2010年12月31日

年の瀬に - Joy Division

Singles 1978-80.jpg
ジョイ・ディヴィジョン 『+- Singles 1978-80』

この年末は未使用の有給休暇を消化しつつ、少しゆっくりさせてもらっている。ちょっと遠くの友達の家に集まって年間ベスト10披露会を夜通ししたり、タマス日本ツアー慰労会をしたり(もちろんタマスは不参加)と、なにかと理由をつけては飲み歩く日々。

お蔭でせっかくの休みなのにちっとも部屋が片付かない。まあ、片付かない一番の理由は、例によってCDの並べ替えからスタートしてしまったこと。ここ数カ月で買ってまだラックに入れていなかった数十枚のCDを収納するついでに、これまでと全体の並び順を替え、ついでに売りに出すCDを選別していたら、それだけであっという間に2日ぐらい経ってしまったり。

ジョイ・ディヴィジョンの発掘音源がここ数年ざくざくと発表され、とても全部はついていけないなあと思っていたら、今度は7インチシングルの10枚組ボックスセットが発売された。

5000セット限定で、ボックスのデザインはピーター・サヴィルだというのに惹かれはするものの、このあまりの商魂のたくましさに、これはちょっと買わなくてもいいやと思っていた。

僕は、ジョイ・ディヴィジョンのシングルを編集したCD『Substance』も、前身ワルソウ(ワルシャワ)の編集CD『Warsaw』も、4枚組のボックスセットも持っているから、このボックスセットに収録されている音源は全部持っているので、どうせこんなの買っても記念品として置いておくだけだし。

Substance.jpg Warsaw CD.jpg Heart And Soul.jpg
ジョイ・ディヴィジョン 『Substance』(左)
ワルソウ 『Warsaw』(中)
ジョイ・ディヴィジョン 『Heart And Soul』(右)

上にリンクしたアマゾンでは18000円越えというとんでもない値付けがされているが、先日立ち寄った某レコード店ではそのほぼ半額。しかも10%オフセール中だという誘惑の嵐。おまけに、僕が店にいた間のBGMがずっとジョイ・ディヴィジョンだという念の入り様。

店内に鳴り響くBGMを振り切り(別に買うものはちゃんと買って)、次に訪れた店でふと“J”のコーナーに目をやると、先ほどよりも更に安い、嘘みたいな価格設定。ああ、これはもう、僕の音楽の神様が「買え」とおっしゃっているんだな。わかりましたよ。買いますよ。

というわけで、この年末の忙しいときに10枚のシングル盤をぐるぐるとひっくり返しながら、落ち着きなく過ごしている。部屋の片づけが一向に進まないんだけど、もしかしてこれは一種の現実逃避なのか?(そうです)

ところで、箱を開けて一枚目のシングル「Warsaw / Leaders Of Men」をかけようとしたら、いきなりこんなミスプレス盤。

Warsaw Single.JPG

丁寧な仕事には定評のあるライノなのに、これはちょっとひどいね。早速次の日に交換してもらいに行った。まだ売りきれずに残っていたのはラッキーだった。せっかく新宿まで来たからと、また追加で買い込んでしまったのは僕のせいじゃない。

内容についても少し触れておこう。『An Ideal For Living』として知られる最初のシングル「Warsaw」を始め、『A Factory Sampler』収録の「Digital / Glass」や、ファクトリー以外から出たシングル「Autosuggestion / From Safety To Where」、ソノシート「Komakino / Incubation / As You Said」など、全10枚21曲。それぞれのジャケットは完全復刻ではないものの、オリジナルのデザインを活かしつつ統一感の取れたいい感じ。さすがピーター・サヴィル監修。

ボーナスディスク扱いの10枚目は、アルバム『Closer』からの「Isolation / Heart And Soul」で、ジャケットは『Closer』そのままというのが、ちょっと拍子抜け。せめて未発表テイクとか、このボックスのための別デザイン(『Closer』の没バージョン?)とかにしてくれればよかったのにな。

ライノレコードのサイトに行って、全曲のMP3バージョンがダウンロードできるコードが入っているが、先述のとおり僕はCDで全部持っているから、それほどありがたみはないかな。ただ、「She's Lost Control」のB面扱いになっている「Love Will Tear Us Apart」は“Pennine Version”という別テイク(ミックス違い?)なのが、微妙に貴重。これ、僕の記憶に間違いなければ、CDとしては初出だと思うんだけど。


さて、今年はこの記事で最後。結局今日まで片づけは終わらなかったけど、紅白始まるからAKB見てこよう。せっかくCDラックを整理し終えた後にまた買ってきたCDを収納する場所も作らないといけないな。それでは、みなさんよいお年を。


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2010年12月28日

エキストラ出演 - →Pia-no-jaC←

Live @ 九段会館 DVD.jpg Live @ 九段会館 CD.jpg
Pia-no-jaC← 『LIVE @ 九段会館 〜Jumpin' →JAC← Flash Tour〜』DVD(左)
Pia-no-jaC← 『LIVE @ 九段会館 〜Jumpin' →JAC← Flash Tour〜』CD(右)

自分が実際にいたライヴがCDやDVDになったことって今までにあったっけ。自分が行ったのと同じツアーの違う日がライヴ盤になったり、自分がいた日の音源がいろんな場所での録音に混じって収録されたりしたことはあったと思うけど、こういうパターンは僕にとっては初めてかもしれない。

10月10日の記事に書いたとおり、その前日に行った九段会館での→Pia-no-jaC←のライヴが丸ごと、限定生産のDVDとCDになって先日発売された。

ライヴ自体の内容については前述の記事に書いたとおり。あの3時間にも及んだライヴから、トークと余興(?)を取り除くと、1枚のCDに収まってしまうのかというのがちょっとびっくり。とはいえ、このCDには、あの日演奏した全曲から3曲ほど割愛されているみたい。DVDの方には、アンコールの最後に演った「Happy」がエンディングSEとして収録されているから、どちらにも入っていないのは2曲。時間の関係か、それとも権利関係なのかも。

僕は二階席だったから、ステージ全体はよく見渡せたけど、やっぱりこうしてDVDでアップで観ると、彼ら二人とも凄い演奏をしているというのがよくわかるね。手持ちのカメラが多くて画面の切り替えが頻繁だから、ちょっと見ていて疲れる類のビデオではあるけど(それでも以前記事にしたスピッツのDVDとかよりはマシかな)、画質もよく、88分という時間も長すぎず短すぎずでいいと思う。

ところで僕は前述の記事に「僕の実物を知っている人なら、一部の方々にはお馴染みの僕のトレードマークの例のシャツを着て行ったので、そのDVDが出たら二階席を探してみて」と書いたんだけど、その“例のシャツ”を知っている人なら、もしかしたら上に載せた2枚のジャケ写で僕のことを探せるかも。このDVDとCDのジャケ、微妙に違うカットなんだけど、どちらにも僕は写り込んでしまっているよ。思わぬところでエキストラ出演してしまった。きっとひよりさんには腸羨ましがられることだろう。

