事をアップされた瞬間に読んで興味がわいて、しかもCS契約している人は是非観てみて(天文学的な確率でいないね、そんな人は)。

さて、そろそろセカンドセットを観に行く準備をしようかな。全く同じセットリストでも別にいいよ、あんなに熟成されたいいライヴをもう一回見せてもらえるならね。


Setlist 10 August 2011 @ Billboard Live Tokyo (2nd set)

1. Stoplight Roses
2. Heart
3. What Lack Of Love Has Done
4. Ragin' Eyes
5. Lately I've Let Things Slide
6. Has She Got A Friend?
7. I Trained Her To Love Me
8. I Live On A Battlefield
9. Indian Queens
10. Cruel To Be Kind
11. Raining Raining
12. Long Limbed Girl
13. Somebody Cares For Me
14. Without Love
15. (What's So Funny 'bout) Peace, Love & Understanding
16. I Knew The Bride (When She Used To Rock 'n' Roll)

Encore
1. Only A Rose
2. When I Write The Book
3. Go Away Hound Dog

4. The Beast In Me
posted by . at 18:32| Comment(10) | TrackBack(0) | コンサート | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする