2010年12月05日

Jonsi live in Tokyo

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どう表現すればいいのかわからない。とにかく、とてつもなく凄いライヴだった。本編最終曲「Around Us」が途切れた瞬間の、背中を電流が駆け抜けたようなあの衝撃。そのままアンコールになだれ込み、極彩色の被りものを頭に付けたヨンシーが一心不乱に踊る「Sticks And Stones」での祝祭感。わずか1時間半の間、荘厳さから高揚感までのダイナミックレンジがあれほどまでに広かったライヴは初めて経験したかもしれない。

2年前に同じ会場でシガー・ロスを観たときは喉を傷めて苦しそうにしていたヨンシーだったが、今回は絶好調。CDで聴くよりも一段と伸びやかなあのファルセットを、あんなボリュームで、あんなに息継ぎもせず歌う様は、もはや人間とは思えない。声だけでなくパフォーマンス全てがそう。たとえば、大友克洋の『AKIRA』で鉄雄やアキラが超能力で月を破壊したり核爆弾級の爆発を起こさせたりといったシーンがあるけど、ああいうものを実際に目前で見せられているような気分だった。


ちょっと冷静に、いつものように日記風に書きだしてみよう。昨日の記事に書いたように、タマス・ウェルズ公演の初日と最終日に挟まれる形になったこのライヴ、僕の家からは果てしなく遠い新木場という場所のことも考えると、かなり醒めた気持ちで挑んだのは事実。整理番号はまたどうしようもなく大きな番号だったし、以前書いたフォール・アウト・ボーイのライヴ記事で文句たらたらだったのと同じく、ドリンクチケット代の500円は単なるお賽銭みたいなもんだったし、あの広い会場があっという間にソールドアウトになったぐらいの超満員のせいで、臨場感という言葉とは程遠い場所から眺めるように観ていたから(幸運なことに、視界を遮る人がいなかったので、常にステージ全体を見渡せていたんだけど)、ほとんど真っ暗なままのステージにヨンシーともう一人のメンバーが現れて、「Stars In Still Water」の弾き語りを始めるまでは、それほどわくわくしていたわけでもなかった。せっかくのヨンシーなのに。

そう、ステージは終始暗かった。前日のスコットホールでのタマス・ウェルズ公演にも負けず劣らず。さすがにこの規模の会場で間接照明というわけではなく、ライティングにはすごく凝っていたんだけど、僕が観ていた遠い場所のせいもあって、ステージ上で誰がどこにいるのかよくわからないような状態にも度々なっていた。そうだな、イメージ的には、アミーナのファーストアルバムのジャケみたいな、薄暗い狭い部屋で数人がコツコツと作業しているといった雰囲気かな。結構広いステージなんだけど、所狭しといろんな楽器が置いてあったこともあるし。

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開演前からステージの背景にはこんな鬱蒼とした森林のイメージが投影されていた。ステージ前方の左右には大きなスクリーンも配置され、それら全てを使って、演奏中に様々な映像が繰り出される。主にこの森林のイメージを起点に、いろんな動物や昆虫の実写やアニメーション、炎や雲、雨などのイメージと、演奏するメンバーのイメージが次から次へと映し出される。シガー・ロスのライヴのときもこういう映像が実に効果的に使われていたけど、今回のも圧巻だった。ステージがよく観えないこともあって、僕はこの映像ばかりをずっと観ていたような気がする。あのせかせかしたリズムの「Animal Arithmetic」のときのバックが、蟻がわーっと出てくる映像だったのが妙に合っていて面白かったな。

もちろん、冒頭に書いたように、例え暗くて小さくてよく見えなくても、ヨンシーの存在感は凄いものだった。『Go』のジャケと同じ服装で、主にアクースティックギター、時にはキーボードやパーカッションを自ら演奏。先述の「Sticks And Stones」やあと何曲かはハンドマイクで歩き回り、踊りながら唄う。あの人間離れした声で。