いや、これはいい記念になったな。限定生産だというから慌てて近所のヴィレッジ・ヴァンガードで予約して買ったら、上にリンクしたアマゾンでは1000円以上も安く出てるのがちょっと気に食わないけど(笑)。選曲もいろんなアルバムから(とかアルバム未収録のコラボ作品とかも)収録されてて、ベスト盤として聴いて(観て)もいいかも。


さて、毎年年末恒例の駆け込み大量生産ブログ記事、今年はあとどれだけ書けるかな。自分の年間ベスト10を決めるために、前から気になってたものや先日友達の家で暫定年間ベスト10発表会をしたときに(何人かのベスト10を聴いて)チェックリストに入れたものとかをほぼ毎日大量に仕入れてきて聴き込んでいるから、あと3日でもう一記事ぐらいは書きたいけどな。まだ年賀状も一枚も書いてないし、部屋の片づけも一切してないんだけど…
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2010年12月25日

サイレント・ナイト - Peter Broderick / Tamas Wells

How They Are.jpg
ピーター・ブロドリック 『How They Are』

「誰もが悲しそうにしている」と無伴奏で静かに歌い出されるオープニング曲「Sideline」。しんとした静寂の中、落ち着いたクルーナー・ヴォイスの独唱がそのまま訥々と続き、これはこういう曲なんだと思い始めたころ、1分32秒のところで突然奏でられるピアノの音が殊更心に響く。

名前だけは前から知っていたけど、CDを通して聴いたことがなかったピーター・ブロドリックの最新作をふとしたことで安く入手できたので、早速聴いてみた。彼一人の演奏と歌だけが入った全7曲、30分強のコンパクトなアルバム。7曲中3曲がピアノの弾き語り。2曲がアクースティック・ギターの弾き語り。残り2曲がピアノのインスト。全曲スタジオでの一発録りのようだ。

上に写真を載せた、どんよりとした雲の下の雪の積もった街並みを銀色がかったグレー単色で印刷したジャケットが、このアルバムの内容をよく表している。美しいけど、悲しみがたくさん詰まった音楽。裏ジャケに載っている、屋根の上にぽつんと立ったアンテナの写真ですら悲しそうに見えてしまう。

所属はべラ・ユニオン(Bella Union)なんだね。このレーベル、僕はフリート・フォクシズやミッドレイクがぱっと頭に浮かぶけど、ちょっと調べてみたら、アンドリュー・バードとかアート・オブ・ファイティングとかもそうだった。他にも、気になっているけどまだ聴いていないフィリップ・セルウェイとか、MOJOのコンピで聴いたロウ・アンセムとかもいるね。ちょっとこれからしばらく、ここレーベル買いしてしまいそうな気配。

このアルバム、特にクリスマス・アルバムというコンセプトじゃ全然ないんだけど、全体を覆うこの静かな雰囲気がなんだか厳かな気分にさせてくれる。今年の僕のクリスマス・アルバムにしよう。別に今日しか聴かないというわけではなくね。年の瀬にいいアルバムに出会えたよ。安く買えたし(笑)、自分へのクリスマス・プレゼントだ。


クリスマス・プレゼントといえば、タマス・ウェルズとリリコ・レーベルから今日(24日)、素敵なプレゼントが届いた。先日の来日公演で初公開されたショート・フィルム『The Houses There Wear Verandahs Out Of Shyness』が、今日から1月16日までの期間限定でオンライン公開され始めた。

The Houses There Wear Verandahs Out Of Shiness.jpg

あの夜あの場所に居た人達も、残念ながら来られなかった人達も、ぜひ観てみてほしい。特別何が起こるわけでもない他愛もないストーリー(というほどのストーリーすらない)だけど、タマス・ウェルズが好きな人にはきっと気に入ってもらえると思う、とても素敵な映画だ。あるいは、この24日間で、きっとタマス・ウェルズのことを好きになる人が増えるだろう。リンクはこちら↓

The Houses There Wear Verandahs Out Of Shiness

丁寧な日本語訳はリリコ・レーベルの仕事。あ、そういえば、さっきのピーター・ブロドリックもリリコ、というか、インパートメント/p*disのオンライン・ショップで扱ってるから、タマス・ウェルズのファンの皆さんはアマゾンなんかで買わずに(笑)そちらでどうぞ。とか言ってる僕はうっかり別の店で買ってしまったんだけどね。ごめんなさい。これでタマスの次回の来日が1554円分遠くなってしまった(笑)

では皆さん、よいクリスマスを。
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2010年12月24日

北国の人達 - Woodpigeon / Pascal Pinon

12月3日、早稲田奉仕園スコットホールでのこと。開場と同時にホール内に入り、まず前の方に席を確保して、1月のシンガポール公演からほとんど一年振りのタマス・ウェルズのライヴをわくわくしながら待っていた僕は、場内に流れている静かなBGMに気がついた。あ、これブロークン・フライト。

ステッドファスト・シェパードもかかった。ウィンターピルズも。そんなセンスのいい選曲をするのは、もちろん主催者のsinさんだろうな。そんな中、僕は聴いたことなかったけど、すごく気になる曲がかかった。これ誰だろう。

次々に入場してくるお客さんの相手で忙しいsinさんを捕まえて訊いてみる。「今かかってるこれ、誰?」。「ウッドピジョンですよ」。え、そうなの?僕ウッドピジョンのCD持ってるのに、そう言われるまでわからなかった。


そう、あれは今を遡ること3年とちょっと前。そのときもタマス・ウェルズの東京公演のことだった。そのライヴを観るためにニュージーランドから駆け付けた僕と、僕が書いたタマスのセカンドアルバムのレビューにコメントを寄せてくださった一本道ノボルさんとの邂逅。ライヴ後の打ち上げで終電まで語り合った後(そうか、あの頃は終電までに帰るという一般常識を持ち合わせていたんだな、僕たちは)、彼が僕に教えてくれたバンドがあった。「これ、タマスの次にLiricoから出したんですよ。また僕がライナー書いたんで、よかったら聴いてみてください」。

Songbook.jpg
ウッドピジョン 『Songbook』

タイミングというのは大事なものだ。NZに帰って聴いてすぐにいいアルバムだと認識はしたものの、初の生タマスを観た直後の僕は、それからしばらく他のCDなど聴く気もおこらず(今回初めてタマスのライヴを経験された方ならこの気持ちをわかってもらえるでしょう)、1〜2回聴いただけでCDラックにしまい込んでしまった。一本道さん、ごめんなさい。


それから3年。sinさんから衝撃の事実(?)を聞かされた僕は、12月3日の夜(というか4日の未明)、タマス熱に侵されたままの頭で、CDラックから『Songbook』を引っ張り出してきてCDプレイヤーに乗せてみた。3年前より少しは地に足のついた冷静な気持ちで。

