2010年10月11日

逃避行 - Gin Blossoms

No Chocolate Cake.jpg
ジン・ブラッサムズ 『No Chocolate Cake』

4年前のちょうど今頃。LAに出張する機会があり、空港での待ち時間を利用してCDを8枚ほど買いこんできた。その8枚の中でも僕が大層気に入り、立て続けにこのブログに取り上げたうえ、その年の年間ベストアルバムの第四位と第三位に選んだのが、一昨日の記事にしたレイ・ラモンターニュの前々作『Till The Sun Turns Black』と、今日これから書くジン・ブラッサムズの前々作『Major Lodge Victory』だった。

その後、レイ・ラモンターニュは08年に、ジン・ブラッサムズは09年に、僕にとってはちょっと今一つの(なので記事にはしていない)アルバムを出した後、今年になってまたほぼ同時にニューアルバムを発表し、僕がたまたまそれらをアマゾンで一緒にオーダーし、つい先日一緒に届いたのもまたなんか妙な偶然。ちなみに記事の順番は逆だったけれど、そのレイ・ラモンターニュの記事を書いたのがちょうど4年前の今日だった。

派手さ・話題性皆無なのも共通していると言っていいだろう。音楽性はずいぶん違うけれど、どちらもアメリカ音楽最後の良心と言っても過言ではないような音。他にも偶然共通する歌詞が出てくるとかあるけど、そんなの書いてると長くなるし、レイのことは一昨日書いたばかりで今日改めて書くことはあまりないので、今日はジン・ブラッサムズの話を。

4年前の記事にも書いたとおり、新しいアルバムだからといって音楽性ががらりと変わるようなバンドじゃない。今作もまた、いつもどおりの疾走感溢れる曲ばかりが11曲。とはいえ、いくつか目立った変化もある。

まず一番最初に気付くのは、上に載せたダサいジャケット。これまでの彼らのアートワークって、取り立てて素晴らしいものばかりというわけではなかったけれど、前作の薄曇りの青空とか、音楽性に見合ったこざっぱりしたものが多かったはず。それが一体どうしたことか。これはちょっと、よほどのファンでもなければ購買欲そそられないよね。ニセモノかと思ったよ。

音楽的な面から見ると、解散前も再結成後もずっとプロデュースにあたっていたジョン・ハンプトン(John Hampton)の名前が見当たらないこと。今回はバンドメンバーによる初のセルフ・プロデュース(デビュー時からのプロデューサーと別れて初のセルフ・プロデュースというところも、レイ・ラモンターニュのニューアルバムとのもうひとつの偶然の一致)。

それがまた、全11曲中、7曲がギターのジェシ・ヴァレンズェラ(Jesse Valenzuela)と元レンブランツ(The Rembrandts)のダニー・ワイルド(Danny Wilde)の共同プロデュース、3曲がヴォーカルのロビン・ウィルソン(Robin Wilson)によるプロデュース、そして最終曲がジェシ、ダニーとリード・ギタリストのスコッティ・ジョンソン(Scotty Johnson)3名によるプロデュース。一体なんでそんなバラバラにやるんだ?仲悪いのか?

そして、再結成時に唯一戻ってこなかったオリジナル・ドラマーに代わって前作でドラムスを叩いていたスコット・カズミレック(Scott Kusmirek)は今回1曲だけに参加。残りは新規でメンバー扱いされているジョン・リチャードソン(John Richardson)という人が担当。

「もうとにかくこのアルバムを聴いて僕の印象に残るのがドラムの音」。4年前の記事に僕はこう書いた。今回のアルバムも当然のようにスネアの音で幕を開けるほど、ドラムスの音が全体の音作りの中で重要な位置を占めている。今回のドラマーもとてもいいんだけど、この手のライヴ・バンドに於いて、サウンドの要となるべきドラマーが固定しないというのは、かなり致命的ではないだろうか。

といった、いくつかの変化を別にすれば、先述したとおり、いつもどおりのジン・ブラッサムズ。疾走感いっぱいなのに、聴いていると何故か切なくなるメロディーライン、正統派アメリカン・ロックの直系としてイーグルズやポコの流れを汲む素晴らしいハーモニー、そして、やはり僕はこのバンドのここが一番好きだったんだと今回改めて気付かされた、ロビン・ウィルソンのタフなくせに甘い声。

全11曲、どれも粒よりなんだけど、欲を言えば、このアルバムといえばこれ!というキラー・チューンが欲しかったかな。デビュー作『New Miserable Experience』なら「Hey Jealousy」、「Until I Fall Away」、「Found Out About You」。セカンド『Congratulations I'm Sorry』なら「Follow You Down」、「As Long As It Matters」。前作『Major Lodge Victory』なら「Learning The Hard Way」、「Come On Hard」といったところ。

今作で強いて言えばどれだろう。「I Don't Want To Lose You」か「Go Crybaby」か。アルバム中唯一のスローナンバー「If You'll Be Mine」もいいね。なんだか今の気分に左右されてそうなチョイスではあるけれど、前作のように一回聴いただけで「これ!」とわかる曲がないのも事実。まあ、逆に言うとどれも皆おしなべてそこそこ高水準とも言えるんだけどね。

ところで、ちょっと調べ物をしているときに気付いた。このアルバム、iTunesだとボートラが1曲追加されてるんだね。なんでわざわざ高い金払って、ダサいジャケ(笑)のCD買って、現物がドンブラコと届くまで何週間も待たされて、おまけに曲数まで少ないんだ? CD売上が落ちているとか言うけど、その一因はこういう訳のわからない商品設定だろうが。でも、いいよ。どんな扱いを受けようと、僕は多分ずっとCDやLPを買い続けるから。ボートラの「Please Don't Ask Me」もそのうち再発盤とかシングルのカップリングとかで入手できるだろうし。


三連休の中日の今日、昨日から朝まで降り続いていた雨も昼までにはあがって、空が高く見える薄曇りのいい天気になった。まるで『Major Lodge Victory』のジャケみたいな。3年前に日本に戻ってきてから一度も車を運転していないけど、今日はなんだか無性にどこかに行きたくなった。本当はどこまで行っても羊と牛しかいないようなNZの田舎道を頭をからっぽにして延々と走れたらいいんだけど、そんな贅沢は言わない。自分では買わないような真っ黒なオープンカーを借りて、Tシャツの上に合皮のジャケットを羽織って、誰も僕のことを知らない、誰とも口をきかなくていい場所へ。どこか観光地でもなんでもない山奥がいいな。そんなとき、レンタカーのカーステでずっとリピートしているのはきっとこのアルバムだ。


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