2011年04月30日

yascd016 裏Absolute

3月6日からのつづき>
というわけで作ってみた。実は選曲自体はあの記事のすぐ後に完成していたんだけど、それからいろいろゴタゴタしていたもので、この企画もあやうくお蔵入りになってしまうところだった。内容についてはあの記事に書いたとおり。スクリッティ・ポリッティのヒット曲にかけた『Absolute』というタイトルとは裏腹にイマイチ偏った選曲のベストアルバムを勝手に補完すべく作った個人用裏ベストアルバム。

『Absolute』が、全盛期のヒット曲を中心に、変則的な年代順という形態を取っていたのは、時代によって大きく音楽性が変化したこのグループ(というか、基本的にはグリーン・ガートサイドのソロ・プロジェクト)のベスト盤を選曲するにあたっては一番無難な方法だったからだろう。

それなら、僕はあえて違う方法を取ろう。今まで、単独アーティストをピックアップしたyascd(001のグレン・ティルブルック、007のジェブ・ロイ・ニコルズ、008のサニー・ランドレス、011のミック・ジョーンズ、015のナック)の殆どを年代順という無難な曲順にしていたけど、今回そうしてしまうと、本当に『Absolute』に選ばれなかった曲を並べるだけという落ち穂拾い的なつまらない選曲になってしまうからね。

とはいえ、難しいのはやっぱり難しい。『Absolute』でも一番曲間に違和感があるのが、11曲目「Brushed With Oil, Dusted With Powder」から12曲目「Skank Bloc Bologna」に移るところだろう。とてもその2つが同じグループの曲だとは思えないぐらいだからね。そういう、極初期の曲と中期以降の曲を交互に入れるのは、よほどうまくつなぎを考えないと聴いてて気持ちよくないからね。まあ、015のナックの選曲からあえて「My Sharona」を外したのとは比べものにならないぐらい有名曲をほぼ全部使えないというハンディキャップを逆手に取って、曲間のつなぎの妙みたいなのを楽しみながら作ってみよう。


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1. Is And Ought The Western World

極初期のスクリッティ・ポリッティというと、どうしても最初のシングル曲「Skank Bloc Bologna」ばかりに注目が集まるが(それに値する名曲だとは認めるけれど)、決してそれ以外の曲がつまらないというわけじゃない。中にはスタジオでの即興演奏に適当なタイトルをつけてそのままリリースしたような曲もあるけど、「Skank Bloc Bologna」のB面だったこの曲とか、十分スリリングだと思う。どうしても入手困難というわけじゃないけどまだ持っていないそのシングル盤のジャケに代えて、今ではもっと手軽にこの時期の曲をまとめて聴けるCD『Early』のジャケを載せておこう。

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2. After Six

あえてここにつなごう。今のところの最新作、06年の『White Bread, Black Beer』から。かつてこのブログを始めてそう間もないころに書いた記事ではどうも煮え切らない書き方をしてしまったアルバムだけど、あれから4年強たった今聴き直しても、十分時間の経過に耐えうる良作だと今なら言える。むしろ、それ以前の大ヒットアルバムのように時代の色を濃く反映していないだけ、逆にエヴァーグリーンな作品になったと言えるだろう。それこそ、このアルバムのリリース当時よく引き合いに出されていた『Pet Sounds』のように。

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3. Faithless

極初期のアヴァンギャルド路線から一転、「The "Sweetest Girl"」でシーンに再登場した彼らがファーストアルバム前夜にリリースしたシングル。シングルカットされていないアルバム曲まで含まれているというのに、何故これが『Absolute』から外れたのかが全く理解できないクオリティの曲。後のグリーンの黒人音楽趣味を考えるとブレはないが、当時は「あの」スクリッティ・ポリッティがこんなソウルフルな曲を書いたことに思いっきり違和感を抱いていたものだけど。

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4. Small Talk

収録された全9曲のうちシングル5曲が『Absolute』にピックアップされたこの超有名アルバム『Cupid & Psyche 85』からはもういいかと思えなくもないけど、かといって残りの4曲が出がらしみたいな埋め曲かというとそうでもない。これは、当時「Wood Bees」「Absolute」「Hypnotize」という超弩級シングル三連発をアルバムに先駆けて聴いていた人にとっては意表をつかれたアルバムトップのレゲエ曲「The Word Girl」に続くA面2曲目、それらのシングルの流れを汲むハイパーポップ。「きたきた!」って感じだったね、最初に聴いたときは。

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5. Take Me In Your Arms And Love Me

スクリッティ・ポリッティが全くアルバムを発表しなかった空白期間(89年〜98年)、数枚のレゲエ・シングルがリリースされた。レゲエ特集のyascd013に収録したビートルズのカバー「She's A Woman」に続いて出たのがこの曲。前者がシャバ・ランクスとのデュエットだったのに対し、こちらはスウィーティー・アイリー(僕はよく知らないけど)をフィーチャーした、グラディス・ナイトのカバー曲。前者は『Absoolute』に収録されたけど、こっちはスルーされてしまったのでここに。それにしても、いつもジャケットのセンス抜群のグリーンなのに、この時期のシングル盤のジャケはどうにもいただけないな。

