2011年07月22日

追悼 中村とうよう

僕がこんなに雑多な音楽をそれぞれに愛情を持って聴くようになったのも、気に入った音楽のことをつべこべ語るようになったのも、外国人の名前をなるべく発音に近い表記で書こうなんて気取ったことをし始めたのも、そしてそもそもこんな歳になっても年間何百枚もCDを買い続けるほど音楽というものを好きになったのも、今思えば全ては中学生の頃にミュージックマガジンという雑誌を手に取ったからだと思う。

多分当時もっと売れていたミュージックライフはずっと前から何冊も買っていたし、ガキとしては同時期に買い始めたロッキングオンの方により感情移入していたけれど、初めて本屋で見かけた河村要助の描いたブーツィー・コリンズのちょっと不気味なイラストの表紙のこの雑誌を買って以来、世の中にはこんなに不思議な音楽があるんだ、こんな音楽の聴き方をしていいんだ、ということを僕はこの雑誌から学び続けた気がする。

クロスレビューのページで時々とんでもない採点をしたり(0点とかそういうレビューは、たとえ彼の意見に賛同しなくても、読んでいて清々しかった)、とうようズ・トークで毒を吐き散らしたりしていた当時編集長の中村とうようさんのカラーが、たとえ彼が全ての記事に絡んでいたわけではなかったはずだとしても、物凄く色濃く出ていた雑誌だった。

彼の推していた音楽は、その勢いに押されてあれこれ聴いてみたものの、僕としては本当に好きになったものはあまりなかったし、とうようズ・トークでの彼の意見は僕のポリシーとは正反対だったことが多いから、彼個人の意見に僕がそこまで惹かれたわけではなかったはず。

だけど、寝室からさっき持ってきたその81年3月号のクロスレビューのページをめくってみると、『Sandinista!』はとうようさんの付けた9点を始め、9点・9点・9点・8点の高得点。当時、このアルバムをここまで好評価したメディアは、少なくとも僕が記憶している限りなかった。単に僕がクラッシュのファンだったからというわけでなく、そういうところが、僕がこの雑誌を信用するに足ると思うに至った理由のひとつ。

とうようさんが編集長を退いたあともしばらく定期購読は続けていたけど、アルバムレビューのページから曲目表がなくなったあたりで僕はこの雑誌を買うのをやめてしまった。あれは何年前のことだったっけ。さっき書いたように、別に僕はとうようさん本人のファンだったわけじゃないから、彼が記事を書いているかどうかは関係なかったはずなんだけど、もうその頃にはこの雑誌のカラーが変わってしまったと思ったから。

ちょっと前にどこかで見かけた、武蔵野美大で中村とうようコレクション展が開催されるという報せ。へえ、懐かしいな。まだしばらくやってるから、そのうち観に行ってみようかな、なんて思っていた。



飛び降り自殺だなんて、信じられない。

今日、会社帰りに本屋に寄って、ミュージックマガジンの最新号を買ってきた。大特集のKARAには興味なかったけど、もしかしたら今月号のとうようズ・トークが生前最後の文章なのかもしれないから。というより、一体あの毒舌家が何故自殺を選ぶような精神状態に陥ってしまっていたのかが知りたかったから。

でも、その2ページは、いつもの2ページだった。中村とうようコレクション展に出せなかったいくつかの楽器を次の機会でお見せできれば、なんて書いてあって、まさかこの人が死ぬことを考えていただなんてとても思えない。


DSC02668.JPG

さっき帰ってきたばかりだから、とうようズ・トーク以外のページはまだパラパラとしか読んでない。来日アーティストのページに、30年前に僕が最初に買ったこの雑誌の表紙だったブーツィー・コリンズのことが載っていたのがなんだか奇偶。

とうようズ・トークの載らないこの雑誌を僕がこの先買うことがあるかどうか、もうわからない。そういう意味ではこのツーショットは僕にとって最初と最後のミュージックマガジンなのかも。

この2冊の間に出た何百冊ものコレクションは、今でも僕の寝室の本棚に全部並べてあって、週末前なんかでちょっと時間のある夜には、適当に目に付いた背表紙を頼りに抜き出して読み耽ったりしている。さっき名前を出した別の雑誌も置いてあるけど、何十年も前の文章を、読み物として、情報として、今でも違和感なく読めるのはこの雑誌ぐらいだ。

今までこのブログにたくさん追悼記事を書いてきたけど、もしかしたら僕に一番音楽的な影響を与えてくれた人が今日(もう昨日だけど)亡くなってしまったのかもしれない。ご冥福をお祈りします。


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