こんなにいいバンドだったなんて。

カナダ人シンガー・ソングライター、マーク・ハミルトン(Mark Hamilton)を中心とした7人編成の大所帯バンド。ライナーで引き合いに出されているスフィアン・スティーヴンスやベル・アンド・セバスチャンを連想させる、繊細なメロディーをこざっぱりとしたアレンジで奏でる(大所帯なのに)、凡百のインディーバンドとは明らかに一線を画すセンスのよさ。このジャケ画もいいが、ブックレットに描かれたいくつかの不思議なイラストも大好き。あのときブログに載せなかったのは明らかに失敗だった。

4日後、sinさんのブログに、「Tamas Wells Japan Tour 2010 ツアー後記の前に・・・SEプレイリスト」という記事が載った。あのときかかっていたBGMの選曲リストだ。ウッドピジョンの曲は「Redbeard」というのか。調べてみると、今年の初めに出たサード・アルバムに収録されている曲だ。それにしても、この選曲いいな。これCD-Rに焼いてくれないかな(笑)


Die Stadt Muzikanten.jpg
ウッドピジョン 『Die Stadt Muzikanten』

というわけで、早速この最新作を入手。15曲入りのフルアルバムというのはまあ珍しくもないけど、聴いてみたら更にシークレット・トラックが1曲、さらに12曲入りのボーナスディスク『Balladeer』まで封入という、なんなのこのボリューム(笑)。しかも、その全28曲がどれもこれも珠玉のメロディーだというこの凄さ。大げさに言いすぎるのを避けると、確かにそれほどでもない曲もいくつかあるけど、尋常でないクオリティの曲が次から次へと出てくるところが凄いよ。

埃だらけの古いレコードを模したアルバムタイトルトラックからいきなり彼らの(というか、マーク・ハミルトンの)世界にすっと引き込まれる(ちなみに、ファーストでは作曲クレジットにのみ使われていたMark Andrew of the Hamiltonsという名前が、このアルバムでは正式名称として使われているね。それが本名なのか?)。11曲目「Redbeard」はやはり名曲だね。イントロから最初のヴァースに入る箇所なんて、胸をかきむしられるような気持ちになる。

危なかった。こんなに優れたバンドを丁寧に紹介されておきながら、むざむざ自分の中で葬り去ってしまうところだった。早いとこセカンドも買おう。そっちにもボーナスディスクが付いてるみたいだし。


Pascal Pinon.jpg
パスカル・ピノン 『Pascal Pinon』

『Die Stadt Muzikanten』と一緒に買ったのが、サイトで試聴してすぐさま気に入ったこのアルバム。16歳の双子のアイスランド人姉妹だって。アイスランド語の曲と英語の曲が入り混じって出てくるけど、なんかアイスランド語って不思議な語感だね。前にシガー・ロスのライヴに行ったときに、ステージ上でヨンシーとキャータンが交わすアイスランド語がなんだか天使が話してるように聴こえたけど、これもそんな感じ。

アイスランド語で歌われる1曲目「undir heidum himni」で全編に亘って奏でられる不思議な管楽器の音は何だろう。内ジャケに書いてある楽器クレジットにバード・フルートってのがあるな、これかな。2曲目「arestidir」の人懐っこいメロディーはどこかで聴いたことがあるような気がする。何だっけ。この曲の鉄琴の音もいいね。

こういうのもローファイっていうのかな。全部姉妹の部屋で作りました、みたいな手作り感満載のこのアルバム、30分にも満たない軽い感じだけど、同じアイスランドでもビョークやシガー・ロスみたいに完璧に創り込まれた手の届かない世界でなく、アミーナの閉じた不思議な世界に通じるところがある。

和訳されたインタビューを見つけた。このグループ名、フリークスについての本から取ったと書いてあるね。道理でこの名前で検索かけたらなんだか不気味な男の写真がいっぱい出てくるわけだ。


ところで、僕がこの2枚のアルバムを買ったのは、タマス・ウェルズの日本でのディストリビューションをしているインパートメント/p*disのオンライン・ショップ。上に載せたアルバムタイトルに張ったリンクは一応アマゾンに飛ぶようになってて、もしあなたがそこでポチッとクリックしてこれらのCDを買ってくれたら僕の手元に何十円かが届く仕組みになっているんだけど、そんなのはどうでもいいから、もしあなたがこれらのアルバムを聴いてみようと思ってくれたなら、是非こちらのオンライン・ショップで買ってほしい。

別にsinさんが友達だからとか、ましてや彼に宣伝してくれと頼まれて書いてるわけじゃない。僕はただ、この会社にはどんどん儲けてもらって、そのお金で一回でも多くタマス・ウェルズを日本に呼んでほしいという、完全に自分のことだけを考えてそう言ってるだけ。今ならパスカル・ピノンのCDにはポスターも付いてるし、お得ですよ(今見てみたら、このCDまた在庫ナシになってるけど)。僕でも知らないようなアーティストのCDが満載だけど、だいたいどれも試聴できるようになってるから、気になったものはどんどん聴いてみればいいし。

とか書きながら自分でもまたこのサイトに行ってみたら、最近また新入荷が何枚かあったみたいだね。ちょっといくつか聴いてみて、ウッドピジョンのセカンドと一緒に買おうかな。Tシャツ好きとしてはかなり気になるデザインのシャツもいっぱいあるし。
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2010年12月11日

Tamas Wells live in Tokyo 2010 Pt. 2

Santa.JPG

あれからもう一週間も経ってしまった。

先週の金曜、早稲田に時間通り辿り着くために仕事をとっとと切り上げてきてしまったこともあり、また年の瀬の繁忙期ということもあって、この一週間はブログを書く時間も頂いたコメントに返事をする時間もまったく取れなかった。

そんな慌ただしい一週間、僕の後頭部あたりにはずっと、腫瘍のようなものが巣食っていた。腫瘍といっても死に至るようなものじゃない。あの濃厚な日曜日の思い出が、仕事中もラッシュの通勤中も、僕の脳内にずっと留まっていた。そのお蔭で、辛い仕事も乗り越えられたようなものだ。いや、過去形で書くのもおかしいね。まさにこれを書いている今も、延髄のあたりのちょっと深いところに、何やら幸せな気持ちと音がいっぱい詰まった部分があるのを感じとることができる。

記憶のディテールは少しずつ霞みはじめてはいるものの、その幸せの腫瘍をちょっと頭から切り出して、その中身をここに書き記しておこう。急いで書いた初日の記事への訂正事項なんかも少し交えながら。


井の頭線はしょっちゅう利用しているけれど、永福町に降りるのはこの日が初めて。記憶していたとおりに駅からの一本道をまっすぐ歩く。徒歩7分とは聞いていたけれど、本当にこんな普通の住宅街にあるのかとちょっと不安になってきた頃に辿り着いたヴェニュー、sonorium。素晴らしい会場だった。リンク先の写真で見られるような外観や内装だけでなく、音が。本当にいい音を限られた人数の大事な人達に聴いてほしいという願いが込められているのがよくわかる造り。同じサイトのコンサートカレンダーにはどういうわけかタマスのことは載っていないけど、普段はクラシックの演奏会が行われているような場所なんだね。