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6. The Boom Boom Bap

リードシングルだったこの曲も含めて、最新作『White Bread, Black Beer』からの曲は『Absolute』では完全に無視されてしまっている。シングルとして切るにはやたらと地味な曲だと当時も今も思うけれど、ランDMCのデビューアルバムから一曲を除いて全部の曲のタイトルが練り込まれているという歌詞も含めて、曲調はこんなになってしまっても、グリーンのヒップホップ愛を感じられる曲。これのシングル盤も買おうと思ったけど、DVDまで付属していた日本盤アルバムを追加購入してた際にカップリング曲がボートラ収録されていたから、結局シングルCDは買ってないな。まあ、比較的どうでもいい類のパッケージではあるけれど。

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7. First Boy In This Town (Lovesick)

『Cupid & Psyche 85』の焼き直しとか言われて評価の低い『Provision』だけど、僕にとってはおそらく一番思い入れの深いアルバムだ。中でもこれは大好きな部類に入る曲。後半のアカペラ・パートに入る瞬間なんて、めちゃくちゃ格好いいよ。先日、この曲の箱入り12インチシングル(限定盤で、それまでの3枚のシングル盤のジャケがアート紙に印刷されたものが封入されている)を見つけて買った。箱の状態はよくなかったけど、捨て値と言ってもいいぐらいの値段で買えたのは嬉しい。やっぱり12インチは音いいよ。

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8. Don't Work That Hard

『Cupid』からもう一曲いこう。LPでいうとA面ラストの曲。珍しくハードなギターソロの音が(しかしあくまでも装飾音として)使われている。僕は『Provision』は88年にリリースされたときにCDで買ったし、この『Cupid』も最初はLPで買ったものの、比較的早い時期に出たCDを買ったから、最近のCDと比較すると、音圧が圧倒的にしょぼい。こうして近年のアルバムからの曲と並べて聴くと、音が大きくなったり小さくなったりして聴きづらいことこの上ないよ。早くこの時期のアルバム、リマスターされて再発されないかな。

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9. A World Come Back To Life

『Provision』からのシングルカット「Boom! There She Was」のカップリング曲。僕の持っているのは今やなつかしい日本盤の縦長8センチシングル盤。さっき書いた「First Boy In This Town」の12インチのB面もこの曲だったな。『Provision』に含まれていたとしても遜色ないぐらいの佳曲だと思う。この時期の未発表曲ってもっと他にないのかな。どうせリマスターされて再発されるなら、そういうボートラごっそり入れてくれればいいな(誰もリマスター再発するなんて言ってないのに勝手な妄想)。

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10. Doubt Beat

これも後に『Early』に収録されることになる、ファーストアルバム以前の79年にリリースされた12インチEPから。僕はリリース時じゃないけど80年代の結構早いうちに一度このレコードを行きつけのお店で見かけたんだけど、そのときはどういうわけか放流してしまったんだ。当時既に結構レアな廃盤だったはずなのに。それからずっとこれを探し続けていて、ネットオークションが盛んになった今世紀に入ってから、1万円以上出して購入した。これまで僕がシングル盤にかけた値段としては最高額。その数年後に『Early』が出てしまったんだけど、別にこのEPを買ったことは微塵も後悔してないけどね。

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11. Mystic Handyman

グリーンのヒップホップ趣味全開だということで、僕の中では一番評価の低いこの99年のアルバム『Anomie & Bonhomie』だけど、中にはこんな真っ当なポップ曲も入っている。こういうのをより内省的に深化させたのが7年後のアルバムなんだと思う。『Absolute』に収録された07年の新曲はもっと昔の全盛期を思い出させるハイパーポップ風味で、それはそれで嬉しかったんだけど、僕としてはこういう直球ど真ん中なポップスを今後のグリーンには期待したいな。

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12. Sugar And Spice

さっき写真を載せた、『Provision』からのシングル曲「Boom! There She Was」にはザップのロジャー・トラウトマンが彼のトレードマークであるボコーダーを使ったボーカルで参加していることで有名だが、同じアルバムのこの曲にも彼は参加している。このアルバム、ロジャーといいマイルス・デイヴィスといい、グリーンの黒人音楽好きがモロに反映された有名ゲストが参加しているけど、なにげに影響力大なのが、ベースで参加しているマーカス・ミラーかも。前作では殆どの曲のベース音がデイヴィッド・ギャムソンのプログラミングによるものだったけど、やっぱりこうして一流のべーシストが入っていると音が違うよね。僕が『Provision』の方をより好きなのは、それも一因かもね。