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ヨンシー 『Go』

ヨンシー以外のメンバーは4人。主にギターを弾いているのが、ボーイフレンドのアレックスだろう(みんな楽器をころころ変えるので、誰がどこにいるのかよくわからなくなる。顔見えないし)。スキンヘッドのドラマーは、シガー・ロスのオリーっぽい黒い王冠みたいなのを被っているね。オリーほどとてつもない感じじゃないけど、この人も凄いドラム叩くね。いや、この人だけでなく、みんな演奏上手。サンプリングっぽい音も含めて、誰がどの音を出しているのかいまいちよくわからなくもあるんだけど、一糸乱れぬ見事な演奏。もうこのツアーも終盤だしね、手慣れたものだ。

終始無言だったヨンシーが、一回だけ、「Go Do」の曲紹介のときに喋ったんだけど、あれ何語だった?あまり英語の発音の綺麗な人じゃないけど、とても英語には聞こえなかったぞ。どうせわからないからと、アイスランド語で紹介してたのかな(笑)。でも、その曲が終わったときには、「アリガトウゴザイマス」ときちんとした日本語で挨拶したのにはちょっと驚いた。あ、この人って人間だったんだ、みたいな(笑)

最後のアンコール「Grow Till Tall」を感動的に終え、一旦ステージ脇に下がったメンバーが、アンコールの拍手に応えて再登場し、ステージに横一列に並んで肩を組んで深々と挨拶をして終了したのも、シガー・ロスのときと同じ。このときだけは、ステージに煌々と明かりが点いた。なんだ、明るくしようと思えばできるんじゃないか(笑)。あれ?このフィナーレの感じ、どこかで観たことある。あ、そうか、前に何度か記事にしたシルク・ドゥ・ソレイユを観た時に、それまで超人的な演技を見せていたメンバーが最後の挨拶のときには人間に戻ったように思えたのと同じだ。それぐらい、この日の演奏中のヨンシーとバンドは、超人間的な存在に見えた。


来たときとは正反対の高揚した気分で新木場までの道のりを歩き、家に辿り着いたら、タイミングのいいことに、オーダーしていたこれが届いていた。

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ヨンシー 『Go Live』

日本では来日記念の限定生産盤として発売されたばかりの、ライヴCD+DVD。僕の記憶している限りでは、今回のライヴはこのCDと全く同じセットリストだった(CDは主に5月のブリュッセル公演での録音)。まあ、あれだけ完成されたセットだから、そう簡単に曲順変えたりできないだろうし。「Go Do」の手前でだけ喋るところも一緒。あれ?でもこのCDではちゃんと英語で話してるぞ。

あの、最後に背中に電流が走るような感じは、さすがに目の前で観ないとわからないだろうけど(観てない人、本当に残念でした)、それでもこのライヴCDはあの素晴らしいライヴを十分に再現しているよ。今ちょうどその箇所がかかったのを聴いて、背中と両腕に鳥肌が立った。詳しい解説と歌詞対訳がついた日本盤は初回盤だけらしいので、ちょっとでも興味のある人は是非どうぞ。『Go』には未収録の新曲が(DVDだけに収録のものも含めて)5曲も入ってるし。またその新曲がどれもやたらといいし。

ただ、リンクしたアマゾンのカスタマーレビューにもあるけど、このDVD、どういうわけか音飛びがある。うちにはBDプレイヤーとDVDプレイヤーが一台ずつあって、それぞれで音飛びの箇所と度合いが違うというなんだかよくわからない不良具合だけど、幸いどちらも(一回観た限りでは)実際の演奏が始まってからは音飛びがないのでまあそれなりに観られる。これ、交換してくれないのかな。

DVDの内容も、いつも見事な映像作品をリリースしているヨンシーらしく、かなり充実。残念ながらCDのようにライヴの様子を全て網羅したものではないし、途中にインタビューなどを挟んでいるから、今回観たライヴのように最初から最後まで没頭して観るにはちょっと流れが途切れてしまうんだけど。でもまあ、繰り返しの視聴に耐える、いい音楽DVDであることには違いない。


さて、今晩はいよいよタマスの最終公演。今時点での気持ちはもうそっちに移ってしまっているから、ヨンシーのことは自分の中ではひとまず横に置いておくことになるんだけど、この素晴らしいライヴ盤、長い目で見ると、僕の中で相当重要な位置を占めることになると思う。あと、どういうわけかうちに沢山あるいろんなヴァージョンの『Go』。それぞれに付いているDVDは実は時間がなくてまだ観れていないから、タマス熱が一段落した頃に早いとこまとめて観よう。

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