Tamas Ticket.jpg

実は、今回のタマス・ウェルズ公演二日間の僕のチケットの番号は、初日が1番、この日が2番という、もしこれが整理番号だったなら飛びあがって喜ぶようなものだった。でも、いつものとおり入場は到着順。行きがけに下北沢でちょっとうろうろしてしまった僕は(それでも開場の30分近く前に着いたにも関わらず)、既に何人か並んでいた列の後ろにつくことになった。初日に一緒に一番乗りした友達はちゃっかりこの日も一番前に並んでいたけどね。

もちろん、80名限定のこの小さなホールで、その程度の順番なら些かの問題もない。タマス達も、いつもこんなおっさんに一番前に陣取られているより、最前列は女の子が多い方が嬉しいだろうしね(笑)

初日よりもゆったりと配置された椅子に腰かけて、友達と雑談しながら開演を待つ。強制的に500円を徴収しておきながら実際にドリンクバーに辿り着くのは至難の業という前日のスタジオコーストとは違って、殆ど並ぶこともなく任意で選べるグラスワインなら、同じ500円でもなんだかずっと優雅な気分になれるよ。

真っ白な壁にそのまま投影されるオープニングのショートフィルム。また出だしのところでちょっととちったのはご愛敬ということで。このフィルムの中で(CD音源でなく)実際に演奏されるのは「Fire Balloons」の他に「An Extraordinary Adventure (of Vladimir Mayakovsky in a Summer Cottage)」なんだけど、そのセカンド・ヴァースがCDに収められているのとは違ったメロディーなのが貴重。僕は初日とこの日、二回聴いただけなんだけど、それからすっかりこの歌を口ずさむときにはその初期メロディーで歌ってしまっているよ。確かに、最終的にCDに収められたメロディーの方が洗練されてはいるんだけどね。

初日の記事にも書いた、演奏中に大雨が降りだす「Fire Balloons」のテイク、この日も期待して聴いたら、ちょうどタマスが歌い終えて間奏に入るところで雷が鳴り、演奏を終えたところでもう一度鳴るという、計ったようなタイミングのよさ。さすがにこれは後で編集したんじゃないのかと思って、後でタマスに聞いてみたら、本当にあれはライヴなんだそうだ。すごいね、自然まで味方につけるのか。「あのテイク欲しいんだけど、持ってたらコピーしてくれない?」と聞いてみたけど、自分では持っていないらしい。残念。フィルムが公開されたらそれを聴くことにしよう。


初日よりもリラックスして、初日とは違った曲目をつい時間をオーバーして歌ったキムのオープニングに続いて、いよいよタマス・ウェルズ日本最終公演のスタート。初日とは違い、最初はタマスが一人で登場。「My name is Tama chan」でいきなりリラックスムードに。初日とは選曲を変えるとは聞いていたけど、一曲目が「Stitch In Time」だったのが少し意外。こういう静かなオープニングもいいね。

「From Prying Plans Into The Fire」に続いてピアノに移るタマス。実は、初日の終演後に彼と話していたときに、僕が『Thirty People Away』のレビュー記事の最後に書いたアウン・サン・スー・チーさん解放についてもちかけてみたんだ。「スー・チーさんのニュース、どう思う?よかったよね。今日はてっきりその話をして、Signs I Can't Readを歌ってくれるかと思ってたんだけど」って。そのときはそこから、彼が自分のブログに書いていた南京の話とか、果ては尖閣諸島の話とか、えらく話が広がってしまったんだけど。

鍵盤を確かめながらタマスが喋りはじめたのは、アウン・サン・スー・チーさん解放の話。先日僕に話してくれたように、「いろんな国が平和のために軍備を拡大していくのは悲しい」というような前置きに続いて、「Signs I Can't Read」を歌い始めた。この曲のピアノ・ヴァージョンなんて。あとで「あれ、本当はピアノで書いた曲?」って聞いてみたけど、そうではないらしい。あんなに素晴らしいヴァージョンだったのは、左手で弾く通奏低音の響きが素晴らしかったというのもある。

Steinway.JPG

このホールのスタインウェイ、あとでアンソニーに聞いたところによると、スタインウェイ本社から調律師が定期的に来ていて、その人曰く、現在東京にあるスタインウェイで一番状態のいいものだそうだ。「弾いていてわかるけど、普通のピアノとは全然違うよ」とのこと。

続く「An Organisation for Occasions of Joy and Sorrow」をピアノで弾き終えると、アンソニーとキムが入場。そこからは、初日とほぼ同じセットだった。客層が初日と重なっているからか(キムが時間をオーバーしたからか)、「Reduced To Clear」の説明などもなくどんどんセットが進んでいく。

白い壁に投影される映像。初日の記事に「(おそらく)ミャンマーの風景と『Two Years In April』の原画」と書いたけど、よく見るとあれミャンマーだけじゃないね。大阪の風景も一枚混じってたよ。オーストラリアの風景も沢山あったみたいだし。訂正。

金曜日に東京の自転車屋さんで見つけたという、『Two Years In April』の鐘と同じ音がするベル、初日はやたら失敗していた(笑)キムだったけど、この日は結構上手く鳴らしていたね。各曲のエンディングでアンソニーのピアノに合わせて鳴らすタイミングだけはどうにも合っていなかったけど。

そうそう、初日の記事に「The Opportunity Fair」でタマスのギターが上手くなったことを書いたけど、その曲でフィンガーピッキングをしているのはキムだったね。タマスは以前と同様コード・ストロークで弾いていた。訂正その2。それでも、以前よりも相当上手に聴こえたのは、彼が上手くなったからか、それとも使っているギターが800円のミャンマー製でなくマーティンになったからなのか。

初日の記事に書き忘れたけど、「True Believers」を書いたのは前回来日したときの東京のホテルの部屋だったそうだ。ミャンマーに帰ってから歌詞を書き終えて完成したらしいけどね。そういうのを聞くと、お気に入りのあの曲が一層身近に思えるね。

「England Had a Queen」の間奏で、アンソニーのピアノの音が少し外れたので「あれ?」と思ったんだけど、そのときはうまく取りつくろって、まるでそういうアドリブだったかのように続けたもんだからてっきりそういうアレンジなのかと思いきや、タマスもキムも今にも噴き出しそうな顔。終了後、キムが「笑いながらタマスの歌にコーラスを入れるのは難しいよ」って。アンソニーは真っ赤な顔で「ふうっ!」って深呼吸。おかしかった。

