2010年10月13日

Kasim Sulton live in Tokyo

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<前回までのあらすじ>
3連休の最終日、予想外に満喫したトッド・ラングレンのライヴ会場で知った、翌日のカシム・サルトン、ソロ公演。今回僕がある意味トッドより観てみたかった彼の、おそらく日本で最初のアクースティック・ライヴ。この機会を逃すと、もしかしたらもう一生観られないかもしれない。果たして僕は連休明けのオフィスを6時に抜け出すことはできるのか。手に汗握る展開!


というわけで、ここは銀座。誰も手に汗なんて握ってなかったと思うけど。朝一で「今日は6時に消えるので用のある人はそれまでに」とのメールで関係者を牽制。5時を過ぎたあたりで誰とも口をきくのを止めて防災体制。6時きっかりに予言通りオフィスから消え、電車を乗り継いでここに来た。銀座5丁目の交差点をちょっと裏通りに入ったところにある老舗のライヴハウス、タクト。僕は名前を聞くのも入場するのも初めてなんだけど、なんと1958年創業とのこと。すごいね。

会場に着いたあたりでちょうど地下のお店に人がぞろぞろ入っていくところが見えた。ちょうど開場したばかりか。階段を下り、入口で当日券を買う。手書きの番号は25番。なるほど、テーブル席の前の方は半分方埋まっているよ。皆ちゃんと予約して来たのかな。熱心だね。しかも、意外なことに(?)女性客が多いのにはびっくり。

7時の開演時間までには、ほぼ全部の席がゆったり気味に埋まるぐらい(おそらく50人ぐらい?)の入りとなった。ろくに宣伝もしていなかった(僕が知らなかっただけかもしれないけど)こんなマイナー(失礼)なアーティストの弾き語りライヴにこれだけ人が入るんだもんね。たいしたもんだ。

昨日同様に開演時間を10分弱押した頃、ギターヘッドのところにカポとチューナーをくっつけたギブソンのアコギを片手に、カシム登場。さすがにこの至近距離で見るとピーコには全然似ていない。とはいえ、ユートピア時代の彼しか知らない僕から見ると、やっぱり年相応だなあという感じ。最後に彼を見た92年の五反田ゆうぽうとは、とても顔のしわまで見える距離じゃなかったからね。それでも、若い頃は美形だったというのは、今見てもよくわかる。確かにこれは女性ファンが多いのもうなづけるね。

「こんばんは」「ありがとう」という日本語も交えた丁寧な挨拶のあと、ギターをゆっくりつま弾きながら歌い始めたスローバラッドは、なんと「I Just Want To Touch You」。ユートピアが80年に発表したビートルズのパロディ(というにはあまりにもオリジナルすぎる)アルバム『Deface The Music』のオープニング曲。ビートルズよりもビートルズらしいこの曲、てっきりトッドが書いたのかと思ってたけど、言われてみればコード進行とかやっぱりカシム節全開だね。ちょっともう、いきなり声も出ないぐらい感激。

僕はカシムのソロアルバムは、ちょっと前にひょんなことでLPを手に入れた82年のファースト『Kasim』しか持っていないので、ソロ曲はほとんどわからない。でも、どれもこれも、カシム・サルトンが書いたとすぐにわかる、奇妙かつ気持ちのいいコード進行の曲ばかり。

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カシム・サルトン 『Kasim』 (当然廃盤)

そんなにわかファンの気持ちを察したのか、「次の曲は、みんなにコーラスを手伝ってほしいんだ」と、「Libertine」の一節を歌う。ところが、僕も含めてみんな声が小さい(笑)。だって、あんな高い声出ないよ。それにしても、この人全然声が変わらないね。相変わらずちょっと甘めのいい声。これ82年の『Utopia』の1曲目だよ。もう30年近く前になるのか。あれLPしか持ってないから最近はなかなか聴くことないけど、地味ながらいい曲の多いアルバムなんだよね。忘れないようにレコードラックからここに持ってきたから、この週末にでもゆっくり聴こう。

またソロ曲を挟み、数年前にトッドと一緒に参加したバンドの話を。もちろん、トッドのファンにもカーズのファンにも賛否両論だった、ニュー・カーズ(The New Cars)だ。「こんなにいい曲を歌わせてもらえて感謝している」と言いながら歌い始めたのはもちろん、ニュー・カーズで故ベンジャミン・オーに代わって歌ったカーズの大ヒット曲、「Drive」。