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13. Messthetics

「Skank Bloc Bologna」に続く79年の2枚目の7インチ(時期的にはさっきの12インチ「4 A Sides」が先かな)から。僕が初めてスクリッティ・ポリッティを聴いたのは、80年前後に放送されていた当時ジャパンレコードのディレクター(だったかな)芹沢のえさんのナイトラインというFM番組で、「Skank Bloc Bologna」とこのシングルから数曲が流れたときだったと記憶している。このシングルも先ほどの12インチ同様もう既にこの時期には廃盤で、僕が入手したのは、記録によると86年の夏に旅行で訪れた福岡で、2200円という(この手のシングル盤としては)破格値でだったようだ。

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14. Dr. Abernathy

『White Bread, Black Beer』はこういう曲が入っているから(中期)ビーチボーイズまでが引き合いに出されるんだよね。極初期の稚拙なアヴァンギャルドや全盛期のハイパーポップがスクリッティ・ポリッティだと思っていた人は(僕も含めて)、まさかグリーンがこんなに複雑に構成された曲を書くことになるなんて想像もしなかった6分半の大曲。プログレッシブ・ポップと勝手に呼ぼう。

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15. Lover To Fall

『Cupid』からもう一曲。これで、アルバム中唯一のバラッド「A Little Knowledge」を除く全曲が、オフィシャルベスト盤『Absolute』とこの裏ベストに収録されたということになる。別に「A Little Knowledge」が駄曲だからという理由で除いたわけじゃないから、シングルカットされた曲かどうかということを別にしても、アルバム中どの曲もベスト盤に入れることができるという、よく言われる“捨て曲なし”とはまさにこういうアルバムのことを言うんだね。

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16. Philosophy Now

そして、僕にとってはこちらも捨て曲なしのアルバムを締めくくるこの曲をここに。エレクトリック・セカンドラインと呼んでもいいような、ゆったりと気持ちいいリズムのナンバー。いくら黒人音楽好きといっても、グリーンが後にも先にもニューオーリンズ系の音楽に傾倒していたことはないはずなのに、どうやってこんなリズムのこんな曲を作れるんだろう。こういうのは、メンバーでありながらこの時期にはグリーンと共に共同プロデューサーの地位になっていたデイヴィッド・ギャムソンの貢献なのかな。

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17. Here Come July

ヒップホップアルバム内のもう一曲の変わり種。というか、どの時期のスクリッティ・ポリッティにも全然ない性急なハードロック風味(といってもやっぱりグリーンのあの声が入るだけでスクリッティ・ポリッティ以外の何者でもなくなってしまうんだけど)。かっこいいな。本人はどう思ってるんだろう、こういう曲のこと。やっぱり埋め曲的な存在でしかないのかな。

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18. Gettin' Havin' & Holdin'

一転して、ファーストアルバムからこの心地よく弛緩したナンバーを。この『Songs To Remember』って、きっと当時のグリーンがやりたかったことを全部詰め込んだから、一聴とっちらかった感じがしなくもないけれど、こうして一つひとつの曲を抜き出して聴いてみると、いい曲が多いんだよね。表のハチのマークとか文字とか青い線とか、丁寧にエンボス加工されたジャケットのLP、僕のはもう背中や上の部分が黄色く日焼けしてしまっているけれど、今でもとても大事なレコードの一枚。

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19. 28/8/78

落ち着いたところで更に遡って、3曲入りデビュー作「Skank Bloc Bologna」の残りの一曲を。この暴力的なまでの演奏とコラージュされた語りがとてもクール。演奏技術はイマイチだったかもしれないけれど、自分たちが表現したいことをこうして最初のシングルから確実に形にできていたというのはやっぱり凄いよ。それにしても、こんな曲(?)を作っていた人達がそのわずか3〜4年後にさっきの18みたいな正統派ポップスを書けるようになるなんて、やっぱり不思議。

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20. Road To No Regret

さっきの19でブツンと終わってもよかったけど、最後にこれを入れてクールダウンして終わることにしよう。一応15あたりからここまでが、スクリッティ・ポリッティの変遷し続ける音楽性を逆回転の早回しみたいに見られるような作りにしてみたつもり。さっきも書いたけど、実際に僕が持っているCDから(というか、今流通しているCDから)ピックアップすると、それぞれの音圧の違いにちょっと興醒めしてしまうのが玉に傷なんだけどね。


冒頭に「内容についてはあの記事に書いたとおり」と書いたときにはきっと今日はあっさりした短い記事になるだろうなと予想していたのに、結果的にはいつものとおりのダラダラ長文記事。しかも同じ写真が何回も出てくるから、余計に何度もスクロールしないといけないのは申し訳ない。3月6日の記事の頃にはスクリッティ・ポリッティが自分内ブームだったのが、やがてR.E.M.とかボブ・モウルドとか色んな人たちにブームが移っていってたのに、この記事のおかげでまた自分内スクリッティ・ポリッティ・ブーム再燃。しかも、ついイーベイとか見てしまったから、あれこれ欲しいもの何枚も見つけてしまった。まずい兆候。


posted by . at 00:37| Comment(8) | TrackBack(0) | yascd | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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