続く「Vendredi」の曲前の練習で、タマスがわざとカポをつける場所を変えて、アンソニーのピアノがまた間違えているように聴こえるジョークでからかう。「ごめんごめん、今のは僕だ(笑)」と言ってカポをつけ直して歌い始めたはいいが、最初のヴァースを歌ったところで急に噴き出して中断。おいおい、自分のジョークに自分で受けててどうすんの(笑)。この日のリラックスモードが最高潮に達した瞬間だったね。

キビダンゴの話をしたのはどの曲のときだっけ。前日の京都公演にはるばる岡山から駆け付けた人がいて、その人にもらった土産のキビダンゴをタクシーの中に置き忘れてしまったエピソード。最後に「キビダンゴ、ドコデスカ?」と日本語で言ったのが面白かった。

この日のアンソニーのピアノソロは2曲。タマスとアンソニーが昔近所に住んでいて、古い本を持ち寄って読んでいたという通りにちなんで名づけられた「Melon Street Book Club」と、それにメドレーのように続けて演奏された「A Dark Horse Will Either Run First Or Last」。タマスはどういうわけか後者のタイトルを「A Dark Horse Will Either Finish First Or Last」と紹介していたような気がしたけど。タマスが曲紹介をしているときにアンソニーが後ろで「Melon Street」をポロンポロンと静かに練習していたのが気になったらしく、「話してるんだからそれやめてくれないか」みたいな顔でアンソニーをじっと見て、「ああ、ごめんごめん」みたいなやりとりもおかしかったな。

クライマックスの「Valder Fields」〜「Nepean News」を経て、本編ラストは初日とは違って「I'm Sorry That The Kitchen Is On Fire」。初日終演後にキム達と話していた通り、この日は観客に「Friday」のコーラスをまず練習させてスタート。「京都ではもっと上手だったよ」とか言ってたけど、sinさんによると京都では観客にコーラスはさせなかったそうだ。お茶目なうそつきタマス。

3人編成になってからここまで、「Friday」を除くと初日とまったく同じセットリスト。約束した「Fire Ballons」とか演ってくれないのかと思い、アンコールで出てきたときにその曲名を叫ぼうかと思っていたら、タマスが爪弾き始めた音はまさにその曲のイントロだった。CDで聴いてもいい曲だとは思っていたけど、こうして目の前で演奏されると、自分の目が潤んでくるのがわかる。かつて『Thirty People Away』発売前に音源を聴いたsinさんが“「Valder Fields」超え”と評しておられたのを読んで「それはないだろう」と思っていたけど、いや、僕が間違っていたよ。

もうこれで十分。他にリクエストした「The Northern Lights」とか演ってくれてないけど、これがラストで全然構わないという気持ちでいたところに、エンディングの「For The Aperture」。最近だいたいラストはこれか「Friday」だね。初来日のときみたいに「Nowhere Man」でしっとり終えるよりも、アップテンポな曲で華やかに終えるのが好きなのかな。いや、もちろん悪くはないけどね。

最後の挨拶で「来てくれてありがとう。今回も本当に楽しかった。キビダンゴが見つからないのが残念だけど」と言って笑わせようとしたら、アンソニーが「それ僕が食べたよ」だって。ほんとにこの二人の掛け合い、おかしいね。

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ところで、左のタマスのセットリスト、右のキムのセットリストを見ると、実はアンコールには「Grace And Seraphim」と「Broken By The Rise」が予定されていたようだ。キムのせいで(笑)それらはカットされてしまったんだろうけど、まあいいや、「Fire Balloons」聴けたし。実物をもらってきたキムのリストには、それぞれの曲のカポの位置が書いてある。「これ参考にしてギター練習しようかな」と言ったら、「タマスの曲はだいたいGかCのコードだけだから簡単だよ」とキム。


終演後、また3人とゆっくり話す時間に恵まれた。冷え込む屋外で待っていたのは大変だったけど(生脚むき出しの友達もいたけど・笑)、濃密な日曜日パート2の始まりだ。えーと、何の話をしたかな。

「ジョハンナのことを歌ってるの?」と聞いてみた「Your Hands Into Mine」、答えは「ノー」だった。この日、歌い始める前に「This song is about grace」と確か言ってたね。うまく言えないけど、誰か特定の人を念頭に置いて書いたんじゃなく、もっと大きな愛情についてということなのかな。

レビュー記事に「この曲の背景を教えてくれるだろうか」と書いたけど、結局演奏しなかった「Her Eyes Were Only Scars」の歌詞の意味。あれは、彼の友達のミャンマー人の修道僧の実話だそうだ。その僧の母親も尼僧で、彼女が一人で家にいた時にうっかり熱湯を顔にかぶってしまったとのこと。盲目になってしまったその母親を15年間も面倒を見続けたその僧についての歌なんだって。ローブとかサンダルとかって、そういうのを示唆してたんだね。相変わらず、複線だけを提示して結末は教えてくれない不親切な歌詞(笑)。ちなみに、デニース・ロックヘッドの物語は全てフィクションなんだって。

「いつも歌詞を熱心に聞いてくれてありがとう」とタマスにお礼を言われたのが嬉しかった。「ブログに自分の歌詞の解説を載せてみれば?」と提案してみたらまんざらでもなさそうだったので、そのうち本人による『Thirty People Away』ライナーノーツが載るかもね。

次のyascdのネタにとこっそり考えていたタイトルが、タマス(キムだったかな)の口から出てきたのには驚いた。“メルボルン・コネクション”の話題になって、メルボルンの音楽シーンがどんなに充実しているかという話に進んだ。僕がそのミックスに入れようと考えていたラックスミス(The Lucksmith)とかスタインベックス(The Steinbecks)とかの名前を出すと、「なんでメルボルンのこと、そんなに詳しいの?」とタマス。もちろんそれは、あなたの音楽に影響されたからだよ。

前日に行ったヨンシーのライヴの話をして散々羨ましがらせてもあげた(笑)。ヨンシーのファン度は、キム<アンソニー<タマスの順のようで、特にタマスは「バンドは何人編成だった?」とか「シガーロスの曲は演ったの?」とか「シガーロスの最新アルバムとヨンシーのソロはどっちがいい?」とか「今回ツアーしているのはヨンシー名義?それともバンドとしての名前が付いてるの?」とか「ヨンシーは自分ではどの楽器を演奏するの?」とか、もう延々と質問攻め(笑)。僕のウォークマンで「Go Do」を聴かせてあげたら熱心に聴き入って、隣にいたアンソニーにも「ちょっとこれ聴いてみな。いいよ」とか勧めてたな。


sinさんのツィッターブログで来日後記とかささいなエピソードを読んで幸せの腫瘍に栄養補給。そこからたどって見つけた、会場で写真を撮っておられた三田村さんのブログ。いい写真が沢山。