キーボードに移り、「ユートピアのファンはいる?」と質問。逆に、ユートピアのファンじゃなかった人はここにいるのか?とも思ったよ。曲は、もう一枚80年に出た(こっちの方が先だったけど)アルバム『Adventures In Utopia』から、「Love Alone」。そういえば、この時期、ユートピアとトッドのソロとで(あと、カシムのソロも)物凄い数のアルバムを出してたよね。しかも、問題作はあれど失敗作なんて一つもなかった。一体、80年から82年までに何枚関連アルバム出てたんだっけ。

続けて、ユートピアに20歳で参加して(76年だっけ?)最初に書いた曲、「ベアズヴィル・レコードのアルバート・グロスマンに却下されたんだよ」と説明しながら歌い始めたのは、同じアルバムからの「Set Me Free」。なんでこんないい曲を却下できるんだ? 4年間もお蔵入りしてたのか。

ビートルズのコピーバンドでポール・マカートニー役を頼まれたけど、真似をするのは嫌だからと断ったエピソードに続けて、「でもこの曲は大好きなんだ」と、「The Long And Winding Road」、そして更に「Lady Madonna」。あまりにもベタだけど、これも、日本のファンが知ってる曲を演奏してあげようという気持ちからかな。と、そんな風になんでもポジティブに取ってしまうほど、あらゆる局面でこれ以上ないほど感謝の気持ちを述べまくっていた彼。日本なんかで今でもこんなにファンが集まってくれるというのがよほど嬉しかったんだろうね。なんか、いい人オーラ出まくりだったよ。

ギターに戻り、トッドとの出会いを語る。20歳の自分をユートピアに入れてくれてとても感謝しているということ(実際にはトッドは嫌がったけど、ロジャーとウィリーが薦めてくれたんだとか。あれは冗談なのかな)。それ以来、自分のライヴでは必ず1曲は感謝の気持ちを込めてトッドの曲を歌っているということ。この日歌ったのは、「Cliche」。まだベーシストがジョン・シーグラーだった頃のユートピアが実質バックを務めたトッドの76年のソロアルバム『Faithful』から。

前日のトッドの会場でも情報の載ったカードが配られていたけど、カシムはニューアルバムを製作中で、先着1000名の写真がモザイク状に使われてカシムの顔になるというジャケットになるらしい。参加料金とCDの送料を足すと70ドルになるけど、高くて悪いね、いや、今円高だから高くないよね、とかいろいろ言いながら宣伝してたのがかわいいね。「抽選で誰かの家まで出張して生演奏もするし」と。でも、カードの日本語訳を見ると、「日本の方が当選された場合は(交通費と宿泊費は)別途ご相談」とか書いてあるぞ。下手に抽選に当たると、70ドルどころじゃない出費かも(笑)

またしてもビートルズのカバーを2曲続けて。「I'm Looking Through You」と「Across The Universe」。さっきほどベタな選曲ではないけど、こんなにビートルズ演るんなら、どうせなら『Deface The Music』からの曲をもっと演ってほしかったな。あのアルバム、作曲クレジットは全部ユートピアになってるけど、他はどれがカシムの曲なんだろうな。「That's Not Right」とか「Life Goes On」とか?

ラストは、82年の『Swing To The Right』から「One World」。え?これもカシムの曲なの?てっきりトッドの代表曲だと思ってたのに。いくつか聴いたトッドのライヴ録音ではそれぞれご当地の地名に置き換えて歌っている“From Berlin to San Francisco, From New York to Tokyo”の歌詞は当然そのままで。

アンコールに応えて1曲。この前後でもまた何度も何度も感謝の言葉を述べるカシム。「もしまた日本に来れたらライヴに来てくれる?」って、本当に今日は嬉しかったんだね。最後に主催者が挨拶して、もう一回楽屋からカシムを引っ張り出して挨拶させる。「パーティーで会おう」と言い残して去るカシム。あ、そうか、今日はこのままこの場所でパーティーがあるんだね。いいな。きっと予約してまで来た女の人たち(カシムに“Kasim Girls”って呼ばれてたね)とか参加するんだろうね。

僕は、会場で500円で売っていた、カシムのソロアルバム3枚のうち1枚をダウンロードできるコードのついたクーポンを購入して、おとなしく帰ることにした。帰って、トッドのライヴ記事を仕上げて、さて3枚のうちどれにしようと思ってサイトを覗くが、当然のごとく決められない。しまった、あと1000円ぐらいけちらないでクーポン3枚買っとけばよかった。というか、CD-Rに焼いてジャケットつけて売ってくれていれば、たとえ1枚1500円でも僕はその場で3枚とも買ったのにな。いくら嫌いでも、もうそろそろこういうダウンロード・オンリーみたいなのに慣れないといけないのかな、と未使用のコードの載ったクーポンを眺めながら思う今日この頃(というか、今日)。


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