「“納涼”って暑さを忘れさせてくれる曲ってこと?」
「“夏に合う曲”とか“夏に聴きたい曲”ならわかるけど」
「難しすぎ。意味わかんね」
いつもの僕の提案らしく、みなさんから一通りの文句を頂いた後、とにかく夏らしい曲であればなんでもOKということに落ち着いた。その発表会が先週末、去年の暮に年間ベスト10の披露会のホストをしてくれたHさん宅で開催された。東京からだとちょっとした遠征気分。特急電車に乗り込む前に500ml缶(中身は秘密)を買い込んで、久々の楽しい週末だ。
10時間半コースで疲弊しきった僕たちが決めた新ルールは、CD-Rいっぱいに曲を詰め込むのはやめようということ。半分の10曲で、昔ながらのLP程度の長さなら、6〜7人分一気に聴いてもそんなに疲れることはないだろう、と。
よし、そういうことならいっそ、LP(またはカセット)を意識した選曲にしよう。A面5曲・B面5曲を通しでCD-Rに録音するつもりで選曲してみた。偶然ながら、いつもの20曲を半分にしてみたら、80分CD-Rの容量のぴったり半分、39分59秒に仕上がったのがちょっと嬉しい。
もともとyascdシリーズとは一線を引いて、その仲間たち向けに作ったつもりだったんだけど、最近あのシリーズも全然やってないから、新規格yascd miniということでここに載せてしまおう。あえて番号をつけるなら017。では、短い選曲に合わせて、さらっと曲紹介を。

A1.山内雄喜
Meleana Old
『Hawaiian Steel Guitar』
あれはもう10年以上も前になるのか。98年の夏、当時僕が住んでいたサウジアラビアからの一時帰国休暇で東京に来て、今は亡きHMV新宿SOUTHでこの人のインストアライヴ&サイン会を観た。普段僕が聴く類の音楽ではなかったけれど、生で聴くそのスティールギターのあまりにも心地よい音に惹かれて、その場でCDを買ってサインしてもらった。これはそのCDのオープニング曲。

A2.バカ・ビヨンド(Baka Beyond)
Lupe
『The Meeting Pool』
それをさらに遡った95年、今は亡きシンガポールはスコッツのタワーで試聴して買ったこれ。カメルーンのバカ族の音楽をベースに、オーストラリア人(英国人だと思ってた)マーティン・クラディックがケルト風やフォーク風の音を重ねて作った音楽。いわゆるワールド・ミュージックとしてこういうのを聴くのは反則なのかもしれないけど、アルバムタイトル通り水辺でちゃぷちゃぷやってるようなこの音はとても涼しげ。

A3.ホルガー・シューカイ(Holger Czukay)
Persian Love
『Movies』
yascd010をはじめ、僕のブログにはもう何度も登場しているこの人、というかこの曲。このアラビックな響きのヴォイス・コラージュにかぶさる、あまりにも気持ちいい弦楽器の音。もう30年も前に初めてこの曲を聴いて以来、僕にとっては最上のヒーリング・ミュージックだ。ところでこのCD、今アフィリエイトして気付いたんだけど、また廃盤なんだね。あっという間にとんでもない値がついてるよ。こういう人類の宝みたいなアルバムは常に流通させとかないと。

A4.ジェフリー・フォスケット(Jeffrey Foskett)
New York's A Lonely Town
『The Best Of Jeffrey Foskett』
ハワイ〜アフリカ〜中近東を巡って、アメリカ西海岸に辿り着いたという感じ。これは、先日の披露会でも曲だけは聴けば一発でわかった人が多かった有名曲のカバー。「これ、ビーチボーイズ?」と訊いてくれたHさん、正確な質問をありがとう。答えは、元ビーチ・ボーイズのサポートメンバーで、現ブライアン・バンドのバンマス。本人の見た目からは到底想像つかないこの爽やかな声が気持ちいいね。