昔からの友達、初日に知り合った方、この日の終演後に一緒になった方、たくさんの方々とsinさん暢平さん、そしてタマスご一行と一緒にニコニコ笑いながら至福の時間を過ごし、名残惜しく別れてきた。日曜の夜中に相当夜更かししたせいで、ただでさえ忙しいこの一週間は体力的には地獄の苦しみだったけれど、あのとき僕の後頭部に埋め込まれた幸せの種子が大きくなって心地よい腫瘍に育っているから、僕は大丈夫。まだまだ忙しい日は続くけれど、これが頭の中に居残っている間は全然問題なくやっていけるよ。

sonorium_0001.jpg


Setlist 05 Dec 2010 @ sonorium

1. Stitch In Time
2. From Prying Plans Into The Fire
3. Signs I Can't Read
4. An Organisation For Occasions Of Joy And Sorrow
5. Fine, Don't Follow A Tiny Boat For A Day
6. When We Do Fail Abigail
7. The Opportunity Fair
8. Reduced To Clear
9. Open The Blinds
10. Lichen And Bees
11. True Believers
12. Your Hands Into Mine
13. England Had A Queen
14. Vendredi
15. The Crime At Edmond Lake
16. Melon Street Book Club
17. A Dark Horse Will Either Run First Or Last
18. Valder Fields
19. Writers From Nepean News
20. I'm Sorry That The Kitchen Is On Fire

[Encore]
1. Fire Balloons
2. For The Aperture

<12月21日追記>

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2010年12月05日

Jonsi live in Tokyo

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どう表現すればいいのかわからない。とにかく、とてつもなく凄いライヴだった。本編最終曲「Around Us」が途切れた瞬間の、背中を電流が駆け抜けたようなあの衝撃。そのままアンコールになだれ込み、極彩色の被りものを頭に付けたヨンシーが一心不乱に踊る「Sticks And Stones」での祝祭感。わずか1時間半の間、荘厳さから高揚感までのダイナミックレンジがあれほどまでに広かったライヴは初めて経験したかもしれない。

2年前に同じ会場でシガー・ロスを観たときは喉を傷めて苦しそうにしていたヨンシーだったが、今回は絶好調。CDで聴くよりも一段と伸びやかなあのファルセットを、あんなボリュームで、あんなに息継ぎもせず歌う様は、もはや人間とは思えない。声だけでなくパフォーマンス全てがそう。たとえば、大友克洋の『AKIRA』で鉄雄やアキラが超能力で月を破壊したり核爆弾級の爆発を起こさせたりといったシーンがあるけど、ああいうものを実際に目前で見せられているような気分だった。


ちょっと冷静に、いつものように日記風に書きだしてみよう。昨日の記事に書いたように、タマス・ウェルズ公演の初日と最終日に挟まれる形になったこのライヴ、僕の家からは果てしなく遠い新木場という場所のことも考えると、かなり醒めた気持ちで挑んだのは事実。整理番号はまたどうしようもなく大きな番号だったし、以前書いたフォール・アウト・ボーイのライヴ記事で文句たらたらだったのと同じく、ドリンクチケット代の500円は単なるお賽銭みたいなもんだったし、あの広い会場があっという間にソールドアウトになったぐらいの超満員のせいで、臨場感という言葉とは程遠い場所から眺めるように観ていたから(幸運なことに、視界を遮る人がいなかったので、常にステージ全体を見渡せていたんだけど)、ほとんど真っ暗なままのステージにヨンシーともう一人のメンバーが現れて、「Stars In Still Water」の弾き語りを始めるまでは、それほどわくわくしていたわけでもなかった。せっかくのヨンシーなのに。

そう、ステージは終始暗かった。前日のスコットホールでのタマス・ウェルズ公演にも負けず劣らず。さすがにこの規模の会場で間接照明というわけではなく、ライティングにはすごく凝っていたんだけど、僕が観ていた遠い場所のせいもあって、ステージ上で誰がどこにいるのかよくわからないような状態にも度々なっていた。そうだな、イメージ的には、アミーナのファーストアルバムのジャケみたいな、薄暗い狭い部屋で数人がコツコツと作業しているといった雰囲気かな。結構広いステージなんだけど、所狭しといろんな楽器が置いてあったこともあるし。

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開演前からステージの背景にはこんな鬱蒼とした森林のイメージが投影されていた。ステージ前方の左右には大きなスクリーンも配置され、それら全てを使って、演奏中に様々な映像が繰り出される。主にこの森林のイメージを起点に、いろんな動物や昆虫の実写やアニメーション、炎や雲、雨などのイメージと、演奏するメンバーのイメージが次から次へと映し出される。シガー・ロスのライヴのときもこういう映像が実に効果的に使われていたけど、今回のも圧巻だった。ステージがよく観えないこともあって、僕はこの映像ばかりをずっと観ていたような気がする。あのせかせかしたリズムの「Animal Arithmetic」のときのバックが、蟻がわーっと出てくる映像だったのが妙に合っていて面白かったな。

もちろん、冒頭に書いたように、例え暗くて小さくてよく見えなくても、ヨンシーの存在感は凄いものだった。『Go』のジャケと同じ服装で、主にアクースティックギター、時にはキーボードやパーカッションを自ら演奏。先述の「Sticks And Stones」やあと何曲かはハンドマイクで歩き回り、踊りながら唄う。あの人間離れした声で。

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ヨンシー 『Go』

ヨンシー以外のメンバーは4人。主にギターを弾いているのが、ボーイフレンドのアレックスだろう(みんな楽器をころころ変えるので、誰がどこにいるのかよくわからなくなる。顔見えないし)。スキンヘッドのドラマーは、シガー・ロスのオリーっぽい黒い王冠みたいなのを被っているね。オリーほどとてつもない感じじゃないけど、この人も凄いドラム叩くね。いや、この人だけでなく、みんな演奏上手。サンプリングっぽい音も含めて、誰がどの音を出しているのかいまいちよくわからなくもあるんだけど、一糸乱れぬ見事な演奏。もうこのツアーも終盤だしね、手慣れたものだ。

終始無言だったヨンシーが、一回だけ、「Go Do」の曲紹介のときに喋ったんだけど、あれ何語だった?あまり英語の発音の綺麗な人じゃないけど、とても英語には聞こえなかったぞ。どうせわからないからと、アイスランド語で紹介してたのかな(笑)。でも、その曲が終わったときには、「アリガトウゴザイマス」ときちんとした日本語で挨拶したのにはちょっと驚いた。あ、この人って人間だったんだ、みたいな(笑)

最後のアンコール「Grow Till Tall」を感動的に終え、一旦ステージ脇に下がったメンバーが、アンコールの拍手に応えて再登場し、ステージに横一列に並んで肩を組んで深々と挨拶をして終了したのも、シガー・ロスのときと同じ。このときだけは、ステージに煌々と明かりが点いた。なんだ、明るくしようと思えばできるんじゃないか(笑)。あれ?このフィナーレの感じ、どこかで観たことある。あ、そうか、前に何度か記事にしたシルク・ドゥ・ソレイユを観た時に、それまで超人的な演技を見せていたメンバーが最後の挨拶のときには人間に戻ったように思えたのと同じだ。それぐらい、この日の演奏中のヨンシーとバンドは、超人間的な存在に見えた。


来たときとは正反対の高揚した気分で新木場までの道のりを歩き、家に辿り着いたら、タイミングのいいことに、オーダーしていたこれが届いていた。

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ヨンシー 『Go Live』

日本では来日記念の限定生産盤として発売されたばかりの、ライヴCD+DVD。僕の記憶している限りでは、今回のライヴはこのCDと全く同じセットリストだった(CDは主に5月のブリュッセル公演での録音)。まあ、あれだけ完成されたセットだから、そう簡単に曲順変えたりできないだろうし。「Go Do」の手前でだけ喋るところも一緒。あれ?でもこのCDではちゃんと英語で話してるぞ。

あの、最後に背中に電流が走るような感じは、さすがに目の前で観ないとわからないだろうけど(観てない人、本当に残念でした)、それでもこのライヴCDはあの素晴らしいライヴを十分に再現しているよ。今ちょうどその箇所がかかったのを聴いて、背中と両腕に鳥肌が立った。詳しい解説と歌詞対訳がついた日本盤は初回盤だけらしいので、ちょっとでも興味のある人は是非どうぞ。『Go』には未収録の新曲が(DVDだけに収録のものも含めて)5曲も入ってるし。またその新曲がどれもやたらといいし。

ただ、リンクしたアマゾンのカスタマーレビューにもあるけど、このDVD、どういうわけか音飛びがある。うちにはBDプレイヤーとDVDプレイヤーが一台ずつあって、それぞれで音飛びの箇所と度合いが違うというなんだかよくわからない不良具合だけど、幸いどちらも(一回観た限りでは)実際の演奏が始まってからは音飛びがないのでまあそれなりに観られる。これ、交換してくれないのかな。

DVDの内容も、いつも見事な映像作品をリリースしているヨンシーらしく、かなり充実。残念ながらCDのようにライヴの様子を全て網羅したものではないし、途中にインタビューなどを挟んでいるから、今回観たライヴのように最初から最後まで没頭して観るにはちょっと流れが途切れてしまうんだけど。でもまあ、繰り返しの視聴に耐える、いい音楽DVDであることには違いない。


さて、今晩はいよいよタマスの最終公演。今時点での気持ちはもうそっちに移ってしまっているから、ヨンシーのことは自分の中ではひとまず横に置いておくことになるんだけど、この素晴らしいライヴ盤、長い目で見ると、僕の中で相当重要な位置を占めることになると思う。あと、どういうわけかうちに沢山あるいろんなヴァージョンの『Go』。それぞれに付いているDVDは実は時間がなくてまだ観れていないから、タマス熱が一段落した頃に早いとこまとめて観よう。

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2010年12月04日

Tamas Wells live in Tokyo 2010 Pt. 1

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ついに、タマス/ヨンシー/タマス3連日の始まり。初日は早稲田奉仕園スコットホールという、早稲田大学の構内にある洋館。赤レンガ造りで教会っぽいと思っていたら、教会なんだね。ビデオ上映のための大きなスクリーンがステージに掲げてあったから、終了後に機材を撤収するまで後ろの十字架やパイプオルガンが見えなかった。教会でのタマスは08年の青山以来。あのときの素晴らしい印象が蘇るよ。

ステージ上にはちょっとした和風の飾りとクリスマスっぽい電飾。急須と湯呑が3つ置いてあったから、あれメンバーが曲間に飲むのかと思った。その手前に、実際にメンバーが立つステージ(というにはあまりにも低い、高さ15センチほどの台)がある。ヴォーカルマイクとギターマイクが2本ずつ。もちろん、タマス・ウェルズとキム・ビールズ用だ。右手にはベヒシュタインのグランドピアノ。これはもちろん会場備え付けだろう。すごくいい音だったね。

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(写真は奉仕園のサイトから勝手に拝借しました)

予告されていたとおり、ライヴ開始前に、15分間のタマスのドキュメンタリー・フィルム『The Houses There Wear Verandahs Out Of Shiness』を上映。味わい深い、素敵な短編だった。「Fire Balloons」の別テイク(録音途中で例によって窓の外から雑音が入って中断するのも含めて)をあんなに沢山聴けるなんて。最後のテイク、演奏途中で大雨が降りだしても演奏を止めず(もちろん室内)、その雨音をも含んで「これ、いいよね。取っとこうよ」と笑顔で話すタマスがすごく印象的だった。あのビデオ、欲しいな。もうすぐウェブで公開されるらしいけど、タマスが部屋で演奏するタイトルシーンをジャケットに使ったDVD(BDでも可)で持っていたい。Liricoさん、よろしく。

続いて、オープニング・アクトとして、キム・ビールズ(Kim Beales)が一人で登場。僕は彼の音楽はこれまでマイスペースにアップされていたものを数曲流して聴いたことがあるだけで、失礼ながらそれほど印象に残っていなかったんだけど、今回は違ったね。声が綺麗なのはシンガポール公演でタマスの曲にコーラスを被せるのを聴いていたから承知していたけど、こんなにいい曲を書くなんてね。見なおしたよ。会場で売っていた06年のアルバムは入場したときにさっさと買っておいたんだけど、後でキムに聞いたら、今日演った曲はほとんどが来年3月に出る予定の新作からなんだって。新作楽しみ。今回買ったのももちろん楽しみだけど。

全5曲、20分ほどのキムのセットの後、10分ほどの休憩をはさんで、いよいよタマス・ウェルズ。まずは二人で登場し、ステージに向かって左側にキム、右側(ピアノ横)にタマスが立つ。オープニングは、08年の来日時にリクエストしたけど演奏してくれなかった「Fine, Don't Follow A Tiny Boat For A Day」。Liricoのsinさんが“個人的にノーマークだった曲”と書いておられたのはこれか。後でタマス達に聞いてみたら、「あれ前回リクエストしてくれたよね。ちゃんと練習したんだよ」だって。なんと、そんなことを覚えていてくれたなんて(しかも僕がこの日に聴きに来ることを知っていたなんて・笑)。そして後半には、やはりあの時リクエストしたけど演奏しなかった「Writers From Nepean News」も。ちょっと感激。

3曲目「The Opportunity Fair」からアンソニー・フランシス(Anthony Francis)がバンジョーで参加。それにしても、初来日のときには単にジャカジャカとギターをかき鳴らしていただけだったのを思い出すと、アンソニーとキムがサポートしていることを差し引いても、タマス演奏上手くなったよなあ。ちゃんとフィンガーピッキングしてるし。