A5.トラッシュ・キャン・シナトラズ(The Trash Can Sinatras)
Maybe I Should Drive
『Cake』
期せずして全曲世界一周大会となったA面最後は、UK出身の彼らで締めよう。先日集まった面々にとっては説明不要・問答無用なこのアルバム。誰もがオープニングの「Obscurity Knocks」が好きだけど、その後ろにひっそりと隠れたこの名曲が僕はずっとお気に入り。この、異様なまでに低音の薄い音が当時の“ネオアコ”だし、今月の僕にとっては“納涼”気分いっぱい。

B1.レイク・ハートビート(Lake Heartbeat)
Pipedream
『Trust In Numbers』
B面に移って、ちょっと新しいのを。とはいえ、これもう一昨年になるのか。フェイクなビーチ模様のジャケもいかしたこのアルバム、買った当時は結構聴いたものだ。これも、オープニングの「Mystery」がちょっとしたクラブ・ヒットになったらしいけど(その曲も素晴らしいけど)、ここにはそれに続くこの曲を入れよう。A面2曲目の法則。

B2.スタイル・カウンシル(The Style Council)
Long Hot Summer
『a Paris』
ちょっとベタだけど、これを。僕にとってはまだ次々に刺激的なレコードを連発していた時代のポール・ウェラー。スタイル・カウンシルとしてのデビュー・シングルに次いで出たのがこれだったね。当然こんなシングル盤はもう廃盤なので、今流通している初期シングルを集めたCDをアフィリエイトしてみた。僕このCD持ってないけど(中身の曲は当然全部持ってるけど)ジャケ見てると欲しくなるね。

B3.ジェイソン・ムラーズ(Jason Mraz)
I'm Yours
『We Sing, We Dance, We Steal Things. Limited Edition』
オリジナルもいいけど、ここはかつて『搾取』というタイトルの記事で批判させてもらったこの3枚組から、この心地よくリラックスしたアクースティック・ヴァージョンを。リンクした記事を読んでもらえばわかるけど、もちろんそんな“批判”も愛情あってのこと。こんな素敵な曲をアコギ一本とコーラス一人でこんなに気持ちよく仕上げたヴァージョンを聴けるのであれば、ほんとはいくら払うことになっても構わないんだけどね。

B4.ジャック・ジョンソン(Jack Johnson)
Better Together
『In Between Dreams』
前曲のアクースティック・ヴァージョンを聴いて、「なんだかジャック・ジョンソンみたい」と思う人もいるだろうな。前曲のエンディングの笑い声やセリフに続くようにこの曲のイントロが入るつなぎは、我ながらわりといい感じだと思う。僕がNZに住んでいた頃に大ヒットしていたこの人、最近ちょっと下火なのかな。それとも、日常的にそこらにビーチがあるような場所ではいまだに聴かれ続けているんだろうか。

B5.スクリッティ・ポリッティ(Scritti Politti)
The Word Girl
『The Word Girl』
ラストは、最近このブログに頻繁に登場するこの人たちで締めよう。キラキラした高音が最高に気持ちいいレゲエ・チューン。ここに写真を載せた12インチ・シングルは当然もう廃盤だから、3月6日の記事で取り上げたベスト・アルバムをアフィっておこう。グリーンって、音作りもヴィジュアル的な方向性もコロコロ変わる人だけど、どっちの方向向いても実にクールだよね。そういえば、クリス・ディフォードの新作にコーラスで参加してるんだって。早く買わなくちゃ。
という全10曲。果たして聴いている人のどれだけに“納涼”効果を与えられるんだろう。なんてことを思いつつ、先週の披露会の場でさっそく決まった次回のお題“秋の夜長に”を考えなければ。なんといっても、僕は5年前にそのテーマで既に一枚作っているからね。なんとかまたあれこれ自己ルールでっちあげて、前回とは違う感じのを作らないとな。