「僕とアンソニーが育ったのはメルボルンでも犯罪率の高い地域で」と話し始めたから、てっきりシンガポールのときと同じく「Stitch In Time」かと思いきや、「Reduced To Clear」に話を持っていった。あの曲、例によっていまいち歌詞を読んでも意味が掴みづらかったんだけど、その地域では空き巣が頻発していて、街の中古品店で盗品が売られていることが多いんだって。そういう背景を聞いて歌詞を読むと、最初から最後まで筋が通る。「自分の持ち物がそんなに安い値段で売られているのなんて認めたくないね」とか言ってたね。あと、「犯罪率が高いのは僕のせいじゃない」とも(笑)

全体的には4枚のアルバムから幅広く選曲されたセット。7曲目に「今回のツアーは新作のプロモーションで、“Thirty People Away"というのはミャンマーで起きた爆破事件のことを友達に聞いたのがきっかけ」と説明しながら、そのタイトル曲ではなく「True Believers」を演奏。新作中でも僕の好きな曲のひとつなので、これは嬉しい。続けて、アルバムと同じ流れで「Your Hands Into Mine」。更に、「England Had A Queen」。しばらく後に、「これは新作からのシングルカット」と言って「The Crime At Edmond Lake」。前回の記事でべた褒めしてるけど、こうして昔の曲と交互に聴いても、この新作に入っている曲のクオリティやっぱり高いね。

それにしても、場内の照明がかなり暗め。教会の高い天井から間接照明で照らしているだけだから、ちょっと下を向くとメンバーの表情もよく見えないぐらい。メンバーの後ろ、本来のステージ上にあるクリスマスの電飾だけがやたら煌々と見えるよ。まあ、こういうのも雰囲気あっていいけどね。あと、後ろのスクリーンにずっとスライドショーで映されていたのは、シンガポールでも流れていた、(おそらく)ミャンマーの風景と『Two Years In April』の原画。

「Edmond Lake」の後、タマスとキムが一旦退場して、アンソニーのピアノソロ「A Dark Horse Will Either Run First Or Last」。紹介するときにタマスが「これはアンソニーが作曲した」と言ってたよ。後でアンソニーに「CDの作曲クレジットは全部タマス・ウェルズになってるよ」と言ったら、「あれはバンドとしてのタマス・ウェルズということだから」とか、タマスも冗談で「印税あげないよ」とか言ってた。仲良しだから別にいいのか、そういうこと気にしないのか。

二人が戻ってきて、いきなり歌いだしたのが「Valder Fields」。彼もこれが一番の名曲だとわかっているだろうに、いつもライヴではこういう何気ない箇所に配置するんだよね。キムのハーモニーとアンソニーのピアノが格別。

この曲のときもそうだったけど、タマスって、隣でキムの準備が整っていようがいまいがお構いなしで歌い始めることがよくある。キムがまだカポつけたりしてるのにさっさと演奏始めたりね。だからといってキムも別に慌てたりしてるわけじゃないから、いつもああなんだろうね。逆に、イントロでキムのギターが鳴ってなかったのが、(彼の準備が整い次第)徐々に音の層が厚くなるのは聴いてても気持ちいいし。

嬉しかった「Writers From Nepean News」、ラスト定番の(でも手拍子は催促されなかった)「For The Aperture」で本編終了。ちょっと早いな。でもすぐアンコールで出てくるだろう。

アンコールはまずタマスが一人で登場し、そのままグランドピアノへ。おお、今回ピアノの弾き語りを演るとは聞いていたけど、いよいよか。と思ったら、曲は新作から「An Organisation For Occasions Of Joy And Sorrow」。なんだ、歌わないのか。でもタマスも結構ピアノ上手いね。

ピアノ・インストと言えば、これも終演後にアンソニーに聞いたんだけど、さっきの「A Dark Horse」だけじゃなく、セカンドまでに収録されているピアノのインストゥルメンタル曲は全部アンソニーが作曲したんだって。そして、新作の2曲はタマスの作ということらしい。

メンバー二人が合流して、「From Prying Plans Into The Fire」、そしてこれも近頃の終盤の定番「I'm Sorry That The Kitchen Is On Fire」で終了。また出てくるだろうとアンコールの拍手をしていたら、そこで客電が点いた。えー、短いよ。「Fire Balloons」演らないの?「The Northern Lights」は?「Nowhere Man」は?

9時には終わらないといけなかったからしょうがなかったんだけど、そういう文句を終演後タマスに言ったら、「わかった、それは日曜日に演るよ」とのこと。「じゃあ、あとアイアン&ワインと、ランバート&ナティカムと」と更にリクエストしてみたけど「いや、それは無理(笑)」とのこと。歌詞書いて持って行ってあげようかな(笑)

あと、キムと話してたときに「キッチンの曲のときに“Friday”のコーラスさせなかったね」と言うと、「今日何曜だっけ?ああっ、金曜日だ。しまった!おーい、タマスー、今日金曜日なのにあれやらなかったー」とか慌ててるし(笑)。「しょうがないからコーラスを“Sunday”に変えて明後日やろうか」とか。おかしい奴。キムは、「シンガポールで話したときからこれをお土産にしようと思って持ってきたんだ」と、会場では売っていなかった自分のシングル盤と、世の中に残り8枚しかないという01年の最初のEPをプレゼントしてくれた。今日の感激その2。

会場で買ったキムのCDも含めて、沢山サインをしてもらったんだけど、持って行ったペンが水性で、コーティングされたジャケの上では乾かないから消えたり汚くなったりしてしまった。今日の失敗その1。『Thirty People Away』用には慌てて友達に油性ペンを借りてサインしてもらったけどね。

というわけで、初日終了。会場の雰囲気も音響もさすがLiricoセレクションのことはあったし、3人のアンサンブルも随分こなれてきて上手だったし(中国ツアーはリハーサルだと思おうと書いたsinさんに賛成)、時間が短かったということさえ除けば、ショートフィルムも前座も含めて、素晴らしいライヴだった。翌日のせっかくのヨンシーに行く気持ちもちょっと萎えてしまうぐらい(もともとあの地の果てみたいな会場に行くのは相当億劫なんだよ)。

ライヴ後、飲み会の帰り、どうやら山手線で問題があったらしく、JRの駅はどこも大混乱。大崎さん曰く、タマスとヨンシーのガチンコ勝負の結果らしい。まあ、そういうことにしておこう(笑)


Tamas Setlist0312.JPG Kim Setlist0312.JPG
タマスとキムのセットリスト。


Setlist 03 Dec 2010 @ Waseda Hoshien Scott Hall

1. Fine, Don't Follow A Tiny Boat For A Day
2. When We Do Fail Abigail
3. The Opportunity Fair
4. Reduced To Clear
5. Open The Blinds
6. Lichen And Bees
7. True Believers
8. Your Hands Into Mine
9. England Had A Queen
10. Vendredi
11. The Crime At Edmond Lake
12. A Dark Horse Will Either Run First Or Last
13. Valder Fields
14. Writers From Nepean News
15. For The Aperture

[Encore]
1. An Organisation For Occasions Of Joy And Sorrow
2. From Prying Plans Into The Fire
3. I'm Sorry That The Kitchen Is On Fire
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